☆金沢で震度7、死者2200人、避難者19万人・・被害想定見直し

☆金沢で震度7、死者2200人、避難者19万人・・被害想定見直し

これは衝撃的な数値だ。石川県危機対策課は地震の被害想定を27年ぶりに見直し、きのう(7日)開催された県防災会議の震災対策部会で報告した。政府の地震調査委員会が去年8月に示した「長期評価」などに基づき、9つの断層帯で将来、大地震が発生することを想定したものだ。

それによると、人や建物への被害が最も大きいとされるのは金沢市と白山市、津幡町の直下を走る「森本・富樫断層帯」(全長26㌔)で、最大震度7の揺れが金沢市で想定されるとしている。冬の朝5時に地震が発生した場合、2212人が亡くなると見込まれている。自治体別では金沢市が1788人で8割以上を占め、白山市が182人、津幡町が68人と続く。要因別では、雪の重みなどによる建物の倒壊での死者が2029人と最も多く、次いで火災が94人、ブロック塀の倒壊や自販機などの転倒などによる死者が81人などと推定されている。けが人は9344人に上ると試算される。地震発生から1週間後の避難者は19万1898人と想定されている。(※写真は、地震と津波で倒壊した珠洲市の民家=2024年4月29日撮影)

また、森本・富樫断層帯での建物の被害は、冬の午後6時に地震が発生した場合、もっとも多くなると推定される。この時間は、火気の使用で火災の危険が高まることや、積雪の重みで倒壊する家屋が増えることも考慮され、4万6947棟が全壊・全焼、5万5359棟が半壊と予測される。金沢市では36%の建物が全半壊することになる。

今回の被害想定の見直しは、1998年3月の被害想定が現状とかけ離れていることも背景にあったのかもしれない。前回の想定では能登半島北方沖断層(50㌔)を震源とするマグニチュード7.0の地震が起きた場合、死者は7人、建物の全壊は120棟になると想定していた。実際に起きた去年元日のマグニチュード7.6の能登半島地震では、ことし4月末時点で直接死は228人、住家の全壊は6151棟に達していて、想定の不十分さが指摘されていた。今回見直された被害想定では、正月やゴールデンウィークなど5つの状況を設定するなど、精密に被害を予測している。

今回の被害想定の見直しを受けて、金沢市などは避難所の確保や災害医療の見直しなど迫られるだろう。

⇒8日(木)夜・金沢の天気    くもり

★トキとコウノトリが運ぶもの 能登復興のささやかな願い

★トキとコウノトリが運ぶもの 能登復興のささやかな願い

国の特別天然記念物のコウノトリの日本の北端の営巣地といわれる能登半島の志賀町富来に先日(今月3日)行ってきた。前回見に行ったのは4月18日だったので2週間ぶりだった。電柱の巣に親鳥1羽のほかにヒナの姿が2羽見えた=写真=。前回のときはヒナがいるようには見えなかったので、その後に孵(ふ)化したのだろうか。地元の人も見に来ていたので話を聞くと、ヒナは全部で4羽いるとのことだった。コウノトリには一度営巣した場所で毎年子育てをする習性があり、この巣でのヒナの誕生は4年連続となる。

このところ石川県内でコウノトリの営巣が増えている。地元メディアの報道によると、志賀町のほかに金沢市に隣接する津幡町でも3年連続でヒナが誕生。また、奥能登の珠洲市と穴水町でもこの4月に営巣が新たに確認されている。「コウノトリが住み着くと幸福が訪れる」「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」との伝承がヨーロッパにある。能登から巣立ったコウノトリが伴侶をともなって再び戻って定着すれば、繁殖地としての能登もにぎやかになるのではと夢を膨らませてしまう。

もう一つ膨らませる夢が、能登がコウノトリとトキの繁殖地になってほしいとの期待だ。トキも国の特別天然記念物であり、環境省は2026年6月にも能登で放鳥を行うことをすでに決めている。具体的な放鳥の場所についてはことし7月ごろまでに決定し、1度に15から20羽ほどを複数年にわたって放鳥するようだ。

これは自身が子どものころ、親戚の能登の爺さんから聴いた話だ。トキとコウノトリは兄弟のような鳥で仲がいい。コウノトリが兄貴分で、トキが弟分のような関係だと教えてくれたことを覚えている。以下は鳥の専門家でもない素人の思い付き。兄貴分はすでに能登で営巣しているので、弟分もこれを習うのではないか。なので、コウノトリの営巣地の付近でトキを放鳥してはどうか。志賀町の営巣地の周辺地には、カエルやドジョウ、メダカ、たくさんの虫たちがいて、同町ではトキ放鳥の受け入れ候補地として、県に申請している。

トキとコウノトリが舞う能登、そんな夢のような光景を見る日がやって来るのを楽しみにしている。

⇒7日(水)夜・金沢の天気    はれ

☆能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~祭りの絆は復興のチカラ~

☆能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~祭りの絆は復興のチカラ~

日本で一番大きい祭りの山車は能登・七尾市の青柏祭の「でか山」。高さは12㍍あり、重さは20㌧にも及ぶ。ビルにして4階建ての高さになる。このでか山3台が今月3日から5日にかけて市内の大通りで引き回された。

青柏祭は平安時代から伝わる能登半島の代表的な春の祭りとされ、「でか山」が練り歩く「曳山行事」は2016年にユネスコ無形文化遺産に登録されている。去年は元日の能登半島地震で市内の道路にゆがみや破損が生じたことから、安全確保ができないとの理由で中止となり、ことしは2年ぶりの巡行となった。

3日と5日に祭りを見学した。3日午前中に行くと、午後からの巡行に向けて、でか山の組み立てが最終段階に入っていた。その様子を眺めているいると、でか山を動かすのは大変だけど、その準備も大がかりだということがよく理解できた。何しろ、クレーン車をつかって組み立てや飾り付けをしていた。そして、作業をする数十人がキビキビと動き回っていた。でか山をこれから動かすぞ、というパワーを現地で感じた。この様子を見て、祭りのために地域の人たちがチカラを合せる、これはまさに震災復興のパワーになるのではないかと思った。

5日午後に行くと、JR七尾駅前の通りで引き回しがあった=写真=。車輪は直径が2㍍もあり、曲がり角では「でか山」の車輪を浮かせて方向転換をする「つじ回し」が行われる。狭い路地を巧みに曲がると引き手と観客がともに歓声を上げていた。この迫力と盛り上がりは復興のチカラではないだろうか。楽しく祭りを続けたい、だから震災に負けないという能登のパワフルなメッセージのように感じた。

⇒6日(火・振)朝・金沢の天気 くもり 

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~隆起沿岸を使う~

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~隆起沿岸を使う~

能登の海岸は日本海側を外浦(そとうら)、そして七尾湾側の方を内浦(うちうら)と呼んでいる。去年元日の地震で外浦は海岸の隆起、内浦は津波や地盤沈下が起きた。外浦の輪島市門前町の鹿磯(かいそ)漁港では、地震で海底が4㍍も隆起した。漁港の海底の一部が陸になり、漁船が乗り上げたような状態になった写真・上、2024年3月4日撮影=。これだけ隆起したので、漁船が港に入れない状態が続いていた。  

輪島漁港でも海底が1㍍から2㍍盛り上がって、漁船200隻が港から出れなくなった。船を動かすと、船の底が海底にぶつかる可能性があるので動かせない状態が続いていた。輪島漁港は石川県で一番の漁獲高を誇る港だったが、ほぼゼロに。水産庁などが一刻もはやく漁船が港から出れるようにと、海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業をいまも行っている。漁船は11月ごろから徐々に漁に出れるようになり、いまはノドグロなどを取っている。

鹿磯漁港に漁船が接岸できるようになったと地元メディアが報じていたので、現地に行ってみた(今月3日)。漁船が海で取った魚を陸に移すことを「水揚げ」と言うが、沿岸が隆起して陸に近づけなかったのでこれまで水揚げはできなかった。実際に鹿磯漁港に行ってみると、なるほどと思った。隆起した部分に道をつけ、漁獲した魚を水揚げする場所が新たに設けられていた=写真・下=。

隆起した部分をうまく使っている。復旧・復興というのは元通りに戻すのではなく、変化した現場をうまく活用して現状復帰することではないかと、このとき教えられた。鹿磯漁港のほかにも、外浦でトンネルが崩落し、国道249号が部分的に通行止めとなっていたが、トンネル横で隆起した海岸に道路が造られ、いまでは全線で通行が可能になっている。

⇒5日(月・祝)午前・金沢の天気  はれ 

☆能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~オフグリッドの先端へ~

☆能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~オフグリッドの先端へ~

「奥能登 人口5万人割れ」とメディア各社が報じている。石川県がきのう(1日)発表した県内の「人口と世帯の推計結果」によると、能登半島地震の被害が大きかった奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)の人口は4万9558人となった。去年元日の地震発生からことし4月1日までの1年3ヵ月の人口推計で、5655人減り、減少率は10.24%となった。奥能登はもともと過疎・高齢化による人口減は進んでいたが、地震が拍車をかけた。

その奥能登で時代の先端を行くような試みを行っているチ-ムがある。一般社団法人「現代集落」のプロジェクト。能登の「限界集落」が「現代集落」になる可能性があるのと発想で、水や電気や食を自給自足でつくる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を「ビレッジDX」と位置付けている。金沢町家の一棟貸し民宿の経営を行っている林俊伍氏が代表理事となり、建築家らが参加している。

プロジェクトのモデル地区となっているのが、珠洲市の真浦(まうら)地区=写真=。これまで何度か現地を訪れている。去年8月に行くと、住家の庭に四角のテーブルのようなものがあった。近くの人に訪ねると、衛星インターネットの「スターリンク」とのことだった。あのアメリカの実業家イーロン・マスク氏が率いる「SpaceX」のインターネット。光ファイバーによるネット環境が整った都市部や平野部などとは違い、真浦地区は回線環境が整っていない。そこで、アンテナを設置するだけで高速インターネットが利用できるスターリンクはリモートワークをする人たちにとっては不可欠との説明だった。

その真浦で今度は、自給自足の生活を理解してもらうための「モデルルーム」が完成した(メディア各社の報道)。薪ストーブでの発熱や、地下水をろ過装置した生活用水など。太陽光での発電(電力は蓄電池でにためる)もある。電力の日常使いでは、電力会社からの電気と自家発電した電気を手動で切り替えながら使う。取り組みに参加する世帯が広がることで、将来は集落全体でエネルギーをまかなう構想という。

モデルルームの披露会に出席した珠洲市の泉谷満寿裕市長は「オフグリッド化は珠洲市のモデルになる仕組み」と述べた(今月29日付・日経新聞)。オフグリッド(off-grid)という言葉は、公共のインフラに依存せずに電力や水道などを独立して確保する生活様式の意味でまさに自給自足のこと。珠洲市では地震による水道管の破損で大規模な断水を起きたことから、水源を集落単位で確保するオフグリッド化を目指している。真浦の取り組みは行政に先んじていると市長が評価した。

一社現代集落では今年度内にオフグリッドの生活を営む5世帯から10世帯の参加を見込んでいる(同)。オフグリッドは世界が注目するトレンドでもある。この取り組みが被災地、過疎化の復興の先端となるか。

⇒2日(金)午後・金沢の天気 あめ

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~仮設から公営住宅へ~

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~仮設から公営住宅へ~

きょう5月1日で能登半島地震から16ヵ月となる。震災の被害状況を公表している石川県危機対策課のまとめによると、県内の犠牲者は581人に増えている。震災で家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死は228人、避難所などでの疲労やストレスが原因で持病などが悪化して亡くなった災害関連死が353人(うち7人は自治体の公式認定待ち・4月30日時点)。石川以外にも富山県で4人、新潟県で6人が関連死と認定されていて、3県で591人が震災で亡くなったことになる。

建物も甚大な被害となっている。住家は全壊が6151棟、半壊が1万8646棟となっており、一部損壊を合せた住家被害は11万6069棟に上る。空き家や納屋などの非住家の損壊は3万7103棟(半壊以上)、公民館など公共施設443棟にも被害が及んでいる(県危機対策課まとめ・4月30日時点)。

石川県が整備していた地震被害の仮設住宅6882戸は入居を終えている。仮設住宅はあくまでも応急措置であり、契約期間は原則2年だ。復興となると、長年にわたって使える公営住宅が急がれる。県の公式サイト「復興公営住宅の整備状況について」によると、能登を中心に9市町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町、中能登町、羽咋市、内灘町)で被災者向けの公営住宅を建設する。

被害が大きかった輪島市では4ヵ所で公営住宅が整備される計画で、中心街に近い同市宅田町ではRC造(鉄筋コンクリート造り)の集合住宅150戸が2027年3月までに建設される。県では9市町で計3000戸程度の公営住宅を建設する見通しを示していて、「災害に強く地域の景観やコミュニティの維持に寄与し、子供から高齢者まで安心して暮らせる環境や持続性を持った住まいづくり」を整備指針に掲げている。

災害に強く持続性を持った公営住宅が復興のシンボルの一つとなるのか、どうか。(※写真は、能登半島の尖端に位置する珠洲市の仮設住宅。建築家・坂茂氏が設計などを手掛けた)

⇒1日(木)午前・金沢の天気 はれ

☆ス-パーで備蓄米と初見参 「3543円」は、ありがたい価格か

☆ス-パーで備蓄米と初見参 「3543円」は、ありがたい価格か

きょう近所のスーパーで備蓄米を初めて見つけた。ブレンド米で5㌔袋で3280円(税込み3543円)=写真=。「米おいしいね 国産米 5kg」との表示なので、最初はどんな商品なのか分からなかった。「どこどこ産米」との表記がないので分かりにくい。それだったら「備蓄米」と表記すればよいのにと思った次第。価格は石川県産コシヒカリより、400円ほど安い。

別のスーパ-に行くと、備蓄米らしき商品はまったく並んでいない。「石川県産」や「富山県産」、「新潟県産」などがずらりと並んでいる。コメ不足で政府の備蓄米が放出されることになったが、このスーパーの棚を見る限りではむしろ山積みと思えるほどの商品量だ。  

もう一つアレっと感じたのは購入制限のこと。県産米は5㌔袋で「お1人様 2袋」との「お願い」のチラシが棚に貼られているが、備蓄米の棚には個数制限の張り紙はまったくない。この違いはいったい何なんだと思ってしまう。

話は価格に戻るが、備蓄米は安いと言えるのだろうか。そもそも、「税込み3543円」は高い、と言える。去年8月25日付のブログでコメの値段ついて書いたとき、同じスーパーで購入したブランド米の新米は5㌔で2290円だった。あれから8ヵ月で50%以上、1300円ほど高くなっている。コメの値段は一律ではないが、消費者は備蓄米5㌔袋3543円を「まだ高い」と思うか、「400円ほど安くなったので、まあいいか」と思うか。そして、不思議なのは備蓄米が並んでいるスーパーと並んでいないス-パーがあるのはなぜか。コメの流通の仕組みが複雑過ぎるのか。

⇒30日(水)夜・金沢の天気 くもり

★心和む曲水のせせらぎ 多様な客が訪れる兼六園の景色

★心和む曲水のせせらぎ 多様な客が訪れる兼六園の景色

きのう兼六園を歩いた話の続き。園内を曲がりくねり、ゆったりと流れる曲水(きょくすい)には風情があり、晴天ということもあり水面には青空が映えていた=写真・上=。兼六園の園名は、宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望の6つの景観を兼ね備えていることが名園の誉(ほまれ)とされたことが由来とされる。その6つの風景の一つの「水泉」の景観が曲水ではないだろうか。曲水のせせらぎが心を和ませてくれる。

この曲水の流れについて、以前、兼六園の管理事務所の所長さんから聴いた話を思い出した。水の流れなので雨が降れば当然、水かさが増して流れも激しくなるものだ。でも、兼六園の曲水が大雨で荒れて氾濫したという話は聞いたことがない。逆に、夏に日照りが続いて、曲水が干せ上がったという話も聞いたことがない。なぜ、この穏やかなせせらぎが絶えないのか、と尋ねた。

曲水の水源となっているのは園の東側に位置する「沈砂池(しんさち)」という池。所長さんの話によると、「この池は辰巳用水という江戸時代につくられた用水から水を引いている。ここで水を調整し、1秒間に160㍑の水が流れるように計算して下流に流している」とのことだった。池は深く、よく見ると水道管と思われるパイプラインとつながっている。

雨が降れば水門を少し閉めて水量を調整し、水が足りなくなれば、水道管で水を補給するようにもしている。160㍑以上になっても、以下になっても、曲水のせせらぎは流れないとの話だった。兼六園の曲水の風景は計算された景色でもあることを、このとき初めて知った。

それにしても兼六園を歩いていて、インバウンド観光客が多い=写真・下=。英語や中国が飛び交っている。石川県国際観光課のまとめによると、2024年の兼六園の入り客は延べ235万4570人で、前の年と比べて7.7%減ったものの、外国人は前年比36.4%増の53万2879人で過去最多となった。国・地域別では台湾が14万6216人と最も多く、次いでアメリカが5万3633人、以下イタリア、オーストラリアと続いた。日本人が減ったのは去年元日の能登半島地震による影響だろうか、インバウンド観光客が増えたのは円安が背景だろうか。

オーバーツーリズムによる園内の混乱はこれまで聞いたことはない。むしろ、多様な国の人々が訪れて名園を散策する光景そのものが兼六園の新たな風景のように思えた。

⇒28日(月)午後・金沢の天気 くもり

☆桜の季節を締めくくる兼六園菊桜のこと

☆桜の季節を締めくくる兼六園菊桜のこと

けさから強い風が吹いている。午前中、兼六園に行くとその強風に桜の花が揺れている。桜の花びらが風に乱れ散るようすを吹雪にたとえて、桜吹雪と表現するが、この桜は風に散る様子もない。兼六園菊桜(ケンロクエンキクザクラ)を眺めている。

 兼六園には四季折々の楽しみ方があり、ケンロクエンキクザクラもその一つ。兼六園は桜の名所で40種類、400本を超える木々があり、その中でも遅咲きの桜。ソメイヨシノが散るころに花を咲かせ、5月中旬ごろまで楽しませてくれる。一つの桜に花弁が300枚を超え、菊の花のように咲くことからこの名があるようだ。

見どころの一つは花の色が3回変わること、白咲き始めのころは濃い紅色だが、徐々に薄紅色になる。そして落下が近くなると白に近い色に変わる。そして、見どころの二つ目とされるのが散り際だ。最後は風任せの散り方ではなく、花柄ごとポロリと落ちる。桜の季節を終わりまで楽しませてくれて、潔く花の命を終わらせる。散り際に美学を感じさせることから、武家の庭園らしい見事な花だと語り継がれる桜でもある。(※写真は、花びらが薄紅色に変化している兼六園菊桜=27日午前10時ごろ撮影)

いまのケンロクエンキクザクラは2代目となる。初代は慶應年間(1865-68)に天皇より加賀藩主が賜わったものと伝えられ、別名「御所桜」とも称されていた。昭和3年(1928)に国の天然記念物に指定され、昭和45年(1970)に古死した(樹齢250年)。2代目は接ぎ木によって生まれた。あと100年もすれば国の天然記念物に指定されるのではないだろうか。

兼六園では「名木を守る」ため、台風などで名木が折れた場合に備え、次世代の後継木がスタンバイしている。人が変り、時代が変わっても、兼六園は変わらない。時空と空間を超えた壮大な芸術作品でもある。

⇒27日(日)午後・金沢の天気 はれ

★人とクマの境界ぼやけ 石川県が「警戒準備情報」を発令

★人とクマの境界ぼやけ 石川県が「警戒準備情報」を発令

冬ごもりから目覚めたツキノワグマが活発に動き始める季節に入った。石川県自然環境課は春から夏にかけて親離れした若グマの出没や、エサとなるブナが今秋は凶作と予想されることから出没の可能性が高いとして、「出没警戒準備情報」を発令した(今月24日)。県内ではブナの大凶作でクマが大量出没した2020年に目撃情報が869件、人身被害が15人にも上った。ことしはこれに準ずる危険性が予想されることから、警戒を呼びかけた。警戒準備情報の発令は2年連続となる。人身事故が発生した場合、県では「警戒情報」に切り替えて警備をさらに強化する。

クマの出没は始まっている。小松市役所の公式サイトによると、ことし4月に入ってクマ出没情報がすでに3件(7日・11日・13日)寄せられていて、サイトでは「鈴やラジオなどの音のなるものを身につけ人間の存在をクマに教えてください」や「暗くなるとクマは人を恐れなくなり、エサ探しに夢中になって、人間の接近に気づかなくなります。事故をさけるために、夕暮れには山をおりましょう」と注意を呼びかけている。

エサ不足のクマが人里に下りてきて、ペットフードや生ごみなどをあさる。最近では「アーバンベア(都市型クマ)」と呼ばれていて、市街地周辺で暮らし、街中に出没するクマも増えているようだ。県内でのクマの出没は白山ろくの加賀地方に多いが、最近では行動範囲を広げて、能登地方でも出没事例が多くなっている。(※イラストは、石川県公式サイト「ツキノワグマによる人身被害防止のために」から)

クマの市街地での出没や人身事故は石川県だけでなく全国的な問題となっている。このため国は今月18日、クマやイノシシが市街地に出没し、建物内に立てこもったり、木の上に登ったりするなど膠着状態が続いた場合、市町村の判断で発砲できるようにする「改正鳥獣保護管理法」を成立させた。6ヵ月以内に施行される。

日本は狭い国土の中で3分の2が山林で、これまで人とクマは隣り合って生きてきた。その境界が人の山林放棄やアーバンベアの出現でなくなりつつり、人とクマとの軋轢は今後ますます大きな問題になってくるだろう。改正鳥獣保護管理法だけでは済まないステージに入ってきたのではないだろうか。

⇒26日(土)夜・金沢の天気 くもり