★「信なくば立たず」 続投に執着する石破総理が失う求心力

★「信なくば立たず」 続投に執着する石破総理が失う求心力

石破総理は参院選で自民が大敗し、公明党と合わせた議席で衆院に続いて参院でも過半数を失ったにもかかわらず、比較第1党として「国政に停滞を招かない」と続投を表明。さらにアメリカとの関税交渉を理由に再び続投を表明した。なぜここまで執着する必要があるのかと有権者の一人として考え込んでしまう。

国政選挙で大敗を喫したのであれば、政権与党のリーダーとして辞意を表明してケジメをつけるのは当然ではないか。そして、日米関税交渉が決着したのだから、むしろこれを花道として退陣してもよいのではないか、と普通に考える。

きょうの紙面を見ると、「石破首相 退陣へ 参院選惨敗 引責」(読売)、「石破首相 退陣へ 来月末までに表明」(毎日)、「石破首相 退陣不可避に 関税妥結、参院選敗北受け」(日経)、「首相 退陣不可避 自身は否定、来月末最終判断」(北國)。各社の見出しはまるで業を煮やしたかのようにも読める。

記事を読むと、地方から石破退陣を求める動きが起きている。地元・石川県の自民党県議ら19人は23日、辞任を求める文書を郵送した。当初は県議6人程度で申し入れ書を提出する方向だったが、賛同者が増えて最終的に県議8人、県内市町議3人、一般党員8人が名を連ねた(24日付・北國新聞)。また、投開票日翌日の21日に早期退陣を求める申し入れを行うことを決めた高知県連の上治堂司総務会長は、取材に対し、「参院選の結果は、国民が石破政権に対し『ノー』を突きつけた形で、続投は民意からずれている」と述べた(24日付・読売新聞)。

「信なくば立たず」。政治とは何かと弟子に問われた孔子は、兵、食、信の3つを挙げ、その中で大事なのは民から信じ託されることだと説いた。政治家に信頼がおけない限り、国民は信用しない。これは石破総理がこれまで説いてきたことではなかったか。

⇒24日(木)夜・金沢の天気  はれ

☆AⅠが能登の現場に 交通誘導を仕切る、「言葉の壁」を超える 

☆AⅠが能登の現場に 交通誘導を仕切る、「言葉の壁」を超える 

去年元日に能登半島地震があり、それを機に金沢から能登を頻繁に往復している。被災地がどうなっているのか、その後どうなったのか気になるからだ。そのときに利用するのが自動車専用道路「のと里山海道」。先日、その道路を走行すると横田IC付近で看板が出ていた。「この先 AⅠ誘導中」と書いてある=写真・上=。さらに、看板の上の方をよく見ると、「AⅠ交通システム」とある。ここはこれまで警備員のおじさんたちが数人で仕切っていた。それがいつの間にか、AⅠが仕切っていた。

看板の先は片側交互通行の道路になっていて、設置されたディスプレイの画面が「STOP」と「GO」のサインを出している=写真・下=。カメラで画像解析を行い、車の通過状況をAⅠが解析しているのだろう。車は表示された指示に従い、スムーズに流れていた。

能登では、AⅠをインバウンド観光で駆使している事例もある。半島北部の能登町にある民宿が並ぶ「春蘭の里」。インバウンド観光のツアーや体験型の旅行の受け入れを積極的に行っている。47軒の民宿経営の人たちが自動通訳機「ポケトーク」を使いこなして対応している。

春蘭の里の代表から聞いた話だ。「ポケトークだと会話の8割が理解できる。すごいツールだよ」と。ポケトークは74の言語に対応していて、春蘭の里は通訳機を使うようになって年間20ヵ国・2000人余りを受け入れるようになった。70歳や80歳のシニアの民宿経営者たちがポケトークを使いながらインバウンド観光の人たちと笑顔でコミュニケーションを取っている姿はAⅠの進化、まさに「文明の利器」を感じさせる。そして、困難と言われ続けていた「言葉の壁」をしなやかに乗り越えた事例だ。

さらに多様な役目をこなすAⅠが現れるだろう。たとえば、会議を仕切るAⅠだ。会議で出た話を分析してまとめを行い、次の議事進行へと淡々と進める。そんな時代が間もなくやって来るのかもしれない。

⇒23日(水)夜・金沢の天気  はれ

★能登半島の尖端 華やかな曳山と山車の「燈籠山祭り」2年ぶり

★能登半島の尖端 華やかな曳山と山車の「燈籠山祭り」2年ぶり

能登半島の尖端、珠洲市できらびやかな山車と曳山が練ることで知られる「燈籠山(とろやま)祭り」が今月20日と21日に行われた。現地に行くと、町衆が木遣り歌『きゃーらげ』を大声で歌い、曳山が街中を巡行していた=写真・上=。去年元日の能登半島地震、そして9月の豪雨に見舞われ、2年ぶりの山車と曳山のお披露目とあって、市民や県内外からの大勢の見物客でにぎわっていた。

江戸時代に始まったと伝えられる珠洲市飯田地区の燈籠山祭りは、毎年この時期に地区にある春日神社で行われる祭り。祭りでは「えびす様」の人形を載せた高さ16㍍の山車「燈籠山」=写真・下=が夜になれば、こうこうと明かりを灯して、8基の曳山とともに市の中心部を往復する。

2022年からの群発地震に始まり、2023年5月、2024年元日と立て続けに大地震があった珠洲市では、道路の一部に損傷が残っていることから、例年よりルートを短縮して巡行が行われた。「ヤッサー、ヤッサー」と掛け声に合わせて、街中を練り歩くに能登の祭りの意気込みを感じた。

能登の祭りにパワーを感じる。ことし5月には、能登半島の中ほどの七尾市で2年ぶりに開催された「青柏祭(せいはくさい)」を見学に行った。「でか山」と称される、高さ12㍍あり、重さ20㌧にも及ぶ山車。平安時代から伝わる能登半島の代表的な春の祭りとされ、でか山が練り歩く「曳山行事」は2016年にユネスコ無形文化遺産に登録されている。

その後、今月4日に半島北部の能登町宇出津にキリコ祭りの先陣を切る「あばれ祭(まつり)」を見物した。地元でキリコと呼ぶ「切子灯籠(きりことうろう)」を老若男女が担ぎ、「イヤサカヤッサイ」の掛け声が港町に響き渡っていた。熱気あふれるとはこの事をことを言うのだろうと実感した。絶好調になると、神輿を川に投げ込んだり、火の中に放り込むなど、担ぎ手が思う存分に暴れる。それを神が喜ぶという伝説がある祭りだ。

能登では「1年365日は祭りの日のためにある」、「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」という言葉があるくらい、人々は祭りにこだわる。その祭りを盛り上げる人々のパワーや地域のネットワークに「復興力」というものを感じる。

⇒22日(火)午前・金沢の天気  はれ

☆衆院に続き参院も少数与党に転落 能登では復興に寄せる期待

☆衆院に続き参院も少数与党に転落 能登では復興に寄せる期待

参院選はきのう(20日)投開票が行われ、自民・公明は計66の改選議席を47に減らし、非改選75を合わせて参院全体で過半数(125)を割り込み、衆院に続き参院も少数与党に転落した=写真・上=。自民を中心とした政権が衆参両院で過半数を割り込むのは1955年の結党以来初めてという。

石破総理はきのう夜のテレビ朝日の選挙特番で「比較第1党の議席をもらったことの重さもよく自覚しなければいけない」と述べ、キャスターから「(その言葉を)続投すると受け止めてよいか」と問われ、「けっこうだ」と答えた。これまで耳にしたことがなかった「比較第1党」は、議会の過半数には達しないが、議席数をもっとも多く有する政党を意味する言葉だ。続投の理由を問われ、石破総理は「敗北の責任を私が担っていく」と述べ、アメリカとの関税交渉や選挙期間中に訴えた物価高を上回る賃金上昇、地方創生、防災対策などをあげて、「きちんとした道筋をつけることは国家に対する責任だ」と語った。

昨夜は金沢市の開票場を見に行った。午後9時30分に一斉に投票箱からを投票用紙が取り出され、候補ごとに、そして政党ごとに仕分ける作業が手際よく進んでいく=写真・下=。開票作業は体育館で行われたが、日中の暑さがそのまま残っていて、スタッフは首にタオルをかけて汗をふきながら作業を行っていた。

地元の石川選挙区(定員1)の結果は、自民現職の宮本候補が国民民主の候補に4万9千票差で4期目の当選を果たした。ただ、金沢市では960票差の接戦で、隣接の野々市市や能登の羽咋市では国民候補が上回った。自民の参院予算委員長だった鶴保氏が能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことが物議をかもしたが、その影響かどうかは分からない。ちなみに、震災と「記録的な大雨」に見舞われた奥能登4市町の宮本候補への投票はいずれも50%超えている。災害復興に向けた政治活動に期待が寄せられているのだろうか。

⇒21日(月・祝)午前・金沢の天気  はれ 

★参院選きょう選挙戦最終日 印象に残る光景3題

★参院選きょう選挙戦最終日 印象に残る光景3題

参院選の選挙戦最終日のきょう、候補者は街頭に繰り出して有権者に最後の訴えを行っている。17日間の選挙戦で印象に残っていることをいくつか。以下、あくまでも個人的な感想。最初は「総理見参」。選挙公示の翌日の4日に自民党総裁の石破総理が演説のため、輪島市の能登空港を訪れた。石破氏は遊説先の福島県からチャーター機で能登空港に降り立った。自身は能登町宇出津の夏祭り「あばれ祭」を見るために行く途中、空港に立ち寄ったところ、たまたま石破氏の演説が間もなく始まることを耳にして、演説会場に赴いた。

それにしてもなぜ公示翌日に能登に、と思い続けていた。なにしろ、4日の演説には候補者本人がおらず=写真・上=、候補者の妻が頭を下げていた。後で知ったことだが、石破氏は初日3日は神戸市で第一声を上げた。翌日4日の午前は福島、そして午後は能登。ということは、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)、そして能登半島地震(2024年)の被災地がルートになっていたのか、と。ちなみに、熊本県には13日に入っている。ということは、石破氏が決めたルートで演説を行っているので、地元候補者への「応援演説」というより「地方遊説」だ。なので、肝心の候補者は日程調整がつかなければ不在でもかまわない。それが、4日の能登空港での光景だったと後になって理解した。

二つ目は「落書き」。掲示板に貼られている候補者の選挙ポスターが落書きされるケースが全国で相次いでいるようだ。この場合、公職選挙法違反(選挙の自由妨害罪)に問われる可能性がある。公職選挙法225条2号は、選挙の自由を妨害した場合、4年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定めている。

今回の選挙で見た落書きは公示の3日に見た金沢市内の掲示板で、NHK党の候補者のポスターに描かれている党首の顔写真にマジックのようなものでメガネがいたずら書きされていた=写真・下=。周囲の掲示板にも書かれてないかチェックしたがなく、この掲示板だけだったようだ。数日たって再度この掲示板に目をやるとポスターは貼り換えてあった。

もう一つ印象にあるのは「鶴保失言」。自民党の参院予算委員長だった鶴保庸介氏が今月8日に和歌山市での応援演説で、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことだ。釈明会見をテレビで視たがすっきりしない。政治家の言葉の危うさは、言葉が独り歩きをしてどのように展開していくのか読めないことの危うさでもある。鶴保氏本人が能登に来て、失言の謝罪をするなど、行動でケジメをつけないと治まらないのではないか。あすはいよいよ投票日だ。

⇒19日(土)午後・金沢の天気  はれ

☆北陸は梅雨明け、いきなり38度の酷暑、ハスの花に心和む

☆北陸は梅雨明け、いきなり38度の酷暑、ハスの花に心和む

本格的な夏がやって来た。気象庁はきょう北陸が梅雨明けしたとみられると発表した。ことしの梅雨明けは平年(7月23日)に比べて5日早く、去年(7月31日)に比べて13日早い。金沢地方気象台によると、北陸は太平洋高気圧に覆われておおむね晴れるものの、向こう一週間は山沿いや山地を中心ににわか雨や雷雨となる所もあるようだ。金沢の自宅近くにある大乗寺丘陵公園に行く。頂上部からは市街地や日本海を見渡すことができる。梅雨明けの金沢の上空を眺めると薄雲がところどころで広がっていた=写真・上、午前11時半ごろ撮影=。

それにしても暑い。うだる暑さだ。自宅近くにある街路の温度計で38度となっている=写真・中、午後3時すぎに撮影=。この暑さはこれでは済まないようだ。気象庁は今月14日、九州南部や沖縄地方を除く日本の広い範囲に「高温に関する早期天候情報」を発表した。今月20日ごろから、この時期としては10年に一度程度しか起きないような著しい高温になる可能性があるとしている。

この暑さの中、JR金沢駅の駅西広場では水辺に夏の花、ハスが咲き誇っている=写真・下=。淡い桃色の花は人の気持ちを和ませるだけでなく、心にしみこんでくるような存在感がある。「蓮(はす)は泥より出でて泥に染まらず」という教訓めいた言葉もある。水面下はドロ沼ではあるが、清らかで美しく咲く姿に、いにしえより人々は自らの人生を重ねてきたのだろう。

俳人の高浜虚子はこんな句をひねっている。 「黎明の雨はらはらと蓮の花」。明け方に雨が降り、蓮の池からパラパラと葉を打つ音がした。蓮を見ると花が咲いていた。花を見に来いと蓮が伝えてくれたのだろう。泥中の蓮の奥深い魅力ではある。

⇒18日(金)夜・金沢の天気  はれ

★参院選投票まで3日 自公過半数は困難か、尾を引く鶴保失言

★参院選投票まで3日 自公過半数は困難か、尾を引く鶴保失言

参院選の投票日まで3日となった。終盤に入り、メディア各社は選挙情勢を伝えている。読売新聞(16日付)は「自公 過半数難しく 立民堅調、国民大幅増 参政は躍進」の見出し。朝日新聞(14日付・Web版)は「自公、参院過半数は困難か 自民は比例区でも苦戦」、毎日新聞(同)は「自公過半数、深まる苦戦 1人区厳しさ増す」と伝えている。

また、日経新聞(16日付)は「自公大幅減、過半数は微妙 国民民主・参政が躍進 立民横ばい」、共同通信の調査はローカル各紙(15日付)で「自公苦戦 過半数は微妙 国民大幅増の公算大」と報じている。各紙の記事を読むと、政権与党の自公は苦戦している。

そして、地元・石川選挙区(定数1)の記事を読むと、朝日・毎日・読売の評価が分かれている。序盤は3紙とも「自民優勢」だったが、終盤になって、朝日と毎日は「互角の激戦」「接戦」に変更、読売は「自民優勢」を継続している。朝日・毎日はその変更の理由について、自民党の参院予算委員長だった鶴保庸介氏が今月8日に和歌山市での応援演説で、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことの影響が尾を引いていると分析している。毎日は「投票先を決めていない人が3割以上おり、情勢が流動化することもある」と述べている。一方、読売は「(自民候補が)先行したまま終盤に突入した」と述べているが、「(自民)陣営は、自民参院議員による『運のいいことに能登で地震があった』という発言の影響を懸念する」と書き添えている。

いずれにしても石川選挙区では鶴保氏の失言が投票行動にどのような影響を与えるのか見どころではある。何しろ失言の余波は広がっていて、きのう(16日)石川県の8つの町議会の議長でつくる「県町村議会議長会」の会長が自民党本部を訪れ、森山幹事長宛の抗議文を届けている。本来ならば、鶴保氏本人が能登に来て、失言の謝罪をすべきではないのか。ケジメをつけないと、この騒動は治まらない。

時事通信の7月の世論調査(11-14日実施)によると、石破内閣の支持率は前月比6.2ポイント減の20.8%で、去年10月の発足以降の最低を更新した。不支持率は同6.6ポイント増の55.0%と最高だった。政党支持率は、自民党が前月比2.5ポイント減の16.4%、立憲民主党が同1.1ポイント増の5.5%で、参政党が同2.2ポイント増の4.7%で3位に上昇した(17日付・時事通信Web版)。石破内閣はまさに「危険水域」ではないのか。支持率は落ち始めると急降下する。それが世論調査の怖さだ。

⇒17日(木)夕・金沢の天気  くもり時々あめ

☆能登ゆかりの地にトキが舞う 来年6月の放鳥場所決まる 

☆能登ゆかりの地にトキが舞う 来年6月の放鳥場所決まる 

トキが能登に帰って来る。環境省が来年6月に予定している、国の特別天然記念物トキの放鳥場所が決まった。本州で初となる放鳥の場所は、能登半島の中ほどにある邑知潟(おうちがた)周辺=羽咋市南潟地区=。石川県や能登4市5町などで構成する「能登地域トキ放鳥受入推進協議会」では2022年に9市町によるそれぞれの「トキ放鳥推進モデル地区」を設定し、トキが生息しやすい減農薬の水田など環境づくりに取り組んできた。環境省の専門家による調査などを経て、きょう開かれた協議会で県が提案し、邑知潟周辺を放鳥場所と決めた。

選ばれた理由は大きく二つあるようだ。一つは、邑知潟を中心に羽咋市南潟地区には2㌔圏内の水田面積が1185㌶あり、放鳥が予定される15羽から20羽のエサ場としても十分な広さ。もう一つが、地形が佐渡の地形とよく似た場所だ。潟と平野を挟むように眉丈山系と石動山系があり、トキがねぐらをつくる場所として適している。また、新潟県の佐渡から飛来したとみられるトキの姿が2011年以降たびたび目撃されていて、2013年には5ヵ月間ほど住み続けたことなども評価された(16日付・NHKニュースWeb版)。

かつて能登はトキの生息地だった。眉丈山では1961年に5羽のトキが確認されている。ところが、田んぼでついばむドジョウやカエルなどのエサは農薬にまみれていた。能登のトキは徐々に減り、「本州で最後の一羽」と呼ばれたトキが1970年に捕獲され、新潟県佐渡の環境省トキ保護センターに繁殖のために送られた。ところが、翌年1971年3月、鳥かごのケージの金網で口ばしを損傷したことが原因で死んでしまう。(※写真・上は、輪島市三井町洲衛の空を舞うトキ=1957年、岩田秀男氏撮影)

こうしたいきさつもあり、石川県と能登9市町は環境省による本州でのトキ放鳥を熱心に働きかけてきた。国連が定める「国際生物多様性の日」である5月22日を「いしかわトキの日」と独自に定め、県民のモチベーションを盛り上げてきた。冒頭の能登9市町による「トキ放鳥推進モデル地区」も独自の取り組みとして設けたものだ。一連の動きが環境省で評価され、来年の能登での放鳥につながっている。(※写真・下は、羽咋市南潟地区の邑知潟と水田。左の山並はかつてトキが生息していた眉丈山)

トキのゆかりの地でもある眉丈山と邑知潟に再びトキが舞う日がやってくる。能登半島地震の災害からの復興のために石川県が策定した『創造的復興リーディングプロジェクト』の13の取り組みの中に、「トキが舞う能登の実現」が盛り込まれている。トキが舞う能登を震災復興のシンボルとしたい。その思いが動き出す。

⇒16日(水)午後・金沢の天気  はれ

★参院選は終盤へ 石川の5候補、能登地震復興への想いとは

★参院選は終盤へ 石川の5候補、能登地震復興への想いとは

参院選も後半戦に入ったが、それにしても静かな選挙選だ。「お願いします、お願いします」と連呼する選挙カーが金沢の自宅近くをたまに通る程度。石川選挙区(定数1)は全県が選挙区なので、金沢や能登、加賀を巡るのに時間がかかるのだろうか。ただ、後半から終盤にかけて金沢に集中してくるので、1議席をめぐる戦いはこれから激しくなるのかもしれない。

今回の選挙で自身が注目するのは、去年元日の能登半島地震の復旧・復興にそれぞれの候補者がどう向き合い、何を訴えているか、だ。そこで、候補者の公約や地元メディアでのインタビュー記事などから拾ってまとめてみた。以下、5人の候補を届け出順に。                    

◇共産党・村田茂候補(62):医療費と介護費の免除はことし6月まで延長されたが、さらに少なくとも9月まで延長させる。住宅再建で家を建てるには300万円の支給だが、少なくとも600万円に引き上げるべき。仕事の問題と住宅の問題は急を要している

◇自民党・宮本周司候補(54):まずは社会のインフラ整備。生活の再建と同様になりわい再建にまだ判断を迷っている多くの事業者がいる。復旧によって再生される街の雰囲気や街並みを具体的なイメージで語り合い、復興の姿を具現化し共有することが先決だ

◇国民民主党・濱辺健太候補(31):復興には仕事と教育環境を整える政策が必要だ。能登には空港があるので発着便を増やし、周囲を整備することで企業誘致や新しい産業を生み出す環境づくりを進める。そのための資金的な支援は国が後押しする

 ◇NHK党・小澤正人候補(49):コアとなる市の中心部を目に見えるカタチで復旧する。そうしたシンボル的なところが目に見えると、人々には安心感が生まれる。インフラ整備も急ぐ必要があり、各市町を結ぶ幹線道路が傷んでいるので復旧を加速させる

◇参政党・牧野緑候補(40):子育て世代が安心して暮らせる環境を整える。そのためには自給力が必要で、国として畑付きの住宅を整備したり、農業や漁業の人材を育成する学校をつくる。若者世代にもこうした学びを通して復興に参画してもらう仕組みを創る

能登の復旧・復興について、それぞれが考えを具体的に述べているので、実に分かりやすい。とくに、復興のシンボルづくりには共感する。ふと思ったことだが、ならば能登の復興をテーマに5人でパネル討論を開いて、互いに考えを深めてはどうだろうか。思いつきを述べたにすぎない。

⇒15日(火)午後・金沢の天気  はれ

☆能登地震で海底の地形変化か、舳倉島周辺のアワビが激減

☆能登地震で海底の地形変化か、舳倉島周辺のアワビが激減

前回ブログの続き。輪島の海女が2年ぶりにアワビやサザエの漁を始めた。ウエットスーツ、水中眼鏡、足ひれを着用して素潜り。輪島市や、49㌔沖合の舳倉島=写真・上=を拠点に170人ほどの海女たちがいる。

舳倉島は古くからアワビが採れる島として知られる。万葉の歌人・大伴家持が越中国司として748年、能登を巡行している。島に渡ってはいないが、輪島で詠んだ歌がある。『沖つ島 い行き渡りて潜くちふ あわび珠もが包みて遣やらむ』。沖にある舳倉島に渡って潜り、アワビの真珠を都の妻に送ってやりたい、との意味のようだ。この和歌から分かることは、少なくとも1277年前の昔からこの島ではアワビが採取され、いまでも連綿と続いているということだ。

アワビ漁を守り続けるため、海女たちは自主的に厳しいルールをつくっている。素潜りを原則として、決してアクアラングなど呼吸器具を装着しない。アワビの貝殻の大きさ10㌢以下のものは採らない。漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月。海に潜る時間は午前9時から午後1時までの4時間と制限している。さらに、休漁日は一斉に休む。こうしたルールを互いに守ることで、持続的なアワビ採りの恩恵にあずかっている。まさにSDGsの手本とも言える。

ところで、きのう採れたサザエやアワビはきょう金沢の近江町市場に並ぶと聞いていたので市場に行ってきた。水産物店の店先にサザエ=写真・中=が並んでいたので、店主に「どこのサザエですか」と尋ねると、「輪島の海女採り」と即答で返ってきた。大きいサイズのものは1個200円、中小型のものは5個で600円の値段だ。

それにしてもアワビ=写真・下=が見当たらない。そこで、「アワビはないの」と尋ねると、「去年の地震の影響でいまほとんど採れていない。値段も2万円と地震の前の倍になっている」とのこと。確かにきのう輪島漁港の荷捌き場をのぞいた時もアワビは数えるくらいしかなかった。アワビはこれまで浜値で1㌔1万円が相場だったが、それが一気に2万円とは。アワビは海底の岩場にへばりくつように生息している。それが、地震による海底の隆起で地形が変化したため、アワビの生息場所も変化した。その場所を把握できていないため採取する量が減ったということもあるようだ。

どの水産物店にもアワビが見当たらない。先の店主に再度聞いた。「では、アワビはどこに流れた」。すると、「ほとんど東京だろうね」と。値段の高騰で金沢ではさばき切れないと判断した仲介業者が東京市場に流しているようだ。2年ぶりのアワビ漁、はやく「金沢市民の台所」近江町市場に戻ってほしいものだ。

⇒14日(月)午後・金沢の天気   はれ