☆朝刊一面に踊る「統一」の文字

☆朝刊一面に踊る「統一」の文字

   読売新聞と日経新聞の朝刊一面の見出しに「統一」の文字が踊るように出ていた=写真=。読売は「台湾統一」と「旧統一教会」、日経は「台湾統一」の見出し。きょうのトップニュースはこれだ。

   5年に1度の中国共産党大会が16日、開幕した。党トップの習近平総書記(国家主席)は活動報告で、台湾統一について「必ず実現しなければならないし、実現できる」と語った。5年前の報告より大幅に表現を強めた。党大会では異例の3期目続投を決める見通し。習氏は超長期政権を視野に、台湾統一を事実上の「公約」に掲げたかたちだ(17日付・日経新聞)。

   約1時間45分の報告で人民大会堂にひときわ大きな拍手が起きたのが台湾統一の部分だった。習氏は「決して武力行使の放棄を約束しない」とも語り、台湾に軍事圧力をかけた(同)。

          中国はすでに新疆ウイグル自治区などでの人権問題で欧米など世界から厳しい視線が向けられている。台湾統一を公約にしたことで、世界との隔たりがさらに拡大するのではないか。これで世界経済はどうなる、か。

   世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)のさまざまな問題をめぐり、政府は宗教法人法に基づく調査に踏み切る方針を固めた。同法が規定する「質問権」を初めて行使する。組織の実態を調べた上で、裁判所への解散命令請求の適否を判断する構え(17日付・読売新聞)。岸田総理はようやく、腹をくくったのかとの思いがした。

★統一教会と北朝鮮のSLBMとの因縁

★統一教会と北朝鮮のSLBMとの因縁

   北朝鮮の弾道ミサイル発射について、このブログで取り上げている。文字入力をしながら、ずっと思い出せないことが一つあった。かつて、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)が北朝鮮の兵器開発に関わったという事件だった。「あっ、これだ」とようやくたどり着いた。TBSニュースWeb版「JNN NEWS DIG」(今月14日付)の特集「旧統一教会関連会社が北朝鮮に潜水艦を仲介 日本人信者の献金が北の兵器開発に使われていないか」の記事だ。   

   記事を要約する。1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された。売却を仲介したのか東京・杉並区にあった商社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。商社は社員4人の小さな会社だが、全員が統一教会の合同結婚式に出ていた信者だった。

   当時この「鉄くず」潜水艦の売却については当時、ニュースになったものの、警察による刑事事件にはならず、その後、報道は沙汰止みとなった。再びニュースになったのは韓国の国防部の2016年8月の報告だった。北朝鮮がSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルを打ち上げた際に、統一教会の信者が仲介してロシアから北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたとの報告を国会で行った(同)。(※写真は、2016年に北朝鮮が打ち上げたSLBM「北極星」=防衛省・令和4年7月「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

   TBSの特集で、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は「1991年に文鮮明さんが訪朝した際は3000億円とか持参したといわれてます」と述べている。また、北朝鮮にある文鮮明の誕生地を訪ねる「生地巡礼ツアー」が1990年代から行われて、日本人信者が年間1000人参加。ツアーには信者が1人100万円を献金として持参し、生誕の地に捧げるという名目で北朝鮮側に渡っていたとみられる、と指摘している。

   日本の信者から集めた巨額の献金が韓国の統一教会から北朝鮮に渡り、さらに、生地巡礼ツアーと称して北朝鮮に追い銭を投げている。統一教会の関連会社がロシアの潜水艦を北朝鮮に仲介し、その潜水艦を元にSLBMが開発されていたとすれば、まさに言語道断だ。この国防上の問題を政府が徹底解明し、旧統一教会を解散に追い込むこと、さらに反セクト法の制定が急務だろう。
 
⇒16日(日)夜・金沢の天気    くもり

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

   二十四節季でいう寒露のころ。秋も深まり、床の間の掛け物を替えた。「壺中日月長」(こちゅうじつげつながし)。禅語で、壺の中という別世界で、時間に追われることなく悠々と人生を送る、悟りの境地と解釈している。掛け軸を眺めていて、ふと、ニュースの中で壺中の境地にいる人々の姿が浮かんできた。

   河野太郎デジタル大臣は記者会見(13日)で、2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表した。また、24年度末としているマイナンバーカードと運転免許証の一体化時期の前倒しを検討することも明らかにした(13日付・毎日新聞Web版)。ことし8月10日の改造内閣でデジタル大臣に就任、河野氏らしい「突破力」を見せたようだ。

   河野氏の突破力でイメージするのは、防衛大臣だった2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回するとの唐突な表明だ。ミサイルのブースターと呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切った。防衛大臣らしからぬ発言のように思えたが、基地周辺住民の将来不安を想定しての「突破発言」だった。他の政治家とは別の価値観を有する「壺中の政治家」ではある。

   この人の場合は、「ドツボにはまる」という表現がふさわしいのかもしれない。金正恩総書記。北朝鮮は14日午前1時47分、平壌近郊から、1発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。最高高度は約50㌔で、650㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下した。弾道ミサイルは変則軌道で飛翔した可能性がある(防衛省公式サイト)。弾道ミサイルの発射はことしに入って24回だ。9月25日以降は頻発していて8回(13発)になる。北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、これまでの弾道ミサイルの発射について、「金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した」との見出しで特集を組み、戦術核の搭載を想定したミサイルの発射であることを示唆した。

   2017年9月の国連総会で、当時のアメリカ大統領のトランプ氏が「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説したが、まさにドツボにはまり込んでいる。

⇒15日(土)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

★セイタカアワダチソウは「厄介な雑草」なのか

★セイタカアワダチソウは「厄介な雑草」なのか

   きょうは秋晴れのすがすがしい一日になりそうだ。庭にはセイタカアワダチソウが黄色の花を咲かせ、時折そよぐ風に身を揺らしている=写真=。ただ、この植物は植えた覚えはなく、いつの間にか庭に生えていた、いわゆる外来種の雑草ではある。

   なのに、春と夏の草むしり(除草)の際は、数本だけ残している。観賞用でもないのだが、「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」(昭和天皇のお言葉)という有名なフレーズを妙に覚えていて、根こそぎの除草はしていない。ところが、この季節に休耕田や河原、空き地に一面に群生している様子を見るとその勢いに圧倒されそうになり、複雑な思いに駆られることもある。

           そうした見た目のよくない印象もあるのだろう、セイタカアワダチソウは花粉症の元凶と誤解されたこともかつてあった。今でもそう思っている人も多いかもしれない。風に揺れる様子を見ていても分かるように、花粉がほとんど飛ばない。花粉は量が少なく、比較的重いためとされる。いわゆる「風媒花」ではなく、花に寄って来た虫によって受粉する「虫媒花」なのだ。

   以前、植物研究者から聞いた話だが、セイタカアワダチソウは生命力が強い植物であり、さまざま薬効もあるようだ。葉にはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸などが含まれていて、煎じて飲めば、血糖値や血圧の上昇を抑える効果がある。また、フラボノイドも含まれていて、ヨーロッパなどでは葉を潰して虫刺されや外傷の止血剤としても用いられている。入浴剤としても使われている、とか。今では見かけないが、日本では、草丈が1㍍から2㍍と長いことから、かついては簾(すだれ)の材料として活用されていた。

   さまざまに活用方法があるものの、人々の暮らし方の変化にともない、厄介な雑草としか見られない植物になった。こう考えると、才能がある人物を活かしきれず、厄介者扱いにする人間社会も同じ、かと思ってしまう。

⇒13日(木)午前中・金沢の天気    はれ

☆番組の制作意図をさらけ出した、あの一言

☆番組の制作意図をさらけ出した、あの一言

    テレビ朝日公式サイトの「社長定例会見」のページに今月4日の会見の内容が記載されている。その中で、篠塚社長は報道局の社員3名の懲戒処分を当日付で行ったと以下述べている。報道局情報番組センター所属で『羽鳥慎一モーニングショー』のコメンテーター、玉川徹を謹慎(出勤停止10日間)とした。玉川は先月28日、番組で事実に基づかない発言を行い、その結果、番組および会社の信用を傷つけ、損害を与えたことによりと処分した。番組担当のチーフプロデューサー2名を譴(けん)責とした。

   記者からの「出勤停止の後は番組に復帰するのか。また、どのような再発防止策を講じていくのか」との質問に、篠塚社長は関係者のヒアリングなども含めて、会社の規定に従って処分を決定した。出勤停止が明けた段階では番組に復帰するという予定だ。番組も本人も含めて深く反省しているので、改めて指導を徹底して、と返答している。

   舌鋒鋭い玉川コメンテーターだが、今回問題となった発言はネット上のユーチューブ動画に数々上がっている。安倍元総理の国葬(9月27日)で菅元総理が友人代表として弔辞を読み上げ、感動的だったとの絶賛の声がSNSで広がっていた。これについて、翌日の番組で玉川氏は、「演出側の人間として、テレビのディレクターをやってきましたから、それはそういうふうにつくりますよ。政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」などとコメントした。

   素直に聞けば、菅氏の弔辞は電通が作成したとも受け取れ、「電通黒幕」のような物言いだ。それが一転して、玉川氏は翌日の番組で「事実ではなかった」と謝罪した。社とすれば、この事実誤認を単に番組で詫びるだけでは済まなかった。テレビ業界と密接につながる電通側に対し、社として陳謝するという意味を込めて今回の処分になったのだろう。

   以下は憶測だ。経営陣にはもう一つ、憤りがあったのではないかと。玉川氏の発言の「政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ」の部分だ。思い起こすのが、あの「椿発言」だ。1993年、テレビ朝日の取締報道局長だった椿貞良氏(2015年12月死去、享年79)が日本民間放送連盟の勉強会で、総選挙報道について「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないかと報道内部で話した」などと発言した。当時、非自民政権が樹立され、細川内閣が発足していた。この内輪の会合の椿氏の発言が産経新聞=写真・下、1993年10月13日付=で報じられ、テレビ報道の公平公正さが問われた。同氏は責任をとって辞任。その後、国会に証人喚問されるという前代未聞の展開となった。

   玉川氏の発言は椿発言とは真逆の立場ながら、表に出すべきでない番組制作の意図というものをさらけ出してしまった。椿発言がトラウマとなっている経営陣にとってはなおさら気に障ったのではないか、とも憶測した。

⇒12日(水)午前・金沢の天気    くもり時々あめ

★沈黙破り「弾道ミサイル」「核戦力」を強調する背景は

★沈黙破り「弾道ミサイル」「核戦力」を強調する背景は

   北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、9月25日からの今月9日まで7回におよんだ弾道ミサイルの発射について、「경애하는 김정은동지께서 조선인민군 전술핵운용부대들의 군사훈련을 지도하시였다 」(意訳:金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した)の見出しで記事と写真で紹介している。記事を読むと、この日はどこを狙ったなどと具体的に記していて実に生々しい。

   記事によると、9月25日に発射した弾道ミサイルは、貯水池に設けられた水中発射施設からの発射だった=写真・上=。水中発射ということは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)なのだろう。記事では、「設定された高度で正確な弾頭爆発の信頼性が検証された」としている。同28日の弾道ミサイル発射は韓国の飛行場への攻撃訓練で、戦術核弾頭を想定したと記載している。具体的な核攻撃目標が飛行場であり、リアルさを感じる。

   今月4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルが発射され、太平洋に落下した。写真では、金総書記がパソコンのモニターを見ながら、想定飛行を確認する様子が映っている=写真・下=。記事では、「地上中長距離弾道ミサイル」の発射は朝鮮労働党中央軍事委員会の決定によるもので、「敵に対してより強力で明確な警告を発した」と記載している。この中距離弾道ミサイルの飛翔距離は4600㌔と推定され、距離としてはこれまでの弾道ミサイルで最長だった。この射程内には、アメリカ軍のアジア太平洋地域の戦略拠点であるグアムがすっぽりと入る。核弾頭が搭載して高いステルス性能を持つB2戦略爆撃機などが展開するアンダーセン基地がある。

   記事の最後は、「敬虔な同志金正恩は、核戦力が我が国の尊厳、自己主権、射撃権の重大な義務を認識し、最強の核対応態勢を維持し、より後方を強化することへの自信を表明した」(意訳)と結んでいる。5月4日以降、弾道ミサイル発射について、国営メディアは関連記事を掲載していなかった。今回、「沈黙」を破って掲載した狙いはどこにあるのか。「核戦力」を強調するためか。7回目となるであろう核実験への連鎖はあるのか。

⇒11日(火)午前・金沢の天気   くもり時々あめ

☆物価高や旧統一教会問題 ズルズル下がる内閣支持率

☆物価高や旧統一教会問題 ズルズル下がる内閣支持率

   内閣支持率が急落している。共同通信社の世論調査(10月8、9日)を各紙が伝えている。それによると、岸田内閣を「支持する」は35%で、前回調査(9月17、18日)の40%を5ポイントも下回っている。「支持しない」は48%で、前回より2ポイント高まった。(※小数点以下は四捨五入)

   支持する理由については「ほかに適当な人がいない」が49%、また、不支持の理由は「経済政策に期待が持てない」36%とそれぞれ突出している。とくに、経済政策については前回より9ポイント増えている。この背景にあるのが物価高のようだ。値上げによる生活への打撃についての問いでは、「非常に打撃」19%、「ある程度打撃」60%で、8割が「打撃」と答えている。

   自身が注目したのは、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射に関連する質問だった。問いでは「政府は、外国からミサイル攻撃を受ける前に、相手国のミサイル発射基地などを攻撃する『敵基地攻撃能力』の保持を検討しています」との説明で、賛否を尋ねている。「賛成」が54%、「反対」が38%となっている。弾道ミサイル発射は9月25日以降7回目、そして、調査期間中のきのう9日未明にSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの発射があり、急激高まった世論の危機意識のあらわれとも言える。

   関連して、「日本の防衛費をどうするべきか」との問いでは、「大幅に増やす」11%、「ある程度増やす」45%、6割近くが増額と答えている。「今のままでいい」は31%、「ある程度減らすべき」7%、「大幅に減らすべき」3%と4割が現状ないし減額と答えている。これは、防衛費より物価高対策にお金を回せとの民意のようにも読める。

   安倍元総理の国葬(9月27日)についての問い。「全額を国費で負担しました。あなたは安倍氏の国葬実施を評価しますか」では、「評価しない」39%、「どちらかといえば評価しない」23%、と評価しないが6割を占めている。一方、「評価する」13%、「どちらかといえば評価する」26%だった。積極的な意見だけを取り上げれば、「評価しない」が「評価する」の3倍となる。

   連日のようにメディア各社が、政治家と世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の関係を取り上げている。「自民党は旧統一教会と党所属の国会議員との関係を調査し公表しました。あなたは、自民党の対応が十分だと思いますか」との問いでは、「十分ではない」が83%で、前回調査の80%よりさらに増えている。また、「細田衆院議長は、旧統一教会側との関係を自民党調査の発表後に相次いで公表しました。あなたは、細田氏の説明は十分だと思いますか」の問いでは、「十分ではない」が87%だった。旧統一教会に対する厳しい世論の風当たりが政治に向かって吹き続けている。

   共同通信の前々回調査(8月10、11日)では54%あった内閣支持が今回と比べると19ポイントも落ちている。物価高や旧統一教会問題に対して有効な手が打てず、現状の「ズルズル内閣」では、次回は20%台ではないかと憶測してしまう。

⇒10日(月・祝)午後・金沢の天気    あめ 

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

   今度は海からの弾道ミサイルの発射だ。防衛省公式サイト(9日付)によると、北朝鮮はきょう未明、午前1時47分と同53分の2回、半島東岸付近から東方向に向けてそれぞれ1発の弾道ミサイルを発射した。2発とも最高高度は100㌔程度で、約350㌔飛翔したものと推測される。ことし5月7日にも半島東岸付近から、1発のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射している。今回も、海岸付近という発射場所などから、SLBMの可能性が高い。弾道ミサイル発射は9月25日以降7回目(計12発)だが、未明の発射は初めて。

   去年10月19日にも半島東部の潜水艦の拠点となっている新浦(シンポ)付近から、SLBMを東方向に発射させている。このときの労働新聞(同20日付)は「조선민주주의인민공화국 국방과학원 신형잠수함발사탄도탄 시험발사 진행」(国防科学研究所が新型潜水艦発射弾道ミサイルを試験打ち上げ)の見出し=写真=で、2016年7月9日にSLBM「北極星」を初めて発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功し、国防技術の高度化や水中での作戦能力の向上に寄与したと記事を掲載している。

    防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(令和4年度版)によると、北朝鮮は弾道ミサイルを発射可能な潜水艦を1隻保有し、その潜水艦にはSLBM1発が搭載可能。さらに、北朝鮮はより大きな潜水艦の開発を追求しているとの指摘もある。例えば、北朝鮮メディアは金総書記が「新たに建造された潜水艦」を視察したと発表(2019年7月)している。これは、通常の攻撃用潜水艦(24隻)を改造して、SLBMを3発搭載可能にするという指摘もある。SLBM搭載の潜水艦の開発は、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化のほか、敵からの攻撃に対して残存性が高いため報復攻撃を狙っているとされる。

          「残存性」を別の言葉で解釈すれば、敵に対してはSLBMでしつこく攻撃する、復讐を繰り返す、そんな意味だろう。北朝鮮の「瀬戸際戦略」の執念がここに見えるようだ。

⇒9日(日)午後・金沢の天気   あめ

☆金沢の茶席で見たトンボ絵の茶器のこと

☆金沢の茶席で見たトンボ絵の茶器のこと

      きょうは3連休の初日。空模様を気にしながら、3年ぶりに開かれた「金沢城・兼六園大茶会」(石川県茶道協会など主催)に足を運んだ。「大茶会」と言うのも、4つの会場で茶道7流派の12の社中が日替わりで茶席を設ける形式。4つの会場は金沢城や兼六園の近くにあり、それぞれ趣きのある場の雰囲気にひたりながら茶の湯を楽しむことができる。

   最初に訪れたのは金沢21世紀美術館の敷地の一角にある茶室「松涛庵」。もともとは加賀藩主が江戸時代の末期に東京の根岸に構えた隠居所だった。その後、金沢に移築されて茶室に改装、平成13年(2001)に金沢市が取得して一般公開している。露地は枯山水の造り。モダンアートを展示する「21美」とは真逆の伝統的な和風空間でもある。

   ここで表千家の社中が立礼(りゅうれい)席を設けていた。立礼は椅子に座ってお茶を点てる作法=写真・上=。客も椅子に座り、抹茶碗はテーブルの上に置かれる。まさに和洋折衷の風景だ。一説に、明治5年(1872)に西本願寺などを会場として京都博覧会が開かれ、裏千家が外国人を迎えるために考案したものとされる。文明開化といわれた激変する時代に対応するアイデアだったのだろう。

   その立礼でお茶を点てる様子を眺めていた。すると、お点前の女性が手に持った茶器がキラリと光った。何だろうと思い、茶道具の一覧を記した会記を見ると、茶器の作者は「SUZANNEZ ROSS」、作品名は「KINDRED SPIRITS」と記されていた。「あっ、スザーンさんの作品だ」と心でつぶやいた。茶器は粉の抹茶を入れる漆器で、茶杓で抹茶を碗に入れ、お湯を入れて点てる。茶席に欠かせない道具の一つ。 

   スザーンさんには9年前、金沢大学の社会人講座で講演をいただき、輪島市の工房も訪問したことがある。ロンドン生まれのスザーンさんが漆器と出会ったのは19歳の時、美術とデザインを学んでいて、ロンドンの博物館で見た漆器の美しさに魅せられた。 22歳で日本にやって来て、書道や生け花、着付けなど和の文化を学んだ。その後、漆器を学ぶために輪島に移住。1990年から輪島漆芸技術研修所で本格的に学んだ。

   輪島塗には100を超える作業工程があり、分業システムが確立されていて「輪島11職」とも称される。ところが、スザーンさんは木地造り以降の作業をすべて自分一人で手掛けている。漆器の魅力をこう話していた。「器も木で出来ていて生きている、漆も生きているし、私も生きているから、3つの生き物を合わせて一つ。 うまくいく日と、いかない日がある。でも、それが楽しい」

   茶器には蒔絵で秋雲とトンボが描かれていて、トンボの羽には螺鈿(らでん)が施されている=写真・下=。キラリと光ったのはこのトンボの羽だった。では、「KINDRED SPIRITS」をどう日本語に訳するか。「心の友」だろうか。手塩にかけて仕上げた作品が心を癒してくれる、それは友のようでもあり、漆器という「生き物」に込めた想いかもしれない。チャンスを見つけて本人にお会いして作品名について尋ねてみたい。

⇒8日(土)夜・金沢の天気   くもり   

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

   国連安保理が事実上の機能不全に陥っているが、きのう6日朝の北朝鮮の弾道ミサイルの発射はそれに付け込んだかのようなタイミングだった。国連安保理は、北朝鮮が4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受けて緊急会合を開いた。その会合の終了間際に、北朝鮮が日本海に向けて発射したのだ(6日付・NHKニュースWeb版)。

   会合そのものも、常任理事国である中国とロシアが「朝鮮半島周辺でアメリカが日本や韓国と軍事演習を行い緊張を高めた結果だ」と反発したことから、アメリカやヨーロッパの各国と一致して安保理決議違反であるとの声明を出すことはできなかった(同)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   そもそも、中国とロシアがなぜ国連安保理の常任理事国なのか。中国の場合。もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れる。アメリカのニクソン大統領の中華人民共和国への訪問が公表され、国際社会がにわかに動いた。1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。代わって中国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。では、常任理事国として相応しいとする正当性はどこにあったのだろうか。

   ロシアも同じだ。もともと、戦勝国であるソビエトが崩壊した。それを、ロシアが常任理事国として拒否権を持ったまま引き継いでいる。それが、ウクライナ侵攻やウクライナ4州併合という行為があっても国連安保理は機能不全、という現実問題を生み出している。

   解せないもう一つの国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。北朝鮮やロシア、中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。

   日本人にはある意味で「国連離れ」という現象が起きている。データは少々古いが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は2020年10月、国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表している。その中で、日本は国連に対する好感度は14ヵ国中で最も低く、「好感を持つ」29%、「好感を持たない」55%だった。

   アメリカでも国連に対する評価は低下している。ピュー・リサーチ・センターがことし6月に発表したアメリカ国内調査では、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト)

⇒7日(金)夜・金沢の天気     くもり時々あめ