☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

    結局、いいように「金づる」にされているのか。時事通信Web版(6月3日付)によると、WHOが参加を呼びかけたワクチン供給の国際組織「COVAX」のサミット(オンライン会議)が2日開かれ、菅総理は新型コロナウイルスワクチンの途上国への公平な普及に向け、8億㌦の追加拠出を行うと表明した。途上国向けワクチンについては、これまで日本政府は2億㌦を拠出していて、今回の8億㌦と合わせると、拠出額はアメリカに次ぐ10億㌦となる。

   日本国内のワクチン接種は65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は47万人(6月1日現在・総理官邸公式ホームページ)、率ではわずか1.3%だ。国内でこんな状況なのに、他国になぜ10億㌦も寄付をするのか、国内にもっと注力してほしいと誰しもいぶかるに違いない。

   金づるの仕組みはもう出来上がっている。5月15日付のこのブログでも述べたが、昨年2020年5月16日、WHOのテドロス氏とIOCのバッハ会長は「スポーツを通して健康を共同で促進していく覚書(MOU)」を交わしている。その中で、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)が示される。つまり、パンデミックの下で東京オリンピックを開催するしないの「決定権」を握っているのはWHOだ。

   テドロス氏がオリンピック参加国でもある低所得国にワクチンが行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないと言えば、バッハ会長も従わざるを得ないだろう。そこで、テドロス氏の意向を受けたバッハ氏が今度は東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長を通して、COVAXへの拠出を要望してきた。菅総理も日本が拠出しないと東京オリンピックのイメージダウンになると決断したのではないだろうか。

   この「COVAXストーリー」はさらに奥が深い。WHOが中心となってワクチンを共同購入することになるが、主な購入先は中国だろう。WHOは5月7日に中国国有製薬大手「中国医薬集団(シノファーム)」が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認。治験などから推定される有効性は79%。そして、きのう2日にも中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについて緊急使用を承認した。

   CNNニュースWeb版(6月2日付)=写真=によると、WHOはシノバック製ワクチンの使用認可で、供給問題に直面しているCOVAX計画が加速すると期待し、担当者は「世界全体で起きているワクチンへのアクセスの不平等さを克服するには、複数のワクチンが必要だ」と述べた。中国政府は、年末までに30億回分を生産したいとしている。

   これまで最大のワクチン供給元となっていた「インド血清研究所(SII)」は、国内の感染急拡大を受けて3月にワクチンの輸出を停止している。

   世界から集められた拠出金で中国製のワクチンを購入するシステムが出来上がる。同時に、中国としては、来年2月の北京冬季五輪はワクチンが世界に行き渡った状態で開催する。まさに「一石二鳥」と豪語しているだろう。日本はただの金づるになっているだけ。裏読みのストーリーではある。

⇒3日(木)午前・金沢の天気    はれ

★「トーチキス」って何だ 時代の変化とカタカナ語

★「トーチキス」って何だ 時代の変化とカタカナ語

          きょう2日、ようやく金沢市のコロナワクチンコールセンターと電話がつながり接種の予約ができた。5月6日から予約が始まり、土日を除いて毎日繰り返し電話をしたがつながらず、「電話うつ」の状態だった。夕方になって繋がってもきょうの予約分はすでにいっぱいになっていて、係員から「あすまた電話をおかけください」と言われ、ショックを受けていた。電話そのものをかけたくなくなる状態だった。

   きょうは正午ごろにつながって、接種券の番号や住所・氏名、指定の病院、日時、当日持参する書類の確認など5分足らずの手続きだった。最後に「ほかに何か問い合わせがありますか」と聞かれたので、「なぜつながらないのか、予約の仕組みがおかしい」と一言文句を垂れようかと一瞬思った。が、電話の相手の男性のしゃがれ声に対応の疲労を察して、「お疲れ様、ありがとう、これで安心しました」と受話器を置いた。

   話はがらりと変わる。東京オリンピック・パラリンピックの「聖火リレー」が31日と1日の両日、石川県内で行われた。テレビでその様子を見ていた。石川県に適用されている新型コロナウイルスの「蔓延防止等重点措置」(今月13日まで)を受けて、公道でのリレーは中止になった。その代わり行われたのが無観客のセレモニー会場のステージで行われた「トーチキス」。ランナーは走らずにトーチで聖火を受け渡す=写真、東京オリ・パラ組織委員会公式ホームページより=。

   それにしても、「トーチキス」という言葉は今回初めて知った。それぞれトーチがまるでキスでも交わすように聖火を渡していくので、「トーチキス」。和製英語なのだろうか。

   昨年の新型コロナウイルスのパンデミック以来、次々とカタカナ語が飛び交っている。「ロックダウン」や「ソーシャルデスタンス」、「クラスター」などはその典型だろう。これらの言葉は聞いただけでなんとなく理解はできるが、戸惑うカタカナ語もある。この3月、テレビのニュースで東京都の小池知事が「ハンマー・アンド・ダンスという言葉があるが、今はダンスの時ではない」と語っていた。「ハンマー・アンド・ダンス(The Hammer &The Dance)」、ネットなどで調べると、ハンマーでたたくように対峙、そしてダンスを踊るように共存を意味する。アメリカでは医療従事者の間でよく使われる感染対策の理論のようだ。

   時代の変化とともにカタカナ語などがどんどんと生れ、移入してくる。そして時代が去れば言葉も死語と化す。言葉は生き物のようでもある。とりとめのない話になってしまった。

⇒2日(水)夜・金沢の天気      はれ

☆「記者会見うつ」大坂なおみ選手の場合

☆「記者会見うつ」大坂なおみ選手の場合

   記者会見は筋書きのないドラマでもある。記者の質問によって、人物や会社や組織が試されたり、会見の場が修羅場と化すこともある。2014年7月、会見に応じた兵庫県議会の県議が政務活動費の不正問題に質問され、「このような指摘を受けるのはつらい」と突然大声で泣きだした。本来ならばローカルニュースだが、この号泣会見の模様はテレビでも全国ニュースに、さらにイギリスBBCもその泣きの会見を世界に流した。

   会見で記者たちはどのようことを意識して質問をするのか。事実関係の問いただしのほかに、カメラ目線や態度、言動から心理を読んだりする。政治家の場合はカメラの向こうの国民や有権者を意識して語るのが通常だが、妙に目線がキョロキョロとしていれば、心理的に相当な動揺があることが分かる。そこから、政局を読んで記事にすることもある。一方の質問される側はこのような記者目線は相当なプレッシャーであることは想像に難くない。   

   女子テニスの大坂なおみ選手がツイッターで、全仏オープンの記者会見を拒否し、今月2日予定の2回戦を棄権すると明らかにしたことが大きな波紋を呼んでいる。大坂選手は先月30日、全仏オープンの1回戦でルーマニアの選手に2対0のストレートで勝ったが、試合後の記者会見に出席しなかった。このため、大会の主催者は、1万5000㌦の罰金を科すと発表した(5月31日付・NHKニュースWeb版)。

   きのう31日付の本人のツイッターでは、2018年から「うつ状態」に苦しんでいることを告白し、「少しの間、コートを離れる」と休養も示唆した。「グランドスラム」と称される4大大会は、全豪オープン(1月)、全仏オープン(5-6月)、全英オープン(6-7月)、全米オープン(8-9月)だ。「少しの間、コートを離れる」とは、全仏と全米には出場しないという意思表示だろう。

   ツイッターを読んで、うつと格闘していると自分の有り様を公表したのはある意味で勇気のある行動であり、つらい心情と察する。反面で、スポーツ界におけるメンタルヘルスのケアはどうなっているのか気になる。主催者側が本人から事情を聴き、精神的につらいと申し出があれば、記者会見はその旨を記者に告げて中止にしてもよいのではないか。それは「アスリートファーストの配慮」というものだろう。それもなく、大会規則にのっとり罰金を科すとは。

   確かに、放映権を有するテレビなどメディアが世界に発信しているから大会の価値も上がり、有力なスポンサーもついて大会の賞金も上がるという相乗効果だ。主催者側は、トップ選手ともなれば、メディアに答えるのはある意味で義務と定めているのだろう。

   今回はストレート勝ちでの2回戦進出だったので、晴れ晴れと会見に臨むだろうとファンも期待したはずだ。では、本人はなぜ拒否したのだろうか。先月27日のツイッター=写真=で、全仏オープンで会見に応じない意向を表明していた。以下憶測だ。イタリア国際女子シングルス2回戦(5月13日)でストレート負けした大阪選手がラケットをコートに叩きつけて壊すというシーンがネット動画などで流れて批判も起きた。一瞬の怒りの行為とはいえ大阪選手はそのことを悔やんでいた。全仏オープンの記者会見でこの件について記者から質問が飛んで来るかもしれないと想像すると不安が募った。「うつ状態」がさらに激しくなり、会見に臨む意欲は失せていたのではないだろうか。

⇒1日(火)夜・金沢の天気     はれ

★バイデン指示「90日で結論を」動物感染か研究所漏洩か

★バイデン指示「90日で結論を」動物感染か研究所漏洩か

   ワクチン接種の遅れに自身もやきもきしている。ことし2月に接種が始まった医療従事者(480万人)ですら、2回接種を終えたのは282万人(5月27日現在・総理官邸公式ホ-ムページ)、率換算で58%、ようやく半数越えだ。65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は24万人(同)、率ではわずか0.6%だ。もたもたしているうちに、変異株が多様化と進化を繰り返し、そのうちワクチンが効かなくなるのではないかと不安もよぎる。

   新型コロナウイルスの起源をめぐってニュースが相次いでいる。CNNニュースWeb版日本語(5月28日付)は、「フェイスブック社の広報はCNNに寄せた声明で、今後は新型コロナウイルス感染症が人工的に作られたとする主張を当社のアプリから削除しないことにした」と伝えている。フェイスブックは今年2月、WHOなどと協議し、ウイルスが人工的に作られたとの主張を削除すると発表していた。(※写真・上はThe White House公式ホームページより)

   ロイター通信Web版日本語(同27日付)は、アメリカのバイデン大統領は新型コロナウイルスの起源について、動物からの感染と研究所からの漏洩という2つのシナリオを国内の情報機関が精査しているものの、見解は割れていると明らかにし、声明で「明確な結論に近づくことができるよう、情報機関に対し情報の収集・分析に関する取り組みを強化し、90日以内に報告するよう要請した」と述べた、と報じている。 WHOは実施したコロナの起源を探る調査報告書を3月に公表し、ウイルスが武漢周辺の研究所から漏洩したとの見方は「最も可能性の低い仮説」と結論付けていた。

   ウォールストリート・ジャーナルWeb版日本語(同27日付)も「2020年2月6日、華南理工大学の肖波涛教授は、このウイルスについて『恐らく武漢の研究所が発生源だろう』と結論付けた論文を発表した。しかし中国政府はコロナの発生源に関する研究を厳しく制限しており、同教授は論文を撤回した」と研究所からの漏洩を報じている。 

   上記の一連の報道でいぶかったのは、研究所からの漏洩がは発生源とする分析はアメリカで相当進んでいるものとこれまで理解していたからだ。現に、アメリカ前政権の当時のポンペイオ国務長官は、中国科学院武漢ウイルス研究所に関する「新たな情報」として声明を発表している。NHKニュースWeb版(20121年1月16日付)によると、ポンペイオ氏は「アメリカ政府には、感染拡大が確認される前のおととし秋、研究所の複数の研究員が新型コロナウイルス感染症やほかの季節性の病気とよく似た症状になったと信じるに足る理由がある」と主張。加えて、「研究所は新型コロナウイルスに最も近いコウモリのコロナウイルスを遅くとも2016年から研究していた」「中国軍のための極秘の研究に関わっていた」と発表していた。

   ポンペイオ氏の声明には裏付けがあるものと自身も理解していた。この事件がきっかけだった。アメリカのハーバード大学教授が中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は2020年1月、大学教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)している。教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている科学者。リーバー氏は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結んでいた。(※写真・下は2020年2月6日付・ニューヨーク・タイムズWeb版)

   つまり、武漢周辺の研究機関でのウイルス研究に詳しかったであろうリーバー氏から事情聴取が進み、かなり全容が見えてきた段階でポンペイオ氏が声明を出した、とニュースの流れを読めば誰しもそう考える。ところが、トランプ氏からバイデン氏へと政権交代がポンペイオ氏の声明から5日後の1月20日に行われたことで、武漢市でウイルス感染の起源についての調査は頓挫していたようだ。トランプ氏やポンペオ氏は新型コロナを「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と叫んだため、コロナ禍をめぐる政権の失政を中国の責任に転嫁しようとする政治的な発言とバイデン政権は解釈したのだろう。解明調査はストップした。フェイスブック社もバイデン政権と連動するように武漢起源説やウイルス人工説に関する主張をアプリから削除した。

   このアメリカの状況を中国側は利用した。WHO報告書では武漢のウイルス研究所からの漏洩説を「可能性が低い」としているが、NHKの取材によると、インタビューした武漢担当の調査メンバーのオーストラリアの研究者は、感染拡大の初期の患者に関する詳しいデータを中国側に求めたが、提供されなかったと告白している(2月15日付・NHKニュースWeb版) 。

   このままだと武漢研究所からの漏洩説が消滅するはずだったが、すんでのところで調査再開の指示がバイデン氏から出た。動物からの感染と研究所からの漏洩という2つのシナリオの結論を90日以内に結論を出すことになる。遅くとも8月末には公表される。アメリカと中国の間で激しいコロナ情報戦も今後予想される。映画の『バイオハザード』のような展開になってきた。結論を待ちたい。

⇒31日(月)午後・金沢の天気    くもり

☆「広告うつ」にさいなまれるテレビ業界

☆「広告うつ」にさいなまれるテレビ業界

    最近知人たちから「電話うつ」という言葉を聞くようになった。新型コロナウイルスのワクチン接種を予約しようと、自治体のコールセンターに何10回と電話をかけても繋がらない。ようやく繋がってもきょうの予約分はすでにいっぱいになっていて、係員から「あすまた電話をおかけください」と言われ、ショックを受ける。電話そのものをかけたくなくなる。   

   話は変わるが、コロナ禍で巣ごもり生活が当たり前になってテレビをよく視聴するが、CMが随分と減っている。石川エリアではよく温泉旅館やホテルなどの宿泊施設、料理店やレストラン、パチンコ店のリニューアルオープン、リクルートを意識した企業のCMなどがよく流れていたが、このところあまり見かけない。バンセンと称される番組宣伝や「ACジャパン」が目立つ。

   その結果が数字となって表れてきた。ローカル新聞の経済面で地元テレビ局の2020年度決算が掲載されている。きのう29日付で掲載されていたテレビ朝日系ローカル局は売上高は前期比で17%減で赤字決算。CM収入の落ち込みやイベント中止が売上に響いた。赤字転落はリーマン・ショックの影響を受けた2010年度3月期以来で11年ぶり。フジ系は16%減で49年ぶり、TBS系も11%減で6年ぶりの赤字だった、日本テレビ系は15%減だったが黒字は確保した。ローカル局だけでなく、東京キー局もCMを中心に10数%の減収となっている。

   これはコロナ禍による一時的な現象だろうか。テレビをはじめとするメディアの広告収入はネットに押されて後退を余儀なくされている。電通が調査した「2019年 日本の広告費」によると、通年で6兆9381億円と広告全体は8年連続のプラス成長だった。このとき、インターネット広告は初めて2兆円超え、テレビ広告を抜いてトップの座に躍り出た。さらに「2020年 国内広告費」では通年で6兆1594億円と広告全体は前年比89%と激減した。ところが、ネット広告は2兆2290億円と前年比106%のプラス成長となった。テレビ広告は前年比89%となり、明暗が分かれた。ネット広告が伸びた背景には通販やオンラインイベントなどのニーズが後押した。コロナ禍の巣ごもり需要の恩恵を受けたのはテレビ業界ではなく、ネット業界の方だった。

   かつて「ローカル局の炭焼き小屋論」という言葉がテレビ業界であった。2000年12月にNHKと東京キー局などがBSデジタル放送を開始したが、このBSデジタル放送をめぐってローカル局から反対論が沸き上がった。放送衛星を通じて全国津々浦々に東京キー局の電波が流れると、系列のローカル局は田舎で黙々と煙(電波)を出す「炭焼き小屋」のように時代に取り残されてしまう、といった憂慮だった。ネット一強の状況がいま、テレビ業界全体の問題として再燃しているだろう。

   コロナ禍は今後数年続くとも言われる。さらに、放送とネットの同時配信という時代のニーズにどう対応していくのか。CMの減少傾向に歯止めがかからない「広告うつ」にテレビ業界がさいなまれる日々は続く。

⇒30日(日)午後・金沢の天気      はれ

★中国漁船の違法操業と人権問題 日本の打つ手は

★中国漁船の違法操業と人権問題 日本の打つ手は

     中国・新疆ウイグル自治区の少数民族を強制的に働かせてつくった木綿や衣類が問題となって輸入の差し止めや不買運動が世界各地で起きているが、さらに水産業にも飛び火している。アメリカのサリバン大統領補佐官(安全保障担当)はツイッター=写真・上=で「CBP(税関・国境警備局)は 残虐で非人道的な労働慣行に従事していることが判明した中国漁船団全体からの海産物の輸入を防止するための措置をとった」と速報を流した。

    ロイター通信Web版(5月29日付)によると、CBPは中国の大連海洋漁業有限公司からのマグロ、メカジキなどの海産物を全米の税関で差し止めすると発表した。マグロ缶詰やペットフードなど水産加工品にも適用する。調査により、同社に雇われた多くのインドネシア人労働者は当初示された労働条件が大きく異なり、身体的暴力や債務による束縛、虐待的な労働と生活環境が強いられていることが明らかになった。

    中国漁船での虐待問題は以前から問題となっていた。賃金未払いや酷使、暴力といった目に遭うことも、時には命を落とすこともニュースとなっていた。AFP通信Web版日本語(2020年7月10日付)によると、2020年6月、インドネシア人船員2人が中国漁船から海に飛び込んで脱走する事件があった。2人はその後、インドネシア漁船に救助され、虐待と劣悪な環境から逃れるためだったと語った。5月にも、インドネシア人船員3人の遺体が中国船から海に投げられる出来事があった。インドネシア政府はその後、3人は病気で死亡したとの報告を受けたと発表。中国政府は国際法に基づき水葬したと説明した。

   90年ほど前に描かれた小説だが、小林多喜二の『蟹工船』のストーリーにある過酷な労働環境を彷彿とさせる。まるで、現代版蟹工船のような話だ。ウイグルでの少数民族への強制労働とあわせ、現実が見えてくる。

   「板子一枚、下は地獄」と言われるように、漁業は常に危険が伴う労働環境だ。そのため、日本でも慢性的な人手不足に陥っている。イカ釣り漁業の拠点である能登半島の小木漁港でも、インドネシアからの漁業実習生が常時70人ほどいる。貴重な労働力として大切にされている。操業中にケガや病人が出れば、水産庁や海上保安庁の救助船が駆け付ける。地域の文化祭を見に訪れたことがあるが、彼らがステージで歌や演奏を披露をしたり、地元の人たちと溶け込んでいるという印象がある。

   それにしても、中国漁船の無法ぶりは日本海側でも深刻だ=写真・下=。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、すでに多数の中国漁船がEEZ(排他的経済水域)である大和堆などに入り込んでいて、水産庁は4月から320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在・水産庁公式ホームページ、写真も)。日本の漁船に先回りして、日本海のイカ漁場を荒らしている。そして、この中国側の漁船に多くのインドネシア人が不当に働かされているに違いない。まさに違法操業と人権問題。日本政府もアメリカと同様に強い措置を講じる段階に入って来たのではないだろうか。

⇒29日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆オリンピックの終焉を暗示する「アルマゲドン」

☆オリンピックの終焉を暗示する「アルマゲドン」

   IOCの委員がイギリスの「Evening Standard」紙(5月26日付)に語ったコメントが波紋を広げている。記事の見出しは「Barring Armageddon, the Tokyo Olympics will go ahead, says IOC committee member Dick Pound」=写真・上=、意訳すれば、「アルマゲドンにならない限り、東京オリンピックはやれるだろう、IOC委員のディック・ポウンド氏は語る」。例えとは言え、「Armageddon」という言葉を使った時点で世界に強烈な衝撃を与えたに違いない。「人類最終戦争」という意味だが、久しぶりに聴いた言葉だ。

   自身がこの言葉を知ったのは、一連のオウム真理教事件の取材を通じてだった。オウム事件は、坂本堤弁護士一家殺害事件(1989年11月)、長野県松本市でのサリン事件(1994年6月)、東京の地下鉄サリン事件(1995年3月)など数々ある。一方で、犯行の首謀者で教祖の松本智津夫(麻原彰晃、2018年7月死刑執行)は「アルマゲドンが迫っている」と不安を煽ることで若者の心理につけ込み、信者を急速に増やしていた。あの電極が付いた「ヘッドギア」は「カルト教団」を強く印象づけた。

   その麻原彰晃が1992年10月、石川県能美市(当時・寺井町)で記者会見した。自身は当時、テレビ朝日系ローカル局の報道デスクで現場にも立ち会ったので覚えている。寺井町の油圧シリンダーメーカーの社長に麻原が就いた。前社長は信者で資金繰りの悪化を機に社長を交代した、という内容だった。ほとんどの従業員は教団の経営に反発して退職し、代わりに信者が送り込まれていたので「教団に乗っ取られた」と周囲の評判は良くなかった。まもなくして会社は倒産。会社の金属加工機械などは山梨県の教団施設「サテイアン」に運ばれていた。その後の裁判で、金属加工機械でロシア製カラシニコフAK47自動小銃を模倣した銃を密造する計画だったことが明らかになった。

   話が随分と横にそれた。「もう時機を逸した。やめることすらできない状況に追い込まれている」。先日届いた東京の知人(メディア専門誌編集長)からのメールマガジンにこのようなことが書かれてあった。東京オリンピック・パラリンピックの開催についてだ。メルマガでは、日本の戦史に残る大敗を喫した「インパール作戦」の事例が述べられていた。

   大戦の末期、日本軍は1944年3月からイギリス軍の駐留拠点だったインドのインパールに侵攻する。当時、十分な武器や食糧もない中での作戦だった。その時の陸軍司令官はこう言ったとされる。「兵器や弾丸、食糧がないことは戦いを放棄する理由にはならない。弾丸がなかったら銃剣がある、銃剣がなくなれば、腕で行け、腕がなくなったら足で蹴れ、足をやられたら噛みつけ。日本男子には大和魂がある。日本は神州である。神々が守ってくれる」と。この事例は、精神論ではもう大会の開催は無理だと物語っている。

   アルマゲドンにならなくても、すでにオリンピックへのモチベーションは下がっている。NHKニュースWeb版(5月17日付)によると、オリ・パラで予定されている海外選手の事前合宿や交流について、国内の感染拡大への懸念などから少なくとも全国の54の自治体で受け入れが中止された。相手国側から「日本で感染が収まらず移動にリスクがある」や「選手やスタッフの安全を確保できない」といった理由で中止が8割余りで、それ以外は、自治体側から申し出たり両者で協議したりしたケースだった。

   IOCが粘って開催を唱えれば、それだけ人々の心はオリンピックから遠ざかっていく。アルマゲドンという言葉を出したこと、それ自体がオリンピックの終わりを暗示しているのではないだろうか。

⇒28日(金)夜・金沢の天気     くもり

★選挙は人流を招く コロナ禍の懸念

★選挙は人流を招く コロナ禍の懸念

    能登半島の輪島市に本校がある日本航空高校石川の野球部はこれまで甲子園大会に4回(夏2回、春1回、交流試合1回)出場している。その強みは、選手のほとんどが寮生活で意思疎通を図ることができるからとされてきた。しかし、新型コロナウイルスで感染拡大が続く中、寮生活は裏目に出てきたようだ。

   石川県が25日に発表した新型コロナウイルスの新たな感染者はこれまで過去最多の101人で、このうち53人が日本航空高校石川の関係者だった。49人は高校の男子生徒、残りの4人は併設されている大学校の学生や感染した生徒の同居者だった。日本航空高校石川の感染者は24日に9人、25日に53人、26日に1人で累計63人となる。感染者は軽症か無症状という。

   地元紙などの報道によると、高校生と大学校生、教職員合わせて1229人のうち882人が寮生活をしている。寮は2段ベッドの2人部屋と4人部屋、女子寮と男子寮があるが、食堂は一つだ。寮生活はまさに濃密で、一人でも感染者が出るとクラスター化しやすい環境にあった。県の25日発表では239人へのPCR検査で53人の陽性だったので、陽性率は22%と実に高い。28日までに学校関係者全員の検査を実施するという。陽性者はさらに増える可能性がある。

   コロナ禍で注視されるのは、上記の寮生活のような「3密」、そして「人流」だ。人流は観光地やデーパート、駅などへの人のが流れを指したりするが、選挙もその一つではないだろうか。投票行動や候補者の演説、支援者を集めた集会などまさに人流をつくる。7月4日投票の東京都議選は一体どうなるのか。東京オリンピックどころではないのではないか、と気がかりだ。

   大阪市が昨年11月1日に「大阪都構想」の是非をめぐる住民投票を実施。同月10日に吉村大阪府知事は府の対策本部会議で「第3波に入っているという認識だ」と述べていた。大阪市民からは、「コロナ禍にも関わらず、なぜ住民投票を実施するのか。都構想のメリット・デメリットはなにか」(大阪市公式ホームページ「市民の声」)などと住民投票そのものに疑念の声が上がっていた。もちろん、「コロナ感染をもって、民主主義に踏み込んでよいものか、投票とコロナは別だ」との意見もあるだろう。

   ワクチン接種も十分ではないのに、6月25日告示の東京都議選は可能なのだろうか。時事通信Web版(5月27日付)によると、自民と立憲民主は今国会で、ホテルや自宅で療養するコロナウイルス感染者が国政や地方選挙の際に郵便投票を利用できるようにする法案整備に合意し、東京都議選からの導入を目指すと報じている。

          聞こえはよいが、これは対処療法にすぎない。本筋で言えば、コロナ禍ではなく超高齢化社会などを見据えて、希望する有権者が利用できるようにすべきだろう。さらに、郵便投票だけでなく、選挙のデジタル投票化を進めてほしいものだ。9月のデジタル庁設置を契機に。

⇒27日(木)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

☆タオルを回せば アサギマダラも踊る

☆タオルを回せば アサギマダラも踊る

   ネット動画でたまたま見つけた、アイドルグループ「PiXMiX」の『タオルを回すための歌』=写真・上=が面白い。手でタオルを回しながら歌い踊る、そのリズミカルな体の振りをさらに回るタオルが雰囲気を盛り上げる。タオル回しと言えば、夏の甲子園大会でも、タオル回しの応援風景が最近見られるようになった。自己表現の一つとしてタオル回しの文化が定着するかもしれないと想像をたくましくした。 

  タオルを回す光景は、実は山の中にもある。2017年9月、能登半島で一番高い山、宝達山(637㍍)に学生たちといっしょに登った。「旅するチョウ」と言われるアサギマダラが宝達山の山頂付近に飛来している。このチョウは春は日本列島の北の方へ、秋には南の方へと飛び、その距離は2000㌔にも及ぶと言われる。宝達志水町役場職員の田上諭史氏ら愛好グループはアサギマダラを捕獲、マーキングして放している。蜜(みつ)がエサになるホッコクアザミを伐採しないようにと植物の保護運動にも取り組んでいる。

   田上氏に捕獲の現場を見せてもらった。右手に白いタオルを振り回していると=写真・中=、上空をふわふわとまるで踊っているような様子でアサギマダラが飛んで来る。近寄って来たところを、左手に持ったネットで捕まえるが、この日は風が吹いていたせいか、1匹しか獲れなかった=写真・下=。それにしても、不思議な光景だった。

   なぜアサギマダラはタオルに誘惑されるのか。以下、田上氏の説明から。寄って来るタオルの色は白色と水色。白色と水色でも、回転しないタオルには寄って来ない。ゆっくり回すより、はやく回すと寄って来る。アサギマダラには回転する白や水色のタオルはどのように見えているのだろうか。吸蜜植物のホッコクアザミやヒヨドリバナなどお花畑が広がる光景なのだろうか。タオルを回せばチョウも踊る。PiXMiXの動画を見てそんなことを思い出した。

⇒26日(水)午後・金沢の天気      はれ  

★「コウモリ外交」 韓国と日本の場合

★「コウモリ外交」 韓国と日本の場合

   子どものころに読んだイソップ寓話だが、今でもいくつかの物語を覚えている。ストーリー展開が短く端的で、主人公は昆虫や動物なのでイメージとして脳裏に刻まれやすいのかもしれない。働き者のアリたちが、怠け者のキリギリスが食べ物をねだりに来たとき、「夏には歌っていたんだから、冬には踊ったらどうだ」と皮肉を込めて断る下りは、社会人になって会話として応用したこともある。そして、最近ではコウモリの話を思い出す。   

   むかしむかし、鳥の一族と獣の一族がどちらが強いかで争っていた。それ見ていた一羽のコウモリは、獣の一族が優勢になると獣たちの前に姿を現し、「私は全身に毛が生えているから、みなさんの仲間です」と言い、鳥の一族が有利になると今度は鳥たちの前に参上し、「私には羽があるから、みなさんの仲間です」と言いそれぞれの味方に付いた。その後、鳥と獣が和解したことで争いは終わり、双方に顔を出したコウモリは鳥からも獣からも嫌われるようになった。「卑怯者は二度と来るな」となじられ、居場所がなくなったコウモリはやがて暗い洞窟の中に身を潜めるようになり、夜に飛んで出て来るようになった。

   このコウモリのイソップ寓話を思い出すのは、アメリカと中国の覇権争いに対する韓国の外交の有り様が報じられるときだ。NHKニュースWeb版(5月24日付)によると、アメリカのバイデン大統領と韓国の文在寅大統領が会談し、共同声明に台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を確認すると盛り込んだ。すると、中国外務省の報道官は「言動を慎み、火遊びをするな」と述べ、強く反発した。「火遊び」という言葉は韓国に向けて発した言葉だろう。

   アメリカと同盟関係にある韓国だが、日本とアメリカ、オーストラリア、インドが参加する非公式協議体である「Quad」(4ヵ国戦力対話)は対中国の包囲網だとして、韓国は参加を見送っている。今回の首脳会談でも、中国を刺激したくないとの配慮から、Quadに踏み込むことは避けたようだ。それでは、同盟関係を重視し対中強硬姿勢を崩さないバイデン氏は納得しない。そこで文氏は考えた。貢物を献上する「朝貢外交」だ。サムスン電子など財閥企業がアメリカに394億㌦(4兆3000億円)の投資する計画を提案した。共同声明でも、中国を名指しせずに「台湾海峡の平和と安定」と盛り込んでアメリカと中国の双方の顔を立てたつもりだった。ところが、上記のように中国から「火遊するな」と怒鳴られた。

   コウモリ外交は前政権の朴槿恵大統領のときもそうだった。アメリカと韓国の両軍が2016年7月に地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備を決定し、2017年3月に韓国に発射台やレーダーが運び込まれたものの、韓国政府は配備に躊躇した。中国が高性能レーダーで自国内のミサイル基地まで監視されると強く反対していたからだ。その年の5月に大統領就任した文在寅氏も配備に慎重な立場だった。7月に北朝鮮が射程範囲1万㌔余りにおよぶICBMを発射した。すると、今度は配備を急ぎ、THAADの本格運用が始まったのはその年の9月だった。

   では、日本のコウモリ外交はどうか。中国の習近平国家主席を国賓として2020年4月に招請する予定だったが新型コロナウイルスのパンデミックで延期となっている。2019年6月、大阪での「G20 サミット」に出席のため訪れた習氏に当時の安倍総理が国賓としての再来日を招請したものだった。その後、中国は香港国家安全維持法による民主主義の封じ込めや、日本に対しても尖閣諸島周辺での領海侵犯を執拗に続けている。招請した安倍氏は退陣したが、その後、「中止」という言葉が出てこない。もし、コロナ禍が治まり、習氏を国賓として招請すれば、日本のコウモリ外交は韓国より国際的に有名になるかもしれない。(※写真は韓国政府公式ホームページより)

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