☆能登半島地震 遺産と伝統文化の気がかりな行く末

☆能登半島地震 遺産と伝統文化の気がかりな行く末

   石川県は昨夜から雨続きで、気象庁は能登の輪島市、珠洲市、七尾市、中能登町に大雨警報を発表し、きょう10日夕方にかけて雨や雪解け水により土砂災害の危険度が高まると注意を呼びかけている。メディア各社の報道によると、県は震災による死亡を203人(10日午前9時現在)、このうち地震や津波が直接的な原因でない、いわゆる災害関連死が7人と発表した。

   先日、能登町の実家に行く際、う回路の穴水町を経由した。道路はどこもかしこもヒビ割れて隆起し、傾いていまにも崩れそうな家屋も多い。のと鉄道「穴水駅」近くにある穴水大宮の前を通ると、鳥居や手水舎(てみずしゃ)が無残にも崩れ落ちていた=写真=。毎年9月に大宮などを中心に盛大なキリコ祭りが開催される。神輿やキリコ、山車などが曳き出され、提灯や奉灯で長い光の帯ができ、イヤサカヤッサイ、サカヤッサイと男衆の掛け声も勇ましく、笛と鉦、太鼓の囃子が町中に響き渡る。崩れた鳥居や周囲の家屋を眺めると、能登の伝統のキリコ祭りは今後どうなるのかと気がかりになる。

   珠洲市で木炭製造会社を経営する大野長一郎氏と連絡がつき電話で話した。伝統的な炭焼きを今も生業(なりわい)としている県内で唯一の事業所で、付加価値の高い茶道用の炭の生産に力を入れている。自宅と作業場は市内の山中にある。被害を尋ねると、「3つある(炭焼き)窯は全滅です」と。

   茶道用の炭は切り口がキクの花模様に似ていることから「菊炭」とも呼ばれ、炉や風炉で釜の湯を沸かすのに使う。クヌギの木を材料としていて、大野氏の菊炭はススが出ず、長く燃え、燃え姿がいいと評価が高く、全国から茶人が炭窯を見学に訪れている。大野氏は日本の茶道文化の一端を担えてうれしいと話していただけに、窯の全壊による落胆の様子が電話からも伝わってきた。

   能登の里山里海に伝承される農業や漁業、林業が国連食糧農業機関の世界農業遺産(GIAHS)に認定されたのは2011年6月のこと。FAOによる日本で初めての国際評価で、輪島の千枚田はそのシンボルだ。その千枚田に震災によって多くのヒビ割れができていると地元紙が伝えている(5日付・北國新聞Web版)。もともとこの地は地滑り地帯で、地元で語り継がれる「大(おお)ぬけ」と呼ばれる大規模災害が1684年(貞享元年)にあった。今でいう深層崩壊だ。その土砂崩れ現場を200年余りかけて棚田として復元したことから、「農業のレジリエンス(復興)」としてFAOは高く評価している。それが棚田に多くのヒビ割れとなると水耕栽培は当面は難しいかもしれない。

⇒10日(水)午後・金沢の天気   あめ

★能登半島地震 液状化現象でゆがむ街並み

★能登半島地震 液状化現象でゆがむ街並み

   日を追うごとに犠牲者が増えている。石川県庁危機管理監室のまとめによると、亡くなった人は202人、重軽傷者は565人に上る(9日午後2時現在)。道路の寸断などで輪島や珠洲など奥能登2市2町などでいまも24地区3300人が孤立状態に。生活インフラの復旧もまだ途上で、1万8000戸で停電、5万9000戸で断水が続いている。

   2万8000人が地域の公民館など400ヵ所に避難しているが、低体温症や感染症などに注意が必要なことから、県では金沢を含め県内外の宿泊施設に被災者を移す「2次避難」へと動いている。気象庁はきのう8日の会見で、地震活動は活発な状態が続いていることから今後1ヵ月程度、最大震度5強以上の地震に注意するように呼びかけた。

   今回の能登半島地震では能登の被災地が主に報道されているが、金沢市に隣接し、日本海に面した内灘町でも大きな被害が起きている。きのう現場を見に行った。シニア世代ならば聞き覚えがあるかもしれないが、内灘は1952年に在日アメリカ軍が砲弾試射場を砂丘に設置したことがきっかで起きた住民による基地反対闘争で知られる。その町の一部が今回の地震で道路がいたるところで隆起したり陥没したりしている=写真・上=。地面がゆがみ、多くの住宅や電柱が傾いている=写真・下=。道路が15度ほど斜めになっているところもある。

   元旦の地震では内灘町は震度5弱だった。震源となった能登からは距離がある地域だが、なぜこのように被害が大きくなってしまったのか。隆起した現場をよく見ると、土砂が噴き上げた様子があちらこちらにある。これを見て液状化現象だと思った。2007年7月16日に震度6強の揺れとなった新潟県中越沖地震の後、柏崎市を訪れたことがある。このときも道路に土砂があふれていて、初めて液状化現象の現場を見た。

   今回、液状化現象が見られた内灘町の西荒屋地区は、河北潟の西側に広がる。この地域は江戸時代から河北潟を埋め立てる干拓事業が進められてきた。もともと砂地だった場所なので液状化現象が起きたのだろうか。

⇒9日(火)夜・金沢の天気   あめ

☆能登半島地震 氷点下の被災地で「低体温症」が気がかり

☆能登半島地震 氷点下の被災地で「低体温症」が気がかり

   能登半島地震が発生してからきょうで1週間、朝は冷え込んでいる。天気予報によると、金沢の最高気温は4度、最低気温は1度、能登はさらに冷え込みが強く、輪島は最高気温は3度、最低気温はマイナス1度だ。雪も積もっている。金沢の自宅周辺は5㌢ほどだが、能登の珠洲市で12㌢、七尾市で11㌢、輪島市で9㌢などとなっている(8日午前5時現在・日本気象協会「tenki.jp」より)。今後さらに積雪が予想されるという。(※写真は、8日午前7時35分ごろの金沢市内の積雪の様子)

   積雪は去年12月22日、気象庁が北陸に「顕著な大雪」を呼びかけて以来だ。ここで気になるのは、雪の重みだ。北陸の雪はパウダースノーではなく、湿気を含んで重く、庭木の枝などがよく折れる。北陸の家々で雪吊りを施すのはこのためだ。被災地でこの重い雪がさらに積もると、どのような影響を及ぼすのか。屋根瓦が崩れた家に雪が積もると重圧となり、倒壊するのではないかと思ったりする。

   これまで確認された死者は128人に上る(7日午後2時現在)。そして石川県のまとめによると、県内15市町の約400の避難所に2万8000人が身を寄せているという。これは行政が把握している避難者の数で、孤立した集落などではビニールハウスや民家、神社・寺院などに自主的に退避している人も相当いると見込まれる。また、被害が大きい輪島、珠洲、能登、穴水の2市2町で2300人が孤立状態で、連絡の取れない安否不明者が195人に上っている。

   そのような中で断水と停電がいまも続き、さらに気温がマイナスとなった。そこで懸念するのが、いわゆる「災害関連死」だ。ネット上で公開されている内閣府政策統括官リポート「災害関連死について」によると、2016年4月の熊本地震の犠牲者270人のうち、生き埋めになるなどして死亡した人は50人、災害と関連して亡くなったのは220人だった。関連死の事例として、「83歳女性が慣れない避難所生活から肺炎状態となり入院先の病院で死亡」「78歳男性が地震後の疲労等による心不全で死亡」「避難中の車内で74歳女性が疲労による心疾患で死亡」「32歳男性が地震による疲労が原因と思われる交通事故による死亡」「43歳女性がエコノミー症候群の疑いで死亡」など。

   被災地では疲労に寒さが加わり低体温症などで体調を崩す人が続出するのではないかと心配になる。

⇒8日(月・祝)午前・金沢の天気    くもり

★能登半島地震 雪と雨でさらなるリスク

★能登半島地震 雪と雨でさらなるリスク

   きょうの朝刊各紙は「124時間ぶり 90代救出」を報じている=写真・上=。地震で倒れた家屋の生き埋めになるなど、石川県内の死者が120人を超える中、珠洲市の住宅地で90代の女性が救出された。報道によると、6日午後8時20分ごろ、倒壊した2階建て家屋1階部分のベッドの上にいた女性で、発見時、救助隊員との会話ができ、手も温かかった。救出は冷たいが雨が打ちつける暗闘の中、ライトをつけて行われた。生存率が著しく下げるといわれる「72時間の壁」を大幅に超える「救助劇」だ。

   未曽有の災害ながら、一筋の安堵感のあるニュースだった。一方で、5日に能登の実家を訪ねた際に不穏な話も耳にした。「片付けをお手伝いしますと言って、盗みに入る自称ボランティアがいるらしい」とのうわさだ。「関東ナンバーの車で来ているグループのようだ」とも。被災地ではとても緊張感が高まっていて、同時に警戒心も張りつめているので、こうした話はどこまで信憑性があるのか分からない。

   さらに、心配なのは天気だ。気象庁によると、北陸と新潟県の上空にこの時期としては強い寒気が流れ込んでいて、能登では雨が降っていて、平地でも雨は次第に雪に変わる見込みという。きょう7日夕方にかけて大雨となるところがあり、夜から8日昼前にかけて平地でも大雪となるおそれがある。

   大雨が降った場合、心配なのは山間地のがけ崩れで谷川がせき止められてできる土砂ダム、そしてため池の決壊だ。能登半島は中山間地での水田が多く、その上方にため池が造成されている=写真・中=。半島全体で2000ものため池があると言われている。元旦の最大震度7を含めきょう7日11時までに最大震度5弱以上の地震が15回観測されている。地震でため池の土手に亀裂などが入っていると、急に雨量が増すことでため池が決壊する可能性がある。こうなると、下流にある集落に水害が起きる。

   天気でもう一つ心配なのは、道路に降る雪だ。これは5日に実家に戻った際に体感したことだが、道路ではあちこちに地割れなどが起きていて=写真・下=、アスファルトの破片などが周囲に散っている。なので、道路表面を注意深く見ながら走行することになる。ところが、道路に雪が降るとそうした危険なエリアは見えなくなる。たとえば救急車がそうしたエリアに乗り上げた場合、横転やパンクといった被害が出る可能性が高くなる。

   能登の道路には救急車や救助車が多く行き交っている。車のナンバーを見ると雪国ではない地域からも多く派遣されている。不慣れな雪道での運転でスリップ事故など起きなければよいが、ついそんなことを思ってしまった。

⇒7日(日)夜・金沢の天気   あめ  

☆能登半島地震 救急車が行き交う被災現場を行く

☆能登半島地震 救急車が行き交う被災現場を行く

    震災から4日たったきのう5日、能登町の実家を訪れた。生まれ育ったところでもあり、震災でどのようになったのかこの目で確かめたかった。兄夫妻が家業を継いでいる。震度7に見舞われた1日から電話やスマホが繋がらない状態になっていた。4日午前になって初めて、家族から「なんとか車中生活でしのでいる」と連絡があった。そこで、金沢で買い込んたブルーシートや飲料水などを弟のライトバンに積んで、いっしょに出かけた。

   午前7時に出発。金沢から輪島に向かう半島の縦貫道「のと里山海道」(全長83㌔)を走る。これまでだったら時速80㌔での走りは爽快で、金沢から実家までは2時間足らずで着く。ところが、地震で道路にゆがみやひび、亀裂が走っていてスピードは出せない。道路には亀裂にタイヤが挟まれた車やパンクした車がところどころに置き去りにされている。

   「上棚矢田インター」で下道に降りる。これ以上は道路が崩れているので、通行止めとなっている。ここからは国道や県道、市道などを繋いで走る。そもそも、通行量が多く長だの列だ。自衛隊や警察や消防のほか、災害救助や復旧活動、物資輸送のための車両が行き交う。こうした車両を優先するため、一般車は道を譲ることになる。実家に到着したのは午後1時ごろだった。じつに6時間。

   半島の北部に位置する奥能登では、能登町が震度6弱、輪島市と珠洲市、穴水町は6強だった。兄夫妻から聞いた話だと、20世帯の集落うち19世帯が全壊したところもある。さらに、地震で家はなんとか大丈夫だったが、その後に裏山でがけ崩れが起きて押し倒された家屋もある。

   実家は家屋そのものは壊れなかったが、屋根の瓦がめくれていた。部屋の壁も剥がれ落ちている。台所は食器棚が崩れた。本震は午後4時すぎだったので調理用のガスを使っていなかったが、この揺れが午後6時ごろだったら火災が発生していかもしれない、と。

   地震の発生からいまも断水と停電が続いている。また、震度5の揺れは続いている。このため夜は車中泊、日中は散乱した室内などの片付けが続いている。屋根のブルーシート張りは集落の人たちと互助で行っているというので、そのまま置いてきた。実家での滞在は1時間ほどだった。金沢の自宅に戻ったのは午後9時ごろ。じつに7時間。

(※写真は5日に撮影。救急車や救助車が行き交う。輪島市と能登町を結ぶ県道幹線が崩れ、一車線で車が走る。寺院の鐘つき堂が崩れ落ちそうな状態に=能登町)

⇒6日(土)夜・金沢の天気    くもり   

★能登半島地震 生き埋め捜索急ぐも「72時間の壁」

★能登半島地震 生き埋め捜索急ぐも「72時間の壁」

   能登半島の尖端にある珠洲市の泉谷満寿裕市長は逆境を乗り越え、チャレンジ精神あふれる政治家でもある。去年5月5日に震度6強に見舞われ、9月に予定していた「奥能登国際芸術祭2023」を開催すべきかどうかどうかで市議会などで意見が分かれた際も、泉谷市長は「地域が悲嘆にくれる中、何か目標や希望がないと前を向いて歩けない。芸術祭を復興に向けての光にしたい」と答弁し、予定より3週間遅れで開催にこぎつけた。51日間の会期で延べ5万1000人を上回る来場者があり、予想を上回るにぎわいを見せた。その泉谷市長が今回の地震で発した言葉が、「壊滅的な状況」だった。

   2日午前に開催された石川県災害対策本部員会議にオンランで出席した泉谷市長が発した言葉だった。珠洲市は今回の地震で震度6強と津波に見舞われ、人口1万2600人・世帯数5800世帯のうち全壊が1000世帯となった。同市の避難者数は6250人(8日午前8時現在)。インフラでは断水4800戸(4日午前8時現在)、停電8100戸(同)となっている。そして、差し迫っているのは「72時間の壁」だ。(※写真は、4日付の地元紙夕刊)

   珠洲市での死者23人(4日午後現在)、そして安否不明者は35人におよぶ。しかし、全壊が1000世帯もあり、一家ごと生き埋めになっているケースもあるだろう。能登は高齢者の一人暮らしの割合も高いので、はたしてどれだけの人が安否不明なのか全容はわかっていない。生存率が大幅に下がるとされる発生72時間がきょう午後4時に迫っている。まだ多くの人が倒壊した建物に取り残されているに違いない。

   珠洲市内には全国各地から災害救助犬25頭以上が到着し、倒壊家屋の中に人がいないか捜索活動にあたってる。72時間の壁が迫る中で泉谷市長は「力を振り絞って人命救助に取り組んでほしい」と訴えた(3日・県災害対策本部員会議)。「壊滅的な状況」の言葉から泉谷市長の必死の願いが伝わってくる。

⇒4日(木)午後・金沢の天気    はれ

☆能登半島地震 足らず届かず戸惑う政府支援

☆能登半島地震 足らず届かず戸惑う政府支援

    能登半島地震の支援物資の補給や人命救助のためとみられる自衛隊のヘリコブターが金沢の空を行き交っている。岸田総理が1日深夜に国の対応を特定災害対策本部から非常災害対策本部へと格上げすると発表したことを受けて、関係省庁の動きがあわただしくなっている。ところが、道路が寸断されていることから自衛隊の災害派遣や警察の緊急援助隊の派遣、消防の緊急消防援助隊の派遣などは困難を極めているようだ。そこで各省庁は急きょ、空からの派遣を急いでいる。

   そんな中、事故が2日起きた。メディア各社の報道によると、羽田空港の滑走路で、能登への救難物資を搭載して飛び立とうとしていた海上保安庁の航空機と、着陸したJAL機が衝突した。海保の航空機の乗組員6人のうち5人が死亡し、JAL機の乗客ら4人が病院に運ばれた。警視庁は容疑者不詳のまま業務上過失致死傷の疑いで捜査本部を設置し、フライトレコーダーなどを押収して事故原因の解明に乗り出している。能登への救援物資を運ぶ過程での事故だけに、痛ましさを感じる。(※写真は3日付・新聞メディア各紙の一面)

   それでは、能登半島は海に囲まれているので海上からの物資の搬送はどうか。これもなかなかうまくいかないようだ。救難物資を積んだ海上自衛隊の艦艇「せんだい」と「はやぶさ」はきのう2日、それぞれ輪島港と珠洲市の飯田港に到着した。しかし、輪島港は岸壁の損傷、飯田港は岸壁の損傷に加え、多数の浮遊物や防波堤の損傷により接岸できず、物資の積み下ろしができなかった。こうした状況を踏まえ、木原防衛大臣は砂浜に乗り上げることが可能なエア・クッション型の揚陸艇や、ヘリコプター搭載艦の活用を検討していることを明らかにした(3日付・TBSニュースWeb版)。一刻も早くと願う。

   岸田総理はきょう3日午前、非常災害対策本部会議を官邸で開き、「時間との勝負であることを十分に念頭に置き、人命第一で救命・救助活動に全力を尽くしてもらいたい」と指示した。生存率が急速に下がるとされる「発生から72時間」をあす4日午後に迎えることを意識した発言だ。このため、自衛隊の人員をこれまでの1000人から2000人程度に倍増させ、救助犬も増やして態勢の強化を図る(3日付・読売新聞ニュースWeb版)。この緊急態勢を最初からやってほしかった。

⇒3日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★能登半島地震 金沢でがけ崩れ、ライフラインに打撃

★能登半島地震 金沢でがけ崩れ、ライフラインに打撃

   能登半島地震では金沢で震度5強の揺れがあり、被害が出ている。きょう午後、現場に見てきた。金沢大学の近くにある山手の住宅街でがけ崩れがあり、民家4軒が道路ごと崩れ落ちた=写真・上=。倒壊した民家の下敷きに乗用車が挟まるなど、悲惨な光景だった。住民は全員脱出して、無事だったという。断続的に揺れが続いていて地盤が緩んでいる可能性もある。金沢地方気象台によると、きょう夜から雨が降り、4日正午までに多いところで50㍉の降水量を予想している。このため金沢市はがけ崩れ周辺の32世帯に対し、避難指示を出している。

   今回の地震で金沢城の外周部分にあたる石垣の一部が4ヵ所崩れた。通称「いもり堀」側の石垣は高さ10㍍、幅10㍍にわたって崩れ落ちていた=写真・下=。崩れた石垣は明治期に積まれたものとされる。石垣の崩れで、石川県の管理事務所は隣接する金沢城公園と兼六園を臨時閉園とした。

   地元メディアによると、県危機管理室は今回の地震で、県内の死者が50人となったと発表した(2日午後8時30分現在)。また、県内353ヵ所の避難所に2万7785人が身を寄せている。最多は輪島市の70ヵ所に9229人、珠洲市の21ヵに所4100人。能登町の42ヵ所に3700人、穴水町の44ヵ所に3206人、志賀町の18ヵ所に2650人、七尾市の40ヵ所に2000人、などとなっている(2日午後7時現在)。

   ライフライン関連では、県内では能登を中心に3万2700世帯で停電が続いている(2日午後7時現在)。また、県内の15の市や町の一部で断水が続いている。事態が深刻なのは公立病院など医療機関で、建物の損壊などで断水やガスの供給がストップしている。自衛隊や日本水道協会が給水車を各地に派遣し、給水を開始している。

⇒2日(火)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆元旦大揺れ震度7 「令和6年能登半島地震」

☆元旦大揺れ震度7 「令和6年能登半島地震」

   きょう元旦は寝正月で午前10時ごろに起床した。正午すぎに家族とおせち料理を楽しみ、正月酒を昼から楽しんだ。会話も弾み、つい飲み過ぎた。午後3時ごろ眠気が襲ってきて、また布団に入って寝た。午後4時すぎだった。枕元に置いたスマホがピューンピューンと鳴った。緊急地震速報だ。「エッ、地震が」と寝ぼけ眼で見ていると。グラグラと家が揺れ出した。押し入れの引き戸などがガンガンと音を立てて閉じたり開いたりを繰り返している。数十秒も続いただろうか。いったん止んだが、しばらくして、またピューンピューンと緊急地震速報が鳴った。寝ている場合ではない。家具などは大丈夫か。すっかり酔いもさめた。

   NHKの地震速報をチェックする。気象庁の観測によると、地震が起きたのは午後4時10分ごろで、震源地は能登地方で、地震の規模を示すマグニチュードは7.6と推定。この地震で能登半島の中ほどにある志賀町では震度7の激しい揺れを観測したほか、震度6強を七尾市と輪島市、珠洲市、穴水町で、震度6弱を中能登町と、能登町、新潟県長岡市で観測した。金沢は5強だった。去年5月5日に半島の尖端、珠洲市で震度6強があり、今回はさらに広範範囲で規模も大きな揺れとなった。緊急地震速報はその後、10数回も鳴り、金沢も震度3の揺れが何度か起きた。(※写真の上・下はNHKテレビ地震速報より)

   そして、震度6強だった輪島市では大規模な火災が発生した。場所は観光名所でもある朝市通り近くだ。そして、大津波警報が発令された。能登の海岸の一部では5㍍の波、富山湾でも3㍍が発生し、漁船が波に飲まれて多く沈没していると海上保安庁の情報が流れていた。NHKの女性アナウンサーは強い口調で津波の警戒を呼び掛け、テレビ画面の右上には「大津波にげて!」「EVACUATE! にげて!」 と表示が出ている。

   気象庁は記者会見し、能登地方で震度7の揺れを観測した地震について「令和6年能登半島地震」と名付けた。気象庁は損壊家屋1000棟程度以上や相当の人的被害など顕著な被害が発生した場合に名付けていて、2007年3月25日に輪島市沖を震源すると震度7クラスの地震が発生したときも「平成19年能登半島地震」としている。

⇒1日(元旦・月)夜・金沢の天気   くもり  

★「2023 アレどうなった」⑤ 地球の沸騰化 対策の道筋

★「2023 アレどうなった」⑤ 地球の沸騰化 対策の道筋

   さきほど菩提寺で除夜の鐘をついてきた。寺では去年前から門徒や近所の人たちが自由に参加できる「プレ除夜の鐘」というイベントを行っている。勢いをつけて鐘をつくと、鐘の響きが全身を包むように伝わってきて、欲望や執念にかられた煩悩が払われたような気持ちになる=写真・上=。このプレ除夜の鐘は午後2時から2時間ほど行われた。そして本番の除夜の鐘は午後11時半から。大晦日の昼夜に2度鐘が鳴る。

   COP28「化石燃料からの脱却」は合意されたものの

   この1年を振り返ると、まずイメージするのは地球温暖化だ。ことしの夏は異常な暑さだった。8月31日、自宅近くの街路の温度計は37度だった=写真・下=。街を歩くと熱風に煽られた。金沢市の南に位置する小松市では8月10日に観測史上最高の40度を記録した。この日の気象台の石川県内11の観測地点がすべて35度以上の猛暑日となり、「熱中症警戒アラート」が飛び交った。体感したこの猛暑は石川だけでなく、日本全体、そして世界的な傾向だった。

   熱波が世界を襲っている様子をBBCニュースWeb版(7月16日付)は「Europe heatwave: No respite in sight for heat-stricken southern Europe」(ヨーロッパの熱波、暑さに苦しむ南欧にもう猶予はない)の見出しで伝えた。ギリシャでは7月14日に気温が40度以上となり、遺跡「パルテノン神殿」がある観光名所アクロポリスが一時閉鎖された。また、イタリアでは週末にローマ、ボローニャ、フィレンツェを含む16都市にレッドアラート(「死の危険」を意味する)が発令された。イタリアでは去年も熱波が原因で1万8000人の死者が出て、ヨーロッパでは最多だった。

   猛暑や豪雨などの異常気象をもらたしているのが地球温暖化だ。地球環境学者のレスター・ブラウンは著書『プランB3.0』(2008)で警告している。「温暖化がもたらす脅威は何も海面の上昇だけではない。海面温度が上昇すれば、より多くのエネルギーが大気中に広がり、暴風雨の破壊力が増すことになる。破壊力を増した強力な暴風雨と海面の上昇が組み合わされば、大災害につながる恐れがある」

   レスター・ブラウンの警鐘は現実となった。7月の暑さが記録的だったことから、国連のグレーテス事務総長は「the planet is entering an “era of global boiling”」(地球は沸騰化の時代に入った)と述べた。地球温暖化対策や温室効果ガスの削減に向けて世界は動き始めている。「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」が11月30日から今月13日までアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催され、「化石燃料からの脱却」という対策の方向性が初めて合意文書に明記された。「脱化石燃料」の実現に向け、各国がどのような目標を作成し、具体策を示すかがこれから焦点になる。

   COP28に出席した岸田総理は、2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までに大気中に排出される二酸化炭素を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現など日本の取り組みについて演説した。岸田政権が打ち出しているのは原発の活用だ。ことし5月に築60年を超える原発の運転を可能とする法律「GX(グリーン・トランスフォーメーション)脱炭素電源法」を成立させている。そして、日本と真逆の政策に舵を切ったのがドイツ。原発をすべて停止し、風力や太陽光、そして石炭火力にシフトしている。

   来年も猛暑になるのか、二酸化炭素の排出は人類の煩悩の象徴ではないのか、などとつらつらと思いのままブログをしたため、2023年は暮れていく。

⇒31日(日)夕・金沢の天気     あめ