★ウォームビスと「青いドレス」

★ウォームビスと「青いドレス」

   ウォームビズの実践を始めた。郊外の丘陵にある金沢大学ではこの春、築280年の古民家を再生し、ここで勤務する我々はなるべく省エネや化石燃料を使わない生活様式を工夫している。この夏は扇風機で十分しのぐことができた。土間が天然のクラーラーになった。そして北陸の冬。体感温度は金沢の街より1度か2度低い。そこでセーターや厚手のズボンを早々と着込んだ。しかし、冬本番はこれからである。折に触れて、ウォームビスの実践記はこのコラムで報告したい。

                 ◇

   11月2日付の「ショート・ショートな話」では、第三次小泉改造内閣の認証式で少子化の担当になった猪口邦子氏の「青いドレス」を話題にした。なぜ「青」だったのかという理由が、「小泉内閣メールマガジン」(10日配信)で分かった。以下、本人の弁である。「・・・長い不況のトンネルの先に見える青い空。小泉構造改革とは、苦労の多いプロセスを一歩一歩推し進めながら、経済のグローバル化という世界共通の試練のなかで、日本が再び青空に出会えるようにするためのものと改めて思い、その閣僚チームに入る喜びがこみ上げてきました。改造内閣発足では、新任の閣僚は皇居にて認証式に臨みますが、そのときの直感で、礼服の色は青空の色!と思ったのです。」

   回りくどい言い方ではある。アメリカやヨーロッパでは青色は公式な場では認められた色だ。亡きダイアナ妃は青のドレスが一番似合っていた。国連の軍縮大使などで活躍しレセプションを数多くこなした猪口氏にとっては青の礼服は常識なのである。おそらく青は好きな色でもあるのだろう。だから、「突然の指名」でとっておきの青のドレスをとっさに選んだ。しかし、認証式では周囲に「黒」が多く、ちょっと浮いて見えたというだけの話である。

   ただ、ドレスの広がりがちょっと目立つ仕立てだったので、とくに、こうして並んで立つとステージ上の「オペラ歌手」にも見えたということだ。マスメディアが騒ぐ話ではない。

 ⇒12日(土)朝・金沢の天気   くもり

☆NHKのディープインパクト

☆NHKのディープインパクト

   部下の不始末とは言え、次々と不祥事が起き、そのたびに頭を下げているNHKの橋本会長の姿を見ると気の毒になってきた。

      きのう6日午前11時からの、総合テレビの番組「永井多恵子のあなたとNHK」に橋本会長が出演し、大津放送局の記者(24)が放火未遂容疑で逮捕されたことに関し、深々と頭を下げて謝罪した。心の中では泣いていたと思う。「もう勘弁してよ」と。私だったら、番組の後、職員を一堂に集め「いい加減にせいよ。オレに何度謝らせるんだ。全員辞めちまえ」と啖呵(たんか)を切る。

  逮捕された記者の犯行の動機がよくつかめない。自ら放火し、それをスクープ映像として放送するのであれば、功名心を焦った「マッチポンプ屋」とでも言えるかもしれない。ところがこの24歳は通報したり、偶然発見したことを装って消火したりと、仕事にリンクしていないのである。5月15日(日)未明の火災現場近くで警察から任意で事情聴取を受けた際、本人は酒に酔っていた、と報じられている。また、別の紙面では、「休みがほとんどなく、泊まり勤務も大変だ」などと他社の記者に愚痴をこぼしていたらしい。つまり、プレッシャーに弱い24歳が酒の勢いで放火に及んだという割と単純な構図なのだろう。

   事情聴取を受けた翌日から傷病休暇をとって、入院した。うがった見方をすれば、警察にマークされたのに気づき、あわてて病院に逃げ込んだのだろう。ところが、尾行がついているとも知らずに、6月5日(日)未明、性懲りもなく放火を繰り返した。この時の火は尾行していた捜査員が消したのだから動かぬ証拠となった。それが現行犯逮捕ではなかったのは、入院という状態だったからだ。警察は、10月末に本人が退院したのを見届けて、主治医と相談しながら本人の責任能力が問えると判断し、逮捕に踏み切ったのだ。

   もう一つ、逮捕がこのタイミングだったのは第三次小泉改造内閣の組閣が終了するのを待っていたのかもしれない。ある意味で「大捕り物」である。何しろ各紙は1面あるいは社会面のトップで見出しを立てた。これが組閣といった大型のニュースとぶつかってしまうとその価値は相殺され、扱いは小さくなる。このため警察は逮捕のタイミングを十分に見計らっていたはずだ。

   それにしても橋本会長は責任を取って辞めざるをえなくなるのではないか。 ことし1月25日に海老沢氏の後を引き継いで会長に就任して以降、つまり在任中のこれだけの不祥事である。今回の逮捕をきっかけに滋賀県ならびに関西を中心に受信料不払いという「うねり」が年末にかけて起こるのは目に見えている。今の状態では大晦日の「紅白歌合戦」の番組ですら危うい。今回の事件の衝撃は計り知れない。

⇒7日(月)朝・金沢の天気  くもり 

★テレビの経営環境と近未来

★テレビの経営環境と近未来

  2日に大阪市で開かれた民間放送全国大会の会場に立ち寄る機会を1時間余り得た。民放大会は経営陣が集まる会合で、どちらかというと「大人(おとな)しい」というイメージだったが、2つの点でかなり熱いものを感じた。

   一つは、「ライブドアとフジテレビジョン」、そして現在進行形の「楽天とTBS」と続くIT企業とテレビ局(東京キー局)をめぐる株式の争奪戦、経営統合問題である。まさに経営の根幹にかかわる事態だ。民放大会では「テレビとインターネットの融合に向けて」と題するシンポジウムが開催され、ネット企業トップやテレビ局幹部らが議論を繰り広げたようだ。「ようだ」というのは私は直接この議論を聞いたわけではないので、翌日の新聞報道から内容を以下引用する。

   議論の中で、ヤフーの井上雅博社長は「技術的に通信基盤で番組を流せるようになった結果、情報の流通業でもあるネット企業がテレビ番組を使いたいと考えるのは自然な流れだ」と述べた。これに対し、フジの飯島一暢上席執行役員は「ITと放送は異なる文化。連携はあっても融合するのは難しい。ただ、ネットの色々なものを取り込もうと努力している」と企業文化の違いを中心に説明した。飯島氏が言いたかったのは、いきなり土足で上がりこんできて、「あなたが好きだ」とプロポーズされるようなもので、そのような発想は今のテレビ業界は到底受け入れられるものではない、と言っているようにも読める。

    私が直接見て感じた今大会の「熱さ」のもう一つが「ワンセグ」である。まもなく実用化される最新技術をいち早く体験できるあって随分とにぎわっていた。地上デジタル放送の電波を構成する13セグメント(区分)の1つを利用して、携帯端末向けに番組(簡易動画)を放送する仕組みで、地上デジタルとは違った内容で放送となり、「ワンセグ放送」と呼ばれる。いまでも一部の携帯電話でアナログテレビ放送を視聴できるものもある。が、テロップ(字幕)までは読めない。ところが、ワンセグ放送では携帯の画面サイズに最適化された放送が実現され、テロップも読める画質だ。テレビ局が「ケータイの世界」に入り込む突破口になると期待されているのだ。

   このようにテレビには「次ぎ」の可能性が広がっている。IT企業はそこを見込んで、業務提携や経営統合とプロポーズをかけている。テレビ業界の経営環境と近未来が凝縮された大会だったと言えるかもしれない。

⇒4日(金)午前・金沢の天気   はれ

☆ショート、ショートな話

☆ショート、ショートな話

  最近街角で拾った、ちょっとした話を続けて。題して、「ショート、ショートな話」ー。

   石川県能登半島にある旅館のご主人の話。この人は地元で「キノコ採りの名人」として知られる。そのご主人が言うには、秋になって山に入ると、同じ石川県でも遠く離れた加賀地方の人たちがジネンジョ(山芋)を掘りに来ている。先日、「なぜわざわざ奥能登に」と尋ねると、小松市から来たという人は「小松の山は最近クマやイノシシが出るんですわ。能登の山はクマが出ないので安心して…」と。

    第三次小泉改造内閣が発足した翌日のきのう、通勤バスの中で耳にはさんだ話。前の席で女子大生2人がおしゃべりしている。(A子)「猪口邦子って人、知ってた」、(B子)「ソレ何っ」、(A子)「新しい内閣で少子化の担当の大臣になった女の人」、(B子)「・・・?」、(A子)「その人、小泉さんと並んで記念写真を撮ってたんだけど、青いドレス来て、なんかオペラ歌手みたいで、浮いとったよ」、(B子)「オペラ歌手?」、(A子)「・・・!」 

    毎日新聞北陸版で金沢医療センター(旧国立金沢病院)の吉村光弘医師(内科)が書いている医療コラムを楽しみにしている。10月18日付の出だしで、「中世のヨーロッパでは散髪屋さんが使い慣れた刃物で皮膚のできものを切開して膿(うみ)を出していた。理髪店のくるくると回転する筒状の看板はそのなごりで、赤が動脈、青が静脈、白はリンパ(あるいは包帯)を表している。」と。納得というより、ちょっとリアリティーのある話だ。

    季節はちょっとずれるが、ヒガンバナ(彼岸花)は割と好きな花だ。植物に詳しい友人はこんな話をしてくれた。ヒガンバナは茎にアルカロイド(リコリン)という毒性がある。昔の人は死体を焼かずに埋葬した。そして、犬が近づいて掘り返さないようにと毒性のあるヒガンバナを周囲に植えたのだという。犬よけの花、知らなかった、こんな話…。

 ⇒2日(水)朝・金沢の天気   はれ   

★「ネット選挙」の読み方

★「ネット選挙」の読み方

  この政治家のブログは実に分かりやすい。世耕弘成・参議員のことである。この人との面識はない。ただ、ブログの書き方がいかにも誠実で、信頼がおける。時々ブログ「世耕日記」をのぞくと、珍しい鉱物の原石にでもめぐりあったような発見がある。

  以下、世耕氏のブログの10月26日付の抜粋である。「…選挙制度調査会へ移動。鳩山邦夫会長からインターネットを使った選挙運動に関するワーキングチームの設立について諮られ、了承。私が座長を務めることになった。いよいよ自民党として本格的な選挙運動でのネット解禁検討に入ることになる。・・・」

   9月14日に最高裁が判断した「在外選挙権訴訟」の違憲判決を受けて、2007年の参院選では、インターネットの選挙利用が解禁になる見通し。自民党はすでに最高裁判決前の9月9日の党選挙制度調査会で「選挙におけるインタ-ネット利用に関する小委員会」(仮称)の設置を決めている。また、民主党も以前からインターネットの選挙利用解禁に積極的で、早ければ来年の通常国会にも公選法改正案が議員立法で提出される。07年夏の参院選は「ネット選挙」あるいは「ブログ選挙」となることは想像に難くない。

    前述の世耕氏のブログは、「ネット選挙」のかなり具体的なところまで話が進んでいることを窺わせる。そして、自民党の選挙制度調査会ですでにワーキングチームがつくられ、その座長に世耕氏が就任したこと自体が興味深い。彼は先の総選挙では自民党の広報本部長代理として「コミュニケーション戦略チーム」を率いた、メディア対策の中心人物だ。その彼が注目されたのは、選挙公示前の8月25日にメールマガジンの発行者やブログのユーザー(ブロガー)33人と党幹部との懇親会を開いたことだった。新聞やテレビの既存メディアと同等に、ブロガーにも政党幹部との懇談の場を設けた。これは画期的だった。彼の視野にはインターネットはすでにメディアであるという位置づけができているのだ。

    世耕氏はその柔軟な発想で07年参院選の「切り込み隊長」になるのは間違いない。その切り込みの「武器」がインターネットであり、ブログなのだ。きのう第三次小泉改造内閣が発足した。この顔ぶれを見ると、大方の予想では、「次ぎ」は安倍晋三だ。「党の新しい顔」と「新しい選挙対策の顔」がそれぞれ見えてきた。次回の国政選挙をこのような筋目で読んでみるもの面白い。

 ⇒1日(火)朝・金沢の天気   はれ

☆「セルフ」で考えたこと

☆「セルフ」で考えたこと

  数量で表記するのと、手から伝わる実感の違いは大きい。先日、金沢市内でセルフのガソリンスタンドを使った。これまで給油はスタンド任せだったが、これだけガソリンが高騰すると、疎い私でも経済観念が働く。スタンド店員に教えてもらい、ほぼキャッシュディスペンサー(現金自動支払機)の感覚でピッピッと手続き。あとは、静電気除去装置に触れて、給油ガンを差し込みレバーを握るだけ。

   51㍑のガソリンが入ったが、その1分か2分の給油時間がとても長く感じられ、複雑な気持ちになった。ドクドクとガソリンが注ぎ込まれる音と振動がする。地球の資源である化石燃料を消費しているとの実感が手から伝わってくるのである。これまではスタンド任せだったので、金額しか眼中になかった。

   別の精算機で領収書のバーコードをかざすとつり銭が出てくる。計算をしよう。51㍑で税込み6218円、つまり1㍑当たり122円である。セルフを利用する前は、1㍑何円は高いか安いかという発想になったに違いない。しかし、今回はこれだけの化石燃料を使って乗用車を動かす価値はあるのだろうか、などと考えてしまった。ある意味でセルフスタンドはリアル感を伴った環境教育の場になるかもしれない。

  きょうで10月も終わり。あすから兼六園で冬支度の雪つりが始まる。季節は移ろう。

 ⇒31日(月)朝・金沢の天気   はれ   

★「近い存在」「遠い存在」

★「近い存在」「遠い存在」

   「トヨタは年間の宣伝費のうち800億円をテレビで使っている。私だったらこの金で自前のテレビ局をつくる…」。そう言ったのは、10月14日に金沢市で講演したIT業界の論客、孫泰蔵氏(「アジアングルーヴ」代表取締役)だ。民放キー局系のBS放送の資本金が300億円ほどなので、年間800億円もあれば、相当なパワーをもったテレビメディアの構築は確かに可能である。

   TBSに対して共同持ち株会社による経営統合を提案した楽天の三木谷浩史会長兼社長はきのう(26日)、TBS株を持ち株比率で19.09%まで買い増したと発表した。楽天がこれまでTBS株の取得につぎ込んだ合計はざっと1110億円にのぼる。孫氏流に言えば、「この1110億円の金で、自前のテレビメディアをつくればいいじゃないか」となる。

   インターネット企業から見れば、テレビ局は「近い存在」と思うかもしれないが、テレビ局から見れば、インターネット企業は「遠い存在」である。楽天はインターネットという通信を利用して「仕組み」をつくり、その便利さを競って利用者を集めて使用料を取る。しかし、テレビ局は番組という商品をつくってスポンサーに売る。評判(視聴率)が悪ければ、次は買ってもらえない。テレビ局はメーカーなのである。これに対し、ネット企業はどちらかと言えばサービス産業に近い。ここに感覚のズレがある。「株を買占めたから会社を統合しよう」と迫る楽天の発想は株式の上で通用しても、実際の経営で果たして通用するのか。

   事例を上げれば分かる。アメリカ・オンライン(AOL)と、CNNなどを傘下に持つ「タイムワーナー」が2000年に合併した。当時勢いのあったAOLは株価も高く、実質的にタイムワーナーを38兆円で買収したと話題になった。あれから5年、どうなったか。統合すると、タイムワーナー側の経営はAOLに比べ強固で安定していた。それに比べ、AOL側はネット不況による業績不振や粉飾決算疑惑などコンプライアンスの問題で、AOL側の経営陣が次々と駆逐され、結局、経営の主導権を握ったのはタイムワーナー側だった。企業名も「AOLタイムワーナー」から「タイムワーナー」に戻り、AOLはタイムワーナーの単なるネット部門に成り下がった。いまAOLを切り離そうと、株式の売却交渉が進んでいる。

   では、楽天には三木谷氏以外どれだけの経営陣がそろっているのか。仮に統合したとする。TBSはすでにデジタル化投資を終えた超優良企業だ。弱みはない。しかも、「モノづくり」や大手スポンサーとの交渉で鍛え上げてきたTBS側の実務スタッフと、楽天側が同じテーブルで論議すれば一目瞭然だろう。楽天側は論破され、太刀打ちできなくなる。楽天がAOLの轍(てつ)を踏むとまで言わないが、プロセスが似ている。

   再度、孫氏の言葉を引用する。「それだけお金があれば、自前でテレビメディアをつくればいいじゃないか」。孫氏が講演で語った真意は、確立されたメディア媒体を買収するより、ニューメディアをつくった方が企業価値は高くなる、と説いたのである。孫氏の言葉は正論に聞こえる。

⇒27日(木)朝・金沢の天気  はれ

☆人生7掛け、地球8分の1

☆人生7掛け、地球8分の1

   「人生7掛け、地球8分の1ですよ」。先日、金沢市内のある上場企業の会長と懇談のチャンスに恵まれた。会長との会話で印象に残ったのが、この言葉だった。医療や情報社会の進化で今の50歳は昔で言えば35歳、そして航空網の発達で地球は8分の1ほどのスケールになった。いわば人生と移動空間のダウンサイジングとでも…。会長の言葉はそれ以降ちゃっかりと使わさせてもらっている。

   この8分の1になった地球の限りある資源の争奪戦のあおりで、石油は高騰し、鉄骨など資材などもジワリと相場が上がっている。先日、オヤっと思わせる新聞記事があった。中国・上海で電線やマンホールのふたなど金属の盗難が頻発していて、公共のインフラに大きな障害を与えているという内容だ。もっと詳しく読むと、盗難被害は変圧器や街路灯、送電用の鉄塔、公衆電話ボックス、ガードレール、道路標識、電話ケーブルなど。電話ケーブルが100㍍盗まれて1000戸の電話が不通になり、あるマンションでは103箇所の消火栓の金属部分がはがされた。上海市ではこうした被害がことし666件も発生している、と。おそらく金属盗難は上海市に限ったことではなく、中国各地で発生している社会現象に違いない。

    それだけ中国では建設ラッシュで金属需給がひっ迫していて、逆に言えば高く売れるのである。意地悪な言い方をすれば、「タコが自分の足を食べている」ような光景を思い出す。日本でも数年前の「どん底」経済のとき、農家の野菜や果物が大量盗難に遭うといったニュースが載ったから、笑えない。

    最近、地球検索ブラウザ「グーグル・アース」が面白い。アメリカのグーグル社が無料で提供している衛星写真を合成した地理検索システム。画面表示された地球をゆっくり回すこともできる。これをプロジェクターで大写しにすると、まるで宇宙から地球を眺めているような気分になり、癒される。そして、地球上で繰り広げられる人間の理不尽な行いを思うと、情けなくなり涙が出てくることもある。

⇒26日(水)朝・金沢の天気   くもり   

★デジタルの進歩と判決

★デジタルの進歩と判決

  きょう(24日)、大阪地方裁判所で著作権をめぐる、ある意味で重大な判決があった。マスコミ各社はもっと大きく取り上げてもよいと思ったのだが、以外に扱いは小さい。マンションに住民共用のサーバーを設置し、住民が予約したテレビ番組を一括録画して好きな時間に視聴できるシステムは著作権を侵害するとして、大阪の民放5社が東京のシステム開発会社に販売差し止めなどを求め、訴訟を起こしていた。判決は、民放側の訴えを認め、この会社に5社の放送エリア(近畿2府4県)で販売しないよう命じた。

  このシステムは裁判沙汰になるほど画期的だ。開発した会社は「クロムサイズ」。このシステムの名称は「選撮見録(よりどりみどり)」、名前からして振るっている。システムはこうだ。マンション内の共用サーバーと各世帯がLAN回線でつながり、マンションの住人が事前に録画予約をした番組を好きな時間に配信を受けて視聴する。1台の共用サーバーで最大1000時間の録画が可能。住人は予約した番組しか視聴できないが、「全局予約」でセットすればすべての番組を見ることができる。まさに選撮見録なのだ。この装置は大阪市内のマンションに設置される予定だった。

  大阪の民放5社が「待った」をかけた理由は、著作権法で例外的に録画(複製)が認められている「私的使用目的」を逸脱しているとの言い分だ。言い方を変えれば、「録画代行サービスと変わらない」というわけだ。これに対し、クロムサイズ側は「あくまでも予約した番組を見るので私的複製と変わらない」と反論した。

  で、判決は冒頭の通り。ク社側の違法性を認めた理由は明快だった。「システムの設置者と使用者が異なり、私的使用に当たらない」と。つまり、装置を設置する管理組合が録画の主体であって、個人ではない、という判断だ。この判決は視聴者にはなかなか分かり難いかもしれない。なぜなら、管理組合は住人で構成する閉じた組織で、管理組合と住人を全く別の主体とみなすことに違和感を感じる人も多いだろう。「装置は共同管理というだけのこと、実態は私的使用目的ではないのか」と。

   かつて著作権法に私的使用目的が盛り込まれて、ビデオの録画装置が一気に家電の成長株となった。しかし、デジタル技術は日々進歩している。大容量の1台のサーバーで1000時間録画の時代だ。VHSでちまちまと録画をする時代はもう終わる。法と現実が乖離(かいり)しないためにも、著作権の新しい解釈や理念が必要なのかもしれない。

⇒24日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆アケビの開いた口

☆アケビの開いた口

   金沢大学の角間丘陵の谷あいに角間川が流れていて、川に沿って幅2㍍ほどの遊歩道がある。散歩がてらブラブラ歩いていると、アケビが口を開けているのを見つけた。真ん中の白いタネの部分を取り出し、しばらく口に含んで飲み込む。トロリとして甘い。幼いころ、病気で臥(ふ)せっていると、母親が片栗粉にお湯と砂糖を入れて溶いたものを飲ませてくれた。その時の食感を思い出した。

                     ◇

   友人たちとの忌憚(きたん)のない議論の中で最近「参院はもういらん」というテーマが出てくるようになった。9月11日の総選挙で連立与党が3分2以上を占め、たとえ参院で与党案が否決されても、その数で衆院単独でも法案を通すことができるからだ。参院無用論はこれだけではない。良識の府であるべき参院が、「特定の業界・団体のダミーと化しているのでは…」と皆が疑問を持ち始めているからだ。

    けさの新聞各紙でそのことを考えさせる記事が載った。特定郵便局長のOBらでつくる政治団体「大樹」が20日、都道府県支部長会議を開き、2007年の参院選では旧郵政省出身者などの独自候補を擁立することを確認した、という。郵政民営化法案が衆参で可決したにもかかわらず、法案に反対した現職議員をあくまで支持し、来る参院選では独自候補を擁立すると気勢を上げた。

    実際、大樹会の集票力は群を抜く。今回の衆院選で、民営化反対の旗頭・綿貫民輔氏(富山3区)は自民党候補に2万票の差をつけ再選を果たした。その原動力となったのは「大樹会」富山県本部だ。会員2600人。特定郵便局は、明治政府が郵便制度を創設した際、地域の名士や資産家に業務委託したのが始まりで、県内の郵便局297局のうち特定局は192局と6割を占める。選挙になると、いまでも地域の名士である会員が地縁血縁の幅広い裾野をフルに活用し票を集める。

   しかし、富山の友人はこう嘆く。「綿貫さんが勝ったのはこれまでの功績があったからこそ。ところが、富山が郵政民営反対の牙城で、時代の流れに逆行しているとのイメージで他から見られているかと思うと正直つらい」と。

    業界団体が全面的に出て、気勢を上げるのは自由だ。確かにアメリカでも、ロビーストと呼ばれる団体や業界の利益代表が上院や下院のロビーに陣取って、政治家に盛んに圧力をかけている。業界のダミーのような議員も大勢いる。日本ではどうだろう。先の選挙では、地縁血縁もないいわゆる「落下傘候補」が健闘し、地場の候補者に勝った選挙区(静岡7区、東京10区など)もあった。政党の政策やポリシーが重視され、利益誘導型の政治家に有権者は期待しなくってきている。来る参院選では、インターネットの活用が「解禁」され、その傾向はさらに強まるだろう。そしてこの議論の行き着く先が参院無用論なのである。「機能しなくなった政治制度をリストラせよ。衆院だけでよい」と。

                                   ◇

        金沢大角間キャンパスの遊歩道でアケビを手にして、ある俳句を思い出した。高名な俳人だったか、学校の恩師だったか、作者は思い出せない。脳裏に浮かんだままを記す。

口を開け 手招き揺れる アケビかな
                       ~詠み人知らず~

⇒21日(金)午後・金沢の天気     くもり