☆選挙で終結する政治ドラマ

☆選挙で終結する政治ドラマ

   プロ野球を観戦したいと思い、昨夜、ナゴヤドーム(名古屋市)に出かけた。リーグ首位を狙う中日、対するのは勝率を5割に戻したい横浜だ。名古屋というアウエイ(遠征地)は強烈だ。主催者の発表で3万5400人のほとんどが中日応援である。このドームがどよめいたのが6回表。リードされていた横浜、小池が満塁ホームランを放つなど打者一巡の猛攻で8点を奪う逆転劇だった。「オレ流」落合監督も「長いシーズンは、勝ちゲームをひっくり返されることもある。いちいちとやかく言うことではない」と敗戦のコメントがけさの地元紙で載っていた。肝(はら)の据わった監督の言葉である。

    試合を見ながらふと思った。人々はなぜ野球に熱中しドームを埋めるほど集まるのか、と。私のような、どちらを応援するでもない観戦するだけの「観光客」は回数を重ねない。しかし、ファンにはいでたちからしてチーム名入りのTシャツで、「また応援に来たぞ」と意気込みがある。ファンと観光客の違いは、暴論と言われるかもしれないが、「野球のストーリー」というものが脳裏に刻まれているか否かの違いだろう。中日ファンならば、ベテラン立浪が今季初めてスタメン落ちしたのはなぜか、落合監督は打線にカンフル剤を打ったのか、などとストーリーの筋を読みながら観戦したに違いない。だから面白く、面白いからファンになる。

     今回の総選挙にも関心が高まっているのは、野球と同様、政治のストーリーも面白いからだ。小泉総理という人物に郵政民営化というシナリオがあり、参院での否決、衆院の解散という国民を巻き込んだリアリティーがある。そのシナリオが展開する中で、改革と抵抗勢力の攻防、解散という総理の大立ち回り、その後に刺客や怨念といった人間臭さが脚色され、政治がいつの間にかドラマになった。 しかも、一部の人しから知らないドラマではなく、国民的なドラマなのだ。小泉内閣の発足から4年半、そろそろこのドラマの結末が近づいてきたことを有権者が感じ、クライマックスを自分たちで見極めようとしているのではないか。ちなみにドラマの主演とプロデューサーは小泉総理である。

    だから総選挙というドームに人が「賛成」と「反対」のメガホンを持って大勢の人が集まってきている。そうでも説明しなければ説明できないほど、今回の総選挙は異常に盛り上がっている。どちらの応援団が多いかは、見たところ、ナゴヤドームの雰囲気に近い。あとは想像にお任せする。

⇒21日(日)午前・名古屋の天気  曇り

★世論調査と注目の選挙区

★世論調査と注目の選挙区

   最新の世論調査を読み解く。読売新聞社がきょう掲載した衆院選に関する世論調査(電話方式・17日‐19日)によると、内閣支持率は53.2%で衆院解散直後の調査(8、9日)より5.5ポイント上昇し、不支持は34.1%で前回調査より8.2ポイントも減った。今回の衆院選の比例代表で投票したい政党は自民37%で前回調査より10ポイント増加、民主党16%で5ポイント減だった。公明4%、共産3%、社民党2%、国民新党1%と続いた。小選挙区でどの政党の候補に投票したいかでは自民党39%で前回より9ポイント増、民主党14%で4ポイント減。公明3%、共産党2%、社民1%、国民新党1%となった。

   おそらく世論調査の担当は驚いているだろう。通常の国政選挙の世論調査でこれほど数字は動かない。調査ごとに、一つの政党にグングンと数字が集約されていくということは、有権者の関心が相当高まり、争点がはっきりしてきたという証左でもある。1989年参院選のマドンナ旋風と1990年総選挙の反消費税で議席を増やした社民の「おたかさんブーム」以来ではないか。世論調査の担当者は「ヤマは動く」と今回の総選挙の結果をすでに読み切っているに違いない。

   世論調査の分析を踏まえ、各マスメディアの選挙担当は今後の番組や紙面構成を練っている。つまり、「注目の選挙区」「話題の選挙区」の選定である。重点的に記者を投入し、公示後に選挙区ルポなどを行う。これも大方決まったようなものではないか。何と言っても、郵政民営化反対のドンである亀井静香氏とITの風雲児ホリエモンこと堀江貴文氏の広島6区だろう。続いて「刺客」という言葉が踊った東京10区(小林興起氏VS小池百合子氏)、静岡7区(城内実氏VS片山さつき氏)、民営化反対のもう一人のドンであり「国民新党」代表の綿貫民輔氏の富山3区も注目を集めそうだ。

   こうして見ると自民VS民主という構図で注目される選挙区は少ない。目立つのは衆院補選から4カ月後にまた同じ顔ぶれで戦うことになる自民・山崎拓氏VS民主・平田正源氏の福岡2区ぐらいではないか。

   ここにきて総選挙を報道するマスメディアも争点あるいは対立軸を「郵政民営化に賛成か反対か」の一本に絞らざるを得ない状態になってる。年金で争っている選挙区はどこにあるのか、という具体的な話で詰めていくとそのような選挙区ははないからである。従って「注目の選挙区」の取材が進み報道されれば郵政民営化問題がさらにクローズアップされることになる。マスメディア側に意識はないものの、マスメディアに日ごろ触れている有権者が自然と誘導される「見えざる世論操作」ともえいる現象なのだ。

⇒20日(土)朝・金沢の天気   晴れ

☆ブログと選挙とホリエモン

☆ブログと選挙とホリエモン

    来月26日と27日に「放送ゼミ」の集中講義があり、学生に夏休みの宿題を出した。テーマはズバリ、「2005年総選挙でインターネットのブログはどのような役割を果たしたか検証せよ」だ。

     本来の選挙スケジュールにはなかった総選挙が降って湧いたようにやってきた。これは、マスコミを志望する学生にとってチャンスだ。在学中に選挙というものを考え、ディスカッションするということは就職活動の筆記や面接に役立つだけでなく、選挙と切ろうにも切れない人生を送るわけだからとてもプラスになる。「選挙は民主主義の普遍的なテーマなのだ」と学生に発破をかけた。

    その論点として、日本において選挙に積極的に参加する意思の現れとして「勝手連」や「草の根選挙」といった市民の自発的行動があった。ところが、文明の利器としてのインターネットが1980年代から勃興し、いまではブログという個人がコストをかけなくても自由に意見発表ができるツールにまで発展した。日本でも335万人(総務省調べ・3月末)のブロガーがいて、その数は日ごとに増えるという盛り上がりを見せている。このブログ層が選挙に及ぼす影響についてきちんと分析することは今後の選挙のあり方を考える上で重要なポイントとなる。ブログが全盛期を迎えて初めての国政選挙だけに、おそらく各大学の計量政治学のゼミも取り組み始めている横一線の研究だと推測する。

     ところで、ライブドアの堀江貴文社長が「どうせなら亀井静香氏の対抗馬になりたい」と意欲を燃やしているという。「どうせ買収するならフジテレビ」と言ったあのツボ狙いの感覚が今回も。名を得ずとも、実をしっかりと獲得するホリエモンはすでにこの時点で勝っている。というのも堀江氏の「出馬」でライブドアのホームページのページビュー(閲覧数)はこの8月で月間5億に達する、と業界筋は読んでいる。

     ここで選挙日程と、選挙でどこまでインターネットが使えるか確認する。総選挙の公示は8月30日、投票は9月11日だ。公職選挙法では、公示日から投票日までは立候補者や政党はホームページの更新や開設が原則禁止となる。候補者はもちろん、関係のない個人であってもメールやブログ、掲示板で特定候補への投票呼びかけは禁止である(違反した場合、2年以下の禁固、もしくは50万円以下の罰金)。つまり、堀江氏がインターネットをフルに活用できるのは8月29日までとなる。全般的に言って、今回の総選挙は8月29日までに白黒がつく可能性がある。選挙の争点がはっきりしていて、案外有権者に迷いは少ない。小選挙区で候補者が出そろった段階で勝負が決まるのではないか。「1」か「0」か。これを「デジタル選挙」と言っては早計に失するかもしれないが・・・。

 ⇒19日(金)朝・金沢の天気    晴れ

★流しそうめんと選挙

★流しそうめんと選挙

    旧盆も終わり、あいさつ文は「残暑お見舞い」となった。先日、学生が流しそうめんのキットをつくった。キャンパスの山林から調達した竹でつくったなかなかの優れものである。問題はどうやって数㍍もある竹を真っ二つに割いたか、である。まず、ナタで円の面を割く。その後、棒を裂けた部分に差し込んで金槌で棒の両端叩きながら割いていく。一気に割くと真っ二つにならなら場合もあるので結構慎重さを要する。

     そうしてできた竹に水を流し、そうめんを上流から手のひらに乗るくらいの分量で流していく。水流が速すぎるとキャッチが難しい。加減というものがある。流しそうめんでポイントはつけタレだろう。水切りが十分にされないまま食べるとすぐタレが薄まってしまう。そうめんをよく振って水を落としてから食べるのだ。右利きの人は水の流れる方向の右側に座った方がよい。箸で流れを棹差すようにして待ち構え、そうめんが箸に絡まるタイミングを見計らって一気にすくい上げる。これがコツだ。

     ところで竹を割ったように、スパっと自民は割れた。郵政民営化反対のドン、綿貫民輔氏と亀井静香氏らが新党を旗揚げすることになった。党名は「国民新党」という。傑作なのはその活動方針だ。「小泉恐怖政治の打破」「破壊でない真の改革」である。どこかの国のように、大統領権限を振りかざして民政を圧迫するのであれば恐怖政治とも表現できようが、総理が解散権を行使し、対立候補を立てたくらいのことを恐怖政治と称しては「言葉の愚弄」となる。語気を強め、他人が嫌悪する言葉を吐いても、誰にも意図するところは伝わらない。

    新党の結成で、綿貫氏の地盤、富山3区の自民党県連は胸をなでおろしているだろう。綿貫氏は富山県の自民党のドンでもある。無所属で立候補した場合、これまでのことを恩義に感じあるいは義理立てして応援に回る人もいる。しかし、新党となると話は別である。「オレは自民党だから、他党は支持できない、従って綿貫氏は申し訳ないが…」と支援を断る理由になる。県連もおそらく「他党を応援するのはよろしくない」とお触れを出すだろう。それにしても綿貫氏は78歳、新党の代表をよく引き受けたものだ。 冷静に考えれば哀れでもある。

    そうめんは好き嫌いが分かれる麺類である。うどんやそばとは違って食感が薄いからだ。それでも流しそうめんだと風流や涼感という別の要素が加わって食べる人は多い。新党も同じで「改革を断行しそうだ」などといった期待感やムードが醸成されれば、その党の候補者をよく知らなくても一票を投じるものだ。それがこれまでの民主党だった。ところが、その新味が民主党には感じられないという意見をよく聞く。実際、ブログを閲覧しても、そのような書き込みが多いのではないか。ましてや、綿貫氏や亀井氏の新党に期待感がわくだろうか。水分が抜けて絡まって食えないそうめんのような感じがするのだが…。

 ⇒17日(水)午後・金沢の天気  雨  

☆昔「勝手連」いまブログ選挙

☆昔「勝手連」いまブログ選挙

   終戦記念日の15日、小泉総理は東京の千鳥ケ淵戦没者墓苑に献花し、日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式にも出席したが、靖国神社への参拝は見送った。10日の「自在コラム」でも述べたように、衆院選で靖国問題が争点化するのを避けたいとの現実的な判断があったのだろう。

    ちょっと意地悪な見方をする。郵政民営化反対派の急先鋒、野田聖子氏は14日に夫の鶴保庸介氏(参議員)と靖国神社を参拝した。私はこの「夫婦参拝」を小泉総理を15日に参拝させるためのおびき出し作戦ではなかったか、と見ている。「8月15日の靖国参拝」を公約に掲げて総理に就任した2001年、小泉総理は中国の反発に配慮して8月13日に参拝した。このとき野田氏は「総理の初心が変節されたのか。いつもの歯切れの良さとは異なり、総理ご自身が日程変更の理由を明確に説明されなかったことを私は残念に思っています」(野田氏ホームページ)と批判している。そこで夫婦参拝を前日に行うことによって、「郵政民営化の公約にそれほどこだわるなら、8月15日参拝の公約も守ってよ」と挑発したのではないかとの推測だ。真意はどうであれ、小泉総理は動かなかった。

    小泉総理のこうした徹底した「郵政」争点化の狙いは的中している。最新のTBS系列のJNN世論調査(13、14日実施)によると、内閣支持率は59.3%、不支持は39.8%である。解散直後の各メディアの内閣支持率は50%前後だったから、日ごとに支持が高まっているとの印象だ。有権者にとっては、小泉総理が自ら軍旗を掲げて関が原の戦いに臨む武将のイメージと重なり、実に分かりやすい。要は「西か東か」、つまり「民営化賛成か反対か」なのである。

    この分かりやすさで、内閣支持率を押し上げているのはインターネットのブログではないかと思う。争点がはっきりしているので、ブログのテーマになりやすい。つまり書き手自らの旗色を鮮明にしやすい。しかも、善玉と悪玉と言っては語弊があるが、両陣営の顔が見えてキャラクターも立っている。こんなにストリーが読める面白い選挙はかつてない。そこで、たとえば「小泉陣営=郵政民営化賛成」に共感したある人がブログを書いたとする。そのブログに50人のアクセスIP数(訪問者数)があり、読んでくれたとすると、乱暴な言い方かもしれないが、「50人のミニ集会」が成立したと同じことにならないか。

    かつて「勝手連」や「草の根」と言われた無数の選挙サポーターがいまブログという手法で参戦しているのではないか。総務省の調査だと、2005年3月末時点の国内ブログ利用者数は延べ335万人、アクティブブログ利用者(少なくとも月に1度はブログを更新しているユーザ)数は95万人いて、日々その数は増えている。今回いろいろなブログをざっと見てみると、「郵政民営化賛成」が多い。このブログ・サポーターが世論形成のベースにいて、内閣支持率を押し上げている要因の一つになっているように思えてならない。もちろん数字的な裏付けはない。ただ、ピーク時に比べ減ったものの「小泉内閣メールマガジン」は160万人に配信されている。しかもそのメルマガは200号を数えた。毎週配信されるメルマガで小泉総理の言動をウオッチし共鳴するコアなサポーター層も存在するのである。

    選挙後こうしたブログ現象と選挙結果が分析され、リンクしていたことが評価されると、「ブログはメディアにのし上がった」と一気に脚光を浴びる。評価されなければ、単なる個人日記にすぎない。

⇒16日(火)朝・金沢の天気   晴れ    

★「キャッチコピー」で読む選挙

★「キャッチコピー」で読む選挙

     きのう(14日)は衆院解散後初めての日曜日とあって、NHKや民放の朝の討論番組は選挙一色だった。今回の一連の流れをメディアに焦点を当て注意深く読んでみると、メディアで報じられた登場人物の「言葉の魔力」というものを感じる。「自民党をぶっ壊す」「殺されてもいい」が注目された衆院解散、その直後の総理会見で「ガレリオは『それでも地球は動く』と言った、私は『それでも郵政民営化は必要だ』と言いたい」と述べ、内閣支持率を一気に上げた。前から言われていたが、小泉総理はキャッチコピーの名人だ。

    ところが、郵政民営化反対派からもキャッチコピーは発せられるものの「名人」がいない。反対のドン・綿貫民輔氏は、すべての反対者の小選挙区に自民が対抗馬を立てることについて「小泉さんは織田信長。罪のない子女まで殺した比叡山・延暦寺の焼き打ちと似てきた」と。綿貫氏はもともと神主だから「宗教弾圧」をイメージして言葉を発したのだろうけれども、視聴者や読者で「延暦寺の焼き打ち」と聞いてピンとくる人はそう多くない。これでは印象に残らない。もう一人の亀井静香氏はきのう、自民から非公認とされた反対派の受け皿とする新党結成について、番組の中で「どうやったら仲間が一人でも生き延びていくか。無所属がいいか、新党でいくべきか、結論は出していないが」と語った。強気の面構えだったが、言葉はすでに萎(な)えていた。視聴者は敏感にそう読み取っただろう。

     では、野党はどうか。きのうは各番組とも与野党の党首討論を企画したが、自民は「マニフェストがまだ完成していない」との理由で同じ討論のテーブルに着かず、野党だけが顔をそろえた。小泉総理に代わり、幹事長代理の安倍晋三氏や元副総理の山崎拓氏らが中継で顔を出していたが、欠席は自民の深謀だろう。野党は当然、年金改革はどうだ、靖国参拝はどうだと、論点を郵政民営化から外しにかかる。ましてや「8月15日」を前に野党から大声を上げられたら小泉総理も3対1で形勢が不利となる。テレビ出演は公の仕事でも義務でもない。もちろん「公の党首は国民に向かって説明する責任があるのでは」と番組プロデューサーは自民サイドと交渉を重ねたに違いない。しかし、命運がかかる「いくさ」を前にそのキャッチコピーがどれほどの説得力を持ったのか。

     番組で傑作だったのは、野党党首の討論の直後に出演した石原慎太郎東京都知事の発言だ。野党党首の発言を聞きながらスタジオの片隅で出番を待っていたので「つまんなかったから、眠くなったよ」と。さらに「(今度の選挙で)社民は消えるね、共産は減らすね」と。さらに亀井氏から新党の党首になってほしいとの要請があったことをあっさりと暴露し、「(亀井氏らは)私怨に満ちているよ」とも。短いフレーズながら、討論の感想と選挙分析、幻の新党の裏話がコミカルにそして鋭く刻み込まれていた。トータルの秒数にして20秒だったろう。言葉の力というのは表現もさることながら、タイミングとスピード感であったりする。

 ⇒15日(月)午前・金沢の天気  雨      

☆「選挙」上手の商売下手

☆「選挙」上手の商売下手

   9月11日の衆院選挙に向けて一番張り切ってきるのが小泉総理、二番目がNHKではないかと推測する。小泉総理は解散後の内閣支持率が50%前後と急上昇し、この勢いを過半数の議席確保(自民と公明で)につなげたいところだろう。NHKは去年7月に発覚した元チーフプロデューサーによる番組制作費の着服事件以来相次いで不祥事が発覚しており、なんとか得意分野の選挙報道で信頼回復をしたいと腕をさすっているに違いない。

    実際、NHKの選挙報道は民放テレビ局に比べ、開票速報のスピードや出口調査による当落の分析、選挙番組のボリュームなどにおいて群を抜く。だから、候補者が選挙事務所で万歳を行うとき、NHKの「当確」速報を確認してからというケースがままある。いくら民放が早々と「当確」を打っても候補者すら事務所に現れないこともある。また、視聴率も国政選挙ならばローカルでも20数%は稼ぐ。民放は最初からNHKを別枠にして「選挙番組の視聴率は民放で何位だった」などと広報したりする。

    受信料の不払い・保留件数が7月末現在で117万1千件にも達した。このままでいけば減収は年100億円にも上ることが予想され、秋の中途採用(40-50人)を取りやめると発表したほどだ。だから、降って沸いたような選挙だが、視聴者をNHKにクギづけして、「やっぱり皆様のNHKでしょう。そこで、受信料はお支払いください」とアピールするよいチャンスにしたいとNHK経営陣は考えているはずだ。

    しかし、選挙報道の上手は必ずしも商売上手にはつながらないようだ。NHKは公開番組の観覧申し込みについて、受信料を支払っている人に限定する措置を取るという。新聞報道によれば、9月27日放送分の番組「NHK歌謡コンサート」を東京・渋谷のNHKホールで収録する。応募者の中から抽選で1500組3000人に入場整理券を送るが、その前に応募はがきと受信料の契約台帳を照合し、支払いを確認するというのだ。人気歌手の鳥羽一郎や藤あや子が出演だから応募も多いだろう。

    どうやら「受信料を払っていない人でも番組が見られる」という不公平感や、「受信料を払っていない人が番組観覧できるのはおかしい」との声がNHKに寄せられたことによる措置らしい。が、不払い者締め出しは逆効果である。もともと余分な出費を抑えたいと思っていた人が一連の不祥事をきっかけに不払いに転じているのだ。最近は「隣が払っていないのなら私も」という便乗組も増えている。しかし、今は支払いを渋っていても、これらの人の中にはNHKの努力によって支払いを再開する人もいるはずだ。努力とはNHK営業マンによる戸別訪問とか、優良な番組を提供することによる信頼の回復である。ところが、支払う者と不払い者を選別すると、選別された側は強制力を持った法律でも出来ない限り、一生不払いになる。

    むしろ、番組観覧を有効に使えばいいのである。厳選に抽選して、その中に不払い者がいればNHK職員が持参して「抽選の結果当選しました。つきましては受信料もお願いします」と一言添えて入場整理券を手渡せばいい。新聞社は新規読者を開拓するためにこのような地道な努力をしている。選別は反感を買うだけだ。

⇒14日(日)夜・金沢の天気  雨

★金沢を描くということ

★金沢を描くということ

      画家で金沢美術工芸大名誉教授の百々(どど)俊雅さんと同大教授の小田根五郎さんの絵画展「金沢百景展」(8月11日-16日)が金沢市武蔵町の「めいてつエムザ」で開かれている。

    2001年から2004年まで足掛け4年にわたって、北陸朝日放送で放送された番組「金沢百景」で紹介された身近な風景を描いた油絵やパステル画を含む150点を中心に展示している。金沢の伝統的な街並みに加え、JR金沢駅前や新県庁舎、新しい商店街にも百々さんと小田根さんの目線が優しいタッチで注がれている。一枚一枚を眺めていると、金沢の街を散策した気分になる。

   かつて、2人をテーマにしたスペシャル番組の収録で、絵画制作の苦労話などうかがう機会があった。その中で印象に残るエピソードをいくつか。小田根さんが金沢の古い民家を描いていた。すると、家の女性が出てきて、「絵描きさんに描いてもらえるほどの価値があるのならこの家を残そうと思います」と言う。跡継ぎの女性は改築して保存しようか、いっそうのこと壊して新築しようかと迷っていた。小田根さんの真剣な眼差しを見て、女性は保存を決心したそうだ。

    百々さんは白髪の長身だから目立つ。路肩で描いていると、「ご苦労さまやね」とわざわざお茶を差し入れてくれたりする人もいる。弁当忘れても傘忘れるなーといわれるくらい金沢の天気は変わる。百々さんは雨が降っても絵が描ける場所を確保することに苦心した。屋根の下、橋の下、ビルの中、商店街のアーケードとありとあらゆる避難場所を探す「雨傘名人」となった。金沢市内でざっと100ヵ所にも。北陸・金沢でスケッチをするにはこういうことが話題になる。

    絵画展の会場では絵はがき=写真=も販売されている。ちなみに、左から県立音楽堂、金沢城二の丸、金沢城石川門である。また、番組と同名の「金沢百景」という書籍もある。変形A4判で132ページ、能登印刷出版部の発行で、会場ほか石川県内の主な書店で2700円で販売されている。

 ⇒13日(土)午後・金沢の天気  曇り

☆ドン綿貫氏の選挙の行方

☆ドン綿貫氏の選挙の行方

  すさまじいばかりの「民営化反対派つぶし」、と思われて仕方がないくらいに小泉総理は対立候補の擁立に躍起である。これに対し「安政の大獄か。意見が違う者を全部抹殺する気か」(亀井静香氏)や、「ヘビのように執念深い」(綿貫民輔氏)と感情をむき出しにするのも理解できる。テレビの取材ならこの言葉はぜひほしいところだ。しかし、マスメディアの政治担当なら小泉総理の意図をこう読んでいるはずだ。「造反者」の選挙区にあえて対抗する候補者を出し、マスコミの「注目の選挙区」に仕立てる。これによって、郵政民営化に反対か賛成かの争点をさらにブラッシュアップする意図だろうと。東京10区の小林興起氏に対し小池百合子氏を、静岡7区の城内実氏に財務省の片山さつき氏をと話題性のある人物をカードとして次々と切っているのはこのためだ。

     ところで、小泉総理に一つのフライングがあった。きょう(12日)比例区南関東ブロックへの重複立候補はしない考えを党の選挙担当者に伝えた。総理はこれまで党神奈川県連の要請を受け入れ、比例と小選挙区の重複立候補の意向を表明していたが、公選法が禁じる事前運動に当たるため、総理が映った掲示済みの党のポスターを南関東地域からすべて撤去する必要があり取りやめにしたとか。公選法もさることながら、他県で「小泉」と書かかれた比例の無効票が続出しては損だ、との判断もあるようだ。

     先日、石川1区、馳浩(はせ・ひろし)氏の有力なサポーターと話をする機会があった。馳氏が退路を断って比例代表には重複せず、小選挙区のみ立候補をめざすと宣言したことに、ちょっと悩んでいた。「1万の票の差ですよ」と。前回2003年11月は投票率59%で民主の奥田建氏が99868票、馳氏97075票だった。両者が競った攻防のように思われるが、実は前回は馳氏の票には公明の支援票が8000票加算されていた。従って、2800票余りの差であるように見えても、馳氏にとっては10800票の差で敗れたに等しい。というのは、さらにその前回2000年6月は投票率64%で馳氏が107179票、奥田氏が100392票だった。この時は公明の支援票がなくても勝った。保守基盤の強い金沢で1万票余りを奪還するには時間もかかるがその時間が今回はないので、その有力サポーターは「無理せず、比例と重複したら…」と言う。しかし生真面目な馳氏のことである。前言を撤回せず名実ともに走り回って選挙戦を戦うだろう。

     それにしても郵政民営化反対のドン、綿貫民輔氏の富山3区の公認問題は結論が出ない。結局、自民県連は12日に県連役員が上京して、党本部に対し、比例を含め3人が公認申請している現状を報告することにした。これでは県連そのものが分裂すると窮状を訴えるためだ。しかし、党本部の武部幹事長は11日午前の会見でも都道府県連が郵政民営化法案に反対した議員の公認や推薦を申請してきても絶対に受け付けない考えを強調していて、富山県連との協議に党本部が応じるかどうか…。なぜなら、綿貫氏の対抗馬となりそうな萩山教厳氏(前回比例単独)は亀井派に所属しているが、郵政法案には賛成した。党本部とすれば、「敵陣」で踏ん張った人物である。萩山氏にこそぜひ小選挙区にくら替え出馬させ、綿貫氏に戦いを挑んでほしいところだろう。少々地味だが「注目の選挙区」となる。

     「対抗馬」だの「敵陣」だのと書いていると、まるで関が原の合戦前夜の時代小説でも書いているような気分になる。そして、ここ数日の「自在コラム」へのIPアクセス(訪問者数)が普段の2倍にもなっている。タイトルに「選挙」と入れているから検索で引っかかってくるのだろう。このブログサイトが混み合うくらい情報が行き交っている。かつての「草の根選挙」に代わる、日本における初めての「ブログ選挙」となるかもしれないと私は注目している。

⇒12日(金)午後・金沢の天気  雨

★退路断つ、選挙の人生模様

★退路断つ、選挙の人生模様

   きょう(11日)届いた「小泉内閣メールマガジン第200号」の「総理メッセージ」で、小泉総理は郵政解散の意義をこう述べている。以下は抜粋。

   約400年前、ガリレオ・ガリレイは、天動説の中で地球は動くという地動説を発表して、有罪判決を受けました。そのとき、ガリレオは、「それでも地球は動く」と言ったそうです。今、国会では「郵政民営化は必要ない」という結論を出しました。「それでも郵政民営化は必要だ」と私は思います。私はもう一度国民の皆さんに聞いてみたいと思います。本当に郵便局の仕事は公務員でなければできないのか、民間人でやってはいけないのかと。

                   ◇

   今回の「解散・総選挙」を流れを見て、高校時代に世界史をかじった人ならこんなシーンをイメージしたかもしれない。1917年3月、食糧危機から暴動が起こり、ロシアの皇帝ニコライ2世が退位し、ロマノフ朝は滅亡する。翌4月16日にレーニンが亡命先スイスからペトログラードに帰還、4日後に「4月テーゼ」を発表し、「すべての権力を会議(ソビエト)へ」と声明を発する。11月、第2回全ロシア労働者・兵士ソヴィエト大会が開催され、革命に反対するメンシェビキと社会革命党右派は大会から退場した。ボルシェビキが圧倒的多数を占め、ソビエト権力の樹立が宣言された。ここで採択されたのが、地主による土地所有を廃止する「土地に関する布告」であった。レーニンを小泉総理、土地を郵政と置き換えて考えると面白い。あくまでも政治のダイナミズムを考察する上での一つのイメージである。理論づけではない。

今回の総選挙でさまざまな人間模様が交錯している。前回、石川1区で民主の奥田建氏に敗れ、比例代表で当選した自民の馳浩(はせ・ひろし)氏は、今回は比例代表の退路を絶って小選挙区一本で選挙を戦いたいと決意を述べた。前回敗れたとき、「自分は甘かった」と随分後悔していた。今回は、比例代表を担保することなく、小選挙区で勝負しようというのである。これはこれで覚悟が見えて潔い。逆に小泉総理は比例代表に疑問を投げかけ、これまで神奈川11区の小選挙区のみに立候補していた。今回は比例と重複出馬を決めたようだ。知名度が抜群の小泉氏が比例にも回れば大量得票が期待できる。信念ではなく実利を得る。

    郵政民営化反対の頭目、綿貫民輔氏の富山3区は悩ましい。綿貫氏は自民県連の重鎮である。今回の比例の萩山教厳氏と綿貫氏がともに県連に公認申請している。党本部へも綿貫氏へも義理立てしなければならない県連の心境はいかばかりか。綿貫氏は78歳である。この年齢もまた悩ましい。

⇒11日(木)午後・金沢の天気   くもり