★木戸を開ければ、そこは南極

★木戸を開ければ、そこは南極

    きょう(9日)は雪降ろしのために屋根に上がった。天気予報ではあすは気温が10度まで上がり、午後からまとまった雨が降るという。雪国で生活する者の直感として不安感がよぎる。屋根に積もった大量の雪にさらに雨が降れば、どれだけの重さが家屋にのしかかってくることか、と。屋根の瓦には雪止めがしてあって、自然には落ちてこない。最近、隣人と交わす言葉も「(大雪に)家は耐えるかなと心配で」と。スコップで除雪し雪の重さの感覚を共有する者同士の会話ではある。

    1時間ほどだったが、屋根雪降ろしをして、今度は1階の土間に行く。土間の木戸がなかなか開かない。落とした雪が軒下に積み上がり、木戸を圧迫していているのだ。何とか木戸を開けると、背丈をはるか超える雪壁が迫っていた=写真・上=。2006年6月に、南極の昭和基地と金沢大学をテレビ電話で結んで、小中学生向けの「南極教室」を開催したことがある。そのときに、観測隊員が基地内の戸を開けると、雪が戸口に迫っていて、「一晩でこんなに雪が積もりました」と説明してくれたことが脳裏にあった。木戸を開けて、「南極や」と思わず声が出た。

    このままにしておくと、落雪の圧迫で木戸が壊れるかもしれない。そこで木戸と雪壁の間隔を30㌢ほど空ける除雪作業を行う。スコップで眼前の雪壁をブロック状に掘り出すのだ。木戸6枚分の幅を除雪するのにこれも1時間ほどかかった=写真・中=。除雪は楽しみや義務ではない。迫りくるダメージという、危機感との闘いなのだと改めて意識した。

    屋根に上がり、土間に降りての2時間の作業でひと休みした。昨年11月にベトナムで買い求めた「コピ・ルアク」のブレンドコーヒーを楽しんだ。コピ・ルアクはジャコウネコにコーヒーの実を食べさせ、フンからとった種子(豆)を乾燥させたものといわれる。湯気と同時にすえた動物の匂いが沸き上がる。これまで食後で楽しんでいたが、これが労働の後の休息で共感できる絶妙な風味であることに初めて気がついた。癒されるのだ。

    コーヒーを味わいながら、午後のNHKニュースを見た。政府関係省庁を集めた、記録的な大雪に関する警戒会議の模様が報じられていた。11日以降は冬型の気圧配置が強まって日本海側で再び大雪となる恐れがあり、小此木八郎防災担当大臣が「不要不急の外出を控え、やむをえず車で外出する場合にはタイヤチェーンを早めに装着するなど、改めて大雪への備えをお願いしたい」と呼びかけていた。タイヤチェーン以前に各家庭の車が雪に埋まって動かせない現実=写真・下=を直視してほしいものだと思った。この後、自宅ガレージ前の道路の除雪に1時間ほど費やした。

⇒9日(金)夜・金沢の天気   はれのちくもり

☆ホワイトアウトの屋根雪降ろし

☆ホワイトアウトの屋根雪降ろし

    この強烈な寒波で交通インフラなどガタガタになった。これに連鎖してきょう7日は石川県内の公立の小中高校は232校が休校となった。3校に2校が休校となった計算だ。金沢大学も昨日は途中休講、きょうは全面休講だ。いつもなら児童・生徒の声でにぎわう自宅近くの通学路も日曜日のように静かだった。ただ、8時ごろから通勤の大人たちが通りに目立った。マイカーやバスではなく徒歩で急ぐ様子だった。

    山間地よりむしろ平地に大雪が降る降雪パターンのことを「里雪型」というらしい。初めて聞く言葉だが、テレビなどで気象予報士が使っていた。こう雪が多いと、除雪にあたるブルドーザーなど重機のオペレーターには頭が下がる。深夜、早朝関係なく出動して交通インフラの復旧に奔走しているのだ。雪国の持続可能性とは閉ざされた生活空間でいかにじっと耐えて暮らすかではなく、自然の猛威にいかに柔軟に対応して生活インフラを速やかに復旧させるかだろう。

    我が家の屋根に積もった雪は70㌢ほどになっている。雪の重みでミシリ、ミシリとかすかな音が聞こえる。けさ7時半ごろ、晴れ間がのぞいたのでスコップを持って屋根に上がって雪下ろしをした。大屋根ではなく、2階の屋根だ。2006年1月にも屋根雪降ろしをしているので実に12年ぶりだ。屋根で怖いのは予期せぬ突風。平地ではそれほどではない風も、屋根に上がるとまともに受ける。2度ほどぐらついた。

    そして、屋根から下を眺めると、視界全体が真っ白になって空間と地面との見分けがつかない=写真=。まるでホワイトアウトの世界なのだ。屋根雪降ろしは1時間ほどで切り上げた。深入りすると屋根雪ごと下に滑り落ちることもあるからだ。

    それにしても、この大雪で強さを発揮しているのが、北陸新幹線だ。きょう始発から平常運転しているのだ。JR北陸線は終日での運転見合わせ。小松空港を発着する国内線のすべての便で欠航。国道8号線の車の立往生は福井県側では420台、石川県で1.5㌔の区間で100台が動けなくなっているとテレビニュースで報じられている。北陸新幹線は別格だ。

     もう一つ強さを発揮しているのが新聞配達だ。朝刊2紙を購読しているが6時までには配達されている。雨の日、雪の日、風の日、すべての自然の猛威に柔軟に対応しながら届けてくれる。重機のオペレーター同様、社会が持続可能であることを下支えしているのはこうしたプロフェッショナルな人たちなのだと改めて感じ入る。

⇒7日(水)午後・金沢の天気   ゆき

★強烈寒波JPCZ

★強烈寒波JPCZ

   きのうからの寒波は強烈だ。金沢でもきょう6日午後6時で70㌢を超える積雪となっている。金沢大学ではこの大雪のため、きょう2限目以降とあすの全ての講義がすべて休講となった。通学路となってる県道の除雪などが間に合わずバスなどが時間通りに動いていないからだ。公的な施設でも閉鎖されるところが多く、個人的にあす予定していた打ち合わせを後日に延期した。また、幹線道路でも凍結でアイスバーン状態になり、車同士の接触事故などが多発している。コンビニに入ると、「大雪のため商品の入荷が遅れ申し訳ありません」と貼り紙があり、パンや弁当、惣菜の商品棚がガランとしている。庭木がすっぽり雪に覆われ、雪吊りが施されていない樹木は枝折れになるだろう=写真=。

    気象庁のHPなどによると、西日本から北陸にかけての上空1500㍍付近に、氷点下12度以下という数年に1度の非常に強い寒気が流れ込んでいる影響で、発達した雪雲が流れ込んでいるようだ。シベリア東部に蓄積していた寒気が北西の強い季節風の影響で北陸など西日本の日本海側にかかり、居座り続けている。さらに朝鮮半島の北側で分かれた風が日本海でぶつかり、雪雲を流れ込ませる風が集まっていると。初めて目にした言葉だが、これを「JPCZ(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)」=「日本海寒帯気団収束帯」と呼ぶそうだ。

    金沢市内の積雪70㌢は平成に入ってからでは平成13年の88㌢に次いで2番目に多い。今晩もしんしんと雪は降り続いていて、あすは平成13年の雪を超えそうだ。福井市では午後6時現在で129㌢となり、37年前の「五六豪雪」(昭和56年)以来の記録的な大雪になっていると、テレビの全国ニュースになっていた。大雪による車の立往生などで、福井県内の国道8号線は坂井市とあわら市の間およそ10㌔の区間で、乗用車やトラック1500台余りが動けない状態になっている。

    冒頭で述べたコンビニでの話。店員に「入荷のメドは立っているの」と尋ねると、「まったく立っていません」と。続けて「金沢市内のコンビニはどこもウチと同じですよ。それより何より、お客さんがとにかく大量買いされて行かれます」。確かに周囲の買い物客の中にはかご一杯に商品を入れている。大雪という危機感を察知すると食料をストックすることに人間の本能として走るのだろう。ガソリンスタンドでも車が列をついているのをみかけた。このJPCZが長引くとガソリンもストップするかもしれないと考えるのだろう。強烈寒波は人間の生存本能を揺さぶっている。

⇒6日(火)夜・金沢の天気    ゆき

☆身に降りかかる「断水問題」

☆身に降りかかる「断水問題」

           先月30日付のブログ「☆過疎化と断水問題」で、冬場の凍結で能登地方は断水に見舞われた世帯が1万もあり、空き家で水道管が破裂しても対策が取りようがなく、空き家が多い地域では断水が深刻でこの問題はまさに過疎化問題だ、と述べた。きょう2日、まさに断水問題が我が身に降りかかってきた。

    メールで連絡があった。「お世話になっております。かあさんの学校食堂の泊さんに確認をとったところ、2月6日火曜日のお弁当の準備が出来ないと連絡がありました。(穴水町)甲地区は水道管凍結・漏水による断水の復旧が未だに遅れており、完全普及には2~3日かかる見通しです。また復旧してもすぐに飲料水(食用)に使えないため、今回の件はキャンセルをお願いしたいとのことでした。事情をご賢察のうえ、ご了承いただきますようお願いいたします。」

    今月5日と6日に世界農業遺産「能登の里山里海」をテーマに研究者交流のスタデイツアーを実施することになっている。6日の意見交換会の会場となっている穴水町の施設のスタッフに昼食の弁当の手配を依頼した。スタッフが弁当の配達をお願いした主婦グループ「かあさんの学校食堂」は甲(かぶと)地区の廃校になった小学校校舎を活動拠点にしているが、現在断水が続いていて、一両日中に復旧したとしても、すぐには飲料水としては使えない可能性があり、グループから注文をキャンセルさせてほしいと連絡があったと、メール連絡をくれた。

    メールを受け取り即座に電話をかけた。スタッフは自分たちの生活水(食事、飲料など)を確保することが優先されていて、注文を受ける余裕がない状態と。「ほかに弁当を作ってくれる仕出し屋などありませんか」と尋ねたが、状況はどこも似たり寄ったりとのこと。断水問題の深刻さを改めて思い知らされた。

    さらにツアーを開催する5日と6日は、ウエザーニューズ社HPによると、「上空に非常に強い寒気が流れ込み、日本海側では大雪に警戒が必要。4日(日)~6日(火)にかけてが寒気のピーク」と呼び掛けている。断水が長引く可能性もある。だからと言ってツアーを中止するわけにもいかない。関係者と相談し、「6日はコンビニに立ち寄って、参加者(20人)がそれぞれで昼食を買い求めましょう」となった。少々安易な結論なのだが、コストのことも考えてそのような結論に。何とも恨めしい断水問題ではある。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   はれ

★荒ぶる神の見えざる手

★荒ぶる神の見えざる手

  経済学でよく知られたキーワードに「神の見えざる手」がある。市場経済で個々人の利益追求であっても、社会全体の利益となる。アダム・スミスが『国富論』で提唱 したの考察だ。市場原理に重きを置いたこの言葉は、政府が政策的な介入しなくても需要と供給のバランスは自然に調整されるという意味合いでも使われる。

    先日、金沢大学の元留学生と立ち話をした。実家が上海にあり、正月休みでしばらく中国に帰っていた。「中国はネット通販が盛んだね。NHKのニュース特集でも取り上げられていたよ」と水を向けると。彼女は「そう、父も母も必要なとき以外は外出せずに、ネットで野菜や肉など食材を取り寄せている」と。「食品スーパーもネットで宅配、中国はすごいね」と同調すると、彼女は首を横に振った。「ネット通販は利便性ではないんです。PM2.5がすごくて多くの市民が外出を控えている。健康上の問題なんです」「宅配の車がまたオンボロで排気ガスを出しながら走っている。悪循環ですよ」と。

   さらに「でも、それはまもなく解消するんではないですか。だって、中国はEV(電気自動車)の導入では世界をリードしているでしょう。中国の政府はEVなどを自動車メーカーに対して生産や販売台数の10%を義務づけると日本でもニュースになっている。明るい未来じゃないですか」と話すと、彼女は「煤煙を出しているのは自動車だけじゃないんですよ。工場や各家庭だってそう」「それより、EVが電池切れで止まって、交通渋滞を引き起こせば、さらに煤煙が出るじゃないかと思う。その方が心配」と。ちょっと彼女は考え過ぎかもしれないと話題を変えた。

   電子マネーの話にした。「中国では買い物は8割くらいはスマホ払いだってね。これも日本のニュース番組でやっていたよ。日本は現金主義だし、中国の足元にも及ばないよ」と切り出した。すると、「確かにね。一元コインや五元札を数えるのは面倒なので、スマホ支払いが便利。最近は屋台の焼き芋屋さんでもQRコードですよ」「個人的には、中国のお札は汚いし、ニセ札も多いのでスマホで払えるようになってよかったと思う。でも、私の祖母はスマホを持たないので困っている」と。確かに、スマホしか受け付けない時代になると、大量の支払い難民も出てくるだろう。

     需要と供給の絶妙なバランスが「神の見えざる手」とすれば、アダム・スミスのこの言葉は中国経済においては不都合な現象とイノベーション(技術革新)の絶妙なコラボレーション、これは「荒ぶる神の見えざる手」ではないか。少々乱暴な表現か。

⇒31日(水)午前・金沢の天気    ゆき

    

☆過疎化と断水問題

☆過疎化と断水問題

    きのう(29日)能登地方のある首長と立ち話をした。「このところの寒さで断水が起きて、給水車で対応に追われているんです」と。寒さで水道管が破裂するということはままあるので、「それは大変ですね」と言葉を添えた。ところが、きょうの新聞各紙では断水は半端ではない。能登の9市町で1万世帯余りに及ぶという。そして、過疎化という根深い問題が絡まっている。

    報道によると、石川県危機対策課がまとめた断水被害は29日午後7時現在、能登の輪島市と志賀町で3千世帯、能登町で2千世帯、中能登町で1500世帯、穴水町で300世帯、羽咋市で120世帯、宝達志水町で100世帯、珠洲市で90世帯で断水状態となった。断水の原因は水道管の凍結、破裂による。冒頭の首長が言うように、これは地域の危機管理の一環であり、各市町は給水車を出すなど対応に追われている。

    断水はこのところの氷点下の冷え込みが特に能登で厳しかったことに加え、指摘されているのは空き家での断水問題だ。能登地区の場合、集落で共同運営している配水池から水道水をひく場合が多い。空き家で水道管が破裂しても気付かれないため、漏水が続き、配水池の供給が追いつかなくなったことで被害が拡大するのだ。水道業者がメンテに回っても、水道管が雪に埋もれていると漏水している箇所が確認できないという問題もあり復旧は簡単ではない。最近の塩化ビニール管は氷の膨張に強いものの、旧型だと破損しやすいことも指摘されている。

    断水被害が起きないようにするために、行政は住民に対して水道の蛇口から少し水を出し放っぱなしにして水道管の凍結や破裂を防ぐよう有線放送などで呼び掛けているが、空き家ではこうした対策が取られないという現状もあり、断水問題はまさに過疎化問題だ。

    生活インフラでもっとも重要な水道水が出ないとなると、学校や保育所も休まざるを得ない。輪島市では29日、3つの小学校と2つの保育所が休校、休所となったと報じられている。他の自治体でも授業打ち切りなどが相次いだ。また、能登半島だけではなく、同じ日本海の新潟県佐渡島でも全2万4千世帯のうち4割に当たる1万世帯で断水が起き、県は陸上自衛隊に災害出動を求め、陸自が給水車をフェリーで運んでいると全国ニュースになっていた。佐渡では小中学校36校のうち26校が休校となった。断水問題は半島の過疎地や離島を直撃している。(※写真は輪島市門前町の海岸集落、27日撮影)

⇒30日(火)午前・金沢の天気    ゆき

    

★キレるシニア、なぜ

★キレるシニア、なぜ

   先日、金沢のドラッグストアに入ると、客が店員にクレームをつけていた。「ここで買ったシャンプーをまた買いに来たのになぜないのか」と。すると店員は「あいにく在庫が切れておりまして」と謝っている。客は「これで2回目や。在庫管理がなっとらん」と大声を上げた。あまりの剣幕だったのでつい後ろを振り向いた。

    昔から「ジシン、カミナリ、カジ、オヤジ」との言葉があるように、親父(おやじ)の怒声は天災のように降りかかる。ドラッグストアで声を張り上げていた客も推定だが70歳半ばだろうか。女性店員は30代に見えた。店員の態度は丁重な感じで、親父が一方的に言いがかりをつけている感じに見えた。在庫管理にクレームをつけるのだったら直接店長に呼べばよいのにと周囲の客は誰もが思っただろう。

   このドラックストアだけではない。数日前にも携帯電話のショップでも親父の怒声を聞いた。「いつまで待たせるんや」と。5人が窓口で並んで待っていたが店員が誰も応対に来ない。店員は忙しそうにしているが、せめて「もう少々お待ちください」との対応があってもいいのに自身もイライラした。すると70代とおぼしき親父が先の怒声を上げた。店にいた客も店員も一斉にこちらを向いた。店長の年配の女性が出てきてその場は収まったが、対応に2時間待ちと言われ、親父はプンプンしながら出て行った。私は翌日に時間予約をして出た。

   このごろキレやすい親父が増えているような気がする。他人の事を言う筋合いではないのだが、親父にとっては現代はストレスがたまる環境なのかもしれない。携帯電話のショップはメールで時間予約ができるようになっている。しかし、親父は携帯に不都合があって、あるいは操作方法を教えてもらおうと店に来たのだろう。それだけでもストレスを感じているのに、待たされ、しかも店の応対も悪いとなるとストレスが怒りに点火する。ドラッグストアにしても、買い求めたい商品がない、しかも同じ言い訳を2度聞かされキレたのだろう。店側の対応も柔軟ではない。

   年配の女性からこんなメールをもらった。「世の中が急速に進み、私はこの情報化の時代に後れを取ってしまい、PCも上手に操作できません。お返事の遅くなった言い訳ですが、歳とともにボォーとしていることが多く、時間ばかりが経っていきます。」と。デジタル化への対応にうまく向き合えないシニア世代にとってこれもストレスだ。

きょう検診を受けに病院に行った。待合室で親父が独り言でブツブツと。「国会のヤジになんで総理が謝らんといかんのや」と。アメリカ軍普天間飛行場のヘリコプター連続事故で、自民党の内閣府副大臣が「それで何人死んだんだ」と野党側にヤジを飛ばしたことが逆に「暴言」と追及され、副大臣を辞したニュース。安倍総理が任命責任を認めたことが親父にとって不満らしい。

   加齢とともにストレスが負債のように積み重なっていく。若い世代のときのように柔軟に対応できなくなるのだろう。まるで空気中の静電気が溜まって落雷となるように。明日のわが身かもしれない。

⇒29日(月)夜・金沢の天気   くもりときどき雪

   

☆能登の発酵食文化、現場を訪ねる

☆能登の発酵食文化、現場を訪ねる

    冬の能登は食材が豊富だ。寒ブリやズワイガニ、タラ、カキといった海の幸のほかに、かぶら寿司(ブリと青カブラのこうじ漬け)や大根寿司、日本酒も今が一番忙しい時節だ。能登の発酵食文化を訪ねるスタディツアー(発醸文化メガロポリス推進活動プロジェクト2017年度研究旅行)が20、21日に両日開催され、案内をかねて参加した。    このプロジェクトは、日本の食を支えている発酵・醸造の技術や文化を世界に発信し広めようと、醤油メーカー大手「キッコーマン」(千葉県野田市)のOBらが発起人となって立ち上げた。ツアーには日本糀文化協会のメンバーも参加し、総勢15人。羽田空港から能登空港に降りた一行はバスで能登町、珠洲市、輪島市、七尾市、中能登町を1泊2日で巡った。

最初の発酵食は「なれずし」。魚を塩と米飯で乳酸発酵させたなれずしは琵琶湖産のニゴロブナを使った「ふなずし」が有名だが、能登でも伝統食だ。昼食で能登町にある「かじ旅館」を訪ねると、アジ、ブリ、アユのなれずしを出してくれた。この旅館では、注文を受けた客にしか出さない。というもの、なれずし独特の匂いがあり、なじめない客も多い。ただ、食通にはたまらない味と匂いなのだという。今回出されたアユは5年もの。料理長が「ヒネものです」と説明してくれた。ヒネものとは2年以上漬け込んだもの。昼から地酒とのマッチングも楽しんだ。

「アンチョビ蔵」。イワシを米糠で漬け込んだ「こんかいわし」も能登では盛んにつくられている。ブルーベリーワインを製造している同町の「柳田食産」は昨年から、廃線となった能登鉄道のトンネルを活用して漬け込んでいる=写真・上=。湿度と温度が一定しているので製造には好条件だ。樽の中で発酵し熟成されたこんかいわしを焼いてほぐしたものや、オリーブ油や香草と合わせたオイルソースはまさにアンチョビだ。これをクラッカーに少し塗り、ワインを飲む。この相性のよさはマリアージュ。そして、廃線のトンネルをアンチョビ蔵として蘇らせたアイデアに脱帽した。

     「広辞苑は間違っています」。こんな話が出たのは同町小木で魚醤油を製造している「ヤマサ商事}を訪ねた時だった。日本の3大魚醤と言えば、秋田の「しょっつる」、香川の「いかなご醤油」、そして能登の「いしる」=写真・下=だ。能登では材料がイワシのものを「いしる」、イカの内臓を「いしり」と呼ぶ。製造担当者は「ところが、広辞苑ではいしりはいしるの別称となっている。別称ではなく、材料が違うんです」と続けた。小木(おぎ)は北海道の函館、青森の八戸と並んで日本海のイカ漁の拠点の一つ。「いしり」の産地でもある。ただ、全国的に商品化すると少々ややこしいので、商品表記を「いしる(いか)」「いしる(いわし)」としているメーカーもある。

能登杜氏は今が一番忙しい。そんな中、能登を代表する酒蔵の一つである珠洲市の造り酒屋「宗玄」を訪ねた。「試食してみてください」と杜氏が板状になった酒粕を勧めてくれた。まさにチーズの味がした。普段日本酒を飲まない男性参加者が一枚食べ切り、「酒粕ですっかり酔いました」とうれしそうに話した。先月20日に解禁となった純米生原酒をテイスティングした。ジュワッと広がる飲み口がまさに初しぼり。バスに乗り込むと周囲は暗くなっていた。

2日目は輪島市の醤油蔵「谷川醸造」を見学。代々「サクラ醤油」のブランド名で。輪島は魚介類の水揚げが多い。ちょっと甘めの味が刺身にぴったり。この地で育まれ、花開いた「糀の文化」の印象だ。最近では、能登の地豆である「大浜大豆」と塩田でつくられた塩を原材料にした、こだわりの「能登の丸大豆醤油」をつくっている。

昼食は七尾湾を望むカキ料理の専門店でフルコースを味わった。焼いて、生で、フライで、釜飯で合わせて10個は食べた。それにしても能登の冬の食材はぜいたく過ぎる。ひょっとして海の食材の豊かさが発酵の食文化も育んているのかもしれないと思った。外に出て駐車場を見渡すと7割は県外ナンバーだった。

ツアーの締めくくりは「どぶろく」だった。中能登町の天日陰比咩(あめひかげひめ)神社を訪ねる。蒸した酒米に麹、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁る。「濁り酒」とも呼ばれる。毎年12月5日の新嘗祭で参拝客に振る舞われる。今年はこれまで最高の333㍑を造った。同神社は2千年余りの歴史をもつ延喜式内社でもある。禰宜の方から話を聞き、どぶろくを頂いて、一行が外に出たとたんに大粒の雨がザッと降ってきた。禰宜は「当神社は雨乞い所でして、神様が皆さんの来訪を喜んでおられるのですよ」と目を細めた。

⇒22日(月)朝・金沢の天気     あめ

★北の漂着船と落雷鉄塔、近い現場

★北の漂着船と落雷鉄塔、近い現場

    きょう17日朝、全国ニュースになった金沢市内の2ヵ所の現場を歩いた。驚いたことに2つの現場は近く、直線距離にして3㌔ほどだろうか。最初に向かったのは、北朝鮮の漁船が漂着し中から7人の遺体が見つかった同市下安原町の海岸だった。

    車道「しおさいロード」から防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がる。警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、すぐ現物と分かった。シートに包まれて船体にハングル文字の表記があるのかはよく分からなかった。船の中は見えた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表の報道によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。船内には北朝鮮の金日成主席と金正日総書記が並んだバッジや漁網が見つかっている。

    昨年から問題となっている北朝鮮の漂着船を現場で見るのは初めてだが、それにしても古い木造船だ。船の舳先部分にはタイヤのゴムが貼りつけてある。他の船と衝突して損傷個所を繕ったのではないかと想像をたくましくした。全長16㍍、幅3㍍ほど。このような船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、漁をする。しかし、冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでしてイカ漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、生活に困ってのことなのか。

    報道では、昨年1年で海上保安庁が確認した木造船の漂着と漂流は104隻、遺体は35人にも上る。日本海で相次いで人命が失われていることに対し、日本は北朝鮮に対して赤十字などを通じて警告を発しているのだろうか。この実態を世界に問いかけるべきではないのか。

    この北朝鮮の木造船が金沢の漂着しているの発見されたのは今月10日のこと。同じ日に起きた事故が金沢市観音堂町にある石川テレビと北陸放送が共用している送信鉄塔での落雷事故だ。通信障害が10日午後7時ごろから翌日午前10時ごろまで続き、実に15時間も放送が中断した。

    木造船の現場の後、5分余りで送信鉄塔の現場に着いた。たまたま近くの人が雪すかしをしていたので、話しかけると中高年の男性は「あの日は地響きがするひどい雷が何回かあった」と。2局が共用している送信鉄塔(160㍍)の高さ130㍍から140㍍の場所で内部のケーブルとアンテナ一部が焦げていた。鉄塔には2系統の配信設備(ケーブル)があり、1系統に問題が生じても、もう1系統を使って放送ができる仕組みになっているが、今回は落雷によって両方とも使用が不能になった、とテレビ局側は説明している。

     偶然なのだが、同じ日の10日の出来事の現場だ。それにしてもこんなに現場が近いとは思わなかった。おそらく、送信鉄塔(160㍍)に上がり海岸を見渡せば、ブルーシートの木造船が見えるのではないか、と思ったくらいだ。

⇒17日(水)午前・金沢の天気     あめ

☆雪すかしとマイクロプラスチック問題

☆雪すかしとマイクロプラスチック問題

     きょう14日、金沢では久しぶりに青空が広がった。日曜日なので青空の下、のんびりとという訳にはいかない。雪すかし、除雪作業が朝から始まる。「おはようございます。よく積もりましたね」とあいさつをしながら玄関先の道路の雪をスコップでかいて敷地の空きスペースに積み上げていく。冬の金沢では日常的な光景なのだが、最近少しわだかまっていることがある。スコップのことだ。

    実は我が家でもそうなのだが、雪をすくう先端のさじ部がプラスチックなど樹脂製のスコップが増えている。昔は鉄製、ひと昔前はアルミ、そして今は樹脂製とスコップが軽量化しているのだ。が、今では全部が樹脂製かというとそうでもない。氷結した路面の雪を砕く場合は、金属製で先が尖っているケンスコ(剣先スコップ)やカクスコ(角スコップ)でないと使えない。きょう朝、近所のみなさんが使っていたスコップを見ると、10本のうち4本は樹脂製ではなかったかと思う。

     わだかまっていると言ったのは、樹脂製のものはすり減りが速いのだ。路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをかくとなると樹脂の方が摩耗する。さじ部の先端にアルミなど金属を被せたものが売られてはいるが、きょう見た限りではそれはなかった。何が言いたいのかというと、我々の日常の雪すかしが意識しないうちに「マイクロプラスチック汚染」を増長しているのではないかということだ。

     最近問題視されているマイクロプラスチック汚染は、粉々に砕けたプラスチックが海に漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で有害物質が濃縮されていく。最後に人が魚を獲って食べる。

     マイクロプラスチック問題に関してはまったくの素人だ。ただ、路上の雪すかしをすることで知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを製造し、それが側溝を通じて川に流れ、海に出て漂っている。そう考えると、樹脂製のスコップには製造段階でさじ部分の先端に金属を被せるなどの対策が必要なのではないだろうか、と考えてしまう。

⇒14日(日)夜・金沢の天気     はれ