★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

   最近の世界のニュースを見ていると、世界のそれぞれの価値観がむき出しになっている。アメリカの連邦議会議事堂にトランプ大統領の支持者が乱入する事態が発生し、議会では民主・共和両党からトランプ氏の大統領の罷免を求める声が上がっている。閣僚や政権高官も相次いで辞任を表明しており、任期終了まで残り13日となる中、トランプ氏の孤立化が進んでいる (1月7日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   アメリカではかつて、テレビ局に選挙などの政治的な扱いに報道の公平性を課すフェアネスドクトリン(The Fairness Doctrine)があった。しかし、TVメディアの多局化とともに、言論の多様性こそ確保されなければならず、フェアネス性を課すことのほうがむしろ言論の自由に反するとの司法判決(連邦最高裁)により、1987年にファネスドクトリンは撤廃された。これ以降、大統領選では対立候補を誹謗、中傷するネガティブ・キャンペーンがTVメディアも巻き込んで行われるようになる。対立候補にダメージを与える上では有効だが、有権者や国民に対立感情を煽ることにもなった。トランプ支持者による連邦議会議事堂への乱入はそのシンボリックな事件ではないだろうか。

   香港の警察は、国家政権の転覆を狙ったとして、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで、議会にあたる立法会の民主派の前議員や民主活動を次々と逮捕している。6日と7日の両日で55人に上る(1月8日付・NHKニュースWeb版)。民主派は暴動を起こしたり煽ったりわけではない。選挙を通じて議会の主導権を勝ち取ることは香港の憲法にあたる基本法に守られている権利でもある。異なる意見を持つ者が国安法に触れるという中国の価値観が香港に定着するのは時間の問題かもしれない。

   アメリカや香港の民主主義は岩盤だと世界は認めてきた。それが崩れ始めている。それも土砂崩れの様相を呈している。では、日本は安泰なのか。

   IMFが昨年10月に公表した報告書で、日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%とアメリカの2倍、日本に次ぐイタリアでは161%だ。日本のダントツの数値を世界はどう解釈するか。債務残高が増えて、このまま少子化が進めば一体誰が返済するのか、日本国債の大暴落を世界は予感しているのではないだろうか。

   コロナ禍で多額の予算を費やした日本政府は来年度から手荒な税収対策を強行してくるだろう。たとえば、40兆円以上ともいわれる「タンス預金」を吐き出させることによる課税もある。2024年度に1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新が行われる。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、国税がチェックする。翌年2025年度からは旧札と新札の交換で手数料を取る。また、新札発行を機にデジタル法定通貨へと舵を切ることなるだろう。政府が銀行での預金分しかデジタル通貨と交換しないと発表した時点で、タンス預金は一気に消費へと回る。これをもくろんで消費税の増税を行うのではないか。

   さらに、400兆円以上ともいわれる企業の「内部留保」への課税だ。アメリカや台湾、韓国ではすでに実施されている。日本でも資本金1億円以上の同族会社の内部留保増加額には10-20%の課税がされている。これを、すべての企業を対象に実施する。ニュースで伝わる銀行の合併による再編とデジタル庁新設の本来の目的はこの布石だと読んでいる。財源難に陥る政府は、巧妙かつ手荒く、そしてやみくもに増税を行う。大混乱を招きながらも国家財政の維持を図るだろう。歴史は繰り返される。

⇒8日(金)夜・金沢の天気    くもり

☆緊急事態宣言と大雪警報の日常

☆緊急事態宣言と大雪警報の日常

   菅総理はきょう夕方、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言を出した。期間は2月7日まで。飲食店の営業時間短縮や、テレワークによる出勤の7割減、午後8時以降の外出自粛、イベントの人数制限の4点をパッケージで対策を行っていく(1月7日付・NHKニュースWeb版)。

   石川県の地元メディアは、能登半島にある穴水町の石川宣雄町長が感染したと報じている。石川町長は79歳で、きのう6日午前、新年のあいさつで谷本県知事と面会し、その後、公務中に体調不良を訴え、検査したところ、感染が確認された。肺炎を起こしていて、中等症だという。感染経路はわかっておらず穴水町では初めての感染者となった。きょう県内で25人が感染した(石川県庁公式ホームページ)。

   県内での感染拡大を受けて、石川県庁ではきょう夕方、新型コロナウイルスの対策本部会議が開かれ、知事は首都圏への不要不急の往来を自粛するよう県民に呼びかけた。ただ、知事は県独自の緊急事態宣言について、「前回の宣言は地域経済に相当なダメージを与えたことは事実。(モニタリング指標などの)基準に照らし合わせながら、石川県は今どういう状況にあるのかということがある程度客観的に判断できる。総合的に判断していくということになる」と述べるにとどめた(1月7日付・北陸放送ニュースWeb版)。

   きょうの県内は、急速に発達する低気圧の影響で雪や風が強まり、大荒れの天気となった。今夜からは強い寒気が流れ込み大雪になるおそれがあるとして、金沢地方気象台は県内全域に大雪警報を出して、大雪による交通障害に警戒を呼びかけている。雪の降る量は、8日夕方までの24時間で多い所で県内の平地で30㌢から50㌢、そのあと、9日の夕方にかけても平地の多い所で30㌢から50㌢の積雪となる見込み。(※写真は2018年1月13日の大雪では金沢の中心部でも57㌢の積雪となった)

           今回の寒波では九州地方でも20㌢の積雪が見込まれると予報で伝えている。スノータイヤに履き替えていないトラックや乗用車などのスリップ事故などが多発するのではないだろうか。

⇒7日(木)夜・金沢の天気     くもり時々ゆき  

★コロナ禍に ネオンも消える 寒の入り

★コロナ禍に ネオンも消える 寒の入り

   寒の入り、二十四節気の一つ「小寒」に入った。父親から昔教わった言葉が「小寒の氷、大寒に解く」だった。小寒の寒さの方が大寒のときよりむしろ寒いと感じるという意味。最初に来る寒さを寒いと感じ、あとは寒さも慣れてくる。北陸で生まれ育って、この肌感覚は実によく分かる。きのう5日、金沢市の寺町を車で通ると、曹洞宗大乗寺の僧が托鉢に回っていた。雪が残る道を素足にわらじを履いての修行は、その姿を見ただけでも寒さを感じた。

   天気予報ではあす7日から再び日本海に低気圧が急速に発達し、前回の「年越し寒波」よりも広範囲に日本列島が強烈な寒波に覆われると予想している。積雪見込みは8日12時までで、北陸地方では70-100㌢となっている。

   もう一つ襲来するのは「コロナ寒波」だ。新型コロナウイルスの感染が1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)で広がり、あす7日、政府は首都圏で再び緊急事態宣言を発令する方向だと報じられている。期間は1ヵ月程度とする方向で政府が調整している(1月5日付・NHKニュースWeb版)。

   ただ、あすからの緊急事態宣言は前回(昨年4月7日から5月31日)と違って、飲食店を通じた感染拡大を徹底的に減らす、いわばワンポイント規制となりそうだ(同)。前回は、人と人との接触を「最低7割、極力8割」減らすという目標のもと、飲食店のほか、ホテルやデパート、映画館、そしてなぜか図書館までが自粛する動きとなった。また、小中高校は休校となり、大学はオンライン授業に。祭りやスポーツなどのイベントは中止や延期が相次いだ。

   今回飲食の場での感染リスクの防止にポイントを絞ったのは、経済全体への影響を極力抑えたいとの政府の意向があるのだろう。ただ、飲食ワンポイントでどれだけ効果があるのだろうか。緊急事態宣言によって、飲食店は営業時間が短縮され、▽今月8日から11日までは酒を提供する飲食店などを対象に午後8時までに前倒したうえで、酒の提供は午後7時までとなる。そのうえで、▽今月12日から31日までは酒を提供するしないにかかわらず、すべての飲食店に午後8時までに営業時間を短縮するよう要請する(同)。一時的であるにせよ、新宿や池袋の夜のネオン街は灯が消えることになる。これがモデルとなって、全国に規制が拡大するかもしれない。

   ここで一句。「コロナ禍に ネオンも消える 寒の入り」

(※写真は、寒波に見舞われる能登半島の集落=2018年1月27日、輪島市門前町で撮影)

⇒6日(水)朝・金沢の天気    はれ

☆コロナ禍、世界は再びロックダウン

☆コロナ禍、世界は再びロックダウン

          けさイギリスBBCニュ-スWeb版(1月4日付)をチェックすると、新型コロナウイルスの感染拡大がすさまじい。変異種化したウイルスの感染によって、1日当たりの感染者が5万人を超える日が続き、ジョンソン首相は4日夜のテレビ演説で外出を厳しく制限する措置(ロックダウン)をイングランド全域で導入することを明らかにした=写真=。

   BBCによると、食料品の買い物や通院、1日1回の運動などを除き、外出を厳しく制限し、違反した場合には200ポンド(円換算で2万8000円)の罰金が科される。生活必需品をあつかう店舗以外は原則として営業を禁止とするほか、小中学校や大学は原則として閉鎖し、来月中旬まではオンラインでの授業となる。

   感染者数はイギリスほどではないが、日本でもコロナ禍の勢いが増している。5日は全国で4900人超えの感染が発表され、死亡者も68人。感染者数、死亡者数とも1日当たり過去最多を更新した(1月5日付・共同通信Web版)。日本相撲協会は同じ日、横綱・白鵬の感染を発表した。白鵬は嗅覚異常の症状で4日にPCR検査を受け、けさ陽性と判定された。10日から始まる初場所の出場については休場となる見込み(同)。

   菅総理は感染拡大を受けて、きょうの自民党役員会で、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象とする緊急事態宣言の発令を7日に決定する方針を表明した(同)。宣言の発令は昨年4月に続いて2回目だ。

   当地の石川県でもきょう感染者が20人となった。金沢大学でも3日付でこのような一斉メールが届いた。「本日、共通教育科目受講学生に新型コロナウイルスの感染者が報告されました。行動歴の調査から,複数の濃厚接触者またはその疑いがある学生の存在が危惧されます。大学入学共通テストを控えて感染の拡大を予防するために1月4日(月)から7日(木)の授業についても、対面講義を取り止め遠隔授業といたします」と。コロナ禍の新年、仕事始めから強烈だ。

⇒5日(火)午後・金沢の天気    くもり

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

   年末年始の新聞広告は例年のごとく派手さが目立った。中でも際立ったのがネット動画配信サービス「NETFLIX」の全国紙の広告(31日付)だった。何しろ両面見開きで、暗闇から朝焼けが始まるというアングルの写真だ。左側に小さく、「再生のはじまり」の見出しで、メッセージが始まる。「東の国も西の国も北の国も南の国もまるで世界のすべてが止まってしまうようだった。だけど人の想像力は、どんな時にも止まらなかった。世界には新しい物語が生まれ続けている。見たことのない世界が広がり続けている。あなたがボタンを押せば、世界はもう一度はじまる。何度でもはじまる。」

   NETFLIXの社名は右下に小さく記されていた。新型コロナウイルスの感染拡大で世界の人々は「巣ごもり」生活を余儀なくされ、NetflixやHulu、Amazon プライム・ビデオといったネット動画配信サービスは高収益を確保したに違いない。前年は全面広告を使って「正月はNetflixざんまい!」とPRしていたのに比べれば、「再生のはじまり」は動画再生とコロナ禍からの再生の2つの意味を絡めた、とても練られた広告ではないだろうか。

   入試願書の受付開始日と合わせた近畿大学の全国紙広告(3日付)は相撲部の学生の練習の図柄で、「近大DX え、近大まだデカなるん?」と少々自虐的な見出し。文章を読むと、「デジタルを駆使することで、学生や世の中に新しい教育モデルや価値観を提供する、それが近大のめざすDX。中でも、急ピッチで進めているのが、好きな所で好きなだけ24時間学び放題になる、授業のオンデマンド化。」などとうたっている。最後に「コロナな時代に日本一のDX大学をめざして、2021年も近大はデラックスに進化し続けます! あっ・・・ちなみに相撲と本文の内容は全く関係ございません!!」とオチもつけている。実に関西っぽいアドバタイジング。

   地元紙の広告(1日付)で目を引いたのか「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション 地域に、元気と笑顔を届けたい。」という北國銀行の全面広告。同行の頭取が昨年6月に14年ぶりに交代し、これまでの同行にはなかったオープンさ、そしてサービスにIT技術を導入する手法が地域でも評判になっている。確かに、同行の公式ホームページをチェックすると、「本店(金沢市)に勤務する役員1名が新型コロナウイルスに感染していることが判明いたしました」と発表している。これまでだったら、このような情報は公開しなかっただろう。

   地銀がこれから本気で地域と向き合い、「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション」に取り組むのであれば、開かれた気持ち(オープンマインド)と情報公開が必要だ。地域経済の改革の担い手としての地銀に期待したい。

⇒4日(月)朝・金沢の天気   くもり  

☆静かなる年末年始(11)「賀状に浮かぶジレンマ」

☆静かなる年末年始(11)「賀状に浮かぶジレンマ」

   前回ブログの続き。僧侶の方からいただいた賀状。ドイツ人僧侶。丑年ということで、ホルスタインをイメージした賀状のデザインが面白い。ドイツの大学で日本語を学んでいて「Zen」(禅宗)に興味を持った。2011年に能登半島にある曹洞宗の總持寺祖院で修行に入り、もう10年。自坊を持つまでになった。3年前に立ち話で、「信仰ではない無我の境地、好き嫌いは言わない、与えられたものを素直にいただく」と。禅宗のきびしい修行を耐え抜いた言葉が重く、そして心に透き通る。寺には、ドイツほかヨーロッパ、南米ブラジルなどからのZenを求めてやってくる。

   賀状を読んでいてふと思いついた。彼が3年前に述べた言葉はまさにコロナ後の世界観であり社会観、人生観ではないだろうか。飽くなき欲求から脱する人生設計や、独占ではなく分け合う(シェアリング経済)社会、成長を前提としなくてもよい社会システムを求める、いわゆる「ポスト資本主義」と呼ばれる動きが胎動している。コロナ禍を経験した人類が心のレジリエンス(復元力)を探してZenの思想に共鳴し、教えを求める時代がやってくるに違いない。そのときに彼の果たす役割は大きいのではないか。

   県会議員や市長をつとめたベテランの政治家の方からいただいた賀状は実にストレ-トな内容だった。昨年11月、加賀海岸(加賀市塩屋‐片野)は国の重要文化的景観に認定された。海岸沿いの砂防林は江戸時代から昭和初期にかけ、人々の手によって植栽が行われ、沿岸集落の懸案だった飛砂被害が抑えられ、生活の安定や現在の土地利用に大きな役割を果たしてきたと評価された。認定に当たっては、文化的景観を訴えるために各方面に呼びかけ、現地でのガイドを買って出るなどリーダー的な存在だった。

   ところが、その加賀海岸に隣接する別の市が洋上風力発電の計画を打ち上げている。高さが最大で260㍍もある風車が沿岸に沿って20基から37基並べる構想で、賀状では「いさりび、夕日等が見えず障害になります。これには断固反対なのです。風力発電には反対ではないのです。この景観を害する行為には反対なのです」と呼びかけている。隣接市とすれば、1昨年も前から計画を進めていた。菅内閣は温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げ、再生可能エネルギーに注目が集まっている。

   国の重要文化的景観の認定にこぎつけた地元とすると、次はユネスコの「世界遺産の可能性」(賀状)を追求することに目標を定めている。歴史と景観の地域資源を守り高めることで国際評価につなげたいという想いが滲む。賀状に鋭く浮かぶ時代のジレンマではある。

⇒3日(日)午前・金沢の天気  くもり時々ゆき

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

   ことしの年賀状は書き出しを「謹賀新年」とはしなかった。昨年からの新型コロナウイルスが感染拡大する中で決して「おめでたい年を迎えた」などとは自身の気持ちとして言えないとこだわったからだ。その代わりに、「希望が持てる新年でありますように」と記した=写真・上=。では、果たして2021年(令和3年)は希望が持てる年になるのだろうか。いただいた年賀状からことしを読んでみる。

   菅内閣を皮肉った賀状をいただいた=写真・下=。大学時代の同級生で、元雑誌社の編集長。「麻生太郎(副総理)81歳! 二階俊博(幹事長)82歳! あ~あ。老人はもういいよ。若い政治家はいないの? と思ったら、いつのまにか私も高齢者で今年67歳に。」との自虐的な内容には笑える。「中身スカスカの『スカ総理』は73歳とイラストも添えている。

   共同通信社が12月5、6日に実施した全国電話世論調査(回答は固定電話524人、携帯電話519人)によると、菅内閣の支持率は50%で、前回11月から12.7ポイント急落した。政府の新型コロナウイルス対策は「評価しない」が55%。感染防止と経済活動のどちらを優先すべきか尋ねたところ「どちらかといえば」を含め「感染防止」を挙げたのは計76%に上った(12月6日付・共同通信ニュースWeb版)。

   内閣支持率が下がり続ければ、おそらく解散・総選挙は近い。それはいつか。以下憶測だ。コロナ禍の感染拡大で勢いづいている今の状態では3月、4月の総選挙は無理だろう。むしろこの時期はワクチン接種がピークを迎えている。ワクチン効果の評判が広がれば、世論の安心感と政府への評価が高まる。その絶妙なタイミングを狙えば、解散・総選挙は7月の東京オリンピック(21日競技開始、23日開会式)前の5月か6月ではないだろうか。

   賀状を手にして、狡猾な老人政治家たちが考えそうなシナリオを描いてみた。自らも老人政治家たちの腹を探ろうする年代に入った。
 
⇒2日(土)夜・金沢の天気  くもり時々ゆき

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

   2021年(令和3)元旦の初夢は、なんと「東京オリンピック」だった。テレビを見ている自分がいて、そのテレビのモニターには国旗を掲げた選手団が次々と入場行進してくる。なぜか、ニュースキャスターの辛坊治郎氏が選手団について「最近のロシアでは・・」「インドでは中国に対し・・」などと時事解説を行っている。それを違和感なくじっと見ている自分の姿だった。ふと目覚めて時計を見ると、午前2時33分。再び寝込んだが、夢の続きを見たかどうかは覚えていない。

   きょうのブログは初夢が正夢になってほしいと願いつつ書いている。知人と話していても、「このままだとオリンピックの開催は無理だろう」との声をしばしば耳にするようになってきた。政府の新型コロナウイルス対策担当の西村・経済再生担当大臣は自らのツイッター(12月30日付)の動画で「新型コロナウイルスの感染がこれ以上拡大すれば緊急事態宣言も視野に入る」と述べている。コロナ禍の拡大は止まず、ウイルスの国内感染はきのう国内で初めて4000人を超えて4188人と過去最多となった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。暗雲が垂れ込める正月を迎えた。

   起死回生、頼みのワクチン接種はどうなのか。アメリカやイギリスなどではすでに一部で接種は始まっているが、日本ではアメリカの製薬大手ファイザーのワクチンの承認申請が行われていて、早くて2月中に承認されるかどうか結論が出る見通し(12月28日付・同)。このニュースを見て、開催国の日本がこの対応の遅さで果たして選手団を迎えることができるのだろうか、と思ってしまう。

   CNNニュースWeb版日本語(12月31日付)によると、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がインタビューで、4月初めからワクチンを広範囲に行き渡らせることが可能となり、人口の70%から85%が接種を受ければ集団免疫を獲得でき、ウイルスの感染拡大を抑え込むことができる。初秋までにはかなり正常に近い状態に戻れるとの見通しを示している。「ワクチン先進国」のアメリカでこのスケジュール感だ。

   予定通り東京オリンピック競技が始まると想定すれば7月21日(開会式は23日)がスタートだ。それに先立って、日本で行われる国際大会や強化合宿に参加する国外の選手が5月以降で続々と入国してくるだろう。予定通り開催するには4月中にはコロナ禍をなんとか収めなければ間に合わない。逆算すれば、3月と4月に国内での接種を広範囲に行い、集団免疫を獲得しておく必要があるのではないだろうか。

   菅総理は元旦の年頭所感でこう述べている。「コロナ危機は、国際社会の連帯の必要性を想起させました。我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(総理官邸公式ホームページ)

   総理の所感とは裏腹にコロナ禍の猛威は世界に迫る。感染力が強いとされる変異種化したウイルスがイギリスや南アフリカ、フランス、イタリアなど17の国・地域で広まり、日本政府は今月末までオリンピック選手を含めて入国制限をする措置をとった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。各国の選手団そのものが結成されるのかどうか、どう克服して開催するのか。総理が述べているように、人類の「団結した世界」をぜひ実現をしてほしい。今から出かける初詣ではそう願いたい。

(※写真は、元旦の床の間に飾った「鶴と亀」の掛け軸と、正月飾り)

⇒1日(金)午前・金沢の天気    くもり時々ゆき

★静かなる年末年始(8)「冬将軍と向き合う」

★静かなる年末年始(8)「冬将軍と向き合う」

   大晦日の雪景色が広がる。自宅周囲では正午過ぎに15㌢の積雪があり、きょう午後から元旦にかけてさらに「数年の一度の大雪」になるとの予報。大雪をともなった寒さが厳しい冬、まさに「冬将軍」の到来だ。

   北陸の人々は、長期予報で「ことしは暖冬」と伝えられていても、冬将軍の訪れに備えて自家用車のタイヤをスタッドレスに交換し、自宅では庭の雪吊りの備えを怠らない。たとえ期間は短くとも、冬将軍は必ずやってくるからだ。

   逆に、冬将軍が来ないと雪すかし(除雪)をしなくて楽なのだが、別の不安感もよぎる。暖冬だったある年に久しぶりに雪が降った。そのときのご近所さんとの会話だ。「ようやく降りましたね」と声がけすると、「もうちょっと降ってもらわんと心配やね」だった。北陸人にとっては降るべき時に降ってもらわないとこれからのシーズンで異常気象が起きるのではないかと不安が募るのだ。

  この季節感覚はなんだろう。北陸は四季がはっきりとしているからだと考える。日常の暮らしに季節の風景の変化があり、雪や雨の多少や温度や湿度の高低差がある。視野と肌感覚が実に敏感になっているのだろう。

  北陸人は粘り強いとか、めげないなどと評価されることがままある。「冬来たりなば春遠からじ」(イギリスの詩人シェリー『西風に寄せる歌』より)は北陸ではこの時節によく使われる言葉だ。辛いことがあっても辛抱しよう、そのうち良いことがあると心に言い聞かせながら耐え忍ぶ。季節感覚がそのような精神風土を育んでいるのかもしれない。

          ところで、民放テレビで気象ニュースを視聴していると、キー局の気象予報士が「吹雪で見通しが悪くなりますので、不要不急の外出は控えてください」といったコメントを繰り返している。新型コロナウイルスの感染を意識したようなコメントに聞こえ、違和感が残る。吹雪であっても小学生は学校に通っている。雪国で暮らす者にとっては余計なお世話と言いたくなる。言うのであれば、「スノータイヤに履き替えていない車での外出は控えてください」だろう。コメントに現場感を持たせてほしいものだ。雪国の人々は冬将軍と向き合って暮らしているのだ。

⇒31日(木)午後・金沢の天気    ゆき 

☆静かなる年末年始(7)「高値の大納会なれど」

☆静かなる年末年始(7)「高値の大納会なれど」

   石川県の地元企業である石川製作所(白山市、東証1部)の株価をたまにチェックしている。このところ、同社の株価が再び上昇に転じている。ことし最後、きょう大引けの日経平均は123円安の2万7444円と3日ぶりの反落にもかかわらず、同社の終値は1955円と40円(+2.09%)の上げだった。この「上げ」の背景を憶測してみる。

   石川製作所は北朝鮮の動きと連動する株価で知られる。段ボール印刷機、繊維機械を生産しているが、追尾型の機雷も製造する防衛産業でもあり、朝鮮半島でキナ臭さが漂うと同社の株価に注目が集まる。2017年9月、アメリカのトランプ大統領が国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼び、双方の言葉の応酬が過熱した。トランプ氏が北に対して斬首作戦を決行するのではないかと憶測され、それまで1000円に満たなかった株価は急上昇し、10月には4435円の最高値をつけた。

   この一年の北の動きを振り返っても株価が敏感に反応していることが分かる。金氏がことし4月12日の最高人民会議を欠席し、祖父・金日成主席の誕生日である同月15日に安置所がある太陽宮殿への参拝がなかったことが報道されると株価は上昇に転じ、CNNの危篤説の報道(21日付)で1584円に。その後元山(ウォンサン)の別荘に停車している特別列車の衛星画像の公開され、死亡説まで取り沙汰されると4月28日は1710円に。ところが、金氏が姿を見せると、5月7日には152円安の1553円に。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が6月16日に北によって爆破されると、翌日17日には1914円に上昇した。

   このところ再び1900円台での上昇が続いている。これをどう読むか。国連安保理が履行を求める国際社会による経済制裁、それに台風と洪水など自然災害の食糧危機などが重なって政治情勢が危ぶまれる。それに、党委員長である金氏の動静が伝わってこない不気味さだろうか。NHKニュースWeb版(12月27日付)によると、北朝鮮国営の朝鮮中央通信や朝鮮中央テレビなどがことし1月1日から今月27日までに伝えた金氏の情報は53件で、これは昨年の113件の半分以下。新型コロナウイルス対策で公の場での活動を控えた可能性がある、と伝えている。

   北朝鮮では年明けの1月上旬に最高指導機関と位置づける党大会が開催される予定(NHKニュースWeb版・同)で、ここで金氏が演説する姿を見せるかどうか。もし、不在ならば同社株価の乱高下は来年も続く。

   きょうの東証の大納会の模様がネット動画で配信されていた=写真=。年末終値としては史上最高値を付けた1989年(3万8915円)以来、31年ぶりの高値水準となった。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大によって、ことし3月に1万6552円まで下げている。コロナ禍のステージは、強烈な感染力をもつ異変種化へと進んでいる。はたしてワクチン接種で収まるのか。来年をどう読むか。

⇒30日(水)午後・金沢の天気   ゆき