☆「発言撤回」「ブログ認める」 馳氏のメディア裏投げ技か

☆「発言撤回」「ブログ認める」 馳氏のメディア裏投げ技か

   馳浩知事はプロレスラー時代、ジャイアントスイングが得意技だった。相手の両足を抱え込んで振り回し、放り投げるあの技だ。衆議員だった馳氏が2013年に官房機密費を使ってIOC委員105人のアルバムをつくり東京五輪の招致活動に使ったと講演(今月17日)で発言。その後、発言が問題視されると、「五輪招致に関する発言は全面撤回する。今後一切発言しない」と繰り返している。事実関係をきちんと釈明してほしいと望む石川県の有権者の一人とすると、まるでジャイアントスイングで放り投げられたような感覚だ。

   では、ブログをどうするのか。馳氏のオフィシャルブログ「はせ日記」は2013年4月1日付で、アルバムについて記載している。以下。

   「IOC委員への直接的な働きかけは、IOC憲章により、できない。できないけれど、間接的な働きかけと、東京開催の意義を伝播させるためのロビー活動を進める海外出張」などと述べ、「10時半」にアルバム業者の社長と打ち合わを行い、「15時20分、官邸へ。菅官房長官に、五輪招致本部の活動方針を報告し、ご理解いただく。・駐日大使館ごあいさつ訪問 ・国際会議出席 ・国際的なロビー活動 ・ともだち作戦 ・想い出アルバム作戦・・・・などなど」。そして、菅氏から「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いします!」と発破をかけられた、と記載している。

   ブログを読むと、時系列で話が流れているので、じつに分かりやすい。メディア各社の報道によると、馳氏は22日に石川県庁で開いた補正予算案の記者会見で、「ブログに記載がある『想い出アルバム作戦』があったことは事実か」との記者の問いに、「その通り。ブログに書いてあることは事実だ」と答え、さらに「『想い出アルバム作戦』とはどういったものか」との問いには、「この五輪招致に関する問題については、先日の私の発言は全面撤回した。したがって五輪招致に関して、これ以上申し上げるつもりは全くない」と述べた。

   会見は1時間余り続き、「五輪招致に関しては今後一切発言しない」と38回も繰り返した(23日付・北國新聞)。しかし、ブログの記述に関しては「事実」と認めている。今回の馳発言が問題として指摘されるのは、官房機密費の使途について公の場で語ったことだろう。オリンピック招致のために1冊20万円のアルバムを105冊つくったことに違法性や不正があるわけではない。一度語ってしまったことは認めて、事実関係を釈明すればよいのではないか。なのに、発言は撤回し、ブログは認めるという矛盾するような馳氏の思惑はどこにあるのだろうか。

   ひょっとして「裏投げ」か。発言は撤回するも片腕で相手の首の付け根を、ブログを認めつつもう片方の腕で相手の腰を抱えて、後ろに反り投げる。あえてメディアをかく乱させるテクニックなのかもしれない。

⇒23日(木)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

★北朝鮮が3度目の衛星発射 「成功」と賞する意義

★北朝鮮が3度目の衛星発射 「成功」と賞する意義

   それにしても考えてしまう。日付を予告していたにもかかわらず、なぜ予告を無視するのか。防衛省公式サイト(22日付)によると、北朝鮮は21日午後10時43分、北朝鮮北西部沿岸地域の東倉里(トンチャンリ)地区から、衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射を強行した。発射された1発は複数に分離し、1つ目は午後10時50分、朝鮮半島の西約350㌔の東シナ海上の予告落下区域外に落下、2つ目は沖縄本島と宮古島との間の上空を通過し、同57分に沖ノ鳥島の南西約1200㌔の太平洋上、予告落下区域内に落下したものと推定される。地球周回軌道への衛星の投入は確認されていない。(※写真・上は、22日付の北朝鮮の労働新聞Web版より)

   北朝鮮の弾道ミサイルの発射でとくに混乱したのは沖縄県の人たちだった。自身はテレビのニュース速報を視聴していたが、ミサイルが上空を通過し、Jアラート(全国瞬時警報システム)が発令され、サイレンとともに防災無線で避難を呼びかける放送が繰り返されていた。深夜に登庁した自治体の職員が被害など備えて対応に追われる様子が映し出されていた=写真・中、テレビ朝日「報道ステーション」より=。

   北朝鮮はことし8月24日にもトンチャンリ地区から、弾道ミサイル技術を使用した偵察衛星の発射を強行したが、防衛省は地球周回軌道への衛星の投入を確認していない。ことし5月31日にも衛星を打ち上げたが、エンジン異常で墜落。3回目となる今回も衛星打ち上げは失敗したとみられる。ところが、冒頭の労働新聞は、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した新型運搬ロケット「千里馬1型」を打ち上げ、「偵察衛星の発射に成功」と報じている。

   そもそも、弾道ミサイル技術を用いたロケットの打ち上げは国連安保理事会決議に違反していることから、日米韓は共同で中止を要求していた。冒頭の話に戻るが、北朝鮮は22日以降に人工衛星を打ち上げると海上保安庁に通告していたので、期間前に強行したことになる。今回の発射は日米韓の意表を突く作戦なのだろうか。そして、ことし3回目の発射がまた失敗となると、国民の不満が沸騰するのであえて「成功」と言いくるめているのだろうか。

   深読みする。北朝鮮の金総書記はことし9月13日(日本時間)にロシアの「ボストーチヌイ宇宙基地」を訪れ、ロケットの組み立てや発射施設などを視察した。この場での首脳会談でプーチン大統領は、衛星の開発を支援する意思を明確に示した=写真・下、同日付・BBCニュースWeb版=。支援を受けた今回の発射でなんらかの進展があったのかもしれない。それをあえて金総書記は「成功」と賞し、次なる発射へとモチベーションを高めているのかもしれない。

⇒22日(水)午前・金沢の天気   はれ

☆「機密」もらす馳知事 東京五輪の誘致疑惑との関わり

☆「機密」もらす馳知事 東京五輪の誘致疑惑との関わり

   言葉は本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい時代環境になっている。それだけ、価値観の多様化や、とくに人権には厳しい視線が注がれる。語る場にもよるが、政治家が聴衆に面白く話せば話すほど誤解を生むことにもなりかねない。石川県の馳浩知事が今月17日に都内でスポーツ振興の会合で講演し、自身が自民党の東京オリンピック・パラリンピックの招致推進本部長だった当時のことを語った裏話が物議をかもしている。

   メディア各社の報道によると、馳氏はこう語った。「当時、総理だった安倍晋三さんからですね。『国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ』と。ここから、今からしゃべること、メモを取らないようにしてくださいね。『馳、カネはいくらでも出す。官房機密費もあるから』」 「それでね、IOCの委員のアルバムを作ったんです。IOC委員が選手の時に、各競技団体の役員の時に、各大会での活躍の場面を撮った写真があり、105人のIOC委員全員のアルバムを作って、お土産はそれだけ。だけども、そのお土産の額を今から言いますよ。外で言っちゃダメですよ。官房機密費使っているから。1冊20万円するんですよ」

   馳氏はこの発言が明るみに出でてすぐに撤回したものの、「官房機密費」(内閣官房報償費)を話題にした時点でアウトだろう。政府が「国の事務、事業を円滑、効果的に遂行するため、機動的に使える経費」と位置づける官房機密費は支払先や使途の詳細はチェックされない仕組みになっている。2023年度予算は14億6000万円。その機密費の使い方が具体的に明かされたことで、官房機密費の有り様そものが今後、国会などで問われるだろう。

   それにしも官房機密費を使って、開催都市決定の投票権を持つIOC委員全員にそれぞれのアルバムを作っていたとは、じつに違和感がある。と同時に新たな疑念もわく。東京オリ・パラを誘致する際に、電通の高橋治之元専務(※2022年8月に五輪に関連する受託収賄容疑で逮捕、その後保釈)はロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)によると、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦の資金を受け、高橋元専務らロビイストがIOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   では、馳氏のアルバムと高橋元専務の820万㌦のロビー活動はどのような関わりだったのか。素朴に考えれば、高橋元専務が馳氏が作ったアルバムを土産に携え、IOC委員105人を回り、現金を配っていたということだろうか。そもそも、アルバム作りを馳氏に指示したのは安倍元総理だが、誰が提案したのだろうか。高橋元専務が絡んでいるのか。五輪誘致活動の疑惑は深まる。あくまでも憶測だ。(※写真は、馳浩公式サイトより)

⇒21日(火)夜・金沢の天気  くもり

★岸田総理への警鐘 読売トップ「支持率24%は危険水域」

★岸田総理への警鐘 読売トップ「支持率24%は危険水域」

   きょう20日付の読売新聞の一面トップは「内閣支持率急落24% 経済対策『評価せず』66% 本社世論調査」だ。調査は今月17-19日で行われ、前回調査(10月13-15日)の支持率34%から10ポイントも下落した。読売が自社の世論調査を一面トップに持ってきたのはそれ相当の理由があるからだろう。

   調査内容を読むと、不支持は前回49%から13ポイントも上昇し62%となっている。支持率の下降、不支持率の上昇の背景にある数値の分析も詳しく行われている。支持低下の要因は見出しにあるように、経済対策を「評価しない」が66%で、「評価する」は23%にとどまっている。経済対策が企業の賃上げにつながると「思う」が18%で、「思わない」が74%に上っている。所得税など4万円の定額減税も「評価しない」が61%に。その理由が、「選挙対策に見えるから」が44%、「家計の支えには不十分だから」が25%となっている。この数値から「有権者をみくびるな」との声が聞こえてくる。

   支持率の下降、不支持率の上昇の背景はこれだけではない。いわゆる「辞任ドミノ」。9月の内閣改造以降で、政務三役である文科政務官や法務副大臣、財務副大臣が相次いで不祥事で辞任している。岸田内閣の政権運営に「影響がある」かとの問いに、「大いに」23%、「ある程度」45%と計68%が「影響がある」と答えている。世論調査はさらに突っ込んで質問をしている。どのくらい総理を続けてほしいかとの問いでは、「自民党総裁の任期が切れる来年9月まで」が52%、「すぐに交代してほしい」33%だった。

   話は冒頭に戻る。なぜ読売は世論調査の結果を一面トップに持ってきたのか。メディア関係者の間では、読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった。岸田内閣は「危険水域」だ。支持率は落ち始めると急カーブを描く。それが世論調査の怖さだ。読売の一面トップは岸田内閣に対する警鐘、と読んだ。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

☆伊東豊雄氏の「建築美と人と自然が繋がる建物空間」とは

☆伊東豊雄氏の「建築美と人と自然が繋がる建物空間」とは

   巨大洞窟のようなオペラハウス、曲線や光の美しいデザイン。「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞受賞者(2013年)の伊東豊雄氏の講演が金沢であり、聴きに行った=写真・上=。ちなみに、金沢21世紀美術館を手掛けた妹島和世氏と西沢立衛氏の建築家ユニットも2010年にプリツカー賞を受賞している。

   金沢市は11月を「金沢・建築月間」と定めていて、伊東氏の講演はその一環。テーマは「人と自然が繋がる建築」。講演は、竪穴式住居などの自然と一体化した建物の紹介から始まった。その竪穴式住居は農耕の進展とともに、人間に上下関係などの社会秩序が生まれ、建物も幾何学的なものになっていった。伊東氏は強調した。「日本の伝統的な建築は自然と親密な関係を保ってきた。しかし、近代主義的な建築は自然との乖離を深めている。私の求める新しい建築は近代主義建築の先に自然との親しい関係を回復することである」

   自然との関係性を建築に活かした事例がいくつか紹介された。その一つが岐阜市の「みんなの森・ぎふメディアコスモス」(2015年完成)。自然エネルギーを最大限活用し、消費エネルギーを2分の1にした建築だ。天井から「グローブ」という傘のようなものがぶら下がっている=写真・中、みんなの森・ぎふメディアコスモス公式サイトより=。グローブは全部で11あり、仕切りを造ることなく、自然とブースごとで空間が分けられるカタチとなっている。グローブは白い素材で作られていて、日中に天井から入って来た光を、図書館内に分散させるという働きがある。そうすることで、照明に使用するエネルギーを削減する仕組みになっている。

   伊東氏の講演で印象に残った言葉は、人が建築物をつくる理由について。「人に生きる力を与える」「人と人を結ぶ」「心の安らぎを得る」「快適さを保証する」「身を護る」。建築の価値や意義はじつに多様なのだと知った。スライドで「多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)」(2005年完成)が映し出された。空と周囲と調和した建物空間があり、外から中が見える。このような建物の中で読書をしたいとだれもが心を動かすかもしれない。(※写真・下は多摩美術大学公式サイトより)

   環境を生かしたその地域でしかできない建物空間。そのような「美しい建築」を伊東氏は創り続けている。御年82歳。

⇒19日(日)夜・金沢の天気    あめ

★カメムシの天国 人家に集団侵入 その時ヒトは…

★カメムシの天国 人家に集団侵入 その時ヒトは…

   最近気になること。このところ冬のような冷え込みの日もあるものの、いまだにカメムシがうろうろしている。きょうも玄関のガラス戸あたりを動き回っていた。

   越冬の準備のため、しかるべき「すきま」が家屋にないかウロウロとしているのだろう。よく考えると、カメムシとはよく「対話」をしていると感じるときがある。それは、踏まぬよう、踏まれぬようと互いに気遣う関係性でもある。「カメムシ君よ、ちょっと臭いよ」、「アンタかて私を踏んだやろ」、「そらすまんかったな。これから気つけるわ…」

   中でもよく見かけるのがクサギカメムシ。体長13㍉から18㍉。臭木(クサギ)につくカメムシとして知られ、果樹類・豆類・野菜類を吸汁するなど食性は幅広い。体色は暗褐色で、不規則な小斑点があり、ポピュラーな種類。暖地では年2回産卵。越冬場所を求めて屋内に集団で侵入する(※アース製薬公式サイト「害虫なるほど知恵袋」より、写真も)。

   それにしても、ことしはカメムシのことが話題になる。先日、能登半島の中ほどにある神社のイベントに出かけた。すると、壁や窓ガラス、畳などあちらこちらにいた。畳をほうきで掃いても次々と出没する。神社の宮司は「例年の数倍以上いる。踏まないように気をつけてください」と呼びかけていた。農業被害も予想されることから、石川県農業試験場は、夏場にイネの害虫である斑点米カメムシの大量に発生するとして注意報を出したほどだ(7月6日付)。

   ただ、最近思うことだが、人は虫に敏感になりすぎているのではないだろうか。とくに、家の中に虫がいてはいけない、という風潮だ。ゴキブリを捕獲するためにあちこちに粘着性のある虫取り箱を仕掛け、ダニを駆除するために浴びるほどの殺虫剤をまいている。虫さえいなければ清潔だと思っている。その結果、虫嫌いの子どもたちが家庭内で培養されているのではないか。このテーマに結論は出ない。ただ、あまりヒステリックにならないように、そんなことを考えたりした。

⇒18日(土)夜・金沢の天気     あめ

☆大谷選手「ホームラン兜」と「ズワイガニ」の話

☆大谷選手「ホームラン兜」と「ズワイガニ」の話

   日本中がこの話題で盛り上がっている。アメリカ大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が、今シーズン、最も活躍した選手に贈られるMVPに選ばれた。MVPは全米野球記者協会に所属する記者30人の投票によって選ばれ、大谷選手は2021年に続いて投票した記者全員が1位票を入れる満票での受賞となった。満票で複数回MVPに選ばれるのは大リーグ史上初の快挙とのこと。

   ことし2023年という年は大谷選手が春から大活躍した。3月22日、WBC決勝戦「日本対アメリカ戦」。9回表で大谷投手はマイク・トラウト外野手を空振り三振で仕留め、日本優勝を決めた。この決勝戦はテレビ朝日が中継(放送枠・午前8時25分-午後0時8分)、平均世帯視聴率が42.4%(関東地区)という驚異的な数字だった。視聴率とともに大谷選手の人気もさらに高まった瞬間だった。(※写真・上はNHKニュースWeb版)

   大谷選手がかぶる「ホームラン兜(かぶと)」からイメージしたわけではないが、つい、金沢市内のスーパーで雄のズワイガニ「加能ガニ」を丸ごと購入した=写真・下=。それを、能登半島の伝統的な「どぶろくの里」で知られる中能登町で購入したどぶろくと味わった。

   ぴっちり締まったカニの身を、とろりとしたどぶろくが包み込むように食感をひきたてる。一匹丸ごとなので、脚を関節近くで折り、身を吸って出す。その音はパキパキ、ズーズー、その食べる姿はまるでカニとの格闘だ。いよいよ本体に食らいつく。甲羅を外し、カニみそ(内臓)をいただく。能登で生まれた自身にとって子どものころ、カニはおやつ代わりだった。カニみその味は懐かしい味でもある。

   満足度をさらに高めたのはどぶろくだった。どぶろくとこのカニみそがしっくりと合う。いまの言葉でいうと、「絶品マリアージュ」ではないだろうか。どぶろくは日本人の昔ながら酒。このカニを味わいながら、どぶろくを楽しんでいた昔の人々たちと時代を超えて食感が共有できたひと時でもあった。大谷選手おめでとう、そしてズワイガニをありがとうと心でつぶやきながら季節の味覚を楽しんだ。

⇒17日(金)夜・金沢の天気   あめ  

★ぬかるみの岸田内閣 外交の真価問われる拉致問題

★ぬかるみの岸田内閣 外交の真価問われる拉致問題

   岸田内閣はまるでぬかるみにはまったような状態だ。前回ブログの続き。防衛政務官の三宅伸吾氏が10年前、事務所の女性スタッフにセクハラ行為をした疑いがあると、15日付の「文春オンライン」が報じている。三宅氏は参院香川選挙区から出馬して現在2期目。文春の記事によると、被害女性は、初当選から間もなくの2013年8月に参院議員会館の三宅事務所にアルバイトとして入った。

   その年の10月に女性が仕事上の相談を三宅氏に持ち掛けたところ、食事に誘われ、西麻布のフランス料理店でディナーを共にした。さらに、2軒目に連れていかれたのは個室のカラオケ店。個室にはシャワー、トレイのほかに、大きな水槽が置かれていて、三宅氏は女性に「ここに来ると、女の子はみんな人魚になるんだよ」とささやいて、性的な加害を行った。女性はこの出来事がきっかけで事務所を退職した。

   記事について三宅政務官はきょう16日の参院外交防衛委員会で、「全く身に覚えがない。セクハラをうかがわせるような当時のメールのやり取りもなく、記事にあるようなセクハラの事実はないと確信をしている」と改めて否定。週刊文春に対し、弁護士を通じて抗議文を出したことを明らかにした(16日付・NHKニュースWeb版)。この文春砲が辞任ドミノへと展開するのか、どうか。

   それにしても、岸田総理は起死回生にどのような手腕を見せるのだろうか。横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されてから46年を迎えたきのう15日、岸田総理は拉致問題が解決していないことについて、「いまだ多くの拉致被害者の方々が北朝鮮に取り残されているということ。このことは痛恨の極みであり、そして大変申し訳なく思います」と記者団に述べた。また、岸田総理が意欲を示す、金正恩総書記との会談に向けた協議については「具体的に申し上げるのは控える」と述べるにとどめた(15日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。(※写真は、政府の拉致問題対策本部がつくったポスター。12歳のときの横田めぐみさんの写真)

   岸田総理に起死回生の一撃があるとすれば、北朝鮮の拉致問題だろう。2002年9月17日と2004年5月26日、日本の総理として当時の小泉純一郎氏が北朝鮮を訪れ、金正日総書記と2度会談した。金総書記は日本人の拉致を認め、国交正常化に向けた日朝平壌宣言に署名。5人の拉致被害者が帰国を果たした。しかしそれ以降、拉致問題に進展はない。憶測だが、外交の真価が問われる拉致問題に岸田総理はかなり傾斜しているのではないだろうか。「具体的に申し上げるのは控える」というコメントは実に意味深な言い回しと読めるのだ。

⇒16日(木)夜・金沢の天気   はれ

☆「負のスパイラル」に陥った どうする岸田内閣

☆「負のスパイラル」に陥った どうする岸田内閣

   岸田政権が発足したのは令和3年10月4日。初出廷のときは、メディア各社のカメラのフラッシュを浴びながら堂々と歩いていた=写真、総理官邸公式サイト=。あれから2年と1ヵ月、「辞任ドミノ」が吹き荒れている。今年9月の内閣改造で、岸田総理が「適材適所」で人事を決めた副大臣・政務官がこの3週間足らずで立て続けに3人辞任した。中でも有権者が憤りを高めたのが、所有する不動産の固定資産税などを滞納し、4回も土地と建物が差し押さえられていた神田憲次・財務副大臣だった。

   メディアの取材に、滞納の理由について神田氏は「事務所スタッフに任せていた」「議員の仕事で多忙になった」などと釈明していた。税理士資格を持ちながら4回も差し押さえを受けたことは、まさに確信犯ではないのかと有権者は感じたのではないか。そんな人物に財務副大臣を任せてよいのか、と。ほかにも、女性との不倫で文部科学兼復興政務官を辞任した山田太郎氏、公職選挙法で禁じられている有料ネットの広告利用を勧めていたことが分かり、法務政務官を辞任した柿沢未途氏。国会議員のモラルなどどうでもよいとばかりの行為だ。

   岸田内閣では去年8月の内閣改造後にも、辞任ドミノがあった。旧統一教会との関係をめぐり国会で野党の追及を受けていた山際大志郎氏が経済再生担当大臣を、死刑執行をめぐる失言をした葉梨康弘氏が法務大臣を、「政治とカネ」が取りざたされた寺田稔氏が総務大臣を、公選法違反の疑いが指摘されていた秋葉賢也氏が復興大臣をそれぞれ辞任している。この年の12月までに4人だ。

   辞任ドミノへの有権者の憤りは世論調査でも浮き出ている。直近のNHKの世論調査結果(11月13日)によると、岸田内閣の支持率は29%、前回の10月調査より7ポイントも下がった。内閣発足以降、初めて30%を下回った。不支持は8ポイント上がって52%だった。去年の辞任ドミノでは支持率が33%(11月調査)にまで落ちていたが、ことし5月に開催したG7広島サミットで主役を演じたことで支持率を46%(5月調査)に盛り返した。その後は再びじり貧で、ついに30%を割った。世論調査で支持率20%台は政権の「危険水域」とされる。

   岸田内閣は「負のスパイラル」に陥った。ただ、不思議なことに解散風が吹き荒れてもよいはずなのに、それもない。有権者の憤りだけがふつふつと煮えたぎっている。

⇒15日(水)午前・金沢の天気  くもり時々あめ

★ココロの風景が師走へと動き出す きょうこのごろ

★ココロの風景が師走へと動き出す きょうこのごろ

   きょうは朝から師走並みの寒さ。さきほどパラパラと音が聞こえたのでアラレかと思って外を見ると、大粒の雨だった。きょうの予想最高気温は10度、雷雨になるところもあるという。北陸ではこの時節の雷を「ブリ起こし」と言う。いよいよ寒ブリの季節がやって来る。

   午前中、金沢市内のクリニックで新型コロナワクチンを接種してきた。6月以来で7回目の接種だ。つい数日前まで、感染症法上の位置づけが5類に移行していることだし、「もういいだろう」と接種を止めようと思い、9月に市役所から郵送されてきた接種券をほったらかしにしていた。ところが、5類以降でコロナに罹った知人から発熱とのどの痛みに悩まされたと聞かされ心が動いた。間もなく師走、そして年の瀬ともなれば年末の行事や買い物など忙しくなり、人と会う機会も格段に増える。で、「やっぱり打っておこうか」と接種を申し込んだ次第。さて、インフルエンザの予防接種はどうするか。(※イラストは厚労省公式サイトより)

   年末のテレビ番組と言えば、フィナーレを飾るNHK「紅白歌合戦」か。じっくり視聴したことはなかったが、一度だけ印象に残る歌のシーンがあった。2019年の紅白歌合戦にテレビメディアにはほとんど露出しない竹内まりやが初出場し、歌った『いのちの歌』が胸にしみた。「生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに 胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ この星の片隅で めぐり会えた奇跡は どんな宝石よりも たいせつな宝物・・・」。命をつなぐことの大切さ、平和の切望、実に生命感があふれていた。この年は香港の民主主義が中国政府と真っ向から向き合い、そして、16歳の環境活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリが地球温暖化対策を世界に強烈にアピールした。

   ことしの紅白歌合戦の出場者がきょう発表された。メディア各社の報道によると、出場者一覧に、「SMILE-UP」(旧ジャニーズ事務所)所属タレントの名前は1組もなかった。前年は6組が出演していた。ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川による性加害問題を受け、NHKでは所属タレントへの新規の出演依頼を当面行わないとしている。ことしの紅白歌合戦は何だか事件の後始末のような、後味の悪い番組になりそうだ。

⇒13日(月)午後・金沢の天気     あめ