★兼六園の未来にスタンバイ 名木の後継木

★兼六園の未来にスタンバイ 名木の後継木

   先日兼六園に立ち寄った。本格的な冬を迎える前にすでに雪吊りなどが施されていた。国の特別名勝である兼六園。ミシュラン仏語ガイド『ボワイヤジェ・プラティック・ジャポン』(2007)で「三つ星」の最高ランクを得ている。広さ約3万坪、兼六園の名木のスターと言えば、唐崎松(からさきのまつ)だ。高さ9㍍、20㍍も伸びた枝ぶり。冬場の湿った重い雪から名木を守るために施される雪吊りはまず唐崎松から始まる。加賀藩の第13代藩主・前田斉泰(1811~84)が琵琶湖の唐崎神社境内(大津市)の「唐崎の松」から種子を取り寄せて植えたものと伝えられ、樹齢190年と推定される。近江の唐崎の松は、松尾芭蕉(1644-94)の「辛崎( からさき )の松は花より朧(おぼろ)にて」という句でも有名だ。

   兼六園の名木のスターであっても、植物はいつかは枯れる。あるいは、台風で折れたり、雷が落ちれば名木の寿命は尽きる。跡地には次なる唐崎松が植えられることになる。兼六園の管理事務所の隣地に唐崎松の世継(よつぎ)がすでにスタンバイしている=写真・上=。事務所では後継木(こうけいぼく)と呼ぶ。幹の根の辺りがくねって、すでに名木の片鱗を感じさせる。この後継木は、かつて加賀藩主がそうしたように、大津市の唐崎の松の実生を植えたもの。「本家」の世継でもある。

   その横に、これも名木のスターである根上松(ねあがりのまつ)の世継が植えてある=写真・下=。根上松は三本の幹をむき出しの根っこが支え、樹齢は210年といわれる。盛り土を徐々に取り除き、カタチづくった松だ。世継の松はこれから盛り土が除かれ、根上松の様相を現すのだろう。

   兼六園と命名したのは、日本史に出て来る「寛政の改革」で有名な松平定信とされる。定信が中国・宋の詩人、李格非の書いた『洛陽名園記』(中国の名園を解説した書)の中に、名園の資格として宏大(こうだい)、幽邃(ゆうすい)、人力(じんりょく)、蒼古(そうこ)、水泉(すいせん)、眺望(ちょうぼう)の6つの景観を兼ね備えていることと記されていたのにヒントを得て「兼六園」と名付けたと伝えられる。

   兼六園の樹木は一代限りではない、何百年という歴史を考えて、未来の歴史を創らなければならない。それを創っていくのはまさに「人力」だ。今回歩いてそんなことを考えた。

⇒16日(木)夜・金沢の天気   あめ

☆日本は途上国へと退化していくのか

☆日本は途上国へと退化していくのか

   このところの政治や経済、社会の動きを見ていると、日本は途上国へと退化しているような気がしてならない。こんなことが民主政治なのかと不信感を抱いたのが18歳以下の10万円相当の給付問題だ。11月9日に自民・公明両党が現金とクーポンを組み合わせて給付実施することで合意。それから国会での紆余曲折を経て、3パターンの給付方法(現金10万円の一括給付、現金5万円を2回給付、現金5万円とクーポン5万円分を2回に分け給付)にたどり着く。民意は明らかに現金10万円の一括給付だったが、この議論に1ヵ月以上も費やしている。民主政治は妥協の産物ではない。

   その間、外交問題は棚上げされた。来年2月の北京オリンピックについて、アメリカが問題を提起した「外交的なボイコット」をどうするかの議論だ。中国・ウイグル族への強制労働や、女子プロテニスの選手が前の副首相から性的関係を迫られたと告白した後に行方がわからなくなった問題、香港における政治的自由や民主化デモへの弾圧など、中国の人権状況に対して国際的な批判は強い。日本政府は中国からの招待の有無にかかわらず、政府代表団の派遣をどうするのか。岸田総理は「国益の観点からみずから判断していきたい」(12月7日付・NHKニュースWeb版)を繰り返している。国益で人権問題を判断するという言葉は、はたして自由民主主義国家の政府の長の言葉だろうか。

   日本は世界第3位のGDPを誇る経済大国とされているが、いつまでそれが続くのだろうか。人口の少子・高齢化は日に日に高まっている。人口が減る中で経済規模を維持していくことは難しい。さらに、労働者1人当たりの生産性も高齢化で簡単ではない。GDPや企業の競争力などの指標を見ても、日本はすでにG7に相応しい地位ではない。「世界競争力年鑑2021年版」(IMD=国際経営開発研究所)での日本の順位は31位と停滞が続いている。

   かつて、日本は「一億総中流」と言われたが、その言葉を最近すっかり聞かなくなり、代わって「貧困」をよく目にする。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年版)によると、2018年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円で、これ以下の「相対的貧困」の世帯の割合は15.4%と記されている。今後、独り暮らしの高齢世帯などが増えていく。貧困率はさらに高まっていくだろう。暗い話ばかりになってしまった。

   ただ、反転する可能性はある。それは「資源」があるからだ。2000兆円におよぶ個人金融資産が眠っている。日本全国に張り巡らされた光ファイバーなどのデジタル通信網がある。このブログで何度か述べたように、日銀が主導するデジタル法定通貨を実施することだ。2024年から新一万円札は「渋沢栄一」に変わるが、これを機に札や硬貨ではなく、デジタル通貨にしてはどうか。タンスに眠ったままとなっている金融資産を吐き出させ、消費を回す絶好のチャンスではないだろうか。この機を逃せば、日本は本格的に途上国へと退化するのではないかと思えてならない。

⇒15日(水)夜・金沢の天気       くもり

★「キシダクーポン」に時間かけすぎ

★「キシダクーポン」に時間かけすぎ

   このような単純な施策に時間のかけすぎだ。18歳以下に10万円相当を給付する政府の指針が揺れている。政府が5万円分を子育て関連に使途を限定した期限付きのクーポン給付とする方針にしたのは、全額現金だと貯蓄に回り、経済対策につながらないという問題意識からだろう。しかし、クーポンが消費に使われても、それによって浮いた金額が逆に貯蓄に回るであろうことは誰もが考える。消費刺激の効果は限定的にならざるを得ない。むしろ、このクーポン給付の必要経費に900億円もかかることを国民は問題視した。

   きょう政府が新たに示した方針は、3パターンの給付方法だ。一つめが現金10万円を一括給付する。二つめが現金5万円を2回給付、そして三つめが現金5万円とクーポン5万円分を2回に分けて給付する。15日までに自治体に通知する(14日付・毎日新聞Web版)。この政府の方針を受けて、松井大阪市長は18歳以下への10万円相当の給付について、今月27日に現金で一括支給すると発表した(14日付・時事通信Web版)。

   しかし、この3パターンの給付方式は何も新しいことではない。そもそも、一つめの現金10万円の一括給付は大阪市だけではなく、多くの自治体が求めてきたものだ。二つの現金5万円の2回給付は、三つめと一つめの折衷案であり、三つめはそもそも政府の原案である。ここまで来るの一体どれだけ時間がかかったことか。時間がかかり過ぎだ。

   自治体はもっと現実的だ。すでに大阪の箕面市は8日、迅速な給付の実現や事務費の削減などの観点から、10万円を全額現金で給付する方針を決めている。同市の上島市長は「市民の使い勝手やクーポンの準備にかかる時間などを考慮すると全額現金で給付するのが市民のニーズに適している」とコメントした(9日付・NHKニュースWeb版)。

   もたついている政府だが、急ぐべきは来年2月の北京オリンピックについて、「外交的なボイコット」をどうするかの議論だ。日本政府は中国からの招待の有無にかかわらず、政府代表団の派遣をどうするのか。時間をかけて議論すべきはこの問題ではないだろうか。

⇒14日(火)夜・金沢の天気       あめ

☆いまだに続く総理公邸の都市伝説

☆いまだに続く総理公邸の都市伝説

   やはりこの質問かと思わず笑った。岸田総理は13日午前、東京・赤坂の衆院議員宿舎から引っ越したばかりの総理公邸で「幽霊」を見たかどうかを記者団に問われ、こう答えた。「今のところ、まだ見ておりません」(13日付・産経新聞Web版)。記者の質問も冗談めいての質問だろうが、政権交代のときに公邸に住む住まないで記者から質問される都市伝説ではある。   

   総理官邸と公邸は、同じ敷地内に建てられている。官邸は総理の仕事場で、公邸は住まいだ。現在の公邸はかつて官邸として使われた。1932年、海軍の青年将校を中心とするクーデター「5・15事件」で犬養毅総理が官邸で殺害された。その後、陸軍の皇道派青年将校らが起こした1936年の「2・26事件」では官邸で高橋是清大蔵大臣らが殺害された。その後、「犠牲者の幽霊が出る」との噂さが絶えなかった。

   有名な話がある。公邸に居を移さなかった当時の安倍総理が「公邸に住んだ森(元総理)さんが在任中に公邸で就寝直前に寝室の外から複数の軍靴が近づいてくるような足音を耳にしたとの話を聞いた」と出演したテレビ番組で明かしたことがある(2013年6月1日)。これが安倍氏が公邸に住まない理由ではないかと議員の間でも評判になった。番組でのこの話のきっかけは、ある野党議員が内閣に提出した質問主意書だった。「旧総理大臣官邸である総理大臣公邸には、二・二六事件等の幽霊が出るとの噂があるがそれは事実か。安倍総理が公邸に引っ越さないのはそのためか」(2013年5月15日)と。これに対して、政府は「お尋ねの件については、承知していない」とする答弁書を閣議決定した。

   この質問をしたのは当時の民主党の加賀谷健議員だった。質問の主旨は公費が使われている公邸が十分に活用されていないのではないかという趣旨だが、公邸と幽霊が国会の場で初めて取り上げられ、閣議決定にまで上った稀有なケースとなった。その話を安倍総理が番組で紹介してさらに広がり、すっかり都市伝説となった。岸田総理は冒頭の記者団の質問に「(公邸で)ゆっくり眠れた」と笑顔で語った(同)。公邸に入居するのは野田元総理以来9年ぶり。今のところ幽霊は登場していないようだ。(※写真は、首相官邸公式ホームページより)

⇒13日(月)夜・新潟市の天気   あめ

★懐かしい言葉よみがえる「イマジン」「天国に一番近い島」

★懐かしい言葉よみがえる「イマジン」「天国に一番近い島」

   懐かしい言葉が記憶によみがえってきた。ビートルズのファンだったので、ジョン・レノンが作曲した「イマジン」は学生時代によく口ずさんだ。きょうのニュースで、イギリスで開かれているG7の外相会談の夕食会がリバプールのビートルズ・ストーリー博物館であり、林芳正外務大臣は白いピアノに座り、「イマジン」を即興で演奏し、各国外相から拍手が送られた。林大臣は「誰かが『(ピアノに)座ってくれ、弾いてもいいよ』と、こういうふうに言われたものですから、せっかくイマジンの部屋であればということで、即興で『イマジン』を3分の1ぐらい」と。これまで国会議員らによる音楽グループ「Gi!nz(ギインズ)」などでもたびたびビートルズナンバーを披露していて、得意の音楽演奏で外交をアピールした(12日付・TBSニュースWeb版)。

   林大臣の即興ピアノをぜひ聞きたいと思い、動画を視聴したがピアノに向かう画像はあるが、弾いている動画がない。ほかのテレビメディアの動画ニュースもチェックしたが肝心の動画がない。BBCWeb版も検索したが、G7そのもののニュースがない。本人がほかの外相に気遣って、演奏動画は放送しないようメディア各社に申し入れたのかもしれない。それにしても、ビートルズ博物館で「ピアノ外交」デビューは見事だ。

   「天国に一番近い島」と言えば、南太平洋のニューカレドニアのこと。1966年に発刊され、ベストセラーとなった森村桂著『天国にいちばん近い島』だ。人生で初めて読んだ旅行記だったかもしれない。そのニューカレドニが中国に取り込まれるかもしれないとのニュース。フランス領のニューカレドニアで12日、独立の賛否を問う住民投票が行われた。同島はニッケルの世界有数の産地で、経済的な重要性も高いほか、フランス軍も基地を置き、インド太平洋戦略を進めるフランスにとって重要な拠点。一方、周辺の島しょ国では、中国がインフラなどさまざまな分野への投資を通じて関係を深めている。住民投票はこれまで2回行われ、いずれも反対が多数を占めていたが、2回目は賛成票の割合が増えた。投票の結果、独立することになれば、中国の影響力が強まる可能性があるという見方もあって、結果に世界の関心が集まっている(12日付・NHKニュースWeb版)。

   本の著者は、「ずっとずっと南の地球の先っぽに、天国にいちばん近い島がある」と父親から話を聞いて、貨物船に便乗してニューカレド二アを旅をする感動的な物語だ。読んで心が熱くなったのを覚えているが、残念ながら旅行したことはない。独立して中国に取り込まれることになるのか。開票結果が気になる。

(※写真は外務省公式ホームページより、日英外相会談の様子)

⇒12日(日)夜・金沢の天気      あめ

☆これは大学の構造的な問題なのか

☆これは大学の構造的な問題なのか

          なぜ記者会見が3ヵ月余りも開かれなかったのか。むしろ取材する側のメディアはそのことをなぜ指摘してこなかったのか。東京地検特捜部はことし9月に日本大学に強制捜査に入った。当時の理事が付属病院の設計監理業務と医療器具の納入に関して4億2000万円の損害を与えたとして背任罪で逮捕した。さらに、取引業者からリベートなど所得1億2000万円を隠していたとして、田中英寿理事長を所得税法違反容疑で先月29日に逮捕した。大学側はこれまでなぜメディアを通じて説明責任を果たさなかったのか。大学のガバナンスどころか、存在そのものが揺らぎかねない。

   大学側が東京地検特捜部の捜査について初めてコメントしたのは9月10日付のホームページだった。「INFORMATION(お知らせ)」のコーナー。「報道にありました件については、現在、東京地方検察庁が捜査しており、事実関係を把握していないことから、コメントは差し控えさせていただきますが、今後、東京地検の捜査に全面的に協力してまいります」。これだけである。

  その後。9月13日付で学長名でコメント。「学生、生徒等、保護者の皆様、そして教職員の方々には、大変ご心配をおかけし、誠に申し訳なく存じます。現在、東京地方検察庁が捜査中であり、本学も捜査に全面的に協力してまいりますのでご了解ください。なお、授業等については、これまでどおり実施してまいりますので、安心して学生生活をお送りいただきたくお願いいたします」。160字ほどの文章。学長名でたったこれだけの内容だ。学生や保護者、OB・OGは納得しただろうか。以降、きのう10日に初めて会見に臨むまでに、ホームペ-ジで12回簡単なコメントを発している。

   きのう(10日)の会見の様子をテレビのニュースで視聴したが、理事長を兼務することになった加藤直人学長が「田中前理事長と永久に決別する」と述べていた。違和感を感じた。先月29日に田中理事長が逮捕された段階ですでに「永久決別」は確定している。むしろ、大学の再建計画を示すことが発言の本筋ではなかった。「日本大学再生会議」を来年1月に立ち上げると述べていたが、遅い。むしろ、会議のメンバー表をこの日、メディアに配布するくらいのスピード感がなければ、関係者は納得しないだろう。

   また、「再生会議」と同時に「内部調査チーム」を立ち上げるべきではないだろうか。田中前理事長は2008年から5期13年にわたって理事長を務めた。どのような経緯で今回の不祥事に至ったのか、客観的に検証する必要があるのではないか。これは大学側の構造的な問題なのだろうか、ワンマン経営者がなぜ居座ることになったのか、そもそも大学の理事会は機能していたのか。

⇒11日(土)夜・金沢の天気     くもり

★外交的ボイコット相次ぐ アスリートの憂うつ

★外交的ボイコット相次ぐ アスリートの憂うつ

   中国の人権弾圧へのアメリカの本気度が分かる。そして、アメリカは来年2月の北京オリンピックへの「外交的ボイコット」も発表している。ホワイトハウスのサキ報道官は6日、バイデン政権は北京オリンピックに政府の公式代表団を派遣しないと表明した。アメリカの選手は五輪参加を許可されるが、政府当局者を派遣しない。北京で開催されるパラリンピックについても同様の方針を適用する(CNNニュースWeb版・6日付)。政府代表団を派遣しない外交的ボイコットの方針は、アメリカに次いでオールストラリア、イギリス、カナダも表明している(BBCニュースWeb版・9日付)。

   では、日本政府はどうなのか。岸田総理は7日午前、官邸で記者団に対し「アメリカが北京オリンピック、パラリンピックを外交的にボイコットするということを発表したことを承知している。わが国の対応は、オリンピックの意義、さらには、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点からみずから判断していきたい。これがわが国の基本的な姿勢だ」と述べた(NHKニュースWeb版・7日付)。対応を明確にしていない日本に対し、中国外務省の汪副報道局長は9日の記者会見で、「中国は東京五輪の開催を全面的に支持した。今度は日本の基本的な信義を示す番だ」とけん制している(時事通信Web版・9日付)。

   IOCのバッハ会長は彭選手とテレビ電話で無事を確認したと述べているが、本人が海外メディアの記者団の前で自由に語る場面が設定されない限り、バッハ会長の言葉に信ぴょう性が裏打ちされない。そして、アメリカの連邦議会下院は8日、IOCの彭選手への対応について、「北京オリンピック・パラリンピックに参加する選手の権利を守る能力と意志に疑問を抱かせる」と批判する決議を全会一致で可決した(NHKニュースWeb版・9日付)。議会もIOCを信用しない中で、アメリカのアスリートたちの混迷は深まっているのではないか。

☆「アベノマスク」と「キシダクーポン」

☆「アベノマスク」と「キシダクーポン」

   誰が考えても、この政策は民意からずれている。新たな経済対策として、18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、政府は所得制限を設けたうえで、年内に5万円の現金給付を始め、残りの5万円は子育て関連の商品やサービスに使いみちを限定したクーポンを基本に給付する方針だ。このクーポン給付の必要経費に900億円もかかる。

   クーポンに有効期限を設定することで、消費喚起という意味で現金よりもムダのない給付が可能としているが、もともと使う予定だった現金が貯蓄に回ることになるので、現金給付でもクーポン配布でも消費喚起の効果はまったく同じだ。900億円のムダ。これがはたして新たな経済対策と言えるのか。

   その考えは自治体も同じだろう。NHKニュースによると、大阪の箕面市は8日、迅速な給付の実現や事務費の削減などの観点から、10万円を全額現金で給付する方針を決めた。同市の上島市長は「市民の使い勝手やクーポンの準備にかかる時間などを考慮すると全額現金で給付するのが市民のニーズに適している」とコメントした。18歳以下への10万円相当の給付をめぐっては、大阪市の松井市長も全額現金で給付したいという考えを示している(9日付・NHKニュースWeb版)。

   こうした自治体の動きに政府はどう対応するのか。同じNHKニュースによると、政府は自治体が全額現金での給付も選択できるよう調整する。ただし、政策の効果を上げるためにも、近くにクーポンを使用できる商業施設がない場合などにとどめたい考え(同)。ことしは残り20日余り。年内支給の方針が決まっているのにこの混乱ぶりだ。

   「アベノマスク」騒動を思い起こす。コロナ禍で、昨年4月7日に布マスクを全世帯に2枚の配布を閣議決定し、政府目標は月内配布だった。マスク支給予算は466億円。5月下旬になっても配達率は25%だった。緊急事態宣言が全面解除(5月25日)となったころには、すでにドラッグストアなどでマスクの安売りが始まっていた。我が家にアベノマスクが届いたのは6月1日だった。

   このころから安倍内閣の支持率が急速に落ち始める。5月31日付の共同通信社Web版で、全国緊急電話世論調査(5月29-31日実施)で安倍内閣の支持率は39.4%となり、前回調査(5月8-10日)から2.3ポイント減だった。 読売新聞社の世論調査(8月7-9日実施)で、内閣支持率は37%で前回調査(7月3-5日)の39%から下がり、不支持率は54%と前回52%より高くなった。不支持率54%は2012年12月からの第2次安倍内閣では最高だった。支持率下落はマスクの遅れだけでなく、内閣の賞味期限ということもあったろう。そして、9月16日に安倍内閣は総辞職する。

   「キシダクーポン」も二の舞いになりはしないか。国民に届けるものは分かりやすいだけに、国民はじっと見ている。なので、早く届けるのが原則だろう。年内が間に合わなければ、内閣支持率は落ちる。そして、「クーポンは新たな経済対策なのか、これが新しい資本主義なのか」と国民は問い始める。(※写真は首相官邸公式ホームページより)

⇒9日(木)午前・金沢の天気     はれ

★よけいな勘繰り

★よけいな勘繰り

   ニュースに目を通していると、つい余計な勘繰りをしてしまうものだ。けさのNHKニュースによると、岸田総理が災害など緊急事態への対応に万全を期すため、現在住んでいる東京・赤坂の議員宿舎を退去し、今週末に総理大臣公邸に入居する。総理公邸をめぐっては、かつての小泉・福田総理は入居したものの、第2次内閣以降の安倍・菅総理は公邸に入居せず、自宅や議員宿舎から官邸に通っていた。

   ここからは余計な勘繰り。いよいよ大震災への備えを政府が始めたのか。なにしろ、鹿児島県十島村のトカラ列島近海で地震が相次いでいて、きょうも午前5時過ぎに震度3(M3.7)の揺れがあった。トカラ列島だけでなく、ここ1週間で茨城県南部(2日、震度4、M5.0)、山梨県東部・富士五湖(3日、震度5弱、M4.8)、和歌山県紀伊水道(同、震度5弱、M5.4)と列島全体が揺れている。そうなると、次に来るのは首都直下や南海トラフ、富士山噴火ではないかと連想してしまう。災害は必ずやってくる。そのためにも総理が緊急事態への対応に備えることは必然だ。

   CNNニュースWeb版(6日付)によると、アメリカのホワイトハウスのサキ報道官は6日、バイデン政権は来年2月の北京オリンピックに政府の公式代表団を派遣しない、いわゆる「外交ボイコット」を実施すると明らかにした。アメリカの選手は五輪参加を許可されるが、政府当局者を派遣しない。北京で開催されるパラリンピックについても同様の方針を適用する。サキ氏はホワイトハウスでの記者会見で、中国での人権侵害を踏まえると「通常の対応」はありえないという「明確なメッセージ」を送る狙いがあると説明。「新疆で進行中のジェノサイドや人道に対する罪」への意見表明だとしている。

   ここからは余計な勘繰り。このホワイトハウスの声明を機に、オーストラリアやEU各国にも外交ボイコットが広がるだろう。そして、アメリカや他の国のオリンピック選手たちもボイコットに連動するに違いない。中国の元副首相に性的関係を強要されたとSNSで告発し、その後行方が分からなくなっていた女子テニスの彭選手問題で、WTA(女子テニス協会)は「来年、中国で大会を開催した場合、すべての選手やスタッフがリスクに直面する」などとして香港を含む中国での大会を見合わせると発表している(12月2日付・NHKニュースWeb版)。それにオミクロン株の感染拡大も追い打ちをかけている。では、日本政府はどうするのか。

   中国の経済のニュース。時事通信Web版によると、経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団がデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に立たされている。未払いとなっているドル建て社債の利息について、猶予期限が切れるアメリカ東部時間6日(日本時間7日)までに支払うことができなければデフォルトとなるが、同社は資金の確保は不透明としており、緊張が高まっている。恒大は資金繰り難から、先月6日に期日を迎えた子会社発行の社債の利息8250万㌦(93億円)を払えず、30日間の猶予期間に入っている。ロイター通信によると、アジア時間の今月6日夕方までに一部債権者への利払いはなかったという。

   ここからは余計な勘繰り。いよいよか。それほど大きくはない8250万㌦のドル建て社債の利息さえ払えないとは、中国政府は恒大を見放したのだろう。あすから中国経済が大混乱に陥る。その強烈な余派が日本を含め世界に。

⇒7日(火)午前・金沢の天気     あめ

☆「雪吊り」は庭木のアート

☆「雪吊り」は庭木のアート

   この時節、金沢の一つのキーワードは「雪吊り」だ。11月に兼六園で雪吊りのニュースが流れると金沢市内の家々でも雪吊りが始まり、12月初旬にピークを迎える。我が家も造園業者に依頼している。きょうは朝から小雨が降っていたが、庭師が来てくれた。

   庭木に雪が積もると、雪圧や雪倒、雪折れ、雪曲など樹木の形状によってさまざま雪害が起きる。金沢の庭師は樹木の姿を見てどのような樹木の雪対策をしたらよいか判断する。「雪吊り」「雪棚」「雪囲い」など11種の方法があると、出入りの庭師から聞いた。毎年見慣れている雪吊りの光景だが、縄の結び方などが樹木によって異なるのだ。

   雪吊りで有名なのは「りんご吊り」。我が家では五葉松などに施されている=写真・上=。木の横に孟宗竹の芯(しん)柱を立てて、柱の先頭から縄を17本たらして枝を吊る。パラソル状になっている。「りんご吊り」という名称は、金沢では江戸時代に庭にリンゴの木を植えていて、果実がたわわに実ると枝が折れるのを補強するためそのような手法を用いた。それが冬の樹木にも応用されたと伝えられている。

   低木に施される雪吊りが「竹又吊り」=写真・下=。ツツジの木に竹を3本、等間隔に立てて上部で結んだ縄を下げて吊る。秋ごろには庭木の枝葉を剪定してもらっているが、庭師は庭木の積雪を意識して、積もらないように剪定を行うと話してくれた。その仕事ぶりを見ていると、「庭木のアーチスト」ではないかと思う。庭木の積雪をイメージして剪定を行い、雪害を予想して庭木の生命や美の形状を保つために、雪吊りや雪囲いといった作業をする。

     関西や関東の友人たちに雪吊りの写真をメールで送ると、「長期予報で北陸が暖冬だったら、わざわざ雪つりをする必要はないよね」と返信があったりする。理にかなってはいるが、冬の現実はそう単純ではない。暖冬ではあっても、冬将軍は突然やってくる。一夜にして大雪になることもままある。北陸の雪は湿っぽく重い。とくに松の木の枝には雪が積もりやすく、大雪になると枝がボキボキと折れる。「備えあれば憂いなし」の心構えで、暖冬予報であっても雪吊りをする。雪つりは年末の恒例行事でもある。気持ちの問題として、年末の大掃除のように、これをやらないと気持ち的にけじめがつかないということもある。

⇒6日(月)夜・金沢の天気      くもり