☆国会議員めぐる「大捕り物」か「いたちごっこ」か

☆国会議員めぐる「大捕り物」か「いたちごっこ」か

         国会議員には毎月給与が129万円、そして300万円以上のボーナスが年に2回支給される。「第二の財布」もある。給与とは別に月額100万円の「調査研究広報滞在費」が支給される。領収書は不要で、使途報告や残金返還の義務はない。さらに、「第三の財布」もある。「立法事務費」は議員個人ではなく会派に所属議員の人数に応じて支給される。月額は議員一人当たり65万円。これも領収書の提出や使途報告の必要はない。議席で寝ていても、欠席しても年間4200万円余りが支給される。

    共同通信Web版(12日付)によると、インターネットの動画投稿サイトで複数の著名人を中傷、脅迫するなどしたとして、警視庁は11日、暴力行為法違反(常習的脅迫)や名誉毀損、威力業務妨害などの疑いで、NHK党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員の関係先を家宅捜索した。ガーシー氏は去年7月10日の参院選でNHK党から全国比例区で立候補して初当選したが、アラブ首長国連邦のドバイなどに滞在して国会に登院していない。(※写真は参院本会議場)

   朝日新聞Web版(2022年7月15日付)によると、ガーシー氏は知人女性から計約4千万円を集めた詐欺疑惑などがSNSで露見、以降、ドバイからオンラインで選挙に臨んでいた。朝日新聞ドバイ支局の取材に、帰国すれば詐欺容疑などで警察に逮捕される可能性があるなどとし、帰国に慎重な考えを示していた。

   そのガーシー氏はきょう午後4時半すぎから、自らのインスタグラムで生配信を行った、NHKニュースWeb版(12日付)によると、ガーシー氏は「通常国会に出るつもりだったので、3月上旬に帰国し、国会にも登院する」と述べた。さらに、「警視庁の任意の事情聴取にも応じる。警察には徹底的にボディーガードをお願いしたい。愉快犯などもいるので『帰る』と宣言した以上、そこは絶対に守ってもらわないといけない」と。

   以下は憶測だ。国会議員には国会会期中に限られているものの、不逮捕特権(憲法第50条)がある。ということは、3月の国会会期中に帰国し登院。警視庁の事情聴取にも応じる。が、閉会間際にまたドバイに帰るのではないか。これを繰り返せば、当面逮捕されることはない。ガサ入れ(家宅捜索)を行った警視庁の本気度、そして議員の不逮捕特権は今後、大捕り物劇へと展開するのか、あるいは「いたちごっこ」に終わるのか注目したい。

⇒12日(木)夜・金沢の天気    はれ

★「納豆カレー」と「香箱がにパスタ」の食感のこと

★「納豆カレー」と「香箱がにパスタ」の食感のこと

   東京の知人から、「金沢には納豆カレーがありますか」と尋ねられ、「えっ、初めて聞いた」と返事すると、「東京では結構はまっている人もいますよ。人気です」と。聞けば、カレーに納豆をトッピングした変わり種メニューのようだ。この手の話を一度聞くと頭に残るタイプなので、さっそく試してみた。

   カレーは能登牛を入れた能登牛カレー。牛の食味を引き立てるため、辛さは普通で控えめ。ごはんは加賀産コシヒカリで、その上に能登牛カレーをかけた。能登と加賀の郷土料理のような雰囲気だ。さらに、トッピングで乗せたのは『そらなっとう』だ=写真・上=。

   金沢の納豆製造会社がつくる、この『そらなっとう』にはちょっとしたストーリーがある。金沢大学のある研究者が、春になると黄砂といっしょにやってくる微生物「黄砂バイオエアロゾル」を研究していた。その中に、食品発酵に関連する微生物が多いこと気づき、大気中で採取した何種類かのバチルス菌で納豆をつくってみた。その何種類かのバチルス菌でつくった納豆の試食会に自身も参加したことがある。2010年12月のことだ。その中で、能登半島の上空で採取した「Si38株」というバチルス菌の納豆は独特のにおいも少なく、豆の風味もあり好評だった。その後、『そらなっとう』として商品化された=写真・中=。JALの機内食にも採用されたことで一躍知られるようになった。

   能登牛カレーとこの納豆の「納豆カレー」を食べてみる。すると、納豆がカレーの風味を邪魔しない。逆に、カレーが納豆の味を包み込まない。お互いが共存しながら、口の中で混ざり合う。なんとも不思議な食感なのだ。納豆好きな人、カレー好きの人がそれぞれ納得して食べることができる。初めて知った食感だった。

   ついでに食感の話題をもう一つ。金沢のイタリンア料理の店に入って初めて、「香箱がにパスタ」というメニューを見た。通常のパスタに比べ1200円も高い。思い切って注文する。クリームパスタに北陸の海などで獲れる香箱ガニ(ズワイガニの雌)の身をトッピングしたものだ。とくに、香箱ガニの外子(卵)と甲羅の中にある内子(未熟成卵)、そしてカニみそ(内臓)がパスタ全体の食感を高める。それに白ワインを注文する。深く趣きのある味わいだった。

   後日、近くのスーパーで香箱ガニを2パック、クリームパスタを買い、自宅で香箱がにパスタをぜいたくにつくってみた=写真・下=。ワインはオーストラリア産の「PET NAT」。自然派のス-クリングだ。パスタ、香箱ガニ、そしてワインのそれぞれの風味が口の中でコンサートを奏でているような楽しい味わいなのだ。ただ、香箱ガニの漁期(11月6日-12月29日)はすでに終わっていて、食べられる時期は限られている。地元産、そして季節限定の食の楽しみの中に、しっとり感、揺さぶり感、日常の幸福感がある。

   ちなみに、聴こえてきた口の中のコンサートはヴィヴァルディ作曲の『四季』「冬」の第一楽章だろうか。たかが「納豆カレー」と「香箱がにパスタ」で、話が長くなってしまった。

⇒11日(水)午前・金沢の天気   

☆能登の火様 受け継ぎ広げる物語

☆能登の火様 受け継ぎ広げる物語

   かつて民家の朝の始まりは、囲炉裏の灰の中から種火を出し、薪や炭で火を起こすことだった。能登では、そうした先祖代々からの火のつなぎのことを「火様(ひさま)」と言い、就寝前には灰を被せて囲炉裏に向って合掌する。半世紀前までは能登の農家などでよく見られた光景だったが、灯油やガス、電気などの熱源の普及で、囲炉裏そのものが見られなくなった。火様の風習も風前の灯となった。

   その火様を今でも守っているお宅があることを聞いたのは10年前のこと。2014年8月、教えていただいた方に連れられてお宅を訪れた。能登半島の中ほどにある七尾市中島町河内の集落。かつて林業が盛んだった集落で、里山の風景が広がる。訪れたお宅の居間の大きな囲炉裏には、300年余り受け継がれてきたという火様があった。囲炉裏の真ん中に炭火があり、その一部が赤く燃えていた=写真=。訪れたのは夕方だったので、これから灰を被せるところだった。この集落でも火様を守っているのはこの一軒だけになったとのことだった。このお宅の火様を守っているのは、一人暮らしのお年寄りだった。

   案内いただいた方の妻の実家がこのお宅の隣にあり、それがご縁で火様のことを知ったとの話だった。その方から火様の第二報を届いたのは2016年秋ごろだった。「火様をお預かりすることになりました」。火様を守っていたお年寄りが入院することになり、最後の火様が消えることになるので、火様を自身が継承するとのことだった。

   その方は現在、埼玉県に住んでいる。どうのように火様を守るのかと尋ねると、預かった火様を囲炉裏ではなく、2週間燃え続けるオイルランプに灯し、それをウエッブカメラで埼玉から見守る。2週間ごとに七尾市を訪れ、オイルを補給する。万一に備えて、オイルランプは2つ灯している。「伝統の灯は消せない」と話しておられた。

   ともとも外科医で定年退職後に空き家となっていた妻の実家の活用を考え、能登と埼玉を行き来するようになった。能登の古建築がイスラム教徒(ムスリム)の宿泊場所に適していることに気がついて、家を修築してムスリムの宿泊施設を開設した。能登の家に特徴的な大広間は礼拝の場所となっている。「過疎化の病(やまい)に陥った能登を治したい」。能登に世界の人々を呼び込むことで、地域を活性化したいとの思いだった。

   火様の第三報が届いたのは去年の9月だった。伝統の灯を消せないと守ってきたが、火様を受け継ぐ人を広げようとの思いから、茶道用の茶炭を焼いている珠洲市の製炭業の職人、そして金沢市の薪ストーブ会社に火様の話を持ち込んだところ、快く受けてもらい、両者を火様の受け継ぎ手とする認定式を行い、火種を分けたという。さらに、一般社団法人「能登火様の守人」を立ち上げたとのことだった。「守りから広げるに発想を変えました」と。

   その方から年賀状をいただいた。「少しづつ、肩の荷を軽くしてまいりたいと思います」。ことし74歳になる。一人で守ることの心の重さを感じていたのだろう。守人を広げることで「肩の荷」を軽くした思いなのだろう。伝統的な風習を現代風に解釈することで受け継ぎ広げる。火様の物語だ。賀状を読んで思わず、「お疲れさまでした」と拍手をした。

⇒10日(火)午前・金沢の天気    くもり

★「呆け封じ」か「呆けた者勝ち」か

★「呆け封じ」か「呆けた者勝ち」か

   これがアルツハイマー病の画期的な治療薬になるのだろうか。メディア各社は7日、アメリカのFDA(食品医薬品局)が日本のエーザイとアメリカの医薬品バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「LEQEMBI(レカネマブ)」に対して、「迅速承認」と呼ばれる特例的な承認を行ったと報じた。エーザイ公式サイト(7日付)によると、臨床試験でこの新薬を投与したグループと偽薬のグループを比較し、レカネマブのグループでは記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制された。特例承認の条件となっている最終段階の治験データをもとに速やかに完全な承認申請を行う。日本やヨーロッパでも承認申請を行う。

   アルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ 」が蓄積することで神経細胞が傷つき、記憶力や判断力などが低下するとされる。これまでの治療薬は症状の一時的な改善を促すものだが、レカネマブは脳内のアミロイドβ そのものを除去することで病気の進行を長期的に遅らせる。治療薬の効果が表れるのは軽度認知障害の段階での投薬で、早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータは取っていない。2週間に1回、体重に応じた点滴を施すことになる。価格は、体重75㌔の患者に換算して1人当たり年間2万6500㌦ (1㌦132円換算で350万円)と設定している(エーザイ公式サイト)。

   エーザイとバイオジェンは2021年6月にも同じタイプの治療薬「ADUHELM(アデュカヌマブ)」を開発。FDAに承認されたものの、価格が高いことや有効性への疑問などからアメリカでは高齢者向け保険が適用されなかった。日本の厚労省も、効果が明確に判断できないとして承認を見送っていた。以下推測だ。今回のレカネマブはアデュカヌマブよりアミロイドβ の除去により特化した治療薬なのだろう。アデュカヌマブは4週間に1回の点滴に対し、レカネマブは2週間に1回と投与頻度を高めている。さらに、価格に関してもアデュカヌマブは年間コストは5万6000㌦なので、レカネマブは半値以下に抑えている。商品化に対する企業の熱意というものを感じる。

   超高齢化社会といわれるこの世の中で、「呆け封じ」の妙薬となるのか。一方で、「呆けた者勝ち」という言葉がある。頭脳は普通に動いているが、寝たきりとなり食事や入浴、排泄の介護を受ける自分の姿を見て何を思うだろうか。むしろ、家族や周囲との人間関係のしがらみを記憶から一切消し、家族に面倒や世話をかけていると認識もせずに、その日を暮らしていければ、それで十分ではないか。「呆けた者勝ち」とはそういう意味だろう。アルツハイマー病の治療薬レカネマブのニュースを見て、そんなことを考えてしまった。

⇒8日(日)夜・金沢の天気    くもり

☆プラごみ国際条約動き出す 日本海に必要な汚染対策条約

☆プラごみ国際条約動き出す 日本海に必要な汚染対策条約

   プラスチックごみによる汚染問題は世界各地で深刻化している。排出や廃棄を規制する国際条約づくりがようやく動き出した。朝日新聞Web版(7日付)によると、去年3月の国連環境総会で、2024年内に法的拘束力のある汚染対策条約をつくる方針で合意。11月から12月に各国政府代表がウルグアイに集まり、第1回の交渉会合を行った。ことしは5月の第2回で条約に盛り込む内容の議論を始め、11月に第3回を開く。ことし中に法的拘束力のある枠組みをつくる方針で、2025年以降に条約を採択する予定という。

   これまでの交渉で、プラごみの削減だけでなく、プラスチックの生産から廃棄までのライフサイクル全体で削減に取り組む方向で一致している。削減に向けた国別行動計画を作る方針で、対策に必要な資金の仕組みづくりも協議する、という(7日付・朝日新聞Web版)。

   以下は日本海側に住む一人としての希望だ。対岸国の不法投棄をどう解決すればよいか、そうした条約の枠組みも併せてつくってほしい。たとえば、「地中海の汚染対策条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染対策条約が必要ではないだろうか。

   データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。沿岸に流れ着くのはポリタンクだけではない。漁具や漁網、ロープ、ペットボトルなど、じつに多様なプラごみが漂着する。去年はロシア製の針つきの注射器が大量に流れ着いて全国ニュースになった。医療系廃棄物の不法投棄は国際問題だ。

   大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し、山陰や北陸など日本の沿岸に流れてくる=写真・上=。とくに能登半島は突き出ているため、近隣国の漂着ゴミのたまり場になりやすい。2021年の奥能登国際芸術祭の作品づくりのため能登を訪れたインドの作家スボード・グプタ氏は能登の海岸に大量の海洋ごみが漂着していることに驚き、地域の人たちの協力でごみを拾い集めて作品を創った=写真・下=。作品名「Think about me(私のこと考えて)」。大きなバケツがひっくり返され、海の漂着物がどっと捨てられるというイメージだ。日本海の汚染対策条約が今こそ必用だと実感している。

⇒7日(土)午前・金沢の天気    くもり  

★自虐ネタ、団塊応援・・・新年の広告メッセージが面白い

★自虐ネタ、団塊応援・・・新年の広告メッセージが面白い

   年始の新聞広告は例年のごとく派手さが目立った。笑えるもの、考えさせるもの、目立つものの何が言いたいのか分からないと思ってしまうものなどさまざま。いくつか紹介すると。

   この広告は毎年見ているが、関西漫才のように自虐的で笑える。入試願書の受付開始日と合わせた近畿大学の広告(3日付)『上品な大学、ランク外。』=写真・上の左=。同大は「THE世界大学ランキング2023」で日本の私立総合大学の中で慶応大学と並ぶ1位にランクされたものの、「進学ブランド力調査2022」(調査・リクルート進学総研)での「上品な大学ランキング」ではトップ10から外れている。それでも、「めっちゃうれしいやん!」「お上品限定に見えないなら、むしろ本望!」と。

   他の大学ランキングでは「エネルギッシュである」「チャレンジ精神がある」「コミュニケーション能力が高い」がぞれぞれ1位(※日経BPコンサルティング「大学ブランド・イメージ調査2021-2022」)なのだとPRしている。研究資金を自ら稼ぎながら挑戦し続けて成功させたクロマグロの完全養殖をその事例に挙げている。ちなみにバックに映っている学生は近大生200人の顔写真をAIに学習させて合成した近大生の特徴のある顔のようだ。データとAIを駆使し、良い意味で「くどい」文章回しは見事だ。

   日経新聞(3日付)をコンビニに買いに行った。すると、紙面の一面には「日本経済新聞」と題字はあるものの、赤や青、緑、黄色の斑点が散らばっている=写真・上の右=。よく見ると「本日は特別紙面でお届けします。通常紙面は2枚目からになります」と小さく記してある。ルイ・ヴィトンの広告にくるまれた朝刊なのだ。紙面をめくると、これもルイ・ヴィトン広告。「Yayoi Kusama」とあったので草間彌生をネット検索すると、ルイ・ヴィトンと草間彌生がコラボレーションで作品を展示する、機関限定のポップアップストアを今月2日に東京・原宿でオープンしていて、そのPR広告のようだ。場所は明治神宮の近くなので、初詣客でにぎわっているのではないだろうか。

   5日付の宝島社の見開きの全面広告も深い味わいがある。『団塊は最後までヒールが似合う。』=写真・中=。黒いタイツにハイヒールを履いた中尾ミエが真ん中に鎮座する。第一次ベビーブームと呼ばれた戦後の1947年から49年に生まれた世代は「団塊の世代」とも称される。この世代が後期高齢者になっている。キャッチコピーの「ヒール」は「悪役」の意味。団塊の世代は個性派が多く、日本の学生運動を主導した世代でもある。宝島社は「団塊よ、どうか死ぬまで突っぱって生き切ってくれ。他の世代を挑発し続けてくれ」とメッセージを送っている。共感する。

   意味がよく理解できなかったのが、トヨタイムズの見開きの全面広告(1日付)=写真・下=だった。トヨタ自動車がネットやCMなどを通じて独自発信するメディアだ。キャッチコピーが「なぜトヨタは24時間耐久レースに挑み続けるのか?」「いつまでハイブリッドをつくり続けるんだ・・・と言われる今、新型プリウス投入の意味」など、見栄えは強烈だが、言葉の深みや面白さというものが今一つ伝わってこない。せめて、ソニー・ホンダが開発しているEVに対抗意識を燃やしてほしかった。

⇒6日(金)夜・金沢の天気   くもり

☆コロナ感染の実態伝えない中国 世界の不信感は募る

☆コロナ感染の実態伝えない中国 世界の不信感は募る

   WHOは中国に対して、新型コロナウイルス感染が拡大しているにもかかわらず、死者数などを過少に報告していることに苛立っている。WHO公式サイト(4日付)によると、WHO担当者が先月30日、感染者の入院やワクチン接種などのデータを定期的に共有するよう中国側に要請。中国と国際社会の医療の効果的な対応のためにもデータ公表が重要だと強調していた。にもかかわらず、中国側は真摯に対応しようとしていない。

   テドロス事務局長の記者会見(今月4日)からもその様子がうかがえる。「WHO is concerned about the risk to life in China and has reiterated the importance of vaccination, including booster doses, to protect against hospitalization, severe disease, and death.(意訳:WHOは、中国での生命に対するリスクを懸念しており、入院、重症疾患、死亡から保護するために、追加接種を含むワクチン接種の重要性を繰り返し表明している)」(WHO公式サイト)

   なぜ中国は正確な数字を把握して世界に公表しないのか。世界各国は不信の念を抱かざるを得なくなる。さらに、中国国家衛生健康委員会は先月25日、感染者と死者の人数公表を同日から取りやめた(同25日付・時事通信Web版)。これを契機に世界各国は水際対策を取ることになる。中国では今月21日から旧正月・春節の大型連休が始まり、中国から観光の渡航者が増えるからだ。

   日本は先月30日から水際対策を実施。今月8日からは精度の高いPCR検査や抗原定量検査に切り替える。韓国と台湾、フランス、イタリアもすでに入国時の検査。アメリカとイギリス、カナダ、オーストラリアはきょう5日から実施している。EUは加盟国に対して、中国渡航者から出発前の陰性証明の提示を求めることを勧告している。

   こうした各国の水際措置に対して、中国は反発している。BBCニュースWeb版日本語(12月29日付)=写真=によると、中国外務省の汪文斌報道官は記者会見(同28日)で、中国の感染状況について西側諸国とメディアが誇張し、ねじまげて伝えていると非難。「コロナ対応は科学的根拠に基づいた、適切なものであるべきで、人的交流に影響をおよぼしてはならない」「安全な越境移動を確保し、世界の産業サプライチェーンの安定性を維持し、経済の回復と成長を促進するための共同努力が必要だ」と述べた。

   述べている内容には間違いはないものの、数字をねじまげて伝えたのは中国側であり、数字の公表を取りやめたことに世界は不信感を抱いている。2020年の春節で中国が行動制限をしなかったことから、パンデミックが拡大した。世界各国はそのことを教訓として警戒している。

⇒5日(木)夜・金沢の天気    くもり

★「貯蓄から投資」元年、出鼻をくじく株価下落

★「貯蓄から投資」元年、出鼻をくじく株価下落

   仕事始めは波乱の幕開けだった。東証の初日のいわゆる、大発会が開催。読売新聞Web版(4日付)によると、ゲストとして大発会に参加した鈴木財務大臣は、「NISA」(少額投資非課税制度)の拡充政策に触れ、「家計の投資が企業の原資となり、企業価値の向上で家計の金融資産所得が拡大する好循環を実現したい。今年は 卯年うどし 。飛躍の大きな土台となることを期待する」とあいさつし、鐘を打ち鳴らした。

   ところが、大発会後に始まった取り引きは、ほぼ全面安の展開で株価は一時430円値下がりした。終値は年末と比べて377円安い2万5716円で、厳しい滑り出しとなった。鈴木大臣が述べたNISAへの想いを初っ端からくじくような株価の値下がりだ。(※写真はJPX=日本取引所グループのフェイスブックより)

   日本の家計金融資産1700兆円の52%、900兆円が銀行預金として積み上がっている(金融庁試算・2017年4月)。若者からシニアまで資産運用の熱は高まっているといわれ、政府は個人マネーを刺激する政策として、NISAを拡充して恒久化することを昨年末にまとめ、ことし2023年を「貯蓄から投資」を促す元年とすると強調していた。その矢先の株式市況がこれだ。

   なぜ、初っ端から値下がりしたのか。日経新聞Web版(4日付)は「世界景気不安、市場揺らす 日経平均9ヵ月ぶり安値」の見出しで、「2023年の金融市場は世界景気の悪化懸念から株安と商品安で幕を開けた。新年最初の取引となった4日の東京株式市場では外需依存度の大きい銘柄が売られ、日経平均株価が9カ月半ぶりの安値水準に沈んだ。国際商品市場では需要の減退懸念から原油や非鉄金属などに売りが先行した。新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済の先行き不透明感も漂い、投資家はリスク回避の姿勢を強めている」と述べている。

   世界景気の悪化が懸念されるとなれば、そう簡単には相場は回復しないのではないか。JETRO公式サイト「ビジネス短信」(2022年10月4日付)で、「過去最高のインフレで経済見通しを下方修正、2023年はマイナス成長に」の記事を掲載している。ドイツの主要経済研究所の経済見通しのまとめとして、2022年の年平均インフレ率を8.4%と予測、2023年はさらにインフレ率が上昇し、年平均8.8%と予測。2024年は再び落ち着きを取り戻す、としている。

   いまインフレと呼ばれている状況は需要過多というより、供給不足によるものではないだろうか。新型コロナウイルス感染(パンデミック)により世界経済が一時的にロックダウン状況に見舞われたものの、その後、世界が同時に経済活動を再開したことによるモノの供給不足ともいわれる。賃上げがあり、物価も高騰するというこれまでのインフレとは少々、次元が異なる。物価だけが高騰している。いうならば、「悪いインフレ」が加速している。日本の経済状況は典型的な事例だ。

   さらに、アメリカのFRBの引き締め強化による世界的なリスクオフ政策に日本も巻き込まれている。金利上げとなれば、外需依存度の高い企業の業績が懸念される。NISAがこのような株式や経済状況で今後、「貯蓄から投資」へのマインドを鼓舞できるのか、どうか。

⇒4日(水)夜・金沢の天気  ゆき

☆2023卯年・飛躍の年に ~社会~

☆2023卯年・飛躍の年に ~社会~

   金沢の正月3が日は寒波や積雪もなく、わりと穏やかな天気続いた。あす4日は仕事始めなので、年末年始をふるさとや行楽地で過ごした人たちのUターンラッシュなのか、国道8号や北陸自動車道の金沢西ICの周辺はずいぶんと混み合っていた。

   ~エッと驚くジャイアントスイグン、ホッと和むアマメハギ~

   エッと驚くニュースもあった。地元メディアによると、去年3月に石川県知事選に当選した元プロレスラーの馳浩知事が元旦に東京の日本武道館で開催されたプロレス興行の試合に参戦し、得意技のジャイアントスイグンなどで会場を沸かせた、という(3日付・北國新聞、北陸中日新聞)=写真・上=。正月の休暇中だったとはいえ、周囲は当然、けがなどの負傷を心配し止めるよう進言したただろう。それを押し切って、リングに立ったようだ。   

   去年8月4日に県内を襲った豪雨のとき、馳知事は日本三名山の白山(標高2702㍍)の国立公園指定60周年を記念し、知事自ら白山の魅力をPRするために登山。途中の山あいで孤立状態になるというハプニングに見舞われている。気象情報を収集した上で、登山を中止すべき判断もあったのではないかと、当時、知事の登山は物議を醸した。馳氏のジャイアントスイングに周囲が振り回されている印象だ。

   能登の正月の行事といえば、輪島市や能登町に伝わる厄除けの伝統行事「アマメハギ」だ。新暦や旧暦で開催日が地域によって異なる。輪島市門前町皆月では毎年1月2日に行われ、天狗や猿などの面を着けた男衆が集落の家々を回る。当地では、アマメは囲炉裏で長く座っていると、足にできる「火だこ」を指す。節分の夜に、鬼が来て、そのアマメをハギ(剥ぎ)にくるという意味がある。木の包丁で木桶をたたきながら、「なまけ者はおらんか」などと大声を出す。すると、そこにいる園児や幼児が怖がり泣き叫ぶ。その場を収めるために親がアマメハギの鬼にお年玉を渡すという光景が繰り広げられる。(※写真・下は、輪島市観光科・観光協会公式サイト「輪島たび結び」より)

   能登半島のアマメハギや秋田・男鹿半島のナマハゲは2018年にユネスコの無形文化遺産に日本古来の「来訪神 仮面・仮装の神々(Raiho-shin, ritual visits of deities in masks and costumes)」として登録されている。能登にはユネスコ無形文化遺産だけでなく、FAOの世界農業遺産(GIAHS)という国際評価もある。SDGsに熱心に取り組む自治体もある。「能登は上質なタイムカプセル」(坂本二郎・金沢大学教授)と評価されている。伝統文化や行事、産業を持続可能なカタチで引き継ぐ文化風土が能登にはあり、そうした風土がグローバルな価値として再評価を受けている。

⇒3日(火)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

★2023卯年・飛躍の年に ~外交~

★2023卯年・飛躍の年に ~外交~

   北朝鮮がきのう新年早々に弾道ミサイルを発射した。防衛省公式サイト(1日付)によると、1日午前2時50分、最高高度はおよそ100㌔、飛行距離は350㌔で、朝鮮半島東側の日本のEEZ外に落下したと推定される。北朝鮮は前日の31日も弾道ミサイル3発を発射、去年は37回、計70発を日本海に向け発射している。また、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(1日付・Web版)によると、党中央委員会総会で、金正恩総書記は演説し、戦術核兵器を大量生産する必要性を述べ、「核弾頭の保有量を幾何級数的に増やす」と方針を示した。

   ~厄介な隣国にどう対応 岸田内閣の起死回生の一発は~

   脅威を振りかざすのは北朝鮮だけではない。中国も沖縄県の尖閣諸島周辺の領海のすぐ外側にある「接続水域」をうろうろしている。先月29日午前9時現在、中国海警局の船4隻が接続水域を航行しているのが確認されている。中国当局の船が接続水域を航行した日数は去年は334日と、2012年9月11日に日本政府が尖閣諸島を国有化して以降、最も多くなった。

   そして、ウクライナ侵攻を続けるロシアも隣国だ。そもそも、中国とロシアがなぜ国連安保理の常任理事国なのか。中国の場合。もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れる。アメリカのニクソン大統領の中華人民共和国への訪問が公表され、国際社会がにわかに動いた。1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。代わって中国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。常任理事国として相応しいとする正当性はどこにあったのだろうか。

   ロシアも同じだ。戦勝国であるソビエトが崩壊した。それを、ロシアが常任理事国として拒否権を持ったまま引き継いでいる。それが、ウクライナ侵攻という行為があっても国連安保理は機能不全、という現実問題を生み出している。

   話は変わる。岸田総理はことしとても忙しそうだ。G7の議長国を務め、5月には広島市でサミットを開催する。サミットでは当然、ウクライナ情勢をはじめ、唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」の実現に向けたメッセージを発信することになるだろう。

   ただ、最新の世論調査はじつにさえない。共同通信社の調査(12月17、18日)で、内閣支持率は33.1%と発足以来最低だった。「危険水域」とされる20%台まであとわずかだ。得意の外交で起死回生の一発を放つことができるのか、どうか。

(※写真は、広島県庁公式サイトに掲載されているG7サミット開催をPRする湯崎知事=左=ら)

⇒2日(月)夜・金沢の天気     あめ