★能登「記録的な大雨」から1年 国の名勝・時国家庭園を修復へ

★能登「記録的な大雨」から1年 国の名勝・時国家庭園を修復へ

能登半島の北部で降ったあの「記録的な大雨」から間もなく1年になる。2024年9月20日から22日にかけて線状降水帯が発生し、輪島市では22日午後10時までの48時間雨量が498.5㍉に達する豪雨となった。このため、土砂崩れによる道路の寸断が各地で起き、輪島市を中心に山間地の集落115ヵ所が孤立した。さらに、裏山でがけ崩れが起きて民家が倒壊。また、大量の流木が増水した川に流れて市内の橋にひっかり、土砂ダム状態になった。家屋倒壊や濁流に巻き込まれるなど合わせて17人が亡くなった(関連死1人含む)。

記録的な大雨で文化財も被災した。輪島市町野町にある国の重要文化財である「時国家住宅」。日本史の教科書にも出てくる、平氏と源氏が一戦を交えた壇ノ浦の戦い(1185年)で平家が敗れ、平時忠が能登に流刑となった。その時忠の子孫が時国家とされる。2軒ある時国家のうち、山のふもとにある「時国家」は主屋が1963年に国重要要文化財に、庭園が2001年に国名勝に指定。また、丘の上にある「上時国家」は主屋が2003年に国重要要文化財に、庭園が2001年に国名勝に指定されている。両家の主屋はともに茅葺民家で、能登の厳しい気候風土に耐えながら紡いできた800年余りの歴史の風格を伝えてきた。

両家ともに去年元日の能登半島地震では最大震度7の揺れ、そして9月の豪雨では裏山が崩れ、主屋と庭園それぞれ被害を被った。地元メディアの報道によると、そのうち主屋の倒壊を免れた時国家では庭園の復旧作業が始まったとの報道があり、現地を訪ねた。復旧に取り組んでいるのは、庭園の保存継承を担う「文化財庭園保存技術者協議会」(事務局・京都市)。9月の豪雨では裏山が崩れ、大量の土砂が庭園全域を高さ1㍍から1.5㍍にわたって覆った。輪島市役所では今春から災害復旧事業の一環として庭園の土砂を撤去する作業を行い、今月初めまでに完了。引き続き、今月17日から文化財庭園保存技術者協議会が復旧作業に着手した(18日付・北陸中日新聞)。

庭園は「池泉回遊式」と称される書院庭園で、中心に池を配置し、園内を歩きながら楽しむ庭として造られている。作業初日の17日には全国から庭師のプロ24人が集まり、被災前に作成された図面を基に、流された飛び石を置き直したり、崩れた池の護岸の修復が行われた。11日間にわたり作業が続く(同)。震災と豪雨に見舞われた文化財の復興のシンボルになることに期待したい。(※写真は、時国家住宅にクレーンが持ち込まれ、石の置き直しなど庭園の修復作業が行われている=18日午後撮影)

⇒19日(金)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

☆「落とされ」「利下げ」「陥没」 ニュース・ピックアップ

☆「落とされ」「利下げ」「陥没」 ニュース・ピックアップ

きょうネットや新聞でニュースをチェックすると、妙に「落とす」「下げる」という言葉が目に止まった。石川県の郷土力士である横綱・大の里は秋場所4日目(17日)で平幕の伯桜鵬に土俵際で突き落とされ、初黒星を喫した。相手を土俵際まで追い詰めながら、勝ち急いだのだろうか。伯桜鵬には2場所続けて金星を許したことになる。大の里にとって4日目は「鬼門」のようで、大関に昇進した昨年の九州場所以降の6場所で4日目は1勝5敗となった。きょう5日目(18日)は王鵬と対戦し、突き落としで4勝目を上げている。

次は経済。アメリカ連邦準備理事会(FRB)は17日開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で9ヵ月ぶりに政策金利を0.25%引き下げた。参加者による政策金利の見通し(中央値)によると、年内残り2回の会合で計2回の追加利下げを見込む。前回(6月)よりも利下げのペースが上がった。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.0〜4.25%になった。

FRBの記者会見でパウエル議長は「(労働市場が)とても堅調だとはもはや言えない」と述べた。企業による雇用の勢いが弱まって失業率が上昇する懸念が強まったため、金融引き締めを緩める必要性が高まった。ただ、物価上昇率はFRBの目標水準を上回り続けており、引き締めの必要がなくなったわけではない。パウエル氏は「(雇用と物価という)両面のリスクを抱えた状況にあり、リスクのない道筋は存在しない」と説明し、今回の決定を「リスクを管理するための利下げ」と総括した(18日付・日経新聞Web版)。アメリカの利下げが日本経済にどう波及していくのか。

次は生活面。ことし1月に埼玉県八潮市で下水道管の損傷による道路陥没事故が問題となった。これを受けて、各自治体が古くて大きな下水道管を調査したところ、41都道府県の計297㌔で道路陥没につながる恐れがある腐食や損傷が進んでいることが分かった。このうち、1年以内の対応が必要となる「緊急度1」は72㌔で、石川県内では金沢市が4㍍、小松市で17㍍で見つかった。また、5年以内の対策が必要となる「緊急度2」は225㌔に及び、金沢市では8㍍あることが分かった(地元メディア各社の報道)。「落とされ」「利下げ」「陥没」。ネットと新聞を読んでいて、なんだか妙な気持ちではある。 

⇒18日(木)夜・金沢の天気   くもり

★金沢の名所「W坂」のシンボル「ケヤキの大木」倒れる

★金沢の名所「W坂」のシンボル「ケヤキの大木」倒れる

金沢という街にはいろいろ名所がある。兼六園や武家屋敷、忍者寺といった観光スポットのほかに、そこに住んでいる人しか知らない名所もある。その一つが「W坂」。「だぶるざか」と呼ばれているが、これは通称で、標識では「石伐坂(いしきりざか)」となっている。なぜ、W坂と呼ばれるようになったかというと、金沢出身の詩人で小説家の室生犀星が「美しき川は流れたり」と讃えた犀川に架かる桜橋の詰から寺町台へ上がる階段坂がある。この坂がジグザグ状になっていることから、W坂と呼ばれるようになった。

自身もかつて寺町台に住んでいたのでW坂を何度も上り下りしたことがある。石垣沿いの階段は60段ほどだが、傾斜は急だ。芥川賞作家の井上靖(1907-1991)がかつて旧制四高(金沢大学の前身)に通っていたころにW坂を上り下りした体験を小説『北の海』に記している。「腹がへると、何とも言えずきゅうと胃にこたえて来る坂ですよ」、「この辺で足が上がらなくなる」。この一節はW坂の途中にある井上靖の文学碑で紹介されている。そして、このW坂には地元の知る人ぞ知る言い伝えもある。「人とすれ違っても、決して振り向いてはいけない」と。振り向くとすれ違ったはずの人の人影が見えなくなる。そう、いまで言う「心霊スポット」でもあるのだ。

前置きが長くなった。このW坂のシンボルの一つは石垣から飛び出すように生えていたケヤキの大木だ。地元メディア「北國新聞」(17日付)によると、幹回り最大約1㍍、高さ15㍍のこの大木が15日午前0時40分ごろに倒れた。根元が腐敗していたようだ。けさ現地に行って見てみると、すでに倒木の片づけは済んでいた。ただ、根元を伐採した跡が残っていて、痛々しい光景のように思えた。(※写真・上の左側がケヤキの大木=2015年9月撮影。写真・下は倒れたケヤキの木の根元=17日午前7時撮影)

このケヤキの大木の下をくぐり街中に行く。そして、帰りもこの大木の下をくぐり寺町台に戻る。ケヤキの下から眺める街中も絶景だった。樹齢は200年近かったのではないだろうか。根元を眺めながら、この大木に感謝したい気持ちになった。

⇒17日(水)午前・金沢の天気   はれ

☆スーパーに「ガイマイ」並ぶ 高騰するコメ価格への波及効果は

☆スーパーに「ガイマイ」並ぶ 高騰するコメ価格への波及効果は

金沢の自宅近くのスーパーでは「外米(ガイマイ)」が並ぶようになった。もう60年も前の話だが、小学生のころに遊び仲間と「ガイマイなんか食えるか」と言っていたことを思い出す。炊き上げがパサパサしていて粘りの少ないまずいご飯のことをガイマイと称していた。この言葉を覚えたきっかけは、学校給食が始まるころで、親たちは学校で集会を開き、「ガイマイを子どもたちに食わせるな」「内地米(ナイチマイ)を食べさせろ」と訴えていたのを覚えている。

その後、再びガイマイという言葉を聞いたのはそれから5、6年経ったころだった。能登から出て金沢の高校に通うようになった。下宿先の近くにラーメンのチェーン店ができた。高校の仲間と行き、このとき初めてチャーハンを食べた。仲間は「ガイマイのチャーハンは美味い」と称賛していた。自身もなるほど思い、このときからガイマイのイメージがプラスに転じた。それぞれの料理によって使うコメが変わり、チャーハンのほかにピラフやリゾットならばガイマイに限る。食の多様化とともにガイマイの裾野も広がっている。

ただ、冒頭述べたス-パーでのガイマイの販売は食の多様性というよりむしろ高騰するコメの価格が背景にあるようだ。売り場に並んでいたのはアメリカ・カリフォルニア産の「カルローズ米」。5㌔袋が税込みで3867円となっている=写真=。備蓄米より少々安価だ。政府は「MA(ミニマムアクセス)」と呼ばれる仕組みで、毎年およそ77万㌧のコメを関税をかけず義務的に輸入していて、このうち10万㌧を主食用として民間に入札で販売している。落札されたコメは、例年より3ヵ月早く、今月11日から卸売業者への引き渡しが始まっている。カルローズ米はこのMAで輸入されたもの。つまり、政府は国産米の新米の時季を見計らったタイミングでカリフォルニア米を市場に投入したのだろう。

NHKニュース(16日付)によると、1㌔当たり341円の高い関税が課される民間のコメの輸入も急増していて、財務省の貿易統計によると、ことし7月の輸入量は2万6000㌧余りで、去年の同じ月のおよそ200倍になっているという。国産米の新米の価格が高値となる中、割安なガイマイ(外国産米)が市場に出ることで、今後のコメの価格はどうなっていくのか。価格の高騰は抑えられるのか。

⇒16日(火)午後・金沢の天気  はれ

★輪島・千枚田に実りの秋 トキ舞う棚田へ農法転換

★輪島・千枚田に実りの秋 トキ舞う棚田へ農法転換

おととい(13日)午後に能登半島の尖端、珠洲市寺家のキリコ祭りを見学して、当日夕方に輪島市の白米(しらよね)千枚田を訪れた。この日に全国のボランティアが参加する稲刈りが始まると輪島市観光課の公式サイトにあったので、日本海の夕日と千枚田の稲刈りという光景を見ることができるかもしれないとイメージを抱いていた。現地に到着すると稲は実っていて、まさに棚田は黄金の輝きを放っていた=写真=。ところが、稲刈りが行われた様子がない。

あらためて、輪島市観光課サイトをチェックすると、「13日と14日」の予定が大雨などの天候不順が予想されるため中止し、「15日から21日」と変更されていた。確かに、金沢地方気象台は輪島市に断続的に大雨警報を出していて、千枚田の稲刈りの日程もこれまでのように2日間と特定せず、「15日から21日」と幅を持たせたのだろう。

日本海を望む千枚田は4㌶の斜面に大小1004枚の棚田が広がる。2024年元日の能半島登地震では、棚田に無数の亀裂が入るなどの被害が出た。地元住民らでつくる「白米千枚田愛耕会」のメンバーが中心となって修復を進めていて、去年は120枚の田んぼを耕し、ことしは250枚で田植えを行った。そして実りの秋を迎えた。

千枚田にとってことしは大きな転機となった。2001年に文化庁の「国指定文化財名勝」に指定され、2011年に国連食糧農業機関(FAO)から認定された世界農業遺産「能登の里山里海」のシンボル的な存在だ。白米千枚田愛耕会はことしから農法を除草剤などの農薬を使わない無農薬栽培に切り替えた。これは来年6月に環境省が能登でトキを放鳥することを意識し、千枚田にトキのエサとなるドジョウやメダカなどが繁殖する田んぼづくりくりに転換したのだ。除草剤などの農薬を使わないとなると草取りなどに手間ひまがかかるのは言うまでもない。コメの収穫量も減るだろう。

それでもトキが訪れる棚田に。このため白米千枚田愛耕会では、耕作の担い手を育てるために近くの空き家にボランティアらが常駐する滞在拠点をつくる構想も進めているようだ(15日付・地元メディア「北國新聞」)。また、コメの収穫量が減ることになったとしても、千枚田の無農薬米が市場に出回れば、「千枚田のトキ米」として一気にブランド化するのではないだろうか。地震や豪雨にめげず、耕す人びとのモチベーションが上がっているに違いない。千枚田の実りを眺めながら、そんなことを感じた。

⇒15日(月)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

☆能登半島の尖端に日本最大の祭りキリコと義経伝説

☆能登半島の尖端に日本最大の祭りキリコと義経伝説

金沢地方気象台はきのう輪島市に出していた大雨警報をきょう午前5時すぎに解除した。ところが、午後6時30分に再び大雨警報を出した。あす14日にかけて大気の状態が非常に不安定となる見込みで、1時間に50㍉の非常に激しい雨が降るおそれがある。まさに目まぐるしく天候が変わる。繰り返される激しい雨に輪島市民は警戒しているだろう。去年9月、輪島市を中心に48時間で498㍉という「記録的な大雨」が降り、土砂崩れによる家屋倒壊などで17人が亡くなっている(関連死1人含む)。あれから1年だ。

輪島市と隣接する珠洲市は能登半島の尖端に位置する。同市三崎町の寺家地区では毎年9月の第2土曜日に、神輿とともに4つの集落がキリコを出して商売繁盛や子孫繁栄を祈る「寺家キリコ祭り」が開催される。きょうその祭りを見学に行ってきた。

社(やしろ)の須須(すず)神社で4基のキリコが並び、実に壮観な光景だった=写真=。寺家のキリコは「日本最大のキリコ」で知られる。高さ16.5㍍、重さは4㌧、屋根の大きさは畳12分もある。大きさに加え、黒漆塗りで金箔と彫物で装飾された豪華さが目立つ。夜通し町内を巡行する。去年は能登半島地震や津波の影響で巡行は見送られたので、2年ぶりとなる。大きさのほかに目立つのは担ぎ手。地元で「ドテラ」と呼ばれる派手な衣装を身に着け、独特の雰囲気を醸し出している。もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツとされ、花鳥風月の柄が入っている。

ヤッサーヤッサーと掛け声で息を合せてキリコが海岸沿いの道路をゆっくりと練る。何しろ高さ16㍍のキリコは5階建てのビルに匹敵する高さだ。ふと見ると地域の人が海に向かって手を合せていた。話を聴くと、須須神社はイルカを祭神の使いとして祀る。同神社前の海にイルカが現れると地元では「三崎詣(まり)り」と呼んで、その姿に合掌する習わしがあるそうだ。

また、この神社は国指定重要文化財の「木造男神像」や、この地を訪れた源義経が海難を免れたお礼にと奉納した「蝉折の笛」や「弁慶の守刀」が収められていることで知られる由緒ある社だ。キリコのスケール感と、能登の尖端に秘められた伝説に圧倒された想いだった。

⇒13日(土)夜・金沢の天気   あめ

★店頭に「能登ひかり」 震災・豪雨にめげず耕し続ける農家の想い

★店頭に「能登ひかり」 震災・豪雨にめげず耕し続ける農家の想い

金沢のスーパーのコメ売り場には新米がずらりと並んでいる。石川県産のコシヒカリ「一粒のきらめき」は5㌔税込み5379円だ。去年、新米を買ったときは同2312円だったので、今では倍以上の値段になっている。そこで、少しだけ割安な「能登ひかり」を買うことにした。それでも5㌔税込み5163円だ=写真=。

能登ひかりは能登地域の標高が50㍍以上ある山あいで生産され、「能登はやさしや土までも」と唄われる能登の大地と気候風土で育ったブランド米でもある。早生品種で、8月下旬から9月中旬に収穫される。もともとコシヒカリの系統の能登ひかりは、米粒が大きく、粒の腹が白いのが特徴とされる。味はコシヒカリと似ていて、噛むほどに旨味が広がる。

能登ひかりにはちょっとしたドラマがある。一昔前まで能登の気候に合う品種ということで生産されていたが、モチモチ感のあるコシヒカリに押されて生産する農家は少なくなっていた。それを見直したのが、京都や大阪といった関西の寿司屋だった。「ベタベタとした粘りがない分、握りやすく、食べたときにも口中でパラッとバラけるので、寿司によいのだという」(講談社新書『日本一おいしい米の秘密』)。さらに、このバラける食感がスープ料理にも合うということで、金沢市内のレストランなでども使われるようになった。

奥能登では去年元日の能登半島地震で被災した農地が徐々に回復しているものの、同年9月の奥能登豪雨の被害を受けた水田も多い。ことしの作付面積は昨年同様に、震災前の6割程度にとどまっていることろが多いようだ。それだけに、能登ひかりのコメ一粒一粒に農家の想いが込められているに違いない。まさに「能登はやさしやコメまでも」だ。

⇒12日(金)夕・金沢の天気  あめ

☆「覆面のパロディ画家」バンクシーの作品 イギリス裁判所で物議

☆「覆面のパロディ画家」バンクシーの作品 イギリス裁判所で物議

けさ7時30分ごろ、金沢の自宅前の道路を登校する子どもたちのいつもの声が聞こえてきた。雨が結構降っていたが、その雨音に負けない子どもたちの元気な声だ。石川県内は、前線の影響で一時、大雨や洪水の警報が出されていたが、きょう8時すぎにすべて解除となった。日中は時折晴れ間ものぞく和らいだ天気だったが、気象台によると、このあとも大気の不安定な状態が続く見込みとのこと。

話は変わる。「覆面のパロディ画家」として知られるバンクシー。公共空間にスプレーと型紙で作品を描き去るストリートアーティストだ。ことし4月に金沢市内のデパートで「バンクシー新作版画展」の鑑賞に行ってきた。中でも面白かった作品が「JUDO」=写真・上、版画展チラシより=。柔道少年が大人の柔道家を投げるシーンが描かれている。2022年11月にウクライナの首都キーウ近郊にある街で発見された作品という。同年2月に始まったウクライナ侵攻でロシアは世界から批判にさらされることになる。プーチン大統領は柔道家としても知られる。少年がウクライナで大人の柔道家がロシアと見立てると、この絵は「ロシアに負けるな」というウクライナに対する応援メッセージと読み取れた。

バンクシー作品がまたメディアで話題になっている(※写真・下は、9日付・BBCニュースWeb版より)。バンクシーが9月8日に発表した新作。イギリス王立裁判所が入居する複合施設、クイーンズ・ビルディングの外壁に描かれた。イギリスの裁判官の衣装である黒いローブとかつらを身に着けた人物が、プラカードを掲げた抗議者を小槌で殴りつける様子が描写されている。抗議者は地面に横たわり、プラカードには血を思わせる赤い飛沫が飛んでいる。今回の壁画は9月6日にロンドンで行われたパレスチナ支持のデモで900人が拘束されたことへの抗議だという。

ただ、新作が発表されてすぐに、作品は大きなプラスチックシートと金属製バリケードで覆い隠され、2人の警備員による厳重な防御体制が敷かれていた。そして9月10日の朝、顔を覆い隠しヘルメットをかぶった業者によって、壁画は削り取られ、塗料で塗りつぶされたという。

バンクシーは大量生産や消費社会、そして時事性のある事柄を風刺してきたアーティストだ。今回、壁画は削り取られ、塗料で塗りつぶされたとなるとある意味でもったいない。ある見立てでは、壁画は最大500万ポンド(約10億円)で売れた可能性があったという。この一件でバンクシー作品の価値がさらに上がったようだ。

⇒11日(木)夜・金沢の天気  くもり

★イカキングの能登・小木のイカ 工夫凝らしラーメン限定販売  

★イカキングの能登・小木のイカ 工夫凝らしラーメン限定販売  

能登半島の先端部に位置する能登町の九十九(つくも)湾にイカの巨大モニュメントがある。全長13㍍、全幅9㍍、高さ4㍍のサイズ。素材は航空機などに使う繊維強化プラスチックのFRP製だ。名付けられた愛称は「イカキング」=写真・上=。能登のちょっとした名所にもなっていて、子どもたちが中に入って遊んだり、大人たちが写真を撮ったりと、けっこう人気がある。

イカキングと隣接するのは観光交流センター「イカの駅つくモール」。イカ料理などが味わえるレストランやイカの加工品を中心とした物産の販売コーナーがある。九十九湾にイカの巨大モニュメントや観光交流センターが設置されたのは、同湾にある小木漁港がスルメイカなどイカ類では全国屈指の水揚げを誇るからだ。能登町が特産イカの知名度向上と観光誘客を狙って2020年6月にセンタ-、イカキングを翌年2021年4月に設置した。

前置きが長くなった。回転ずしチェーン店「スシロー」は小木漁港で水揚げされた「船凍イカ」を使ったラーメンをきょうから期間限定(今月28日まで)と販売数限定(45万食)で提供すると記事で掲載されていた(9日付・新聞メディア各社)。イカのラーメンは初めてだったので、さっそく食べに行った。船凍イカは獲れたてのスルメイカなどを船内で急速冷凍したもの。メニューには「能登小木港いかのせ いか白湯醤油ラーメン」(460円)と記されている。

回って来たラーメン丼のフタを開けるとイカの香ばしい匂いがした。イカの煮付けと鳥むね肉のチャーシュー、そして海苔、刻みネギがトッピンクされている=写真・下=。スープもイカの旨みが漂っている。以下は憶測だ。白湯醤油は煮干しを煮詰めてつくったタレ、そこにスルメイカを煮込んだ出汁を加えているのではないだろうか。先の記事によると、スシローは去年6月から「ジモメシ」プロジェクトとして銘打って、地域のご当地グルメとコラボした商品開発を行っている。今回は第3弾となる。プロジェクトだけに相当の調味の工夫とアイデアを凝らしたに違いない。

それと、小木漁港の特産が選ばれたのは能登半島地震で被災した地域の海産物を商品化することで復興に寄与したい、企業のそんな想いが込められているのではないだろうか。温かなラーメンをすすりながらふと思った。

⇒10日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆少数与党の「アリ地獄」から抜け出せるのか

☆少数与党の「アリ地獄」から抜け出せるのか

石破内閣の少数与党のことをこのブログで2回、「ハング・パーラメント」と「比較第1党」という言葉で取り上げたことがある。簡単に振り返ってみる。ハング・パーラメントは去年10月27日の衆院総選挙の結果を受けて、10月30日付「☆与党は過半数割れ『宙づり』状態をどう乗り切るのか」で使ったキーワードだった。以下。

「政策の実効性を確保するために『議会を解散して民意を問う』と石破政権は選挙に打って出たものの、与党の過半数割れとなった。このままでは何も決められない、いわゆる『宙づり議会』、ハング・パーラメント(hung parliament)の状態だ。この言葉は議会制民主主義の歴史が長いイギリスが発祥で、直近では2017年の総選挙で保守党が第1党を維持しながらも過半数割れとなり、宙づり状態に陥った。この時は、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、何とか政権を維持し、その後2019年の総選挙で保守党が単独過半数を獲得した。日本の自民党もハング・パーラメントを乗り切るために、部分連合や閣外協力に躍起になっているようだ」(※写真・上は、衆院選で少数与党となり野党との連合について取り上げる各紙)

そして、比較第1党はことし7月20日の参院選の結果、1955年の自民の結党以来初めて衆参両院で過半数を割り込むことになったことを受けて、7月21日付「☆衆院に続き参院も少数与党に転落 能登では復興に寄せる期待」で使った。以下。

「石破総理はきのう夜のテレビ朝日の選挙特番で『比較第1党の議席をもらったことの重さもよく自覚しなければいけない』と述べ、キャスターから『(その言葉を)続投すると受け止めてよいか』と問われ、『けっこうだ』と答えた。これまで耳にしたことがなかった『比較第1党』は、議会の過半数には達しないが、議席数をもっとも多く有する政党を意味する言葉だ。続投の理由を問われ、石破総理は『敗北の責任を私が担っていく』と述べ、アメリカとの関税交渉や選挙期間中に訴えた物価高を上回る賃金上昇、地方創生、防災対策などをあげて、『きちんとした道筋をつけることは国家に対する責任だ』と語った」(※写真・下は、衆参両院の選挙敗北など理由にした石破総理の退陣表明を伝える各紙)

自身もこれまで少数与党にはそれほど違和感はなかったが、こうして振り返ってみると、少数与党による政権運営は至難の業であり、さらに党内から党首に対して不満が噴き出すプロセスが石破総理の辞意表明までの報道でじつによく見て取れた。

メディア各社の報道によると、自民党は石破総理(党総裁)の後継を選ぶ総裁選の日程を「22日告示、10月4日投開票」とする方向で最終調整に入ったようだ。ただ、少数与党というアリ地獄に陥っているので、誰が総理・総理になってもここから抜け出すのは至難の業ではないだろうか。イギリス保守党のような離れ業をやり切る政治家は自民にいるのか。

⇒9日(火)午前・金沢の天気   はれ時々くもり