☆続・「ポスト・コロナ」を読む

☆続・「ポスト・コロナ」を読む

    前回(17日付)のブログで「国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志があってもよい」と書いた。すると、ブログを読んだ知人からさっそくメールがあった。「ということは、宇野さんは志が高いから、10万円を受け取らないんだよね(笑)」と。返答に窮したが、こう返信した。「志は半ばなので10万円は受け取ります。お金は循環させ日本経済の復興に寄与します。その一部は『ふるさと納税』に回し、返礼品に能登牛をお願いすることにします。窮する地方財政と需要減に陥っている畜産農家のお役に立ちたい。肉はすき焼きにして巣ごもり家族の融和をはかります(苦笑)」

   投資より内部留保、有事を想定した日本型経営戦略

   16日付「☆『ポスト・コロナ』の世界を読む」の続き。IMF調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミックと世界経済について厳しいシナリオも描いている。「世界的流行が今年後半に勢いを失わず、感染拡大防止措置が長引き、金融環境が悪化し、グローバルなサプライチェーンがさらに崩壊する可能性もある」(IMF公式ホ-ムページ)

    2008年のリーマンショックはアメリカの投資銀行の破綻がきっかけで連鎖的に世界規模の金融危機が発生し他産業にも波及した構図だ。しかし、今回のパンデミックでは国内外の「鎖国」政策でエアライン、鉄道を始め旅行業、ホテル・旅館業、製造業、地域の飲食店にいたるまでさまざま産業が痛手を被っている。まさにコロナ恐慌だ。

   国際線の9割、国内線の3割を減便を余儀なくされたANAホールディングスが日本政策投資銀行などに1兆3000億円規模の融資枠設定を要請していると報じられた(4月3日付・日経ビジネスWeb版)。定期航空協会のプレスリリース(4月9日付)によると、加盟各社の減収規模はことし2月から5月の4ヵ月間で全体で5000億円が見込まれる、としている。日本の航空業界にとって大打撃だ。ANAが金策に走るのも当然だろう。ところが、ANAの動きに比べ、JALは表立った融資に向けた動きなど報じられていない。

   そこで2019年3月期の有利子負債と利益余剰金(内部留保)を調べてみると理解ができた。ANAは負債7704億円に対し内部留保が5483億円と負債が上回る。JALは負債1368億円に対し内部留保が8225億円もあり、JALは資金調達に余裕があるのだ。ANAは政府目標である訪日4000万人達成に歩調を合わせ、機体を2017年294機から22年335機にするなど積極的に投資を続けてきた。一方、JALは日航機墜落事故(1985年、520人死亡)と経営破綻(2010年、負債2兆3200億円)という2つの十字架を背負い、この10年ひたすら内部留保を増やして財務体質の強化に邁進してきた。

   たとえるなら、ANAはアメリカ型経営、JALは日本型経営、と言えるかもしれない。アメリカ型は内部留保に慎重だ。むしろ、企業の成長戦略として株主への利益還元とさらなる投資を指向する。逆に、日本型は、債務超過に陥ると日本の銀行の融資が受けにくくなるという背景もあるが、今回のパンデミックや震災、あるいは大事故などの有事を想定して内部留保の蓄積を指向する。果たしてポスト・コロナの企業戦略はどうあるべきなのだろうか。

⇒18日(土)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★一律10万円を受けないという国難の選択肢

★一律10万円を受けないという国難の選択肢

           「国難とも言うべき事態を乗り越えるため、日本全体が一丸となって取り組んでいくしかない」。安倍総理は昨夜午後8時17分から、総理官邸で新型コロナウイルスの対策本部会合を開き、国内のすべての都道府県に緊急事態を宣言した。これによって各県の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は5月6日まで。GW中に人の移動を全国一斉に抑える狙いがある。海外のようなロックダウン(都市封鎖)はしない(16日付・共同通信Web版)。

   今回の宣言の柱は2つ。感染者が急増する石川県と北海道、京都府、愛知県など6道府県と7日に発令した東京、大阪など7都府県の合わせて13都道府県を「特定警戒」のエリアと位置づけ、重点的に対策を進める。また、減収となった世帯に限定した30万円の給付金はやめ、所得制限を設けずに全国民に一律10万円を給付することで再調整する。その理由は、緊急事態宣言を全国に拡大することで、行動が制限される全ての国民から協力を得るため、としている。いわば私権制限にともなう協力金のようなカタチだ。

   今回の緊急事態宣言の率直な印象。「卵が先か、ニワトリが先か」の論議ではないが、収入減の理由付けなど手続きがややこしそうだと不評を買っていた30万円給付を一律10万円にシフトさせるために、あえて全国に緊急事態宣言を拡大したのではないかと思えてならない。国内の感染者数にはかなりのばらつきがある。岩手はゼロ、鳥取は1、徳島3、鹿児島4などとなっている。ここに緊急事態宣言の網をかけてもよいものだろうか。

   岩手県庁公式ホームページをチェックすると、石川啄木祭短歌大会(5月3日・盛岡市)や日本ワインフェスティバル花巻大迫2020(5月30、31日・花巻市)といった大型イベントが次々と中止になっている。おそらく、首都圏など県外からの感染者には来てほしくないという防戦の態勢に入っている。緊急事態宣言でさらにそれを徹底できる。

   それにしても10万円を国民1億2595万人(総務省統計・3月1日現在)に一律給付すれば、ざっと12兆5950億円だ。さっそく、麻生財務大臣は、一方的に支給するのではなく「要望される方、手を挙げる方に配る」と述べた(17日付・共同通信Web版)。個人的にはこの案に賛成だ。必要な人、家族が近くの役所に給付を申請すればよい。 国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志(こころざし)があってもよい。ただ、国からのマスクは受け取る。

⇒17日(金)午後・金沢の天気   はれ

☆「ポスト・コロナ」を読む

☆「ポスト・コロナ」を読む

   きのうのブログで紹介したIMF発表の世界経済見通しに関する調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミック終息後の世界経済の動きや国際関係について示唆に富んでいる。

            安全性が担保されたツーリズムへの転換

   たとえばこの一文。「今回は影響を免れる国のない、真にグローバルな危機だ。観光業、旅行業、ホスピタリティ産業、娯楽産業などに成長を依存している国々は、とりわけ大きな打撃を受けている。新興市場国と発展途上国はそれ以外の課題にも直面する。比較的脆弱な医療システム、支援策のための財政余地が限られたなかで危機への対応を迫られる一方、世界的にリスク選好が弱まるなかで先例のない額の資本逆流が発生し、通貨圧力にもさらされている。しかも複数の国が、経済成長の停滞と高水準の債務という脆弱な状態で今回の危機に突入した。」(IMF公式ホームページ日本語)

   この現象を自分なり解釈すると、前半は文字通り、観光産業に依存している国や地域はすでに大きな打撃に、そして後半は発展途上国における経済破綻と大量の難民発生の可能性を示唆しているのではないか。「ポスト・コロナ」の現実世界が見えて背筋が寒くなる。

   観光産業が柱の一つである金沢も例外ではない。金沢港に「クルーズターミナル」がこの春完成した=写真=。3階建ての建物で乗船待合室だけでなく、レストランや展望デッキ、会議室、宿泊施設などが入る。石川県が80億円の予算を投じて完成させた「海の玄関口」だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年は54本のクルーズ船が寄港する予定だったが、すでにイギリスやイタリアの客船などキャンセルが相次いでいる。当初4月4日オープンだったが営業開始の目途もたっていない。そもそも、世界旅行というクルーズ船観光の業態そのものが持つのかどうか。

   ただ、人というのは忘れっぽい。ポスト・コロナが定着すれば、抑えられていた旅行熱が再び高まるのではないだろうか。もちろん、そのときは今回の公衆衛生上の教訓が制度化され、より安全が担保されたクルーズ船運航となっていることが前提であることは言うまでもない。

⇒16日(木)午前・金沢の天気     はれ

★コロナ恐慌 経済損失9兆㌦の衝撃

★コロナ恐慌 経済損失9兆㌦の衝撃

   金沢市内のデパートが臨時休業を始めた。正月休みなどと状況が違って、問題は再開の見通しは立っていないということだ。市内中心部の香林坊、日銀金沢支店と道路を隔て向き合っている「香林坊大和」=写真・上、左側の建物=はきのう14日から臨時休業に入った。きょうからはもう一つの市内中心部の武蔵にある「めいてつ・エムザ」が休業に入る=写真・中=。それぞれの地下の食品売り場は時間を短縮して営業を続けるものの、市内の中心部にあるデパートが臨時休業すると、見慣れた繁華街だけに心にぽっかりと穴が開いたような気がする。

   臨時休業は新型コロナウイルスの感染拡大で、13日に石川県が独自の緊急事態宣言を出したことに応じたもの。きのうは金沢市など県内で感染による死者が3人も出て全国ニュースになった。臨時休業の判断は正解かもしれない。

   一方で別の不安がよぎる。金沢は消費経済都市でもある。北陸3県からこれらのデパートや専門店街に買い物に訪れる。金沢だけではなく、国内デパート最大手の三越伊勢丹は首都圏の6店舗を8日から臨時休業している。政府の緊急事態宣言が解除されるまで続く。こうなると、地域の経済は、日本、世界の経済は本当に大丈夫なのかと思いを巡らしてしまう。

   IMFが最新の世界経済見通しを公表した(14日)=写真・下、IMF公式ホームページ=。それによると、2020年の成長率はマイナス3%との予測だ。リーマンショックどころではない。1930年代の大恐慌(Great Depression)以来の最悪の景気後退に陥るとの見方だ。世界が今年中にウイルスの封じ込めに成功し経済活動を再開させることができれば、2021年の世界の成長率はプラス5.8%まで回復する。ただ、事態は楽観できない。経済見通しをまとめたIMF調査局長は「パンデミック危機による2020年から21年の世界GDPの損失は合計約9兆㌦に達する可能性があり、これは日本とドイツのGDPの合計を上回る」(IMF公式ホームページ日本語)と述べている。9兆㌦、日本円にしてざっと965兆円の経済損失だ。

   調査局長はコメントをこのように締めくくっている。「世界がこの危機をともに乗り越えるためには、医師や看護師の方々と同じような勇敢な行動が、世界中の政策当局者にも求められている」(同)と。

  「今頑張っているのは医師と看護師だ、次は経済政策担当者の出番、心して行動せよ。世界経済を死なせてはならぬ」と叫んでいるのだ。IMFも必至だ。

⇒15日(水)朝・金沢の天気    はれ

☆命拾いしたイギリス首相のメッセージ

☆命拾いしたイギリス首相のメッセージ

   ヨーロッパで猛威をふるう新型コロナウイルス。アメリカのジョン・ホプキンズ大学のまとめによると、イギリスでは8万5200人が感染、1万629人が死亡した(日本時間13日午前9時時点)。BBCニュースWeb版(13日付)によると、イギリス政府科学顧問は「イギリスが欧州で最悪級の、下手をすると最悪の被害を出す可能性がある」と、番組で述べたと報じている。欧州では現在イタリアが死者1万9800人以上で最も多く、スペイン、フランスと続き、イギリスは4番目だ。

   イギリスの死亡者数は病院で確認された人数で、院以外での死者数を含んでいない。この数字を踏まえた上で、イギリス政府科学顧問は感染の第2、第3の波の到来は「おそらく不可避だ」と警告。治療法とワクチンの開発がされても、必要としている何百万もの人々に行き渡るには長い時間がかかるだろうと説明した(同)。

   暗い話ばかりのイギリスだが、朗報があった。集中治療室で入院していたボリス・ジョンソン首相が12日退院し、ツイッターを6日ぶりに更新した=写真=。「It is hard to find the words to express my debt to the NHS for saving my life.The efforts of millions of people across this country to stay home are worth it. Together we will overcome this challenge, as we have overcome so many challenges in the past.」(意訳:NHSには命を救ってくれたことへの恩義を表す言葉を探すのが難しい。この国で何百万もの人々が家にいる努力はそれだけの価値があるのです。私たちは過去に多くの難題を克服してきました、ともにこの難題を克服しましょう)

   動画では24時間つきっきりでケアしてくれた看護師2人の名前を上げて感謝している。命拾いした首相の丁寧な感謝のメッセージはむしろ国民、あるいは世界の人々に励みにもなっている。もうすでに1000万回も再生されている。

⇒14日(火)朝・金沢の天気   くもり時々はれ    

★ついに石川県独自に緊急事態宣言

★ついに石川県独自に緊急事態宣言

   ニュース速報が流れた。石川県の谷本知事は午後2時30分、県庁で記者会見し、新型コロナウイルスの感染者が増加していることから、県独自の緊急事態宣言を出した。宣言の期間は5月6日まで。知事は不要不急の外出や移動の自粛徹底を要請し、県外からの来訪自粛なども求めた。知事は「改めて危機感を共有し、社会全体が一致結束しなければならない」と強調した。県内では現在113人の感染が確認されている。

  石川県知事がこれほど危機感を持って対応したのは、金沢市の10万人当たりの感染者が15.3人と東京都の13.6人と比べて多く、全国トップとなっているからだ。市内のある病院では5人の感染者が出て、クラスター化している。8日付のこのブログでも記したが、病院の医師が岐阜市内のナイトクラブで感染したとされる。中日本高速道路グループ関連会社15人、市内の飲食店関連で11人、3ヵ所のクラスターで計31人だ。隣県の富山県の全体30人より多い。石川県知事の切迫感を察する。知事が会見で、東京都民に向けて「無症状の人はお越しいただければ。新幹線もあり、2時間半で来られる」と述べて話題となったのは先月、3月27日のこと。随分と「隔世の感」がある。

   話は変わるが、この時節にこのような予算配分をしたら、国民にとてつもなく不公平感を生むのではないだろうか。ウイルスの感染拡大で和牛の需要が落ちていることから、農林水産省は500億円の予算規模で和牛の販売に奨励金を出すなどして販売促進を図る、と報じられた(13日付・NHKニュースWeb版)。宴会など飲み会のキャンセルが続出し、和牛の需要が落ち込み、国内産牛肉の在庫が平年より6割増の1万4000㌧に増えているようだ(同)。

   今の閉塞状況は生産者だけが被害を被っているのではない。そこに生産者に500億円という数字が出てくると、数字が独り歩きをして、妬みややっかみがかぶさって、批判の矛先が生産者に向くことを懸念する。「国難」という状況下で特定の業種や生産者への助成金は意味がない。国民の不信感を増幅させるだけだ。

⇒13日(月)午後・金沢の天気     あめ

☆猿回し芸、能登への想い

☆猿回し芸、能登への想い

   奥能登・珠洲市の旧家で、江戸時代から伝わるという「猿回しの翁(おきな)」の陶器の置き物=写真・上=を見せていただいたことがある。翁は太鼓を抱えて切り株に座り、その左肩に子ザルが乗っている。古来からサルは水の神の使いとされ、農村では歓迎された。大きな河川のない能登などでは古くからため池による水田稲作が行われていて、猿使いたちの巡り先だった。猿使いたちは神社の境内などで演じ、老若男女の笑いや好奇心を誘った。代々床の間に飾られるこの猿回しの翁の置き物は、その時代の農村の風景を彷彿(ほうふつ)させる。

   その猿回しの翁とそっくりな人物と出会った。職業も同じ、「猿舞座」座長の村崎修二さん。2006年5月に友人の紹介で金沢大学の角間キャンパスで猿回し芸を披露してもらったのが最初だった。きょう午後、村崎さんから久しぶりに電話をいただいた。「コロナ騒ぎで世の中は自粛ムードなので芸人は大変ですよ」と開口一番に。続けて「昭和天皇の崩御のときも猿回しと伊勢神楽と狂言は自粛しなかった。それはね、それぞれが神様を持ち歩く人たちだから」と。人を惹きつける語り口調は相変わらずだった。本人は72歳になり、生まれ故郷の山口県周防に戻っている。

   電話での話は、猿回しという伝統芸を復活させた経緯から始まった。日本の霊長類研究の草分けである今西錦司氏(故人)が村崎さんと民俗学者の宮本常一氏(故人)に「おサルの学校」をつくってほしいと依頼したことがきっかけだった。江戸時代から連綿と続いた周防の猿回しが途絶えたのは昭和42年(1967)。佐々木組という一座が最後に演じた場所が能登半島の輪島市大西山町だった。かつて、猿回しの旅の一座を無料で泊めてくれる家を善根宿(ぜんこんやど)と呼んでいたが、戦後の高度成長期、そのような善根宿は全国的に少なくなっていた。能登は猿回しの旅芸人を快く迎えてくれた最後の場所だった、と。

   その後、今西氏らの支援を受けて、昭和52年(1977)に「周防猿まわしの会」が結成され復活する。平成19年(2007)3月25日に震度6強の能登半島地震が発生。4月21日、村崎さんの一座が相棒の安登夢(あとむ)を伴って、被災地の輪島市門前町を慰問ボランティアに駆けつけた。跳び上がって輪をくぐる「ウグイスの谷渡り」などの芸を披露。被災地のお年寄りたちを喜ばせた。このとき、村崎さんは観客の前で重大なことを言った。「安登夢は15歳、人間の年齢ならば還暦は過ぎている。きょうが引退の公演です」と。

   電話の話はこれまで何度か聞いたことがあったが、実に鮮明に周防猿回しと能登の関係、そして自分史について語っておられた。「できたらまた能登に行きたい」と。体調を崩され、デイケアにも通っているが、私への電話はそのメッセージだった。「心から歓迎します」と伝え、電話の別れを惜しんだ。(写真・下は村崎さんと安登夢の共演=2006年5月・金沢市)

⇒12日(日)夜・金沢の天気    くもり

★疫病退散の祭りも中止に

★疫病退散の祭りも中止に

   新型コロナウイルスの感染者は、石川県で92人となった。人口10万人当たりの感染者で見ると、驚くことに北陸が多い。総務省が公表している最新の人口推計で割った「人口10万人当たりの感染者数」(10日午後5時現在)の都道府県別で最も多い東京が11人、福井10.6人、石川は8人の順となる。緊急事態宣言が出されいている大阪7人、兵庫・千葉5.7人、福岡4.9人、神奈川4.4人、埼玉3.9人より多いのだ。しかも、市町村別で比較すると、金沢市が14人となり、東京都の11人を上回る(11日付・NHKニュースWeb版)。地元の新聞メディアは石川県が独自に緊急事態宣言を出すのではないかと報じている=写真・上=。

   確かに、金沢に住んでいると、感染者は身近にいる。いつも利用しているタクシー会社の運転手や、近場の病院、そして職場の大学でも感染例が報告された。知人の話では、今月中ごろに金沢市内の病院で人間ドックを予約していたが、キャンセルされたという。受診者が陽性だった場合、内視鏡などの従事者へ感染する恐れがあるためとの説明があったという。すでに医療の現場が受診者を警戒しているのだ。知人は「次の予約の目途も教えてくれなかった」と憤慨していた。双方に疑心暗鬼が生じている。

   能登に住む知人からの一報だ。毎年7月初旬に行われる能登町の「あばれ祭り」が中止になるとの連絡だった。あばれ祭りは能登半島のキリコ祭りを代表する祭りだ。それを執り行うことを断念したということは、相当重い判断だったろう。

   あばれ祭りは、40基のキリコが繰り出し、広場に集まって、松明(たいまつ)のまわりを勇壮に乱舞するのが見どころだ=写真・下=。また、神輿を川に投げ込んだり、火の中に放り込むなど、担ぎ手が思う存分に暴れる。祭りは暴れることで神が喜ぶという伝説がある。江戸時代の寛文年間(1661-73)、この地で疫病がはやり、京都の祇園社(八坂神社)から神様を勧請し、盛大な祭礼を執り行った。そのとき大きなハチがあらわれて、病人を刺したところ病が治り、地元の人々はこのハチを神様の使いと考えて感謝した。それから祭りでは「ハチや刺いた」とはやしながら練り回ったというのが、この祭りのルーツとされる(日本遺産「灯り舞う半島 能登〜熱狂のキリコ祭り〜」公式ホームページ、写真も)。

   日本、そして世界に元気がない。疫病を退散させる元気な祭りでコロナに打ち勝ってほしい。そう願うばかりだ。

⇒11日(土)午後・金沢の天気      くもり

☆コロナ感染、ニュースを巡る

☆コロナ感染、ニュースを巡る

  新型コロナウイルスに関するニュースが世界を交錯している。日本では詐欺が横行している。新型コロナウイルスの感染拡大に便乗したオレオレ詐欺(特殊詐欺)が横行している。ある金融機関がホームページで発生事例を公開している。息子に成りすました犯人から現金を要求され、被害者は銀行の窓口で犯人から指示された通りに「新型コロナウイルスの流行で外出できないので、まとまったお金を手元に置いておきたい」と説明して、多額の現金を引き出す。その後、受け子が息子の代理人を名乗って取りに行く、という手口だ。   

  巧妙なのは、今回の緊急事態宣言では東京都の対応案でも、銀行など金融機関や病院、薬局、コンビニ、スーパーマーケットなど「生活インフラ」に関しては営業休止の要請の対象ではない。すると、金融機関の窓口も社会的な使命感を持っているので、「新型コロナウイルスで外出できないので・・・」と言われるとその言葉に納得してしまうかも知れない。このご時世を読んだ騙しの手口ではある。

           イギリスではすでに7978人が死亡している。ボリス・ジョンソン首相が新型コロナウイルスの感染で集中治療室に入った(現地時間・今月6日)とのニュースからその後の様子が伝わってこなかった。55歳のジョンソン首相は酸素供給は受けているが、人工呼吸器を使っているわけではないという(現地7日付・BBCニュースWeb版)。

   集中治療室に入った日のツイッター=写真=ではこう述べていた。「Last night, on the advice of my doctor, I went into hospital for some routine tests as I’m still experiencing coronavirus symptoms. I’m in good spirits and keeping in touch with my team, as we work together to fight this virus and keep everyone safe.」(意訳:新型ウイルスの症状が続いているため、医師の助言のもと、定期検査のために昨夜入院した。私は元気で、このウイルスと戦い、皆さんが安全でいられるよう、引き続きチームと連絡を取り合っている)

   現地9日付のBBCは最新ニュースとして、「Boris Johnson out of intensive care」の見出しで、集中治療からは外れたと伝えている。はやくツイッターを更新してほしい。そのツイッターを読んでイギリス国民はひと安心するだろう。

   イタリアから痛ましいニュースが流れてきた。新型コロナウイルスで死亡した医師が105人に上った。イタリアの医師会連盟は声明で、「命を落とした医師の多くは開業医で、防護のための装備も十分ないまま新型コロナウイルスとの戦いに送られた」と述べ、哀悼の意を表した(10日付・NHKニュースWeb版)。治療の最前線に立つ医師がこれほど多くの命を落とすとは。

⇒10日(金)午前・金沢の天気    くもり

★In the pocket of China

★In the pocket of China

   新型コロナウイルスによる世界全体の感染者数が150万人を超え、死者は8万7000人以上となったと報じられている。そこで、WHOのホームページをチェックすると。8日のテドロス事務局長の記者会見の発言内容が掲載されていた。

「Tomorrow marks 100 days since WHO was notified of the first cases of “pneumonia with unknown cause” in China.It’s incredible to reflect on how dramatically the world has changed, in such a short period of time.」(意訳:中国で「原因不明の肺炎」の最初の症例がWHOに通知されてから、あすで100日目となります。 このように短期間で、世界がどれほど劇的に変化したかを振り返ると驚くべきことです)

   記者会見の冒頭のコメントだ。率直に違和感を感じた。1月下旬は中国の春節の大移動で、フランスやオーストラリアでも初めての感染者が確認されるなど世界的に感染拡大の兆しが見え始めていた。にもかかわらず、1月23日のWHO会合では、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を時期尚早として見送った。WHOが緊急事態宣言を出したのは1週間遅れの30日だった。中国以外での感染が18ヵ国で確認され、日本をはじめアメリカ、フランスなど各国政府が武漢から自国民をチャーター機で帰国させていた。なぜWHOは23日に宣言を見送ったのか、中国に配慮して「武漢ウイルス」を国際的に宣言するのをためらったのはないか、との疑念が残っていた。

   この会見の後、記者との質疑の掲載はないが、世界のメディアがその様子を報じている。アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルス感染症へのWHOの対応が「中国に偏っている」と批判していることについて、テドロス氏は「われわれは全ての国に寄り添っている」と述べ、特定の国への配慮などは行っていないと反論した(9日付・共同通信Web版)。

   テドロス氏の反撃もあった、トランプ大統領の名指しはしなかったが「さらなる死者の増加を望まないのであれば、政治問題化するのは、やめてほしい」と主張し「(WHOの)われわれも人間なので間違うこともある」としながらも、WHOが「最新のデータや情報、根拠などを世界に提供してきた」と、感染拡大防止に尽力してきたと訴えた(同)。言い訳がましさを感じないだろうか。

   テドロス氏の冒頭の会見の模様は、ユーチューブ動画で公開されている=写真=。批判のコメントが続々と。「WHO cannot be trusted in they’re in the pocket of China. Pathetic gentlemen, very sad state indeed.」(WHOは中国のポケットにいるため、信頼できない。哀れな紳士、確かに悲しい状態)

⇒9日(木)朝・金沢の天気     はれ