☆金沢悲喜こもごも、兼六園の間近で火の手

☆金沢悲喜こもごも、兼六園の間近で火の手

   金沢に住む一人としてうれしいニュースがあった。民間のシンクタンク「森記念財団都市戦略研究所」がまとめた政令指定都市など109の都市と東京23区を対象にした都市ランキングで、金沢市が前年より順位を一つ上げ8位となり、今年もトップ10にランクインした。金沢は「文化・交流」分野でイベントの開催数などの「ソフト資源」が高く評価され、また、「研究・開発」分野で金沢大学などの研究拠点の論文数なども評価さた(9月21日付・NHKニュースWeb版)。ちなみに、ランキングの1位は京都市、以下、大阪市、福岡市、横浜市、名古屋市、神戸市、仙台市と続く。大学が都市ランキングに寄与できたことはうれしい。

   一方で残念なニュースもあった。きのう21日午前中、兼六園と金沢城近くの道路を自家用車で通ると、車も人もとても多かった。連休中とあってマイカーでの観光客が多かった。そして、午後3時ごろ、消防車のサイレンがけたたましく鳴った。その時、大学の研修に参加していた。休憩時間だったので、スマホをチェックすると、「兼六園近くで火災」と。兼六園と大学は直線距離にして4㌔余りなのでサイレンがよく聞こえた。

   火災の現場は兼六園の桂坂近くの飲食店だった。金沢城に向き合った、いわば兼六園の正面入り口近くだ。午前中の観光のにぎわいを見ていたので、市民よりむしろ観光客が騒然となったことは想像に難くなかった。夕方のテレビを見ると、兼六園には直接的な被害はなかったが、園内に煙が立ち込め、逃げ惑う観光客が多く見られた。テレビ局のインタビューに「黒煙がどんどん押し寄せてきて恐ろしかったです」と、男性の観光客は汗をぬぐっていたシーンが印象的だった。

   政府の観光支援事業「Go To トラベル」がこのところ順調なだけに、今回の火災は金沢観光に水を差さしたのはないかと懸念している。「Go To トラベル」は1人1泊当たり1万4千円が上限の割引額があり、加賀温泉(山代、山中、片山津、粟津)や能登の和倉温泉の高級旅館がにぎわいを見せている。宿泊客の観光ルートが金沢であり、兼六園だ。また、来月からは東京発の「Go To トラベル」も解禁となるため、観光客は今後増えるだろう。

   今回の火災が全国ニュースとなっただけに、兼六園が敬遠されるのではないだろうかと案ずる。直接的な被害はなかったにせよ、多くの人は「兼六園火災」とイメージしているだろう。4連休最終日のきょうも通常通り開園している。

⇒22日(祝)午前・金沢の天気    くもり時々はれ 

★ウイズコロナ+デジタル担当大臣=ネット投票

★ウイズコロナ+デジタル担当大臣=ネット投票

   立憲民主党の小沢一郎衆議院員がきょう21日、自身の政治塾で講演し、「1年以内に必ず政権を取る」と述べ、次期衆院選での政権交代に意欲を示したと報道されている(9月21日付・時事通信Web版)。小沢氏は「11月に社民党も(立憲と)一緒になる予定だ」との見通しを示し、「野党がほぼ一つになる。これが効果的に機能すれば絶対に政権を取れる」と強調した(同)。見出しを見て記事にアクセスした。「壊し屋」の異名で政権交代の立役者だった小沢氏の発言なので、政権奪取に向けてのどのような戦略や新機軸があるのかと興味がわいた。

   ところが、記事は「野党がほぼ一つ」になればとの前提の話で、政権交代に向けての新たな戦略や論拠など詳しい記載はなかった。では、「野党がほぼ一つ」になったとして、その可能性はあるのか。朝日新聞の世論調査(9月16、17日)で「仮に今、投票するとしたら」と衆院比例投票先を質問している。回答は、自民が48%、立憲は12%だった。共産、維新、その他政党を合わせて「野党がほぼ一つ」になったとしても31%だ。自民と公明を合わせた54%には遠く及ばない。小沢氏の発言に実現性が感じられない。小沢氏の賞味期限はもう過ぎているのではないだろうかとも思った。

   読売新聞の世論調査(9月19、20日)によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は74%で、小泉内閣の発足時の87%、鳩山内閣の75%に次いで歴代3位の高さとなった。「支持しない」は14%だった(9月21日付・読売新聞)。 安倍前総理が進めてきた政策などを菅氏が引き継ぐ方針については「評価する」が63%で、「評価しない」が25%だった。また、  閣僚人事については「評価する」が62%、「評価しない」27%を大きく上回った(同)。ご祝儀相場だろうが、評価は高い。

   有権者の一人として自身も気になっている、衆院の解散・総選挙については、「任期満了まで行う必要がない」が59%、「来年前半」が21%、「ことし中」が13%の順だった。世論の6割近くが「任期満了まで行う必要がない」と答え、これは、上記の朝日新聞の世論調査も同じ傾向だ。質問内容は若干異なるが、「今年中がよい」は17%、「来年がよい」は72%だった。世論は「来年がよい」「任期満了まで行う必要がない」が主流だ。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、選挙などやってほしくないという、ある意味で世論の「拒絶反応」でもある。

   菅氏は新型コロナウイルスの収束や経済の立て直しを優先するとの考えを示している。ところが、総理の周辺では高評価の時機を逸しないようにと早期解散・総選挙の声が上がっている。ある意味で矛盾を解決するのはインターネットによる投票ではないだろうか。ネットによる選挙運動はすでに解禁されている。次はネット投票だ。総理の肝入りで新閣僚にデジタル担当大臣を任命した。マイナンバーカードの普及、そしてネット投票がセットで実現すれば、デジタル社会への大きな一歩になるだろう。ウイズコロナのこのタイミングでネット投票を実現させてほしい。

⇒21日(祝)朝・金沢の天気     はれ

☆いつまで続く「機種安く、月々料金高い」ビジネスモデル

☆いつまで続く「機種安く、月々料金高い」ビジネスモデル

   菅内閣の発足を受けて、メディア各社が世論調査を行っている。毎日新聞の調査では、内閣支持率が64%で、不支持率は27%を大幅に上回っている(9月18日付・毎日新聞Web版)。 朝日新聞社の調査は内閣支持率が65%で、不支持率は13%だった(9月17日付・朝日新聞Web版)。共同通信の調査でも支持率は66.4%、不支持率は16.2%だった(9月17日付・共同通信Web版)。3社の調査では支持率がおおむね65%とそろっている。

   菅総理はさっそく「公約実行」に動いているようだ。きょう菅氏は武田総務大臣と官邸で会談し、携帯電話料金の引き下げに向けて検討を進めるよう指示した。会談後に武田氏は「国民の生活と直結する問題なので、できるだけ早く結論を出すよう全力で臨んでいきたい」「1割とかいう程度では改革にならない」と記者に語った(9月18日付・共同通信Web版)。携帯料金の値下げについて、菅氏は官房長官時代の2018年に「4割程度下げる余地がある」と発言して注目された(同)。

   国の電波を管理しているのは総務省だ。携帯電話料金の値下げが進まなければ、おそらく電波利用料の見直しを迫るという「圧力」が携帯キャリア各社にかかるだろう。何しろ電波利用料は安価だ。携帯キャリアが国に納めている電波利用料は端末1台当たり年間140円。令和元年度でNTTドコモは184億円、ソフトバンクは150億円、KDDは114億円だった(総務省公式ホームページ「令和元年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額」)。NTTドコモは国へ電波利用料184億円を納め、携帯電話の通信料としてユーザーから3兆943億円を売り上げている(2019年度)。

   自身のスマホの利用料金は通信料で年額ざっと6万円だ。キャリアが国に納める1台当たり年間140円で、個人がキャリアに払う年6万円となる。通信インフラの整備や維持費に多少のコストがかかったとしても、菅氏の「日本は世界でも圧倒的に高い水準で、4割は下げられる」の主張には納得する。

   その背景にあるのは、「機種は安く、通信料は高い」のビジネスモデルではないだろうか。携帯電話だけにとどまらない。プリンターもそうだ。これも自身の実感だが、自宅で使うプリンターを3万5千円で買った。インクは6種あり、メーカーの純正インクでぜんぶそろえると5千円ほどかかる。さらに最近実感するのだが、減りが早い。インク量を減らしているのではないかと疑っている。そして、先日、そのプリンターが一年も経たないのに故障した。修理より買った方が安価と電気店で言われ、買った。「機種は安く、インクは高く、機種交換も早い」というビネジネスモデルかと疑っている。

   使っているスマホも、自宅のWi-Hiをセットして動画など視聴しているが、いつの間にかWi-Hiが「OFF」になっていて、料金が高くなっていることがある。携帯キャリアが勝手に操作しているのではないかと、これにも不審に思っている。グチになってしまったが、スマホの利用料が果たしてどこまで下げることができるのか。菅内閣の手腕が試される。

⇒19日(土)朝・金沢の天気     はれ

★テレビ局は追い詰められた出演者とどう向き合ったのか

★テレビ局は追い詰められた出演者とどう向き合ったのか

          先ほどニュースを見て、「これは警察の忖度か」と思わず考え込んだ。多額の負債を抱えて倒産した磁気治療器販売「ジャパンライフ」が、顧客に虚偽の説明をして現金をだまし取ったとして、警視庁の捜査本部は18日朝、元会長ら14人を詐欺容疑で逮捕した。「ジャパンライフ」は2015年に元会長に届いた安倍総理主催の「桜を見る会」の招待状を顧客勧誘セミナーで見せびらかして参加者を信用させていたと、去年12月の参院本会議でも問題になっていた。安倍退陣と菅政権発足を見計らった絶妙なタイミングなのだ。

   ようやくこの問題が動き出した。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがことし5月23日に自死した問題で、BPO放送人権委員会は遺族からの申し立てを受け、審理入りを決定した(9月15日付・BPO公式ホームページ)。番組で女子プロレスラーが演じた、同居人男性の帽子をはたくシーンは番組制作側の「やらせ」だったのかどうかが問われる。委員会は遺族とフジテレビが提出する書面と、双方へのヒアリングをもとに審理を行い、その結果を「勧告」または「見解」としてまとめ、双方に通知した後に記者会見で公表する予定だ(同)。

   問題のシーンは『テラスハウス』(38話)で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。この38話は3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNSコメントが批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとっている。5月18日の地上波放送では、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流された。女子プロレスラーが自死したのは5月23日だった。

   BPOに対し女性の母親は7月15日に申し立てを行い、番組でプロレスのヒール(悪役)のキャラクターを演じるよう指示され、「番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けた」として、人格権の侵害を訴えていた。また、「全ての演出指示に従うなど言動を制限する」などの条項を含む「誓約書兼同意書」によって自己決定権が侵害され、人権侵害に相当すると訴えていた。

   これに対し、フジテレビ側は7月31日付で内部調査の検証報告を公式ホームページで掲載した。聞き取りを番組のプロデューサー、ディレクター、制作現場のスタッフ、出演者、女子プロレスラーの所属事務所の関係者ら27人に対して行った。番組について「予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていた」としたうえで、調査では「制作者が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されなかった」としている。

   また、同意書兼誓約書に関しては、出演契約であり労働契約のように「指揮命令関係に置くものではない」としている。動画配信サービス後の自傷行為から放送後にいたる間は、番組スタッフが本人と連絡を取り、ケアにより、「精神状況が比較的安定していることを確認している」とも主張している。

   BPO放送人権委員会の審議のポイントはいくつかあると推測する。一つは、フジテレビ側はなぜ内部調査だったのか、第三者委員会を設置して客観的視点から調査を行うべきではなかったか。もう一つは、「Netflix」での配信をきっかけにSNSによる批判が殺到し女子プロレスラーが自傷行為に及んだ。地上波の放送でもSNS炎上が予想されたにもかかわらず、なぜ動画修正の措置などを講じなかったのか。テレビ局として追い詰められた出演者とどう向き合ったのか、問われるところだろう。BPOの審理に注目したい。

(※写真は5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事)

⇒18日(金)朝・金沢の天気    あめ

☆「自助・共助・公助、そして絆」というSDGs

☆「自助・共助・公助、そして絆」というSDGs

   菅総理大臣の初めての記者会見がきのう16日午後9時からあり、テレビで視聴した。会見で述べていた「自助、共助、公助、そして絆」はこれまで何度か耳にしていたが、改めて聴くと、これはひょっとして「菅流SDGs」ではないのかと心に刺さった。

   菅氏はこう語っていた。「まずは自分でやってみる。そして、家族、地域でお互いに助け合う。そのうえで、政府がセーフティーネットでお守りする」。SDGsの理念は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」だ。自ら努力し、助け合い、そして公的な支援でしっかりとした絆(きずな)をつくることで、誰一人取り残さないという意味だと解釈した。

   その次のコメントがさらに鋭かった。「こうした国民から信頼される政府を目指す。そのためには、行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打ち破って、規制改革を全力で進める。国民のためになる、国民のために働く内閣を作り、期待に応えていきたい」。これまでの内閣は新しいキャッチフレーズで政治や経済や政治のクローバル化や、福祉や医療の充実といった政策を打ち出してきた。ところが、菅氏は国民という目線で行政の縦割り、悪しき前例主義を打ち破る、「国民のために働く内閣」に徹底すると強調したのだ。これまでなかったキャッチフレーズではないだろうか。

   それでは、「自助、共助、公助、そして絆」を徹底的に実行することで、どのようことが可能になるのだろうか。SDGs17のゴールと照らし合わせてみる。1・貧困をなくそう (No poverty)、2・飢餓をゼロに(Zero hunger)、3・すべての人に健康と福祉を(Good health and well-being)、4・質の高い教育をみんなに(Quality education)、5・ジェンダー平等を実現しよう(Gender equality)、10・人や国の不平等をなくそう(Reduced inequalities)、11・住み続けられるまちづくり(Sustainable cities and communities)、16・平和と公正をすべての人に (Peace, justice and strong institutions)、17・パートナーシップで目標を達成しよう( Partnerships for the goals)、の9のゴールが見えてくる。

   さらに、菅氏は、携帯電話の料金が高すぎることなどを指摘し、「当たり前ではない、いろいろなことがある。それらを見逃さず、現場の声に耳を傾けて、何が足りないのかをしっかりと見極めたうえで、大胆に実行する。これが私の信念だ」と述べていた。これを経済と働く現場の感覚を重視するという意味で考えると、8・働きがいも経済成長も(Decent work and economic growth)、12・つくる責任 つかう責任(Responsible consumption, production)が見えてくる。さらに、菅氏が掲げる行政のデジタル化に加え、産業のデジタル化を推進することで、9・産業と技術革新の基盤をつくろう(Industry, innovation, infrastructure)のゴールも想定できる。

   ただ、菅氏のコメントで見えてこなかったのは生物多様性や気候変動といった環境問題に関する政策、そして、ODA(政府開発援助)だ。ODAによって、ぜひ、6・安全な水とトイレを世界中に(Clean water and sanitation)をサポートしてほしい。環境では、7・エネルギーをみんなに そしてクリーンに(Affordable and clean energy)と13・気候変動に具体的な対策を(Climate action)を示してほしいものだ。

   そして、外交として里山里海と生物多様性の問題にも取り組んでほしい。2010年に名古屋市で開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された、20項目を10年で達成する「愛知目標」が困難との報告が公表された(9月15日付・共同通信Web版)。森林の減少や種の絶滅、海洋資源の乱獲が世界各国で報告されている。そこで、14・海の豊かさを守ろう(Life below water)、そして、15・陸の豊かさも守ろう(Life on land)のSDGs目標を掲げてはどうだろう。

   日本で採択された国際目標が達成できないとすれば、逆に2030年達成に向けて国際的なイニシャティブを発揮するチャンスではないだろうか。

⇒17日(木)午前・金沢の天気     くもり

★「家を愛する人のように、核兵器は手放さない」

★「家を愛する人のように、核兵器は手放さない」

   きょう16日午後の臨時国会で菅義偉氏が総理大臣に指名され、その後に内閣が発足する。日本のメディアはいつものように新しい内閣の顔ぶれをめぐって連日しのぎを削っていたが、アメリカのメディアは、「ウォーターゲート事件」を暴いたことで知られるジャーナリストのボブ・ウッドワード氏の新刊『RAGE』(今月15日発売)をめぐってしのぎを削っていた。トランプ大統領に対し18回(昨年12月5日-今年7月21日)のインタビューを重ね、北朝鮮との非核化交渉をはじめ、新型コロナウイルスの感染拡大の問題についての内幕を聞き出している。11月3日の大統領選を控えているだけに、メディア各社は発刊前にこの暴露本に注目したようだ。

    CNNはウッドワード氏から取材の音声テープの一部を入手し、今月10日付のCNNニュースWeb版日本語で報じている。ことし2月上旬のインタビューでは、トランプ氏は新型コロナウイルスは「非常に驚きだ」と語り、インフルエンザの5倍以上の致死性がある可能性を指摘していた。ところが、公の場でトランプ氏は当時、新型コロナウイルスは「いずれ消える」「全てうまくいく」と主張していた。この矛盾点について、ウッドワード氏が、トランプ氏が非常事態宣言を出した数日後の3月19日のインタビューで尋ねると、トランプ氏は「常に控えめに扱いたいと思っていた」「今でも控えめに扱いたいと思う。パニックを引き起こしたくないからだ」と答えた。

   9月10日のホワイトハウスでの記者会見で、ウッドワード氏へのインタビューについて、記者からもこの矛盾点を突かれ、トランプ氏は以下にように答えている。「 I want to show a level of confidence and I want a show strength as a leader」(ホワイトハウス公式ホームページ)。コロナ禍と向き合うために、国のリーダーとして災禍を克服する自信を見せたい、リーダーとしての実力を見せたいという思い当然だ。被害の大きさを隠そうとしたのは、「This is China’s fault. (中国の過ちだ)」と述べた。

   ウッドワード氏の古巣でもあるワシントン・ポスト紙は、トランプ氏がウッドワード氏に語った北朝鮮の金正恩党委員長についての人物評を紹介している=写真=。その中で面白い下りがある。「Trump told Woodward that he evaluates Kim and his nuclear arsenal like a real estate target: “It’s really like, you know, somebody that’s in love with a house and they just can’t sell it.”」(9月9日付・ワシントン・ポストWeb版)。意訳すると、金氏と核兵器の関係は家主と不動産の関係と似ていると評した。それは、家主が自分の家を気に入っていると売却したくてもできないのと同じだ、と説明した。

   トランプ氏と金氏は「完全な非核化」をめぐって、3度の首脳会談(2018年6月12日、2019年2月28日、同5月30日)を持ったが、トランプ氏は非核化を完全に反古された状態だ。トランプ氏はその経緯を分かりやすく説明しようと、ウッドワード氏に不動産取引での例えを述べたのだろう。核兵器に愛着がある金氏に核の放棄を説得するのは容易でない、と。いかにも不動産事業家でもあるトランプ氏らしい。 

⇒16日(水)朝・金沢の天気     くもり

☆「イチゴ農家の息子」 会見3213回の忍耐強さ

☆「イチゴ農家の息子」 会見3213回の忍耐強さ

   自民党の新しい総裁に選出された菅義偉氏は官房長官として記者会見に臨んだ回数は3213回に達したと報じられている。長官在職日数は歴代1位であり、会見回数もトップだ(9月14日付・時事通信Web版)。

   官房長官の会見は平日の午前、午後の定例会見と、大規模災害発生時などの臨時会見がある。有名な会見は令和の新元号を発表した2019年4月1日の会見だろう。会見には記者からさまざまな質問が飛ぶ。メディア業界でも有名なのは菅氏の「天敵」とも呼ばれる、ある新聞社の女性記者だ。記者は厳しい質問を繰り返しぶつけると、菅氏は正対せずに「指摘は当たらない」「承知していない」とあしらう。この繰り返しが続く。

    きのうが官房長官として最後の記者会見だった。「BuzzFeed News」(9月14日付)がその会見のコメントを記事として起こしている。最後のコメントだ。「報道陣:かなり質問させていただいたと思うんですが、こうした国民の疑問をですね、長官はどう感じてこられたか。率直な感想を教えてください」「菅氏この記者会見というのはご承知の通り、全く限られた中で10数名の記者の皆さんから様々の質問にお答えをするわけですから、なかなか納得のいくような説明はできないのかなということを常に気になりながら会見をしてきました。現実問題をかなり反映している、そういう質問だったという風に思います。ありがとうございました」。3213回の記者会見、継続はチカラなり。それにしても忍耐強い。

    では、海外のメディアは菅氏のことをどう伝えているのか。BBCニュースWeb版(14日付)=写真=は「Born the son of strawberry farmers, Mr Suga is a veteran politician.」(イチゴ農家の息子として生まれた菅氏はベテランの政治家だ)と紹介し、人柄として「精力的または情熱的な政治家とは見なされてはいないが、非常に効率的で実用的だとの評判がある」と伝えている。しかし、菅氏は、安倍総理の代表的な経済政策である「アベノミクス」を継続すると約束したが、新型コロナウイルスによって引き起こされたパンデミックのもとでは、経済不振でさらに苦しむことになるだろうと予想している。

   それにしても、菅氏のことを日本のメディアは「農家の息子」と紹介しているが、BBCは「イチゴ農家の息子」と紹介しているところが、ヨーロッパ風ではある。あす16日の臨時国会で第99代の総理に指名される。

⇒15日(火)午前・金沢の天気   くもり

★マックス・ウェーバー「資本主義の精神」の紆余曲折

★マックス・ウェーバー「資本主義の精神」の紆余曲折

   大学で学生たちと雑談していて、「宇野先生が学生時代に読んだ本で一番印象に残っているものは何ですか」と問われたことがある。学生時代は45年以上も前のことだが、それははっきりと覚えていた。「ドイツの社会経済学者マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』だよ」と。学生たちはそのころの小説などを期待していたようだが、「それはどんな本ですか」と意外な返事に形相を変えた。「ゼミで論じ合ったことがきっかけ。でも、社会人になってからもずっと頭から離れなかった」

   この本=写真=は、資本主義はどのようにしてヨーロッパで生まれたのかというテーマを精神的土壌からひも解いていくものだった。プロテスタントの教義は、身分は低くとも自分の仕事に誇りを持って専念しなさいと人々を諭した。これがカルヴァンが説いた予定調和説の「あらかじめ神が決めたこと」だ。一方、カトリック社会では階級序列があり、より高い階級へ上昇できる可能性がある。すると、今の仕事はより高い地位に就くための通過地点にすぎないと考える人々は実入りのよい仕事に目を向け、現状の仕事に専念しなくなる。その結果として生産性は低くなる、とウェーバーは分析したと覚えている。

    こうした「清貧な労働」はその後に変容していく。カルヴァンと同じく予定調和説に立ち「神の見えざる手」として市場原理主義を考えたアダム・スミスは、『国富論』の中で、労働こそ富の源泉とし、それまで富といえば宝石や農産物という考え方を覆した。労働価値というものがあり、貧しい社会が隆盛で幸福であろうはずはないとして高賃金論を展開していく。1776年に『国富論』が出版された当時、賃金が上昇すると労働者が怠慢になるという風潮があったからだ。この時代あたりから、予定調和説と利益追求が一体となって、現在イメージされる資本主義の原型が出来上がった。

   学生たちにここまで話すと、質問が飛んできた。「ITやAIのこの時代に資本主義なんて通用しないのでは」と。確かにそうだ。「東西冷戦」という歴史があり、旧ソビエト連邦が1991年に崩壊し、誰もが資本主義が共産主義に勝ったと信じた時代があった。ところが、2008年にサブプライムローンの破綻によって、アメリカの金融マンや経営者がカジノの胴元のように称され、「カジノ資本主義」や「強欲資本主義」などと資本主義の評価は急落した。おのれの利益追求に暴走し経済が混乱に陥った資本主義の姿だった。

    さらに、資本主義と表裏一体で進んだ産業革命では、生産性や物流を促すために、地下の化石燃料を掘り上げて大気中に二酸化炭素として撒き散らした。それが地球温暖化や気候変動という現象としてクローズアップされている。こう述べると、学生たちから質問が。「マックス・ウェーバーが唱えたプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神はとても清らかだったと思いますが、その精神はヨーロッパにはもうないのですか」と。「いや、すでにヨ-ロッパでは資本主義の原点回帰が始まっている」

    資本主義を生んだヨーロッパで現在起きていること。アメリカ資本主義を象徴するファストフードのマクドナルドの1号店が1980年代にイタリア・ローマに出来たことが刺激となって、イタリア北部ビエモント州ブラという人口3万人ほどの町で「スローフード運動」の声が上がった。1989年にはパリで国際スローフード協会設立大会が開かれ、スローフード宣言を出している。3つの活動指針がある。「守る:消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る」「教える:子供たちを含め、消費者に味の教育を進める」「支える:質のよい素材を提供する小生産者を守る」 である。

    このスローフード運動は食行動の見直しから生きることの見直しへと波紋を広げて、ヨーロッパに広がっている。スローフード運動はいまやスローライフやスローワークへとカタチを変えている。ITやAI、さらに新型コロナウイルスの感染拡大は、資本主義文明の見直しをさらに加速させるだろう。「文明の紆余曲折は続くよ」

   学生たちと30分ほどの雑談だった。そう言えば、今年はマックス・ウェーバーの没後100年に当たる。

⇒14日(月)朝・金沢の天気    くもり時々あめ

☆これは、解散・総選挙への「地ならし」か

☆これは、解散・総選挙への「地ならし」か

   「物議をかもす」という言葉がある。このブログでも時折使う。世の人々の議論を引き起こす、という意味で使っている。このごろの「物議をかもす」ニュースをいくつか。

   麻生副総理兼財務大臣がきょう13日、自民党総裁選を巡り、次期総理の下ですぐに衆院解散・総選挙が行われる可能性があるとの認識を示したと報じられた(9月13日付・共同通信Web版)。新潟県での講演で、次期政権は国民の審判を経ていないと批判されるだろうと指摘した。自身も2008年9月の総理就任後、時を置かずに解散したかったが、リーマン・ショックのためにできなかったと説明し、「タイミングは極めて大事だ」と強調した(同)。

   新型コロナウイルスの感染拡大の中で、自民党の総裁選では政治的な空白が起きないように全国の党員票は割愛して、国会議員票と各県連の票のみで総裁を決めるとの党の方針が決まっている。なのに、党の総裁選で選ばれ就任する次期総理は早々に衆院解散・総選挙に打って出るだろうか。新型コロナウイルスの感染拡が治まらない中で、国民の審判を仰ぐ以前に、国民の納得が得られないだろう。麻生氏の発言は総理経験者として自らの体験を話したまでと言えばそうかもしれないが。

   次期総理の下での衆院解散・総選挙については、河野防衛大臣も今月9日、アメリカのシンクタンク主催のオンライン形式の講演会で、「10月中にはおそらく行われると思う」と述べた(9月10日付・NHKニュースWeb版)。解散権は総理の権限であり、現職閣僚の立場にある人物の発言が物議をかもした。その2日後、河野氏は記者会見で「今後、口を慎むところは慎んでいきたい。言うべき人が言うべきものだと思う」と述べた(9月11日付・同)。

   ところが、政府関係者による衆院解散・総選挙の発言が相次ぐと、雰囲気づくりが意図的に行われているようにも思える。それをさらに裏付けするようなニュースもあった。

   政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(今月11日)が、11月末までの期限付きで、必要に応じて主催者らが参加者にマスクを配布して全員に着用させるなどの感染防止策を取れば、参加者らが大声を出さない環境が確保できる施設では収容人数いっぱいまでの入場を認めることを了承した(9月12日付・朝日新聞)。これは、うがった見方かもしれないが、全員がマスクをすれば立候補者による選挙集会も可能で、集会場も確保できるとの解釈もできる。

   次期総理の下での総選挙の「地ならし」が着々と進んでいるのか。

⇒13日(日)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★「スマホ認知症」からどう脱却するか

★「スマホ認知症」からどう脱却するか

  先日職場の同僚と話しをしていて、「スマホ認知症」という言葉を初めて聞いた。「最近、人の名前や店の名前がなかなか浮かんでこない」とグチをこぼすと、「宇野さんの場合は、スマホ認知症だよ」と笑われた。自らは気にはしていなかったが、スマホと向き合って何かを検索している姿をよく見かけると同僚は指摘してくれた。そこで、PCでこの言葉を調べると、かなり「重症」だと自覚した。

   この症状は、スマホやPCを長い時間使用すると脳機能が低下して、人名が出てこなかったり、物事を思い出せない状態になる、一時的な記憶障害を指す。「デジタル認知症」とも呼ばれ、かつては「依存症」と言っていた。

   これまで、記憶する、思い出すといった能機能の弱まりは加齢によるものだとばかり思っていたが、スマホやPCがそれに拍車をかけているとは認識がなかった。最近、手帳に日時と場所の予定を入れる際、日付を間違って記入したり、訪問先の名前を思い出せなかったりと「重症化」している。大事な会議のうっかり忘れは今のところないが、近い将来は怪しい。

   さらに最近気になるのが寝不足だ。就寝時にベッドに横たわりながら、スマホで最新のニュースをチェックする癖がついている。寝室は消灯にして、スマホのディスプレイの明るさは最低にしている。10分もしないうちに眠りに入るが、2、3時間で目が覚めてしまう。眠れなくなり、またスマホを手に取ってしまう。そのうち、いつの間にか寝入るの繰り返し。このところ、毎日が睡眠不足の状態だ。この原因は、スマホの画面の光(ブルーライト)を浴びるとメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンの分泌量が落ちて寝つきが悪くなるとの説も散見する。起きている間は脳の情報処理能力が落ちて、上記のような事務処理能力にも影響を及ぼす。負のスパイラル、悪循環が続いている。

   それと、PCやスマホで安易にネット検索すると思考能力が弱まるとの説もあるがエビデンスを探すことはできなかった。ただ、言葉の意味を辞典で調べたり、花の名前を図鑑で調べたりすると探究心のようなものがわいてくる。これはPCやスマホでは味わえない感覚だ。 

   こうした「スマホ認知症」や「デジタル認知症」の対策として、最近では「デジタル・デトックス(digital detox)」という言葉も生まれている。デトックスは、医学用語の解毒を意味するデトクスィフィケーション (detoxification)の短縮形で、デジタル・デトックスはスマホやPCなどのデジタル機器の使用を控えて依存症を抑えるという意味のようだ。

           では、自らは「スマホ認知症」からどう脱却すればよいのか。まずは就寝時のスマホ・デトックスから始めてみよう。簡単にスマホを手放すことはできるのか、スマホ中毒に陥ってはいないかと気にはなるが、その結果はまたこのブログで紹介したい。

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