★NHKへのシングルイシュー
「NHKから国民を守る党」という政党がある。NHKに受信料を払わない人を応援・サポートする政治団体だとアピールしている。先の東京都の区議選(投開票今月21日)で、この団体からの立候補者が17人当選した。団体の党首のツイッター(22日)によると、「(今回の統一地方選で)47名立候補して、当選者が26名 現職13名と合わせて、NHKから国民を守る党の所属議員が39名になりました。7月の参議院選挙に挑戦する土台が出来ました」と。シングルイシュー(単一論点)を掲げる政党がこれほど議席を獲得するのは異例だろう。その背景には有権者のどんな思いが潜むのか、政治への不信なのか、NHKへの不信なのか。
前もって述べておくが、私自身の自宅にはテレビがあり、選挙速報や異常気象、災害、地震の情報など、民放テレビ局では速報できないニュースをNHKがカバーしていて、その公共性の高さを考えれば、放送法64条にあるテレビが自宅に設置されていれば、受信料契約ならびに支払いは社会的にも認められると考える一人である。契約の自由を保障する憲法に違反するのかどうかが争われた裁判では、最高裁は合憲と判断している(2017年12月)=写真=。NHKが契約を求める裁判を起こして勝訴すれば契約が成立する。そして、テレビを設置した時点からの受信料を支払わなければならない。最高裁が出した答えは「義務」と同じだ。
スマホ・携帯のワンセグへの課金も争われた。放送法64条では受信料の支払いは「受信設備を設置した者」と定められている。スマホにはワンセグのアプリがついている機種が多いが、普通に考えれば「設置」ではない。ましてや、テレビを視聴しようとスマホを求めた訳でもない。ワンセグへの受信料をめぐる判決は別れた。さいたま地裁判決は「受信契約の義務はない」と判断(2016年8月)、水戸地裁は「所有者に支払いの義務がある」と判断(2017年5月)、東京地裁は「ワンセグの携帯電話を持っていれば、契約を結ばなければならない」と判断(2017年12月)。控訴審で東京高裁は地裁の判決を支持した(2018年6月)。上告審の最高裁も高裁判決を支持し、NHK側の勝訴が確定した(2019年3月)。
この勝訴でNHKへの不信が増大したかもしれない。学生たちからこんな話を何度か聞いた。NHKの契約社員(中年男性)がアパ-トに来て、「テレビがなくても、スマホでテレビを見ることができれば、NHKを見ても見なくても受信契約が必要です」と迫ってきた。学生が「親と相談しますから、帰ってください」と言うと、契約社員は「契約しないと法律違反になりますよ」と。学生が親と相談すると、法律違反になるくらいならと家族割の分を親元が払っている。
学生たちは学ぶために親元を離れて仕送りをしてもらっているので実質的に「同居」だ。会社で働き自活するために親元を離れる別居とまったく状況が異なる。なぜ学生にまで受信料を課すのか。NHKは経済的理由で奨学金を受けている学生には全額免除するなど一部配慮はしているのだが。
学生や若者たちのテレビ離れは加速している。「NHKから国民を守る」というシングルイシューが政治的な広がりを見せている背景は結構根深いのではないか。そして7月への参院選へと向かう。
⇒25日(木)夜・金沢の天気 あめ






被災地を取材に訪れたのは震災から3ヵ月後だった。柏崎駅前の商店街の歩道はあちこちでひずみが残っていて歩きにくく、復旧半ばという印象だった。コミュニティー放送「FMピッカラ」はそうした商店街の一角にあった=写真=。祝日の午前の静けさを破る震度6強の揺れがあったのは午前10時13分ごろ。その1分45秒後には、「お聞きの放送は76.3メガヘルツ。ただいま大きな揺れを感じましたが、皆さんは大丈夫ですか」と緊急放送に入った。午前11時から始まるレギュラーの生番組の準備をしていたタイミングだったので立ち上がりは速かった。
金沢に住む一人として、当時はバブル経済の崩壊と大学移転のタイミングが重なり、その後の「失われた20年」と称された景気後退期には大学と県庁の移転が相次ぐことで、金沢の中心街が急速にさびれたと感じたものだ。片町という金沢きっての繁華街が「シャッター通り」になりかけていた。金曜日の夜だというのに、片町のスクランブ交差点には人影が少なく、「もう金沢も終わりか」と感じたのは私だけではなかっただろう。
さ」だった。それが作品名になった。昆虫学者の末裔らしい、理知的で面白いタイトルだ。
このとき自身は金沢大学の地域連携推進センターでコーディネーターの職に就いていた。2年前の平成17年(2005)1月に北陸朝日放送報道制作局長の職を辞していた。50歳になり「人生ひと区切り」と。すると、かつての取材先でもあった金沢大学の理事・副学長から誘われた。平成19年に学校教育法が改正され、大学のミッション(教育・研究)に新たに社会貢献が加わることになるとの話だった。「地域にどのような課題があって、そのキーマンは誰か、宇野さんはよく知っているはずだ。新聞・テレビでの知見を大学で活かしてみないか」と。テレビ局を辞した年の4月に大学の地域連携コーディネーターに採用となった。

