☆「Say it?」のトランプ会見から読めること

☆「Say it?」のトランプ会見から読めること

   健康不安説が浮上している北朝鮮の金正恩党委員長の状態について、アメリカのトランプ大統領が記者会見(27日)で「大体分かっている」と述べたと報じられた(28日付・共同通信Web版)。記者会見の中身を詳しく知りたいと思い、ホワイトハウスの公式ホームページを検索し、27日の会見の内容を読んでみる。(※写真はホワイトハウスのツイッターから)

   会見は55分間。前半は新型コロナウイルスに関する経済対策などのブリーフィング、後半は記者からの質問で、金正恩氏の健康状態に関しては最後の方に出てくる。以下、気になった箇所をピックアップする。

Q    Do you have any update on Kim Jong Un’s health?

THE PRESIDENT:  Say it?

I — I hope he’s fine.  I do know how he’s doing, relatively speaking.  We will see.  You’ll probably be hearing in the not-too-distant future.

All right.  One or two more.  Go ahead, please.

Q    Is he alive?  Are — are you confirming he’s alive?

  記者からの質問にトランプ氏が発した言葉は「 Say it?」だった。「それを言うか」と。つまり、「この件は質問してほしくなかった」との意味だろう。意味深なのは次の言葉だ。「彼が元気であることを願っている。私は彼の状態をおおむね分かっている。様子を見ましょう。遠くない将来にあなたたちも知ることになるでしょう」と。その後、トランプ氏は「さあ(質問を)さらに一つ二つ続けて」と言うと、記者が「正恩氏は生きているのでしょうか、大統領は彼が生きていることを確認していますか」と食い下がったが、トランプ氏はその質問には一切答えず、次の大統領選についての質問に答えていた。

   今月21日付でCNNは金正恩氏が手術を受けて重篤な状態にあるという情報があると伝えた。病名などは特定していない。この報道を受けて、トランプ氏は記者団から尋ねられ、「私に言えるのはこれだけだ。彼の健康を願う」と述べるにとどめていた(22日付・CNNニュースWeb版)。その後も、中国が金氏の容体について助言を行うための医療専門家チームを北朝鮮に派遣したと報じられた(25日付・ロイター通信Web版)。

   「Say it?」の記者会見の文脈やニュースの流れを読めば、「次なるニュース」は想像に難くない。

⇒28日(火)朝・金沢の天気    くもり

★コロナとナマズ 見えざる敵

★コロナとナマズ 見えざる敵

   手元のマスクが残りわずかになり、きのう金沢市内のドラッグストアを4軒回ったがどこも品切れだった。たまたま、文房具店に入ると、「ファッションマスク 1人5枚まで」とチラシが貼ってあった。ファッションマスクの意味を理解せず、5枚購入した。1枚162円。ネットで検索しても、ファッションマスクの意味がよく理解できない。商品の袋には飛沫予防、ポリウレタン素材で伸縮性があり耳が痛くなりにくいなどの説明書きがある。マスクとしての機能より、おしゃれ感覚で使う身につけるマスクという意味だろうか。

           新型コロナウイルスによる感染も怖いが、最近、日本列島の各地で頻発している地震も、大地震の予兆ではないかと不安心理に陥る。この一週間(今月20-26日)だけでも長野など中部、関東、東北、北海道で震度3から4の揺れが13回あった(気象庁公式ホームページ「地震速報」)。3月13日未明に能登半島の輪島で震度5強、金沢で震度3と身近に揺れがあり、神経が少々過敏になっているのかもしれない。

   ネット上で見つけた論文だが、「地震の前兆の可能性がある自然現象」(東北大学東北アジア研究センターの石渡明氏、2011年6月作成)の中で「ナマズなどの生態異常」という項目が目を引いた。以下一部引用する。

   「・・・1923年の関東大地震の前日に湘南の鵠沼海岸の池で、投げ網を用いて30 ㌢大のナマズをバケツ3杯分ほど漁獲した人がいた。ナマズは昼間は池の底に潜んでいるはずなのに、泳ぎ回っていて容易に捕獲されたことは、地震の前兆の何らかの刺激による異常行動かもしれない。関東大地震の直前に、向島の料亭において、池の水面から頻繁に小魚が跳び上がるのを見て、店の者に何という魚か聞いたところ、ナマズの幼魚で2~3日前からこのように跳ね上がっていて不思議なことだと答えたという。・・・」

   マナズと地震の関係性を最初に唱えたのは豊臣秀吉とされる。寒川旭著『秀吉を襲った大震災~地震考古学で戦国史を読む~』 (平凡社新書) に詳しい。1586年の天正地震。このとき秀吉は琵琶湖に面する坂本城にいた。湖のナマズが騒ぐと地震が起きるとの土地の人たちの話を聞いた秀吉は「鯰(ナマズ)は地震」と頭にインプットしてしまった。その後、伏見城を建造する折、家臣たちに地震対策をしっかりせよとの意味を込めた、「ふしん(普請)なまつ(鯰)大事にて候・・」と書簡をしたためている。この「なまつ大事にて候」の一文は時と所を超えて安政の江戸に伝わる。地震に怯える江戸の民衆は、震災情報を求めて瓦版や、鯰を諫(いさ)める錦絵=写真=を競って買い求めた。

   論文「地震の前兆の可能性がある自然現象」の中でナマズがバケツ3杯も獲れたとの話は、マナズと地震の口頭伝承がある江戸=東京であるがゆえに記録された日常の異変かもしれない。拡大解釈すれば、秀吉の「なまつ大事にて候」は人々に日常における危機意識を植えつけてくれた言葉と言えないだろうか。予兆を早めに察知する心構えや機転、情報共有をスムーズに伝播する知恵でもある。

   ところが現代人はメディアの発達によって、情報があれば危機意識を持つことは無用と思い込むようになったのではないだろうか。防災用語に「正常化の偏見」や「正常性バイアス」という言葉がある。目の前に危険が迫ってくるまで、その危険を認めようとしない人間の心理傾向、あるいは危険を無視する心理のことを指す。コロナ禍の緊急事態宣言の下でも、休業要請を無視するパチンコ店、そこに列をなす客。見えない敵への危機意識のなさは決して他人事ではない。自戒を込めての話だ。

⇒27日(月)午後・金沢の天気    はれ

☆コロナ禍 腐心するテレビと新聞

☆コロナ禍 腐心するテレビと新聞

   新型コロナウイルスの緊急事態宣言の下、社会では「巣ごもり」や「在宅ワーク」が当たり前となった。在宅率が高まればその分、テレビや新聞との接触度も増える。そこからは番組や紙面づくりに腐心するメディアの姿も垣間見える。

   先日(今月21日)ローカルテレビ局の知人と話していて、「HUT(総世帯視聴率)が10%も増えたが、再放送の番組ばかりで視聴者は満足していないのでは」と。「確かにそうだね」と瞬間うなずいた。お笑いタレントの志村けんさんが3月29日に新型コロナウイルスの肺炎で亡くなり、「追悼番組」と称して民放だけでなくNHKも出演番組を再放送していた。不謹慎な言い方かもしれないが、「バカ殿様」のシーンがどの局でも繰り返され、正直言って、亡き人への記憶を消費しているに過ぎないのではないだろうか、死者の尊厳に配慮した追悼番組なのだろうかと疑問に思った。次は今月23日に亡くなった女優・岡江久美子さんの出演番組の再放送かと思うと少々いたたまれない。

   自身も在宅ワークとなり、平日の日中にテレビのリモコンをオンにする回数が増えた。視聴して感じることは、土日であってもCMが少なく、自社番組の宣伝や「ACジャパン(公共広告機構)」やがやたらと目立つ。インターネット広告費がテレビ広告費を初めて超えるという「広告業界の転換点」(電通「2019年 日本の広告費」)から転げ落ちるようにCM出稿量が激減しているのではないか。「ギョーカイは大丈夫か」と他人事ながら懸念する。

   報道や情報番組は新型コロナウイルスの関連テーマが多いが、伝えるべき情報をいち早くというテレビ報道の使命感のようなものを感じる一方で、出演しているウイルス感染の専門家のコメントが危機感を煽り過ぎると感じることもある。

   先にテレビCMが減ったと述べたが、新聞も同様に広告段数が低くなり、自社広告が目立つ。新聞に折り込まれるチラシ広告も随分減った。これまであったスーパーの特売日やポイント還元のチラシを見なくなった。感染予防のため、買い物客の混雑を招く販売促進のチラシを自粛しているのだろうか。

   紙面では見出しにも気遣がうかがえる。「連休中 うちで過ごそう 各地の人出 大幅減」(26日付・朝日新聞)。連休初日(25日)の全国各地の人出の様子を記した一面の記事だが、あえて見出しで「うちで過ごそう」とつけた。社会状況や読者の心理、そして報道の有り様を鑑みた編集者の苦心の見出しではないだろうか。

   新聞紙面の広告段数が減るとその分、紙面を埋める記事の量が増えて記者の仕事量が増える。ところが、大型連休とは言え、屋内外のイベントは中止、観光名所も閉鎖となり記事にならない。新聞業界では「ニッパチ」といって、2月と8月は社会の動きが緩慢になり記事も少なくなる。このニッパチ現象が連休明け後も当面続くのではないだろうか。   

   テレビ局は放送時間を極端に削減することはできないが、新聞社はページ数を削減できる。今後はその方向ではないだろうか。

⇒26日(日)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★大型連休 耐え忍んでコロナを払う

★大型連休 耐え忍んでコロナを払う

   きょうは大型連休の初日。例年なら金沢市内の兼六園や武家屋敷などは観光客でごった返すが、市内の中心街も閑散としていた=写真・上=。商店街の多くがシャッターを閉めていた。この大型連休は新型コロナウイルスを封じ込める正念場とも言える。

   金沢の観光名所の一つにもなっている「忍者寺」で有名な妙立寺の前を通ると、「一般の方の拝観を休止します」の貼り紙がしてあった=写真・中=。江戸時代の初期に加賀藩は幕府と緊張状態にあったことから、この寺を出城として造らせたという言い伝えがある。何度か入ったことがあるが、ガイド嬢の説明が面白かった。寺の井戸が金沢城に続く抜け道になっているとか、掛け軸の裏にある隠し扉、床板を外すと現れる隠し階段など凝った仕掛け。外観は2階建てのように見えるが、実際は7層構造で階段が29もある迷路になっている。海外でも忍者ブームで、忍者の装いをした子供をともなったインバウンド観光の家族連れを見かけたりする。

   能登の和倉温泉、老舗旅館「加賀屋」もあさって27日から休業に入ると報じられている(25日付・北陸中日新聞)。県内のグループ合わせて5館で27日以降の予約受付を停止する。大型連休に営業すると、客が来るので人の流れをつくってしまう。これは人の流れを最小化する政府方針に逆行することにもなり、感染防止に協力するかたちで予約をストップする。加賀屋は「もてなし」の質の高さに定評があり、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(主催・旅行新聞新社)で36年連続総合1位に輝いている。

   石川県内の感染者はきのう現在で222人となった(県発表)。人口10万人当たり感染者は石川県19.6人と、東京都26.8人に次いで多く、大阪府16.0人と続く(25日付・北國新聞)。妙立寺の近くに「コロナに負けるな!」と記されたのぼり旗が立ててあった=写真・下=。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が今月16日に7都府県から全国に拡大され、石川県は「特定警戒県」に指定された。耐え忍んで邪気を払う。県内はまさにそんな雰囲気だ。

⇒25日(土)午後・金沢の天気   はれ

☆コロナ的な常識 胃カメラは鼻から入れず

☆コロナ的な常識 胃カメラは鼻から入れず

   先日(22日)金沢市内の病院で胃カメラの検査を受けた。胃カメラを口からではなく、鼻から入れてほしいと頼んだ。すると看護師が一瞬身構えるように「当病院では鼻からの内視鏡検査は当面行わないことにしています。鎮静薬を注射して口から入れさていただきます。ご理解をお願いします」と言う。口からだと激しい吐き気をともなうので、これまで何回か左の鼻から入れてもらっていた。「なぜ、鼻からはダメなの」と聞き返した。

   病院では口からの胃カメラのことを「経口内視鏡」、鼻からの胃カメラのことを「経鼻内視鏡」と言っている。鼻からのチューブはやや細い。経口内視鏡は人体の防御反応による激しい吐き気をともなうケースがあり、最近では経鼻内視鏡での検査を希望する人が増えているそうだ。ところが、猛威をふるっている新型コロナウイルスは鼻の奥で多く増殖しているとされ、PCR検査も専用の綿棒を鼻から入れる。では、なぜ鼻から胃カメラを行わないのか。鼻から内視鏡を出し入れすると検査室にウイルスが飛び散る危険性があるというのだ。要は医療従事者への感染を防ぐ措置ではある。「ご理解ください」の意味が分かった。

   鎮静薬を注射して間もなく睡眠状態に入った。「終わりましたよ」の看護師の声で目が覚めた。吐き気も痛みもまったくない。案内された別室のベッドで再び眠りについた。30分ほどで目覚める。鼻の奥にある嗅覚細胞がウイルスに感染することで嗅覚障害が起こるとの説明を思い出し、室内の匂いを意識して嗅いでみる。院内独特の薬品のような匂いがして、鼻は健全だと確認して安心した。

   石川県で初めて新型コロナウイルスの罹患が確認されたのは2月21日のことで、あれから2ヵ月余り経った。罹患した50歳代の男性が前の17日と19 日にこの病院で受診していて、連日この病院のことがメディアで報じられた。それ以来、病院では感染予防に積極的な対応を取っている。検査室前の待ち合いのイスも間隔を空けて座るように工夫がなされている=写真=。

   検査後、医師の問診があった。体温の話をした。というのも、病院に入って内科のカウンターでコロナ感染予防のためと体温計を渡され3回測ったが、いずれも34度後半だったことを伝えた。医師は体調不良がなければ様子を見ましょう、ということになった。最後に「でも、コロナではなさそうですね」と。確かに、このご時世では高体温がむしろ怖い。

   一方で体温が下がると免疫力も低下するとも言われた。そこで、スマホで体を温める食材を調べ、帰りに病院近くのスーパーでキムチを買った。普段そのような思いでキムチを求めたことはない。日常でコロナ対策が常識化しつつある、ということか。

⇒24日(金)朝・金沢の天気    くもり時々あめ  

★パンデミックの世に響く「アメージング・グレース」

★パンデミックの世に響く「アメージング・グレース」

   新型コロナウイルスによる世界の感染者は250万人を突破し、死亡者は17万人を超えた。死亡者のうちアメリカがもっとも多く4万4千人、イタリア2万4千人、スペイン2万1千人、フランス2万人、イギリス1万7千人と続く(ジョンズ・ホプキンス大学CSSEホームページ)。今もアメリカやヨーロッパのパンデミックの中で多くの人々はsocial-distance(社会的距離)を求められ、家で過ごす日々を送る。

   イタリアのテノール歌手、Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)氏が現地今月12日、キリストの復活祭「イースター」に、ミラノのドゥオーモ大聖堂で無観客のソロコンサートを開いた。テーマは「Music For Hope」。その様子がユーチューブで配信され、再生回数は3800万回(22日現在)を超えている。

   コンサートはドゥオーモ大聖堂のオルガンの伴奏で「パニス・アンジェリクス」や「アヴェ・マリア」など4曲を歌った後、大聖堂を背に賛美歌「アメージング・グレース」を熱唱する。黒の蝶ネクタイ、盲目のボチェッリ氏がスタンドマイクの前まで一歩一歩進み歌い始める。じっと聴いていると、目の前に光が差し込んでくるようで感動を覚える。

   「アメージング・グレース」を歌う映像では、人のいない閑散としたパリ、ロンドン、ニューヨークの街も映し出される。世界各地でロックダウン(都市封鎖)が強いられ、身近で亡くなった死者を葬る場に立ち会うこともできない人々の嘆きはいかばかりか。そんな中で、人々はネットでこの歌を聴き、涙しながら心を一つに結んでいるのではないだろうか。そう思えてならない。動画のコメントにはコロナ感染で亡くなした肉親への哀悼の気持ち、そしてボチェッリ氏への感謝の言葉が連綿と連なる。
(※絵はミケランジェロ「アダムの創造」、2006年1月撮影) 

⇒23日(木)未明・金沢の天気    くもり

☆コロナの新学期 学生たちの危機感

☆コロナの新学期 学生たちの危機感

          新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、金沢大学ではきのう危機対策本部会議を開き、4月22日から5月6日まで教職員は原則として在宅勤務とした。学生はすでに登学禁止なっており、履修科目のオンライン登録も20日からようやく始まった。講義は基本的には遠隔講義(リモート)となる。教員も慣れないリモート講義に右往左往の状態ではある。

   「大学クラスター」という言葉もあるように、大学から感染者を出さないためにとくに海外からの留学や旅行から帰国した学生、教員には厳格な対応が求められている。大学からのメールを以下引用する。「1.新型コロナウイルスに感染した者との接触があった学生、教職員等の対応 ⇒ 海外への渡航歴がある学生、教職員ならびに新型コロナウイルスに感染した者との濃厚接触歴がある学生、教職員等は全員14日間自宅待機し、健康チェックシートを記入して必ず健康観察を行ってください。自宅待機中に症状が出た場合は新型肺炎に関する電話相談窓口に速やかに電話連絡の上、医療機関を受診してください」

          逆に、この夏休みを利用して海外に短期留学を計画していた学生たちも計画が狂ってしまった。ある学生の話だと、イギリスに夏季留学を計画しその費用を金沢市内の居酒屋でのアルバイト代で賄おうと頑張っていた。ところが、アルバイト先が今月17日から時間短縮となり、「稼げなくなった」とこぼしていた。

   さらに同情すべきは就活に入った学生だろう。政府が今月7日に緊急事態宣言を発令してから、選考活動そのものを一時停止している企業も多い。「売り手市場」だったこれまでとは状況が一変した。別の学生は、3月下旬に東京のIT企業の説明会に参加を申し込んでいたが中止になった。「ひょっとして就職氷河期がまた来るかも」と学生は顔を曇らせた。

   1980年代のバブル経済が崩壊し、大手金融機関などが破綻した1993年から2005年にかけて、有効求人倍率は13年間「1」 を下回った。これが就職氷河期だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、またその兆候が見え始めた。厚労省が発表したことし2月の有効求人倍率は1.45倍(昨年同期は1.63倍)だった。経済活動が減速原則することを懸念して、企業の採用意欲が急低下している。今回の「1.45」は緊急事態宣言を発令する前の数字だ。しばらくは下がることはあっても上がることはない。どこまで下がるのか。(※写真は金沢大学の掲示板にあった厚労省のポスター)

⇒22日(水)夜・金沢の天気   あめ時々くもり

★続々々・ 「ポスト・コロナ」を読む

★続々々・ 「ポスト・コロナ」を読む

   これも新型コロナウイルスの感染拡大による影響だろう。ガソリン価格の値下がりが続いている。きのう(20日)自宅近くのガソリンスタンドで給油すると1㍑あたり123円(会員価格)だった=写真・上=。2月1日は1㍑141円、3月5日は136円だったので、月あたり10円ほど価格が落ちたことになる。ウイルス感染で政府や行政からの不要不急の外出自粛でリモートワークや「巣ごもり」の生活スタイルが広がっている。金沢の街中でも普段の半分もないくらいの交通量だ。もちろん、これは金沢だけの話ではない。

   ロックダウンによる国内外で人々の出入りが規制され、ガソリン需要は世界的に急減している。20日のニューヨークの原油先物市場で史上初めて価格が1バレル当たりマイナス37㌦になったと、メディア各社が大々的に報じている。需要減で在庫が増えて保管スペースがなくなり、買い手がつかないのだ。売り手がお金を支払って原油を引き取ってもらうという、通常では考えられない事態だ。これを受けて、同日のニューヨーク株式市場のダウの終値は先週末に比べて592㌦値下がり。21日の東京株式も午前の終値を310円下げた。

   パンデミックの需要減、出口の見えないガソリン価格

   ガソリン価格の値下がりで記憶に残るのはリーマンショックだ。2008年12月31日夜に撮影した金沢市内のガソリンスタンドの電飾看板は「レギュラー99円(会員価格)」だった=写真・下=。リーマンショック後に安全通貨として円が買われ、1㌦が90円から87円台まで円高に動いた、このときは「円独歩高」という状態で、輸出企業は苦しんだが、ガソリンのような輸入製品は安価になった。その後も、2010年のユーロ危機で円が買われ1㌦83円に、さらに2011年の東日本大震災で日本の保険会社が支払準備として海外資産を円に換えるとの観測が広がり、円高は1㌦76円へと急激に進んだ。こうした円高でガソリン価格が低迷した時期が長く続き、国内のガソリンスタンドの廃業が相次いだ。

   ところが、今回のようにパンデミックで買い手がつかないマイナス取引となると、国際商品市場での異常事態だけに経済危機のレベル感がこれまでとは異なる。サウジアラビアなど産油国による供給過剰も今回のマーケット崩壊の背景にあるだろう。でも、今回のマイナス取引は果たして石油に限った問題なのだろうか。ポスト・コロナの見えない出口がさらに世界経済への不安を煽る。

⇒21日(火)正午すぎ・金沢の天気      はれ

☆花の命は短くも、コロナは散らず

☆花の命は短くも、コロナは散らず

   このところの雨風で桜吹雪が舞い散り、自家用車に花びらがこびりつく。給油スタンドで洗車すること2回、毎年のことながらようやく桜の季節が終わったと実感した。自宅の庭先には、ヤマシャクヤク(山芍薬)とイチリンソウ(一輪草)が競うように白い花を咲かせている=写真=。

   山芍薬の白い花は丸いボール型に咲く、「抱え咲き」の花である。3日か4日で散ってしまう。花の命が短いだけに、実にけなげで清楚な感じがする。名前の由来の通り、もともと山中に自生している。根は生薬として鎮痛薬として利用される。山の芍薬はかつて乱獲され、今では環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に登録されている。花言葉は「恥じらい」「はにかみ」。日陰にそっと咲く。   

   写真手前のイチリンソウ(一輪草)は「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と称されるように、早春に芽を出し、白い花をつけ結実させて、初夏には地上からさっと姿を消す。一瞬に姿を現わし、可憐な花をつける様子が「春の妖精」の由来だろうか。1本の花茎に一つ花をつけるので「一輪草」の名だが、写真のように群生する。ただ、可憐な姿とは裏腹に、有毒でむやみに摘んだりすると皮膚炎を起こしたり、間違って食べたりすると胃腸炎を引き起こす。

   それにしてもなかなか咲かない花が、新型コロナウイルスの対策に伴う給付金だ。当初の「減収世帯へ30万円」から急きょ実施が決まった「1人一律10万円」。花の大きさにたとえると、減収世帯30万円はヤマシャクヤクのようで清楚さを感じたが、一律10万円はイチリンソウのよう。小さな花がたくさん咲いてにぎやかしく思えたが、少々毒があるようで世の中が落ちつかない。

   麻生財務大臣が今月17日の会見で「手を上げた方に1人10万円」と述べ、自己申告制で辞退もできると発言したことで物議をかもした。政府では、住民基本台帳で各家庭に申請書を送り、振込先の口座を書いて返送してもらい、送金となる。ただ、全国民を対象にした給付である以上、いわゆるネットカフェ難民といわれる人たちや、ホームレスの人たちなど住所がない人たちにはどう対処するのか、などの課題もある。

   当たり前のことだが、お金は花のようにきれいに咲かない。花は約束したように季節に咲いてくれるが、お金の約束はなかなかできない。ただ、花の命は短い。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★続々・ 「ポスト・コロナ」を読む

★続々・ 「ポスト・コロナ」を読む

           石川県が新型コロナウイルスの「特定警戒県」に指定されたことを受けて、輪島市の曹洞宗大本山総持寺祖院があす20日から拝観を中止する(総持寺公式ホームページ)。「感染拡大の防止と山内僧侶・職員の健康安全の観点から」と説明している。禅宗の大本山として名をはせた総持寺も「流行り病」には勝てず。拝観中止は、山門などが被災した能登半島地震(2007年3月)以来となる。

   ロボットとAI、濃厚接触を避ける働く現場の未来

   イギリスのBBCニュースWeb版(19日付)に興味深い記事が載っていた。「Coronavirus: Will Covid-19 speed up the use of robots to replace human workers?」。コロナウイルスは労働者を人からロボットに置き換えるスピードを速めるかもしれない。記事は、これまで経済活動でフェイス・ト・フェイスの関係が求められてきたが、パンデミックの感染拡大の中ではむしろsocial-distance(社会的距離)が求められている、その切り札がロボットでありAIになりうるとその背景を説明している。

   記事では具体的に、医療専門家は2021年までに人と人の距離をとる措置を講じる必要があると警告していて、ロボットの医療現場での需要が高まる可能性がある、と紹介している。デンマークの紫外線消毒ロボットの製造会社はすでに数百台のマシンを中国とヨーロッパの病院に出荷している。また、ファーストフードチェーン「マクドナルド」は料理人やサーバーとしてロボットを活用するためのテスト段階に入っている、という。

  ロボットだけではなく、人と同じくらいリアルなAIによるレッスンの提供も可能だ。たとえば、研修会の講師やフィットネストレーナー、財務アドバイザーなども人に代わる人工知能が開発されている。画面上のインストラクターやアドバイザーは、実在の人物である必要はない。実在する人物のように知恵と行動指針をアドバイスしてくれればよい。

   日本でも、緊急事態宣言で「人との接触は最低でも7割減、極力8割減」のソーシャルディスタンスの概念が普及し、テレワークやリモートワークなどといった働き方が随分と広がった。意外なことにこの社会環境が人間にとってより快適だと気付き始めている人も多い。できればこの際、生産や流通、サービスの現場をロボットやAI化にシフトしようとの意識や発想が企業を中心に広がるかもしれない。導入のコストはかかるが、将来的にはコストカットできる。もちろん、懐疑的な見方もさまざまあるが、ポスト・コロナは働く現場の未来をイメージさせてくれる。

⇒19日(日)午後:金沢の天気    くもり時々あめ