☆アップル・ショック

☆アップル・ショック

    まさに新年早々に「ネガティブサプライズ」だ。きょう朝のニュースによると、アメリカのアップル社は日本時間で3日、2018年10月-12月期の売上高の予想を下方修正し、840億㌦に留まる見込みだと発表した。これを受け、ニューヨーク株式市場でアップル株が一時10%急落、ダウ下げ幅も一時600㌦を超えた。しかし、1社の業績がここまで「資本主義の総本山」ウオールストリートを揺るがすものなのだろうか。

    問題はここにあった。アップルのティム・クックCEOが売上高を下方修正した最大の原因は中国の景気減速だ、と述べたのだ。「”While we anticipated some challenges in key emerging markets, we did not foresee the magnitude of the economic deceleration, particularly in Greater China,” he said. 」(イギリスBBCニュースより)。直訳すれば、「主要新興国市場ではある程度の課題が予想されたものの、特に大中華圏では景気減速の規模がこれほどまでとは予測することはできなかった、とクックCEOは述べた」。香港や台湾を含む大中華圏でのアップル社の売上は全体の20%近くを占めるとも述べているので、中国における景気減速の影響がアップル社だけでなく他産業にも広がると投資家の不安感を刺激したのだろう。このニュースが世界を駆け巡った。

   一方で、売上の下方修正の原因を中国の景気減速のせいにするアップル社のコメントに疑問を投げかけているメディアもある。アメリカのウオールストリートジャーナルWeb版(日本語)は「高級スマートフォンを中国に紹介したアップルは、同国での販売低迷に苦しんでいる。現地メーカーがはるかに低い価格で似たようなデザインと性能の製品を提供し、消費者の心をつかんでいるためだ。アップルのティム・クックCEOは業績見通しを下方修正した理由に、中国経済の減速を挙げた。だが、アップルはそれより根深い問題を抱えている。同社は現地のスマホメーカーの競争力を見くびっていた可能性がある・・・」と論評している。

   確かに、日本国内ではiPhoneの新機種などは価格が高く、消費者に支持されているのか疑問に思うこともある。ショップで見た価格だが、「iPhone XS」(64GB)は12万円、「iPhone XS Max」(同)は14万円だ。画像処理などを行う人工知能や機械学習などの技術を組み込んだハイスペックの製品なのだが、他のメーカーと比べ価格が一ケタ違う。スマホは日常生活に欠かせないものだけに、「価格はそこそこでよいのでは」というのが日本人の感覚かもしれない。

   中国でiPhoneが不調なのはむしろ、アメリカと中国の「貿易戦争」で、アメリカのブランドものに対して中国の消費者心理が冷え込んでいるのではないかと読むほうが自然だ。ましてや、ウオールストリートジャーナルが指摘しているように、現地メーカーが低い価格で似たようなデザインと性能の製品を提供し、消費者の心をつかんでいることは想像に難くない。

   ある意味で、トランプ大統領が仕掛けた「貿易戦争」が、アメリカを代表するIT企業の業績にブーメランのように直撃したのかもしれない。まさに「アップル・ショック」だ。(※写真はイギリスBBCのHPより)

⇒4日(金)朝・金沢の天気     くもり時々あめ

★「2019」を読む~下

★「2019」を読む~下

  自宅の庭にロウバイの花がささやかに咲いている。薄黄色のロウバイと白ツバキを生けて床に飾る=写真・上=。花の少ないこの時期、心を和ませてくれる。ロウバイの漢字表記は蝋梅。旧暦12月は蝋月(ろうげつ)とも称され、冬に咲く梅に似た花であることから蝋梅と呼ばれるようになった。小寒(1月6日ごろ)から立春(2月3日ごろ)にかけての季語でもある。「生物文化多様性」という言葉がある。植物や動物などの生物に文化的な価値付けをすることで生物の多様性を守り、文化的な深まりや広がりを人々も享受できるという意味だと自分なりに解釈している。国連大学やUNESCOなど国際機関が使い始めた言葉だ。

  花を愛でる価値共有と移民政策、生物文化多様性の視点から      

  花の価値を共有できる国の一つはベトナムではないかと思っている。2017年11月、旅したハノイ市内の路上では移動の花店=写真・下=や夜の花市場があり、女性や男性がバイクや軽トラックで次々と花の束を持ち込んで、とても活気があった。ベトナム航空のロゴマークは蓮(はす)の花をデザインしたもの。蓮は日本では仏花を代表する花だが、ベトナムでもシンボリックな花だ。ベトナムは社会主義の国だが仏教が主流だ。そして、ベトナムで仏教を信仰する多くの人々は月2回(1日と15日)に精進料理を食べることも習慣となっている。文化的な価値感を共有できる国ではないだろうか。

  外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法(入管法)が今年4月から施行される。人手不足に悩む14業種、介護、ビルクリーニング、農業、釣り漁業、食品・飲料製造(シーフード加工を含む)、レストラン(飲食サービス)、材料産業、産業機械、エレクトロニクスおよび電気機器、建設、船舶・海洋産業、自動車整備、航空(空港の地上処理、航空機のメンテナンス)、宿泊・もてなしを対象に、日常会話の日本語と簡単な技能試験に合格すれば、単純労働でも最長5年間の就労を認める(特定技能1号)。さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人は長期就労も可能になり、家族の帯同も認める(同2号)。

   日本、ベトナムなど11ヵ国が参加し先月30日に発効したするTPP(環太平洋パートナーシップ協定)では動労者の国境を超えた移動の自由化や、単純労働者の受け入れは対象ではない。しかし、少子高齢化の最先進国である日本は、長期的な視野に立って外国人労働者の受け入れに本腰を入れるしかないだろう。これは思い付きだが、改正入管法の日本語と技能のほかに「文化価値共有度」という尺度があれば、日本で働くと同時に暮らしの中で日本に溶け込み、永住者(移民)として受け入れやすくなるのではないだろうか。TPPの発効と改正入管法の施行は「移民政策」を正面から議論するチャンスだと考える。生物文化多様性という言葉の意味はそこまで広がる。

⇒3日(木)午後・金沢の天気   あめ

☆「2019」を読む~中

☆「2019」を読む~中

   元旦に個性的な賀状を多くいただいた。その賀状からは人生の在り様や経営への想いなどを読むことができる。何枚か紹介したい。著作物を勝手に流用することに少々気も引けるが、正月ということで作者の方にはお許しいただきたい。

            「風のスタシオン」、賀状に込められた経営への想い

       東京の出版社の友人は将棋が趣味。 ✒ 「将来の名人(明治)」と皆が唱和(昭和)し、将棋が大勝(大正)続きでも、本人は常に平静(平成)でいる。ホントに凄い! そうだ(聡太)、新元号は「藤井」にしよう! 

   今年84歳になる人生の大先輩、能登在住。 ✒  干支七回目の目標五項目 ◇複式呼吸法で健康管理と心おだやかに ◇話に明るさ、深さ、広さがあるように ◇常に相手方の長所に学ぶこと ◇「ほめ言葉」と「感謝の言葉」を忘れぬ様 ◇日々、「誠心誠意発露の場」とする精進努力を

   金沢のホテル支配人から。 ✒ 「風土」の語源は土地の生命力とか。「風」と「土」が造る気象、景観や文化、歴史。「土」はこの地に生を受けた私たちなら「風」は旅の人たち。延伸5年目を迎える北陸新幹線は、多くの観光客を連れてきただけでなく、「観光公害」なる言葉も生み出しました。この嫌なフレーズを耳にする時に金沢のおもてなしの力について考えさせられます。「今年は”風のスタシオン”になる」 多くの旅人がこのホテルに集まり散じていく、ひとときの心地よい「駅」でありたいと思います。

   プランニング会社の社長から。 ✒  風の言葉を聴き、土の力を知る。風土から学び、風土へ帰る。これが私たちの普通のコンセプトであり、その核をなすのは人と人のつながりです。新しい年もつながりを深める年となるよう務めていきます。

   最後に自身の賀状を。 ✒ 「平成最後の正月」をみなさまいかがお過ごしでしょうか。本年もどうぞよろしくお願いいたします。プライベートで書き続けているブログ『自在コラム』を始めて今月5日で5000日になります。本数は1360本です。3日か4日に1本のゆったりしたペースですが、日々のニュースや身の回りの出来事に視線を注ぎ、「これはブログのネタになるかもしれない」などと思いを巡らしてきた5000日でした。2017年には中間的なまとめの意味を込めて、新書『実装的ブログ論』(幻冬舎)を上梓しました。これまで、SNSのお誘いを何人かの方々から受けたのですが、かたくなにブログ一本で通す、不器用な人生です。平成から次の時代に変わりましても、引き続き人生のよきお付き合いをいただければ幸いです。

⇒2日(水)朝・金沢の天気   くもり時々はれ 

★「2019」を読む~上

★「2019」を読む~上

    それにしても見事な初日の出だった。写真は午前7時55分、金沢の自宅の2階から撮影したもの。青空に朝日が映えて、眼にも心にも光が差す。長らく北陸に住んでいて、快晴の元旦というのは珍しい。さて、2019年は好天に恵まれるのだろうか、この年を読み解いてみたい。

    年末31日のニューヨークのダウは前週末比265㌦高い2万3327㌦で終えた。アメリカと中国の「貿易戦争」とまでいわれる関税のつばぜり合いで、中国が軟化してきたとの分析が出始め、また、トランプ大統領と習国家主席による電話協議(29日)も前向きにとらえられ、買いが優勢になったようだ。日経平均の2018年終値は2万14円となんとか2万円台を保ったが、1年間で2750円安となった。「アベノミクス」の限界が見えてきたとこのブログでも触れた。では、日本の経済は今年停滞するのかとの思いもよぎるが、むしろ堅調なのではないだろうか。

     不透明感が高まる近隣諸国とどう向き合うか

    先月30日にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が発効して、日本、カナダ、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリア、ベトナム、チリ、マレーシア、ペルー、ブルネイの11ヵ国が参加したGDP10兆㌦の経済圏が構築される。さらに、日本にとって来月1日からEUとの経済連携協定(EPA)も発効する。多国間での自由貿易エリアが誕生することで、国民の経済へのマイナスイメージは当面和らぐのではないか。日本企業の業績もおおむね好調だ。ただ、10月から消費税率アップされるので楽観視はしていない。

   問題は近隣の中国、韓国の経済と外交の在り様ではないだろうか。中国は「一帯一路」を掲げ、アジアやアフリカの各国に融資し、港湾や鉄道などのインフラ開発を積極的に展開してきたが、ここにきて開発計画のずさんさや債務の膨張が表面化してきた。シルクロード経済ベルト(一帯)と21世紀海上シルクロード(一路)の壮大な構想が最近では、債権国(中国)と債務国の在り様がむしろニュ-スとして目立つ。さらに、中国通信機器メーカー「ファーウェイ」の製品を締め出す動きが、世界で広がっている。アメリカは国防権限法を昨年8月発効させ、政府機関や軍の情報が中国当局に流れる危険性があるとし、ファーウェイなど中国通信機器メーカーの製品を政府機関が使うことを禁止している。アメリカは日本など関係国にも働きかけを強め、オーストラリア、ドイツなどヨーロッパ各国、そして日本でも通信インフラを担う企業を含め中国製品をボイコットする流れだ。

   韓国経済も不況感が漂う。先月28日に韓国統計局が発表した11月の産業活動動向(鉱工業やサービスなどの生産動向)によると、鉱工業生産は前月比1.7%減と2ヵ月ぶりの減少となった。製造業生産は前月比1.9%減と2ヵ月ぶりに減少。内訳は前月比で「自動車・トレーラー」(マイナス2.3%)が3ヵ月連続の減少、「半導体・通信機器他」(マイナス4.7%)や「精密・光学機器他」(マイナス3.0%)など韓国の主力産業といわれる分野でマイナス幅が大きくなっている。朝鮮日報(12月31日付Web版)は「韓国の上場企業による営業利益の半分(49.59%)を占めるサムスン電子とSKハイニックスの業績低下が予想よりも深刻で、両社の株価は今年下半期にそれぞれ20%以上下落し、年初来安値を記録した。世界経済が過去10年間の好況から停滞局面に入ったことに加え、中国の攻勢もますます強まっているからだ」と分析している。

  韓国は直近で言えばレーダー照射問題など次々と日本との間で事を起こしている。今後ひと波乱もふた波乱もあるだろう。不透明感が高まる近隣諸国とどう向き合うのか、2019年の日本の最大の課題ではないだろうか。

⇒1日(元旦)午前・金沢の天気    はれ後くもり

☆平成最後の年末、レクイエム回顧~その6

☆平成最後の年末、レクイエム回顧~その6

   この一年の墓碑銘をなぞってみて、映画『日日是好日』で主役を演じた樹木希林(9月15日逝去)に哀悼の意を表したい。映画は亡くなった後の翌月に封切られ、「日日是好日」の意味が知りたくて金沢の映画館で鑑賞した。物語は樹木希林が演じる茶道の先生の元で、主人公を演じる黒木華が大学生の20歳の春にお茶を習い始めことから始まる。

     日日是好日の人生を生き抜いた二人の墓碑銘をなぞる

   映画の空間は一つの小さな茶室なのだ。ここで茶道の帛紗(ふくさ)さばき、ちり打ちをして棗(なつめ)を「こ」の字で拭き清める。茶巾(ちゃきん)を使って「ゆ」の字で茶碗を拭く。多くのシーンは点前だ。面白いのは二十四節季の茶室が描かれ、茶道の四季を際立たせている。四季は「立春」「夏至」「立秋」「小雪」「大寒」などと移ろっていく。同時に掛け軸と茶花が変わり、炉から風炉へ、菓子も季節のものが次々と。外の風景も簀(す)戸、障子戸と季節が移ろう。夏のシーンで主人公が床の掛け軸の「瀧」と茶花のムケゲと矢羽ススキを拝見する姿がある。瀧の字は流れ落ちる滝のしぶきをイメージさせ、「文字は絵である」と悟る。小さな茶室での物語であるものの、季節感あふれる多様な茶道具に見入り、茶道の世界の広さと深さに圧倒された。

   樹木希林の演技はまさに「お茶の先生」だった。初釜の場面で、濃茶の点前をする長めのシーンがある。複雑な手順も自然にこなし、流れが身についていると感じさせる。作法と演技を一体化させる才能はどこから来るのだろうか。主人公は失敗と挫折、人生の岐路に立たされながらも、茶道を通じてその清楚さに磨きをかけ、ヒロインとして輝きを放つ。小さなお茶室で繰り広げられる、茶道という「道」の壮大なドラマだった。日日是好日の意味は、喜怒哀楽の現実を前向きに生きる、その一瞬一瞬の積み重ねが素晴らしい一日となる、そんな解釈だろうか。

   映画を見終わったとき、ひょっとして樹木希林が演じたお茶の先生のモデルではないのかと想像を膨らませた先生がいた。金沢市の出村宗貞さん(本名・貞子)。茶室がある自宅を訪問すると、庭には茶花が咲き、茶室では社中の人たちが稽古に余念がない。出村先生はときには叱り、ときには手を取り教える。話し方、所作など樹木希林が演じる役を地で行く先生だ。その出村さんは10月27日に逝去された。94歳だった。慕われ、尊敬される茶道教授の役柄を見事に演じ切った。日日是好日。名優として最期を遂げた樹木希林と私の心の中でどこか2人の生きざまが重なって見える。(※写真は映画『日日是好日』のパンフレットから)

⇒31日(月)午後・金沢の天気  くもり時々あめ

★平成最後の年末、レクイエム回顧~その5

★平成最後の年末、レクイエム回顧~その5

  年の瀬になって起きた「能登半島沖」の「大和堆」での事件。日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦が20日午後3時ごろ、海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した。岩屋防衛大臣が21日夜に緊急記者会見で公表した。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだと報じられている。

   ドラマ仕立ての反論、事実と向き合えない相手が陥る弱点とは

   28日、防衛省はP1が韓国駆逐艦を撮影した動画をホームページで公開した。再生して視聴すると、当時のリアルな状況が伝わってくる。レーダーの電波を音に変換してヘッドホンで聞いているP1の操縦士たちが「出しています」と電波を感知すると、「避けた方がいいですね」「めちゃくちゃすごい音だ」と緊迫した会話が録音されている。その後、P1から駆逐艦に向けて、「KOREAN NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971, THIS IS JAPAN NAVY, We observed that your FC antenna is directed to us. What is the purpose of your act ? over.」とレーダー照射の目的を無線で3度問い合わせている=写真・防衛省ホームページより=。問い合わせに対する駆逐艦からの応答はなかった。テロップは付けてあるものの、画像の編集はなく、13分7秒の実録である。

   これに対する韓国側の対応はドラマ仕立てだ。映像の公開を受けて、韓国国防部側は「日本側が公開した映像資料は単純に日本の哨戒機が海上から巡回するシーンとパイロットの対話だけだ。一般的な常識からみると射撃統制レーダーを調査したという日本側の主張に対する客観的な証拠とはみられない」と映像の信ぴょう性そのもものを否定。さらに、P1からの呼びかけに答えなかった理由として「日本乗務員がKorea South Naval Shipと呼んだが、通信状態が良くないえうえ英語の発音が悪くてSouthがCoastと聞こえた。海警を呼んだと考えた」と明らかにした、と29日付の韓国・中央日報(日本語版)は伝えている。

  韓国側の対応を「ドラマ仕立て」と述べたのは、事実のストーリーの書き換えを懸命に行っているとの意味である。「英語の発音が悪くて」というそれこそ客観性のない言葉で責任逃れのストーリーを組み立てようとしている。国際外交の舞台であれば、ある意味でドラマ仕立てのハッタリを効かせて交渉を優位に進めることもあるだろう。防衛は外交の場ではなく、相手の弱点を見抜く場でもある。事実と向き合えない相手の弱点とは何か。自己防衛本能は強いが、そのうち自己矛盾に陥る。そのときどうなるのか韓国は。

⇒30日(日)午後・金沢の天気    くもり時々みぞれ

☆平成最後の年末、レクイエム回顧~その4

☆平成最後の年末、レクイエム回顧~その4

     「キャッシュレス」も今年よく耳目で触れた言葉かもしれない。テレビや新聞によると、その先進事例は中国で、スマートフォンによる決済が進んでいて、マクドナルドでは現金レジがない店もあるようだ。さらに、食材市場の個人商店などでもQRコード決済が可能で、キャッシュレスが日常の光景になっている。この傾向は世界的に進んでいて、日本だけが「キャッシュレス文明」に乗り遅れてしまうと言わんばかりの少々自虐的なメディアの論調ではある。

     日本は「キャッシュレス文明」に乗り遅れているのか    

   そもそもキャッシュレスは物理的な紙幣や硬貨の現金ではない支払い手段のことだと自身は解釈している。プリペイドカードなど電子マネー(前払い)で買い物をし、電車やバスに乗車する。クレジットカード(後払い)で家電製品を買ったりもする。私は持っていないがデビットカード(即時払い)でレストランで食事を楽しんでいる友人たちもいる。このほか、電気料金や水道・ガスなどの公共料金などは自動引き落としだ。すでに身の回りはキャッシュレスだ。さらに、住宅ローンなどは銀行口座間での送金となっていて、支払い総額の高い比率がすでにキャッシュレス化している。

   それでも、日本のキャッシュレス化は低い。経済産業省の『キャッシュレス・ビジョン』(2018年4月)によると、世界各国のキャッシュレス決済比率では韓国が89.1%でトップ、2位中国、3位カナダと続く。日本は18.4%にとどまる。韓国では、年商240万円以上の店舗にクレジットカードの取扱義務を課しているほか、硬貨の発行や流通にコストがかかることから「コインレス」に取り組み、消費者が現金で買い物をした際のつり銭を、直接その人のプリペイドカードに入金する仕組みを国家の政策として進めている(『キャッシュレス・ビジョン』より)。
 
   日本でキャッシュレス化が進まないのは貨幣(お金)に対する日本人独特の意識と文化があるのかもしれないと考察している。その典型的な事例が「新券」という考えだ。俗にいうピン札だ。結婚や出産のお祝いの慶事の熨斗袋や、習いごとの月謝袋にはピン札を入れる。同じ1万円札なのに何故に、と他国の人々は不思議がるかもしれない。新券に気持ちを込めるという文化があるのだ。もう一つは治安のよさだろう。スウェーデンのキャッシュ決済比率も48.6%と高い。この背景に、現金を扱う金融機関や交通機関などで強盗事件がかつて多発したことから、犯罪対策としてキャッシュレス化が推進された(『キャッシュレス・ビジョン』より)。

   では、日本でキャッシュレス化を進めるメリットはどこにあるのだろうか。よく分からない。プリペイドカードの枚数が増えて混乱するのは消費者の方だ。根深いところでは、自然災害が多発する日本で送電網が絶たれた場合、プリペイドカードやクレジットカード、デビットカードは果たして使えるのか、機能するのか。それより手元に現金があったほうが安心なのではないか、という深層心理が日本人のどこかにあるのではないだろうか。小銭を財布の中で探すのは時間がかかり、おっくうではあるが。  ※写真は経済産業省『キャッシュレス・ビジョン』(2018年4月)より。

⇒28日(金)夜・金沢の天気     くもり

★平成最後の年末、レクイエム回顧~その3

★平成最後の年末、レクイエム回顧~その3

  最近耳にする言葉を2つ挙げると「SDGs(エス・ディ・ジーズ)」と「5G(ファイブ・ジー)」かも知れない。慣れない人は「エス・ディ・ジー」と発音して、なかなか「ズ」が出てこない。この2語はおそらく来年のキーワードではないかと想像している。

      能登半島の最尖端から発するSDGsアクション

   偉そうに言う自身が「SDGs」を発するようになったのはことし3月ごろだ。能登半島の先端に位置する珠洲市が、「SDGs未来都市構想」を掲げる内閣府が全国自治体から公募する「SDGs未来都市」に応募するので、知恵を貸してほしいと持ちかけられたのが最初だった。同市の提案「能登の尖端“未来都市”への挑戦」が採択されたのは6月だった。初公募で29自治体が採択された。次年度(2019年)は応募が過熱するだろうと読んでいる。それだけ、学校教育や企業の現場でも「SDGs」が語られるようになっている。

   珠洲市が率先して「SDGs未来都市」に乗り出したことには2つの意味があると考えている。それは、これまでの地方創生の目標に加え、国際的に通用する「新しい物差し」で地域の課題に向き合うという意思表示を国内だけでなく世界に示したということになるからだ。 

  国連の持続可能な開発目標であるSDGsの基本原則は「誰一人取り残さない」ということ。これは、立場の弱い人々に手を差し伸べて、負担を少なくする、あるいはどうすれば負担が少なくなるのかを福祉の観点だけでなく、環境や経済などの視点から前向きに幅広く考えて、地域のプラス成長にもっていくという発想でもある。SDGsは高邁な理想にも聞こえるが、実践ベースではとても地味だ。珠洲市は7月に市内の10の郵便局とSDGsの目標達成に向けて協力する包括連携協定書を交わした。「なぜ郵便局と」と思われるかもしれないが、郵便局はすべての世帯に郵便物を届けるという使命感がある。その郵便局のネットワークを活かして、地域の見守り活動や災害時の支援、広報など行政の取り組みを支援していく。これは、SDGsの「誰一人取り残さない」社会の理念と実に合致する。地味な一歩かもしれないが、SDGs実践に向けてプロジェクトを積み上げる大きな一歩ではないだろうか。

   10月1日には、珠洲市におけるSDGsの取り組みの中核となる「能登SDGsラボ」がオープンした=写真=。能登SDGsラボは、地域の課題解決のワンストップ窓口であり、さまざまな専門家や有識者が集うシンクタンクの拠点機能を目指している。多くの研究者や学生にも参加してもらい、グローバルな視点で地域課題を考え、課題解決に参画するアクションの場となればと期待する。

        2020年には同市で「奥能登国際芸術祭」が開催される。半島の先端から「SDGs芸術祭」を世界に発信するチャンスかもしれない。

⇒25日(火)朝・金沢の天気     はれ

☆平成最後の年末、レクイエム回顧~その2

☆平成最後の年末、レクイエム回顧~その2

   きのう23日は天皇誕生日だった。平成最後の年末を迎えるにあたって、天皇のお気持ちを察する。85歳の誕生日を前に開かれた記者会見(20日、皇居)の内容からお気持ちを読んでみる。宮内庁ホームページに会見録が掲載されている。在位中最後となる会見でもあり、象徴として歩んで来られた平成という時代に込めた思いを述べられ、「私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と語られた。印象的な言葉は、「天皇としての旅を終えようとしている今、…」とのフレーズだった。来年春の譲位が決まり、安堵のお気持ちが伝わるフレーズだと感じた。

    在位中最後となる会見で天皇が込められた「旅を終える」想い

   天皇が初めて譲位の意向をお言葉として発せられた、平成28年8月8日のお言葉の中で、「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と語られ、悲壮感が漂ったお言葉だと感じた。それが、今回のお言葉では、「天皇としての旅を終えようとしている今、…」と肩の荷を下ろされたような表現になっている。

   その背景を探ってみる。平成28年8月8日のお言葉の中に、重苦しいお言葉があった。「皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません」と。

   「重い」との形容詞をあえて被せた「殯の行事」。一般の葬儀とは違って、夜を徹してご遺体と共にする「お通夜」が2ヵ月にわたって続く。天皇というのは皇位を継承するだけではなく、亡くなられた天皇の霊を継承するという宗教的な意義がセットになっている。こうした「重い」儀式は果たして現代の皇室に必要なのだろうかと天皇自ら問いかけられたのが前段のお言葉だった。生前退位で皇位が継承されれば、殯の行事は簡素化で済む。これが皇室改革の大きな一歩になると、天皇は平成28年8月8日のお言葉を述べられたのではないかと解釈している。今回の「天皇としての旅を終えようとしている今、…」はようやくその願いがかなったとの安堵のお言葉ではないだろうか。

   ちなみに、殯の弔いは東南アジアの一部で残っている。壮大な棚田で2千年の稲作の歴史を有するフィリピン・ルソン島中央のイフガオだ。現地で聞いた話だが、イフガオ族では死者を布でくるんで白骨化するまで自宅に置いて弔う。家族は死者を身近に置くことで、亡き人をしのぶ。日ごとに悲しみにと同時に死者への畏敬の念が沸いているのだという。その後、家族で洗骨の儀式を営み、埋葬する。カトリック教の布教の広がりとともにこうした弔い方は減ってはいるが、古代からの農耕民俗として今でも伝えられている。(※写真は、今月20日の天皇の記者会見、場所は宮殿「石橋の間」=宮内庁ホームページより)

⇒24日(振休)朝・金沢の天気   くもり

★平成最後の年末、レクイエム回顧~その1

★平成最後の年末、レクイエム回顧~その1

    きょう23日午後2時から石川県立音楽堂で、県音楽文化協会の年末公演が開催された。モーツアルトの「レイクエム」、年末を飾るのにふさわしいコンサートだった。昭和38年(1963)から続く恒例の年末コンサートはこれまで長らく、ベートーベンの「第九交響曲」と「荘厳ミサ曲」の2公演がセットだった。今回初めて「荘厳ミサ曲」から「レクイエム」に変更された。平成最後の年末公演を「レイクエム」で締める。練習も相当厳しいものがあったろうことは想像に難くない。公演では、イタリアの合唱団メンバーも加わり、35歳で亡くなったモーツアルトが最後に残した曲が感動的に演奏された。「レイクエム」を聴きながら、平成最後の1年を振り返る。

      日本海の「厄介な危険物」、来年はさらに混沌と

    日本海側で暮らす一人として、はやり北朝鮮と日本海、そして最近の韓国の動向が気にかかった1年だった。年初の1月10日朝、金沢市下安原海岸に北朝鮮の漁船が漂着し中から7人の遺体が見つかった。現場に足を運んだ。船の中には、ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。昨年から問題となっている北朝鮮の漂着船を現場で見るのは初めてだが、それにしても古い木造船だ。全長16㍍、幅3㍍ほど。このような船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、漁をする。しかし、冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでしてイカ漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか。

      海上保安庁によると、ことし1年ですでに北朝鮮からとみられる木造船が漂着は201件、昨年の2倍。問題はこうした漂着船の解体処分や遺体の火葬をするのは自治体だ。石川県に漂着した木造船などの処分費用21件880万円(11月現在)。最終的に国が全額負担している。

   もっと厄介なのは北朝鮮の違法操業だ。スルメイカ漁は6月に解禁になり、多くの日本漁船が大和堆でのイカ釣り漁を開始する。日本漁船は釣り漁であるのに対し、北のイカ漁船は網漁だ。夜間に日本漁船が集魚灯をつけると、集魚灯の設備を持たない北の漁船が多数近寄ってきて網漁を行う。獲物を横取りするだけでなく、網が日本漁船のスクリューに絡むと事故になる危険性にさらされる。また、夜間では北の木造漁船はレーダーでも目視でも確認しにくいため、衝突の可能性が出てくる。衝突した場合、水難救助法によって北の乗組員を救助しなければならない。そうなればイカ漁どころではなくなる。だから、「厄介な危険物」にはあえて近寄らない。多くの日本漁船が好漁場である大和堆を避けるという現象が起きたのはこのためだ。

    さらに厄介なのは最近の韓国の動きだ。11月20日、大和堆付近で操業中の日本のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、漁船に接近していた「事件」があった。日本の海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入ることで、韓国の警備艇は現場海域を離れた。

    スルメイカは貴重な漁業資源だ。それを北朝鮮に荒らされ、さらに「日本漁船は海域を出ろ」という韓国。来年の日本海はさらに混沌としてくるのではないか。

⇒23日(日)夜・金沢の天気    あめ