★「どぶろく」と「シャルドネ」

★「どぶろく」と「シャルドネ」

    きょう(17日)金沢の友人たちと朝から「酒の秘境」をめぐる旅をした。秘境の意味はまだ一般に知られていない場所という意味ではある。まずは日本酒のルーツをめぐる旅から始めた。

    最初に訪れたのは「雨の宮古墳群」(中能登町)。国指定史跡である雨の宮古墳群は、眉丈山(びじょうざん)の尾根筋につくられた古墳群で、地元では古くから「雨乞いの聖地」として知られた。尾根を切り開いて造られた古墳は前方後方墳(1号墳)と前方後円墳(2号墳)を中心に全部で36基が点在している。全長64㍍の1号墳は、4世紀から5世紀の築造とされ、古墳を覆う葺石(ふきいし)も当時ままの姿。まるでエジプトのピラミッドのようだ。山頂にあるこの古墳からは周囲の田んぼが見渡すことができる。この地域は能登半島のコメの産地でもある。1987年に古墳近くの遺跡から炭化した「おにぎりの化石」が出土し、2千年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりとして当時話題になった。

    コメの恵みに感謝する神事も営まれてきた。同町にある天日陰比咩(あめひかげひめ)神社は稲作の実りに感謝する新嘗祭(にいなめさい、毎年12月5日)で同社が造った「どぶろく」をお供えし、お下がりとして氏子らに振る舞っている。今回、同神社を参拝してお神酒としてどぶろくをいただいた。蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。神社の説明によると、どぶろくを造る神社は全国で30社あり、石川県内では3社とも同町にある。コメ造りと酒造りが連綿と続く地域である。

    次に能登半島をさらに北上して、穴水町に。この辺り一帯は赤土(酸性土壌)だ。ブドウ畑に適さないと言われてきたが、畑に穴水湾で養殖されるカキの殻を天日干しにしてブドウ畑に入れることで土壌が中和され、ミネラルが豊富な畑となり、良質なブドウの栽培に成功している。白ワインの「シャルドネ」、赤ワインの「ヤマソービニオン」は国内のワインコンクールでグランプリに輝いている。さっそく、予約してあったかき料理の店に入った。けさ水揚げしたカキを炭火で焼く。プリプリとしたカキの身はシャルドネにとても合う。

    穴水湾ではカキのほかにボラが獲れる。同町の寿司屋では、ボラの卵巣を塩漬けにして陰干した珍味のカラスミが楽しめる。このカラスミは柔らかく、まるでチーズのような濃厚な風味なのである。これもシャルドネと合う。そのような話をしながら、焼きガキとシャルドネの「マリアージュ」を楽しみながら旅のクライマックは終了したのだった。

⇒17日(日)夜・金沢の天気     はれ

☆SDGsは「三方よし」の社会循環

☆SDGsは「三方よし」の社会循環

         国連の持続可能な開発目標(SDGs)を目指す自治体など集まる「第1回地方創生SDGs国際フォーラム」がきょう(13日)東京・千代田区の日経ホールで開催された=写真=。内閣府の「SDGs未来都市」に採択された全国の29自治体の関係者や研究者、NPO関係者ら600人が参加する初めての集会でもあった。新たな価値観の共有の場でもある。その意味でフォーラムで飛び交った言葉は実に新鮮だった。そのいくつかを紹介する。

   基調講演に立った神奈川県の黒岩祐治知事。「昨年の夏に鎌倉市由比ガ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されました。これを『クジラからのメッセージ』として真摯に受け止め、持続可能な社会を目指すSDGsの具体的な取組として、深刻化する海洋汚染、特にマイクロプラスチック問題に取り組んでいます。それが『かながわプラごみゼロ宣言』です」「新素材開発ベンチャー企業と連携して、石灰石を主成分とし、紙とプラの代替となる革新的新素材の開発を進めています。アップサイクルの実証事業です」  

    KDDI代表取締役会長の田中孝司氏の話には妙に納得した。「通信事業の社員には『つなげたい』という意識が強いんです。電波の届かない不感地はもちろん、世界中のモノとモノとつなげたい、多様な人たちをつなげたい。コネクティビティ(相互接続)は通信事業の社員のDNAなんです」

   山口県宇部市はSDGs未来都市に採択されている。久保田后子市長は「ICTやイノベーションを切り口にして、起業家やスタートアップ企業支援に力を入れています」と。地場の金融機関と連携し、セミナーや創業コンテストなどに積極的に取り組んでいる。その成果があって、年40件以上の起業件数に。久保田市長は「ICTクリエイティブ人財の育成にチカラを入れています。宇部は『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明氏を育てたまちなんです。宇部から全国区のスタートアップ企業を輩出するのが私の願いです」と。

   今回のフォーラムでいろいろな立場の人のSDGsに対する想いを聴いた。一つ感じたことは、話し手は楽しそうに熱く語っているのが印象的だった。さらに思ったのは、SDGsは古くから伝えられる近江商人の「三方よし」の心得ではないだろうか。これは私が知る事例なのだが、石川県小松市に腕のよい造り酒屋の杜氏がいる。買い手が満足してブランド化している。造り酒屋の近くには有機で造る酒米の農家の人たちがいる。造り酒屋は酒米を相場より高く買う。売り手、買い手、作り手がそれぞれに納得して利を得る。「三方よし」のモデルのような社会循環ではある。SDGsは日本に根付く「三方よし」の和の精神と合致するのではないか。楽しそうに語る講師の人たちを見てそんなことを考えた。

⇒13日(水)夜・金沢の天気     あめ

★トランプの米朝会談は本気か

★トランプの米朝会談は本気か

      アメリカのトランプ大統領は北朝鮮と本気で向き合っているのだろうかと気かかるところだ。大統領が先日(2月5日)に行った一般教書演説(State of the Union Address)の中から北朝鮮関連の演説を読み解いてみたい。

   そもそも一般教書演説は、行政府のトップである大統領が立法府である議会に対して、これまで1年間の国家の状況(State of the Union)を議会に報告し、これからの1年間で取り組む政策の立法化を勧告する場である。なので、一般教書演説で位置づけが今後の在り様を左右する。では、北朝鮮問題をトランプ大統領はどう演説したのか。ホワイトハウスのホームページで掲載されている一般教書演説の全文から以下抜粋。

「As part of a bold new diplomacy, we continue our historic push for peace on the Korean Peninsula.  Our hostages have come home, nuclear testing has stopped, and there has not been a missile launch in more than 15 months.  If I had not been elected President of the United States, we would right now, in my opinion, be in a major war with North Korea. 」(大胆な新たな外交の一環として、朝鮮半島の平和に向けた歴史的な行動を進める。アメリカの人質は帰国し、北朝鮮は核実験を中止し、15ヵ月以上、ミサイルを発射していない。私が大統領に選ばれていなかったら、これは私の意見だが、われわれは北朝鮮と戦争になっていただろう。)
「Much work remains to be done, but my relationship with Kim Jong Un is a good one.  Chairman Kim and I will meet again on February 27th and 28th in Vietnam. 」 (多くの仕事が残されている。しかし、私と金正恩委員長との関係は良好だ。金委員長との2回目の首脳会談は2月27日と28日にベトナムで開く。)

    演説でトランプ大統領の自信あふれている。私が大統領になっていなかったら、北朝鮮と戦争になっていただろうと強調する当たりは、トランプ外交の成果を振りかざしているようにも感じる。最期のフレーズで2月27日と28日にベトナムで米朝首脳会談を開くと明言した。

    では、なぜベトナムでの開催なのか、以下推測だ。おそらく「和平のモデル」をトランプ大統領は金委員長に現地で示したいのではないだろうか。1961年にケネディ大統領が就任して、南ベトナムに肩入れを本格化し、75年のサイゴン陥落まで、アメリカとベトナムは壮絶な戦いを繰り広げた。その後、アメリカはベトナムの経済開放を受けて貿易面、さらに最近では武器輸出など軍事協力も行っている。背景には中国の海洋進出などがある。トランプ大統領とすれば、「かつて戦火を交えたベトナムとはこんなに仲良くやっている。北朝鮮ともうまくやれるよ」と金委員長を説得する場としてベトナムにしたのではないか。(※写真は「ホワイトハウス」のHPより)

⇒11日(祝)朝・金沢の天気   くもり

☆ボトムアップ型「イフガオの民」

☆ボトムアップ型「イフガオの民」

   先日(2月3、4日)このブログでも何度も取り上げているフィリピン・ルソン島のイフガオ棚田の研究者たちを招いたワークショップが能登空港ターミナルビルで開催された。主催はイフガオと能登半島の世界農業遺産(GIAHS)を通じた交流を企画運営する「イフガオGIAHS支援協議会」(金沢大学、県立大学、能登の9市町、県、佐渡市、オブザーバーとしてJICA北陸、北陸農政局)。双方の研究者を招いた国際ワークショップは今回で5回目となる。イフガオ側からの研究者の発言を聞いていて、ここ数年のある変化を感じた。

   ワークショップの基調報告、大西秀之・同志社女子大学教授の講演は示唆に富んでいた。「生きている遺産としてのイフガオの棚田群:地域社会を基盤とする文化的景観保全の重要性」と題した講演の要旨は以下。

   ルソン島のコルディリエラ山脈の2000㍍級の山岳地帯の少数民族はスペイン植民地時代を通して独自性を維持してきた。コルディリエラの棚田は「天国への階段」「世界の八番目の不思議」といわれる景観であり、1995年にユネスコ世界文化遺産に登録された。景観と伝統習慣はイフガオの先住民の知恵の中に持続可能性の鍵があり、まさに「生きている遺産(Living Heritage)」と言える。棚田の上から下に水を送る水路が張り巡らされ灌漑システムは人類の知恵である。しかし、市場経済との接合が加速し、現金収入を求める若年層の都市部への流出が止まらない。後継者不足による棚田の荒廃、全体の3割が休耕田と推測される。「経済か」「景観か」という単純な二者択一を迫る問いには限界があり、現地が無理なく持続的に行える取り組みが必要不可欠だろう。イフガオにはボトムアップ型の対応、つまり地域住民を中核とする合意形成がある。植民地ではなく、全ての民が棚田のオーナーとして田んぼづくりに関わってきた歴史を有するイフガオの民の知恵に期待したい。
          
        大西秀教授が述べたように、歴史上で独自性を保ってきた山岳地帯の民である。日本人の多くは地域は少子高齢化で廃れると思い込んでいる。ところが、イフガオでは農業離れによる棚田の存続という問題をグローバル化(NGOとの連携など)をとおして、国境を越えて日本やアジアや中東、欧米と結ばれるネットワークをつくることで問題解決しようと外に向けて努力している。世界農業遺産をテーマとした能登との交流もその一環なのだ。それに参加する人たちは多様だ。性別、年齢、職業、学歴が異なる多様な地域住民の主体的な取り組みが特徴である。ボトムアップ型の対応、つまり地域住民を中核とする合意形成がしっかりしているとの印象だ。

   ワークショップで発表した国立イフガオ大学の研究者が地域活性化策を述べた。イフガオで求められることは、「農場・製品デモ」「米酒製造の商品化」「先住民の住宅保全計画」を着実に進めることだ、と。イフガオで収穫される米は食糧としてだけではなく、自家醸造の「ライスワイン」として各家庭で消費されている。そのライスワインの品質と瓶詰の商品ラベルを統一して共同出荷すればイフガオのビジネスになり、すでにその動きが出ている。地域資源の活用が若者の農業離れにブレーキをかける可能性がある、と述べた。そのため 「労働力の開発」「能力構築」の仕組みづくり、プラットホームをつくることなど、「やることがいっぱいある」と研究者は熱く語った。

   2014年に能登とイフガオの交流がJICA事業の一環としてスタートした。現地で人と会い、壮大な棚田を見上げて、「イフガオはいつまで持つのか」が第一印象だった。「ところがどっこい」である。女性たちがライスワインの共同販売を手掛けたり、若者たちが特産の黒ブタのブランド化に動いたりと、地域に根差したさまざまなアクティブな光景が目立つようになってきた。それも、トップダウン型ではなく、ボトムアップ型の動きなのである。イフガオの人々は「ボトムアップ民族」ではないかと考察している。

⇒9日(土)朝・金沢の天気     ゆき

★「しつけ」と児童虐待

★「しつけ」と児童虐待

   昨年1年間、児童虐待の疑いがあるとして全国の警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもの数が8万人余りになったとニュースになっている。前年比で1万4600人増と22%も増えて過去最多だという。

   千葉県の野田市で小学4年生の女の子が親から虐待を受けて死亡した事件、実に痛ましい。小学校のアンケートで父親からの暴力を訴えていた。児童相談所は、女の子を両親のもとに戻したあとの去年3月下旬以降、一度も家族と連絡を取っていなかったようだ。昨年も東京・目黒区で、5歳の女の子が虐待を受け死亡した事件があった。女の子は「もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからきょうよりもっともっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」と書き残していた。児童相談所は家庭訪問をしたが女児との面会を拒否された。父親は「しつけ」と称して虐待を繰り返していた。 

   この2つの事件を報じるマスメディアの論調は児童相談所(児相)の手落ちを強調する傾向にあるが、警察が児相に通告した虐待を受けた子どもが8万人にも上る状況では児相だけの責任では済まされないだろう。日本では「しつけ」と虐待の線引きがあいまいであるがゆえに虐待が見逃されケースが多いのではないか。児童虐待を単なる家庭の問題としではなく、社会犯罪と明確に位置付ける必要があるだろう。

   アメリカは明確化している。アメリカの在ナッシュビル日本総領事館のホームページに「安全情報」の中の「米国での生活上の注意事項」に掲載されている。日本で当たり前の親子入浴ですからアメリカでは虐待を疑われる。事例が紹介されている。「某日、幼稚園に通う少女が、父親と一緒にお風呂に入るのがいやだと幼稚園の作文に書いた」、すると「幼稚園の先生が、児童虐待(性的暴力)容疑者として父親を州政府の児童保護局に通報し、調査活動が行われた」。また、「某日、乳児をお風呂に入れている写真を近所のドラッグストアで現像に出した」、すると「ドラッグストアが児童に対する虐待容疑で児童保護局に通報し、児童虐待(性的虐待)容疑で調査活動が行われた」。

    日本とアメリカの文化による認識の違いで、日本では許容されることでも、アメリカでは犯罪として扱われる事例だ。入浴のほかにも、言うことを聞かない子どもの頭を人前でたたいたり、買い物をするときに、乳幼児を車に置いて離れたりすることなども、虐待の容疑で親の身柄が拘束されることもある。社会問題化している児童虐待から子どもの命を守るには、児相に捜査機関としての役割を付与することも必要なのではないだろうか。児相に捜査権があれば、「あの家庭ちょっと様子おかしい」と察した近所からの通報も得られるのではないか。これは子どもの命を守る「善意の通報」である。

⇒7日(木)午後・金沢の天気     くもり

☆北陸の「春一番」

☆北陸の「春一番」

   金沢地方気象台はきょう、北陸地方で「春一番」が吹いたと発表し、全国ニュースにもなっている。北陸地方の春一番は統計を取り始めた1999年以降、最も早いという。気象台によると、昨年は2月14日で、10日も早い観測だ。そもそも、「春一番」は立春から春分までの最高気温が前の日を上回る暖かい日に、風速10㍍以上の南風を複数の地点で観測した場合に出される。きょうが立春に当たるので気象台も「一番だ」と勢いよく発表したのだろう。

   確かに、石川県内は昨夜から暖かい南からの強い風が吹いていた。気象台によると、午前11時までの最大瞬間風速は輪島市三井町で23.1㍍、金沢で22.8㍍だ。気温も午前0時すぎに金沢で18.5度だった。4月下旬並みだ。ただ、きょうの日中は金沢で午後1時に10度に落ちたが、それでも3月中ごろの暖かさ。この高気温で庭の積雪も一気に融けた。北陸だけでなく、関東や東海の各地では20度を超える5月中旬並みの暖かさとなっているようだ。

   これも「春一番」だろうか。旧正月の春節に合わせた中国人観光客が金沢にも多く訪れ、きょう歩いた兼六園や片町の繁華街は中国語が飛び交っていた。訪日ビザの発給要件が緩和されたことも、中国からの旅行客が増えた要因となっているようだ。また、貿易摩擦をめぐるアメリカとの対立で、旅行先としてアメリカを敬遠して日本を選ぶ傾向が強まっているとも報じられている。

   「爆買い」で知られる中国人旅行者だが、最近は少々変化があるようだ。地元テレビ局のニュースにもなっていたが、茶屋街で芸妓の三味線や踊りを見たりと体験型のツアーが人気だとか。ただ、この傾向はこれからも続くのどうか。中国経済の下ぶれが顕著になっているからだ。日立やパナソニックなど大手電機メーカーは相次いで、中国向けの産業用や家電の販売減少が見込まれるとして、ことし3月までの1年間の売上と営業利益を下方修正している。(※写真は、インバウンドの観光客でにぎわう兼六園)

⇒4日(月)夜・金沢の天気   はれ

★米朝首脳会談がダナンで、ならば

★米朝首脳会談がダナンで、ならば

   次なるアメリカと北朝鮮の首脳会談が気になるところ。トランプ大統領が5日の一般教書演説で再会談の日程や場所を発表する可能性があるとも報じられている。2日付の韓国の中央日報Web(日本版)は日朝首脳会談に関連する社説を掲載している。以下引用。

    「米国が韓半島(朝鮮半島)で戦争を終える終戦宣言の意志に言及した。ビーガン北朝鮮担当特別代表の言葉だ。ビーガン代表は一昨日、米カリフォルニア州スタンフォード大ウォルター・H・ ショレンスティン・アジア太平洋研究センターが主催した講演で『トランプ大統領は朝鮮戦争を終わらせる準備ができている』とし『北朝鮮侵攻や政権転覆を追求しないはず』と明らかにした。また『最後の核兵器が北朝鮮を離れて制裁が解除されれば、大使館に国旗が掲げられ、平和条約が締結されるだろう』と述べた。ビーガン代表が今月末に開かれる見通しの2回目の米朝首脳会談を控え、米国の立場を公開したとみられる。」

    北朝鮮の核兵器が撤廃されれば、アメリカと北朝鮮の間で平和条約が締結される可能性があるとの内容だ。この文脈は、米朝首脳会談ではトランプ大統領は金正恩委員長に対し核兵器廃絶と引き換えに平和条約を結ぶことを明言する。同紙はこうも述べている。

   「しかし今回の交渉が失敗すれば『コンティンジェンシープラン(非常計画)』が避けられないとビーガン代表は警告した。コンティンジェンシープランとは軍事オプションを含む米国の積極的な対応を意味する。 敗すれば『コンティンジェンシープラン(非常計画)』が避けられないとビーガン代表は警告した。コンティンジェンシープランとは軍事オプションを含む米国の積極的な対応を意味する。」

    そのまま読めば、トランプ大統領は軍事オプションをちらつかせながら、金委員長に対し核兵器廃絶を迫るのではないか、とイメージを膨らませてしまう。首脳会談の場所は、ベトナムのダナンで開かれることが有力視されていている(3日付・NHKニュース)。ダナンはハノイとサイゴンのちょうど中間地点にあり、2017年11月にアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議が開かれている=写真、外務省ホームページより=。ただ、「ベトナム戦争」の記憶が残る場所だけに、トランプ大統領は金委員長に対し高圧的に核兵器廃絶を迫ったりはできないのではないか、と考えたりもする。

⇒3日(日)夜・金沢の天気   あめ

☆外国籍児童から「大競争時代の雲」を測る

☆外国籍児童から「大競争時代の雲」を測る

        金沢市内の教育者の方からメールをいただいた。「…来年度は、外国籍児童が35名になる予定で、学校としても対応に苦慮しております。学習内容の面でも生活指導面でも、日本語が通じず、かなり大変です。学生ボランティアや通訳などの人材がいてくださると助かるのですが・・。ドラえもんの『翻訳コンニャク』があればなぁと夢のようなことを考えてしまいます。良いアイデアがあれば、教えてください。」

   この教育者が所属する小学校は6学年で500人の児童がいる。その中に外国籍の児童が新年度から35人になると、言語の問題から学習や生活指導面での教育現場の指導が行き届かなくなり、せめてドラえもんの『翻訳コンニャク』があればと願う気持ちがひしひしと伝わってくる。ちなみに、翻訳コンニャクはドラえもんのひみつ道具で、これを食べると、自分の発する言葉が相手に合わせた言語に翻訳される。相手に食べてもらえば相手の発する言葉が自分の言語に翻訳される。いわば多言語コミュケーションツールだ。言語だけに止まらない。宗教上の価値観の違いから給食の食材の制限などがあったりと教育現場では多様な対応が求められる。

   「海外からの有能な技術者を受け入れるチャンスがめぐってきた」。石川県内の自治体の首長の言葉が印象的だった。この地域にはすでに3700人の外国人労働者が働いていて、今後そのニーズはさらに強まる。外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法(入管法)が今年4月から施行される。人手不足に悩む14業種、(介護、農業、材料産業、産業機械、エレクトロニクスおよび電気機器、建設、自動車整備、空港の地上処理・航空機のメンテナンスなど)を対象に、日常会話の日本語と簡単な技能試験に合格すれば、単純労働でも最長5年間の就労を認める(特定技能1号)。さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人は長期就労も可能になり、家族の帯同も認める(同2号)。地域産業の発展させるためにどう有能な外国人労働者を受け入れ、そして定住してもらうか、首長は次ぎの一手を考えているのだという。

   個人的に尋ねた。「その秘策は何ですか」と。有能な外国人労働者を雇用すると妻子を伴ってくるケースが多くなるのは予想される。その子どもたちの教育環境を整えることで、地域企業は海外からの優秀な技術者をスカウトしやすくなり、それを売りにもできるというのだ。海外から技術者を呼び込むことはすでに、国際的な大競争の時代に入っている、その決め手の一つが子どもたちの教育環境だという。さらに、「どのような教育環境ですか、もっと具体的に」と問うと。「そうですね、インターナショナルスクールのような」と。なるほどと腑に落ちた。

    教育者からのメール、そして首長の話はつい先日のことである。それぞれのテーマは異なるが、外国籍児童をめぐる現状と可能性という点でテーマが一直線でつながった。外国籍児童をどう扱うかは、地域のサバイバルをかけた大競争時代のテーマとして広がる、ということだ。新たなキーワードは「地域にインターナショナルスクールを」ということか。(※写真は、金沢21世紀美術館の「雲を測る男」)

⇒1日(金)夜・金沢の天気     くもり

★グランドスラム広告

★グランドスラム広告

   全豪オ-プンの女子シングルスで、全米オープンに続き4大大会の2連勝を遂げた大坂なおみ選手が、世界ランキングで男女を通じてアジア勢初の1位に輝き、日本、そして世界を沸かせている。まだ21歳、若きテニスの世界女王の誕生だ。29日付の全国紙の朝刊で、大坂選手のスポンサー日清食品の全面広告が目立った。

   「グランドスラム連覇 おめでとう!!」「歴史的快挙!すごすぎます!!」「世界ランキング1位!!!」「GOOD JOB!!NAOMI!!!」「謙虚さも世界一」「新女王誕生!これからもずっと応援します。」などお祝いのメッセージが躍っている=写真=。 大坂選手とスポンサー契約を結ぶ日清食品のアニメーション動画の広告で、大阪選手の肌が実際より白く描かれているとの批判が起き、同社は23日夜にアニメ動画を削除したばかり。それだけに、今回の全面広告は日清食品の商魂のたくましさを見せつけた。

   さあ、次は全仏オープンだ。5月下旬からパリのスタッド・ローラン・ギャロスで開催される。4大大会で唯一のクレーコートによる試合で、粘土と赤土でつくられたコートは球足が遅くなるため、選手の体力や精神力が試されると言われる。その次が6月下旬から7月にかけて行われる全英オープン(ウィンブルドン大会)。ロンドンのオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブの全面グラスコート(芝コート)だ。芝のコートは球が速く低く弾む特性があり、選手の得手不得手がはっきり出るとされる。開催場所のテニスクラブの規定で、選手は白いテニスウェアを身につけなければならない。

   大阪選手のグランドスラム4連覇はなるのか。日清の次なるグランドスラム広告も見てみたい。それにしても、全豪オ-プン優勝翌日の会見で記者から大会を終えて食べたいものは何ですかと問われた大坂選手は「カツ丼、アゲイン」と全米オープン優勝のときと同じメニューをあげて、記者たちの笑いを誘ったと報じられている。日清とすれば、「カップヌードル」、せめて「ラーメン」と答えてスポンサーの気持ちを忖度してほしかったと思っているに違いない。蛇足だが。

⇒30日(水)朝・金沢の天気   はれ  

☆施政方針演説の地方創生モデル「春蘭の里」

☆施政方針演説の地方創生モデル「春蘭の里」

   きのう(28日)第198回通常国会で安倍総理は施政方針演説の中で、能登半島の農家民宿で組織する「春蘭(しゅんらん)の里」(能登町)のことを述べた。「地方創生」の項目の中で、「田植え、稲刈り。石川県能登町にある50軒ほどの農家民宿には、直近で1万3千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、アメリカ、フランス、イタリア。イスラエルなど、20ヵ国以上から外国人観光客も集まります。」と例に挙げ、「観光立国によって全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれた」と。

   「春蘭の里」が施政方針演説の中で取り上げられるまでに一つの大きな転機があった。世界の地域おこしを目指す草の根活動を表彰するイギリスBBCの番組「ワールドチャレンジ」。世界中から毎年600以上のプロジェクトの応募がある。最優秀賞(1組)には賞金2万ドル、優秀賞には1万ドルが贈られる。2011年のこの企画に能登半島からエントリーした『春蘭の里 持続可能な田舎のコミュニティ~日本~』が最終選考(12組)に残った。日本の団体が最終選考に残ったのは初めてだった。惜しくも結果は4位だったが、地元はいまでも「BBCに認められた」と鼻息が荒い。
        
         ちなみに、他の11組は、ナイル川の農業廃棄物を使って高級紙製品を作るエジプトの非営利企業や、ニューヨークのビルの屋上スペースで本格的な農業を行う取り組み、パラグアイの先住民と企業が協力して熱帯雨林でハープティーを育てる取り組みなどが選ばれていた。

   春蘭の里は50の農家民宿が実行委員会をつくって、インバウンド観光の里山ツアーや体験型の修学旅行の受けれを積極的に行っている。驚いたのは、BBCに取り上げられてからというもの、実行委員会の役員たちの名刺の裏は英語表記に、そして英語に堪能な若いスタッフも入れて、民宿経営の人たちは自動翻訳機を携え、ビジネスの「国際化」を地で行っている。
   
   春蘭の里がBBC放送にエントリーしたのは、突飛な話ではない。前年の2010年10月、名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の公認エクスカーション(石川コース)では、世界17ヵ国の研究者や環境NGO(非政府組織)メンバーら50人が参加し、春欄の里でワークショップを繰り広げた。そして翌年2011年6月、北京での国連食糧農業機関の会議で「能登の里山里海」が世界農業遺産(GIAHS)に認証され、能登にはある意味での世界とつながる大きなチャンスが訪れた。春蘭の里はこの機会を見逃さずにエントリーしたのだった。

   チャンスを逃さず、グローバルに挑む。能登半島の小さな集落の壮大なチャレンジではある。それを「地方創生」のモデル事例として政府も見逃さなかった。(※写真=「春蘭の里」には世界から日本の里山を見学に訪れる。左はリーダーの多田喜一郎氏)

⇒29日(火)朝・金沢の天気     ゆき