☆有珠山は「やさしい」

☆有珠山は「やさしい」

   今月16-18日の休日を利用して北海道の洞爺湖、登別を旅した。今回ぜひ見てみたいと思ったのは、「洞爺湖有珠山ジオパーク」だ。2009年、ユネスコ世界ジオパーク認定地として糸魚川、島原半島とともに日本で初めて登録された。ジオパークは大地の景観や奇観を単に観光として活用するというより、地域独特の地学的な変動を理解して、その大地で展開する自然のシステムや生物の営み、人々の生業(なりわい)、歴史、技術などを総合的に評価するものだ。

    初日は洞爺湖有珠山ジオパークの価値を理解するため、ロープウエイに乗って、有珠山の噴火口に行き、あるいは洞爺湖を望んだりした。理解を深めるとっかかりは意外なひと言だった。「有珠山はやさしい山です」。2日目に入った「火山科学館」で「3面マルチビジョン 有珠山」のビデオ上映があった。そのアナウンスコメントが「やさしい山」だった。有珠山は1663年の噴火以来、これまでに9度の噴火を繰り返してきた日本で最も活動的な火山の一つだ。それがなぜ「やさしい」のか。映像は2000年の噴火を中心に生々しい被害を映し出した。

    映像から有珠山の「やさしさ」の理由が解きほぐされる。2000年の噴火では、事前の予知と住民の適切な行動で、犠牲者がゼロだった。犠牲者ゼロが成し遂げられたのは、有珠山は噴火の前には必ず前兆現象を起こす。その「山の声」を聞く耳を持った住民や気象庁や大学の専門家が観測をすることで適切な行動を起こすことができたからだ。この犠牲者ゼロから「火山防災」あるいは「火山減災」という考えが地域に広まり、学校教育や社会教育を通じて共有の認識となる。さらに気象庁は火山の監視と診断(緊急火山情報、臨時火山情報、火山観測情報)の精度を高め、大学などの研究機関は予測手法の確立(マグマの生成、噴火に伴う諸現象など)をすることで「火山学」を極める。

   定期的に噴火を繰り返す有珠山と共生する、という周辺地域の人々の価値感が広がっている。この価値感では、噴火の事前現象を必ず知らせてくれる「やさしい山」なのだ。それだけではない、1910年噴火では温泉が沸きだし、カルデラ湖や火砕流台の自然景観は観光資源となり、年間301万人(平成27年度・洞爺湖町調べ)の観光客が訪れ、このうち宿泊客は64万人。観光は地域経済を支える基幹産業である。火山を恵みとしてとらえ、犠牲者を出さずに火山と共生する人々の営みがある。(※写真・上は有珠山の火口、写真・下は有珠山ロープウエイから見える洞爺湖)

⇒17日(日)夜・北海道・登別の天気    風雨

★優しきジンベイザメ

★優しきジンベイザメ

   学生・留学生と巡る「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」の3日目。最終日のテーマは「里海の生業と生物多様性だ。能登町のリアス式海岸、九十九(つくも)湾に日本有数のイカ釣り船団の拠点・小木漁港を訪ねた。一般社団法人・能登里海教育研究所の浦田慎研究員から、イカ釣りの生業(なりわい)について講義を聴いた。「一尾冷凍」のニーズに取り組んだ進取の気質、イカ釣りという里海資源に配慮した漁法など印象に残る内容だった。この後、サプライズがあった。浦田研究員から「それではイカの冷凍庫がどのようものか見学しましょう」と提案があった。小木漁協の好意で冷凍庫を開けてくれるというのだ。「どうぞ」を漁協の職員が入るように促してくれたマイナス28度の空間、半袖で入ったせいか数秒で身震いが始まり、外に出た。するとメガネがいきなり真っ白になった。ハンカチで拭いても、また真っ白に。こればかりは数字では理解できない、体験して初めての実感だった。

    学生からさっそくこんな質問が飛んだ。「冷凍庫に冷凍イカを出し入れする際にどのような服装で入るのですか」と。すると漁協職員は「普段着ですよ」と。冷凍イカは箱詰めされていて、フォークリフトで出し入れする。そのフォークリフトの運転席は個室タイプになっていてドアを閉めて暖房を入れることができる。すると普段着でもマイナス28度の冷凍庫に入ることができる、というわけ。ニーズに応じたフォークリフトがあるのだ。

    この後、さらにイカの加工工場へ。魚醤の生産工場だ。イカの内臓やイワシを発酵させたもの。能登では伝統的に「いしる」と呼ばれる。ヤマサ商事の山崎晃一氏の案内で貯蔵庫を見学させてもらった。貯蔵庫入口のドアを開けたとたんに発酵のにおいに包まれた。発酵のにおいは不思議だ。「ヤバイ」と言いながら鼻をふさぐ者もいれば、「どこか懐かしいにおいですね」と平気で入る学生もいる。フランス人の女子留学生は逃げるようにして遠ざかった。発酵食の原点でもある魚醤のタンクがずらりと並ぶ。日本料理やイタリア料理の隠し味としてニーズがあるようだ。「イタリアから問い合わせもあります」と山崎氏。「能登のいしるがヨーロッパ進出」というニュースを期待したい。

    七尾市能登島の「のとじま水族館」を見学した。池口新一郎副館長の解説を聴く。近海の魚介類を中心に500種4万点を展示。水族館のスターは地元の定置網で捕獲されるジンベイザメだ。体の大きさの割には威圧感がない。ジンベエザメは和名だが、模様が着物の甚兵衛に似ているからとの説も。小魚やプランクトンがエサで動きがゆったりしているので、人気があるのだろう。体長が6㍍になると、GPS発信機をつけて、再び海に放される。ジンベイザメの回遊経路などがこれによって調査される。

    ツアーの最後は能登半島で一番高い山、宝達山(637㍍)に登った。「旅するチョウ」と言われるアサギマダラが宝達山の山頂をめざして飛来しているからだ。このチョウは春は日本列島の北の方へ、秋には南の方へ。その距離は2000㌔にも及ぶと言われる。宝達志水町職員でもある田上諭史氏たちはアサギマダラを捕獲、マーキングして放す。また、蜜がエサになるホッコクアザミを伐採しないなど保護運動につとめている。田上氏は白いタオルを回転させて、アサギマダラをおびき寄せようとしたが、風が吹いていたせいか、1匹しか捕獲できなかった。

それにしてもイカ、ジンベエザメ、そしてアサギマダラと、いろいろな人々が関わり合って、生業としたり、展示をしたり、保護活動をしたりと実に多彩だ。能登の生物多様性と人々の営みを理解する一助となった。宝達山頂から日本海の風景を堪能してツアーを締めくくった。

⇒16日(土)夜・金沢の天気   はれ

☆NOTOのアート

☆NOTOのアート

   学生・留学生と巡る「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」の2日目。テーマは「里山の生業と祭り文化」。午前中、輪島市三井町に移住したデザイナーの萩野由紀さんが主宰し、金沢大学の生物学者の伊藤浩二氏らが加わる調査グループ「まるやま組」が取り組む、農業と生物多様性について学んだ。講義で、これまで地域の300種の植物と123種の生物のデータベースを有する。そうした学びの中から、当地の農耕儀礼「あえのこと」(ユネスコ無形文化遺産)を自然の恵みへの感謝、「田の神さま」を生物多様性と解釈している、と。自然と農業の共生という意味を生物多様性という視点でとらえた新しい可能性だ。

    講義の後、稲刈りが終わって、はざ干しされた田んぼに出かけた。稲の言い匂いが漂ってきた。学生や留学生は始めてという。ただ一人、ベトナムからの女子留学生は「私も好きです。農村の匂いです」と。

   穴水町の「能登ワイン」を訪問した。収穫前のブドウ畑が広がっている。ワイナリーの見学の後、テイスティングを。すると、スペイン人の国連大学研究員は「私の田舎とよく似た風景ですね。おじいさんがブドウ畑を経営していました。3歳のころから赤ワインを飲んでいました。ワインと卵の黄身を混ぜて飲むと、とても栄養があっていいんです」と。本来、赤土(酸性土壌)はブドウ畑に適さないと言われてきたが、能登ワインでは畑に穴水湾で養殖されるカキの殻を天日干しにしてブドウ畑に入れることで土壌が中和され、ミネラルが豊富な畑となり、良質なブドウの栽培に成功している。白ワイン(シャルドネ)、赤ワイン(ヤマソービニオン)は国内のワインコンクールで何度も受賞している。個人的な感想で、「穴水湾の焼きカキは能登ワインのシャルドネにとても合う。気に入っている」と学生たちに話すと、フランス人の留学生は「それをマリアージュといいます。ワインに合う料理のことです」と、さらに、日本の女子学生は「海は畑の恋人ですね」と想像を膨らませた。そんな話をしながらテイスティングが盛り上がった。

    午後、珠洲市で開催されている「奥能登国際芸術祭」の会場を巡った。印象深い作品を2つ。塩田千春:作品「時を運ぶ船」(旧・清水保育所)=写真・上=。珠洲市の塩田村の近くに、塩田氏が奇縁を感じて作品に取り組んだと地元のガイドが説明してくれた。赤い毛糸を部屋の全方位に巡らし、下に佇む、ひなびた舟。この赤い空間と舟は、人々の血のにじむ屈折と労働、そして地域の歴史を支えてきた子どもたちを育んだ胎内を表現しているのだろうか。直接話が聞きたくて「作者の塩田さんはここにおられますか」とガイド氏に尋ねると、「体調を壊されましてドイツに戻っておられます」と。作品づくりについて直接話を聞いてみたい一人だ。

    能登半島は地理的にロシアや韓国、中国と近い。そして、日本海に突き出た半島の先端には隣国から大量のゴミが海流に乗って流れ着く。かつて海の彼方から漂着するものを神様や不思議な力をもつものとして信仰の対象にもなり、それが「寄(よ)り神の信仰」とも呼ばれた。現代の寄り神はゴミの漂着物だ。そのゴミを白くペイントして造ったオブジェが鳥居だ。深澤孝史:「神話の続き」(笹波海岸)=写真・下=はパロディーだ。最初は笑い、後に考え込んでしまう。

    能登の生業(なりわい)や地理的な条件、そして現代をモチーフにしたNOTOのアート。夜は珠洲市正院の秋祭りを見学。キリコの太鼓をたたく地域の人たちの豊かな表情に圧倒された、学生は「祭りそのものが最大のアートですね」と。

⇒15日(金)夜・金沢の天気    はれ

★自然の演出、窓岩の夕日

★自然の演出、窓岩の夕日

    今月13-15日の2泊3日で学生や留学生を27人を引率して、「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」を実施した。「ツアー」と称しているが、金沢大学の集中講義で単位科目(1単位)でもある。初日のテーマは「ランドスケープと特色ある歴史」。午前中は「雨の宮古墳群」(中能登町)を訪れた。

    国指定史跡である雨の宮古墳群は、眉丈山(びじょうざん)の尾根筋につくられた古墳群で北陸最大級。地元では古くから「雨乞いの聖地」として知られた。尾根を切り開いて造られた古墳は前方後方墳(1号墳)と前方後円墳(2号墳)を中心に全部で36基が点在している。全長64㍍の1号墳は、4世紀から5世紀の築造とされ、古墳を覆う葺石(ふきいし)も当時ままの姿。早稲田大学から参加したイギリス人の女子留学生は「まるでエジプトのピラミッドのよう。この地域の富と人々の知恵がなければ造れないですね」と考察した。山頂にあるこの古墳からは周囲の田んぼが見渡すことができる。この地域はコメの産地であり、海上交通・輸送の一大ルートだった。粘土で被われた石棺から、全国でも珍しい四角い鉄板で綴った短い甲、鉄剣、神獣鏡、腕飾形碧玉など多数出土している。古墳時代の能登がこの地でイメージできる。

    あの『東海道五十三次』で知られる歌川広重(1797-1858)は能登も描いている。晩年の作といわれる『六十余州名所図会』の一つ「能登 瀧之浦」。志賀町のリアス式海岸にある巌門(がんもん)と称される天然の洞門を見学した。幅6㍍、高さ15㍍、奥行き60㍍にも及ぶ。長年の波食によって描かれた自然の芸術でもある。江戸時代の当時からも観光スポットだったのだろう。広重は断崖絶壁の巌門をまるでいまでも襲いかかる、大きな口を開けた海獣のように描いているから面白い。

    曹洞宗の「修行本山」でもある総持寺祖院を訪ねた。総持寺は1321年に創建され、1898年の明治の大火で本山は横浜市鶴見に移された。その後祖院として残るが、2007年3月に能登半島地震があり、まだ復旧中だ。ドイツ人僧侶、ゲッペルト・昭元氏から話を聞いた。ドイツのライプツィヒ大で日本語を学んでいて禅宗に興味を持ち、2011年に修行に入った。「信仰ではない無我の境地、好き嫌いは言わない、与えられたものを素直にいただく、能登での人生の学びも7年になります」と。曹洞宗のきびしい修行を耐え抜いた言葉が重く、そして心に透き通る。開山大師の命日に当たる御征忌大法要の読経が境内に響き渡っていた。

    この日の締めくくりは輪島市曽々木海岸の窓岩の夕日だった。この時期、太陽は西に沈み、曽々木海岸の窓岩から夕陽が差し込む様はまさにパワースポット。学生たちとぜひ見てみたと思い、地元の作家・藤平朝雄氏に案内をお願いした。「昨日(12日)は見事に見ることができましたよ。時間は午後5時47分でした」と時間を予め聴いていたので、輪島市内を午後4時40分ごろ、バスを曽々木海岸に向かってもらった。ところが、午後5時過ぎごろ水平線に雲がかかり、5時20分ごろには雨も降ってきた。30分ごろから曽々木海岸で藤平氏の講義「能登の旅情と文学」を受けていた。雨は止んだが、水平線の雲は晴れない。45分ごろ、藤平氏が「おや、雲が晴れてきましたね」と。確かにそれまで覆っていた雲が随分と薄くなってきた。そして48分、なんと夕日が窓岩のバックを照らし出し、49分には窓岩に差し込んできたのだ。学生や留学生が「ミラクル、ミラクル」「オーマイ・ガッド」「奇跡よ、奇跡の夕日よ」と叫び始めた。

     50分になると夕日が強烈に差し込んで来た。学生たちは窓岩を背景に自撮りを始めている。先ほどまで雨が降っていたのに急変して、5分間の夕日と奇岩のスペクタルショーを楽しませてもらった。「私が今回のスタディ・ツアーで一番感動したは窓岩です。空が丁度晴れ上がり、窓岩に夕日がすっぽり収まったときは思わずため息が漏れるほど美しかったです」(学生)。何とも心憎い自然の演出、目に焼き付くダイナミックな能登のランドスケープだった。(※写真は輪島市曽々木海岸の窓岩で。2017年9月13日午後5時51分)

⇒13日(水)夜・能登町の天気    くもり

☆電磁パルス、新たな脅威

☆電磁パルス、新たな脅威

  「核実験」、「水爆実験」、そしてついに「電磁パルス」が北朝鮮から出てきた。3日付の北朝鮮の朝鮮中央通信WEB版は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)に搭載する水素爆弾を金正恩朝鮮労働党委員長が兵器研究所を訪れ、視察したと伝えている=写真=。その中で、
「우리의 수소탄은 거대한 살상파괴력을 발휘할뿐아니라 전략적목적에 따라 고공에서 폭발시켜 광대한 지역에 대한 초강력EMP공격까지 가할수 있는 다기능화된 열핵전투부이다.」(我々の水素爆弾は巨大な殺傷破壊力を発揮するだけではなく戦略的目的によって高空で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えることができる多機能化された熱核戦闘部だ.)と戦闘能力を誇っている。ここに出てくる「EMP」、これが電磁パルス(electromagnetic pulse)のことだ。北朝鮮は初めて公式にEMP開発の事実を明らかにした。

   その記事を掲載した同日に「水爆実験に完全成功」と伝えた。北朝鮮はここに来て2つの攻撃兵器を開発したことになる。水爆と電磁パルスだ。電磁パルスは高高度で核爆発させることで生じる電磁波のパルス(衝撃)で、地上にある電子回路を瞬時に発火させたり、広いエリアの電気設備や電子装置を延焼させることができる兵器だ。核爆発で電気系統をことごとく破壊する最悪の兵器とも言われる。

   大規模な停電が長期間続けばその被害は計り知れない。韓国の中央日報は5日付の記事で、北朝鮮がEMP攻撃に関心を持つのには理由について、北朝鮮がICBMを開発する場合、最大の難題は大気圏再進入の技術だが、EMPの場合は高度20㌔以上高いところで爆発することで十分な効果を出すことができるからだと解説している。アメリカでたとえれば、高度400㌔上空での核爆弾を爆発させることでアメリカ全域にEMPによる破壊効果を及ぼす。電気がなければアメリカが築きあげてきた現代文明がまさに破壊される。

   これに対し、日本政府の対応は防衛省がEMP攻撃の研究費を計上している段階。また、経産省が発電所の防護策を、国交省は交通機関などの防護策をこれから検討する段階という。各省庁が縦割りで対策を講じるレベルの話ではないだろう。北の脅威は迫っている。

⇒7日(木)夜・金沢の天気   くもり

   

★核実験めぐる情報戦、そしてスルメイカ

★核実験めぐる情報戦、そしてスルメイカ

  きょうお昼過ぎの朝鮮半島での揺れをめぐって、すさまじい情報戦争が始まっている。北朝鮮の朝鮮中央通信WEB版では速報が流れている(3日午後4時10分現在)=写真=。「조선민주주의인민공화국 핵무기연구소 성명–대륙간탄도로케트장착용 수소탄시험에서 완전성공」(朝鮮民主主義人民共和国の核兵器研究所声明 – 大陸間弾道ロケット搭載用スソタン試験で完全に成功)。スソタンは朝鮮語で「水素爆弾」のこと。

  さらに混乱するのは、「敬愛する最高指導者、金正恩同志が核兵器兵器化事業を指導した」と写真つきで核兵器について述べているが、核実験を行ったとは述べていない。

  一方、総理官邸のホームページでは、午後0時55分の「お知らせ」をホームページにアップしている、「北朝鮮付近を震源とする地震波の観測について」 1.平成29年9月3日12時31分頃(日本時間)、気象庁が、北朝鮮付近を震源とする地震波を観測しました。気象庁によれば、この地震は、自然地震ではない可能性があります。 a.発生時刻 平成29年9月3日 12時29分57秒 b.地震の震源、規模 北緯:41.3度 東経:129.1度 深さ:0km 規模 マグニチュード6.1 (参考)平成28年9月9日地下核実験時の地震 北緯:41.3度 東経 129.2度 深さ:0km 規模 マグニチュード5.3  2.政府としては、過去の事例も踏まえれば、北朝鮮による核実験の可能性もあるので、関係省庁幹部を官邸に緊急参集させるとともに、北朝鮮情勢に関する官邸対策室において、引き続き、情報の収集・分析を行っているところです。長々と引用したが、要点は核実験だというのだ。

   午後1時51分の「総理指示」で核実験と断定して、以下指示している。1.北朝鮮の今後の動向等に関し、情報収集・分析の徹底を期すこと 2.核実験に伴う放射性物質の影響を把握するため、関係各国と連携しモニタリング態勢を強化すること

   さらに午後2時45分の「総理声明」では踏み込んで、「今回の北朝鮮による核実験の実施は、関連する国連安保理決議の重ねての明白な違反であり、核兵器不拡散条約(NPT)を中心とする国際的な軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦である。また、日朝平壌宣言や六者会合共同声明にも違反するものである。我が国は、北朝鮮に対して厳重に抗議し、最も強い言葉で断固として非難する」と。

   水素爆弾だと主張する北朝鮮、核実験だと断定する日本、韓国。日本政府は放射性物質のモニタリングを実施することで核実験の裏付けを急ぐ。モニタリングは日本海上空の大気中のちりを収集することになるだろう。モニタリングで核実験だったと立証できたとしよう。すると今が盛りの日本海のスルメイカ漁、価格に影響が出てくるのではないか。そんなことも考えてしまう。

⇒3日(日)午後・金沢の天気   くもり

☆Jアラート、そのとき輪島朝市は

☆Jアラート、そのとき輪島朝市は

  けさ(30日)の北朝鮮メディア「朝鮮中央通信」WEB版は、「敬愛する最高指導者、金正恩同志が朝鮮人民軍戦略軍の中距離戦略弾道ロケット発射訓練を指導した」との見出しで、昨日朝に発射した中距離弾道ミサイル「火星12」の解説記事を掲載している。

  記事によると、発射はアメリカと韓国の合同軍事演習「乙支(うるち)フリーダムガーディアン」に対抗する武力デモの一環であると強調。「今回の弾道ロケット発射訓練は、私たちの軍隊が進めている太平洋上の軍事作戦の第一歩であり、侵略の前線基地でるグアム島を牽制する前奏曲になる」と述べ、記事の最後では「朝鮮人民軍戦略軍の全将兵は、107年前の韓日併合という恥辱的な条約が公布された血の8月29日に残虐な日本の島国の国民がぶったまげる大胆な作戦だった」「朝鮮人民の胸に積もって積もったものを解放いただいた絶世の愛国者、民族の英雄である敬愛する最高指導者、金正恩同志に最も熱い感謝を捧げる」と今回のミサイル発射は日本への積年の思いを晴らすものだと強調している。「ぶったまげる大胆な作戦」という表現には思わずのけ反ってしまった。

  きょう午前9時から、能登半島の輪島市河井町で北朝鮮のミサイルが飛来する可能性があるとの想定で避難訓練が行われた。この訓練の様子を見るため朝6時半に自家用車で金沢の自宅を出た。観光客らが多く集まる輪島の朝市通りに着いたのは8時半ごろだった。この時間で観光客は少なかったが9時ごろには徐々に増えてきた。9時ちょうどに防災行政無線の屋外スピーカーから「これは防災訓練です」と前置きして、Jアラート(全国瞬時警報システム)の鈍い警報音が流れた。その後「ミサイルが発射された模様です」「ただちに頑丈な建物や地下に避難してください」とアナウンスが流れた。

  すると通り歩いていた観光客の一部は立ち止まって警報音が響く空を見上げた。「えっ、またミサイルが飛んだの」と店の売り子に尋ねる観光客の姿もあった=写真・上=。その売り子は「いまのはクンレンなんよ」と答えていた。とくに混乱もなく、いつも通りの朝市の風景だった。一つ違っていたのは、数社のローカルテレビ局のリポーターが取材に来ていて、朝市おばさんや観光客にマイクを向けていた=写真・下=。「頑丈な建物に逃げてといっているけど、コンクリの店にゴメンネと言って入るしかないね」「輪島の地下施設ってどこにあるが」「あのサイレンの音、頭が痛くなるね」。朝市おばさんたちの反応はどこか素直に聞こえた。

  防災行政無線による避難の呼びかけは10分間ほど続いた。輪島市文化会館では住民による避難訓練や、市内の小学校では机の下に入り、身をかがめて頭を守る訓練も行われた。商店街で立ち話をした地元の中年男性は「きのうは(航空自衛隊のレーダーサイトがある)高洲山にヘリがバリバリと飛んでいたし、きょうはミサイルの避難訓練や。すごい時代やね」と顔をしかめていた。

⇒30日(水)正午すぎ・輪島の天気   くもり

★「さらなる圧力」海上封鎖か

★「さらなる圧力」海上封鎖か

29日早朝からニュースが行き交う。「北朝鮮が29日午前5時57分、平壌付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射。韓国軍合同参謀部発表」「政府は29日、北朝鮮からミサイルが発射された模様と全国瞬時警報システム(Jアラート)で速報した。ミサイルは上空を通過したもようで、日本政府関係者によると、発射は午前6時前」と。26日朝に続くミサイル発射だ。日本海側に住む者にとっては何とも落ち着かない。

    このニュース速報を受けて、JR東日本は北陸新幹線ほか、東北、上越の各新幹線と在来線の全線で安全確認のため一時運転を見合わせたようだ。今回の北のミサイルは北海道・襟裳岬の上空を通過して、太平洋上に落下したとみられると報じられている。素人ながら、アメリカのアラスカ沖への威嚇とも受け止める。北朝鮮は今月8日、グアム沖に中長距離弾道ミサイル4発の発射を検討中と公表していた。その際は島根、広島、高知各県の上空を通過させる、とも。グラム、アラスカ、どちらにしても、日本上空に弾道ミサイルを飛ばしたという事実に恐怖感を抱く。

    最近の北朝鮮による弾道ミサイル発射では、7月28日は午後11時42分で、北海道西方沖の日本のEEZ(排他的経済水域)内に落としている。今月26日ときょうは早朝だ。夜と朝の意味の何だろう。計り知れない不気味さがある。

    それにしても、北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)発射を受けて、国連安全保障理事会は今月6日(現地時間5日)、国連憲章「第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」第41条を基に兵力の使用を伴わない制裁決議案(経済制裁)を全会一致で採択したばかりではないか。その経済制裁が効かないということになれば、今度は第42条による陸海空軍による軍事行動になるだろう。しかし、そこまで一気にいけないだろう。第41条と第42条の中間点「海上封鎖」になるかもしれない。

   「海上封鎖」という文言は国連憲章にはない。海上封鎖の根拠は国連憲章第41条にある「・・航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含む・・」、あるいは第42条にある「・・国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる・・」の一文の解釈に基づく措置のことである。

    午前7時57分ごろ、テレビのニュース番組で、安倍総理の記者会見(ライブ)の様子が映った=写真=。その中で総理は「国連安全保障理事会に対し、緊急会合の開催を要請し、国際社会と連携し、北朝鮮に対するさらなる圧力の強化を強く国連の場において求めていく」と述べていた。この「さらなる圧力」とは海上封鎖のことではないのかとピンと来た。

    緊迫感が増す中、あす30日午前9時から、能登半島の輪島市河井地区で、「X国から弾道ミサイルが発射され、我が国に飛来する可能性があると判明」との想定で、防災行政無線による住民への情報伝達や、住民の屋内避難、市内小中学校の児童・生徒、教職員による屋内避難が実施される。リアリティのある避難訓練だ。

⇒29日(火)朝・金沢の天気   はれ

☆ホワイトハウスの内紛劇

☆ホワイトハウスの内紛劇

    北朝鮮の弾道ミサイルの行方もさることながら、アメリカのホワイトハウスの内紛劇もすさまじい様相を呈してきた。19日付(現地時間)のニューヨーク・タイムズのHPをのぞくと、ボストンでの白人至上主義、ネオ・ナチズムに反対する数千人規模のデモの様子が掲載されていた。デモはこのほか、シカゴ、ダラス、ヒューストンでもあったようだ。気になるのはホワイトハウスに関する以下の見出し記事だ。

    With Bannon’s Ouster, Question Remains Whether His Agenda Will Be Erased, Too バロンの追放によって、その政治・政策的な行動予定も取り消されるのか、それにしても問題は残る

    トランプ大統領を誕生させたともいわれるスティーブン・バノン氏(大統領首席戦略官)は更迭され、ホワイトハウスを去った。ニューヨーク・タイムズが問題としているのは、たとえば通商政策。中国とは経済戦争の状態にあるとしてバノン氏は貿易面で中国に圧力をかける政策の主導役だった。そのバロン氏の更迭をホワイトハウスが発表して3時間後、アメリカ通商代表部(USTR)は中国に対する「通商法301条」に基づく調査を開始したと発表している。301条では外国による不公正な貿易慣行に対して、大統領の判断で関税の引き上げが可能になる。

    バノン氏が経済戦争と称したのは、アメリカ企業の技術移転を義務付ける不透明な認可手続きや、中国の民間企業にアメリカ企業の買収を指示、中国政府によるアメリカ企業へのハッカー行為などだ。中国との貿易戦争にバノン氏は裏方で政策的なアジェンダを組み立て、USTRを動かしてきた。バノン氏更迭の後、こうした政策は遂行されるのだろうか。上記の見出しはポスト・バノンの政策には問題が山積している、と問題提起している。

    そして、同紙は更迭後のバノン氏のこの言葉を紹介している。“And anyone who stands in our way, we will go to war with.”

    この言葉を直訳すれば、「(ホワイトハウスを去ったが)同志とはともに戦う」。裏を返せば、中国との経済戦争で柔軟路線に修正するということであれば、その人物とは徹底的に戦う、とも取れる。アメリカ第一主義を押し通すバノン氏は、ホワイトハウスとも一線交える覚悟を表明したのだ。ニューヨーク・タイムズの見出し中の「Question Remains」はまさに「今後のホワイトハウスの火種」とも読める。バノン氏はもともとホワイトハウス入りする前まで、ニュースサイト「Breitbart News Network」の経営者だった。復帰して戦うのだろう。

   もう一つ、バノン氏のセリフを。アメリカのメディアが盛んに週刊誌「THE WEEKLY STANDARD」から引用しているこの言葉だ=写真=。“The Trump presidency that we fought for, and won, is over. ” われわれがともに闘い、勝利をおさめたトランプ政権は終わった

   バロン氏が更迭後に保守系メディアの同誌のインタビューで語ったとされる言葉。捨てセリフと言うより、無念さがにじんでいないだろうか。アメリカの政治史を塗り替えた昨年12月の大統領選挙から8ヵ月余り。日々伝えられるホワイトハウスの内紛はまるで政治ドラマだ。

⇒20日(日)朝・金沢の天気   はれ

★「平和的な圧力」の裏読み

★「平和的な圧力」の裏読み

   アメリカのトランプ大統領の気持ちは北朝鮮から国内問題にシフトしたようだ。ホワイトハウスのHPに大統領の激しい口調の演説文が紹介されている。
   Racism is evil. And those who cause violence in its name are criminals and thugs, including the KKK, neo-Nazis, white supremacists, and other hate groups that are repugnant to everything we hold dear as Americans. 人種差別は邪悪だ。それを掲げて暴力を振るう者、KKK、ネオナチ、白人優位主義者、他の嫌悪者グループは凶悪犯であり、我々アメリカ人として大切に思うもの全てに矛盾する。

   アメリカの現地時間12日に、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者たちのデモに参加していた男が反対派グループの列に車で突っ込み、女性1人が死亡し多数が重軽傷を負う事件があった。アメリカの関心事は北朝鮮のICBMから一気にこの事件に耳目が集まった。ところが、トランプ大統領は当初、白人至上主義者たちを明確に非難しなかったことから逆にトランプ批判がわき起こり、14日の演説となった。

   きょう15日の東京株式市場は、アメリカと北朝鮮それぞれの威嚇発言が一服したのを受けて、日経平均株価が5営業日ぶりに値上がり、終値は216円高い1万9753円。逆に、機雷の製造でも知られる防衛関連銘柄、石川製作所(石川県白山市・東証一部)は前日比330円安の1395円、19%も下落した。この株価の背景は、おそらくウオール・ストリート・ジャーナルで掲載された、アメリカのティラーソン国務長官とマティス国防長官による連名の寄稿だろう(現地時間13日)。

   We’re Holding Pyongyang to Account(私たちは、ピョンヤンにアカウントを保持している)の見出しで始まるこの記事では、アメリカの目標は朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換やアメリカ軍による北朝鮮侵攻を目指していないと訴え、北朝鮮に対する経済制裁や外交による「平和的な圧力」で臨む考えを示した。

なぜ、ウオール・ストリート・ジャーナルに寄稿したのか、すぐに理解できた。それ以前はダウが急激に下がり続けていた。そこで、ホワイトハウスではあえて経済専門紙に国務長官と国防長官が連名で「平和的な圧力」を訴えることで経済に及ぼす影響を和らげたかったのだろう。ダウ工業株平均は上昇し、終値は前週末より135㌦高い2万1993㌦だった。それに連動して前述のように日経平均株価も戻した。

   安倍総理とトランプ大統領は15日午前、電話で30分間会談したと報じられた。北朝鮮が日本上空を越えてグアム周辺海域に弾道ミサイル発射を計画していることを踏まえ、北朝鮮に弾道ミサイル発射を強行させないために、中国やロシアに働きかけを強める方針を確認したという。

   ふと裏読みがしたくなる。この一連の動きが株価を安定させるのが目的だとすると、今度は相手(北朝鮮)に逆手に取られる可能性があるのではないだろうか。激しく威嚇、揺さぶりをかけて、アメリカや中国、韓国、日本の株価をとことん下げて混乱させる戦術に出てくるのではないか。北朝鮮は自国にアメリカの目を向けさせたいのではないだろうか。

⇒15日(火)夜・金沢の天気   くもり