★里山に夏が来た

★里山に夏が来た

   金沢大学角間キャンパスにも本格的な夏が来たようです。下の写真をご覧ください。5月14日に植えた雑穀がこんなに青々と茂っています。これは大学周辺の市民ボランティアが耕作してくれている畑なのです。アワのほかにトウモロコシ、キビ、サツマイモなどがあります。バックに見える大学創立五十周年記念館「角間の里」の横にはビオトープがあり、そろそろホタルの季節です。 
アワ茂る  

   先にご紹介しましたが、「角間の里」は築280年の古民家です。白山麓の旧・白峰村から譲っていただき、ことし4月に金沢大学にやってきました。今月10日に保育園の子供たち50人がここを訪れ、駆けっこをしたりと大はしゃぎでした。子供たちが脱いだ靴が土間いっぱいになるくらいでした。あなたは、こんなに大勢の子供たちの姿を最近見たことがありますか。この子供たちがおそらく70歳、80歳になっても「角間の里」は健在でしょう。何しろ280年も生き延びてきたのですから・・・。
土間に幼い息吹  

   きょう15日夕方、NHK金沢放送局の番組「いしかわワイド」で、「角間の里」から生中継があります。ご覧いただければ幸いです。

⇒15日(水)午前・金沢の天気 晴れ 

☆放送と通信、ライトな融合

☆放送と通信、ライトな融合

   ニッポン放送の経営権をめぐって争ったライブドアとフジテレビが業務提携を模索しているが、12日付の朝日新聞によると、具体案が出たらしい。それによると、フジが撮影した事故や災害現場の映像素材を、ライブドアが来月から東京都内で始める無線LANのインターネットを利用して送受信する。フジは社内通信用だけでなく、視聴者からの映像提供も受け付ける。ライブドアがあす15日に開くこの無線LANの記者会見にフジの役員も出席するという。

   放送と通信が提携することで日本のメディアの有り様が大きく変わる。今回、映像素材の送受信だけの業務提携ならインパトに欠ける。ただし、ライブドアがたとえば「東京ハザード」と銘打った、一般からの動画の投稿サイトをつくり、東京で起きた事件・事故の映像をフジと連携してアーカイブしていくというのであれば価値がある。災害映像をフジが一網打尽にでき、地上波で番組化もできる。果たして業務提携の第1号はどのような内容になるのか。
                 
   フジテレビ系列の福井テレビジョン放送(FTB)はITを使った画期的な番組を制作している=写真=。夕方の情報ワイド「おかえりなさ~い」は、ケータイ・インターネットなどで視聴者にクイズに応募してもらい、その正解者の中から当選者を選び、賞品をプレゼントする。スタジオを見学させてもらったきのう13日は、賞品の目玉が韓国焼酎30本とショットグラス10個だった。韓国焼酎がブームとあって、視聴者から1036件ものアクセスがあった。アクセスの8割は携帯電話から。同じクイズの募集でも従来の「はがき」だったら、人口87万人の福井県だと多くて300枚だろう。ケータイで、視聴者の番組への参加意欲を最大限に取り込んでいるのだ。

   画期的なのは、毎週月曜から木曜までのレギュラー企画であること。視聴率にもよいで影響が出て、「視聴率が底堅くなって、夏場も数字が落ちていない」(杉山一幸制作部長)という。このクイズ参加のシステムは、金沢市のソフト開発会社「FIXインターメディア」との提携で構築。インターネットを介して送られた視聴者からのデータをリアルタイムでグラフ化(円、棒など)に処理し、放送画面に送出する仕組みだ。

   ケータイはテレビを見ながら操作できるので相性がいい。ブロードバンドを使った放送と通信の「ヘビーな融合」が放送コンテンツのビデオ・オン・デマンドだとすると、ケータイとテレビを使った番組参加の放送モデルは放送と通信の「ライトな融合」と言えそうだ。FTBがその最先端を走っているのは間違いない。

⇒14日(火)午前・金沢の天気  晴れ    

★「雲を測る男」がまとう布

★「雲を測る男」がまとう布

   去年10月にオープンした「金沢21世紀美術館」の入館者数が、きのう12日で100万人を突破しました。開館1周年で入館者100万人を見込んでいましたが、予想より4ヵ月も早く達成したので、関係はホッと胸をなでおろしているに違いありません。しかも、金沢の市祭「百万石まつり」の期間中に100万人ですから、ゴロ合わせもよくできています。
福を呼ぶ男      きょうは秘蔵の一枚をお見せします。秘蔵と言っても絵画ではありません。上記の写真です。美術館の屋上に据え付けられているヤン・ファーブル(ベルギー)のブロンズ作品「雲を測る男」です。美術館の作品目録によると、作者のファーブルはあの有名な昆虫学者ファン・アンリ・ファーブルのひ孫ということです。作品は映画「アルカトラズの鳥男」(1961年・アメリカ)から着想を得たそうです。サンフランシスコ沖のアルカトラズ島にある監獄に収監された主人公が独房で小鳥を飼ううちに、鳥の難病の薬を開発し鳥の権威となったという実話に基づく話。映画の終わりの場面で「研究の自由を剥奪された時は何をするか」と問いに主人公が答えたセリフが「雲でも測って過ごす」だったことからこの作品名がついたとか。昆虫学者の末裔らしい、知的なタイトルです。

   でも、この作品を実際に見た人なら「ちょっと違う」と気づくでしょう。そう、男が胴から腰にかけて白い布をまとっているのです。普段は身に付けていません。この写真を撮影した去年9月に、台風16号と18号が立て続けにやってきました。何しろ屋上に設置されているので台風で倒れるかもしれないと、まず布を胴体に巻いて、その上にワイヤーを巻いて左右で固定したのです。

   美術館はオープン前の一番あわただしいとき。その姿を、蓑豊(みの・ゆたか)館長が「金太郎さんの腹巻のようでしょう」とユーモアを交えて説明してくれたのが印象的でした。あれから8ヵ月、開館当初は「目標30万人」でした。それがすでに3倍以上にもなり大ブレイク。福を呼んでいるのは案外、屋上に立つ「この男」かもしれません。

⇒13日(月)午前・金沢の天気 晴れ

☆続・マエストロ岩城の視線

☆続・マエストロ岩城の視線

   名人芸というのものがある。物をつくらせたら、話をさせたら、アイデアを出させたら「天下一品」という境地である。指揮者の岩城宏之さんもある名人芸をもっている。テレビで放送する毎年4本の「オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)アワー」の番組プロデューサーなどを通算10年間させてもらった私の感想である。「岩城さんの名人芸」というのは指揮ではない、岩城さんの指揮を論評するなんて私にできるはずもない。岩城さんの名人芸というのは「にらみ」である。

   2003年9月、石川県立音楽堂で開催されたOEK&仙台フィルのコンサートでのこと。「外山雄三 管弦楽のためのディベルティメント」をテレビ番組用に収録した。その時、ステージ上のイントレ台のカメラマンを、指揮をしていた岩城さんが一瞬にらんだ。タクトを振り上げるようにして顔を上げ、斜め後ろを向きながら0.1秒くらいの早業でにらみつけたのである。ステージの袖にいた私にははっきり見えた。

   コンサートが終了し、楽団員の何人かが言葉を交わしていた。「演奏中にノイズがした」と。コンサート終了後に、そのカメラマンが「カメラのネジが一本取れて落ちました」と1㌢ほどの小さなネジを拾ってきた。試しにネジをステージ上で落としてみると確かにボトッという音がする。ノイズはネジが落ちた音だったのである。岩城さんはそのノイズに気がつき、ノイズがした方向を一瞬にらんだ。その目線の先がカメラマンだったというわけである。

   翌日、岩城さんに謝りに行った。「今後は気をつけてほしい」と一言だけだった。実はカメラマンも岩城さんの「にらみ」をとっさに感じた。でも、なぜにらまれたのかその時は理解できなかった。「刺すような怖い目で身震いした」とカメラマン。テレビ局の番組スタッフはそれ以降、ノイズに敏感となり、楽譜のコピーも普通紙だとめくる音がするというので、音が少ない和紙を使うようになった。マエストロの「天下一品のにらみ」が、番組制作の改善運動へとつながっていったのである。

⇒12日(日)午前・金沢の天気 曇り

★ラスベガス残像と金沢大学

★ラスベガス残像と金沢大学

  4年前の夏、家族旅行でアメリカのラスベガスを訪れた。灼熱の砂漠に「エンターテイメントの泉」が出現している。樹木より人の数が多い。その当時を思い出しながら、勤め先の金沢大学角間キャンパスはその対極にあるのではないかと想像をめぐらせたりしている。深緑の山里に「知の泉」である。

   ラスベガスにはギャンブルという仕掛けがある。人の欲望を最大限に引き出す装置である。同じように金沢大学には、教育・研究という仕掛けがある。人の知的欲求を最大限に引き出す装置だ。162万冊の蔵書がある図書館。1万8百人の学生が1日1冊読んだとしても半年はかかる膨大なライブラリーである。
                    ◇
   きのう(10日)金沢市内の保育園児50人が角間キャンパスに「散歩」にやってきた。迎えたのは保健学科の学生80人。キャンパスの中にある広葉樹の森を学生と保育園児が手をつないで散歩するのである。当初お互いドキドキしながら手をつないでいたが、山を下りるころには心が砕けた感じに、お弁当を広げるころ=写真=には随分と子供たちが懐いた感じになった。園児にとっては山を散歩するという経験、学生には園児をケアするという保育実習になった。

    お弁当を食べた築280年の再生古民家「角間の里」は130人もの園児と学生であふれた。1980年、白山麓の手取ダムで水没の運命にあったこの古民家は住民の手で救われた。そしてことし4月に金沢大学のキャンパスで再生された。その家の中を駆けっこする園児たちの歓声が響いた。何もないネバダ州の砂漠に出現した巨大ホテルで、ギャンブルに一喜一憂する観光客の喧騒と子供たちの歓声がダブった。

ラスベガスと日本の時差は夏場で16時間だ。当時、ちょっとした事情でラスベガスからアリゾナ州のグランドキャニオンへ足を伸ばすことができずに、そのままシアトル経由で関空に帰ってきた。もしグランドキャニオンに足を運んでいればまた別の感想になったかもしれない。テーマ設定の弱い、取り留めのないコラムになってしまった。

⇒11日(土)午前・金沢の天気 曇り

☆マエストロ岩城の視線

☆マエストロ岩城の視線

  バス通勤の行き帰りに、文庫本「オーケストラの職人たち」(文春文庫・ことし2月第1刷)を読んでいる。実はこの本、著者の岩城宏之さんからいただいたものだ。ことし1月に会社を辞した際、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の事務局の方が、「岩城さんからのプレゼントです」とわざわざ届けたくれた。「暇になるだろうから本でも読んで」という岩城さんの心遣いはありがたかったが、その後の身内の不幸や再就職でそれどころではなかった。最近部屋の整理をしていて、思い出して読み始めたのだ。退社から5ヵ月余り、心のゆとりが少し出来たということかもしれない。

  文庫本はことし2月だが、内容自体は98年から01年にかけて「週刊金曜日」に掲載されたものだ。オーケストラというプロ集団の群像を描いた本ではない。オーケストラを支える「裏方」を描いている。私自身も裏方だった。テレビで放送する毎年4本の「OEKアワー」の番組プロデューサーなどを通算10年間させてもらった。モーツアルト全集・25回シリーズ(東京・朝日新聞浜離宮ホール)、中村紘子・ルービンシュタイン・コンサート(東京・サントリーホール)などざっと40本に上る。このほとんどが岩城さんの指揮だった。「岩城さん」と書くのも、実は岩城さんからしかられたからである。初めてお会いしたとき、「岩城先生、よろしくお願いします」とあいさつすると、ムッとした表情で「ボクはセンセイではありません。指揮者です」と。そう言えば周囲は「先生」とは呼んでいない、「岩城さん」か「マエストロ」と。初対面で一発かまされたのである。

  岩城さんが「裏方」に注ぐ目線は温かい。岩城さんはハープの運送会社「田中陸運」(東京)のアルバイトを自ら経験し、裏方の職人技はこうだと描いている。威張ったり、権威ぶったりしない人なのだ。先の「岩城さん」のエピソードも実はそんな人柄がにじ出た話であって、これを「気難しい」と誤解する人も多い。本では能登出身の元N響ステージマネージャー延命千之助さんや、演奏旅行のドクターである川北篤さん(金沢市)、写譜名人の賀川純基さんらオーケストラとかかわる多彩な顔ぶれを紹介している。

   岩城さん自身が書いているように、小さいとき音感教育を受けなかったので「耳にまったく自身がなかった」「多くの指揮者たちに、すごく劣等感を持っていた」。その分、徹底した現場主義を通した。その岩城さんが昨年の大晦日にベートーベンの交響曲1番から9番を一晩で振り、クラシック界の話題をさらった。私は、262本のヒットを放ち84年ぶりにアメリカ大リーグの年間最多安打記録を更新したイチロー選手に匹敵する「偉業」ではないかと思っている。その時、イチロー選手を「野球小僧」と称した人がいた。それに倣えば、岩城さんは「音楽小僧」だ。72歳の今でも挑戦を続けて止むことがない。

⇒10日(金)午前・金沢の天気 晴れ

★モリアオガエルの卵と心臓

★モリアオガエルの卵と心臓

  金沢大学角間キャンパスの創立五十周年館「角間の里」横に湧き水があり、池になっています。モリアオガエルがゲロゲロと勢いよく鳴いていると思ったら、産卵の季節なんですね。けさ(9日)大きな卵を木の枝にぶら提げるようにして産み付けてありました。直径20㌢以上はあるでしょうか。じっとみつめていると、人の心臓にも見え、気のせいか生命の鼓動がかすかに聞こえたようにも感じられました。

  昨夜(8日)、金沢大学教授(自然計測応用センター)の中村浩二教授が朝日新聞金沢総局で「里山に学ぶ~金沢大学の実践から~」というテーマで講演しました。以下は要約です。「里山(さとやま)」という言葉は割りと新しく、岩波書店の「広辞苑」で登場したのは1998年の第5版でした。むしろ、「奥山(おくやま)」という言葉の方が古いようです。これは、ひとえに注目度の違いです。奥山は原生的な森であるのに対し、里山はどこにでもある農山村です。ようするに有難味のない風景なのです。その里山が俄然注目を集めたのは、去年、西日本を中心に起きた「クマ騒動」でした。新聞紙面に「里山にクマ出没」「里山になぜクマが」などと見出しが躍りました。里山と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ、クマ自身がその領域の見分けがつかず、里山に迷い込んでくるのです。これを人災と見るか、害獣の侵入と理解するかは人間の感性の問題なのかもしれません。
                   
  里山がなぜ荒れるのかー。講演会が終了して、講師と聞き手を交えた意見交換がありました。林業として農業として成り立たない、つまり里山に住むことの経済効果が得られない、だから過疎化する、というのは誰もが理解することだと思います。ところが、ヨーロッパ、特にドイツでは「自然療法士」というセラピストがいて、里山をフィールドとした山野草の摘み取りから摂取、森林浴の効果的なノウハウを指導しています。医療分野での里山の利用価値は十分にあるのです。また、子供たちへの教育の場としての里山活用法も紹介されました。
                   
  昨夜はサッカー・ワールドカップ・ドイツ大会アジア最終予選「日本VS北朝鮮戦」がバンコクであり、講演と同じ時間帯にテレビ中継(関東地区の視聴率43.4%・ビデオリサーチ調べ)されました。日本がバーレーン戦(6月3日)に勝って、W杯出場の可能性が出た段階で、講演に人は集まるのだろうかと心配していました。ところが、定員50人のセミナールームは満杯でした。こんなに里山に対する関心度が高いのか、と驚いたくらいです。これもクマ騒動が一石を投じてくれたお蔭でしょうか。

⇒9日(木)午後・金沢の天気 晴れ

☆数字で読み解く金沢大学③

☆数字で読み解く金沢大学③

  金沢大学に学生(大学院生含む)が10800人が在籍することは前に述べた。それでは、どんなところに住んでいるのだろうか。学生のうち、自宅から通っているのは19.8%、5人に1人である。アパートやマンションに住んでいる学生は71.8%、次いで学生寮が4.4%となる。この学生寮は3つあり、定員が754人、入居率は76%だ。(出典は金沢大学広報室発行のパンフレット「データで見る金沢大学」)

  学生寮をちょっと覗いてみる。大学周辺のアパートでは家賃のみで3万円から5万円が相場。これに比べ寮費は断然安い。寮の寄宿料、つまりアパートの家賃に当たるものが1ヵ月700円で3寮とも一律である。3寮のうち、もっとも大きい金沢市弥生にある北溟(ほくめい)寮(定員396人)のケースで見てみる。昭和43年建設ですでに築37年。電気代や水道代など様々な諸費用(基本料金)は全員で等分し、月当たり4000円ー8800円になる。倍近くの値段変動があるのは、人数で頭割りのため、寮から卒業生が抜け、新1年生が入る前の4月ごろが一番高くなる。寮の食事は平日の夕食のみで、給食センターから届く。北瞑寮の場合は1食は370円で、フルでとったとしても月6000円-7000円となる。合計して一番高いときでも1万6000円くらいである。

  いまの学生に欠かせないインターネットの環境も工夫している。北溟寮にはHNS(ほくめいネットワークサービス)という会があり、独自のサーバーと光ファイバーによる快適なインターネット環境を構築している。しかも月額300円で使い放題だ。

  こんなにリーズナブルでも寮の入居率が70%台に留まっているのは、それなりの理由がありそうだ。3寮とも金沢大学が金沢城の中にあった時代に建設されたもので、移転した現在では大学から遠くなった。大学と比較的近い女子寮の白梅寮でもバス通学で30分ほどかかり、バス賃は片道350円である。ひと部屋は8畳ほどのスペースだが、2人で共用することになる。

  問題は3寮の共同浴場。利用できるのは一日おきだ。しかも、白梅寮では入浴可能時間は15時ー23時だが、22時になると湯沸しのためのボイラーが停止し、23時以降は水しか出ないこともあるとか。夏場は毎日入浴したい。しかし、銭湯は遠くて面倒、さらに300円-350円と高い。現代っ子は汗を嫌う。案外、入浴問題がいまいち学生寮に人気がでない原因かもしれない、と私は睨んでいる。

⇒8日(水)午前・金沢の天気 くもり

★財布が小銭で膨らむ理由

★財布が小銭で膨らむ理由

  ひとつの不満を除けば、後は合格点だと思う。北陸鉄道バス(金沢市)のICカード「アイカ」=写真=のことである。当初、戸惑いもあった。昨年の12月、北鉄片町サービスセンターのシャッターが上がる午前9時にさっそく買いに行った。アイカを首かけのヒモつきカードに入れて、バスに乗車。ちょっとドキドキしながら「乗車タッチ」。ところが、数回タッチしても、ピッという受け付け音が出ない。後続の女性から「場所が違いますよ」と指摘され、ハッと気がついた。タッチしていたのは残金表示の黒部分で、オレンジ色のタッチ部分ではなかったのだ。「われながらちょっと緊張したかな」と。これがアイカ初体験だった。
  
  アイカに魅力に感じているのは、整理券を取る必要がなく小銭の準備、両替が不要なこと。これまで、整理券の番号と運賃表示を照らし合わせて小銭を用意しなければならなかった。これが意外と面倒なのだ。でも、アイカでは自動計算されるので、1回の「降車タッチ」でOK。勤め先の金沢大学の生協では、予め現金をカードに入れる「積み増し」もできる。金沢大学は6系統160本(往復)のバスが往来する大きなバスターミナルでもあり、とても便利に感じている。晴れの日は、ウオークとバスを組み合わせれば、とても体にいい。なるべく歩いて、バスに乗る。私の場合、片道「バス25分、歩き15分」の健康法にもなっている。

  冒頭の「ひとつの不満」は、アイカを使い出してから小銭が財布に滞留し始めたことである。小銭を取りすにはある程度、時間的なゆとりがないとできない。これまで、バスの回数券の番号で料金を予測しながら、たとえばバス代が200円なら1円玉を20枚、5円玉を6枚、10円玉15枚という、せせこましいこともやってきた。だから、小銭がはけた。コンビニで使おうと思っても、後ろに人がついたりすると「大の大人が・・・」と言われそうで、なんとなく小銭は数えにくい。いまでは財布が小銭でパンパンに膨らんで、貯金箱になっている。

  「小銭が財布に溜まるのはアイカのせいではない」、北鉄バスの関係者はそう言うだろう。そこはサービスの原点に立ち返って、小銭でもOKのアイカの「積み増し機」を設置してほしい。これは小銭がいらないというアイカの便利さの裏返しのサービスでもある。個人の要望というより利用者のニーズとして理解していただきたい。

⇒7日(火)午前・金沢の天気 晴れ

☆数字で読み解く金沢大学②

☆数字で読み解く金沢大学②

  金沢大学の「情報の防衛」最前線と言えるのが総合メディア基盤センターだ。2001年にギガネットワークが構築され、およそ1万台のパソコンがネットワークに接続されている。ちなみにギガネットワークは岩波書店の「広辞苑」が1秒で送れる伝送帯域に相当する。情報ハイウエイの防人(さきもり)と言ってよい。この総合メディア基盤センターがこのほど金沢大学のサイバー白書とも言える「COM.CLUB」=写真=を発行した。これを呼んで自分の目を疑った、「いち日ではなくひと月ではないか」と。なにしろ金沢大学のネットワークへ入ろうとする不正アクセスは「1日平均200万件に及ぶ」という驚くべき統計が掲載されていたからだ。

  白書を詳しく読んでみよう。この平均値は2004年1月から12月までのまとめで、1日当たり200万から300万件のアクセスがある。そのアクセスのうち、正常なものはわずか10-20%なのだ。不正アクセスの代表格がポートスキャン。任意のコンピューターのサービスポートに総なめでアクセスを試み、もしファイアウォールで接続拒否をしていないものがあれば入り込み、そこを足がかりにコンピューターの乗っ取り、情報の漏洩などをやらかす。この場合、そのコンピューターの持ち主は被害者ではなく、加害者になる。

  白書をさらに読む。金沢大学では、学外から配信されてくる電子メールのすべてにウィルスチェックを行っている。駆除件数は1日当たり千通以上にも及ぶ。2004年4月には1日7千通に及んだことがある。宣伝目的のスパムメールは全メールのうちの3分の2以上にもなる。面白いのは、このスパムメールは4月と9月のある日にいきなりドカンと来る。おそらく新学期や夏休み明けを狙った学生向けの勧誘のメールだ。ウィスルメールも2月、4月、6月、8月にヤマが来る。メール系のウィルスは新種・亜種の発生頻度が高いので波状的に来ているのかもしれない。

 この4月、個人情報保護法が施行された。上記のようなサイバー上のセキュリティー攻防戦がある一方、大学ならではのたとえば成績判定保留の学生呼び出しの張り紙を今後どう扱うか、また、大学病院で患者を診察室に呼び込む際に行っている実名のアナウンスをどうするかといったことも議論の対象として浮かび上がってきた。「古くて新しい問題」ではある。

⇒6日(月)午前・金沢の天気 晴れ