☆自民総裁選の「メディアジャック」現象

☆自民総裁選の「メディアジャック」現象

   広告業界には「メディアジャック」という言葉がある。電車の中の広告や新聞、雑誌の広告スペースを1社が買い占める広告戦略のことだ。和製英語とも言われる「ハイジャック」からヒントを得た造語なのだろう。「メディア乗っ取り」だ。きのう21日午後のTBS系の情報番組に出演していたコメンテーターで、元大阪府知事、弁護士の橋下徹氏が「野党側も予備選やってメディアジャックをしないと、自民の総裁選に引っ張り込まれる」との趣旨の発言をしていた。久しぶりに聞いた言葉にハッとさせられた。

   確かにきょう22日の新聞のラジオ・テレビ欄を見ても、NHK含めテレビのほとんどのニュース番組やワイドショーなどで「自民総裁選まで1週間」や「自民総裁選の最新情勢」などの見出しが躍っている。テレビをハイジャックする自民党総裁選とは何なのか、「メディアジャック」現象について考えてみた。

   目立つのは自民党総裁選の4候補の顔ぶれだ。4人の候補者のうち2人が女性だ。当然、討論のテーマも女性目線が注目される。きょう22日に行われた党内の討論会では、子育て関係の政策を担う「こども庁」の設置について議論が交わされた。河野氏は「子どもの自殺、虐待、貧困ゼロを掲げる」と強調。岸田氏は「子どもたちの命、健康、人権を一元的にしっかり見ていく」と訴えた。野田氏は「願いは社会の中で一番弱いと言われる人たちが、いつも笑顔でいられる社会、国をつくること」と述べた。高市氏は「令和の省庁再編に挑戦する。子ども政策の推進のため、効率的かつ効果的な組織は何か検討したい」と話した(9月22日付・毎日新聞Web版)。これまでは、学校教育ばかりに重点が置かれていたが、日本の未来を担う子どもたちの政策について議論したことはなかった。その意味で画期的な政策討論だ。

   18日の公開討論会(日本記者クラブ主催)も面白かった。NHKの生番組で視聴していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つ。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。少子高齢化が急速に進む日本でシンボル的な課題の一つが年金の持続可能性の問題だ。シニア世代の誰もが感じていることなのだが、最近では公に議論されることはほとんどなかった。

   少子化問題、そして年金問題について、近未来の政策を担う「総理候補」が討論するだけに目が離せない、有権者の関心度が高い。最初は河野氏の意見が率直で的を得ているとも思ったが、このところ、高市氏の言葉が胸に刺さることがある。テレビとすれば、選挙報道と同様に、メディアジャックのコンテンツではないだろうか。自身は党友でも党員でもない。単なる政治ウオッチャーだ。(※写真は自民党本部ホームページより)

⇒22日(水)午後・金沢の天気     あめ

★中秋の名月なれど チャイナリスクの暗雲

★中秋の名月なれど チャイナリスクの暗雲

   今夜は「中秋の名月」だ。天候が変りやすい北陸では名月を拝めないことが多い。なにしろ芭蕉の句がある。「名月や北国日和定なき」(『奥の細道』)。今夜は中秋の名月を期待していたけれど、あいにく雨で拝むことができなかった。福井・敦賀で詠んだ句とされる。しかし、今夜はすっきりと見ることができた=撮影:午後7時45分=。しかも、平成25年(2013)以来、8年ぶりの満月というから、まさに名月だ。  

   時代劇のドラマで中秋の名月のカットがよく使われる。大事件や裏切り、画策、謀反、旗揚げなど不吉な出来事の予兆のシーンとして、ウオーッという犬の鳴き声や風に揺れるススキの穂とともに名月が浮かんで出てくる、あのカットだ。きょうの名月もひょっとして。  

   連休明けのきょう21日の日経平均株価は取り引き開始直後からほぼ全面安。終値は先週末より660円安い2万9839円だった。終値が3万円を割り込むのは9月7日以来だ。そして、日本だけでなくアメリカ株も全面安となるなど、世界同時株安の様相だ。その原因と報じられているのが「チャイナリスク」。中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営悪化が原因と言われる。日本円で33兆円におよぶ巨額の負債を抱えているとされ、中国経済全体や金融システムに影響を及ぼすのではないかとの懸念が強まっている。

   その予兆は昨年から顕著になっていた。恒大集団は負債比率の削減を目指しすべての不動産物件を30%値引きすると発表(2020年9月7日付・ロイター通信Web版日本語)、このころから危機説が浮上した。もともと、中国当局が不動産価格の過度な高騰を警戒し、市場を引き締めたことが資金繰りが悪化した原因の一つとみられている。そして、本格的にデフォルト(債務不履行)となれば、リーマン・ショック級の信用崩壊が発生し、不動産資産が下落するだろう。不動産を担保にしてビジネスをしている人たちが金融機関の強引な貸しはがしに合うケースも増えるだろう。こうなると、資金繰りが全体に悪化し、不況へと突入する。

   では、中国政府による恒大集団の救済はあるだろうか。習近平政権は「共同富裕」を掲げ、貧富の格差解消を進めている。ある意味で不動産バブルを煽ってきたとも言える恒大集団に助け舟を出せば人民の反発を招くことになるかもしれない。

⇒21日(火)夜・金沢の天気      はれ

☆夏の終わりによみがえるあの2曲

☆夏の終わりによみがえるあの2曲

   朝夕に肌寒さを感じるようになった。まもなく秋分の日(23日)だ。この夏を振り返ると、印象に残るのやはり東京オリンピックとパラリンピック、そして、耳に残るのが『マツケンサンバⅡ』と『波乗りジョニー』だろうか。

   俳優の松平健はテレビ番組『暴れん坊将軍』でおなじみだったが、歌っているとは知らなかった。オリンピック開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人だった小山田圭吾氏が過去のいじめ告白問題で7月19日に辞任して大騒ぎになったが、そのとき、ヤフー・コメントなどで「マツケンサンバを開会式で」との書き込みを何度か目にした。検索して、『マツケンサンバⅡ』を動画で見て初めて知った。

   サンバのリズムに乗ってテンポよく歌い踊る松平健の後ろでは、腰元と町人風のダンサーたちが乱舞する。サンバは肌を露わにしたダンサーが踊る姿をイメージするが、赤い衣装を着た腰元ダンサーの方がむしろ艶っぽくなまめかしい。これが、正式にリリースされたのが2004年7月なので、17年も前の楽曲だ。さすがに、オリンピックの開会式では時間もなく無理だろうと思ったが、閉会式ではひょっとしてサプライズがあるのではないかと期待もした。家飲みのときにネットで楽しませてもらっている。
 
   テレビでオリンピック競技を17日間視聴して、印象に残っているのはもちろんアスリートたちの姿だが、番組での解説やコメントなどスタジオのバックで流れていた桑田佳祐の『波乗りジョニー』も、だった。この曲はもともと、テレビCMに流れる、日本の夏を象徴する曲だ。夏のテーマソングがそのままオリンピックのテーマソングのようになり、盛り上げてくれた。オリンピック競技場の無観客の状態は当初さみしいとも感じたが、毎日違和感なく視聴できたのもこの曲のおかげかもしれない。

   最後にこの夏を締めくくる言葉。東京オリンピックの閉会後にイギリスBBCのスポーツ編集長は「Tokyo Olympics : Sporting drama amid a state of emergency but how will Games be remembered?」との見出しで記事を書いている。最後の下り。「(意訳)パンデミックという事態であっても、オリンピックを否定することはできなかった。そのことに安堵した人も、失望した人もいたはずだ。そして、東京オリンピックの開催が正しかったのかどうかは、今後ずっと議論されていくだろう。しかし、不安に満ちた時代でも、スポーツ選手はこれまでと同じように、その元気な姿で我々を励ましてくれる存在であり続けた。それだけは確かなことではないだろうか」(8月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒20日(祝)午前・金沢の天気      はれ

★弾道ミサイルに対応できる自民新総裁は誰なのか

★弾道ミサイルに対応できる自民新総裁は誰なのか

   次の日本の総理を決める予備選でもある自民党総裁選(今月29日)。メディア各社が世論調査を実施している。共同通信社は17、18の両日、電話調査に投票資格があると答えた党員・党友に対し、新総裁にふさわしい人を尋ねたところ、河野行政改革担当大臣が48.6%で最多、岸田前政調会長が18.5%、高市前総務大臣が15.7%、野田幹事長代行は3.3%だった(9月18日付・共同通信Web版)。

   読売新聞は自民党所属国会議員の支持動向調査を今月6日から16日にかけて実施し、衆参両院の議長を除く同党国会議員383人のうち、95%にあたる363人の意向を確認した。岸田氏と河野氏がそれぞれ約2割、高市氏は約15%の支持、16日に出馬を表明した野田氏は約10人の支持をそれぞれ集めている(9月17日付・読売新聞Web版)。毎日新聞が実施した全国世論調査(18日)では河野氏43%、高市氏15%、岸田氏13%、野田氏6%だった(9月18日付・毎日新聞Web版)。

   河野氏は党所属議員の支持は岸田氏と並んで2割と高くはないが、党員・党友、そして全国世論調査ではそれぞれ40%台の高い支持を集めている。自民党総裁選が衆院任期満了の10月21日以降にも実施される総選挙の「党の顔」を決める選挙であるとすれば、河野氏で決まりということか。

   きのう18日午後2時から行われた自民党総裁選の立候補者4人による公開討論会(日本記者クラブ主催)をNHKの生番組で視聴していた=写真・上=。前半の候補者同士のディスカッションでは河野氏に質問が集中していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つではなかったか。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。

   討論会で注目していたのは、北朝鮮が日本海めがけて発射している弾道ミサイルについての議論だった。直近で今月15日、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾している。主催者側からの「北朝鮮問題にどう対応するのか」の問いに、岸田氏は「ミサイル防衛体制は十分なのか考える必要がある。敵基地攻撃能力についても選択肢としてある」、河野氏は「情報収集能力、そして北朝鮮に対する抑止力を高めてメッセージとして伝えることが必要だ」と答えた。

   正直言って、河野氏の答えには少々失望した。2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回したのは当時防衛大臣だった河野氏だ。その後、当時の安倍総理はミサイル発射基地を自衛権に基づいて無力化する「敵基地攻撃能力」の保有の検討を表明したが、9月に就任した菅総理は議論を棚上げしていた。
   
   なぜ、河野氏は敵基地攻撃能力の保有について触れなかったのか。それは、今回の北の弾道ミサイルは鉄道を利用して発射された=写真・下、9月17日付・朝鮮中央テレビ動画=と報じられているように、新たに移動式ミサイル発射台が開発され、その位置を検知して破壊することが難しくなっている。つまり、敵基地攻撃能力そのものが意味をなさなくなっている。

            河野氏は上記のことについては精通しているはずだ。ではどうすべきなのかを元防衛大臣の見識から具体的な防衛ビジョンについて語ってほしかった。また、北の弾道ミサイルに一家言を持っている高市氏の見解も聞きたかったが、この質問に関しては元外務大臣の経験がある岸田、河野の両氏にのみ質問がなされたようだ。もどかしさが残った討論会だった。

⇒19日(日)夜・金沢の天気       はれ

☆眞子さま結婚問題さらなる一波乱二波乱

☆眞子さま結婚問題さらなる一波乱二波乱

   これはNHKのスクープ記事だった。16日付のニュースで、「秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまとの結婚の調整が進められている小室圭さんが、今月末には帰国が可能となるよう準備を進めていて、近く帰国する見通しとなったことが、関係者への取材でわかりました。宮内庁は、来月の結婚も念頭に発表の準備を進めていて、眞子さまは、小室さんの帰国後、2人で記者会見などの機会を設け、結婚について報告される見通しです」(9月16日付・NHKニュースWeb版)と報じた。自身の憶測だが、この記事は「関係者への取材」というより、宮内庁からの「取材依頼」、つまり「リーク記事」ではなかったか。

   本来ならば民放テレビや新聞社などが加盟する宮内庁記者クラブで発表すべき案件なのだが、そうなると「小室問題」などに記者の質問が集中して記事が宮内庁側の意図しない趣旨で書かれてしまう、ということになりかねない。そこで、論調が比較的穏やかなNHKに情報を持ち込んだのだろう。メディアへの情報開示の在り方をここで論じるつもりはない。むしろ、そのような手段を使わざるを得ないほど、眞子さまの結婚問題で宮内庁が追い込まれた状況であることをニュースを見て察した。

   宮内庁を追い込んでいる状況はいくつかある。一つは、結婚までに時間がなく切羽詰まっている。記事にあるように、「眞子さまは、30歳の誕生日を迎える来月23日までに結婚される」となれば、あと1ヵ月余りだ。皇族は「民間人」ではないので戸籍はない。入籍するまでに、皇籍離脱の手続き、婚姻届けなど多々ある。この手続きを進めるのは宮内庁だ。とくに、皇族がその身分を離れる際に支払われる一時金(最大1億5250万円)について、眞子さまは「受け取らない意向を示されている」(同)としている点だ。眞子さまは簡単にそう述べられたのかもしれないが、宮内庁にとってはこれほど面倒なことはないだろう。

   憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。皇籍離脱の一時金は皇族費であり、皇室経済法第6条に基づき、皇室経済会議を開く必要がある。本来は一時金の金額の認定などする場ではあるが、「受け取らない」場合であっても、その理由について了承を得る必要がある。会議メンバーは総理大臣、衆参正副議長、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8人だ。ところが、今月29日に自民党総裁選、10月4日からの臨時国会で首班指名選挙がある。その後に組閣があり、政治家にとって超多忙なスケジュールの中で皇室経済会議を開催できるのだろうか。ましてや、仮に物言いの河野太郎氏が総理になったとして、「受け取らない」をすんなり了承するだろうか。ひと波乱あるかもしれない。

   宮内庁を追い込んでいる状況のもう一つは、「国民の理解」ではないだろうか。冒頭の記事では、「2人で記者会見などの機会を設け」とある。皇籍を離脱する前に会見を開くことを宮内庁が仕込んでいるのだろう。というのも、眞子さまがこのまま会見も開かずにアメリカへ移住した場合、「多くの国民が納得し、喜んでくれる状況」(2021年2月23日・天皇陛下)にはならない。それどころか、多くの国民の嫌悪感を煽ることになりかねない。そこで記者会見を宮内庁はセットする訳だが、眞子さまも小室圭氏も会見を望んでいないのではないか。これまでの経緯を見ても、2人の現在の心境は憲法第24条「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」が最優先の「2人ファースト」ではないだろうか。国民の納得や祝福は念頭にない。

    2人の会見はどのような形式で行われるのかまだ定かになってはいない。おそらくリモート形式で、宮内庁記者からの質問もあらかじめ文書で提出されたものに違いない。時間も30分程度。とりあえず国を離れる前に国民にあいさつと報告をしたという事実を宮内庁としては残したいのだろう。いずれにしても今後、宮内庁の責任と皇室の有り様をめぐって国民の違和感がくすぶり続ける。(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒18日(土)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★能登の地震、地球は動く

★能登の地震、地球は動く

   きのうの地震は金沢でも揺れを感じた。16日午後6時42分ごろ、能登半島の尖端を震源とする強い地震があった=写真・上=。気象庁によると、震源の深さは13㌔で地震の規模を示すマグニチュードは5.1と推定されている。震源近くの珠洲市では震度5弱を、隣接の能登町では震度4を。このほか震度3の揺れは輪島市や新潟県、長野県でも観測された。金沢は震度2だった。きょうのテレビニュースによると、人的な被害は出ていない。また、珠洲市で開催されている奥能登国際芸術祭の展示作品などへの影響はいまのところないようだ。

   ことしに入って能登半島を震源とした震度1以上の揺れはきのう夕方を含めて36回(震度3以上は7回)発生している。2020年は11回(同2回)、2019年は9回(同1回)、2018年は3回(同0回)だったので、地震活動が活発化していることが分かる(tenki.jp「石川県能登地方を震源とする地震情報」)。

   能登半島の地震と言えば、2007年3月25日午前9時41分の能登半島地震を思い出す。輪島市などで震度6強、マグニチュードは6.9だった。本震の後、震度5弱の余震も続いた。被害は死者1人、負傷者356人、全壊家屋686棟、半壊家屋1740棟、一部損壊家屋2万6958棟に及んだ(Wikipedia「能登半島地震」)。震災の翌日、学生たちといっしょに復旧のボランティアに被災地に入ろうとしたが、余震があり危険として現地の対策本部から待ったがかかり、3日後に被災地に入ったことを覚えている。。

   能登半島地震について、北陸地方の地震活動に詳しい地震学者の尾池和夫氏(2007年当時・京都大学総長)は「ユーラシアプレート内部で発生したと考えられるが、あまり大きな地震の起きない珍しい場所での地震だ」と話し、そのうえで「ユーラシアプレートに乗っている西日本全体の地震活動が活発化している。今回の地震で、このプレート東端の能登半島沖まで、大きな地震が進行してきたことが明らかになった」と述べていた(2007年3月25日付・読売新聞Web版)。

   学生時代に読んだ小松左京のSF小説『日本沈没』では、ユーラシアプレートに乗っている能登半島など日本列島は太平洋プレートに押され沈没するが、最後に沈むのが能登半島という設定だったと記憶している。そんな印象から、能登は地震の少ない地域だと思っていたのだが。やはり地殻変動が起きているのか。地球は動く。

⇒17日(金)午後・金沢の天気  くもり時々あめ  

☆侮辱罪の厳罰化 誹謗中傷煽るテレビ側も問われる

☆侮辱罪の厳罰化 誹謗中傷煽るテレビ側も問われる

   先ほど午後6時42分に、能登半島の珠洲市で震度5弱の揺れがあった。人的被害は報道されていないが、同市で開催されている奥能登芸術祭の野外作品などに影響がないか気になった。
                 ◇

   公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪の厳罰化が動き出す。きょう16日午後、法務省は法制審議会を開き、刑法の「侮辱罪」に懲役刑を導入する刑法改正などについて諮問した。現行「30日未満の拘留か1万円未満の科料」の法定刑を、「1年以下の懲役・禁固音または30万円以下の罰金」とする。厳罰化にともない、公訴時効も現行の1年から3年に延長する。

   とくに、ネット上の誹謗中傷での対策が求められていて、法務省はことし4月、匿名の投稿者を迅速に特定できるように改正プロバイダー責任制限法を成立させ、裁判所が被害者からの申し立てを受けて、SNSなどプラットフォーム事業者に投稿者の氏名や住所などの情報開示を命じることができるようにするなど、侮辱罪の厳罰化について着々と準備を進めてきた。

   侮辱罪の厳罰化が動き出したきっかけは、フジテレビが放映したリアリティ番組『テラスハウス』(2020年5月19日放送)に出演していた女子プロレスラーがSNSの誹謗中傷を苦に自死した事件(同5月23日)だったといわれている。

   この事件では、警視庁は侮辱罪の公訴時効(1年)までに、ツイッターで複数回の投稿があったアカウントの中から2人の男を書類送検した。このうち、大阪府の20代の男は女性のツイッターアカウントに「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと投稿を繰り返した。東京区検はことし3月30日、この男を侮辱罪で略式起訴した。東京簡裁は同日、男に科料9000円の略式命令を出し、即日納付された。男はこれ以上罪を問われることはなかった。侮辱罪の罪の軽さが問題視されていた。

   ある意味で当事者でもあるテレビ局側はどう対応するのか問われる。放送より先に3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNS上で炎上し、この日、女子プロレスラーは自傷行為に及んだ。ところが、5月19日の地上波放送では、問題のシーンをカットすることなくそのまま流した。これが、SNS炎上をさらに煽ることになり、4日後に自ら命を絶った。つまり、結果的にSNS上の誹謗中傷を煽ったはテレビ局側ではないのか。

   テレビ業界全体のこととして、よいにつけ悪いにつけSNS上での反響の大きさが番組の視聴率の向上につながると勘違いしている節がある。表現の自由や報道の自由に水を差すつもりは一切ない。侮辱罪が厳罰化したことの意味を捉えて、テレビ業界は番組によるSNS上での誹謗中傷を相互にチェックする体制づくりを構築する必要があるのではないだろうか。

⇒16日(木)夜・金沢の天気     はれ時々くもり

★北と南が「弾道ミサイル」を発射した日

★北と南が「弾道ミサイル」を発射した日

   北朝鮮がまたミサイルを発射した。NHKニュースWeb版(9月15日付)によると、岸防衛大臣は夕方、防衛省で記者団に対し「北朝鮮は、きょう午後0時32分と37分ごろ、内陸部から、少なくとも2発の弾道ミサイルを東方向に発射したもようだ」と述べた。その後、防衛省は追加でコメントを発表した。「発射された弾道ミサイルは、従来から北朝鮮が保有しているスカッドの軌道よりも低い高度(最高高度約50km程度)を、変則軌道で約750km程度飛翔し、日本海上に落下したものと推定されます。落下したのは、我が国の排他的経済水域(EEZ)内と推定されます」(防衛省公式ホームページ)

   さらに、読売新聞Web版(同)は「防衛省によると、ミサイルは能登半島の舳倉島の北方約300㌔の海域に落下したと推測される」と報じている。舳倉島から輪島市は約49㌔の距離。つまり、能登半島の約350㌔先のEEZ内に落下させたということだ。

     北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、菅総理は記者会見で、「北朝鮮が弾道ミサイルと判断されるものを発射した。本年3月25日以来、約6か月ぶりの弾道ミサイル発射は、我が国と地域の平和と安全を脅かすものであり言語道断だ。国連安保理決議にも違反しており、厳重に抗議するとともに強く非難する。我が国の排他的経済水域外の日本海に落下したと推定されるが、政府としては、これまで以上に警戒監視を強めていく」と述べた(総理官邸公式ホームページ)。

   韓国の中央日報Web版日本語(同)によると、文在寅大統領は15日午前、青瓦台(大統領府)で40分間余りにわたり中国の王毅外交担当国務委員兼外交部長と面会した。文大統領はこの席で「わが政府は中国を含めた国際社会とともに韓半島(朝鮮半島)の非核化と平和定着のために努力している」としながら「中国の変わりない支持をお願いしたい」と述べた。この後、文大統領は弾道ミサイルの発射に立ち会っている。

   韓国の聯合ニュースWeb版日本語(同)は、韓国が独自開発した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に初めて成功したと伝えている。発射実験は15日午後、国防科学研究所の総合試験場で文大統領をはじめとする政府・軍関係者の立ち会いの下で行われた。韓国のKBSニュースWeb版(同)=写真=は「世界でSLBMの打ち上げに成功したのは、米国、ロシア、中国、イギリス、フランス、インドに次いで我が国で7番目。文大統領は、SLBMの開発は北朝鮮の挑発に応じたものではなく、むしろ独自の軍事力増強計画に従っていると述べた。しかし、我々のミサイル兵器の増強は北朝鮮の挑発に対する明確な抑止力になり得ると強調した」と述べた。

   北朝鮮は今月11、12日に新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験を行った。今回、矢継ぎ早に弾道ミサイルを日本のEEZに打ち込んだ。北朝鮮の意図は、韓国のSLBMを意識した「先制パンチ」だったのか、あるいは中国の王毅部長と韓国の文大統領の会談に対する当てつけだったのか。南北が同じ日に弾道ミサイルを発射したことは、日本の防衛にとって警鐘であることだけは間違いない。

⇒15日(水)夜・金沢の天気     はれ

☆北の脅威はミサイルだけではない

☆北の脅威はミサイルだけではない

   前回のブログの冒頭で、「日本海側に住んでいると、北朝鮮の動向が気になってしまう」と述べた。それは、日本海側に住めば実感できる「4つの脅威」と言い換えてもよいかもしれない。

   その一つが「ミサイル」だ。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に着弾した=写真・上=。北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   今回の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(9月13日付)は、新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと伝えている。巡行ミサイルは低空飛行するためレーダーで捉えること難しいとされる。「1500㌔先の目標に命中した」と報じているので、能登半島の監視レーダーサイトだけでなく、ほかの自衛隊基地やアメリカ軍基地も射程内に入れているのだろう。

   2つ目の脅威が「軍事境界線」だ。能登半島の沖合300㌔にある大和堆はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる。その事例は、1984年7月27日に起きた「八千代丸銃撃事件」だ。能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。 

   3つ目が「難民」だ。能登半島の先端からさらに沖合50㌔に舳倉島(へぐらじま)がある。アワビやサザエの漁場でもあり、漁業の中継拠点でもある。この島の周囲は南からの対馬海流(暖流)と北からのリマン海流(寒流)がぶつかり、混じり合うところ。そのため海岸では、日本語だけでなく中国語やハングル、ロシア語で書かれたゴミ(ポリ容器、ペットボトル、ナイロン袋など)を拾うことができる。かつて、島の住民から聞いた話を覚えている。「島に住んでいると、よその国の兵隊が島を占領したり、大量の難民が押し寄せてきたり、そんなことをふと考え不安になることがある。本土の人たちには思いもつかないだろうけど」と。北朝鮮による拉致問題がクローズアップされ、当時の小泉総理が北朝鮮を訪問した2002年ごろの話だ。

   北朝鮮に有事が起これば、大量の難民が発生し、船に乗って逃げるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って舳倉島や能登半島に漂着する。そうした難民をどう受け入れるのか、中には武装難民もいるだろう。有事でなくても、いまでも日本海の沿岸には北の木造船の漂流や漂着が相次ぐ=写真・中=。(※写真は2017年11月に能登半島・珠洲市の海岸に漂着した木造漁船)

   そして、「拉致」だ。日本海を舞台に相次いだ。1977年に拉致1号事件が能登半島で起きていた。9月19日、東京都三鷹市役所の警備員だった久米裕さんが石川県能登町宇出津(うしつ)の海岸で失踪した。地元では今でも「宇出津事件」と呼ばれている。この年の11月15日、横田めぐみさんも同じ日本海に面した新潟市の海岸べりの町から姿を消した=写真・下=。拉致問題はめぐっては、2002年9月と2004年5月に日朝首脳会談が行われ、一部の拉致被害者が帰国した。その後、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との姿勢を変えていない。拉致は過去の話なのか。いまもどこかで。

⇒14日(火)夜・金沢の天気      くもり

★「弾道」から「巡航」に 核ミサイルの戦略転換なのか

★「弾道」から「巡航」に 核ミサイルの戦略転換なのか

   日本海側に住んでいると、北朝鮮の動向が気になってしまう。けさのテレビメディア各社のニュースによると、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(13日付)は、新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと伝えている。NHKニュースWeb版(同)によると、ミサイルが落下した場所は不明だが、労働新聞は「わが国の領土と領海の上空に設定された、楕円や8の字の軌道に沿って、2時間6分20秒飛行し、1500㌔先の目標に命中した」と報じている。

   ニュースを視聴して意外だったのは、労働新聞の記事は一面ではなく、いわゆる中面の記事だ。つまり、それほど大きな扱いではない。また、今回の発射実験に金正恩総書記が立ち会ったという記述もない。それにしても「1500㌔先の目標に命中」とは場所はどこだろうか。加藤官房長官はきょう午前中の会見で、日本の排他的経済水域(EEZ)などへの飛来は確認されていないと説明している(NHKニュースWeb版)。「1500㌔先の目標に命中」という表現は、明らかに日本を射程内に入れているという意図を込めていて不気味だが、本当に発射実験が行われたのだろうか。

   連想することがある。今月9日未明に北朝鮮建国73周年のパレードがピョンヤンで行われ、閲兵式の映像は国営の朝鮮中央テレビを通じて公開された。NHKニュースWeb版(9日付)によると、参加したのは民兵組織の「労農赤衛軍」や国営企業の労働者などで、正規軍である朝鮮人民軍の参加は伝えられていない。また、弾道ミサイルなどの大型の兵器は登場しなかった。閲兵式での金総書記の発言も伝えられていない。

   イギリスのBBCニュースWeb版(同)は「North Korea tests new long-range cruise missile」の見出しで論評している=写真=。要約すると、弾道ミサイルは国連安保理の制裁対象となっているが、巡航ミサイルはその対象ではない。巡行ミサイルは低空飛行するためレーダーで捉えること難しい。北の国営メディアは、巡航ミサイルの開発を「戦略的」と表現している。つまり、核弾頭を小型化して巡航ミサイルに搭載できるように今後実験を重ねるかもしれない。先月、IAEAは北が核兵器用プルトニウムを生産できる原子炉を再稼働させたようだと述べ、「深く厄介な」開発と呼んだ。

   もし、北が従来の弾道ミサイルではなく、巡航ミサイルに核弾頭を搭載して発射させる戦略的な開発を行っているとすれば新たな脅威だ。金氏がことし1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   今回の巡航ミサイル発射実験は、核兵器の小型・軽量化を目指しているのかもしれない。さらに気になるのは、これまでの人民軍のパレードを民兵組織のパレードに切り替えている。その意図はどこにあるのだろうか。国民総動員の戦闘態勢に入るという意思表示なのか。そして、金氏はアメリカのバイデン大統領との対話を求めているのだろうか。

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