☆「シャドー・バニング」は是か非か

☆「シャドー・バニング」は是か非か

   前回のブログで「プラットフォーマー」であるIT大手「グーグル」とフランスのメディアとの確執について述べた。昨年のアメリカ大統領選をめぐっても大統領とプラットフォーマーとの確執が続いた。

   2020年5月、ツイッター社は当時のトランプ大統領が、カリフォルニア州知事が進める大統領選挙(11月)の郵便投票が不正につながると主張した投稿について、誤った情報や事実の裏付けのない主張と判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けしてファクトチェックの警告を発した。これに対しトランプ大統領は「ソーシャルメディアプラットフォームが共和党の見解を全面的に封じ込めている。これら企業を厳しく規制もしくは閉鎖する」とツイートした(2020年5月27日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   同じ5月にミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起き、抗議活動が広がった。トランプ大統領がツイートした内容のうち、「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」との部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たるとツイッター社は判断し、大統領のツイッターを非表示とした。削除ではなく、「表示」をクリックすれば読める。すかざす、大統領はツイートで「“Regulate Twitter if they are going to start regulating free speech.”」(言論の自由を規制するなら、ツイッターを規制する)と同社を牽制した。

    アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、ユーザーの違法な投稿をそのまま掲載したとしても責任は問われない。だからといって、ヘイトスピーチなどを野放しにしておくわけにはいかないというのがSNS各社のスタンスだ。それがピークに達したのが、ことし1月、大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件だった。トランプ氏が暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ凍結した。

   そして半年後、トランプ氏とプラットフォーマーとの確執は再び火を噴く。BBCニュースWeb版(7月7日付)によると、トランプ氏は自分は検閲の被害者だとして、グーグル、ツイッター、フェイスブックの3社ならびに各社の最高経営責任者(CEO)を提訴した=写真=。同氏は今回の訴訟について「シャドー・バニング(ソーシャルメディアの運営側が望ましくないと判断したアカウントを公の目に触れにくくする措置)や黙らせる行為、ブラックリスト化や追放、削除といった行為の停止を求める」と述べ、ソーシャルメディア企業と民主党を激しく非難。さらに、「この国の歴史上、これほど責任を免除され守られた人はいない」と批判し、「通信品位法」230条の改正を訴えた。

         そもそも、ソーシャルメディアを政治の舞台で活用したのは、ある意味でトランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で大統領の方針を発信するという前代未聞のやり方だった。政治家が競ってツイッターなどソーシャルメディアの活用を始めたのは、トランプ氏が先導したとも言える。

    前回のブログで書いたフランスにおける著作権指令とグーグルとの交渉問題、そして、トランプ氏が訴える「通信品位法」230条の改正と巨大IT企業への提訴。デジタル時代の「あだ花」なのか、あるいは「転換点」になるのか。

⇒15日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★著作権・商標問題 フランスの苛立ち

★著作権・商標問題 フランスの苛立ち

   紙面やネットでニュースをチェックしていて、おそらくフランス政府は相当に苛立っているのだろうと察した記事を2つ。「シャンパン」と言えば、フランスのシャンパーニュー地方で製造されたスパークリングワインを指すが、日本国内では発泡性ワインそのものを「シャンパン」と言ったりする。フランスではワインの法律(原産地呼称管理法)に規定された条件(生産地、ブドウ品種と栽培方法、伝統的な製造方法、アルコール度数など)、いわゆる「シャンパン製法」を満たして初めて「シャンパン」の商標が与えられる。

   ところが、ロシアではロシア産のスパークリングワインだけに「シャンパン」を名乗ること認める法律が発効し、騒動となっている。フランスのAFP通信(7月6日付・日本語版)によると、この新法は今月2日、プーチン大統領の署名で成立した。フランス産のボトルにフランス語で「シャンパン」と表記することは引き続き可能だが、ボトルの後ろにキリル文字(ロシア語文字)で「スパークリングワイン」と明記することが義務付けられた。

   新法により、フランスの高級ワイン大手「モエ・ヘネシー」はロシア市場への出荷を一時停止しているが、ドンペリニヨンなどの輸出を新法に従って再開すると発表している。また、シャンパン生産者らはロシアの法律の変更を求める外交的な働きかけをするよう嘆願書を政府に提出した。フランスは原産地名称の保護に関するリスボン協定に加盟しているが、ロシアは加盟していない(同)。

   フランスが苛立っているニュースをもう一つ。報道機関がコストをかけてニュースや情報を発掘する。ところが、「プラットフォーマー」であるIT大手はメディアのニュースを「ただ見せ」して広告ビジネスで稼いでいる。AFP通信(7月14日付・日本語)によると、フランスの競争評議会(公正取引委員会)は今月13日、EUの著作権規則に基づいたニュースコンテンツ使用料をめぐり、メディア企業との「誠実な交渉」を怠ったとして、アメリカのIT大手「グーグル」に5億ユーロ(650億円)の制裁金を科すと発表した。(※写真はフランス競争評議会の公式ホームページより)

   EUはデジタル化時代に対応するため、2019年4月に旧来の著作権ルールを見直し、著作権市場がより機能する公平なルールを整備する「著作権指令」を発効した。在日欧州連合代表部の公式ウエッブマガジンの解説によると、「Google、Yahoo!、AOLなどのオンラインサービスプロバイダーが新聞や雑誌の記事を使用する際、記事の発行元が報酬を受けられる新しい権利。例えば、『Googleニュース』で記事が使われた場合、発行元はその記事使用料を要求できる」としている。

   著作権指令に基づき、フランスの競争評議会は昨年4月、メディア各社がグーグルは十分な対価を支払わずに検索結果に記事や動画を表示していると批判したことを受け、グーグルに対しメディア側との「誠実な交渉」を命じた。しかし、同9月、AFP通信などメディア側が使用料支払いに向けた交渉の進展をグーグルが阻んでいるとして、競争評議会に苦情を申し立てていた。

   メディア側との「誠実な交渉」をなぜグーグルが阻んでいるのか。以下憶測だ。世界の検索の9割をグーグルが占め、膨大な検索データを広告ビジネスに活用している。問題となっているのは、検索で表示される記事の使用料についてだ。ニュースを検索すると、記事の断片が出てくる。グーグルはこの断片を「スニペット(snippet)」と称している。報道機関側はこのスニペットの段階ですでに著作使用料が発生しているとしている。

   これに対して、グーグルは「ニュース・ショーケース」のサービスをイギリスやフランスなどで始め、通常のグーグルニュースやネット検索とは別に、契約した報道メディアが提供する記事の見出しや概要を掲載している。グーグルの狙いは、このニュース・ショーケースでの契約料をもってすべての記事の著作使用権とみなしたいのだろう。なので、著作権指令に従う立場より、むしろ個別にメディア各社と契約を結びたいのではないだろうか。指令に従わないグーグルに対して、フランスの競争評議会は苛立ちを深めている。

⇒14日(水)夜・金沢の天気     はれ

☆土砂降りの「内閣支持率」

☆土砂降りの「内閣支持率」

   この梅雨の時季、「線状降水帯」の言葉をテレビでいやほど聞いた。強烈な大雨は鹿児島や島根、鳥取の両県を襲い、熱海市では土砂崩れを誘発した。痛ましいばかりの光景だった。そして、土砂降りと言えば思い出すのが、北陸新幹線だ。忘れもしない2019年10月13日、台風10号の猛烈な雨の影響で、長野県の千曲川が氾濫し、長野市の新幹線車両センターで10編成の北陸新幹線車両が水につかった。雪に強い北陸新幹線は案外にも雨にはもろかった。その想いが残った。

   話は変わるが、土砂降りと言えば、菅内閣の内閣支持率にも豪雨が襲っている。NHKの最新の世論調査(7月9-11日)によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、先回より4ポイント下がって33%と、昨年9月の内閣発足以降で最も低くなった。一方、「支持しない」と答えた人は、1ポイント上がって46%で内閣発足以降で最も高くなった(7月12日付・NHKニュースWeb版)。

   読売新聞の世論調査(7月9-11日)も、菅内閣の支持率は37%となり、昨年9月の内閣発足以降で最低だった前回の37%から横ばいだった。不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となった。不支持率が支持率を上回るのは今年5月から3回連続。支持率低迷の背景には、政府の新型コロナウイルス対策や五輪対応への不満があるとみられる(7月12日付・読売新聞Web版)。

   このままだと、政局は一気に揺らぐ可能性がある。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)と、自民党内閣は支持率が20%台以下に落ち込んだときが身の引きどきだった。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。

   菅内閣が「危険水域」に入るのは、あと8ポイント、さらに「デッドゾーン」へは、あと18ポイント下げたときだ。

(※写真は、今月12日、土砂災害に見舞われた熱海市の現場を視察する菅総理=総理官邸公式ホームページより)

⇒13日(火)夜・金沢の天気    くもり

★いまこそ「Byondコロナ」

★いまこそ「Byondコロナ」

   昨年の今ごろは「ビヨンド(Byond)コロナ」という言葉を大学キャンパスでも何度か聞き、オンラインでのシンポジウムなどにも参加した。「コロナで世界は大きく変わる、キミはただ見ているだけか」をキャッチフレーズに学生たちがが企画したオンラインセミナー=写真=では、新型コロナウイルスのパンデミック後を見通した日本や国際社会の課題、そして、コロナ後の新しい社会をどう創造していくかをテーマに議論が交わされた。そのころから1年経つが、最近では「Byondコロナ」に一服感があるのか、耳目に触れることがめっきり減った。意義ある言葉だと思うので、再度検証してみたい。

   Byondコロナのセミナーでは、リモートワークが事例として論じられてきた。「働き方改革」は当時の安倍政権のテーマの一つだったが、進んでいるように見えなかった。ところが、コロナ禍でリモートワークやワーケーションという働き方が一気に加速した。日常の変化もある。コロナ禍で衛生観念が共有され、紙幣や硬貨にも触らないとい観念が広がり、キャッシュレス化も随分と進んだ。そして、日銀も現時点でデジタル法定通貨(CBDC)を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保するよう準備するとしている。

   さらに、人が動くことによって付加価値が生み出されてきた観光や文化・芸術などの施設では、その場に行くなくても、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったデジタル技術を取り入れた観光やエンターテイメントも盛んに行われている。Byondコロナの議論は、コロナ禍を社会変革の前倒しのチャンスととらえる発想でもある。

   では、そのByondコロナがなぜ触れられなくなったのか。きょう12日から東京は4度目の緊急事態宣言の期間(8月22日まで)に入った。政府は夏休みや旧盆の人の流れを抑えて感染拡大を防ぎたいのだろう。オリンピックは今月23日に始まり、8月8日に閉会する。1都3県ほかほとんどの競技場は無観客での開催だ。国内のワクチン接種はどうなのか。1回受けたのは国民の28%、そのうち2回は以上17%にとどまっている(7月8日付・総理官邸公式ホームページ)。いつコロナ禍が収束するのか、見えてこない。

   Byondコロナをテーマに議論した昨年のいまごろ、日本は他国に比べれば感染の抑制に比較的成功し、死亡率も低く抑えていた。国民の多くは心の中で、延長された東京オリンピックが開催するころには収束するのではないか思っていたのではないだろうか。自身もそうだった。なので、コロナ後の社会の有り様を議論する心の余裕があったのかもしれない。

   ところが、昨年後半に感染者数が急増し、ことし1月にピークに達した。いま東京ではコロナ禍の第5波が迫り、前述したように4度目の緊急事態宣言下に入った。先が見通せない中で、Byondコロナをテーマに議論することに抵抗感を持つ人は多い。むしろ、いまこそトンネルの出口を見出すためにも必要なテーマではないだろうか。

⇒12日(月)午前・金沢の天気     くもり

☆スルメイカの巨大モニュメントを見に行く

☆スルメイカの巨大モニュメントを見に行く

   名付けられた愛称は「イカキング」。能登半島の先端部分に位置する能登町の九十九湾に出現したスルメイカの巨大モニュメントは全長13㍍、全幅9㍍、高さ4㍍、重さは5㌧のサイズだ。素材は航空機などに使う繊維強化プラスチックのFRP製だ。子どもたちが中に入って遊んだり、大人たちが写真を撮ったりと、けっこう人気がある。自身も実物をぜひ見たいと思い、きょう能登町に行ってきた。

   同湾にある小木漁港は全国で屈指のイカ類の水揚げを誇る。このことから町では特産イカの知名度向上にと昨年6月に観光交流センター「イカの駅つくモール」をオープンさせ、イカ料理などが味わえるレストランやイカの加工品を中心とした物産販売コーナーを設けた。さらセンターの芝生庭にことし4月に創ったのがイカキングだ。新型コロナウイルスの収束後の観光誘客を狙ったものだが、制作費3000万円のうち、2500万円がコロナウイルス感染症対応として国が自治体に配分した地方創生臨時交付金だったことから、議論を呼んだ。

   担当した町ふるさと振興課の職員に直接聞くと、「コロナ対策に使うべき交付金ではないか。なぜモニュメントをつくるのかと着工の段階から疑問の声がいくつか寄せられていた」と話す。職員によると、臨時交付金には「地域の魅力磨き上げ事業」という項目があり、それに該当すると説明しているという。イカの駅つくモールは、オープン半年で6万8千人の来場があり、当初予測していた1年間で7万人の予想見込みを上回った。さらに、話題性のあるイカキングとの相乗効果に期待を寄せている。

   そして、担当者は「コロナ後はインバウンド観光客も」と口にした。モニュメントが交付金で創られたことを疑問視するニュースは本来ならばローカルニュースだ。ところが、スルメイカの巨大モニュメントというカタチの異様さが受けてか全国ニュースで取り上げられ、さらに、イギリスのBBCやフランスのAFP通信、アメリカのニューヨーク・タイムズなども写真付きで取り上げた。それがネットニュースとしても世界に拡散した。

           なぜ欧米のメディアがニュースにしたのか。憶測だが、欧米ではタコやイカはデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」にたとえられ、巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。スルメイカの巨大モニュメントそのものが、いわゆる「絵になる」のではないか。能登町の隣の珠洲市では今年9月から国際芸術祭が開催される。デビルフイッシュがこれだけ話題になると、「ついでに見に行こうか」と立ち寄る国内外の鑑賞者もいるのではないだろうか。

⇒10日(土)夜・金沢の天気       くもり 

★大きな勘違い

★大きな勘違い

    これはさらに有権者の疑問を呼び起こす対応ではないだろうか。東京都議会選(今月4日)に当選した都民ファーストの会の女性都議が選挙期間中に無免許運転で人身事故を起こし、党から除名処分(今月5日)を受け、その後雲隠れしている問題は前回のブログで取り上げた。その都議が自らの公式ホーページで「都民の皆様へ」と題する釈明文を掲載している。これを読むと、選挙で選ばれた公人が取るべき姿なのだろうかと思ってしまう。以下、引用する。
 
「無免許で自動車を運転し、さらに交通事故を起こしてしまったことについて、猛省しております。 私の今回の行動が有権者の皆様の信頼を損ねることになってしまい、心よりお詫びを申し上げます。 また、多くの方々にご迷惑をおかけしており、申し訳なく思っております。」
 
   この都議に必要なのは記者会見を通して説明責任を果たすことではないだろうか。「心よりお詫び申し上げます」は自らの言葉で述べるべきであって、ホームページで発する言葉ではない。これでは誠意が有権者には伝わらない。問題の本質は、無免許運転での人身事故(今月2日)を故意に隠して4日の投開票日後に都民ファーストの会に報告したことだ。

「また、無免許で運転していたこと及び事故を起こしたことについて、警察による取り調べに真摯に対応しております。 捜査中の案件ですので、具体的な事項については、弁護士さんの助言を受けて、それが整理された段階でご説明いたしたいと考えています。」

   2日の無免許運転の人身事故のほかに、同じ板橋区での立候補者が「告示日直前の6月21日に志村坂上でご自身が街宣車を運転しているのを、私はハッキリと見た」とツイッターで証言している。この点、無免許運転を常習的に行っていたと認めるかどうかだ。警察から取り調べを受けているのはまさにこの点だろう。なぜ弁護士の助言を受ける必要があるのか。おそらく無難に略式起訴に持って行くために、弁護士をつけているのだろう。

「今後については、私にいただいた29,767票の重みを踏まえ、 有権者の方々との絆を大切にし、損ねてしまった信頼を取り戻すためにどうすれば良いか、 様々なご意見をいただきながら、熟考を重ねてまいります。」

   本人にとってはおそらく「免停中の無免許運転で人身事故」は、運が悪かったという程度の感覚なのだろう。交通ルールを無視し、不祥事を隠して得た「29,767票」は、有権者を騙してして得た得票数だとのそしりを免れない。雲隠れせずに会見を行い、率直に詫びることに尽きる。なぜそれができないのか。大きな勘違いをしているのではないだろうか。(※写真は、当選を報告する木下富美子氏のツイッター=7月5日付)

⇒9日(金)夜・金沢の天気      くもり

☆緊急宣言再び 不可解な「都の選良」を追う

☆緊急宣言再び 不可解な「都の選良」を追う

   選挙で選ばれた公人として記者会見を開き、説明責任を果たすことが最優先ではないのか。東京都議会選に当選した都民ファーストの会の女性都議が選挙期間中に無免許運転で人身事故を起こし、党から除名処分(5日)を受け、その後雲隠れしている問題は今月6日付のブログでも取り上げた。メディア各社が、その都議が新会派「SDGs東京」を立ち上げたと報じている。(※写真・上は選挙応援に駆け付けた小池都知事とツーショット、本人のツイッターより)

   さっそく、都議会議会局広報課の公式サイトをチェックする。「各会派等の構成(7月6日現在)」の欄には、確かに「無所属(SDGs 東京)」と記載されている。1人会派だ。しかし、「各会派等の連絡先」は11会派のうち、SDGs 東京だけが空欄となっている。何かやましさでもあるのかと勘繰ってしまう。後ろめたさがないのであれば堂々と連絡先を表記すればよいのではいか。

   除名処分を受けた日には、記者からの取材に対し「仕事をしていくことで期待に応えたい」と述べて、議員辞職の考えはないことを示した(7月5日付・産経新聞Web版)。その後、新たな疑惑(無免許運転の常習性)の証言が出る中で、翌6日には新会派を立ち上げたのだから、本人はヤル気を示したのだろう。

   ただ、「SDGs東京」のネーミングについては解せない。国連が採択したSDGs(目標持続可能な開発目標)をベースに都政の課題とどう向き合うのか、本人が政策を具体的に示さないと、環境や社会、経済に問題意識を持ちながらSDGsに取り組んでいる人たちはこのネーミングに納得しないだろう。その説明がなければ、「SDGs」を借用しただけの会派ということになる。もっと厳しく言えば、SDGsを愚弄する行為ではないだろうか。

   都議は板橋区役所で6日開かれた当選証書付与式を欠席した。選挙後初めての公の場となる付与式だったが、代理人も来なかった(7月6日付・NNNニュースWeb版)。冒頭で述べた「説明責任」を果たすタイムリミットはもう迫っている。報道によると、政府は新型コロナウイルスの感染の再拡大が続く東京都に対し、今月12日から来月22日まで緊急事態宣言を出す方針を専門家でつくる分科会に諮った。了承を得て、夕方の対策本部で決定する(7月8日付・NHKニュースWeb版)。今月23日に開会式を迎える東京オリンピックは緊急事態宣言の下で行われることになる=写真・下=。

   東京の緊急事態下、都の選良である政治家が果たすべき役割が多々あるはずだ。都議は一体いつ会見を開いて、自らの行動について釈明する説明責任を果たすのか。なぜ雲隠れを続けるのか。あくまでも、メディアを通した1人の政治家の観察記録である。人物との関わりは一切ない。

⇒8日(木)午前・金沢の天気      あめ時々くもり

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

   また、日本海で難題だ。きのう6日午前、岸防衛大臣は記者会見で、ロシア海軍が日本海のEEZ内にある大和堆=写真・上=の周辺でミサイル発射訓練を行うことに関して述べた。以下は、防衛省公式ホームページに掲載されている会見内容。

「大和堆の事ですけれども、7日から9日にかけて、ロシア海軍が日本海海域でミサイル発射訓練を実施予定であることを受けて、3日に海上保安庁から日本海海域に航行警報を発出しております。また、これに先立ち、2日、ロシア海軍によるミサイル発射訓練の実施海域の一部にわが国のEEZが含まれていることを踏まえ、外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行うとともに、わが国周辺におけるロシア軍の活動を関心を持って注視していることを伝達をいたしました。わが国周辺において、演習や訓練を含めたロシア軍の活動が活発化する傾向にあります」

   日本のEEZにある大和堆はスルメイカの好漁場で、先月6日に能登半島の能登町小木漁港からイカ釣り船団8隻が出航し操業を行っている。このブログを書いているときにも、ミサイル発射訓練が行われるかもしれない。それにしても、日本の漁船が危険にさらされようとしているのに、はっきり発言するタイプの岸大臣にしては、「外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行う」とは、言いようがどこか生ぬるい。じつは、国際法では他国の排他的経済水域で軍事演習を行うことは明確に禁じられていない。「抗議をする」などとは言えないのだ。

   ミサイルを発射するのはロシアだけではない。北朝鮮は3月25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した(日本政府が同日発表)。北朝鮮東部の宣徳付近から発射し、いずれも約450㌔飛行。日本の領海域には到達せず、EEZの外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来だった。事前通告なしに発射が繰り返されている。

   さらに、日本のイカ釣り漁船団が大和堆で警戒するのは中国漁船の違法操業だ。その無法ぶりは深刻だ。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、4月から多数の中国漁船が大和堆などに入り込んでいて、水産庁は320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在)=写真・下、水産庁公式ホームページより=。つまり、日本の漁船に先回りして、イカ漁場を荒らしているのだ。空からミサイル、海では違法操業。日本の排他的経済水域であるものの、日本の漁船は安心安全な漁ができないでいる。これが日本海の現実だ。

⇒7日(水)午後・金沢の天気       くもり

☆「自分ファースト」な議員 「議員ファースト」なメディア

☆「自分ファースト」な議員 「議員ファースト」なメディア

   誰がどう見てもこれは「自分ファースト」ではないだろうか。報道によると、今月4日投開票の東京都議選で板橋区選挙区で当選した都民ファーストの会の木下富美子氏が、選挙期間中だった2日に車で人身事故を起こしていた。木下氏は免許停止期間中で、警視庁が自動車運転処罰法違反(過失傷害)や道交法違反(無免許運転)の疑いで捜査している(7月5日付・朝日新聞Web版)。

   都民ファーストの会は5日夜、木下氏を除名処分にしたと発表した。「無免許運転は明確な法律違反であり、公人としてあるまじき行為だ」と指摘したうえで「このような重大な事故について、事故発生から数日経って初めて党に報告されたことは、党として看過できない」としている(同)。

   問題は根深い。木下氏は取材に「2日が免停期間の最終日で(免停期間が終わっていると思い)運転しても大丈夫だと思っていた。申し訳ない」と話した(7月5日付・産経新聞Web版)。ところが、都議選で木下氏と同じ板橋区で東京維新の会から出馬し落選した候補者がツイッター(7月5日付)でこう記している。「大事な点なので記載しておく。告示日直前の6月21日に志村坂上でご自身が街宣車を運転しているのを、私はハッキリと見た。私は自分の街宣車のマイクでご挨拶をしたが無視されたので、良く記憶している」

   つまり、無免許運転は2日だけではなく、その他の日(6月21日)でも目撃されている。それを木下氏は「免停中の期間を間違えた」と言い張っている。さらに、都民ファーストの会から除名処分を受けたものの、取材に対し「仕事をしていくことで期待に応えたい」と述べて、議員辞職の考えはないことを示した(7月5日付・産経新聞Web版)。

   政治家の矜持が感じられない。議員報酬にしがみつく様子が見え見えで、「自分ファースト」なスタンスだ。まず、都議会の記者クラブで会見を開くべきだろう。それにしても奇異に感じるのは、各メディアはなぜ2日の人身事故の時点で報道しなかったのだろうか。警察の担当記者は把握していたはずだ。2日の時点で「無免許で人身事故」と報じていれば、選挙情勢は変わっていたに違いない。選挙期間中ということで忖度したのだろうか。とすれば、まるで、「議員ファースト」なメディアだ。

(※写真は、当選を報告する木下富美子氏のツイッター=7月5日付)

⇒6日(火)夜・金沢の天気      あめ

★司法の断罪を超える「遺骨の存在」

★司法の断罪を超える「遺骨の存在」

   地下鉄サリン事件から25年が経つものの、「オウム真理教」は過去の話ではない。今でも元教祖、麻原彰晃に帰依している宗教団体の一つが金沢市内にあり、近くの人たちが監視行動を続けている=写真=。何度か近くを通ったことがあるが、麻原の教えがそのまま脈々と伝わっているのかと思うと背筋が寒くなる。あす6日は松本元死刑囚の刑が2018年7月6日に執行されて丸3年となる。さらに不気味さを予感させるニュースがきょう報じられた。

   死刑が執行されたオウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の遺骨を次女に引き渡すとした決定が確定した。松本元死刑囚の遺骨の引き渡しを巡っては家族の間で争いになり、昨年9月、東京家裁が遺骨と遺髪を次女に引き渡すと決定し、東京高裁もこれを支持した。これに対し、四女側は「松本元死刑囚が執行直前に遺骨などの引き取り先を四女に指名した」と主張していた。四女らは特別抗告していたが、最高裁は今月2日付で退ける決定をした。これにより、松本元死刑囚の遺骨は次女に引き渡すとした決定が確定した(7月5日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。

   遺骨をめぐる家族の争いはこれまで何度かニュースになっていた。2018年7月12日付・毎日新聞Web版によると、四女の代理人弁護士は7月11日に司法記者クラブで会見し、元死刑囚の遺骨を受け入れ、太平洋の不特定地点で船から散骨したいとの意向を明らかにしていた。これに対し、2021年3月10日付・朝日新聞Web版によると、東京家裁は、次女は面会を繰り返していて次女側との関係が「最も親和的」と判断し、東京高裁も支持した。今回、司法判断が確定したことについて、次女の代理人弁護士は「父を家族として静かに悼みたいということに尽きる」とした上で「次女はオウム真理教や後継団体とは一切関係がなく、父の遺骨が宗教的、政治的に利用されることを決して望んでいません。この審判でも主張してきました」と述べた(7月5日付・朝日新聞Web版)。

   おそらくこのニュースを喜んでいるのは信者たちだろう。まさに「仏舎利」が出来たようなものだ。信者たちは次女の自宅にある方向に向かって、イニシエーション(修行)を繰り返し、「聖地」化するのではないか。では、どうすれば「聖地」化を防ぐことができるか。裁判での四女の主張はまさにこのことだと想像する。以下の事例を念頭に置いているのではないだろうか。

   ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によってパキスタンで実行された。アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。また、第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨はアメリカ軍によって、上空から太平洋に散骨された。

   「最も親和的」とする司法判断はまるで性善説のようだ。「死刑をもって断罪」は法の次元であって、遺骨があれば宗教はそれを超える。不可解な信仰とテロが復活しないことを祈る。

⇒5日(月)夜・金沢の天気      あめ時々くもり