★北朝鮮またICBM 日本海で頻発する威嚇争い

★北朝鮮またICBM 日本海で頻発する威嚇争い

   日本海側に住む者としてやはりこのニュースは気が気でない。メディア各社の報道によりと、防衛省は、北朝鮮が16日午前7時9分ごろ、首都・平壌近郊からICBM(大陸間弾道ミサイル)1発を東側に向けて発射、70分飛行し、午前8時19分ごろに北海道の渡島大島の西約200㌔のEEZ外側の日本海に落下したと発表した。飛翔距離は約1000㌔、最高高度は約6000㌔を超えると推定される。(※写真は、2022年3月24日に北朝鮮が行ったICBM「火星17型」の発射実験。最高高度は6248㌔に達し、飛翔距離1090㌔、67分32秒飛行した=同25日付・労働新聞Web版)

   高い角度で打ち上げて、飛距離を抑える、いわゆる「ロフテッド軌道」での発射だ。弾頭重量にもよるが、ICBMの角度を低くすれば、飛翔距離は1万4000㌔を超えてアメリカ全土が射程内に入る。北朝鮮は今月13日に始まった米韓の合同軍事演習に強く反発し、軍事的挑発行動を続けている。

   北朝鮮と米韓の威嚇争いが頻発している。北朝鮮は先月18日にもICBM「火星15」を、同じ北海道の西200㌔のEEZ内に落下させている。これに対抗し、米韓は翌19日、戦略爆撃機やステスル戦闘機による合同空中訓練を実施している。これに北朝鮮は反発。金正恩総書記の妹、金与正党副部長は翌20日、国営メディアを通じて発表した談話で「最近、朝鮮半島でアメリカ軍の戦略的な打撃手段の動きが活発になっている」と指摘。「情勢を激化させる狂信者にその代価を支払わせる意志に変わりがないことを今一度確言する」と威嚇した(2月20日付・聯合ニュースWeb版日本語)。

   2月28日には米韓合同訓練では特殊部隊を動員した「チークナイフ(Teak Knife)」、別名「斬首作戦」と呼ばれる北朝鮮の指導部を狙った訓練が行われた。この訓練は1990年代以降で毎年実施されているが、尹錫悦政権の発足後の去年9月に続き、半年で2回実施したことになる。

   アメリカは北朝鮮を悪の枢軸」と位置付ける。朝鮮戦争(1950年6月-53年7月)で、北朝鮮側が国境線といわれた38度線を南下し、韓国に侵攻した。これにアメリカなど国連軍は反撃したが、アメリカ軍は3万6000人にもおよぶ多大な犠牲を払った。朝鮮戦争は現在も休戦状態にあり、一触即発の状況に変わりない。朝鮮戦争にどう決着をつけるか、アメリカにとって、チークナイフはその選択肢の一つなのだろう。挑発の頻度を高める北朝鮮、米韓合同訓練の威嚇争いが日本海で頻発する。

⇒16日(木)午前・金沢の天気     くもり

☆日韓首脳会談と「能登はやさしや」オムライス

☆日韓首脳会談と「能登はやさしや」オムライス

   韓国の尹錫悦大統領はオムライスが大好物のようだ。読売新聞Web版(14日付)によると、政府はあす16日に東京都内で予定される岸田総理と尹大統領との首脳会談後の夕食会で、異例の2次会を設定し、尹氏をもてなす方針を固めた。1次会は銀座のすき焼き店、2次会はオムライス好きの尹氏の希望を踏まえ、洋食の名店として知られる銀座の「煉瓦亭」とする。かつて尹氏が都内を訪れた際に食べたオムライスの味が忘れられないという韓国側の意向のようだ。   

   洋食のオムライスの発祥の地は大阪・浪速と言われる。1925年、通天閣が見える繁華街で洋食屋を開業した20代の料理人が、オムレツと白ご飯をよく注文する客がいることに気が付いた。客は胃の具合が悪いのだという。そこで、いつも同じメニューではかわいそうだと、マッシュルームと玉ねぎを炒めて、トマトケチャップライスにしたものを薄焼の卵でくるんで「特製料理」として提供した。すると客は「オムレツとライスを合わせて、オムライスでんな」と喜んだ。これがきっかけで「オムライス」をメニュー化したのだという。

   料理人は洋食店「北極星」を創業した北橋茂男氏(故人)、能登出身の人だった。生まれ故郷の石川県宝達志水町では毎月23日を「オムライスの日」と定め、「オムライスの郷」プロジェクトを進めている(「宝達志水町ホームページ」より)。

   同じ能登出身のパテシエの辻口博啓氏からこんな話を聞いたことがある。辻口氏の米粉を使ったスイーツは定評がある。当初、職人仲間から「スイーツは小麦粉でつくるもので、米粉は邪道だよ」と言われたそうだ。それでも米粉のスイーツにこだわったのは、小麦アレルギーのためにスイーツを食べたくても食べれない人が大勢いること気が付いたからだ。高齢者やあごに障害があり、噛むことができない人たちのために、口の中で溶けるチョコレ-トもつくっている。

   能登には人に気遣いをする文化風土があり、「能登はやさしや土までも」との言葉が江戸時代からある。ユネスコ無形文化遺産にも登録されている能登の農耕儀礼「あえのこと」は、目が不自由な田の神様を食でもてなす行事だ。そう考えると、食文化は「うまさ」というより、作り手の「やさしさ」から生まれるのかもしれない。尹大統領のオムライスの話題がいつの間にか能登の話になった。

⇒15日(水)夜・金沢の天気    はれ   

★「戦争準備」なのか 北朝鮮が誇示する弾道ミサイル

★「戦争準備」なのか 北朝鮮が誇示する弾道ミサイル

   まるで開戦前夜の状況だ。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(14日付)は、北朝鮮が今朝、朝鮮半島の東の海上に向けて弾道ミサイルを発射したとの韓国軍合同参謀本部の発表を伝えている。それによると、午前7時41分ごろから同51分ごろにかけ、北朝鮮南西部の黄海南道・長淵付近から日本海へ短距離弾道ミサイル(SRBM)2発を発射した。12日から米韓による大規模合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」が始まっており、開始前日の12日にも新浦沖で初めて潜水艦から巡航ミサイル2発を発射するなど挑発が続いている。 

   防衛省公式サイト「北朝鮮が保有・開発してきた弾道ミサイル等」によると、SRBMの飛翔距離は400㌔から600㌔とされる。

   北朝鮮の弾道ミサイル発射は去年と同様、今年に入っても頻繁になっている。今月9日にも平壌近郊の南浦周辺から近距離弾道ミサイルを6発発射し、翌日には同時発射した6発のミサイルの写真を機関紙などで「火力襲撃訓練」と発表している=写真、3月10日付・朝鮮中央通信Web版より=。2月は3回。18日に平壌近くの空港からICBM「火星15型」を発射し、北海道の渡島大島沖200㌔のEEZに着弾させている。20日にも「超大型ロケット砲」と呼ぶ短距離弾道ミサイル2発を、23日には戦略巡航ミサイル4発をそれぞれ発射。ことし元日に超大型ロケット砲を1発を発射している。

    北朝鮮は金正恩総書記は今月11日の党中央軍事委員会の会議で「戦争抑止力を攻勢的に活用するための重大な実践的措置」を決定している。今回の米韓合同軍事演習を「戦争準備」と見なし、さらなる武力誇示を展開することも予想される(聯合ニュースWeb版日本語)。

⇒14日(火)午後・金沢の天気     はれ

☆喜怒哀楽なニュース マスク、侍ジャパン、またミサイル

☆喜怒哀楽なニュース マスク、侍ジャパン、またミサイル

   今回のミサイル発射訓練は、米韓両軍がきょう13日から実施する大規模合同演習「フリーダムシールド(自由の盾)」に対する牽制でもある。そもそも、北朝鮮が潜水艦から巡航ミサイルを発射するに至ったのか。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が「文藝春秋」(2023年1月号)で記事を書いている。(※写真・下は、2016年に北朝鮮が打ち上げたSLBM「北極星」=防衛省「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

★本州最後の一羽のトキ「能里」が残した教訓

★本州最後の一羽のトキ「能里」が残した教訓

   本州最後の一羽のトキは愛称「能里(のり)」と呼ばれていた。能登半島で生息していたが、国の指示で1970年1月に捕獲され、繁殖のために佐渡トキ保護センターに移された。しかし、翌71年3月13日にケージの金網でくちばしを折ったことが原因で死んでしまった。もう半世紀も前のことだが、能登の人たちの中には、「昔ここには能里が飛んで来とった」と今でも懐かしそうに話すシニアの人たちもいる。

   こうした能登のトキへの想いが伝わったのだろう、環境省は去年8月、佐渡市で野生復帰の取り組みが進むトキについて、本州で放鳥を行う候補地として能登半島と島根県出雲市を選定し、能登での放鳥は2026年以降と発表した。これを受けて、石川県は先月15日に発表した2023年度の当初予算案で、放鳥のための生息の環境づくり関連費として1億360万円の「トキ予算」を盛り込んだ。また、国連が定める「国際生物多様性の日」である5月22日を「いしかわトキの日」と決め、県民のモチベーションを盛り上げる。(※写真は石川県歴史博物館で展示されている「能里」のはく製)

   トキ放鳥のムードが盛り上がる中で、懸念も増している。このブログでも何度か取り上げた、能登半島で進む風力発電の増設計画についてだ。長さ30㍍クラスのブレイド(羽根)の風車が能登には現在73基あるが、新たに12事業・171基が計画されている。

   自然保護の観点から懸念されるのはバードストライク問題であり、景観上もふさわしくない。そして、地域住民への影響もある。去年7月で開催された「能登地域トキ放鳥推進シンポジウム」(七尾市田鶴浜)で、地元の環境保護団体の代表と立ち話で意見交換をした。代表が住む地域の周囲には10基の風車が回り、「風が強い日の風車の風切り音はとてもうるさく、滝の下にいるような騒音だよ」「これ以上、増設する必要はない」と強調していた。

   石川県は今月5日、能登でのトキの放鳥に向けた「ロードマップ」案を作成。それによると、能登の9つの自治体などと連携し、トキが生息できる環境整備として700㌶の餌場を確保する方針で、化学肥料や農薬を使わない水田など「モデル地区」を設けて生き物調査を行い、拡充していく。

   能登はトキが営巣するのに必要なアカマツ林が豊富だ。そして、リアス式海岸で知られる能登は平地より谷間が多い。警戒心が強いとされるトキは谷間の棚田で左右を警戒しながらドジョウやタニシなどの採餌行動をとる。豊富な餌を担保する溜め池と水田、営巣に必要なアカマツ林、そしてコロニーを形成する谷という条件が能登にはある。佐渡に次ぎ、能登半島が本州のトキの繁殖地となることを期待したい。

⇒12日(日)午後・金沢の天気    はれ

☆「3・11」漁業の町・気仙沼 あれから12年

☆「3・11」漁業の町・気仙沼 あれから12年

  2011年の「3・11」の日には、この被災地で見た光景を思い出してしまう。2ヵ月後の5月11日に宮城県気仙沼市を調査に訪れた。当時、街には海水の饐(す)えたような、腐海の匂いが立ち込めていた。ガレキは路肩に整理されていたので歩くことはできた。市役所にほど近い公園では、数多くの大漁旗を掲げた慰霊祭が営まれていた=写真・上=。

   気仙沼は漁師町。津波で漁船もろとも大漁旗も多く流されドロまみれになっていた。その大漁旗を市民の有志が拾い集め、何度も洗濯して慰霊祭で掲げた。この日は曇天だったが、色とりどりの大漁旗は大空に映えていた。その旗には「祝 大漁」の「祝」の文字を別の布で覆い、「祈」を書き入れたものが数枚あった。漁船は使えず、漁に出たくとも出れない、せめて祈るしかない、あるいは亡き漁師仲間の冥福を祈ったのかもしれない。「14時46分」に黙とうが始まり、一瞬の静けさの中で、祈る人々、すすり泣く人々の姿は今でも忘れられない。

   岸壁付近では、津波で陸に打ち上げられた大型巻き網漁船(330㌧)があった=写真・下=。津波のすさまじさを思い知らされた。2015年2月10日、気仙沼を再び訪れた。4年前に訪れた市内の同じ場所に立ってみた。巻き網漁船はすでに解体されていた。が、震災から2ヵ月後に見た街並みの記憶とそう違わなかった。当時でも街のあちこちでガレキの処理が行われていた。テレビを視聴していて復興が随分と進んでいるとのイメージを抱いていたが、現地を眺めて愕然としたことを覚えている。

   では、震災から11年の漁業の町・気仙沼の現状はどうか。水産庁の2021年統計によると、水揚げ数量は7.5万㌧と、全国ランクでは鳥取県境港に次いで7位となっている。カツオの水揚げは日本一を誇る。ただ、震災直前、7万4千人だった気仙沼市。死者・行方不明者は1433人を数え、人口は現在5万8千人に減った。人口減少は日本全体の課題でもある。気仙沼で行政や漁業関係者、NPO法人の方たちと話をして感じたことは、漁業を中心に地域の一体感がある町との印象だった。ネットニュースをチェックすると、気仙沼では廃棄された漁網のリサイクルが進んでいる。「持続可能な漁業の町づくり」を実現してほしい。あの大漁旗を思い出して願う。

⇒11日(土)午前・金沢の天気    はれ

★早咲きの桜は咲けど どうなる「ジャパン」

★早咲きの桜は咲けど どうなる「ジャパン」

   きょうも気温が20度を超えるなど、金沢は連日5月上旬並みの暖かさとなっている。市内の中心部を流れる犀川沿いで、早咲きの河津桜(カワヅザクラ)が見頃となり、一足早く春の訪れを告げている=写真=。ネットで調べると、河津桜は1955年に静岡県河津町で発見され品種で、2月中ごろの開花から満開まで1ヵ月かけてゆっくりと花が咲く。パッーと咲いて、パッーと散るソメイヨシノとはタイプが異なる桜だ。そして、ソメイヨシノに比べるとピンク色が濃い。花の色どりが少ないこの時季、実に存在感のある花ではある。

   それにしても、このところ暗いニュースが多い。日本の技術力が問われた、主力ロケット「H3」の初号機が7日午前10時37分に種子島宇宙センターから打ち上げられたものの、2段目のエンジンに着火せず、打ち上げに失敗した。国家プロジェクトとして9年前から開発が始まり、2度の年度をまたぐ延期を経て先月17日に打ち上げに臨んだが、発射直前にロケットの1段目の装置で異常が発生し、打ち上げを中止していた。今回、JAXAは最終検証を行い発射に臨んだものの、失敗した。 ロケットはフィリピンの東方沖に落下したが、引き揚げは考えていないようだ。

   さらに、人権問題が問われた。WHOは8日、東アジアなどを管轄する西太平洋地域事務局のトップを務める日本人の事務局長について、不正行為な行為があったとして解任を発表した。2019年に赴任し、新型コロナウイルスの対策で指揮を執ってきたものの、メディアの報道によると、人種差別的な発言をしたとする一部の職員からの批判を受けて、WHOは内部調査を進めていた。公式サイトには解任の声明は掲載されているものの、「These procedures resulted in findings of misconduct. 」と不正行為が発覚したとあるだけで、具体的にどのような行為だったのかは記されていない。

   NHKニュースWeb版によると、国連が定めた「国際女性デー」である8日、イギリスの経済誌「The Economist」がOECD加盟国の主要29ヵ国を対象に「女性の働きやすさ」について、男女の賃金格差や労働参加率の差など10の指標に基づいて評価しランキングを発表した。日本は企業の管理職と衆院議員の女性の割合が最も低いなど半分以上の指標で平均を下回り、総合評価で28位だった。最下位は韓国だった。トップはアイスランドで、北欧の国々が上位を占めた。

   日本の国際評価はさらに墜ちるのか。せめて、WBCでは日本代表「侍ジャパン」の活躍に期待したい。

⇒9日(木)夜・金沢の天気     くもり   

☆金沢名所めぐり~21美に友禅の五彩、白い布まとう男~

☆金沢名所めぐり~21美に友禅の五彩、白い布まとう男~

   先日久しぶりに金沢21世紀美術館に入った。中には観光客が大勢いた。21美は円形の建物になっていて、「正面」という概念はなく、いろいろな場所からの入り口がある。市役所側からの入り口で「チケットをください」と言うと、「きょうは休館日です」との返事。すかさず、「交流ゾーンでは作品が無料で見れますので、どうぞ」と丁寧な対応だった。休館日でもこれだけ人が入るのかと思うくらいのにぎわいだった。

   せっかくなので無料ゾーンで楽しんだ。館内の市民ギャラリ―の壁に描かれている、色鮮やかな花や植物の文様。台湾のアーティストであるマイケル・リン氏の作品=写真・上=。金沢市民だったら、おそくらイメージが沸く。加賀友禅の模様だ、と。推測だが、マイケル・リン氏が金沢を訪れて加賀友禅の着物に描かれた文様が気に入ったのだろう。模様は加賀友禅の中でも古典的な図案のモチーフだ。そして、「加賀五彩」と称される藍、臙脂(えんじ)、黄土、草、古代紫の5色を基調に描いている。かなりのめり込んだ作品だ。

   手前には壁と同じモチーフのロッキングチェアがある。この美術館を共同設計した妹島和世氏と西沢立衛氏によるデザインのイス。そして、このイスに座ると見えてくるアートが、空に向かって定規をあてる姿を描いたブロンズ像「雲を測る男」。ベルギーの作家ヤン・ファーブル氏の作品だ=写真・中=。作品目録によると、ヤン・ファーブル氏はあの有名な昆虫学者ファン・アンリ・ファーブルのひ孫という。

   作品は映画「アルカトラズの鳥男」(1961年・アメリカ)から着想を得た、とある。サンフランシスコ沖のアルカトラズ島にある監獄に収監された主人公が独房で小鳥を飼ううちに、鳥の難病の薬を開発したという実話に基づく。映画の終わりの場面で「研究の自由を剥奪された時は何をするか」と問いに主人公が答えたセリフが「雲でも測って過ごす」だったことからこの作品名がついたとか。昆虫学者の末裔らしい、知的なタイトルではある。

   これは自身の個人的な見立てなのだが、雲を測る男が白い布をまとうときがあり、これが空に映えてまるで生きた人物のような存在感がある=写真・下、2004年9月撮影=。何しろ屋上に設置されているので、大型の台風が接近すると倒れるかもしれないと、美術館のスタッフが布を胴体に巻いて、その上にワイヤーを巻いて左右で固定し、台風一過で取り外すそうだ。レアな日でしか見ることができない、「白い布をまとう男」になる。

⇒8日(水)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

★繰り返された「ちゃぶ台返し」 日韓の信頼関係は

★繰り返された「ちゃぶ台返し」 日韓の信頼関係は

   前回ブログの続き。これまでの日本と韓国の関係性をたとえるなら、「信なくば立たず」という言葉に尽きる。もともと、孔子が、政治を執り行う上で大切なものとして「軍備」「食糧」「民衆の信頼」の三つを挙げ、中でも重要なのが信頼であると説いたことに由来する。相互に信頼があってこそ成り立つ、人と人、人と国、国と国の関係性だが、日本と韓国ではこの関係性は成り立たない。今回、韓国政府は元徴用工問題をめぐって、韓国の財団が日本企業に代わって賠償金を支払う解決策を発表した。ただ、これは信頼回復の糸口がかすかに見えてきたにすぎない。

   しかし、日本政府の方が浮き足立っている印象だ。読売新聞(7日付)によると、経産省は6日、韓国向けの輸出管理の厳格化措置について、両国間で解除に向けた協議を始めると発表した。韓国政府が日本のこの措置についてWTOに提訴していたが、紛争手続きを「中断する」と発表したためだ。近く、2020年3月を最後に途絶えていた局長級の政策対話を再開する。

   日本政府は2019年7月に、「フッ化水素」など半導体関連の3品目について輸出時の許可手続きを厳しくした。さらに、8月には輸出手続きを簡略にする優遇措置の対象国「グループA(ホワイト国)」から韓国を外した。ホワイト国は政府が信頼できる輸出先だと認める国だ。ところが、韓国側で、武器製造に転用可能な日本からの戦略物資を違法に輸出した摘発事例が、2015年から19年3月までに156件あった。

   当時、この違法輸出については韓国側も認めており、素直に「改善する」と言うのかと思いきや、韓国政府は歴史と絡めて日本批判に転じた。文在寅大統領は「賊反荷杖」という韓国語の四字熟語を使って日本批判を展開した。日本語訳では「盗人猛々しい」に相当し、「加害者である日本が、盗っ人たけだけしく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と発言した(2019年8月2日付・朝日新聞Web版)。こうした「ちゃぶ台返し」が繰り返されてきた。

   日本政府が半導体の部品輸出について、韓国をホワイト国から除外したのは、韓国側が輸出管理を適切に行ってこなかったことが原因で、徴用工問題とは何ら関係がない。なので、徴用工問題をめぐって解決策が示されたからといって、経産省が即刻、ホワイト国指定に向けて対話再開という態度は理解に苦しむ。はしゃいでいるとしか見えない。

   2018年12月20日、日本海での韓国海軍の駆逐艦からの海上自衛隊P1哨戒機に対するレーダー照射事件、そして、韓国が領土だと言い張り占拠を続けている島根県の竹島問題など。これらの問題を一つ一つ片付けないことには共通認識も信頼関係も構築できない。

⇒7日(火)午後・金沢の天気    はれ

☆元徴用工賠償 韓国政府は「解決策」だけで済むのか

☆元徴用工賠償 韓国政府は「解決策」だけで済むのか

   これまで隣の国のニュースをチェックしていて違和感があった。韓国政府はいわゆる元徴用工訴訟で、2018年10月に韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を出して以降、当時の文在寅大統領が「三権分立」を言い始め、司法の判断を尊重すると言い続けてきた。三権分立は司法、行政、立法の3権で相互に抑制を効かせ、権力の集中を防ぐことで国民の自由と権利を確保する民主主義のシステムだ。決して政治的に利用するものではない。その韓国政府が今の尹錫悦大統領になって、ようやく本来の三権分立の姿に戻ってきたようだ。

   NHKニュースWeb版によると、韓国の朴振外相はきょう6日午前11時半からの記者会見で、元徴用工訴訟をめぐる問題で韓国政府がまとめた解決策を発表した。それによると、韓国最高裁の判決で賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府の傘下にある既存の「日帝強制動員被害者支援財団」が原告への支払いを行う。財源は「民間の自発的な貢献などを通じて準備する」としていて、韓国企業などの寄付で賄う見通し。

   朴外相は、原告の高齢化に加えて、判決の確定後、日本政府による輸出管理の厳格化や、日本との軍事情報包括保護協定=GSOMIAなどをめぐって対立が深まったことを踏まえ、「冷え込んだ韓国と日本の関係は事実上放置されてきた。今後は両国の関係を未来志向的により高いレベルに発展させていきたい」と強調した(同)。

   朝鮮戦争(1950-53年)で壊滅的な打撃をうけた韓国が、1965年の日韓請求権・経済協力協定で、互いに未払いの賃金など個人の財産・請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」(第2条)と確認し、日本は5億㌦(無償3億㌦、借款2億㌦)の供与を行った。無償分だけでも当時の韓国の国家予算に匹敵する巨額の支援であり、その後「漢江の奇跡」と呼ばれた韓国経済の成長を支えることになる。ところが、元徴用工らは当時の日本の経済協力は少なかったなどと主張して、協定で元徴用工の請求権は解決されていないと訴え、冒頭の韓国最高裁の判決となった。それを韓国政府は三権分立の理念と称して、司法判断を尊重するという流れになっていく。

   国家と国家の約束を反故にして司法判断を尊重するのであれば、外交も国際条約も必要ない。この際、尹大統領は最高裁の司法判断は国際法上、誤りだったと表明すべきではないだろうか。韓国政府が未来志向で日本の信頼を得るには、賠償の肩代わりだけでなく、そのくらいのことをすべきだ。日本と韓国の有り様が「ちゃぶ台返し」とまで言われほど、信頼関係が失墜している。

⇒6日(月)夜・金沢の天気     はれ