★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

   まもなく冬将軍が到来する季節。海も荒れると必ずニュースになっていた日本海沿岸への北朝鮮からの漂着船の記事を今季はまだ見ていない。今年は何かが起きているのか。上の写真は2018年1月16日に金沢市下安原町の海岸に打ち上げられた北の木造船だ。この目で確かめようと、現場に赴いたのは同17日午前。現場は防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がり、警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、現物と分かった。

   全長16㍍、幅3㍍ほど。このような小さな船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、違法操業をしてたのか。船内をのぞくことができた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでして漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、など当時は思った。

   今季はどうか。第九管区海上保安本部の公式ホームページをチェックしても、北の漂着船はゼロだ。なぜ今年は木造船が漂着しないのか。単純な話で、能登半島沖のEEZ(排他的経済水域)で違法操業を行っているのは北朝鮮の漁船ではなく、中国の漁船なのだ。海上保安庁が監視活動を継続しているが、ことしに入り11月4日時点で、延べ4137隻の中国漁船に退去勧告を発している(11月5日付・NHKニュースWeb版)。

   10月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆周辺で大量の中国漁船が違法操業を行っている=写真・下=。去年までは北の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZというわけだ。中国の漁船は北の小型と違って大型の鋼船で、釣りではなく、底引き網で漁獲する。そして、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで違法操業をしている(11月24日付・時事通信Web版)。

   違法操業の主役が交代し、これから何が起きるのか。水産庁が大和堆西部の特定の海域に入るのを当面、自粛するようイカ釣り漁船側に要請して、「日本のEEZなのになぜだ」と漁業者の反発を買った(10月20日付・朝日新聞Web版)。日本海の荒波が激しくなってきた。

⇒9日(水)夜・金沢の天気   くもり 

☆大麻をめぐる是非論

☆大麻をめぐる是非論

   「アヘン戦争」(1840-42年)は日本の歴史教科書にも出てくるので誰でも知っている。イギリスの貿易商たちがインドで得た麻薬のアヘンを中国で売りさばき、その金で中国で茶葉を買うという「三角貿易」で貿易商たちは莫大を利益を上げていた。そのアヘンの取り締まりを強化した中国に対してイギリスが武力報復をしたのがアヘン戦争だと理解している。

   以下は記者時代に警察の担当者から教わった知識だ。アヘンは麻薬の一種で、ケシの実からつくられる。大麻やマリファナはアサの花や茎、葉を乾燥させたもので、細かく切り刻んで燃やして発生した煙を吸引する。薬の作用もあり、医療薬として用いられるケースもある。大麻は麻薬ほど強くないのでタバコと同様に認めるべきだとの声もあるが、大麻を吸う人のほとんどは麻薬や覚醒剤へとはまっていく。

   上記の2つのことが知識としてあったので、新聞記事を読んでアメリカは大丈夫かと懸念している。以下は記事内容。大麻の合法化をめぐる住民投票で、ニュージャージー、アリゾナ、サウスダコタ、モンタナのアメリカ各州では合法化が決まった。これで大麻を合法的に使えるアメリカ人は1億900万人に上り、総人口の3人に1人に相当する。合法化の結果、ニュージャージー州はアメリカで最大級の大麻市場になると予想される(12月5日付・日経新聞Web版)。

   同州は販売や税収などで年間1億2600万㌦(130億円)の収益を生み出せると計算している。歴史的には大麻合法化に反対してきた共和党支持者の多いサウスダコタとモンタナ州でも合法化が支持され、同党内での意識の変化が起きている。今後、大麻合法化がアメリカ国内で加速する可能性が高くなっている(同)。

   このアメリカの大麻をめぐる動きを見て笑っているのは中国ではないだろうか。「バイデンが大統領になれば、さらに加速するだろう。大麻は自由の象徴だと勘違いしているのが民主党だ」と。確かに、税収の確保のため大麻を合法化するというアメリカの動きも、日本人にとっても不可解だ。もし、アメリカでこの動きが全土に広まれば、日本の学生たちにアメリカへの留学を勧められなくなる。最近、アメリカから帰国後に自宅で大麻栽培をして使っていたというニュースも目につくようなってきた。

   無害というのであれば、堂々とカミングアウトして大麻解禁の運動を展開し、できれば選挙の争点としてほしい。日本でも、きっちりとした議論をするべき時が来ているのではないだろうか。自身は禁煙論者であり、タバコも吸わない。

⇒6日(日)夜・金沢の天気     はれ

★コロナ禍でも「あえのこと」は絶やさず

★コロナ禍でも「あえのこと」は絶やさず

   新型コロナウイルイスの感染拡大で能登半島でもイベントがほとんどが中止となった。何百年という歴史があるキリコ祭りも中止となった。ただ、家々で毎年12月5日に営まれる農耕儀礼「あえのこと」だけはささやかに行われた。「あえのこと」は田の神をご馳走でもてなす家々の祭りを意味する。2009年9月、ユネスコ無形文化遺産に単独で登録されている。   

   田の神はそれぞれの農家の田んぼに宿る神であり、農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。共通しているのが、目が不自由なことだ。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂でうっかり目を突いてしまったなど諸説ある。目が不自由であるがゆえに、それぞれの農家の人たちはその障害に配慮して接する。座敷に案内する際に階段の上り下りの介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。もてなしを演じる家の主たちは、自らが目を不自由だと想定しどうすれば田の神に満足していただけるのかと心得ている。

   「あえのこと」を見学すると「ユニバーサルサービス(Universal Service)」という言葉を連想する。社会的に弱者とされる障害者や高齢者に対して、健常者のちょっとした気遣いと行動で、障害者と共生する公共空間が創られる。「能登はやさしや土までも」と江戸時代の文献にも出てくる言葉がある。初めて能登を訪れた旅の人(遠来者)の印象としてよく紹介される言葉だ。地理感覚、気候に対する備え、独特の風土であるがゆえの感覚の違いなど遠来者はさまざまハンディを背負って能登にやってくる。それに対し、能登人は丁寧に対応してくれる。もう一つ連想する言葉がSDGsだ。「誰一人取り残さない」という精神風土、あるいは文化風土をこの「能登はやさしや土までも」から感じ取る。

   去年、金沢大学で「あえのこと」見学ツアーを実施した。ブラジルからの女子留学生は「とても美しいと感じる光景の儀式でした。ホスピタリテーの日本文化を知る機会を与えていただき感謝しています」と喜んでいた。留学生たちは日本の「お・も・て・な・し」を体感したようだった。(※写真は、2019年12月5日の輪島市千枚田、川口家の「あえのこと」)

⇒5日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆チャイナ目線 3つの小話

☆チャイナ目線 3つの小話

   香港政府とバックの中国政府は2日と3日の連日、民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)周庭氏ら3人への実刑判決、中国に批判的な報道の黎智英(ジミー・ライ)氏の収監と、民主派への締め付けを強めている。ふと思うことは、中国政府は日本の今をどのように眺めているのだろうか。小話ではある。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」の前日に開いた夕食会の費用負担の問題。新聞各社の記事によると、夕食会は年に1回、都内のホテルに山口県の支援者らを招き、1人5千円の会費制で開かれた。2015-19年の5回では合計2300万円の経費がかかったにもかかわらず、会費分は計1400万円で、差額の900万円は安倍氏側が補塡した。ホテルは安倍氏が代表の資金管理団体あてに補塡分の領収書を発行していた。東京地検特捜部は公設第1秘書と事務担当者の2人を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する方向。罰金刑となり正式裁判は開かれない。

   このニュースを知った中国の要人は、「ところで、この件でいったい誰が損をして誰が得をしたのか。支援者が豪快に飲み食したツケを払った安倍氏がむしろ被害者ではないのか。それを罪に問うことは我々には理解できない。不思議な国だ」と言っているかもしれない。

   東京五輪・パラリンピックの1年延期に伴う追加経費と新型コロナウイルス対策費について、東京都が1200億円、国が700億円、大会組織委員会が700億円超を負担する方向で調整している。延期の追加経費は1700億円、新型コロナ対策費は900億円で調整している。組織委員会の森喜朗会長、都の小池百合子知事、橋本聖子五輪大臣が3者会談で決める。

   このニュースを知った中国の要人は、「森先生は大人(たいじん)で太っ腹だから、ついでに2022年2月からの北京冬季五輪の分も払ってくれないかと頼んでみよう。忘れもしない、2001年の李登輝の訪日問題では、あれほど我々が止めとけといったのにビザ発給したのは当時総理の森先生だ。あれは我々にとって『貸し』も同然だから、文句も言わないだろう」と言っているかもしれない。 

   ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボードによると、新型コロナウイルスで亡くなった人の数は、世界全体の累計で150万人となった。コロナ禍の対応をめぐり、菅総理は国連の特別総会でビデオ演説し、「危機を乗り越えるべく『団結した世界』を実現しなければならない」と訴えたうえで、WHOの検証や改革に協力していく考えを示した(12月4日付・NHKニュースWeb版)。

   このニュースを知った中国の要人は、「我が国の社会学者が講演で、コロナ禍で中国の死者4千人は20万人のアメリカに比べれば1人も死んでいないに等しい、中国の人口14億人のうち4千人が死んでも、誰も病気になっていないのと同じだと語ったそうだが、偉大な指導者・毛沢東同志はかつて革命のためなら『1億死んでも構わない』とおっしゃった。数字はあくまでも演技、だからいちいち細かなコロナの数字なんて我が国では出さない。オリンピックもあることだし、菅総理もWHOにドンと100億㌦出すと言うべきではないか」と言っているかもしれない。 

⇒4日(金)午後・金沢の天気     はれ

★香港の民主活動「根絶やし」作戦か

★香港の民主活動「根絶やし」作戦か

    ついに「根絶やし」作戦に転じた。イギリスBBCWeb版(12月3日付)は「Hong Kong pro-democracy tycoon Jimmy Lai detained for fraud」(香港の民主化の大物、ジミー・ライが詐欺で拘束された)と大きく伝えている=写真=。日本のメディアも、香港の裁判所はきょう3日、中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に対する詐欺罪での初公判を開き、保釈申請を却下して収監を命じた。黎氏は即日収監された(12月3日付・読売新聞WEB版)。

   黎氏の勾留は、来年4月16日の第2回公判まで続くとみられる。黎氏はこし8月に香港国家安全維持法(国安法)違反と詐欺などの疑いで香港警察に逮捕された後、保釈されていた。今回は、逃亡や再犯の恐れを理由に保釈申請が認められず、収監された(同)。

   では、今回の詐欺罪はどのような内容なのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社がある不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われている(同)。つまり、「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。香港の転貸に関する法律を理解してはいないが、日本ならば、無断転貸の場合、ビルのオーナーは賃貸借契約を解除することになるだろう(民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」)。民事をあえて刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

   新聞メディアを経営する黎氏は一貫して民主活動を支持している。香港政府とバックの中国政府は、黎氏の収監により、中国に批判的な報道の萎縮を狙ったのだろう。きのう2日には、民主活動家の周庭氏や黄之鋒氏らが無許可集会を扇動したなどとして実刑判決を受けたばかりで、香港当局による民主派への締め付けは強まる一方だ。

   BBCの解説(3日付)によると、ことし6月に施行された国安法では、裁判は陪審員なしで秘密裏に行われ、裁判は本土当局に引き継がれる。本土の治安要員は、免責されたまま香港で合法的に活動することができる。この法律が導入された後、多くの民主化運動グループが安全性を恐れて解散した。中国政府は、この法律は民主化運動で揺らいだ領土の安定を取り戻し、中国本土との整合性を高めるのに役立つと主張している。
 
⇒3日(木)夜・金沢の天気    あめ

☆香港に響く「むせび泣き」

☆香港に響く「むせび泣き」

   香港の民主化運動を訴えてきた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)氏ら3人に香港の裁判所はきょう2日、禁錮刑を言い渡した。イギリスBBCも「Hong Kong: Joshua Wong and fellow pro-democracy activists jailed」(黄之鋒氏ら民主活動家を投獄)=写真=と大きく伝えている。香港、そして背後の中国に対して国際社会の目線はいっそう厳しくなるだろう。

   香港の民主派団体「香港衆志」の幹部だった黄氏や周氏ら3人は2019年6月、警察本部を取り囲んだ大規模な抗議デモに関連し、無許可の集会への参加をあおった罪などに問われ、先月11月23日、裁判所は有罪を認定し、拘置施設に収監されていた。きょう量刑が言い渡され、「公共の秩序と安全を壊し、市民の生命と安全を脅かした」として、黄氏に禁錮13か月半、周氏に禁錮10か月が確定した(12月2日付・NHKニュースWeb版)。

   BBCの記事の中で気になる下りがある。「The pro-democracy movement has been stifled since Beijing introduced a controversial security law with harsh punishments.But as their offences took place before the law’s enactment, the activists have avoided a potential life sentence.」。以下意訳だが、中国政府が、議論の的となっている香港国家安全維持法を(ことし6月に)導入し、厳しい罰則を科して以来、民主化運動は停滞している。この法律が施行される前に彼らの犯罪があったため、(今回3人の)活動家たちは終身刑を免れている。

   また同じくBBCが紹介している人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の批判コメントも共通している。「Rights group Amnesty International condemned the ruling, saying it was a way for authorities to “send a warning to anyone who dares to openly criticise the government that they could be next”.」。以下意訳。人権団体アムネスティ・インターナショナルはこの判決を非難し、これは当局が「政府を公然と批判する勇気ある人に、次は自分たちであるという警告を送る」方法であると述べた。

   BBCやアムネスティ・インターナショナル伝えているように、この判決は民主活動家への「警告」だろう。香港国家安全維持法(国安法)施行前の法律での裁きなので、量刑はこれで済んでいるが、今後の抗議活動は国安法での裁きになるので終身刑も覚悟せよ、とのメッセージなのだ。

   周氏の場合、ことし8月に国安法に違反した疑いでも逮捕されていて、今後起訴される可能性もある。周氏が収監されるのは今回が初めとなり、周氏は裁判のあと肩を震わせてむせび泣いていた(NHKニュ-スWeb版)。ニュースを通じて、このような民主活動家への弾圧が現代でも繰り広げられていることに、憤りを覚える。

⇒2日(水)夜・金沢の天気    くもり

★同時配信というローカル局のチャンス

★同時配信というローカル局のチャンス

           DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれているが、一番出遅れているのか民放ではないかと考えることがある。なぜなら、放送と通信(ネット)の同時配信がいまだに進んでいないからだ。そのネックの一つとなっていた著作権問題では道筋が見えてきたようだ。放送番組のインターネット同時配信の著作権問題について、文化庁著作権分科会のワーキングチームはきのう(11月30日)、ネット配信の著作権の処理については放送と同等に扱うべきとする報告書案をまとめた。          

   現状、著作権は放送と通信(ネット)では「平等」ではないという現実がある。たとえば、テレビ局が番組に曲を使う場合、実演家(演奏者・歌手・俳優)やレコード会社に事後報告でよいが、ネットでの使用の場合は事前許諾が必要となる。ただし、作詞家や作曲家には双方とも事前許諾が必要だ。このため、NHKは民放に先行してことし4月から1日18時間の同時配信の運用を始めているが、番組をネットに同時送信するため、わざわざ事前許諾を求めている。その権利処理が行えない場合には曲をカットしたり、差し替えをする、業界用語で「ふたかぶせ」の対応を迫られている。

   事前の著作権許諾の作業だけでもスタッフの配置が必要なためにコストもかさむことは想像に難くない。さらに、出演料なども地上波のみから、ネット配信もということになれば、値上げが必然となるだろう。NHKの2020年度インターネット活用業務実施計画(1月15日付)によると、今年度から同時配信を進めるために設備費や放送権料などにかかわる費用として54億円を計上している。

   仮に著作権問題がある程度軽減されたとして、民放の同時配信が進むかと問えば、さらに、別の大きな問題もある。一つはCMだ。テレビ離れが進んでいるといわれる若者たちがスマホやタブレットでテレビを視聴できる環境をつくったとして、局側がスポンサーにCM料を地上波に上乗せして払ってくれと言えるだろうか。地上波でのCM料は視聴率という目安があるが、同時配信でのネット上のCM料の目安はいまだ確立されてはいない。スマホやタブレット上の競争相手はテレビ局ではない、動画コンテンツは無限にある。

   もう一つは県域問題だ。ローカル局には放送法で「県域」というものがあり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京)の系列ローカル局のこと。逆に言うと、スマホやタブレットで東京キー局の番組を視聴できれば、同じ系列局のローカル局の番組は視聴されなくなるかもしれない。

   このように書くと、民放、とくにロ-カル局には夢も希望もないような表現になる。が、個人的には同時配信に踏み切ることでローカル局にはチャンスが生まれると言いたい。ここからは持論だ。ローカル局が自社制作番組をネット配信をすることで、首都圏や遠方の他県に住む出身者など新たな視聴者層を開拓できるのではないだろうか。「ふるさと」をアピールできる。出身者でなくても、金沢・能登・加賀ファンをつかむことができる。

   できれば、金沢からリアルな情報を発信する動画配信サービスのサイトを石川県内の民放4局が共同出資でつくってほしい。それも、日本語と英語で構築できないだろうか。能登、金沢、加賀の県内各地のケーブルテレビ局も巻き込んで、「KANAZAWAチャンネル」をつくり、観光・ツーリズムを発信する。これまでの規制にとらわれない、新たなパラダイムがテレビ局に求められているのではないだろうか。今回の著作権の緩和はそのスタートだと解釈している。

⇒1日(火)夜・金沢の天気    はれ時々くもり

☆勇気ある発言

☆勇気ある発言

           これは実に勇気のある発言だと感じ入った。ロイター通信Web版日本語(11月27日付)によると、WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏が、新型コロナウイルスの起源が中国「外」とする主張について、かなりの憶測だという見方を示した。 中国は国営メディアを使って「コロナの起源が中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。

   さっそくWHO公式ホームページをチェックすると、27日の記者会見の動画が掲載されている。30分過ぎごろからのオンラインによる記者の質問で、「中国は、ウイルスは去年暮れに武漢の海鮮市場で確認されたが、それ以前に海外に存在していたと主張しているが、WHOの見解を述べてほしい」(意訳)と。これに対し、ライアン氏は「コロナウイルスが中国で発生しなかったとの主張はかなりの憶測で、公衆衛生の観点から、ヒトの感染が確認された場所から調査を始めるべきことは明白だ」(意訳)と述べ、WHOとしてウイルスの起源を調べるため、専門家らを武漢の食品市場に派遣する方針だと述べた。

   パンデミック以降、WHOの記者会見をたまにチェックしているが、ライアン氏は3月18日の会見では、アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んでいることについて、「ウイルスを特定の国に関連させないよう言葉遣いに注意することが重要だ」と批判した。当時は中国寄りの発言との印象だったが、今になって考えれば、実に的を得た回答ではある。科学的な論拠を経ずに、政治が外交プロパガンダとしてウイルスを使うことに違和感を隠さない、そのような人柄を感じる。

   ただ、余計な心配かもしれないが、かなり「外圧」が今後、ライアン氏にかかるのではないだろうか。中国からだ。そもそも、WHOと中国の関係性が疑われたのは今年1月23日だった。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス事務局長は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べていた(1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   さらにWHOが中国寄りの姿勢を露わにしたのは今回の年次総会だった。WHOに加盟していない台湾がオブザーバーとしての参加を目指し、中南米の国も参加を求める提案をしていたが、総会の議長は非公開での協議で提案の議論は行わなかった。このため、台湾のオブザーバー参加は認められなかった。台湾の参加はアメリカや日本などが支持した一方で、中国は強硬に反対していた(11月10日付・NHKニュースWeb版)。テドロス氏を通じた、中国からのライアン氏への圧力は心配ないのか。

⇒30日(月)午後・金沢の天気   はれ時々くもり 

★NHKの「在るべき方向」とは

★NHKの「在るべき方向」とは

   このブログでも何度かNHKの受信料をテーマに取り上げてきた。先月10月16日、受信料制度の在り方などを検討する総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」で、NHK側が家庭や事業所でテレビを設置した場合はNHKへの届け出を義務化するよう放送法の改正を要望したというニュース(10月17日付・共同通信Web版)があった。受信契約を結んでいない世帯の居住者の氏名や、転居があった場合は転居先などの個人情報を、公的機関などに照会できるようにする仕組みの導入も求めた。受信契約の対象者を把握することで不払いを減らし、営業経費の削減にもつながるというのだ。

   今月20日、総務省は11月20日、NHKが求めていたテレビ設置届け出の義務化は「不適当」として見送る方針を示した(11月20日付・日経新聞Web版)。NHKは特殊法人として受信料に支えられ、法人税は免除されている。この環境で、さらにテレビ設置届け出の義務化では視聴者・国民の反発を招くと判断したようだ。このいきさつについて詳しく知りたいと思いネットで検索したところ、関西テレビ公式ホームページ「東京駐在 キーパーソンに訊く!」で、高市早苗・前総務大臣へのインタビュー記事が参考になった。以下記事を引用する。

   NHKの2019年度決算の営業経費(徴収経費)は759億円だった。同年度の受信料収入は7115億円なので、営業経費が10.6%を占めたことになる。徴収コストが高い。それは強制徴収の制度も罰則もないので、「NHKの苦労」はある意味で同情する。ちなみに、フランス、ドイツ、韓国では受信料は強制徴収で、支払わない場合は罰金や追徴金が課される。イギリスは強制徴収制度はないが、罰則規定はある。

    NHKの営業経費の中で「訪問要員による係わる経費」が305億円。訪問要員は、未契約者や入居者の入れ替わりを把握するための「点検」、「面接」、「(テレビの)設置把握」、「説明・説得」という手順を踏んで、「契約取次」にいたる。が、未契約者からは「急に訪ねてきたNHKの訪問員が、テレビの有無を確認すると言って無理やり部屋に上がりこんで・・・」といった苦情が寄せられることになる。こうしたクレームやトラブルを解消するために、NHKは公共料金や税金との共同徴収を可能にする「放送法」の改正を望んでいる。

   しかし、地上波のみの地上契約で年額1万4700円、地上波を含む衛星契約で年額2万6040円の受信料。衛星アンテナが設置された集合住宅に入居すると、衛星放送をまったくに視聴しないのに年額2万6040円の受信料負担は納得できないと感じている視聴者も多い。ましてや、(上記の)放送法の改正をするのであれば、受信料を相当安い水準にしなければ視聴者の支持と信頼感は得られない。また、コスト的に、地上波2波、ラジオ3波、衛星4波は「放送波の肥大化」との批判もある。受信料の引き下げは放送波のコストカットと連動して行うべきだ。さらに、2019年度の「繰越余剰金」、つまり内部留保は1280億円もある。繰越余剰金を受信料に還元する会計上の仕組みが必要であるが、これは実現性が高い。

   インターネットと地上波の同時配信で問題もある。テレビは持っていないが、ネットでNHKを視聴したいというニーズに対応できていない。放送法の受信料制度は「テレビ受信機の設置」が基準になっている。放送法の抜本的な見直しも必要となるだろう。

   最後に高市氏が述べていること。「そもそも企業スポンサーが不要なのですから、民放と競って視聴率狙いの番組制作をする必要はない」「『伝えるべき方向』に向けて進んでいただきたい」と。同感である。

⇒29日(日)夜・金沢の天気     はれ

☆この株高、「ワクチンバブル」なのか

☆この株高、「ワクチンバブル」なのか

   東京株式の日経平均はきのう27日も107円上げ2万6644円で終えた。メディア各社は、1991年4月以来およそ29年半ぶりの高値を連日で更新したと報じている。株高は日本だけではない。ニューヨークのダウも今月24日に初めて3万㌦の大台に乗せている。

   振り返ってみると、新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な景気後退の懸念や、ロシアとサウジアラビアの対立による原油価格の暴落なども絡まり、全体が「弱気相場」に入っていた。とくに3月に入り、ニューヨークの株価指数「S&P500」の下落率が7%を超えると自動的に売買を停止する「サーキットブレーカー=Circuit Breaker」が何度か作動し、3月23日にはダウが1万8591㌦にまで落ちていた。東京株式も3月19日に1万6500円まで下がり、ことしの最安値だった。

   今でもコロナ禍は世界、とくにアメリカでの猛威は止まない。ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボード(日本時間28日午前9時現在)によると、アメリカの感染者総数は1307万人、死亡者は26万人と断トツに多い。そして日本でもきのう27日は全国で2531人の新規感染者が発表され、2日連続で2500人超だ。にもかかわらず、年末が近づくにつれて株価が上がり、日経平均もダウも株価は絶好調だ。この現象はいったい何んなのか、そのファクターは何か。

   マーケット関係の記事を読むと、アメリカではコロナ対策で政府や連邦準備理事会(FRB)がつぎ込んだマネーが膨張して株式市場に流れ込んでいるのではないかという論が散見される。ただ、3月の安値からの上昇率は6割以上に達する。マネーの流入にしては、最近の株価の加速性を見ると時期的にアンバランスのように思える。アメリカ大統領選があった11月3日以降が上昇のテンポが速いので、バイデン効果かとも推測する。

   むしろ、ワクチン開発がアメリカの期待度を高めているのかもしれない。アメリカの株価が持ち直してきたのは、ワクチン開発を国家プロジェクトで進める「ワープ・スピード計画」が8月以降で臨床試験が本格化したタイミングだった。それが11月に入り早期実現のメドが立ってきた。「トランプ大統領は、新型コロナウイルスのワクチンの供給が来週とその翌週に開始する見通しだと述べた」「感謝祭の祝日に合わせて行われた海外駐留米軍兵士とのテレビ会議で語った。当初はコロナ対応の最前線に立つ人たちや医療従事者、高齢者に供給されると述べた」(11月27日付・ロイター通信Web版日本語)。

   ワクチンに関しては、アメリカの製薬会社は90%以上の有効性が確認されたとして、すでに緊急使用許可を政府に申請している。アメリカで12月からワクチン投与が始まれば、コロナ禍が社会や経済に及ぼしている影響が大幅に緩和されるとの期待が高まるだろう。ただ、ワクチン頼みだと、その効果の持続性や副作用などのマイナス面が出ると反動も大きく、経済パニックが再来し、ワクチンバブルも一瞬にして弾ける。アメリカのワクチン効果が国際社会に及ぼす影響を観察していきたい。

⇒28日(土)午前・金沢の天気     あめ