★「大麻解禁」アメリカへの留学

★「大麻解禁」アメリカへの留学

   「五風十雨(ごふうじゅうう)」は五日に一度は風が吹き、十日に一度は雨が降るという、落ち着いた天気のことを表現する言葉だ。季節的には春から初夏にかけての今ごろの天候を言う。庭にウツギの白い花が咲き、ツキヌキニンドウの赤い花も青空に映えている。二つの花を切って、玄関に生ける=写真=。赤と白の花のコントラストがまたいい。自慢話になってしまった。

   確かに植物は人に安らぎを与えてくれるが、この植物はどうだろう。アサ、つまり大麻草のこと。茎の皮の植物繊維は麻織物として重宝され、人類が栽培してきた最も古い植物の一つに数えられる (「Wikipedia」)。それを人類はいつしか「快楽の薬」として使い始めた。大麻やマリファナはアサの花や茎、葉を乾燥させたもので、細かく切り刻んで燃やして発生した煙を吸引する。薬の作用もあり、医療薬として用いられるケースもある。大麻をめぐっては、麻薬ほど強くないのでタバコと同様に認めるべきだとの声や、大麻がきっかけで他の薬物にはまっていくのではないかと懸念する声もある。

   きょうのニュースで、慶応大学の男子学生19歳が大麻取締法違反(有償譲渡)の疑いで、また、アメリカ・ニューヨーク州にある慶応ニューヨーク学院(高等部)の男子生徒18歳ら4人が同法違反(所持)の疑いで逮捕された。男子学生はニューヨーク学院の卒業生で、同学院の生徒らはコロナ禍で一時帰国していた(4月27日付・朝日新聞Web版)。

   このニュースの微妙なところは、ニューヨーク州ではことし3月31日に大麻の使用や栽培を合法化していることだ。大麻は許可を得た小売店で販売され、21歳以上の成人であれば購入できる。大麻を使用した際の車の運転は禁止されるなど規制も設けられている(4月1日付・NHKニュースWeb版)。このほか、首都ワシントンやカリフォルニア州など16の州で認められている。隣国のカナダも3年前に合法化している。

   アメリカの大麻解禁の流れには背景がある。国連麻薬委員会(CND)が最も危険な薬物に分類していた大麻および大麻樹脂をリストから除外することを承認し、大麻の医療的価値を認めたことによる(2020年12月3日付・CNNニュースWeb版日本語)。アメリカでこの動きは全土に広がるだろう。日本人が旅行やビジネスでアメリカに出かけ、大麻を勧められたとしても、渡航先での使用は現行の日本の大麻取締法では罰則対象とされてはいない。日本に持ち帰った場合、所持であっても罰せられる。

   「民主主義・人権」は共有できても「大麻」は共有できない日本とアメリカ。その是非を政治の場で議論すべき時が日本でもめぐってきたのではないか。前述の記事を読んで感じたことだ。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆「とんでもにゃあ」選挙モンスター

☆「とんでもにゃあ」選挙モンスター

   きょうの朝刊一面は「自民全敗」の見出しが躍っている。菅政権になって初めての国政選挙となった衆院北海道2区、参院長野、同広島できのう25日投開票が行われた。与野党対決となった長野と広島で自民候補が敗れ、北海道は候補者擁立を見送った、いわゆる自民の不戦敗だった。北海道は贈収賄事件、広島は公職選挙法違反事件の「政治スキャンダル」があり、野党有利の風が吹いた。長野は新型コロナウイルス感染による現職急逝の「弔い合戦」だった。衆参の3つの選挙は、それらしい結果だろう。

   むしろ選挙の醍醐味を感じるのは名古屋市長選だ。愛知県知事のリコール運動をめぐり大量の署名偽造が発覚するスキャンダルがあり、そのリコール運動の推進役だった現職の河村たかし氏が、出直し選を含め5回目の当選を果たした。自らは無所属だが、相手は自民、立憲民主、公明、国民民主が推薦する「相乗り候補」だった。選挙で問われる年齢は河村氏が72歳、相乗り候補は59歳。さらに、名古屋市長として初の4期目を賭けた選挙だった。本来ならば逆風となる「スキャンダル、支持政党なし、高齢・多選批判」を見事に乗り越えた「選挙モンスター」だ。

   名古屋の有権者は河村氏のどこに共感したのか。本人のツイッターをチェックしてみる=写真=。当選後の日付のものはないが、4月23日付でツイートしている。「ナゴヤ市長選挙。市民(河村たかし)対 超高給職業議員(自民・民主・公明・共産)生活協同組合。とんでもにゃあ。 日本1ナゴヤコロナ対策『感染防止』『くらし・経済』両立。保健所の地を這う調査 しっかり続けて 感染拡大抑え込みます。 動画是非見てちょうよ。」

   名古屋市長選は「市民(河村たかし)対 超高給職業議員(自民・民主・公明・共産)生活協同組合」そのものだと表現している。つまり、河村氏は主要政党と全面対決という実に分かりやすい選挙の構図を描いた。その上で、「日本で1番給料の安い市長(人口比圧倒的、年収800万円)」や「日本でただ1つの減税都市ナゴヤ市長になってから10年で1,000億円減税」(同ツイッター)と具体的な数字で訴えた。

   ただ、知事リコール運動をめぐるスキャンダル問題は選挙戦でかなり響いた。今回、河村氏は39万票を獲得し得票率は51%、相乗り候補は35万票で同45%だった。前回2017年選挙では河村氏は45万票で得票率67%だった。単純な計算だが、「河村離れ」が6万票、16ポイント、それぞれ減という数字で表れた。

   それにしても河村氏のキャラは超絶だ。選挙運動の最終日の演説を終えてのツイッター(24日付)が面白い。「河村たかし72才 政治目指し28年付き合ってくれた古女房自転車とさゅあご(最後)speech。よう不肖河村たかし 皆さん応援してちょうた。サンキューベリマッチ。ほんなら風呂ひゃあて寝るは ばいばい」

          気取らずモノを言うこのキャラは日常空間に人を引き込んで飽きさせない。選挙モンスターたるゆえんかもしれない。

⇒26日(月)午前・金沢の天気      はれ

★「花と生き物たちの楽園」小原古邨の世界

★「花と生き物たちの楽園」小原古邨の世界

    そこに描かれていた作品の数々はまるで「花と生き物たちの楽園」だった。作者は小原古邨(おはら・こそん、1877-1945)、明治末から昭和にかけて活躍した花鳥画の絵師だ。金沢出身で、初の「里帰り」展がきのう24日、金沢市の石川県立歴史博物館で開幕した。実は自身もこれまで名前すら知らなかった。きょう鑑賞に出かけた。

   作品を鑑賞して、動物たちの表情が印象的だった。展覧会のチラシにもなっている「蓮に雀」=写真・上=は、ハスの花が開き始める様子を、茎に舞い降りたスズメがじっと観察している様子が描かれている。ハスの花の線やスズメの毛並みまで実に細やかだ。

   会場で鑑賞者が多く足を止めていたのが「踊る狐」だった=写真・中=。ハスの葉を被って、まるで踊っているように面白く描いた作品だ。この作品を眺めていて国宝の「鳥獣戯画」のワンシーンを連想した。生き物たちのユートピアだ。緊張感のある絵もある。「金魚鉢に猫」=写真・下=は、鉢の中の金魚をじっと見つめて狙っている。このネコの姿は現代も変わらない。こうした鳥や動物、花といった身近な自然を木版画で写実している。

   いわゆる江戸時代の浮世絵と同じようには見えない。伝統的で高度な浮世絵の技術をベースにまるで水彩画のように美しい色合いで表現することで、明治、大正、昭和と生き抜いた画家だったのだろう。大正末期からは「祥邨」の号を用い、華やかな色とモダンな画面構成の作品はアメリカやポーランドなど欧米で展示されるようになった(チラシ文より)。

   「お帰りなさい。楽しませてくれてありがとう」と言いたい。県立歴史博物館の「小原古邨 海をこえた花鳥の世界」展では版画を中心に200点が展示されている。6月27日まで。(※写真の中と下は会場で販売されている絵葉書より)

⇒25日(日)夕・金沢の天気     くもり

☆東京オリンピックまで90日 見えてきた課題

☆東京オリンピックまで90日 見えてきた課題

   7月23日の東京オリンピック開幕式まであと90日に迫った。やはり思うことは、コロナ対策として果たして準備できているのだろうか、そして何を準備する必要があるのか、大会組織委員会から国民に向けたメッセージが聞こえてこない。

   3月20日の大会組織委員会と政府や東京都、IOCなどの5者会談で現在のコロナ禍の状況では海外から日本への自由な入国を保証することは困難だとして、海外からの観客の受け入れを断念することを決めている。さらに、国内観客の入場制限について結論を6月まで先送りするようだ(4月21日付・NHKニュースWeb版)。その成り行きは、25日から5月11日まで実施される東京都などを対象にした緊急事態宣言の効果がどれほど上がるのか、その結果次第かもしれない。5月半ばまでに感染拡大が治まらなければ、当然7月も見通しが暗くなり、無観客とせざるを得ないだろう。

   それと同時に気になるのは医療サポートの体制が組めるのだろうか。選手が1万人以上、コーチなどのスタッフを絞ったとして5万人が集まるとされる。ところが、国内の現状として、ワクチン接種の注射をする医師が足りていない。そのような現状で、オリンピック医師団の体制をつくることができるのだろうか。

   そして、選手へのワクチン接種をどうするか、だ。自民党の下村政務調査会長は、東京オリンピック・パラリンピックに出場する日本選手への優先的な接種の必要性について、党内で検討する考えを示したと報じられいる(4月14日付・NHKニュースWeb版)。現在、選手や関係者にワクチン接種を優先する計画はないが、格闘技などで日本選手がワクチンを接種していないとリスクがあるとのこと。また、IOCのバッハ会長は、ワクチン接種を東京オリンピック出場の前提条件にはしないと発言している(4月8日付・AFP通信Web版日本語)。結局、選手へのワクチン接種は各国での判断となる。     

          あすから始まる緊急事態宣言は、GW中の人の流れを徹底的に抑制する17日間の短期集中型の対策だろう。この効果を見極めてのオリンピック対策なのだが、まさに実行性が問われる。

⇒24日(土)夜・金沢の天気     くもり

★タイムリーに放った文春「バズーカ砲」

★タイムリーに放った文春「バズーカ砲」

   いま国民の関心事は「コロナ禍とワクチン」と「東京オリンピックの開催」、そして「眞子さま婚約内定にまつわる問題」の3つではないだろうか。このブログでは、眞子さまの婚約内定については触れてこなかった。が、小室圭氏本人が国民に向けて発表したA4用紙28ページの「文書」(4月8日)がネットで公開されたのを機に感想を書いた(同月18日付)。ブログというのは不思議な媒体で、あるテーマについて述べると、さらに好奇心が沸いて放っておけなくなる。

   新聞広告で「週刊文春」(4月29日号)の「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」の見出しを読んでコンビニで文春を買い求めた。いわゆる「文春砲」と称されるだけあって、強烈な内容だった。というのも、冒頭の「小室文書」では、母親の元婚約者との金銭トラブルをめぐるもので、2012年9月、元婚約者からの婚約破棄にともない金銭に関する要求はしないとの会話を収めた録音データがあると記されている。「切実に名誉の問題」とまで述べていた。ところが、今週の文春では、見出しの通り「年金詐取」というまったく異なるステージの話が展開している。以下、記事の引用。

   記事の主役は圭氏の母親である。母親が元婚約者に宛てていたメールが紹介されている。「話は変わりますが、パピーとの将来に向けての話し合いの中で要である経済の話しに触れてないですね。私にとって結婚=主人の遺族年金を無くす事なので大切な問題です・・・」(2010年8月31日付)。パピーは当時の婚約者の男性のこと。これを読み進んでいくと、母親が当時の婚約者からの生活費と、元夫が8年前に自死したことによる遺族年金を継続して取得する、いわゆる「二重取り」の意図が読める。遺族年金は一時的でも再婚したり、入籍しなくても事実婚が認められれば受給資格を失う。このために、事実婚であることがバレないように当時の婚約者に口止めを依頼するメールを送っていた。

   記事を読んでいて、ある意味で緻密な計算が仕組まれていたことが分かる。それを印象付けるのが、婚約者の生命保険の受取人を母親に変更する件だ。まったくの他人はで受取人にはなれない。ただ、籍に入れなくても一緒に住まなくても「生計を一つにする」事実婚であれば認められる。遺族年金を失わずに婚約者から生活費を得て、さらに保険金の受取人にこだわる。まるで欲望のドラマで演じられるストーリ-のようではある。小室圭氏が主観的につづった「切実に名誉の問題」文書より、「パピー」に宛てたメールは客観的であり、真実味がある。そして、詐取という事件性が絡むだけに重みがある。

   それにしても、今回の文春の記事は、小室氏側から「文書」公開(4月8日)と「解決金を渡す意向」(同月12日)が続いて国民の関心が引き寄せられた後だけに、実にタイムリーに「バズーカ砲」を放った。

⇒23日(金)夜・金沢の天気     はれ

☆後手後手「アベノマスク」と「スガノワクチン」

☆後手後手「アベノマスク」と「スガノワクチン」

   それにしても対応が遅い。今月20日に待ちに待った65歳以上の高齢者向け新型コロナウイルスの「ワクチン接種券」が金沢市役所から郵送されてきた。さっそく申し込もうと思い、封を切って書類をチェックした=写真=。「予診票」や「接種券」はあるが、肝心の何日から、どこで接種できるのかといった案内のペーパーがない。ひょっとして市役所サイドで入れ忘れたのではないのかと思い、自宅近くの市民センターに出かけた。すると窓口で「ここではワクチンに関することは取り扱っておりません。本庁のコールセンターにお問い合わせください」とけんもほろろな対応だった。

   自宅に戻り本庁に電話をすると、「接種の開始日や、どの医療機関で接種を受けることができるか、まだ、決まっておりません」と。思わず「エッー」と叫んだ。丁寧な電話対応だったが、正直「そんなバカな」と不信感が募った。そもそも肝心なことが決まっていなのに、なぜ接種券を郵送したのか。これに対しては「申し訳ありません。決まり次第ホームページなどでお知らせします」と繰り返すだけだった。受け取った側が混乱するだけではないか。

   翌日21日のテレビのニュースで「金沢市議会で、山野市長が高齢者向けワクチン接種を来月15日に開始、予約は6日から予約を受け付けることを明らかにした」と報じていた(21日付・石川テレビ)。ここでさらなる不信感が。市長が議会で説明するまで情報を伏せたのではないか、と。本来ならば、接種開始など決まれば、議会での説明より真っ先に記者会見して市民に知らせるべきだ。

   予約開始が来月6日だとして、どこの医療機関で受け付けるのか、市役所のホームページで調べたが表記がない。しびれを切らして、きょう22日いよいよ市役所に乗り込んだ。担当は健康政策課だ。「予約が来月6日から開始と市長が議会で発表したのになぜ医療機関の一覧表がホームページに掲載されていないのか。リストがあれば出してほしい」と。窓口の担当者は「決まったのはきのう21日でして、ご迷惑をおかけしております」と「金沢市内医療機関一覧」というA4のペーパーを出してきた。接種が可能な診療所や病院109の医療機関のリストだった。

   「ご自宅の近くの医療機関にそれぞれ電話で申し込むことになります」と説明があった。ところが、リストには住所は掲載されているが、電話番号がかかれてないのだ。「そこまでまだ手が回っておりません。ご自身でお調べください」と。行政も限られた人数での対応であることは理解できなくもないが、それにしても後手後手の対応だ。

   この一件で思い出したのは「アベノマスク」だ。当時、コロナ禍のマスク不足で安倍内閣が国家支給のマスク2枚を全家庭に届けると2020年4月7日に閣議決定した。マスク支給予算は466億円。ところが、4月中どころか5月に入っても届かない。緊急事態宣言が全面解除(5月25日)となって以降、ドラッグストアなどではマスクの安売りが始まっていた。我が家にビニール袋に入った布マスク2枚、あの「アベノマスク」が届いたのは6月1日だった。そして、「スガノワクチン」も後手後手だ。

⇒22日(木)夜・金沢の天気      はれ

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

   新型コロナウイルス感染者が急拡大している大阪府できのう20日新たに1153人増えた。また、医療体制がひっ迫していることから、全国の大学病院などから看護師ら90人の医療従事者が大阪に入るとニュースで報じられていた。ここまで来ると、まさに「戦時下」の印象だ。そして、昨夜に大阪府は国に緊急事態宣言の発令を正式に国に要請した。緊急事態宣言が発令されれば、人の流れを減らすために、百貨店など商業施設やテーマパークなどに休業要請がなされる。宣言の期間については3週間から1ヵ月の見込み。

   しかし、大阪府では3度目となる緊急事態宣言の効果は果たしてあるのか。2度目の緊急事態宣言(1月14日から2月28日)の後、大阪市内に「まん延防止措置」(4月5日から5月5日)が適用され、飲食店に午後8時までの営業時間の短縮を要請し、府民に対しても不要不急の外出自粛を求めている。それでもほぼ連日のように新たな感染者が1000人を超えている。そして、今回の3度目の緊急事態宣言の要請だ。

   大阪のメディアのニュースをチェックすると、3度目の緊急事態宣言中の飲食店に対する措置として3つの案を国と調整する。1つ目は、すべての飲食店の休業、2つ目は土日祝日は休業し、平日は午後8時までの時短営業で酒の提供を自粛、3つ目は休業要請はせずに酒の提供は自粛する、という内容(4月20日付・読売テレビニュースWeb版)。仮にすべての飲食店の休業だとしても効果はあるのか。

   先日、大阪の梅田の繁華街で、店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿がテレビで報じられていた。このとき思い出したのが、子どものころ父親から聞いた、「また逃げたか八連隊」という言葉だった。戦時中、大阪を中心に部隊編成された陸軍の八連隊では司令官が「突撃」と叫んでも、逆に逃げる兵士が多くいて部隊の統制が効かないとの例えだった。コロナ禍でこのような言葉を持ち出すことは相応しくないが、吉村府知事が緊急事態宣言だといくら叫んでも、実行性が伴わなければコロナ禍は治まらないのではないか。むしろ大阪にワクチン接種を集中させてもよいのではないだろうか。(※写真は大阪府庁舎=「Wikipedia」より)

⇒21日(水)午前・金沢の天気      はれ

☆サイバー攻撃 中国vs日米の構図

☆サイバー攻撃 中国vs日米の構図

   まるで、日米首脳会談が終わるのを待っていたかのようなタイミングだ。警視庁は20日、日本に滞在歴がある中国共産党員でシステムエンジニアの30代の男が、サイバー攻撃に使ったレンタルサーバーを偽名で契約していたとして私電磁的記録不正作出・供用の容疑で書類送検した(4月20日付・NHKニュースWeb版)。2016年からJAXAや防衛関連の企業など、日本のおよそ200に上る研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受け、警察当局の捜査で、中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊の指示を受けたハッカー集団「Tick」によるものと分かった(同)。

   中国には2017年6月に施行した「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があれば、ハッカー集団やファーウェイなど中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。国民に要請の対象となる。

   この中国の動きを警戒して、アメリカでは2018年8月に「国防権限法」を施行し、中国のハイテク企業5社からアメリカの政府機関が製品を調達するのを2019年8月から禁止している。2020年8月からは、5社の製品を使う各国企業との取引も打ち切るなど徹底している。日本では、警視庁公安部が2017年4月に「サイバー攻撃対策センター」を設置し、専門知識を持った100人が所属していて、主に政府機関や企業などへの海外からのサイバー攻撃について捜査を行っている。今回の中国によるサイバー攻撃の調査も対策センターが追跡していた。

   今回の警視庁の発表は、冒頭で述べた日米首脳会談が終わるの待っていたタイミングだった。共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」では、サイバー攻撃について盛り込んでいる。「We also highlighted the importance of strengthening bilateral cybersecurity and information security, a foundational component of closer defense cooperation, and of safeguarding our technological advantages. (日米両国はまた、より緊密な防衛協力の基礎的な要素である、両国間のサイバーセキュリティおよび情報保全強化並びに両国の技術的優位を守ることの重要性を強調した)」

   アメリカのFBIも、情報通信や宇宙関連の企業から機密データを盗み出したとして、中国のハッカー集団をこれまで複数回起訴している。共同声明を受けて、警視庁はFBIと連携を強化するカタチで中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊やハッカー集団と対峙していくことになるだろう。尖閣諸島の領海侵入を含め、中国との関係はすでに曲がり角に入っている。

⇒20日(火)午後・金沢の天気   はれ

★「恩を仇で返す」ような

★「恩を仇で返す」ような

   最近のニュースで「恩を仇で返す」という言葉を思い浮かべたことが2つある。慈しみや施しを受けた相手に対して、相応の礼を尽くすのではなく、逆に相手を攻撃するような態度のことだ。

   秋篠宮家の長女の眞子さまと婚約内定中の小室圭氏が、実母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した(今月8日)。その「小室文書」をメディア各社がネットで上げているので、斜め読みだったが目を通した。目に留まったのは「切実に名誉の問題」とする文面だった。以下「AERA」公式ホームページに掲載されている文書の抜粋。

「どのような理由があろうと、早期解決と引き換えに借金でなかったものが借金であったことにされてしまう事態を受け入れることはできないと考えたからです。借金だったことにされてしまえば、元婚約者の方のおっしゃることが正しかったということになり、私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります。これは、将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します。」「一般的には金銭トラブルと呼ばれていますが、切実に名誉の問題でもありましたし、今でも、同じように受け止めています。」

 

   元婚約者から請求された「400万円」を返済すれば、借金だったとの意味付けになり、「借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続ける」ことから、これは「名誉の問題」だと記した。かつて生活費を支援してくれた元婚約者への感謝の気持ちというものが文面からは感じられない。

   その象徴的な行為が「隠し録り」だ。2012年9月、元婚約者が婚約破棄にともない金銭に関する要求はしないとの会話を収めた録音データの存在を小室氏は記している。おそらくその後も「隠し録り」を続けていたのだろう。両者が真摯に話し合いの場に持って行けない状況をつくっていたのは小室氏側ではないだろうか。

   そして、「名誉の問題」は4日後に一転する。今月12日付のNHKニュースWeb版によると、小室圭氏の代理人弁護士は12日、報道陣の取材に応じ、母親と元婚約者の男性の金銭問題について、小室氏側が解決金を渡す意向があると明らかにした。なぜ方針転換をしたのだろうか。AERAが9日から12日にかけて実施した緊急アンケート(2万8641人回答)によると、「小室氏は文書によって金銭問題の説明を十分に果たしたか」の問いに94.7%が「十分とは言えない」と回答している。小室文書はむしろ国民の不信感を募らせたのだ。

    もう一つのニュース。東芝の経営再建に功績があった代表執行役社長兼CEOの車谷賜昭氏が任期半ばで辞任した(今月14日付・日経新聞Web版)。東芝は2015年に発覚した不適切な会計処理やアメリカでの原子力事業の失敗で債務超過に陥り、2017年8月には東証1部から2部に降格した。CEOとして白羽の矢が立ったのが、三井住友銀行出身の車谷氏だった。

    辣腕を振るったのは6000億円の増資やNAND型フラッシュメモリー会社「キオクシア」(旧東芝メモリ)の売却だ。そして、今年1月に東証1部に復帰した。3月に入って、いざこざが起きた。昨年7月の定時株主総会で、一部株主の議決権が無効だったとして今年3月の臨時株主総会で、定時株主総会の公正さを調査する議案が採択された(3月18日付・東芝公式ホームペ-ジ)。いわゆるアクティビスト(物言う株主)から企業統治への不信が噴出する事態に陥っていた。本来ならば再建の功労者なのだが。

(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒18日(日)午後・金沢の天気     くもり

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

   アメリカを訪問中の菅総理はホワイトハウスでバイデン大統領と初めて対面での会談を行った。会談後に「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」と題する共同声明を発表した。いち早くホワイトハウスの公式ホームページに共同声明が掲載されている=写真・上=。読むと、強烈に中国を意識した内容だ。以下抜粋。

「Together, we oppose any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of the Senkaku Islands.」(両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する)

「We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. We share serious concerns regarding the human rights situations in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region. 」(両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する)

「The United States and Japan recognize that digital economy and emerging technologies have the potential to transform societies and bring about tremendous economic opportunities. 」(アメリカと日本両国は、デジタル経済および新興技術が社会を変革し、とてつもない経済的機会をもたらす可能性を有していることを認識する)として、生命科学やバイオテクノロジー、AI、宇宙の分野で研究と技術開発で協力する述べている。5Gなどでは中国企業を警戒した内容になってる

「President Biden and Prime Minister Suga affirmed their commitment to the security and openness of 5th generation (5G) wireless networks and concurred that it is important to rely on trustworthy vendors. 」(バイデン大統領と菅総理は、第5世代無線ネットワーク(5G)の安全性および開放性へのコミットメントを確認し、信頼できる事業者に依拠することの重要性について一致した)。

   この共同声明に対して、アメリカのメディアの反応は。CNNのWeb版の見出し=写真・下=。「Biden uses meeting with Japanese Prime Minister to emphasize new focus on China」(バイデンは日本の首相との会談を利用して、中国への新たな焦点を強調している)。アメリカと中国の対峙に日本を巻き込むカタチで新たな争点をあぶりだしている、と好意的な論調だ。

   また、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことは台湾にとっては画期的なことだろう。共同通信Web版(17日付)は「台湾外交部(外務省)の欧江安報道官は17日、日米首脳が共同声明にを明記したことに心からの感謝を表明した」と伝えている。

   一方の中国は穏やかではないだろう。時事通信Web版(同)は中国の在アメリカ大使館報道官が共同声明について「強烈な不満と断固とした反対を表明する」との談話を発表し、「台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関する問題は中国の内政であり、東・南シナ海は中国の領土主権に関わり、干渉は受け入れられない」と強調した、と報じている。

   日米首脳会談ではテーブルに就いた参加者全員がマスクを、共同記者会見では記者との距離をとってマスクを外して、違和感なく臨んでいた。今回の首脳会談をテレビで視聴していて、菅氏とバイデン氏はなんとなく似た者同士との印象を受けた。前述のCNNの見出しで「use」という動詞を使っているが、まさに互いが使い合う外交スタンスが共同声明からも見えてくる。シンゾー(安倍氏)とドナルド(トランプ氏)の個性的な外交とは違った意味で強力なコンビが組めるのかもしれない。

⇒17日(土)午後・金沢の天気     あめ