☆「ごちゃまぜ」という社会の化学変化

☆「ごちゃまぜ」という社会の化学変化

  「Share(シェア)金沢」という施設が金沢大学の近くにある。高齢者向けデイサービス、サービス付き高齢者住宅、児童福祉施設、学生向け住宅の複合施設だ=写真=。90人ほどが暮らす、ちょっとしたコミュニティでもある。施設には天然温泉やカフェバー、レストラン、アルパカの牧場、タイ式マッサージ店などがあり、近くの子供たちや住民も出入りする。運営している社会福祉法人「佛子園」の理事長、雄谷良成(おおや・りょうせい)氏と面談するチャンスがあった。

   大学で作成する教材用の動画の出演依頼の面談だった。テーマは「ソーシャルイノベーション」。都会から地方に移住したいという人々を地域が受け入れ、一つのコミュニティー(共同体)をつくることで新たな考えや発想、ビジネスを起こすという社会実験の場をいかにして創るか。Share金沢はそのモデルの一つだ。CCRC(Continuing Care Retirement Community)は高齢者が健康なうちに地方に移住し、終身過ごすことが可能な生活共同体のような小さなタウンを指す。1970年代にアメリカで始まり、全米で2000ヵ所のCCRCがあるという。都会での孤独死を自らの最期にしたくないと意欲あるシニア世代が次なるステージを求めている。そうした人々を受け入れる仕組みを地方で創る、いわば日本版CCRCの社会実験の意義について講演をお願いした。 

    雄谷氏は「私が目指しているのは、“ごちゃまぜ”によるまちづくりです」 と口火を切った。続けて「障害のあるなしや高齢に関係なく、多様な人たちがごちゃまぜで交流する。誰もがコミュニティの中で役割を持ち、機能しすることで元気になり、コミュニティが活気づく。いわば人間の化学反応が起きるのです。いま日本の社会、とくに地域に求められているのはこうした共生型社会ではないでしょうか」と。

    雄谷氏の祖父は寺の住職で、戦災孤児や知的障害児を引き取り育てていた。1961年生まれの雄谷氏も障害児たちと生活し、「ごちゃまぜ」の環境で育った。金沢大学で障害者の心理を学び、青年海外協力隊に入り、ドミニカで障害者教育に携わった。いろいろな人たちがごちゃまぜに共生し、人と人が関わり合うことによって化学反応が起きる。事例がある。通所している認知症の女性が、重度心身障害者の男性にゼリーを食べさせようと試みた。男性は車椅子で首はほとんど動かせない。3週間ほど繰り返すうちに男性にゼリーを食べさせられるようになった。首が少し回るようになったのだ。女性も深夜徘徊が減った。この様子を観察していた雄谷氏は「人と人が関わり合うことによって互いが役割を見つけ、生きる力を取り戻す。大きな気づきでした」と。

    雄谷氏が提唱する、ごちゃまぜのコミュニティづくりの構想は、縦割りとなった社会制度を崩すものだ。政府が目指すべき将来像を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」にこの構想が盛り込まれた。個人の人生設計と併せて地域で共生する社会のなかで誰もが活躍する。少子高齢化・人口減少の課題先進国、日本にとって示唆に富んだ提案ではないだろうか。今回の面談の時間は30分ほどだったが、講演の動画収録にOKが出たので、今度ゆっくり聞かせてもらうことになった。

⇒4日(水)朝・金沢の天気    あめ

★「ONE TEAM」 多国籍のチカラ

★「ONE TEAM」 多国籍のチカラ

   今年話題となった言葉を選ぶ「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に、ラグビーワールドカップの決勝トーナメントに進出した日本代表のスローガン「ONE TEAM」が選ばれた。予想通りだった。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だった。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じたものだ。

  この「ONE TEAM」の在り様は、日本が取るべき将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と言うと共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。たとえば、金沢に「ニュージーランド村」や「南アフリカ村」があってもいい。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよいのではないか。そんなことを想起させてくれたのが「ONE TEAM」の戦いぶりだった。

   そのほか個人的に選ぶ流行語大賞は、やはり「令和」だ。4月1日午前11時35分から総理官邸で開かれた会見で、菅官房長官が墨書を掲げて新元号を公表する様子をネットの動画中継を見ていた。「大化」(645年)から248番目の元号が「令和」と発表されたとき、時代の転換点に立つような、改まった気分になった。安倍総理もその後の記者会見で、「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込めて決定した」と述べていた。 なんと平和なことか。昭和、平成、そして令和の時代を生きることは喜びではないかのか、ふと気づかされたものだ。平成の世と同じく、令和も戦争のない平和な時代であってほしいと願うばかりだ。

  「新紙幣」も個人的には流行語大賞だ。「令和」の発表の8日後、新紙幣を2024年度に発行すると麻生財務大臣が記者会見で発表した。1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新だ。平成の1万円札の主役を担った福沢諭吉から、令和は渋沢栄一に代わる。しかし、「独立自尊」の福沢の精神は未来も変わることはない。

⇒2日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆北から脅しのメッセージ

☆北から脅しのメッセージ

       北朝鮮が28日午後5時前、日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射した。これを受けて、国家安全保障会議(NSC)を開催した安倍総理は終了後、記者団に「北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射は我が国のみならず国際社会に対する深刻な挑戦だ」と述べた(28日付・朝日新聞Web版)。このコメントに対する北朝鮮の反応がすさまじい。

   韓国の中央日報(30日付・Web版日本語)によると、 北朝鮮外務省の日本担当副局長が30日談話を発表し、「安倍は本当の弾道ミサイルが何かをもうすぐ非常に近いところで見ることになるかもしれない」と述べ、「その時に放射砲弾と弾道ミサイルがどのように違うかをよく比較して知っておくことを勧告する」と皮肉ったと伝えている。北朝鮮が打ち上げたのは超大型ロケット砲であり、弾道ミサイルではないと主張している。総理が「国際社会に対する深刻な挑戦」と述べ、弾道ミサイルの発射は国連の安保理決議に違反すると指摘したのに対し、北朝鮮側はこうした批判をかわしたいとの狙いもあるのだろう。それにしても、「間近に落としてやるから、その違いを勉強しておけ」という凄み方が堂に入っている。

   イギリスBBC(30日付・Web版)も「North Korea threatens Japan with ‘real ballistic missile’」(北朝鮮が「本当の弾道ミサイル」を落とすと日本を脅す)との見出しで伝えている=写真=。記事では、北朝鮮側は、安倍総理を「完全な馬鹿者で、政治的小物」と呼び、「写真つき報道を見ておきながら、多連装ロケット砲とミサイルの区別もつかない、史上最も愚かな男、世界唯一のまぬけだ」と罵倒した、と報じている。

   中央日報とBBCの記事から読み取れることは、北朝鮮は日本に向けた新たな発射を示唆 していることだ。単なる脅しではないかもしれない。

⇒1日(日)未明・金沢の天気      くもり      

★その署名が世界を変えるのか

★その署名が世界を変えるのか

   トランプ大統領に相当な決断があったことは想像に難くない。今月23日付のこのブログで、トランプ氏が香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案がアメリカ議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかどうか、「通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。」と書いた。さらに「『金のために民主主義を売ったアメリカ大統領』として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。」とも述べた。

   というのも、トランプ氏はそれまで、「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」(22日付・ロイター通信Web版)と述べていた。記事をストレートに解釈すれば、トランプ氏が中国による香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動すると同じ意味ではないかと読んでいた。 

   民主主義を守るというアメリカ議会の強い政治姿勢を示した法案だけに、トランプ氏にとっては拒否権を行使したら、国内外からの大きな非難に揺れる。その意味で、香港の区議会議員選挙の結果を見計らったうえでの決断(署名)だったのだろう。きょうのアメリカのCNN(Web版)=写真=によると、新法は政府に対し香港の特別な自由が保たれているか毎年検証するよう求めているほか、自由が維持されていないと判断された場合、香港への優遇装置の取り消す。また、香港市民の恣意的な拘束、拷問、自白強要などに関与した人物への渡航制限、民主化を阻害した人物に対する資産凍結などの措置も盛り込まれている。個人への制裁にも及ぶ強烈な内容だ。

   当然、中国政府は怒り心頭だろう。時事通信Web版によると、法成立についてさっそく非難声明を出し、香港や中国の内政に対する著しい干渉であり、「赤裸々な覇権行為」「中国は必ず断固反撃を加え、それで生じる一切の結果はアメリカが負う」と激しく反発している。世界の2大国の対立が経済面、政治面で先鋭化してきた。これがグローバル社会にどう波及するのか。日本の政治はこの事態にどう向き合うのか。まさか、あすも「桜を見る会」なのか。きょうの夕方、北朝鮮は飛翔体を発射したようだ。アメリカと中国、韓国と北朝鮮の混迷がさらに深まる。

⇒28日(木)夜・金沢の天気     くもり

☆ローマ教皇、極東の旅

☆ローマ教皇、極東の旅

   「民主化運動に前例のない地すべり的勝利」とイギリスBBC(26日付・日本語版)は伝えている。24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、政府に批判的な民主派が80%を超える議席を獲得して圧勝した。

   同Web版では、親中派の有力議員を破った21歳から37歳の4人の若い候補者たちを紹介している。ベテラン政治家を800票差で下した21歳の学生は、匿名の脅迫状が送り付けられる中で活動を続け、「きょうの勝利と記録的な投票率は、この壊滅的な状況における香港市民の声をはっきりと反映している」と勝利の喜びを語っていると紹介されている。この記事を読んだだけでも、体を張った選挙だったということが伝わってくる。

   一方で、民主派が圧勝し抗議活動が勢いを増すのを警戒する中国政府は、アメリカ議会が香港人権・民主主義法案を議会上下院で可決したことを受けて、北京に駐在するアメリカ大使を呼んで強く抗議し、トランプ大統領の署名で法案を成立させた場合、報復措置を取ると警告したと報じられている(26日付・NHKニュースWeb版)。中国外務省の次官はアメリカ大使に対し、「法案の成立を阻止し、内政干渉をやめるよう強く求める。さもなければ一切の悪い結果はアメリカが負うことになる」と抗議した(同)。

   アジアに熱風が吹く中、ローマ・カトリック教会の教皇として38年ぶりに日本を訪れたフランシスコ教皇。24日に長崎市の爆心地公園で、同日夜には広島の平和公園でそれぞれスピーチを行った。安倍総理との懇談(25日)では、「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と訴えていた。教皇は核を持つことで戦争を防ぐ「核抑止論」そのものを批判し続けている。総理は、アメリカの「核の傘」に守られた日本の安全保障政策に変わりはないとの見解だ。基本的なすれ違いが見えていた。

   今回の教皇来日でどのような成果があったのだろうか。ただ、目立ったのは、これまでメディアは「ローマ法王」と称していたのに、今回は「教皇」と呼び方を変更したことだ。20日の政府発表で、カトリック関係者の間では教皇の呼び方が普及しているので来日を機に名称を統一したようだ。

   きょう昼前、教皇は羽田空港からバチカンへ帰国の途に就いた。4日間の滞在での教皇のお気持ちはいかばかりだったか。教皇が各国に批准を呼びかけている核兵器禁止条約に日本は参加していない。煮え切らぬお気持ちだったに違いない。むしろ、香港に立ち寄ってみたかったのではないか。82歳、極東の旅はお疲れだったろう。

⇒26日(火)夜・金沢の天気     くもり

★香港のめげない民主主義

★香港のめげない民主主義

   香港の民主主義は生きている。実施さえも危ぶまれていた香港の区議会議員選挙がきのう(24日)予定通り行われ、香港メディアは政府に批判的な立場の民主派が議席の3分の2にあたる300議席を超えると報じている。この様子を、「Hong Kong elections: Pro-democracy group makes big gains.」とイギリスBBC(25日付・Web版)は伝えている。あの騒乱の中で投票率が70%を超えて過去最高となり世界の注目を集めていた。冒頭で述べた言葉は「香港のめげない民主主義」と言い換えてよいかもしれない。

   注目したのは投票率だった。4年に1度行われる香港の区議会議員選挙(18区議会で452議席)は有権者(18歳以上)による直接投票のため民意を反映する選挙と言える。抗議活動が激しさを増しす騒乱状態の中、安全で公正に行えるのかという懸念の声が市民からも上がり、600余ある投票所すべてに重装備の警察官が配置されるなど厳重な警備態勢がとられたようだ。その状況下で、投票率は71.2%と、4年前を24ポイント上回った。香港の有権者は相当の覚悟を持って投票場に足を運んだに違いない。

        もう一つ注目していたのは開票の在り方だ。諸外国で見られる、票のすり替えによる権力側の不正などは香港ではできないシステムのようだ。と言うのも、開票作業はメディアや有権者への公開で行われていて、開票作業の様子を画像で掲載しているメディアもある(25日付・朝日新聞Web版)。余談だが、日本でも開業作業は公開されていて、その様子を双眼鏡でのぞくことも許可されている。日本のメディアは「開披台(かいひだい)調査」と呼び、候補者の得票を先読みする際に使う手法だ。開票作業の公開は民主主義を担保している。

    民主派の躍進で今後、中国政府はどのような手を打ってくるのか。香港の民意がはっきりしたことで、中国政府のあせりは相当であることは想像に難くない。むしろ、これを機会に中国政府が香港の一国二制度を担保し、人民解放軍を引き上げると宣言すれば、中国の国際評価はかなり上がると思うのだが。

⇒25日(月)朝・金沢の天気     あめ

☆政治外交の茶番劇

☆政治外交の茶番劇

    茶番劇とはこのことか。韓国政府はきのう(22日)、破棄を決定していた日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について失効を回避することを決めた。きょう午前0時が期限だったので土壇場での決定だろう。朝刊では各社が「さらなる関係悪化はひとまず避けられた」と述べているが、この決定を評価する読者はいるだろうか。「下手な芝居はもうやめろ」というのが率直な感想ではないだろうか。

    各社の関連ニュースをチェックすると、韓国側は破棄するとした通告を「停止する」と発表したのであって、「撤回する」と言っていない。つまり、輸出管理をめぐる今後の日本と韓国の対話の進展を必要とする「条件付き」の措置なのだ。優遇措置の対象国「ホワイト国」に戻さなければ、停止を撤回すると脅している。言葉遊びのようなことを繰り返している外交では、両国の関係改善につながるはずがない。

    茶番劇になりそうなニュースをもう一つ。アメリカのトランプ大統領は、香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案が議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかとTVメディアから問われ、「香港と立場を共有する必要はあるが、中国の習主席とも立場を共有する必要がある。習主席は友人であり、立派な人物だ」と述べ、明言を避けたと報じられている(22日付・ロイター通信Web版日本語)。

   大統領署名によって法案が成立すれば、中国側が態度を硬化させ通商交渉に影響が出ることは間違いない。逆に、通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。

   ロイターの記事によると、トランプ氏は「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」とし、「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」と述べた。

   記事をストレートに解釈すれば、中国の香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動する、と同じ意味だろう。仮にこうなれば、ホワイトハウスの大茶番劇となる。そして、「金のために民主主義を売ったアメリカ大統領」として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。

⇒23日(土)午後・金沢の天気      はれ

★「安倍一強」を問うならば

★「安倍一強」を問うならば

      連日、総理大臣主催の「桜を見る会」をめぐり、ことしの招待者のうち千人程度が安倍総理からの推薦だったことについて国会で問題になっている。きょう21日は参院内閣委員会で、総理が地元関係者を招いたことは公職選挙法違反に当たるのではないかとの追及があり、菅官房長官は「当たらない」と答弁をしていた。ニュースを見ていて、国会になぜ緊迫感がないのだろうかと正直思う。国会がまるで「お花畑」のようだ。花見の会を国費でやること自体が間違っている。野党は「無意味な桜を見る会なんて金輪際止めろ」となぜ言わないのか、と不思議だ。

  一方で緊迫しているのが香港だ。アメリカ議会上院は、香港での人権尊重や民主主義を支援する「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した(19日)。香港の一国二制度が機能しているかどうかアメリカ政府に毎年の検証を義務付け、人権を犯した中国政府関係者らに制裁を科す内容だ。下院では10月に可決されていて、成立にはトランプ大統領の署名が必要となる。おそらく、中国は猛反発してくるだろう。貿易交渉どころではない、次なる対立のステージに上るのではないかと緊張感が走る。

  日本の国会とアメリカの議会、この違いは何だ。野党が指摘するように、「安倍一強」のせいなのか。もし安倍一強を言うのであれば、このテーマを問うてほしい。安倍総理は中国の習近平国家主席を国賓として来春に招くという段取りで動いている。来月下旬に中国・成都で予定される日中韓サミットの折に北京で習氏と会談して国賓来日を確認するという。

  香港での民主主義の蹂躙、尖閣諸島周辺での中国公船の連日の挑発的な行為などを今の中国の政治姿勢に違和感を持っている日本国民は多い。内閣府による「外交に関する世論調査」(2018年10月)でも、中国に親しみを感じる20.8%、感じないが76.4%である。この状況下で国民は習氏に国賓来日を歓迎するだろうか。国賓として招く目的は何か。これで上記の問題が解決するのだろうか。これこそが安倍一強の姿ではなのだろうか。で、これをなぜ野党が国会で質さないのか。

⇒20日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆続・ 「香港騒乱」の様相

☆続・ 「香港騒乱」の様相

        騒乱状態の香港。アメリカのポンペオ国務長官が、デモ隊と警官隊の激化する衝突について「深刻な懸念」を表明したとメディアが報じている(19日付・共同通信Webニュース)。それによると、ポンペオ氏は香港市民はイギリスからの香港返還(1997年)に際し保障された自由を求めているだけだと指摘し、「中国共産党は約束を守らなければならない」と述べ、香港政府による暴力的対応を支持する中国政府をけん制した。一連の香港発のニュースをチェックしていると、警察によるまるで武力制圧の様相だ。

   香港の騒乱を詳細に報じているイギリスBBCのWebニュース(18日付日本語版)では、警察官が理工大学のキャンパスに入った様子を記者がルポしている。17日午後5時半ごろ、警官隊がキャンパスを制圧しようと攻勢に出た。デモ参加者は、火炎瓶やレンガを投げるなどして抵抗した。双方の衝突が散発的に続き、キャンパス内では火炎瓶による火災が発生した。一部のデモ参加者はキャンパスを出ようとしたが、警官隊の催涙ガスで押し戻した。

   警官隊は17日午後10時を最終期限とし、デモ参加者に降伏を呼びかけ、応じなければ殺傷能力のある武器を使う可能性もあると警告した。すると、多くのデモ参加者は黒い服を脱いでマスクを外し、姿を消した。多くの若者が拘束され、キャンパスには500人以上の若者がとどまっていてる。

   キャンパスに残った若者・学生たちは危険を考慮せず、覚悟を固めているようだという。BBC記者に学生は「もし私が死んだら、私のことを覚えていてほしい」と言った。記者が「そういう事態になると思うか」と聞くと、不安そうに肩をすくめたという。死を覚悟している若者の姿が目に浮かぶ。

   その若者たちを助けようと市民が動いた。けさ19日のNHKニュースによると、警察に包囲され大学にとどまる学生たちを助けようと大勢の市民が大学の周辺に集まった。しかし、警察は強制排除に乗り出し、市民と衝突した。拘束される人が相次いだ。ポンペオ氏が「深刻な懸念」を表明した背景は、保障されたはずの自由がすでに市民から奪われているこの現状に危機感を抱いたのだろう。

⇒19日(火)朝・金沢の天気    くもり

★ 「香港騒乱」の様相

★ 「香港騒乱」の様相

   まさに騒乱の様相だ。香港警察は18日、抗議活動参加者らとのにらみ合いの末、大学に突入したとイギリスBBCのWeb版が伝えている=写真=。150年以上もイギリスの植民地だった香港は、一国二制度の下に中国に返還され、特別行政区となった。表現の自由などの権利も保障されている。デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐってだった。

   逃亡犯条例が中国政府と間で成立すれば、中国に批判的な香港の人物がつくられた容疑で中国側に引き渡される。つまり、表現の自由などが脅かされるのではないかとの懸念が香港の学生や市民の間で高まった。10月に改正案は撤回されたものの、香港政府はデモの参加者にマスクの着用を禁止する緊急状況規則条例「覆面禁止法」を制定した。顔を出させることでデモの過激化を抑圧する効果を狙ったものだろう。中国社会では監視カメラによる顔認証システムの普及していて、個人の情報が警察などで蓄積されていることは知られている。これに反対して逆に学生たちが覆面化・仮面化して、抗議活動が過激化する。まさにパラドックス現象となった。

   衝撃的な映像が日本のテレビメディアでも流れた。警察官が交差点で、近づいてきた黒いマスクのデモ参加者に至近距離で発砲し、命中して倒れる様子だ(今月11日付)。この映像はもちろん世界に流れたであろう。冒頭で「騒乱の様相」と述べた。デモ参加者に対する警察側の発砲は、すでに警察では鎮めることが不可能な状態にあることを示すシンボリックな映像ではないかと読む。次なるステージは、軍による介入だろう。そう思案していたところに、別のニュースが流れてきた。香港に駐留する中国の人民解放軍の軍人らが、デモの学生らが路上に設置した障害物を撤去する活動に参加した(16日付・朝日新聞Web版)。軍の駐留部隊が動くのは初めてで、軍隊の存在を示し、デモ隊を牽制する狙いがあるのではないか、と報じられている。

        BBCの記事は生々しい。「Large fires broke out at entrances to the Polytechnic University (PolyU), where protesters hurled petrol bombs and shot arrows from behind barricades.Officers earlier warned they could use live ammunition if protesters did not stop attacking them using such weapons.」(ポリテクニック大学(PolyU)の入り口で大規模な火災が発生し、抗議参加者は警察にガソリン爆弾を投げつけ、バリケードの後ろから矢を放った。警官は以前、抗議者がそのような武器を使用して攻撃するのを止めなかった場合、実弾を使用できると警告していた)。先が読めない、騒乱の様相だ。

⇒18日(月)午前・金沢の天気    はれ