★プリゴジン氏「墜落死」はプーチン大統領の「粛清」なのか

★プリゴジン氏「墜落死」はプーチン大統領の「粛清」なのか

   ロシアには「チーストカ(чистка、粛清)」の歴史がある。あのソビエト連邦時代の最高指導者だったスターリン(1878-1953)は国内の反革命や不正者を徹底的に弾圧したことで歴史上で知られる。粛清は、ある意味で敵の脅威をつくり出すことで国民を恐れさせ、団結させることにあるとされる。たった一日とは言え、私兵を率いて政府軍に盾突いたプリゴンジ氏はプーチン大統領にとっては、いわゆる「反逆者」だ。はたしてプーチン氏は彼を許すだろうか。

   その結末が、プリゴジン氏が搭乗していた自家用ジェット機が今月23日、モスクワ北西のトベリ州で墜落し、乗客乗員10人全員死亡したことだ。ジェット機はモスクワからサンクトペテルブルクに向かっていた。

   この事故について、アメリカの複数のメディアは機内に仕掛けられた爆発物が爆発したことによって墜落した可能性があると伝えている。24日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、「Early Intelligence Suggests Prigozhin Was Assassinated, U.S. Officials Say」の見出し=写真=で、アメリカ政府当局者の初期段階の分析として、機内に仕掛けられた爆発物が爆発したか、あるいは破壊工作がなされたことによる墜落と見られると報じている。また、イギリス政府当局者のコメントとして、ロシアの連邦保安庁(FSB)が関与した可能性が高い、と伝えている。

   「ニューヨーク・タイムズ」は、欧米の政府当局者の初期段階の分析としてジェット機内に仕掛けられた爆発物が有力な原因だとする一方、不純物が混ざった燃料が爆発を引き起こした可能性もあると報じている。

   この事故について、プーチン大統領は24日、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派の代表と会談した際、「犠牲者の家族に哀悼の意を表したい」「プリゴジン氏のことは1990年代初めからよく知っている。複雑な運命を背負った男だ。人生で重大な過ちを犯したが、私の求めには必要な結果も達成した。才能のある人物だった。彼はきのう、アフリカから戻ったばかりでここで何人かの関係者と会っていた」などと述べ、プリゴジン氏の死亡を認めた(25日付・NHKニュースWeb版)。

   以下は憶測だ。プーチン大統領はプリゴジン氏の遺体があったとしてもおそらく遺族には引き渡さずに、完全に消去するのではないだろうか。ロシアの粛清方法は、墓などをつくらせずに、地上に存在したことを消すことだ。

⇒25日(金)夜・金沢の天気   はれ

☆国土保全より衛星開発を優先させる隣国の事情

☆国土保全より衛星開発を優先させる隣国の事情

   北朝鮮がまた弾道ミサイルのような衛星を発射した。防衛省公式サイト(24日付)によると、北朝鮮はきょう午前3時51分、北朝鮮北西部沿岸地域のトンチャンリ地区から、弾道ミサイル技術を使用した衛星の発射を強行した。発射された1発は複数に分離し、午前4時ごろまでに日本のEEZ外にあたる朝鮮半島の西300㌔ほどの黄海、南西およそ350㌔の東シナ海、フィリピンの東600㌔程度の太平洋にそれぞれ落下したと推定される=イメージ図、防衛省作成=。衛星の打ち上げを試みたものの、地球周回軌道への衛星の投入は確認されておらず、衛星打ち上げは失敗したとみられる。

   北朝鮮は5月31日にも衛星を打ち上げたが、エンジン異常で墜落。今月22日に、24日午前0時から31日午前0時に再度衛星を打ち上げると海上保安庁などに通告していた。これに対し、内閣府は衛星打ち上げが目的であっても、弾道ミサイル技術を用いた発射は国連安保理の決議違反であると非難していた。

   朝日新聞Web版は、北朝鮮の朝鮮中央通信のきょうの発表を伝えている。偵察衛星「万里鏡1号」を新型の衛星運搬ロケット「千里馬1型」に載せ、北朝鮮北西部、平安北道(ピョンアンブクト)の「西海衛星発射場」から発射した。2段目までは正常に飛行したが、3段目の飛行中に「非常爆発システムに異常が発生した」としている。北朝鮮の国家宇宙開発局は「エンジンの信頼性とシステム上、大きな問題ではない」と主張。原因究明と対策を進め、「10月に3回目の偵察衛星発射を断行する」と伝えている。

   北朝鮮は失敗を繰り返しながら弾道ミサイル技術を進化させ、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発にこぎつけた。しかし、ミサイルよりさらに高コストの衛星を打ち上げたが再度失敗。そして、22日付のロイター通信Web版日本語は、金正恩総書記が干拓地の冠水を巡り金徳訓首相の対応が「無責任」だったために、国家経済に深刻な損害を与えたと強く批判したと報じている。国土保全より人工衛星が優先されているようだ。

⇒24日(木)夜・金沢の天気    はれ

★応援歌『若き血』の大合唱 懐かしくもあり

★応援歌『若き血』の大合唱 懐かしくもあり

   慶応大学の応援歌『若き血』はかつて自身も歌っていた。それは神宮野球場で開催される東京六大学野球での対早稲田大学との慶早戦のときだ。点数が入るごとに、「若き血に 燃ゆるもの・・・陸の王者 慶応」と隣席の学生と肩を組んで歌った。すると、早稲田も点数が入るごとに応援歌『紺碧の空』を「紺碧の空 仰ぐ日輪・・・覇者 覇者 早稲田」と歌う。この応援合戦にやりがいを感じたものだ。なので、対戦相手が早稲田以外のチーム(明治、法政、東京、立教)の応援に行ったことがない。

   その懐かしい光景が甲子園球場での全国高校野球選手権大会の決勝戦、慶應高校と仙台育英高校との対戦でクローズアップされた。初回、1番・丸田外野手の右翼スタンドへの先頭打者アーチから始まり、慶応が得点を奪うたびに、三塁内野席、左翼スタンドの応援団が肩を組んでの『若き血』の大合唱が沸き起こった。

   1916年以来、107年ぶりに優勝をかけた試合だったので、おそらく関西在住の慶応大学の在校生やOB・OGも応援に駆けつけたのだろう。応援方法は冒頭のように、対早稲田戦での応援合戦で経験があるので、『若き血』の大合唱に参加することができた。三塁側アルプススタンドを含めた球場左半分からの大声援が球場に鳴り響いた。

   球場全体が慶應の応援団というような雰囲気で仙台育英にとっては、いわゆるアウェイムードは想定外だったのかもしれない。テレビで視ていると、この大声援で仙台育英の外野手同士が声が聞こえにくそうにしている場面もあった。ただ、慶応の応援団は、相手守備陣がタイムを取った時などは声量を落とすなど配慮をしているようにも感じた。

⇒23日(水)夜・能登の天気     くもり    

☆超高齢化社会の妙薬か 認知症新薬「レカネマブ」承認へ

☆超高齢化社会の妙薬か 認知症新薬「レカネマブ」承認へ

   ようやく承認されることになった。メディア各社の報道によると、早期アルツハイマー病の新薬として期待されている「LEQEMBI(レカネマブ)」がきのう21日に厚労省専門部会で承認が了承された。日本のエーザイが主導し、アメリカの医薬品バイオジェンと共同開発した。冒頭に「ようやく」と述べたのも、アメリカでは食品医薬品局(FDA)がことし1月により早く治療を提供する「迅速承認」という措置で承認し、7月6日に正式承認を行っている。

   アルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ 」が蓄積することで神経細胞が傷つき、記憶力や判断力などが低下するとされる。これまでの治療薬は症状の一時的な改善を促すものだが、レカネマブは脳内のアミロイドβ そのものを除去することで病気の進行を長期的に遅らせる。臨床試験でこの新薬を投与したグループと偽薬のグループを比較し、レカネマブのグループでは記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制された。両社は日米欧、中国、韓国などで承認申請を行っている(エーザイ公式サイト)。

   これがアルツハイマー病の画期的な治療薬になるとすれば、問題は治療費だ。2週間に1回、体重に応じた点滴を施すことになる。アメリカでの価格は、体重75㌔の患者に換算して1人当たり年間2万6500㌦ と設定している(同)。きょうの為替相場は1㌦146円なので、ざっと387万円だ。今回の日本での承認の了承によって、年内にも保険適用の対象となる可能性があると報じられている。仮に年間1万人が利用するとして、年間387億円となる。高額医療の患者負担の割合をどのように設定するのか、議論になるだろう。アメリカでは高齢者向け公的医療保険「メディケア」は保険適用の対象とし、患者負担を2割程度に抑えている(7月7日・東京新聞Web版)。

   さらに検査体制だ。投薬の対象者は日常生活に支障がない「軽度」のアルツハイマー病患者が想定されている。軽度かどうかは、アミロイドβ の蓄積量を調べる検査が必要となる。2通りあり、一つはアミロイドPET(陽電子放射断層撮影)での測定と、二つめが脳脊髄液を採取して測る。いずれも保険適用外である。レカネマブの承認と同時に検査体制の充実もキーポイントになってくるだろう。   

   国内のアルツハイマー型認知症の医療や介護に要するコストは、家族による無償の介護を金額に換算した額を含めると、最大で年間12兆6000億円を超えるとの推計値の報告がある(2021年3月・「Journal of Alzheimer’s Disease」国際医療福祉大学医学部公衆衛生学の池田俊也氏らの研究)。今回のレカネマブの承認が、超高齢化社会といわれる日本で、患者の生活の質を向上させ、家族の負担を減らす「妙薬」となってほしいと願う。

⇒22日(火)午後・金沢の天気    はれ

★日米韓はワンランクアップで結束 どう出る中国は反発

★日米韓はワンランクアップで結束 どう出る中国は反発

   アメリカ大統領の専用別荘「キャンプデービッド」はアメリカの外交のシンボルのようなイメージがある。ホワイトハウスは少々堅い印象だが、キャンプデービッドは打ち解けた雰囲気で会談ができ、首脳間の親密さを演出するのにもってこいの場所なのだろう。そのキャンプデービッドで日米韓3か国の首脳会談を開催(日本時間19日未明)、これまでよりワンランクアップした安全保障の連携に合意した。

   外務省公式サイトには首脳会談で合意した共同声明「キャンプデービッドの精神」(日本語は外務省の仮訳)が掲載されている。冒頭で「強固な日米同盟及び米韓同盟に支えられ、それぞれの二国間関係は今やかつてなく強固である。日米韓三か国の関係もまた、かつてなく強固である」と強調。その上で、「我々は、少なくとも年に一度、三か国の首脳、外務大臣、防衛大臣及び国家安全保障局長間でそれぞれ会合を開催し、三か国の外交及び国防当局間での各々の既存の日米韓会合を補完する」と、首脳や閣僚級の会談の定例化するとしている。

   中国に関して名指しで批判している。「我々は、南シナ海において最近我々が目の当たりにした、中国による不法な海洋権益に関する主張を後押しする危険かつ攻撃的な行動に関して各国が公に表明した立場を想起し、インド太平洋地域の水域におけるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。特に、我々は、埋め立てられた地形の軍事化、沿岸警備隊及び海上民兵船舶の危険な使用並びに威圧的な活動に強く反対する」。

   また、北朝鮮についても、「我々は、朝鮮半島及びそれを超える地域の平和及び安全に対する重大な脅威を及ぼす、複数の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を含む、北朝鮮によるかつてない数の弾道ミサイル発射、並びに相次ぐ通常の軍事的活動を強く非難する。我々は、北朝鮮の不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となる、北朝鮮の不正なサイバー活動に対する懸念を表明する」。その上で、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイムでの共有をことし年末までに運用開始するとした。

   経済安全保障についても触れている。「我々は現在、とりわけ半導体や蓄電池に関するサプライチェーン強靱性、技術安全保障及び標準、クリーンエネルギー及びエネルギー安全保障、バイオテクノロジー、重要鉱物、医薬品、人工知能(AI)、量子計算及び科学研究において三か国で協力している」と述べ、新たにクリーン・エネルギー分野でも協力するとしている。「クリーン・エネルギーへの移行を加速し、三か国の開発金融機関間の連携及びグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)を通じたものを含めて質の高いインフラ及び強靱なサプライチェーンのための資金を動員」と提案している。

   共同声明で最後に、「本日、我々は、日米韓三か国の関係における新たな章が幕を開けたことを宣言する」と述べ、日米韓のさらなるパートナーシップを強調した。

   一方、共同声明で中国を名指し批判したことに対し、中国国営通信新華社は19日、「中国脅威論というデマを拡散させた」と非難する評論を配信した。中国は安全保障を含むあらゆる分野で連携を強化する日米韓が中国を封じ込めることを警戒し、反発を強めている(20日付・日経新聞Web版)。この中国の反発がどのようなカタチで表面化してくるのか。

(※写真は、日米韓の3か国首脳会談後の共同記者会見=外務省公式サイトより)

⇒21日(月)午後・金沢の天気     はれ

☆「鬼城」の次はデフォルト きしむ中国の成長モデル

☆「鬼城」の次はデフォルト きしむ中国の成長モデル

   最近テレビでニュースを視ていて、「鬼城」という言葉がキーワードになっている。中国の不動産危機が現実になってきて、資金繰りの悪化で開発が途中でストップした高層住宅群があちらこちらに。クレーンが屋上に残されたままの未完成の高層マンションが立ち並ぶ様子は、まさにゴーストタウンだ。余計な心配かもしれないが、構造物が朽ち果て、あのクレーンが落ちて来ると、さらに無残な姿になるのではないか。  

   2012年8月に中国の浙江省を訪れたときに、中国人の女性ガイドから聞いた話だ。当時、中国は地方でもマンションの建設ラッシュだった。「なぜ地方でこんなにマンションが建っているのか、ニーズはあるのか」とガイド嬢に尋ねた。すると、「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だと。中国ではめでたい「8」の数字でそろえるので、1戸88平方㍍のマンションが人気という話だった。(※写真は、浙江省で撮影したマンション群=2012年8月)

   さらにその3高の背景には中国の「一人っ子政策」(2015年に廃止)があった。中国では、男子を尊ぶ価値観があり、性別判定検査で女子とわかったら人工中絶するケースが横行していた。その結果、出生の男子の比率は女子より高くなる。これが、結婚適齢期を迎えると、女性は引く手あまたとなり、3高をもたらす。一方で、男性は「剰男」(売れ残りの男)と称される結婚難が社会問題にもなっている。

   3高に加えて投機マネーが不動産市場に流れ込み、都市を中心にマンション価格が高騰した。高額なマンションを手に入れても、ローン返済が重石となり、生活が破綻するケースも増えた。さらに、売り主の建設代金未払いで工事が進まず、予定の期限を過ぎても一向に引き渡しされないために、住宅ローンの支払いを拒否する購入者も続出しているようだ。そして、経営危機に陥っている中国の不動産大手「恒大グループ」が17日、アメリカ・ニューヨーク州のマンハッタン地区連邦破産裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。

   「鬼城」の次がデフォルト。中国経済の成長モデルだった不動産業界がきしんでいる。これが、中国の金融業界にどう連鎖していくのか。

⇒20日(日)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

★中国の不動産危機という時限爆弾 日米韓はどう対応

★中国の不動産危機という時限爆弾 日米韓はどう対応

    「中国の時限爆弾」が爆発した。メディア各社の報道によると、2年連続の巨額な赤字で経営危機に陥っている中国の不動産大手「恒大グループ」は17日、アメリカ・ニューヨーク州のマンハッタン地区連邦破産裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。連邦破産法15条は、再建をめざす外国籍の企業が申請する条項で、資産の強制的な差し押さえなどを回避でき、難航している外貨建て債務の再編協議の前進を狙っているものと見られる。ロイター通信Web版日本語(18日付)によると、恒大の負債額は先月末基準で3300億㌦(48兆円)にのぼっている。

   バイデン大統領が「中国は時限爆弾だ」と述べてニュース(今月12日付・読売新聞Web版)となっていたが、今回の恒大グループの破産申請を念頭に置いた発言だったのかもしれない。あくまでも憶測だ。恒大グループだけでなく、中国では不動産大手の経営危機が相次いで表面化していて資金繰りが悪化している中国最大級の不動産会社「碧桂園(カントリー・ガーデン)」に対しても市場の不安が高まっている。次なる時限爆弾なのか。

   朝鮮半島のある意味で時限爆弾と言えるのが北朝鮮問題ではないだろうか。読売新聞Web版(18日付)によると、国連安全保障理事会は17日、北朝鮮の人権問題に関する公開会合を開いた。ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は会合冒頭に「北朝鮮で数十年にわたって人権侵害が続いている」と指摘し、子供を含む強制労働などが軍事機構と武器製造能力を支えていると強調した。11年に脱北した男性28歳が会合に出席し、「政府は私たちの血と汗を指導者のぜいたくな生活とミサイルに変えてしまう」と語った。日本と米欧各国も核・ミサイル開発を優先する北朝鮮の姿勢を強く非難した。北朝鮮の人権に関する安保理会合が公開で行われたのは2017年以来で6年ぶり。

   アメリカのワシントン郊外にあるキャンプ・デービッド山荘で、日本時間のあす19日未明、岸田総理とバイデン大統領、尹大統領との日米韓3か国の首脳会談が行われる(18日付・NHKニュースWeb版)。中国や北朝鮮の動向などを踏まえて、安全保障協力の強化を確認する見通し。また、日米韓国による半導体などのサプライチェーンの強靭化といった経済安全保障分野での連携などでも一致するものとみられる。さらに、時限爆弾となっている中国の不動産危機が3か国や世界に及ぼす影響などについても議論するに違いない。その意味で実にタイムリーな首脳会談なのかもしれない。

(※写真は、ことし5月21日、広島市でのG7サミット後に行われた日米韓首脳間の意見交換=外務省公式サイト「日米韓首脳間の意見交換」より)

⇒18日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

☆「カタサゴユリ」と「ルビーロマン」の話

☆「カタサゴユリ」と「ルビーロマン」の話

   例年は処暑のころに咲くので、ことしは5日ほど早めだろうか、庭にタカサゴユリが咲き始めた=写真・上=。旧盆が過ぎたこの時節は花の少ない季節なので目立つ花だ。「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」。花の美しさは見事だ。ヤマユリのような高貴な香りはないが、人目をひく。この時節には茶花として床の間に飾る花でもある。

   ただ、立場が異なればタカサゴユリは外敵、目の敵だ。国立研究開発法人「国立環境研究所」のホームページには「侵入生物データベース」の中で記載されている。侵入生物、まるでエイリアンのようなイメージだ。確かに、植えた覚えはないので、おそらく種子が風に乗って、庭に落ちて育ったのだろう。外来種だからと言って、すべて駆除すべきなのか、どうか。この花を見るたびにそんなことを思ったりする。

   話は変わる。石川県特産の高級ブドウと言えば、「ルビーロマン」で知られる=写真・下=。先月14日の金沢市中央卸売市場での初競りで、1房(33粒、重さ1㌔)で最高額は160万円で競り落とされた。1粒換算で4万8千円。正直な話、自身はこれまでの人生で1粒しか食べたことがない。知人の結婚式に出席したときに、新郎と新婦からいただいた1粒だった。ルビーロマンは石川県と契約を取り交わした生産農家が10㌶で栽培している。

   石川県が独自に開発した品種であり、品種登録も行っているルビーロマンが韓国にもある。品種登録が韓国では行われていなかったことから、韓国に苗木が流出して栽培されたものと見られている。

   石川県の馳浩知事は今月2日に韓国と訪れた際に、韓国のルビーロマンを食べた。その様子をブログ「はせ日記」(3日付)で述べている。

「〜県庁職員にお願いして手に入れてもらった韓国産ルビーロマン。味わってみたら、期待外れでがっかり😞そもそも当時の石川県の水際作戦が行き届いていなかったが故に、韓国でいつのまにか石川県ブランド規格に合わない商品が勝手に商標登録されてしまった。こんなルビーロマンが流通していること自体が疑問でならない。味は水っぽいし、色は薄く、一体どこがRubyなのか?そして不揃いで、粒と粒の間に隙間があるし、大きさも揃ってなくて、表皮のハリも艶もない。似て非なるシロモノ。こんなブドウ🍇がルビーロマンを名乗っている事が理解できない。石川県産の本物のルビーロマンを、韓国の生産者や消費者に食べさせてあげたい。これが本場のルビーロマンなんだよ、と」

⇒17日(木)夜・金沢の天気   くもり

★台風一過 隣国の不安材料に漂うキナ臭さ

★台風一過 隣国の不安材料に漂うキナ臭さ

   台風7号が日本海を北上している。メディアの報道によると、中国地方や近畿、東海の各地で記録的な大雨となり被害が出たようだ。金沢では、昨夜に最大瞬間風速22㍍を観測したものの、きょうは時折強い風が吹いて断続的に雨となった。能登ではけさ強風にあおられて女性が転倒してケガを負ったとのニュースが流れていた。そして、台風一過、世界ではキナ臭さが漂う。

   読売新聞Web版(今月12日付)によると、アメリカのホワイトハウスは11日、バイデン大統領がユタ州で行った演説(10日)で、回復が鈍い中国経済について「中国は時限爆弾だ。問題を抱えている」と述べたことを明らかにした。バイデン氏は演説で、中国の成長率の鈍化や高い失業率、高齢化の進行などに言及。「悪い人々が問題を抱えると、悪いことをする。良くないことだ」と語った。

   一方、「中国とけんかをしたいわけではない。合理的な関係を求めている」とも述べ、対話を通じて競争関係を「管理」していく考えを強調した。アメリカは9日、中国を安全保障上の「懸念国」に指定し、先端半導体やAIなどを手がける中国企業への投資を規制する大統領令を公表している(同)。この時限爆弾発言で米中の緊張がさらに高まるのではないか、キナ臭さが漂う。

   きょうの日経平均株価の終値は前日(15日)より472円安い3万1766円と大幅に反落した。共同通信Web版(16日付)によると、格付け会社フィッチ・レーティングスのアナリストがは15日のアメリカのCNBC番組で、金利高が長引き、銀行の資金調達コストが上がることで収益が悪化するなど銀行業界の経営環境評価が引き下げられた場合、JPモルガン・チェースを含めて70を超える銀行の格付けを引き下げる可能性があると明らかにした。このフィッチのアナリスの発言と中国の急速な経済減速など、海外発の不安材料に押されて日本の株価も売り圧力が強くなったと、メディア各社は分析している。

   そして、円安・ドル高が進んでいる。きょうはニューヨーク外国為替市場で円相場が下落し、一時1㌦=145円台をつけた。去年9月22日、政府・日銀はおよそ24年ぶりとなる為替介入を実施した。介入直前に円相場は145円90銭をつけていた。政府・日銀は再び円買い介入に動くのか。

⇒16日(水)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

☆フィリピンの戦争モニュメントと「終戦の日」

☆フィリピンの戦争モニュメントと「終戦の日」

   きょう「8月15日」は終戦の日である。政府主催の全国戦没者追悼式(東京・日本武道館)をNHKで視聴していた。岸田総理は「いまだ争いが絶えることのない世界にあって、わが国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携え、世界が直面するさまざまな課題の解決に、全力で取り組んでまいります」と式辞を述べた。いまだに続くロシアによるウクライナ侵攻を意識したような言葉だった。

   正午の時報とともに1分間の黙とうが捧げられた。その後、天皇陛下は「過去を顧み、深い反省の上に立って再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」と述べられた。全国戦没者追悼式は、日本国が不戦の誓いを確認する恒例の行事でもある。

   「8月15日」の現場を訪れたことがある。2012年1月に金沢大学の交流事業でフィリピン・ルソン島イフガオ州のキアンガンを訪れた。山中に壮大な棚田が広がる絶景と同時に、人類の米づくりの歴史を感じさせる。土地の識者の人たちから日本との関わりの話を聴いた。当地では9月2日は「勝利と解放の日」として日本軍との戦いに勝利したことを祝い、10年に一度は大規模な式典が開催されている。本来ならば1945年8月15日が終戦の日だが、ルソン島で最後まで抵抗を続けていた日本軍の山下奉文陸軍大将が降伏を表明したのは9月2日だった。

   土地の人たちの話は辛辣だった。アメリカ軍の進行に押された日本軍はマニラから北上してバギオを経由して経て、さらに奥深いキアンガンに最後の拠点を構えた。山中で孤立した日本兵の多くは飢餓や戦病で倒れ、「今でも骨はいたることろで見つかる」と話していた。そして、古老は「日本兵は怖かった。あいさつをしなかったというだけで殴られた。なので、山に逃げて、夜になると食料を探しに村に降りるという生活を続けていた。ヤマシタが降伏したと聞き、走って山から村の家に帰った」と話した。

   キアンガンの村で山下は降伏の意思を表明し、翌9月3日にバギオに連行され、そこで降伏文書に署名してフィリピンでの戦闘は最終的に終了した。戦時中フィリピンでは日本兵51万人が戦死しているが、フィリピン人は110万人が命を落としている。別の古老は「戦争当時は日本と日本人を憎んだ。しかし今は平和の時代、日本人とは仲良くやっていきたい」と話し、握手を求めてきたのを覚えている。11年も前の話だ。

(※写真は、キアンガンにある「戦争モニュメント」の塔。激しい戦闘を物語るレリーフがある。この公園では10年に一度、「山下降伏記念式典」が開催される。直近では2015年9月2日に行われた)

⇒15日(火)夕・金沢の天気   くもり