☆北陸は梅雨明け、いきなり38度の酷暑、ハスの花に心和む

☆北陸は梅雨明け、いきなり38度の酷暑、ハスの花に心和む

本格的な夏がやって来た。気象庁はきょう北陸が梅雨明けしたとみられると発表した。ことしの梅雨明けは平年(7月23日)に比べて5日早く、去年(7月31日)に比べて13日早い。金沢地方気象台によると、北陸は太平洋高気圧に覆われておおむね晴れるものの、向こう一週間は山沿いや山地を中心ににわか雨や雷雨となる所もあるようだ。金沢の自宅近くにある大乗寺丘陵公園に行く。頂上部からは市街地や日本海を見渡すことができる。梅雨明けの金沢の上空を眺めると薄雲がところどころで広がっていた=写真・上、午前11時半ごろ撮影=。

それにしても暑い。うだる暑さだ。自宅近くにある街路の温度計で38度となっている=写真・中、午後3時すぎに撮影=。この暑さはこれでは済まないようだ。気象庁は今月14日、九州南部や沖縄地方を除く日本の広い範囲に「高温に関する早期天候情報」を発表した。今月20日ごろから、この時期としては10年に一度程度しか起きないような著しい高温になる可能性があるとしている。

この暑さの中、JR金沢駅の駅西広場では水辺に夏の花、ハスが咲き誇っている=写真・下=。淡い桃色の花は人の気持ちを和ませるだけでなく、心にしみこんでくるような存在感がある。「蓮(はす)は泥より出でて泥に染まらず」という教訓めいた言葉もある。水面下はドロ沼ではあるが、清らかで美しく咲く姿に、いにしえより人々は自らの人生を重ねてきたのだろう。

俳人の高浜虚子はこんな句をひねっている。 「黎明の雨はらはらと蓮の花」。明け方に雨が降り、蓮の池からパラパラと葉を打つ音がした。蓮を見ると花が咲いていた。花を見に来いと蓮が伝えてくれたのだろう。泥中の蓮の奥深い魅力ではある。

⇒18日(金)夜・金沢の天気  はれ

★参院選投票まで3日 自公過半数は困難か、尾を引く鶴保失言

★参院選投票まで3日 自公過半数は困難か、尾を引く鶴保失言

参院選の投票日まで3日となった。終盤に入り、メディア各社は選挙情勢を伝えている。読売新聞(16日付)は「自公 過半数難しく 立民堅調、国民大幅増 参政は躍進」の見出し。朝日新聞(14日付・Web版)は「自公、参院過半数は困難か 自民は比例区でも苦戦」、毎日新聞(同)は「自公過半数、深まる苦戦 1人区厳しさ増す」と伝えている。

また、日経新聞(16日付)は「自公大幅減、過半数は微妙 国民民主・参政が躍進 立民横ばい」、共同通信の調査はローカル各紙(15日付)で「自公苦戦 過半数は微妙 国民大幅増の公算大」と報じている。各紙の記事を読むと、政権与党の自公は苦戦している。

そして、地元・石川選挙区(定数1)の記事を読むと、朝日・毎日・読売の評価が分かれている。序盤は3紙とも「自民優勢」だったが、終盤になって、朝日と毎日は「互角の激戦」「接戦」に変更、読売は「自民優勢」を継続している。朝日・毎日はその変更の理由について、自民党の参院予算委員長だった鶴保庸介氏が今月8日に和歌山市での応援演説で、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことの影響が尾を引いていると分析している。毎日は「投票先を決めていない人が3割以上おり、情勢が流動化することもある」と述べている。一方、読売は「(自民候補が)先行したまま終盤に突入した」と述べているが、「(自民)陣営は、自民参院議員による『運のいいことに能登で地震があった』という発言の影響を懸念する」と書き添えている。

いずれにしても石川選挙区では鶴保氏の失言が投票行動にどのような影響を与えるのか見どころではある。何しろ失言の余波は広がっていて、きのう(16日)石川県の8つの町議会の議長でつくる「県町村議会議長会」の会長が自民党本部を訪れ、森山幹事長宛の抗議文を届けている。本来ならば、鶴保氏本人が能登に来て、失言の謝罪をすべきではないのか。ケジメをつけないと、この騒動は治まらない。

時事通信の7月の世論調査(11-14日実施)によると、石破内閣の支持率は前月比6.2ポイント減の20.8%で、去年10月の発足以降の最低を更新した。不支持率は同6.6ポイント増の55.0%と最高だった。政党支持率は、自民党が前月比2.5ポイント減の16.4%、立憲民主党が同1.1ポイント増の5.5%で、参政党が同2.2ポイント増の4.7%で3位に上昇した(17日付・時事通信Web版)。石破内閣はまさに「危険水域」ではないのか。支持率は落ち始めると急降下する。それが世論調査の怖さだ。

⇒17日(木)夕・金沢の天気  くもり時々あめ

☆能登ゆかりの地にトキが舞う 来年6月の放鳥場所決まる 

☆能登ゆかりの地にトキが舞う 来年6月の放鳥場所決まる 

トキが能登に帰って来る。環境省が来年6月に予定している、国の特別天然記念物トキの放鳥場所が決まった。本州で初となる放鳥の場所は、能登半島の中ほどにある邑知潟(おうちがた)周辺=羽咋市南潟地区=。石川県や能登4市5町などで構成する「能登地域トキ放鳥受入推進協議会」では2022年に9市町によるそれぞれの「トキ放鳥推進モデル地区」を設定し、トキが生息しやすい減農薬の水田など環境づくりに取り組んできた。環境省の専門家による調査などを経て、きょう開かれた協議会で県が提案し、邑知潟周辺を放鳥場所と決めた。

選ばれた理由は大きく二つあるようだ。一つは、邑知潟を中心に羽咋市南潟地区には2㌔圏内の水田面積が1185㌶あり、放鳥が予定される15羽から20羽のエサ場としても十分な広さ。もう一つが、地形が佐渡の地形とよく似た場所だ。潟と平野を挟むように眉丈山系と石動山系があり、トキがねぐらをつくる場所として適している。また、新潟県の佐渡から飛来したとみられるトキの姿が2011年以降たびたび目撃されていて、2013年には5ヵ月間ほど住み続けたことなども評価された(16日付・NHKニュースWeb版)。

かつて能登はトキの生息地だった。眉丈山では1961年に5羽のトキが確認されている。ところが、田んぼでついばむドジョウやカエルなどのエサは農薬にまみれていた。能登のトキは徐々に減り、「本州で最後の一羽」と呼ばれたトキが1970年に捕獲され、新潟県佐渡の環境省トキ保護センターに繁殖のために送られた。ところが、翌年1971年3月、鳥かごのケージの金網で口ばしを損傷したことが原因で死んでしまう。(※写真・上は、輪島市三井町洲衛の空を舞うトキ=1957年、岩田秀男氏撮影)

こうしたいきさつもあり、石川県と能登9市町は環境省による本州でのトキ放鳥を熱心に働きかけてきた。国連が定める「国際生物多様性の日」である5月22日を「いしかわトキの日」と独自に定め、県民のモチベーションを盛り上げてきた。冒頭の能登9市町による「トキ放鳥推進モデル地区」も独自の取り組みとして設けたものだ。一連の動きが環境省で評価され、来年の能登での放鳥につながっている。(※写真・下は、羽咋市南潟地区の邑知潟と水田。左の山並はかつてトキが生息していた眉丈山)

トキのゆかりの地でもある眉丈山と邑知潟に再びトキが舞う日がやってくる。能登半島地震の災害からの復興のために石川県が策定した『創造的復興リーディングプロジェクト』の13の取り組みの中に、「トキが舞う能登の実現」が盛り込まれている。トキが舞う能登を震災復興のシンボルとしたい。その思いが動き出す。

⇒16日(水)午後・金沢の天気  はれ

★参院選は終盤へ 石川の5候補、能登地震復興への想いとは

★参院選は終盤へ 石川の5候補、能登地震復興への想いとは

参院選も後半戦に入ったが、それにしても静かな選挙選だ。「お願いします、お願いします」と連呼する選挙カーが金沢の自宅近くをたまに通る程度。石川選挙区(定数1)は全県が選挙区なので、金沢や能登、加賀を巡るのに時間がかかるのだろうか。ただ、後半から終盤にかけて金沢に集中してくるので、1議席をめぐる戦いはこれから激しくなるのかもしれない。

今回の選挙で自身が注目するのは、去年元日の能登半島地震の復旧・復興にそれぞれの候補者がどう向き合い、何を訴えているか、だ。そこで、候補者の公約や地元メディアでのインタビュー記事などから拾ってまとめてみた。以下、5人の候補を届け出順に。                    

◇共産党・村田茂候補(62):医療費と介護費の免除はことし6月まで延長されたが、さらに少なくとも9月まで延長させる。住宅再建で家を建てるには300万円の支給だが、少なくとも600万円に引き上げるべき。仕事の問題と住宅の問題は急を要している

◇自民党・宮本周司候補(54):まずは社会のインフラ整備。生活の再建と同様になりわい再建にまだ判断を迷っている多くの事業者がいる。復旧によって再生される街の雰囲気や街並みを具体的なイメージで語り合い、復興の姿を具現化し共有することが先決だ

◇国民民主党・濱辺健太候補(31):復興には仕事と教育環境を整える政策が必要だ。能登には空港があるので発着便を増やし、周囲を整備することで企業誘致や新しい産業を生み出す環境づくりを進める。そのための資金的な支援は国が後押しする

 ◇NHK党・小澤正人候補(49):コアとなる市の中心部を目に見えるカタチで復旧する。そうしたシンボル的なところが目に見えると、人々には安心感が生まれる。インフラ整備も急ぐ必要があり、各市町を結ぶ幹線道路が傷んでいるので復旧を加速させる

◇参政党・牧野緑候補(40):子育て世代が安心して暮らせる環境を整える。そのためには自給力が必要で、国として畑付きの住宅を整備したり、農業や漁業の人材を育成する学校をつくる。若者世代にもこうした学びを通して復興に参画してもらう仕組みを創る

能登の復旧・復興について、それぞれが考えを具体的に述べているので、実に分かりやすい。とくに、復興のシンボルづくりには共感する。ふと思ったことだが、ならば能登の復興をテーマに5人でパネル討論を開いて、互いに考えを深めてはどうだろうか。思いつきを述べたにすぎない。

⇒15日(火)午後・金沢の天気  はれ

☆能登地震で海底の地形変化か、舳倉島周辺のアワビが激減

☆能登地震で海底の地形変化か、舳倉島周辺のアワビが激減

前回ブログの続き。輪島の海女が2年ぶりにアワビやサザエの漁を始めた。ウエットスーツ、水中眼鏡、足ひれを着用して素潜り。輪島市や、49㌔沖合の舳倉島=写真・上=を拠点に170人ほどの海女たちがいる。

舳倉島は古くからアワビが採れる島として知られる。万葉の歌人・大伴家持が越中国司として748年、能登を巡行している。島に渡ってはいないが、輪島で詠んだ歌がある。『沖つ島 い行き渡りて潜くちふ あわび珠もが包みて遣やらむ』。沖にある舳倉島に渡って潜り、アワビの真珠を都の妻に送ってやりたい、との意味のようだ。この和歌から分かることは、少なくとも1277年前の昔からこの島ではアワビが採取され、いまでも連綿と続いているということだ。

アワビ漁を守り続けるため、海女たちは自主的に厳しいルールをつくっている。素潜りを原則として、決してアクアラングなど呼吸器具を装着しない。アワビの貝殻の大きさ10㌢以下のものは採らない。漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月。海に潜る時間は午前9時から午後1時までの4時間と制限している。さらに、休漁日は一斉に休む。こうしたルールを互いに守ることで、持続的なアワビ採りの恩恵にあずかっている。まさにSDGsの手本とも言える。

ところで、きのう採れたサザエやアワビはきょう金沢の近江町市場に並ぶと聞いていたので市場に行ってきた。水産物店の店先にサザエ=写真・中=が並んでいたので、店主に「どこのサザエですか」と尋ねると、「輪島の海女採り」と即答で返ってきた。大きいサイズのものは1個200円、中小型のものは5個で600円の値段だ。

それにしてもアワビ=写真・下=が見当たらない。そこで、「アワビはないの」と尋ねると、「去年の地震の影響でいまほとんど採れていない。値段も2万円と地震の前の倍になっている」とのこと。確かにきのう輪島漁港の荷捌き場をのぞいた時もアワビは数えるくらいしかなかった。アワビはこれまで浜値で1㌔1万円が相場だったが、それが一気に2万円とは。アワビは海底の岩場にへばりくつように生息している。それが、地震による海底の隆起で地形が変化したため、アワビの生息場所も変化した。その場所を把握できていないため採取する量が減ったということもあるようだ。

どの水産物店にもアワビが見当たらない。先の店主に再度聞いた。「では、アワビはどこに流れた」。すると、「ほとんど東京だろうね」と。値段の高騰で金沢ではさばき切れないと判断した仲介業者が東京市場に流しているようだ。2年ぶりのアワビ漁、はやく「金沢市民の台所」近江町市場に戻ってほしいものだ。

⇒14日(月)午後・金沢の天気   はれ

★にぎわう能登の海辺 水上バイク全国大会、2年ぶりの海女漁

★にぎわう能登の海辺 水上バイク全国大会、2年ぶりの海女漁

きょう能登半島の千里浜(ちりはま)海岸へ海の景色を見に行く。この海岸の面白さは、全長8㌔のうち6㌔で車での走行が可能だ。「千里浜なぎさドライブウェイ」と称されている。波打ち際を乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所あり、アメリカ・フロリダ半島のデイトナビーチ、ニュージーランド・北島のワイタレレビーチ、そして千里浜海岸だ。

到着すると、大変な混雑に見舞われていた。そして、沖合では何台もの水上バイクが波しぶきを上げて走行している=写真・上=。掲げられている横断幕を見ると、「JJSA 全日本選手権 4th Stage 」とある。水上バイクの全国大会「オールジャパンジェットスポーツシリーズ」=写真・中=。大会の様子を見に来ていた地元の人に尋ねると、千里浜大会はきのうから始まっていて、全国5ヵ所で行われるシリーズ戦のうち第4戦目で、年間チャンピオンを決める重要な一戦のようだ。全国から集まった160人の選手が水上で熱いレースを繰り広げていた。

さらに半島を北上して輪島漁港に行く。このブログでは何度か取り上げた海女のアワビとサザエの漁が始まったので、その様子を見に行った。海女たちは魚介類や海藻を専門とするプロの漁業者だ。アワビやサザエのほか25種類も採取している。アワビは貝殻つきで浜値で1㌔1万円ほどする。よく働き、よく稼ぐ。新聞記者時代に取材に訪れたとき、「亭主の一人や二人養えんようでは一人前の海女ではない」という言葉を何度か聞いた。自活する気概のある女性たちの自信にあふれた言葉だった。「輪島の海女漁の技術」は国の重要無形民俗文化財に指定されている(2018年)。

午後1時半ごろ、輪島漁港に海女の乗った漁船が次々に到着して、アワビやサザエを荷捌き場に次々と降ろしていた=写真・下=。1つの船に6人から8人の海女が同乗して、輪島港から49㌔離れた舳倉島周辺で素潜り漁を行っている。去年は元日の能登半島地震の影響で漁を控えたので2年ぶり。港では海女たちの明るい声が弾んでいた。漁は9月まで行われる。

⇒13日(日)夜・金沢の天気   はれ

☆金沢は「新盆」入り、「札キリコ」を吊るす墓参の風景

☆金沢は「新盆」入り、「札キリコ」を吊るす墓参の風景

金沢ではきょうから新盆に入った。15日ごろにかけて墓参が行われる。金沢の墓参りには特徴があって、盆花を供えて札キリコを吊るす。札キリコは親戚や恩人が入る墓に持参するもので、墓前に設置してある棒や紐に吊るす=写真=。この板キリコの表面には、浄土真宗の家の墓ならば「南無阿弥陀仏」、曹洞宗ならば「南無釈迦牟尼仏」と書いて、裏面の「進上」には墓参した人の名前を記す。この札キリコによって、その墓の持ち主は誰が墓参に来てくれたのかということが分かる仕組みになっている。いわゆる墓参者の名刺代わりのようなものだ。

自身も4日前に墓掃除を行い、きょう午前中に墓参りを済ませた。それにしても、同じ石川県で新盆は金沢だけの慣習のようだ。細長い石川県の北側の能登、そして南側の加賀は旧盆の8月15日ごろに墓参りを行い、金沢だけが7月15日ごろの新盆の墓参りだ。ネットで検索すると、新盆は東京、函館、そして金沢などわずかな地域で、ほかは旧盆が主流のようだ。

では、なぜバラバラなんだろ。これもネットでの検索調べだが、それは旧暦と新暦の違いに由来するようだ。明治6年(1873)まで、日本では旧暦が使われており、旧暦の上でのお盆は7月15日だった。新暦に切り替わると、旧暦の7月15日を新暦にそのまま当てはめ、この日を「新盆」とするようになった。しかし、7月15日をお盆の日にすることでこれまでの季節感が異なることなどから、ちょうど1ヵ月遅らせることで本来のお盆に近い日にち、8月15日をお盆の日とすることが一般的になった。旧暦に倣おうということで、この日を「旧盆」と呼ぶようになったようだ(※金沢の「丸果石川中央青果」公式サイトから引用)。

話は逸れる。きょうお参りをした墓地の一角にトラ縄が張られていた。墓石のいくつかが倒れ掛かっている。去年元日の能登半島地震で金沢市寺町台のこの辺りの揺れは震度5弱だった。墓石のほかに、灯ろうや石垣が崩れている寺院や神社などもある。金沢城の石垣の修復もまだ半ばのようだ。震災から2度目の新盆を迎えた金沢の現状ではある。

⇒12日(土)夜・金沢の天気   はれ

★政治家の言葉に危うさ 言葉の独り歩きが予期せぬことに 

★政治家の言葉に危うさ 言葉の独り歩きが予期せぬことに 

自民党の参院予算委員長の鶴保庸介氏が今月8日に行った和歌山市での参院選の応援演説で、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことが問題となった=写真=。地元メディアの報道によると、この発言に対し、能登の4つの市町(輪島、珠洲、穴水、能登)の議会は10日、鶴保氏に抗議文を送ることを決めた。これとは別に輪島、珠洲の両市議会では個別の抗議文も送り、被災地の怒りを伝える(11日付・北國新聞)。

鶴保発言の騒動で目立たなかったが、石破総理は翌日9日に千葉県船橋市での街頭演説で、アメリカのトランプ政権との関税交渉について触れ、「これは国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない。守るべきものは守る」と強調した(9日付・共同通信Web版)。「なめられてたまるか」は、トランプ大統領が8日、日本からの輸入品について8月1日から25%の関税を課すとする書簡を公表したことを受けての発言だった。英訳すれば、「Don‘t underestimate Japan」だろうか。ただ、この言葉はトランプ大統領との直接交渉の場で発する言葉であって、板橋市民の前で叫ぶ言葉なのだろうか。

政治家の言葉に危うさを感じる。歴史的に有名な言葉は「ばかやろう」だ。1953年(昭和28年)2月、衆院予算委員会で当時の吉田茂総理と社会党の議員は激しい質疑応答を繰り返していた。吉田総理が自席に戻り、「ばかやろう」とつぶやいたのを偶然マイクが拾い、気づいた相手議員が「議員をつかまえて、国民の代表をつかまえて、ばかやろうとは何事だ。取り消せ」と迫った。これがきっかけで国会はさらに混乱し、3月14日に衆院解散となった。後に「ばかやろう解散」と称された。

政治家の言葉の危うさは、言葉が独り歩きをしてどのように展開していくのか読めないことの危うさでもある。石破総理の「なめられてたまるか」をトランプ大統領はどのように解釈するだろうか。そもそもトランプ氏は「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と繰り返し述べ、日米安全保障条約に不満をにじませている。トランプ氏が「Don‘t underestimate America」と言い出すかもしれない。

⇒11日(金)午前・金沢の天気  はれ

☆二地域居住めぐり「運よく能登地震」発言、政治家として許されるのか

☆二地域居住めぐり「運よく能登地震」発言、政治家として許されるのか

自民党の参院予算委員長の鶴保庸介氏がきのう(8日)、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことが物議を醸している。

メディア各社の報道によると、鶴保氏は参院選和歌山選挙区の公認候補の個人演説会が和歌山市であり、応援演説を行った。その中で、地方から都市部への人口流出に対して危機感を持っていると語り、その解決策として、地方と都市部の両方を行き来する『2地域居住』を推進すれば地方の関係人口の創出につながると主張。その事例として、能登半島地震の被災者が居住する自治体以外でも住民票の写しを取得できるようになったことに触れ、「運のいいことに能登で地震があった。緊急避難的だが金沢にいても輪島の住民票がとれるようになっていて、『やればできるじゃないか』と思った」などと発言した。(※写真は、能登半島地震で火災が発生し、焦土と化した輪島市の朝市通り=2024年2月5日撮影)

この発言について、鶴保氏がきょう和歌山市内で会見を行い、「能登地方が被災したことを『運よく』などと発言してしまったが、思った発言ではまったくなく、失言だった。ことば足らずで被災地への配慮が足りなかった。心苦しい思いをさせてしまったのなら陳謝しかない」と述べ、発言を撤回した。また、辞職や離党の考えについて問われたのに対し「私が責任を取ることで皆さんの気持ちがおさまるならやぶさかではないが、現状ではそこまでは考えていない」と述べた(9日付・NHKニュースWeb版)。

鶴保氏は自民党の「二地域居住推進議員連盟」の会長を務める。二地域居住の促進を図るための法律(広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律)が2024年5月に国会で成立。具体的な背策として、地方に魅力的な学びの場づくりや、「稼げる」地方経済の実現に向けた農林水産業の振興など、地方創生を実現する切り札として注目が集まっている。

そんな最中の「運のいいことに能登で地震があった」発言。二地域居住に注目が集まっているときだけに、この動きに冷や水を浴びせた。能登に立ち寄り、失言の詫びを態度で示した方がよいのではないか。

⇒9日(水)夜・金沢の天気  はれ

★能登半島地震の仮設住宅団地をめぐる「期日前投票バス」のこと

★能登半島地震の仮設住宅団地をめぐる「期日前投票バス」のこと

きょう気象庁と環境省から石川県に「熱中症警戒アラート」が発表された。今月4日以来2度目。「梅雨明け宣言」もないまま、熱中症警戒アラートだけが先行している。日中の最高気温は金沢市で33度、輪島市で31度と平年を5度前後上回る厳しい暑さだった。

この暑さの中、参院選の有権者は期日前投票に足を運んでいる。去年元日の能登半島地震で仮設住宅が点在する志賀町富来では、バスを使った移動式の投票所が初めて導入されたと地元メディアで報道されていたので、きょう現地へ見に行ってきた。

志賀町では北鉄能登バス(七尾市)の路線バス車両を借りて、バスの車両中央部に投票用紙の記載場所と投票箱を備え、立会人は後方の座席から見守るという配置にしている。午前11時ごろに現地に着くと、仮設住宅「とぎ第4団地」(76世帯)のすぐ近くにバスが停まっていた。有権者が次々と訪れ、バスの入り口で受付を済ませ、バスに乗り込んで投票していた=写真=。同町選管の「移動期日前投票所のお知らせ」のポスターによると、きょうはこの後、13時からと15時から2ヵ所の仮設住宅団地を回る。あさって10日も3ヵ所を予定している。

バスの期日前投票所はきのう(7日)から始まっていて、近くに投票所がない8つの仮設住宅団地を中心に回るほか、若者に投票を呼びかけるために地元の公立高校でもお昼の時間にバスが停まった。バスの滞在は1時間から1時間30分と限られているものの、「動く投票場」は注目されたに違いない。

能登では志賀町のほか、珠洲市でもきのうからバスの期日前投票所が12ヵ所で開設されている。去年10月の衆院選では、近くに投票所がない仮設住宅団地が多いことや、車を持っていない高齢者が団地に多くいることなどが浮き彫りとなったため、今回参院選で「期日前投票バス」の導入に踏み込んだようだ。さらに行政側には投票率の向上につなげたいとの思いもあるのだろう。震災と選挙を考えるよい事例の一つかもしれない。

⇒8日(火)夜・金沢の天気   くもり後あめ