★「大地の公園」白山と手取川が世界ジオパークに認定

★「大地の公園」白山と手取川が世界ジオパークに認定

☆能登のコウノトリ 幸福を運ぶのか

☆能登のコウノトリ 幸福を運ぶのか

          国の特別天然記念物のコウノトリの営巣地としては日本で最北といわれる能登半島の志賀町に出かけた。同町の山中で誕生した3羽のヒナを見学するためで、ヒナの誕生は2年連続となる。ヒナを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと福井県越前市生まれのメスで、去年と同じペアだ。
 
   現地到着は午後5時30分ごろ。小雨が降っていて、気温は15度だった。電柱の上につくられた巣を見上げたが、ヒナが頭が少々見える程度だった。20分ほど見上げていたがよく見えなかったので撮影をあきらめて帰ろうとしたとき、親鳥が巣に戻って来た。すると、ヒナが口ばしを開けて、エサをねだっている様子が見え、シャッターを押した=写真=。静かだった辺りの雰囲気も親鳥やヒナの鳴き声でにぎやかになった。
   

   去年ここで巣立ったコウノトリのオスの1羽が10月から11月にかけて台湾で確認された。足環のナンバーから判明した。能登半島からダイレクトに飛んで渡ったとすれば、距離にして2000㌔におよぶ。日本生まれの個体が台湾で確認されたのは初めてのケースだった(台湾野鳥保育協会調べ)。
 
   「コウノトリが住み着くと幸福が訪れる」「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」との伝承がヨーロッパにある。能登から飛び立ったコウノトリたちが伴侶をともなって戻って定着することで、少子高齢化が進む能登もにぎやかになればと夢を膨らませてしまう。
 
   これは自治体への提案だ。能登で生まれ育ったコウノトリは足環をつけているので、「戸籍」を持ったようなものだ。この際、コウノトリの子どもたちに名前をつけてはどうだろうか。かつて、能登で生まれ育ったトキに愛称を募集して、「能里(のり)」とネーミングしたことがある。名前が与えられると、人々の愛着もさらにわくものだ。
 
⇒23日(火)夜・金沢の天気   くもり

★ゼレンスキー大統領がヒロシマで発したメッセージ

★ゼレンスキー大統領がヒロシマで発したメッセージ

   G7広島サミットは21日に閉会したが、ウクライナのゼレンスキー大統領が急きょ日本を訪れ参加したことで、注目度が一気にアップした。19日午後にテレビで来日のニュース速報が流れ、20日午後3時35分にフランス政府専用機で広島空港に到着した。タラップを降りる姿はトレードマークとなった全身カーキ色の服で軽くステップしながらも堂々とした姿で、ロシアの侵略戦争と戦う指導者というイメージがさらにアップした印象だった。

   翌日21日午後、ゼレンスキー大統領がサミット閉幕後に原爆資料館を訪れ、岸田総理とともに平和記念公園の原爆慰霊碑に献花した。このとき、前日のカーキ色のトレーナーを黒いトレーナーに着替えていたように見えた。外務省の公式サイトをチェックすると、黒のトレーナーで献花していた。哀悼の意を込めて黒色に着替えたのだろう=写真・上=。

   原爆資料館を訪れたときに、芳名帳に記帳したゼンスキー大統領のメッセージが外務省公式サイトに掲載されている=写真・下=。「Глибоко вражений відвіданням Музею. Жодна держава світу не має пережити такий біль і руйнування. Ядерному шантажу не місце в сучасному світі.」(原爆資料館の訪問に深く感銘を受けた。世界中のどの国も、このような苦痛と破壊を経験することがあってはいけない。現代の世界に核による脅しの居場所はない)

   ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用も辞さない構えを見せる中、被爆地ヒロシマで核の脅しに屈しない姿勢をメッセージとして伝えた。

   平和記念公園の原爆慰霊碑に献花した後に行われた記者会見で述べた言葉。「ウクライナのバフムトで起きている破壊とかつての広島の写真の風景が似ている。バフムトはすべての建物や道路が壊された状態だ。広島を見て、生きている街だと感じた。バフムトも将来、必ず再建できると思う」(21日付・NHKニュースWeb版)。

   バフムトはウクライナ最大の激戦地となっている東部ドネツク州の要衝。ガレキと化しても、広島のように復興し、繁栄できる、それを目標にするという決意でもある。ゼレンスキー大統領が被爆地ヒロシマから世界へ発信したメッセージだ。

⇒22日(月)夜・金沢の天気    くもり 

☆生成AIの進化と危険性とは

☆生成AIの進化と危険性とは

   「生成AI」をめぐる議論が沸騰している。画像や文章だけでなく、複数の材料を読み込ませることで自動的にコンテンツを生成する「ジェネレーティブAI(生成AI)」の技術は企業のDX化の活用などで注目されていると同時に警戒もされている。

   何かと話題に上っているのは「チャットGPT」。アメリカのIT企業「OpenAI」が開発した、いわゆる「自然言語処理モデル」。簡単に言えば、自然な対話形式での対応で、人が普段通りの文章で質問しても、丁寧に返答する。ただ、その回答は的確な場合もあれば、疑問符がつくものもある、とされる。

   生成AIが議論されるようになったのは、いわゆるフェイクニュースや誤情報の拡散、誹謗中傷、詐欺などに利用される恐れがないのか、という点だ。何しろ、自身のスマホやPCにも、連日のように迷惑メールが届く。最近は、金融機関やネットショップからのような偽装メールが多い。チャットGPTがこうした詐欺に悪用されるのではないかと懸念を抱いたりもする。

    マスメディアの警戒感も強いようだ。国内の新聞社や通信社、放送局が加盟する日本新聞協会は今月17日、チャットGPTなど生成AIによる報道関連コンテンツの利用に対する見解を公表した。記事や写真が無断でAIに利用されたり、AIがつくる偽情報や世論を誘導する情報がインターネット上に拡散したりすれば、言論空間を混乱させると警鐘を鳴らした(17日付・朝日新聞ニュースWeb版)。

   生成AIがネット上の報道記事や写真を無断で取り込み、第三者にサービス展開を有料でするとなれば、メディア各社が有する著作権などの権利を侵害することになる。アメリカの新聞協会にあたるニュース・メディア・アライアンス(NMA)も先月、「AI原則」と題した開発者や政府に対する要望書を公表。報道機関などのコンテンツの無許可の使用は「盗んでいることになる」として、生成AIへの利用には明確な許可が必要だと主張している(同)。

   アメリカのバイデン政権は今月4日、AIや量子技術などの先進技術を巡り、国際標準のルールづくりを主導するための新戦略を発表した。経済界や学界などと協力し、グローバル企業が国境をまたいだ活動をしやすくする。日本やEUに加えて、新興国にも参画を促す(4日付・日経新聞Web版)。一方で、バイデン大統領は同じ日、OpenAIなど4社のCEOと会談し、AIをめぐる安全性確保の法的責任を負うように求めた(同)。

   確かに、AIなどの新技術をルールを制定せずに放置しておくことは「人類の危機」を招くことになるかもしれない。G7広島サミットでは核軍縮・不拡散と同時に、AIのルールづくりなどをテーマにしてほしいものだ。

☜20日(土)夜・金沢の天気      はれ

★感動シーンを創る「役者」たち 舞台はヒロシマ

★感動シーンを創る「役者」たち 舞台はヒロシマ

   G7の各国首脳らが広島市の原爆慰霊碑で一列に並んで花を手向け、記念の植樹をする様子をNHKの生中継で視ていた。ロシアがウクライナへの侵攻を続け、核兵器で威嚇するような発言を繰り返してしている現状なので、格好のタイミングだったかもしれない。ただ、感動的だったかというと、やはり2016年5月の「G7伊勢志摩サミット」後に被爆地ヒロシマの原爆慰霊碑を訪れたアメリカのオバマ大統領が被爆者を抱き寄せたあのシーンには及ばない=写真・上=。

   感動的なあのシーンには背景があった。2009年4月、プラハでの演説でオバマ大統領は「核兵器なき世界」を提唱し、ノーベル平和賞を受賞した。唯一の戦争被爆地の訪問は7年の歳月を経て、しかも、大統領任期の最終年でようやく実現したのだった。現職の大統領の広島訪問の実現はアメリカ世論では難しいとされていたが、それを乗り切った経緯もあったので、感動は深いものになった。

   今回はそれほど感動的ではなかったとは言え、G7の各国首脳が初めてそろってヒロシマを訪れ、原爆慰霊碑に花を手向けるシーンは海外メディアを通じて流れ、国際社会に向けて核兵器による惨禍を二度と起こさないという強いメッセージとなったことは間違いない=写真・下、NHK中継番組より=。オバマ大統領のヒロシマ訪問は当時の安倍総理(外務大臣は岸田氏)の、今回のG7各国首脳の訪問は岸田総理の功績と言える。

   そして、テレビメディアでニュース速報が飛び交った。ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに出席する、というのだ。対面出席の日程などはまだ明らかにされていない。

   サミットではきょう午後、ウクライナ情勢をテーマにした討議が行われ、議論の成果をまとめた声明を発表した。ロシアによるウクライナ侵攻は不当で、国連憲章違反の侵略戦争であると非難、ロシアに対してすべての軍を即時、かつ無条件に撤退させるよう求め、永続的な平和の実現はロシア軍の撤退なしには実現できないと強調した(NHKニュースWeb版)。ゼレンスキー大統領の来日はG7との強い連帯を求める意思表明なのだろう。前回のヒロシマでの役者はオバマ、そして今回の役者がいよいよ登場する。歴史に残るサミットになるかもしれない。

☜19日(金)夜・金沢の天気   くもり時々はれ

☆ラッピング紙面の発信効果をG7広島サミットにも

☆ラッピング紙面の発信効果をG7広島サミットにも

   朝刊(17日付)を見て、「何だこれは」と少々驚いた。石川県の地元の2紙がいわゆる「ラッピング紙面」だったからだ=写真=。特別な紙面で紙面全体を包むこの方法はまれに広告紙面であったり、特別なイベントのときに用いられる。一紙は加賀友禅の着物の文様だろうか、淡い色を背景にした花柄などは金沢をイメージするデザインだ。もう一紙は、これも金沢らしい。和紙でつくられた水引細工がデイザン。金沢では結婚の結納などめでたい儀式などでよく使われる。写真の水引はボリューム感のある作品だ。

   地元2紙がなぜ同じ日にラッピング紙面というイベントを行ったのかと思い記事を探すと、17日と18日の両日、全日本広告連盟(全広連)の創立70周年記念大会が金沢市内を中心で開催されるとある。新聞や放送、広告各社の関係者が全国から約1000人が集まるようだ。大会のテーマは「広告は新たな時代への門だ。」とある。確かに、メディアはネットやSNSなどで多様化し、それにAIテクロジーが拍車をかけるように広告業界も混乱しているのではないだろうか。

   電通の「2022年 日本の広告費」によると、総広告費は7兆1021億円で過去最高となった。けん引しているのはインターネット広告費で前年比114%の伸び。ところが、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)は雑誌が93%、新聞は97%、テレビ(地上波、BS・CS)は98%と下降している。全広連とすれば、大会テーマにもあるように、この混乱を新しい時代のニーズと受け取り、広告の役割を探るきっかけにしたいのだろう。そう考えると、ラッピング紙面は広告新時代を予感させる。

   話は変わるが、もう一つラッピング紙面があってもよいのではないだろうか。あすから「G7広島サミット」が開催される。メディア各社の報道によると。ウクライナ侵攻を続けるロシアや覇権主義的な動きを強める中国への抑止策を協議するほか、核兵器の不使用や透明性の向上も訴える。広島県の地元紙はG7サミットの意義を訴えるラッピング紙面をあすの開幕の日に一斉に発刊してはどうだろうか。地元のメディアこそ広島を発信してほしい。

⇒18日(木)夜・金沢の天気    はれ

★能登の震度6強 避難所に「バンさんのマジキリ」

★能登の震度6強 避難所に「バンさんのマジキリ」

   前回ブログの続き。今回の地震6強の揺れで家屋などの被害が大きかった珠洲市正院町を歩いていると、横から声をかけられた。市長の泉谷満寿裕氏だった。金沢大学が2006年に開設した、生物多様性の学び舎「能登半島 里山里海自然学校」は泉谷市長との協働作業で同市で実現したプロジェクトだった。その経緯から、これまで何かと声をかけていただいている。

   立ち話で、「バンさんのマジキリがすごいので見に行かれたらいい」と。「バンさんのマジキリ」の意味が分からなかったが、「それはどこにありますか」と尋ねると、「大通りを右にまわって、駐在所の後ろにある正院公民館にある」とのことだった。

   さっそく行ってみると、公民館は避難所だった。玄関でスタッフに「バンさんのマジキリはどこにありますか」と尋ねると、案内してくれた。正直な話、珠洲市は国際芸術祭を開催しているので、泉谷市長から「バンさんのマジキリ」と聞いて、芸術作品かとも思っていた。ところが、実際に見てみると、避難所のパーテーションだった=写真・上=。

   スタッフの説明によると、建築家の坂茂(ばん・しげる)氏は、被災した人々にプライバシーを確保する避難所用の「間仕切り」の支援活動を行っていて、同市にもその間仕切りが寄贈された、とのこと。間仕切りは木製やプラスティックなどではなく、ダンボール製の簡単な仕組み。カーテン布が張られているが、プライバシー確保のために透けない。中にあるベッドもダンボールだ=写真・下=。坂氏は1995年の阪神大震災を契機に災害支援活動に取り組んでいて、このような「バンさんのマジキリ」を開発したようだ。

   それにしても、泉谷市長からいきなり「バンさんのマジキリ」とは別の意味があるのではと考えてしまった。そこで、「珠洲市」「坂茂」でネット検索すると、ことし9月に開催を予定している「奥能登国際芸術祭2023」に向けて、日本海が見える丘にある劇場型民俗博物館「スズ・シアター・ミュージアム」の隣接地でカフェがオープンすることになっている。その建築設計を担当しているのが坂氏だった。おそらく、泉谷市長は坂氏とこれまで面談を重ねている。なので、「バンさん」と親し気な表現なのだと理解できた次第。

⇒17日(水)午後・金沢の天気   はれ

☆能登の震度6強 目にした崩落の現場

☆能登の震度6強 目にした崩落の現場

          能登半島の尖端で震度6強の地震が発生してきのう15日で10日目。恐る恐るだが午後に現地を訪ねた。恐る恐るというのも、きのう午前中も震度2が1回、そして昼過ぎに震度1が2回あった。揺れは続いているのだ。ただ、現地をこの目で確かめないことには気持ちが納まらないという想いもあり、エイッ、ヤッーと車のアクセルを踏んだ。

   金沢から2時間ほどで珠洲市に着いた。今回の地震では同市を中心に1人が亡くなり、40人がけが。住宅被害は全壊が16棟、半壊15棟、部分損壊が706棟となっている。また、住宅以外でも蔵や納屋など62棟に被害が及んでいる(石川県危機管理監室まとめ)。被害が大きかった同市正院町に入ると、全半壊の家屋や、土蔵の白壁が落ちる=写真・上=などの被害があちらこちらにあった。

   これまでの何度か購入したことがある酒造メーカー「櫻田酒造」を訪ねた。酒の貯蔵庫では屋根の落下や辻壁の剥がれ落ち、貯蔵タンクの一部が傾くなどしていた。震度6強の揺れでは、棚から出荷前の一升瓶が200本落ちて割れた。冬季の酒の仕込みに間に合うように酒蔵の改修工事を予定しているが、社長は「さらに強い地震が来るのではないかと不安もよぎる」と話した。   

   海岸沿いにある「須須(すず)神社」では鳥居が倒壊していた=写真・中=。この神社は、国指定重要文化財の「木造男神像」や、この地を訪れた源義経が海難を免れたお礼にと奉納した「蝉折の笛」や「弁慶の守刀」が収められていることで知られる由緒ある社だ。鳥居は花崗岩でできており、高さ9㍍もある大鳥居だった。近くを歩いていたシニアの男性に尋ねると、去年6月の地震6弱の揺れで鳥居が一部壊れ、修復工事を終えたばかりだったという。「また鳥居が崩れるなんて、残念です」と肩を落とした。

   山沿いに入ると裏山が崩れている民家があった。家まであと数㍍のところで土石流が止まっていた=写真・下=。揺れだけでなく、今後、大雨に見舞われたらさらに二次災害が起きるのではないかとつい不安がよぎった。

⇒16日(火)夜・金沢の天気    はれ

★強いエルニーニョが夏に異常気象をもたらすのか

★強いエルニーニョが夏に異常気象をもたらすのか

   気象庁は今月12日付で少々不気味な監視速報を発表した。「今後、夏までの間にエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(80%)」と。世界の異常気象の一因とされるエルニーニョ現象が夏までに80%の確率で発生するというのだ。

   この現象は、太平洋赤道域の中央部(日付変更線付近)から南米のペルー沿岸部にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が半年から1年半ほど続く。海で起こる現象ではあるものの、発生すると大気に影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態となり、雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくる。

   エルニーニョ現象があった2009年の8月9日付のブログでこのように書いている。「盛夏のころだというのに一日中雨か曇り、朝が晴れでも昼には雨だ。太陽が照りつける夏らしい天気は数日あったかどうか。海面水温の高い状態が半年以上続くエルニーニョ現象で、日本の場合、梅雨明けの時期が遅れ、冷夏や暖冬になりやすいとか」

   上記のように、夏にエルニーニョ現象が発生すると、盛夏に「戻り梅雨」のような天気となる可能性がある。ただ、メディア各社の報道によると、ことしのエルニーニョ現象は数年の一度のものとはスケールが異なるようだ。発表した気象庁の異常気象情報センターの楳田貴郁所長は、「太平洋赤道域の海洋の貯熱量も上昇してきて、過去最大級のエルニーニョだった1997年から98年のレベルに近付いている。強いエルニーニョになる可能性を持っている」と述べている(12日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。

   過去最大級の強いエルニーニョとなれば、単なる「戻り梅雨」ではなく、1997年から98年にかけて起きたような高温や大雨被害、日照不足など日本を含め世界各国で起きた異常気象に再び見舞われるのか。

⇒14日(日)午後・金沢の天気    あめ

☆震災にめげない能登・珠洲市の国際芸術祭

☆震災にめげない能登・珠洲市の国際芸術祭

   能登半島の尖端でマグニチュード6.5、震度6強の地震が今月5日に発生し1週間が過ぎた。生活再建の道のりも徐々にではあるが進んでいるようだ。地元メディアの報道によると、石川県庁が建物の応急危険度判定で調査した2717棟のうち、住宅被害は全壊15棟、半壊15棟、一部損壊706棟だった。さらに、工場や店舗などの事業所の被害も355棟に及んでいることが分かった。これを受けて、馳知事は被害の大きかった珠洲市に応急仮設住宅を建設し、さらに、被災者生活再建支援法の適応を決めた。全半壊の住宅の再建では最大300万円の支援金が得られる。

   ただ、地震は今も続いている。気象庁公式サイトによると、きのう12日だけでも震度2が1回、震度1が4回あった。きょうの午前5時25分にも震度1があり、今月5日以降で震度1以上の地震が100回も観測されたことになる。

   そうした状況の中で気になっているのが、珠洲市でことし秋に開催予定の「奥能登国際芸術祭」(総合プロデューサー・北川フラム氏)はどうなるのか、ということだ。2017年に始まった国際芸術祭は3年に一度のトリエンナーレで開催される。2020年はコロナ禍で1年間延期となり、翌年に「奥能登国際芸術祭2020+」として実施された。3回目のことしは9月2日から10月22日まで、14の国・地域の55組のアーティストによる作品が展示されることになっている=イラスト=。国際芸術祭の旗振り役の泉谷満寿裕市長が意外なタイミングで開催実施を表明した。

   きのう12日、NHK金沢が午後7時30分から放送したローカル特番「生放送 能登・6強から1週間 またも起きた地震 私たちは何をすべきか 珠洲市長生出演」を視聴した。その中で、リモートで出演していた泉谷市長=写真=が「市民を理解を得て芸術祭を開催したい」「市民に希望を持ってもらうためにも」などと述べていた。アナウンサーから質問があって述べたのではなく、自発的な発言だった。ある意味で公共の場でもあるテレビの生番組なので、開催実施を宣言したようなものだ。

   今後、市議会などで開催の是非めぐり論戦が交わされるに違いない。珠洲市の国際芸術祭をこれまで何度も鑑賞する機会があった。思うことは、地域の住民がアーティストとともに作品づくりなどに積極的に関わり、そして作品の展示場では多くの人がガイド役をこなしている。「地域と一体となった芸術祭」というイメージなのだ。泉谷市長が述べたように、それは「市民の希望」ではないだろうかとも思う。

   ただ、観客あっての芸術祭でもある。鑑賞に行きたくても被災地に赴くことに不安を感じる人もいるだろう。そこで、作品鑑賞をリモートでできるシステム「デジタル奥能登国際芸術祭」などがあれば国内から、そして世界からアプローチがあるのではないだろうか。震災にもめげずに一大イベントをやり遂げる地域の底力に期待したい。

⇒13日(土)午後・金沢の天気   くもり