☆金沢オリジナルな墓参り

☆金沢オリジナルな墓参り

    毎年旧盆には能登の実家に墓参りをするが、今年の幹線道路「のと里山海道」は上下ともにとても混んでいた。そこで下道(国道249号、159号)に降りたが、ここも混んでいた。通常ならば1時間30分ほどの距離だが、ことしは3時間余りかかった。3連休に盆休みが合わさって5連休、帰省と観光の車両がどっと能登に繰り出したのだろう。

    この時節いつも思うことだが、同じ墓参りでも金沢と能登・加賀では参り方に違いがある。金沢の場合は、墓所にキリコをつり下げる棒か紐がかけてあり、墓参した人は箱型キリコあるいは札キリコをかける。キリコには宗派によって、例えば浄土真宗の墓地ならば「南無阿弥陀仏」、曹洞宗ならば「南無釈迦牟尼仏」と書いて、裏の「進上」には墓参した人の名前を記す。このキリコを献上しておくと、その墓の持ち家の人はキリコをチェックすれば誰が墓参に来たのか分かる仕組みになっている。

    これに対し能登・加賀では、キリコを持参する風習はないが、墓参りの後にその家を訪ねて仏壇にも合掌をする。直接顔を見せる能登・加賀と、名前をキリコに書き置きする加賀の違いがある。むしろ、キリコを持参する風習の金沢の方が独特のようだ。「墓参り キリコ」でネット検索をしても金沢関連の事例しか出てこないことを考えると、全国でも金沢ならでのは風習のようだ。

    ではなぜ金沢だけにとの疑問もわく。金沢での言い伝えでは、代々の加賀藩主の墓地に年寄衆や家老・若年寄らがキリコ(切籠)を献上したことが、年月を経て庶民にも広まったとする説がある。では、ほかの藩の大名にはそのような風習はなかったのだろうかとの疑問もわく。

    話を旧盆ののと里山海道に戻す。道路添いのパーキングエリアには売店がある。高松パーキングエリアで飲み物も買うために立ち寄った。ここで、「金沢オリジナル」の商品を見つけた。「金沢カレーコーラ」と「金箔七味」だ。コーラを飲んでみる。少々ソース風味が効いたコーラという感じだ。ご当地グルメの「金沢カレー」に寄り添うコンセンプトでつくられた飲み物だろう。金箔七味は七味唐辛子に純金箔が入ったもの。赤や黒の粉にキラキラと金が輝く。金箔は生産シェアは99%が金沢。金沢観光のちょっとした辛味の効いた土産だろう。念のために金箔は金沢ではうどんに入れたり、お酒に入っていたりと割と身近だ。(※写真=金沢の墓参りにはキリコが欠かせない。写真のキリコは板キリコ)

⇒14日(月)夜・金沢の天気   あめ

★敏感に反応するマーケット

★敏感に反応するマーケット

   11日付の日経新聞には驚いた。北朝鮮の弾道ミサイルに関連する記事が7ヵ所に掲載されていた。1面「北朝鮮『島根など通過』予告 迎撃ミサイル中四国配備」、2面「米朝 威嚇やまず」「真相深層 北朝鮮への対話提案、返答はICBM 八方美人外交韓国空回り」、3面「きょうのことば PAC3 半径数十㌔、ミサイル迎撃」、8面「止まるか挑発 北朝鮮情勢を聞く 日米韓主導の交渉が有効」、9面「ダイジェスト 韓国NSC、北朝鮮を批判」、21面「日米の防衛関連株物色 北朝鮮リスク高まり思惑」

   確かに北朝鮮情勢は緊迫化している。北朝鮮が今月8日に中距離弾道ミサイル4発をグアム沖に向けて同時に発射させる案を検討中だと予告すれば、アメリカのトランプ大統領が「彼(金正恩朝鮮労働党委員長)がグアムに対し何かすれば、これまで誰も目にしたことがないような出来事になる」と応酬。9日にはマティス国防長官が金正恩政権を軍事的に崩壊させると言及し、ニュースが世界を駆け巡った。さらに、北朝鮮が弾道ミサイル島根、広島、高知3県の上空を通過すると発表したことから、日本政府は中国・四国地方に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を配備すると機敏に対応した。ただ、グアムへのミサイルを撃ち落とすのではなく、コースが外れて日本に落ちてきた場合での破壊措置命令のようだが、具体的な自衛隊の行動として展開していることが目を引く。

    こうした「地政学リスク」に株価は敏感だ。「当事者」のアメリカでも10日のダウは200㌦余りの下落。日経平均も3営業日が続落。ただ物色されている銘柄もある。石川県白山市に本社を置く石川製作所(東証一部)は段ボール印刷機や繊維機械が主力商品だが、機雷の製造でも知られる防衛関連銘柄でもある。10日終値は前日比164円値上がり、13%上昇した。

 アメリカのメディアはもっと深刻に伝えている。CNNのHPによると、「Signs of fear creep back on Wall Street」、ウォールストリートの恐怖の兆候だ、と。ダウとS&P500は3月以来の最悪の週に苦しんでおり、ウォールストリートの「恐怖計」はほぼ2年ぶりに上昇した、と。「The big winners? Gold, ultra-safe government bonds and defense contractors.」 勝者は誰、金取引か、超安全な国債か、国防関連銘柄か。

   日本とアメリカのメディアが北朝鮮の弾道ミサイルの動きが取引市場と敏感に連動していることを伝えている。CNNが述べているように、それは「恐慌の前兆」なのか。

⇒12日(土)夜・金沢の天気   くもり

☆下田、ペリーと龍馬の残影

☆下田、ペリーと龍馬の残影

   10日、南伊豆町での研究フォーラムが終わり、「下賀茂熱帯植物園」というハウスで懇親会が開かれた。この施設では、下賀茂温泉の温泉熱を利用して、南国の果実など熱帯の植物が栽培されている。懇親会で勧められた日本酒が「身上起(しんしょうおこし)」という純米吟醸酒だった。町役場の職員の説明によると、明治の初めごろ南伊豆で栽培されていた「身上起」という品種のコメの種もみが宮城県に移出、品種改良されて「愛国米」という明治から昭和にかけて人気を博したブランド米になった。さらに、愛国米がその後のコシヒカリやササニシキといったブランド米になったのだという。

    南伊豆町では日本のコメ文化の発祥となった身上起を品種改良した愛国米を農家が栽培し、静岡県内の酒造メーカーが純米吟醸酒として製造している。職員は「コメが酒になって古里に凱旋したんです」とコップになみなみと注いでくれた。「身上起」の一升瓶をよく見ると、「龍馬にプレゼントしたかった酒」とのレッテルが貼ってあった。坂本龍馬と伊豆の関係が気になって、宿泊した民宿でネット検索を試みた。

    下田市にある宝福寺のホームページに記載があった。土佐藩の脱藩浪人となった龍馬は幕府軍艦奉行だった勝海舟と出会う。1863年(文久3年)1月、海舟が龍馬を船に乗せて大阪から江戸へ帰る途中、時化で下田港に入る。同じとき、土佐藩主の山内容堂が江戸から大阪に向かう途中で下田に立ち寄り、宝福寺に投宿していた。容堂から同寺に招かれた海舟は、容堂に龍馬の脱藩の罪を解き、その身を自分に預けてほしいと懇願し許された、とある。このとき龍馬27歳、下田の別の場所でじっと「朗報」を待っていたと伝えられる。龍馬は晴れて自由の身になり、それからの活躍は目覚ましい。貿易会社と政治組織を兼ねた亀山社中(後に「海援隊」)の設立、薩長同盟の斡旋など明治維新に影響を与える働きをすることになる。

  レッテルの「龍馬にプレゼントしたかった酒」の意味は、海舟と容堂との下田での偶然の出会いで大きなチャンスをつかんだ龍馬におめでとうと言いたいという意味が込められているのだろう。史実を知る地元ならではの時を超えたメッセージのようだ。

    容堂と海舟らが出入りしたであろう下田湾に行くと、「ペリー艦隊来航記念碑」があった。湾をバックにしたペリー提督の胸像が心象的だ=写真=。ペリーは幕府と1854年(嘉永7年)3月に日米和親条約(神奈川条約)を結び、下田と函館の2港を開港させる。2か月後に下田に上陸してさらに細かな付加条約(下田条約)を結んだ。この条約を受けて、1856年(安政3年)に来日したアメリカの初代総領事ハリスが下田で総領事館を開設する。その11年後の1867年(慶応3年)に大政奉還があり、日本は明治という新たな時代に入る。

    下田は歴史が新たに鳴動する時代に人物が行き交った要衝の地だったに違いない。ペリーの胸像はそんな時代の残影のようにも思える。

⇒11日(金)夜・金沢の天気 くもり  

★伊豆半島のジオ物語

★伊豆半島のジオ物語

   9日夜、伊豆半島・下田市に着いた。金沢から新幹線2本、JRローカル線2本を乗り継いで5時間10分の列車の旅だった。10日、南伊豆町で静岡大学など主催する研究フォーラム「伊豆半島の学習・交流・協働拠点づくり」に参加した。事例報告として、金沢大学が能登半島で実施している能登里山里海マイスター育成プログラムの概要と10年の成果を発表した。個人的に興味を引いたのは静岡大学教育学部の小山真人教授の事例報告「伊豆半島の地域資源と地域課題を考える」だった。語られた地域資源とは壮大なジオ(Geo、大地)のことだ。

   小山氏は理学博士で「伊豆半島ジオパーク推進協議会」の顧問の肩書も持つ。ジオパークは大地の景観や奇観を単に観光として活用するというより、地域独特の地学的な変動を理解して、その大地で展開する自然のシステムや生物の営み、人々の生業(なりわい)、歴史、技術などを総合的に評価するものだ。同協議会はユネスコ(UNESCO、国連教育科学文化機関)が認定する「世界ジオパーク」の加盟を目指す。

   伊豆半島のジオパークのキャッチフレーズは「南から来た火山の贈りもの」だ。伊豆はもともと本州から数百㌔南の海底に沈む火山群だった。それがフィリピン海プレートの北上の動きに連動して隆起して陸地化、さらに本州にドッキングする。本州との衝突で足柄山地や丹沢山地がカタチづくられた。半島化したのは60万年前、現在のカタチになったのは20万年前のことだ(同協議会発行「伊豆ジオMAP」より)。地球の恵みとしての温泉地や自然景観、年間3900万人もの観光客が訪れ、伊豆半島では62万の人々が生業を得て暮らす。小山氏の話はスケール観のあるジオ物語だった。

  下田市の田牛(とうじ)海岸近くの龍宮窟(りゅうぐうくつ)=写真=を見学した。天井が円形状に直径約50㍍空き、天窓が開いたようになっている。洞窟の壁には海底火山から噴出した黄褐色の火山れきが層をなして自然の美しさを描き出している。数十万年の地球の営みが造形した海食洞。まさに、時空を超えた世界がここにある。「お見事」と自然に口ずさんだ。

   南伊豆町の弓ヶ浜海岸を訪れた。ビーチは家族連れなどでにぎわっていた。「日本渚100選」に選ばれているだけあって、まさに白砂青松の景観だ。案内してくれた町役場の職員は「ことしは4年ぶりにウミガメが産卵にきました」と。その言葉だけで伊豆の地域資源の豊かさが実感できた。

⇒10日(木)夜・南伊豆町の天気   はれ

☆北の「地政学リスク」

☆北の「地政学リスク」

  いよいよ北朝鮮のICBMが株価を左右する事態になってきた。きょう9日の東京株式市場で日経平均株価は前日比257円の大幅安となった。株価にインパクトを与えたのはアメリカのワシントン・ポスト紙(WEB版)だと日経新聞夕刊で解説されていたので、さっそくネット検索。確かにこの記事を読めば、投資家の心理が冷え込むのは無理はない。以下、ワシントン・ポストの記事=写真=を引用する。

  North Korea has successfully produced a miniaturized nuclear warhead that can fit inside its missiles, crossing a key threshold on the path to becoming a full-fledged nuclear power, U.S. intelligence officials have concluded in a confidential assessment. (北朝鮮は、弾道ミサイルの内部に収まる小型の核弾頭の生産に成功し、本格的な核弾道への搭載が可能になったと、アメリカ情報当局は機密分析をまとめた)

    さらに記事を読むと、北朝鮮はすでに最大で60発の核弾道を有していて、多くの専門家の間で予測していたよりもはるかに核開発技術が急速に進んでいることに、軍事的脅威に対する懸念が深まっている、と深刻な内容だ。

  ワシントン・ポストは別の見出しで North Korea threatens Guam, the tiny U.S. territory with big military power(北朝鮮は、大きな軍事力を持つ小さなアメリカ領のグアムを脅している)と。北朝鮮がアメリカに重大な警告を送るとして、ICBMでグアム島付近へ包囲射撃作戦案を検討中と声明を出した(9日・韓国中央日報)。これにアメリカ側が敏感に反応したものだ。

  アメリカ国内のメディアがこれだけ強烈に報じると、当然、世界の投資家も敏感に反応する。ドルを売って円を買う動きが出て円高ドル安(109円)に、さらに「地政学リスク」が高まって国内でも全面的に売りが進んだ(一時330円安)。最近よくメディアに報じられる、この地政学リスクとは、北朝鮮のこうした強硬な出方が近隣諸国の政治的、経済的、社会的な不安を高めさらに、世界経済全体の先行きをも不透明にするリスクと解釈できるだろう。

  日本海側に住んでいると、この地政学リスクという言葉の意味が実感として伝わってくる。表現が適切か定かではないが、このリスク実感を共有できてこそ、恐らく世界史に残るであろう近未来の歴史の一コマも互いに見えてくる。

⇒9日(水)夜・静岡県下田市の天気    くもり

★避難訓練と制裁決議

★避難訓練と制裁決議

   石川県と輪島市の共同による、北朝鮮による弾道ミサイルの落下を想定した住民参加の避難訓練を今月30日に実施すると4日、記者発表した。「弾道ミサイルを想定した住民避難訓練の実施について」と題した県庁危機対策課による記者発表文の内容は以下となる。

   訓練は今月30日午前9時から、防災行政無線で住民に情報伝達、同市河井町地区で住民が屋内避難を行う。これと連携した訓練として、河井町地区以外の市内小中学校の児童・生徒、教職員が屋内避難等を実施する。行政レベルでも国からのエムネットによる情報伝達を受け、県と各市町・警察本部・各消防本部との情報伝達の訓練を行う。訓練時間そのものは午前9時から10分間の予定、という。

   不可解なこともある。なぜ訓練を実施するのかという点だ。発表内容は以下。「訓練想定 X国から弾道ミサイルが発射され、我が国に飛来する可能性があると判明」とある。どこかの国が弾道ミサイルは発射したという想定だが、「X国」という表現は何とも回りくどいが、外交に配慮した表現なのだろう。

    先月14日、同じ北陸の富山県高岡市でもJR高岡駅や小学校周辺で弾道ミサイルを想定した避難訓練が実施された=写真=。高岡市役所のホームページによると、訓練は、国や県、市の情報伝達系統の確認と居合わせた人それぞれの行動確認を行うことを目的とした。午前9時4分、ミサイル発射情報を携帯電話で受信した人、エムネットを受信した警察や鉄道、バス会社などからの呼びかけで知った人などが身を守るため「地下街に逃げる」「頑丈な建物に逃げる」「乗り物から降りる」など避難行動を取った。

   ちなみに、富山県庁の記者発表文でその目的を見ると、「想定 X国から弾道ミサイルが発射され、我に飛来する可能性あると判明」と石川県とまったく同じ「X国」としている。石川、富山両県とも国の指導での実施なのでこのような同一表現になるのだろう。しかし、訓練を実感を持って訓練を行うというのであれば、「X国」ではなく「北朝鮮」と表現してもよいのではないだろうか。

   グローバルなレベルはもっとリアリティがある。北朝鮮が先月(7月)4日と28日の二度、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を実施したことをめぐり、今月5日の国連安全保障理事会で新たな制裁決議が全会一致で採択された。報道によると、その主な内容は、北朝鮮の主な外貨獲得の手段となっている石炭、鉄鉱石、海産物の輸出について、上限や例外を設けることなく一切禁止するとした。また、北朝鮮労働者の新たな受け入れも原則禁止とした。これによって、北朝鮮の総輸出額の3分の1に相当する10億㌦が減る。採択にはロシアと中国も賛成に回った。現実感のある制裁決議だ。

(※写真は高岡市役所HPより。高岡駅で屋内避難を呼びかける)

⇒7日(月)朝・金沢の天気    くもり

☆ニュースは流れ、脅威はとどまる

☆ニュースは流れ、脅威はとどまる

    北朝鮮をめぐる最近の出来事は、日本海側に住む私のイメージの中では海の違法操業と空のICBMが一元化して一つの大きな脅威として脳裏に焼き付くのだが、同じ日本国内でも特に太平洋側、とくに首都圏ではおそらく一過性の出来事なのだろうか。

    きのう30日付の新聞各紙の社説を読めば上記のことが見えてくる。読売は「中露は圧力強化の責任を果たせ」との見出しで、中国とロシアが北朝鮮の制裁強化に消極的で、とくにロシアは北朝鮮から発射された中距離弾道ミサイルでICBMではないと強弁しているとして、「中露は実効性のある新たな受け入れるべきだ」と論を展開している。朝日も「中国とロシア 北朝鮮の抑制に動け」との見出しで、「北朝鮮が本当に危機感を抱くのは、日米韓に新たに中ロが加わり、行動をともにする時である。核とICBMは国際社会全体を脅かす以上、中ロも安保理の新たな決議に同調すべきだ」と両国に結束を訴えている。

    確かに、国際社会の中で北朝鮮に文句をつけているのは日米韓の3ヵ国だけで、ほかの隣国(中国とロシア)はさほどではない、と言い切ってしまえば、世界の関心事からは離れてしまう。北朝鮮はそのコンセプトでとくにロシアとの絆(きずな)を太くしているのかもしれない(5月から万景号による羅津港とウラジオストクの定期便化)。こうした北朝鮮のしたたかな動きを踏まえての両紙の論調だと読むことができる。

    ところが、同じ30日付の社説で意図をはりかねたのが毎日だった。「北朝鮮の弾道ミサイル 看過できないミサイル技術の進展」の見出しで、「いつでも、どこからでも、より遠くに届くミサイルを発射できるようになった可能性がある」と北朝鮮のミサイル技術を看過できないとしながら、ではどのような事態の打開策があるのか示唆や方向性、提言が見当たらないのである。社説の末尾を「不適切な防衛省人事に起因する防衛省・自衛隊の混乱とミサイル発射が重なったことを、安倍晋三首相は深刻に受け止めるべきだ」と結んでいるが、政権批判の転嫁に終始したとしか思えてならない。

    新聞の社説の論調は多様であるべきで、読者をもっと刺激してよいと常々思っている。今回ICBMの脅威に対応するため、マスメディアは先見性や具体性を持ってもっと論を張るべきではないか。31日付の紙面ではすでにICBM関連の記事は極めて小さくなっている。ニュースは流れるものかもしれないが、脅威は心にとどまる。(※写真は、ことし3月、北朝鮮の弾道ミサイルが能登半島沖に落下したことを報じる紙面)

⇒31日(月)午後・金沢の天気   くもり

★深夜にICBMの「なぜ」

★深夜にICBMの「なぜ」

   それにしても北朝鮮のミサイル技術は向上していると、素人ながら認めざるを得ない。前回(今月4日)発射されたICBM(大陸間弾道ミサイル)について、最大射程が少なくとも5500㌔超えるものだった(防衛庁HP、7月7日・防衛大臣記者会見より)。この射程範囲にはアラスカ、ハワイが入る。今回(今月28日)発射のICBMは、日本のメディア各社がアメリカのミサイル技術の専門家のコメントとして、1万㌔余りの射程範囲だと紹介している。これだと、アメリカ西海岸のロサンゼルスなどが入る。

    アメリカ国防総省HPをチェックすると、射程範囲についての分析は紹介していない。注目したのは、この日(29日)のICBMの発射を受けて、アメリカ軍と韓国軍は合同で、ATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)の発射訓練を実施したと伝えていることだ。ATACMSとは有事の際に北朝鮮司令部に正確に着弾する「deep-strike precision capability(深い打撃の精密能力)」のあるミサイルで、しかも「a full array of time-critical targets under all weather conditions(どのような天候でも危機的な状況下にも対応する)」とすでに臨戦態勢の入っていることを示唆しているのだ。今月4日の発射時にも合同訓練を行っており、2回目だと記載している。なぜこの記事をいち早く掲載したのか、アメリカ国防総省の意図を以下推察してみた。

   そのキーワードは「夜襲」ではないだろうか。このブログでも何度か紹介したが、ことし5月10日夜、アメリカ軍は嘉手納基地上空でMC130特殊作戦支援機を使って、パラシュート降下訓練を実施している。MC130特殊作戦支援機は赤外線暗視装置、地形追随レーダーを装備し、敵の防空網を突破することができる。その目的は敵地での特殊部隊の潜入・退去・補給、捜索救難活動の支援、心理作戦などに活用されるという。これは、前述のATACMSとリンクした、北朝鮮への「斬首作戦」の訓練である可能性もある。少なくとも、北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長を心理的に追い詰める作戦と言えるかもしれない。

   北朝鮮が今回、夜中の「午後11時時42分」にICBMを発射したのか。それは、「夜襲をかけるのであれば、夜襲でアメリカに打ち込む」との強いメッセージを込めている、と読む。

⇒30日(日)午前・金沢の天気    くもり

☆EEZにまた弾道ミサイルの挑発

☆EEZにまた弾道ミサイルの挑発

   これはもう「国際的な挑発」である。イカ漁真っ盛りの日本のEEZ(排他的経済水域)に違法操業の漁船を大量に繰り出し、そしてまたも弾道ミサイルを撃ち込んだ。こんなことが許されるのだろうか。首相官邸のホームページにアクセスすると。今回の弾道ミサイルの発射について、官房長官がきょう29日午前1時17分に記者したコメント内容が掲載されていた。以下、その要約。

    28日午後11時時42分ごろ、北朝鮮中部から弾道ミサイルが発射され、45分程度飛翔し、日本海の我が国のEEZ内に落下したとみられる。現在までのところ、航空機や船舶からの被害報告などの情報は確認されていない。何らかの事前の通報もなくEEZに着弾させたことは、航空機や船舶の安全確保の観点からも極めて問題のある危険行為である。

   29日午前0時44分から国家安全保障会議(NSC)を開催。情報の集約及び対応について協議を行った。国家安全保障会議においては、総理から既に指示のあった3点を改めて確認した。1.情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行う 2.航空機、船舶等の安全確認を徹底する 3.不測の事態に備え、万全の態勢をとる

   北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けて、深夜、安倍総理は2度記者会見を行っている。そのうち2度目の会見概要は以下。国際社会の強い抗議と警告を無視して、北朝鮮がまたも弾道ミサイルの発射を強行し、我が国のEEZ内に着弾させた。先般(7月4日)のICBM級ミサイルの発射に続いて、日本の安全に対する脅威が重大かつ現実のものとなったことを明確に示すものである。北朝鮮に対し厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する。北朝鮮がこのような挑発行動を続ける限り、アメリカ、韓国を始め中国、ロシアなど国際社会と緊密に連携し、さらに圧力を強化していくほかない。今後さらなる北朝鮮による挑発行為も、十分に可能性は考える。強固な日米同盟のもと、高度の警戒態勢を維持し国民の安全確保に万全を期していく。

NHKなどテレビメディア各社の報道によると、防衛省発表として、弾道ミサイルは3500㌔を超える高度に達し、45分間飛行した後、北海道・奥尻島の北西150㌔の日本のEEZ内に着弾した。この周辺では150隻のイカ釣り漁船などが操業している。

   それにしてもなぜ28日深夜だったのか。北朝鮮が「戦勝日」と宣伝している朝鮮戦争の休戦協定締結から64年となる今月27日にICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射の可能性が指摘されていたのだが。いずれにせよ、漁業者だけでなく、日本海側に住む国民としてこれは脅威である。ことし3月6日には能登半島沖200㌔にミサイルが着弾しているのだ。(※写真は朝鮮中央通信HPに掲載されている3月6日の弾道ミサイルの発射の模様)

⇒29日(土)朝・金沢の天気  くもり

★違法操業を排除できない理由

★違法操業を排除できない理由

    昨日(26日)午前、国会内の会議室で「大和堆漁場・違法操業に関する緊急集会」が開かれた。集会では、海上保安庁の関係者に「北朝鮮の違法操業船をなぜ拿捕(だほ)しないんだ」と怒声が飛んだという。集会に参加した県執行部の関係者から聞いた話だ。

    この集会は、衆院選選挙区石川県三区(能登)選出の北村茂男代議士の呼びかけで開かれ、県選出の国会議員6人のほか、県内の漁業関係者や県執行部も参加した。質問が集中したのは海上保安庁に対してだった。日本のEEZ(排他的経済水域)である大和堆で違法操業を繰り返す北朝鮮の漁船に対して、第九管区海上保安本部(本部・新潟市)の巡視の船をはじめ各保安本部が入れ替わりで現在も取締を実施している。海上保安庁はこれまで460隻の漁船に退去警告、それに従わない場合は放水を行っている(今月9日から20日朝までの累積)。

   出席者から「退去警告や放水では逆に相手からなめられる(疎んじられる)」と声が上がった。違法操業の漁船に対して、漁船の立ち入り調査をする臨検、あるいは船長ら乗組員の拿捕といった強い排除行動を実施しないと取り締まりの効果が上がらない、というのだ。数百隻と推測される違法漁船がひしめく中で強制的な排除になかなか踏み切らない海上保安庁に漁業関係者は苛立ちを募らせ、県漁協の組合長が強い排除行動を求める要望書を手渡した。

    言うまでもないが、領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。そのような北朝鮮の漁船に排除行動を仕掛けると、北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる可能性がある。おそらくそこが取り締まる側としては悩ましいところなのだろう。

    実際、26日、水産庁は長崎県五島市の女島灯台沖のEEZで許可なくサンゴを採ったとして、漁業主権法違反(無許可操業)の疑いで中国のサンゴ採取漁船を拿捕し、船長を逮捕している。これは中国が国連海洋法条約を批准しているから。

    緊急集会に参加した県執行部の関係者によると、「臨検と拿捕については官邸に判断と対応を求めることになった」と。県としては漁業団体とともに対応を政府に申し入れるという。 (※写真は能登半島・曽々木海岸の荒波)

⇒27日(木)午後・金沢の天気  くもり