☆「デフォルト国家」のあがき:2題

☆「デフォルト国家」のあがき:2題

   ウクライナに侵攻しているロシアのプーチン大統領のこの発言は悪あがきの強弁ではないだろうか。BBCニュースWeb版(6日付)=写真=は「Ukraine war: Putin warns over Western long-range weapons」の見出しで、もし欧米諸国がキーウに長距離兵器を送れば、ロシアはウクライナで攻撃する標的のリストを拡大するだろうと、プーチン大統領が国営テレビのインタビューで警告したと報じている。

   もともと、欧米諸国のウクライナ支援は防衛を条件としている。アメリカは最大70㌔離れた目標に命中できる精密誘導ロケット弾を発射するシステム(HIMARS)を供与する計画だが、ロシア国内を攻撃しないという保証をゼレンスキー大統領から得た後で提供する。ドイツもロシア軍の空爆から都市全体を守ることを可能にする防空システム「短距離空対空ミサイル」を提供する(同)。

   BBCの記事を深読みすると、逆にロシアの国内状況が見えてくる。軍事侵攻はきょうで103日目だ。戦争の長期化で苦しくなっている。ロシア国債は国際金融市場でデフォルトとみなされており(6月2日付・NHKニュースWeb版)、金融市場での信用失墜で戦費の調達や軍隊組織そのものが行き詰まっているに違いない。ウクライナに進軍するも、道路に埋められた地雷をチェックする装備が不足しているため多大な損害が出ていて、派兵を拒否するロシア兵が増えている(5月23日付・同)。

   プーチン氏の強弁は国内の経済や軍内部の乱れへのあせりを反映しているのかもしれない。ロシアが脅威を受けた場合はその武器を供与した国を標的にするとは、偽旗作戦の格好の言い分だろう。確たる証拠がなくても、「ウクライナ軍がHIMARSを我が国に撃ち込んだ」とロシアが言い張れば、アメリカに対する攻撃の条件が整う。敵を新たにつくることで国内を引き締めるのは常套手段だ。

   きのう5日午前9時過ぎ、北朝鮮は弾道ミサイルを相次いで発射した。防衛省公式サイト(5日付)をチェックするとミサイルは少なくとも6発。落下したのは北朝鮮東側の沿岸付近および日本海であり、日本のEEZ外だった。きょうの北朝鮮の労働新聞Webなどを検索したが、その記事が見当たらない。5月25日にICBMを含む3発を発射しているが、これも国営メディアは報じていない。これまで発射の成功や核・ミサイル能力の開発を大々的に報じてきたのに、5月4日の弾道ミサイル発射以降は沈黙が続いている。この沈黙は何を意味するのか。

   前日4日に米韓合同演習が行われ、原子力空母「ロナルド・レーガン」が加わった。5日の弾道ミサイルはこれを牽制する狙いがあったとみられるが、それだったらなおさら公表するはずだ。おそらく、国家自体がデフォルト状態に陥っているのではないか。「建国以来の大動乱」と称される新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体がロックダウンとなり、それにともなう食糧難と飢え。このような状況下にあるとすれば、国営メディアが弾道ミサイルを報じても、人々は「ミサイルより、食べ物よこせ」とあがき叫ぶだろう。最高権力者はそれが怖いのではないか。

⇒6日(月)夕方・金沢の天気    あめ  

★さりげないディスタンス茶席に和の心

★さりげないディスタンス茶席に和の心

   新型コロナウイルス禍の影響で3年ぶりの開催となった金沢の「百万石まつり」(3-5日)に出かけた。このイベントは加賀藩初代の前田利家公が金沢城に入城するのを再現する「百万石行列」がメインで行われ、市内7ヵ所で茶道の各流派が茶席を設ける「百万石茶会」が開催される。出かけた先は7つの茶席の一つの「旧中村邸」。造り酒屋の一族の旧邸宅で、昭和3年(1928)に建てられ、切妻造りの建物は市の指定保存建造物でもある。

   茶席は2階の27畳の大広間。床の間に掛け軸「乕一声清風起(とらいっせい   せいふうおこる)」が掛けられていた=写真=。虎の鳴き声で一陣の清風が吹いて山や海の景色が変わる例えのように、百万石祭りが行われることでコロナ禍で沈んでいる金沢に再びにぎわいが戻ることを期待するという思いが込められているそうだ。茶席の亭主の解説を聞きながら薄茶をいただく。

   コロナ禍での注意も怠りはなかった。参加者の入れ替えなどで人数を制限していた。お菓子とお茶をいただく以外はマスクを着用し、間隔を空けて一定の距離を保つ。これまでのように1つの畳に3人か4人ではなく、「半畳に1人」という間隔を空けて座る。誰かの指示で着座するというより、参加者が自然とソーシャルディスタンスを保ちながら、席入りしていたので心得たものだ。

   3年ぶりの百万石茶会ということもあって、目立ったのは和服姿だった。見たところ女性の8割は和装だった。コロナ禍で和服を着る機会が少なかった。参加者は久しぶりで和の装いを楽しみ、そして茶道を満喫したのではないだろうか。

⇒5日(日)夜・金沢の天気    くもり

☆いよいよ「少子化は国難」のステージに

☆いよいよ「少子化は国難」のステージに

   少子高齢化が進んだ地域集落でよく見かける光景、それは老人が買い物袋を携えて一人でとぼとぼ道を歩く姿だ。これを見て、健康のために歩いて買い物か、と前向きに考えなくもないが、なぜか後ろ向きに捉えてしまう。独り暮らし、高齢のため運転免許を返上、同乗して買い物に行く仲間はもういなくなった、バス運行の回数が少なくなった、地域にあった乗り合いタクシーが廃業してしまった。そして思うことは、これは日本の未来の光景ではないのか、と。

   きょうの各紙朝刊が一面のトップで、2021年に生まれた子どもの人数(出生数)は81万1604人で、前年より2万9231人(3.5%)少なく、明治32年(1899)に統計を取り始めて以降で最も少なくなったと、厚労省「人口動態統計」(3日発表)を報じている。1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は2021年は1.30で、前年を0.03ポイント下回っている。

   国立社会保障・人口問題研究所が2017年7月に発表した「日本の将来推計人口」では2021年の「合計特殊出生率」が1.42、出生数は86万9千人(中位)と算出されていた(4日付・朝日新聞)。実際は出生率1.30、出生数81万1604人だったので、少子化がさらに進んだと言える。新型コロナウイルス下で結婚や妊娠を控える傾向にあったことも想像に難くない。が、このままでは人口減少の加速に歯止めがかからない。

   少子化が進んだ原因は何だろう。厚労省「人口動態統計」をチェックすると、平成7年(1995)はもっとも多く出産した年齢は25-29歳だったが、同17年(2005)以降は30-34歳となっている。これは、女性の初婚年齢が高くなっているせいもあるだろう。ちなみに平成7年は26.3歳だったが、現在(令和2年統計)は29.4歳と3年余り「晩婚化」が進んでいる。

   さらに、夫婦とも仕事に就いていて、出産・子育てを両立させるには産休や育休の取りやすい職場環境やタイミングを見計らう必要もあるのだろう。そして、出産にかかる費用も考慮しなければならない。「出産育児一時金」は現在42万円支給されるのが、出産費用は増加傾向で「足りない」という声も周囲の人から聞いたことがある。共同通信Web版(5月26日付)によると、政府は出産育児一時金を増額する方向で検討に入り、今月中にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させるようだ。

   あのEV大手テスラの経営者、イーロン・マスク氏が5月8日付のツイッターで「Japan will eventually cease to exist.」と書き込み物議を醸した。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する、それは世界にとって大きな損失だ、と。日本の総務省が発表した2021年の人口統計で、過去最高の64万4000人減少との記事についてのコメントだった。世界の著名人も注視する日本の少子化現象、いよいよ「少子化は国難」との位置付けで対策を打つべきときが来た。日経新聞など各紙が一面で取り上げることそのものに危機感が漂っている。

⇒4日(土)夜・金沢の天気    はれ 

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

        国連の会議がまた大荒れに。NHKニュースWeb版(3日付)によると、国連軍縮会議が2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合う軍縮会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。

   会議の冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が発言し、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判。日本の梅津公使参事官も「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイル計画に資金を充てることで、すでに悲惨な人道状況をさらに悪化させている」と非難した。これに対して議長を務める北朝鮮の大使は「いかなる国も他国の政策を批判し、干渉する権利はない」と反発した。また、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、欧米や日本などとの間で非難の応酬となって、実質的な議論は行われなかった(同)。

   軍縮は国連の役割そのものだ。国連憲章は、総会と安全保障理事会の双方に具体的な責任を委託している。そして、軍縮条例をまとめるのが軍縮会議だ。これまで、核兵器不拡散条約(NPT、1968年)、生物兵器禁止条約(BWC、1972年)、化学兵器禁止条約(CWC、1993年)、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年)などの重要な軍縮関連条約を作成。国連総会で採択された。各国による署名と批准で発効するが、CTBTについては核兵器保有国を含む44ヵ国の批准が完了していないため、26年経ったいまでも未発効の状態だ。

   さらに、CTBT以降、軍縮会議は機能不全に陥っている。外務省公式サイト「ジュネーブ軍縮会議の概要」によると、軍縮会議の議題は「核軍備競争停止及び核軍縮」「核戦争防止(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約を想定)」「宇宙における軍備競争の防止」など8つあるものの、実質的交渉や議論をほとんど行っていないのが現状だ。

   条例を作成し、総会で採択されたものの、核保有国などが批准しないため未発効の状態が続いているが、北朝鮮は批准の前段階である署名すらしていない。さらに、ミサイル発射と核実験で国連安保理から制裁措置を受けていても、ICBMの発射を繰り返している。4週間の議長国とは言え、北朝鮮は今後も各国から突き上げられ、針のむしろだろう。

(※写真は、現地時間6月2日にスイス・ジュネーブで開催された国連軍縮会議。天井画はスペインを代表する現代芸術家ミケル・バルセロの作品「Room XX」=国連本部公式サイトより)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

☆「空間識失調」という自衛隊機の墜落原因

☆「空間識失調」という自衛隊機の墜落原因

   事故から4ヵ月、その原因が発表された。1月31日、航空自衛隊小松基地を離陸したばかりのF-15戦闘機が、西北西5.5㌔の日本海に墜落し、パイロット2人が亡くなった。戦闘機は「飛行教導群」と呼ばれる部隊の2人。戦闘機部隊を教育する任務に当たり、パイロットの中でも精鋭の2人だった。事故は、戦闘機から異常を知らせる無線連絡やパイロットが脱出する際に発せられる救難信号は感知されていない。一瞬の出来事だった。

   墜落の原因について、航空自衛隊公式サイトできょう2日付のプレスリリースが掲載されている。それによると、事故原因について、「(1)事故当時の気象・天象条件及び離陸直後の姿勢や推力の変更操作等の影響を受け、自らの空間識に関する感覚が実状と異なる、空間識失調の状態にあった可能性が高い」「(2)編隊長機を捕捉するためのレーダー操作等に意識を集中させていたため、回復操作が行われるまでは、事故機の姿勢を認識していなかった可能性がある」と2点をあげている。プレスリリースの添付されたイラスト=写真=では、墜落の11秒前に高度が低下し始め、墜落の2秒前になってパイロットは異常な姿勢から回復するための操作をしたものの間に合わず墜落した。

   気になるのは「空間識失調」という文字だ。Wikipedia「空間識失調」によると、「主に航空機のパイロットなどが飛行中、一時的に平衡感覚を失う状態のことをいう。健康体であるかどうかにかかわりなく発生する。機体の姿勢(傾き)や進行方向(昇降)の状態を把握できなくなる、つまり自身に対して地面が上なのか下なのか、機体が上昇しているのか下降しているのかわからなくなる、非常に危険な状態。しばしば航空機の原因にもなる」とある。

    2019年4月9日、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが三沢基地(青森県三沢市)を飛び立ち太平洋上で消息を絶った。これについてもパイロットが「空間識失調」に陥り、墜落した可能性が高いとされている(同

   航空自衛隊では再発防止策として、空間識失調に関する教育・訓練を強化するほか、墜落しかけた戦闘機が自動的に回避動作をとるシステムの調査研究をするとしている(2日付プレスリリース)。

⇒2日(木)夜・金沢の天気    はれ

★いまそこにある危機「線状降水帯」とSDGs

★いまそこにある危機「線状降水帯」とSDGs

   季節は移ろい、6月の梅雨の時節に。梅雨はしっとり雨が降るという印象だったが、近年は「激しい雨」のイメージだ。積乱雲がどんどんと列ををなして留まって、激しい雨を降らせる。この「線状降水帯」という言葉を自身が意識したのは2017年8月、北陸で1時間に80㍉の猛烈な雨をもたらしたころからだ。

   気象庁はこれまで線状降水帯が「発生」した場合に「顕著な大雨に関する情報」を発表していたが、きょう1日からは、線状降水帯が発生する「可能性が高まった」場合、予測の段階で発生の半日前から6時間前に気象情報を発表することにした(気象庁公式サイト・31日付ニュースリリース)。全国の大学など研究機関と連携して、メカニズム解明に向けた高密度な集中観測や、スーパーコンピュータ「富岳」を活用したリアルタイムシミュレーション実験を実施するという。

   さらに、今月30日からは地図上に5段階で色分けして表示する「キキクル(危険度分布)」で、5色を警戒レベルの色と統一して、紫は「レベル4の全員避難」、黒は「レベル5で災害切迫」。紫は早めの避難行動の呼びかけになる。しっとり梅雨もいつの間にか怖くなったなものだ。

   先述のように、気象庁が大学など研究機関が連携して集中観測を行ったり、早めの避難行動の呼びかけを行う背景には、国連が掲げるSDGs(持続可能な17の開発目標)の13番の目標「気候変動に具体的な対策を」があるのだろう。天気情報をテレビで視聴する側とすると、警戒レベルの気象情報が出ていないからまだ安心だと認識してしまう。実際に情報が出たときは大気の状態が不安定で、非常に危険な状態にあるケースもままある。

   線状降水帯による豪雨の被害は毎年のように起きている。「いまそこにある危機」を集中観測やスーパーコンピュータで大胆に切り込んで予知する。一歩も二歩も踏み込んだ気象情報に期待したい。

⇒1日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆重信房子と「あさま山荘事件」現場

☆重信房子と「あさま山荘事件」現場

   国際テロ事件を数々起こした日本赤軍の重信房子元最高幹部が20年の刑期を終えて28日、東京・昭島市の医療刑務所を出所した。「見ず知らずの人たちに被害を与えたことをおわびします」などと述べた。日本赤軍については2013年に解散を宣言しているが、現在もメンバー7人が逃亡している(28日付・NHKニュースWeb版)。

   日本赤軍の卑劣な手口は、ハイジャックや在外公館を武装占拠して人質を取り、日本国内で勾留中の日本赤軍の関係者を奪還する手法を取ったことだ。1975年にマレーシアのアメリカ大使館を襲撃し、あさま山荘事件(1972年)で逮捕された容疑者ら5人を超法規的措置で釈放させた(クアラルンプール事件)。77年には日航機をハイジャックし、連続企業爆破事件の容疑者ら6人を釈放させた(ダッカ事件)。その主犯が重信元最高幹部だった。

   ことし1月に南軽井沢の「あさま山荘事件」の現場を見に行った。1972年2月28日、連合赤軍が人質をとって立てこもっていた現場に警察機動隊が救出のために強行突入した。酷寒の山地での機動隊と犯人との銃撃の攻防、血まみれで搬送される隊員、クレーン車に吊った鉄球で山荘を破壊するなど衝撃的なシーンがテレビで生中継された。当時、自身は高校生でテレビにくぎ付けになって視聴していた。

   あさま山荘の現場が見える地に、犯人の凶弾に倒れ殉職した2人の警察官の顕彰碑「治安の礎」がある=写真=。「見ず知らずの人たちに被害を与えたことをおわびします」というのであれば、あさま山荘事件の現場に来て、この碑に手を合わせるべきではないだろうか。ただ、遺族の心情とすれば来てほしくはないだろう。

⇒31日(火)夜・金沢の天気     くもり

★マスメディアは数字にこだわる

★マスメディアは数字にこだわる

   記事やニュースの見出しで数字を見ない日はない。きょうの新聞紙面をチェックすると、一面で「海外協力隊 高まる関心 北陸の説明会応募2.3倍」(北陸中日新聞)と報じている。JICA調べで、北陸3県の説明会の応募累計は68人に上り、2019年春より2.3倍の多さだという記事だ。さらに同じ一面で「災害時トイレ『不足』39% 県庁所在地など 自治体備蓄に限界」(同)は大規模災害に使えるトイレが、金沢市など県庁所在地と政令指定都市の51市のうち39%にあたる20市が「不足する恐れがある」と調査で分かったという内容だ。

   他紙でも、「著作権料 過去2番目の徴収額 昨年度1167億円 JASRAC 配信・サブスク伸びる」(朝日新聞)など。NHKニュースWeb版も「“1.5度”の気温上昇『今後5年間に起きる可能性 50%近く』」「『集中豪雨』の頻度 45年間で2倍余増」と見出しで数字が踊っている。

   では、なぜ記事では数字を多用するのか。ジャーナリズムの鉄則は「形容詞は使わない」ことにある。形容詞は主観的な表現であり、言葉に客観性を持たせるには、数字を用いて言葉に説得性を持たせる。たとえば「高いビル」とはせず、「20階建てのビル」と数字で表現する。上記の「可能性50%近く」は「可能性大いにあり」などと表現はしない。

   先に金沢大学の在任中は特任教授として「メディア論」を講義したが、数字を使っての客観的な表現方法は学生たちにとっては新鮮だったらしく、「小さいころからうまい形容詞を使うとほめられたが、確かに新聞では形容詞を見たことがない。でも、形容詞を使わない文章って難しそうだ。大学の論文でも形容詞は使わないですよね、目が覚めました」などと感想があった。​

   ただ、メディアは数字にこだわりすぎではないかと最近思うことがある。連日紙面で掲載されている「新型コロナウイルス感染者数」だ。都道府県別に累計の感染者数、増えた数、死者数の累計を掲載。地方紙はさらに各市町ごとの総数と増えた数、治療の患者数などを別表で掲載している。NHKも東京の感染者数を連日速報で伝え、それぞれのローカル局も地元の感染者情報を伝えている。

   メディアが発する数字は気になるものだ。しかし、政府はウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し、東京や大阪、石川など18都道府県への適用を3月21日をもって全面解除している。が、新聞メディアは以降もずっと毎日だ。そこまで数字の掲載にこだわる意義はどこにあるのだろうか。1週間ごとの累計でもよいのではないか。ひょっとして、メディア各社も仕舞いのタイミングを見計らっているのかもしれない、が。

⇒30日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆カーボンニュートラルな能登の光景

☆カーボンニュートラルな能登の光景

   能登半島で見る印象的な風景は、山の峰に並ぶ風力発電、山裾や田んぼ、畑の一角に広がる太陽光発電ではないだろうか。脱炭素の世界的な潮流を受け、日本も2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明している(2021年4月・気候サミット)。日本が排出する二酸化炭素の4割が電力関連で、再生可能エネルギーに置き換える動きが全国的に活発だ。

   能登半島全体では74基、うち半島尖端の珠洲市には30基の大型風車がある。経営主体は日本風力開発株式会社(東京)、2007年から順次稼働している。発電規模が45MW(㍋㍗)にもなる国内でも有数の風力発電地域だ。発電所を管理する会社のスタッフの案内で現地を訪れたことがある。ブレイド(羽根)の長さは34㍍で、1500KW(㌔㍗)の発電ができる。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風速が25㍍/秒を超えると自動停止する仕組みなっている。羽根が風に向かうのをアップウインドー、その反対をダウンウインドーと呼ぶ。1500KWの風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の1千世帯で使用する電力使用量に相当という。(※写真・上は能登半島の先端・珠洲市の山地にある風力発電)

   なぜ能登半島に立地したのか。「風力発電で重要なのは風況」と現地のスタッフが説明してくれた。中でも一番の要素は平均風速が大きいことで、6㍍/秒を超えることがの目安になる。能登半島の沿岸部、特に北側と西側は年間の平均風速が6㍍/秒を超え、一部には平均8㍍/秒の強風が吹く場所もあり、風力発電には最適の立地条件なのだ。いいことづくめではない。能登で怖いのは冬の雷。「ギリシアなどと並んで能登の雷は手ごわいと国際的にも有名ですよ」と。そのため、ブレイドの材質は鉄製ではなく、FRP(繊維強化プラスチック)にしているが、それでも落雷のリスクはあるという。

   バイオマス発電所もある。珠洲市に隣接する輪島市の山中にある。発電所を運営するのは株式会社「輪島バイオマス発電所」。スギやアテ(能登ヒバ)が植林された里山に囲まれている。木質バイオマス発電は、間伐材などの木材を熱分解してできる水素などのガスでタービンエンジンを駆動させる。石炭など化石燃料を使った火力発電より二酸化炭素の排出量が少ない。もともと二酸化炭素を吸湿して樹木は成長するのでカーボンニュートラルだ。発電量は2000KWで24時間稼働するので年間発電量は1万6000MW、これは一般家庭の2500世帯分に相当する。エンジンを駆動させるために必要な木材は一日66㌧、年間2万4千㌧の間伐材が必要となる。(※写真・中は輪島市三井町にある輪島バイオマス発電所の施設)

   創業者から会社設立に至った経緯をうかがったことがある。「能登の里山を再生するために、間伐材をどうしたら有効利用できるかを考えていたら、バイオマス発電が浮かんだ。そこから夢も膨らみ、地産地消のエネルギーで地域の活性化に貢献したいと思い、会社をつくったのです」。森林維持には欠かせない間材で生じた木材のうち丸太材やパルブ材などに利用されるのは70%程度に過ぎない。残りの端材や曲がり杉は、利用されずに林地残材という形で山の中にそのまま残されているのが現状。これではもったいない。カスケード利用(多段的利用)しない手はない(同社公式サイト)。里山のもったいない精神から発想された再エネなのだ。

   能登半島では農地のほかに山間部でも大規模なメガソーラー(1000kW)が相次いで稼働している。耕作放棄地など活用したのだろう。気になることもある。川沿いの平野部に設置されている太陽光パネルだ。これが、集中豪雨による冠水や水没で損壊したり、設備が流されるということにはならないだろうか。太陽光パネルは実は危険だ。損傷し放置された太陽光パネルに日が当たると発電し、感電や火災につながる可能性がある。(※写真・下は珠洲市にあるソーラー発電施設)

   きょうの新聞各紙は、環境省は使用済みの太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入ったと伝えている。太陽光パネルの寿命は長くて30年だ。普及が進んでいる能登地区の近未来の課題でもある。

⇒29日(日)夜・金沢の天気    はれ

★ICBMが命中したカムチャッカ半島で今度は大噴火

★ICBMが命中したカムチャッカ半島で今度は大噴火

   気象庁公式サイトによると、きょう28日午後5時10分ごろ、ロシア・カムチャッカ半島のベズィミアニィ火山(標高2882㍍)で大規模な噴火が発生した。ウエザ-ニューズWebによると、噴煙は高度1万5000mに到達しているものとみられる。ベズィミアニィ火山は1955年以降たびたび規模の大きな噴火を起こしていて、近年も活発な火山活動を続けています。噴煙の高さのみで噴火の規模は比較できないものの、2019年3月にも今回と同程度まで噴煙を上げる噴火を起こしている。

   ウエザ-ニューズのツイッターはその噴火の様子の写真を掲載している=写真・上=。噴火もさることながら、写真の手前に富士山のような見事な山が見える。これはクリュチェフスカヤ山(標高4750㍍)。その後ろに隠れている山がベズィミアニィ火山のようだ。

   この噴火のニュースでふと連想したのは、4月20日にロシアがカムチャッカ半島にICBMを撃ち込んでいることだ。NHKやCNNニュースWeb版(4月21日付)によると、ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場に向けて目標に命中したと発表した。BBCニュースWeb版は「Russia releases video of intercontinental ballistic missile launch」と題して、ロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真・下=。

   読売新聞Web版(4月21日付)によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   新型ICBMが命中し、そして大噴火。噴火は近年活発化していたようなので関連性はないようだ。それにしても極東のカムチャッカ半島がこれほど注目されるとは。

⇒28日(土)夜・金沢の天気    くもり