★亡き父の「8月15日」

★亡き父の「8月15日」

   まったく個人的な話だ。平成14年(2002)8月に父が他界した。亡くなる前「一度仏印に連れて行ってほしい。空の上からでもいい」と病床で懇願された。仏印は戦時中の仏領インドシナ、つまりベトナムのことだ。父の所属した連隊はハノイ、サイゴンと転戦し、フランス軍と戦った。同時に多くの戦友を失った。父はベトナムに亡き戦友たちの慰霊に訪れたかったのだろう。「空の上からでもいい」とまで言われたが、病状は思わしくなかった。まもなく他界。父の最期を見守った兄弟3人にはその言葉が脳裏に焼き付いていた。

   父のベトナムへの想いをかなえようと2017年11月、父の遺影を持参して3泊4日のベトナムの旅に出かけた。父の想いは仏印という戦地で散った戦友たちへの供養だったので、いろいろ調べた。が、現地ベトナムでは日本兵の戦死者たちを祀る慰霊碑は見当たらない。ただ、太平洋戦後に捕虜地を逃れ、ベトナム独立のために戦った元日本兵たちの墓がハナム省モックバック村にあるとの情報を得て墓参することにした。ベトナムは社会主義の国だが仏教信仰が盛んだ。革命烈士の墓の近くの商店で線香を買い求め、近くに野ギクが自生していたので切って、元日本人の墓に線香と花を手向けた。

    サイゴンのラジオ局に向かった。敗戦で父たちの捕虜収容所があった場所がかつての「無線台敷地」、現在のラジオ局の周辺だった。父たちは周囲で畑をつくり、近くの川で魚を釣りながら、戦闘のない日常を楽しんでいたと話していた。ラジオ局の近くを流れるのはティ・ゲー川。生前父から見せてもらった捕虜生活の写真が数枚あり、その一枚がこの川で魚釣りをしている写真だった。兄弟でこの川の遊覧船に乗った=写真=。川面を走る風が頬をなでるようにして流れ、捕虜生活の様子を偲ぶことができた。

   旅の最後に、父たちの部隊が帰還の船に乗り込んだサイゴン港に行った。父からかつて聞いた話だが、乗船の際は一人一人が名前を大声で名乗りタラップを上った。地元民に危害を加えた者がいないか、民衆が見守る中、「首実験」が行われたのだ。父が所属した部隊では幸い「戦犯者」はいなかった。別の部隊では軍属として働いていた地元民にゴボウの煮つけを出したことがある炊事兵が、乗船の際に「あいつはオレらに木の根っこを食わせた」と地元民が叫び、イギリス軍によりタラップから引きづリ降ろされた。そう語る父の残念そうな顔を今でも覚えている。

   父たちがサイゴンの港を出たのは1946年5月2日だった。港を出て行く船を見ていると、父たちの帰還船を見送っているような不思議な感覚になった。まるでタイムマシーンに乗って、港に来たような。「無事日本に帰ってくれてありがとう」と心の中で叫んだ。父は同月13日に鹿児島港に上陸。能登半島に戻り結婚。1949年に兄が、私は54年に、そして弟は58年に生まれた。

⇒16日(火)夜・金沢の天気   くもり

☆「札キリコ」と「祭りキリコ」のこと

☆「札キリコ」と「祭りキリコ」のこと

   石川県内ではきょう新たに確認された新型コロナウイルス感染者は1995人となった(石川県庁公式サイト「医療・福祉・子育て」)。今月10日から12日までは2000人台に達していて、最多レベルの感染が続く。このような中、お盆の時季でもあり、金沢の街中や道路などは混雑している。3年ぶりに行動制限のないUターンラッシュだ。

   きょう金沢市の南隣の野々市市と北隣の津幡町へ親戚の墓参に行ってきた。近隣であってもお盆の風習に違いがある。金沢市は7月中旬の新盆、野々市市と津幡町は旧盆での墓参りが多い。

   時季だけでなく、墓参りの仕方にも違いがある。金沢の場合は「札キリコ」を持参する。墓の前に札キリコをつり下げる棒か紐がかけてあり、墓参した人は棒か紐につるす。札キリコには宗派によって、例えば浄土真宗の墓地ならば「南無阿弥陀仏」、曹洞宗ならば「南無釈迦牟尼仏」と書いて、裏の「進上」には墓参した人の名前を記す=写真・上=。この札キリコによって、その墓の持ち主は誰が墓参に来てくれたのかということが分かる仕組みになっている。

   これに対し能登・加賀では、札キリコを持参する風習はないが、墓参りの後にその家を訪ねて仏壇にも合掌をする。直接顔を見せる能登・加賀と、名前を札キリコに書き置きする金沢の違いがある。むしろ、金沢の方が独特なのかもしれない。以前、お寺の関係者から聞いた話だが、札キリコは江戸時代からあり、金沢では武家の間だけの風習だった。名刺代わりに札キリコに名前を書いて墓参した。それが、明治以降は庶民に広がったという説だった。

   キリコはもともと切子灯籠(きりことうろう)と呼ばれていて、行灯(あんどん)のようなカタチをしていた。金沢では、札キリコとしてコンパク化して名刺の役割を持つようになった。一方、能登ではキリコは巨大化した。能登各地で伝統的に催される夏祭りと言えば、祭りキリコ=写真・下=。神社の神輿の先導役として集落を練る。

   この祭りキリコは高さ10数㍍のものもあり、若集が数十人で1基を担ぎ上げる。鉦(かね)や太鼓が備えられ、祭りキリコが動き出すとにぎやかになる。では、なぜ巨大化したのか。祭りキリコは集落のシンボル的でもあり、輪島塗で装飾を施し豪華さを、あるいは、大きさを誇示することを繰り返して巨大化したとも言われる。

   「札キリコ」と「祭りキリコ」はもともと切子灯籠。地域によって用途が異なり、また独自の大きさとカタチに変化した。切子灯籠の進化論ではある。ただ、ルーツは同じなので「札キリコ」と「祭りキリコ」のカタチはなんとなく似ている。

⇒14日(日)夜・金沢の天気   くもり

★「天動説」の人々とどう向き合うか

★「天動説」の人々とどう向き合うか

   ロシア人の35%が「太陽が地球のまわりを回っている」と信じている。朝日新聞Web版(8月2日付)は、ロシア政府系の「全ロシア世論調査センター」が発表した調査結果を報道した。国民の科学に対する理解度を測る調査。この天動説を信じる国民の割合は増えていて、この15年間で7ポイント上昇しているという。「初期の人類は恐竜と同時代に生きていた」との回答も21%という。調査は7月9日に電話で行われ、18歳以上の1600人が回答している。

   この記事を読んで、日本では中学の理科で地動説を習うのが、ロシアではこうした宇宙を学ぶ理科教育はないのかと不思議に感じた。何しろ、ロシアはアメリカと組んで国際宇宙ステーション(ISS)を建設するなど、「宇宙大国」のイメージがある。その国の3人に1人が天動説を信じている、とは。

   ただ、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻を見ていると、ロシアを中心に世界は回っている、国境なんてない、という発想のようにも読める。プーチン氏も「天動説」派なのかと憶測したりする。「北海道の権利はロシアにある」と発言したセルゲイ・ミロノフ下院副議長もこの仲間か。

   中国の習近平国家主席も「天動説」派ではないだろうか。南シナ海はオレのものとばかりに島々に軍事基地を造るなどして実効支配。さらに「中国は一つ」なので台湾はオレのものとばかりに、軍事演習として称して台湾周辺や日本のEEZ内に弾道ミサイル11発を放った(今月4日)。そして、「尖閣諸島はオレのもの」と領海侵犯を重ねている。中国の大国意識には、中華は天下(世界)の中心という中華思想がある。脈々と受け継がれるこの思想には「国境」という発想がない。そのうち、沖縄もオレのものと言い出すチャンスを狙っているかもしれない。

   もう一人、北朝鮮の金正恩主席も「天動説」派かもしれない。日本海はオレのもとばかりに、今年に入って前例のないペースでミサイル発射を繰り返していて、3月24日には2017年以来となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射も行った。そして、アメリカとの軍事衝突が起これば、北朝鮮は核抑止力を「動員する万全の態勢が整っている」と表明した(7月28日付・ロイター通信Web版日本語)。

   天動説を信じる人たちに、「地動説の科学をコペルニクスやガリレオから学んでください」と進言しても、おそらくもっともらしい反論がかえってくる。「エセ科学を吹聴する人は自分の知識が不十分だと認識する必要がある。あなたこそ学び直しなさい」と逆に説教されそう。

⇒13日(土)午前・金沢の天気    はれ

☆岸田政権は安泰なのか、世論調査の内閣支持率を読む

☆岸田政権は安泰なのか、世論調査の内閣支持率を読む

   前回ブログの続き。今回の岸田改造内閣について、有権者はどう評価しているのか。メディア各社がそれぞれ緊急世論調査(10、11日)の結果を報じている。共同通信社の電話調査によると、内閣支持率は54%、前回(7月30、31日)より3%上げ、不支持は28%と前回より1ポイント減だった。今回の内閣改造と自民党執行部の人事をどう評価するかについては、「評価する」が44%、「評価しない」が41%だった。

   日経新聞の緊急世論調査では内閣支持率は57%で前回(7月29-31日)より1ポイント低下した。不支持率は35%で前回より3ポイント上昇している。また、新しい内閣と自民党執行部の顔ぶれについては、「評価しない」44%が「評価する」30%を上回った。

   読売新聞の世論調査では、内閣支持率は51%で前回(今月5-7日)より6ポイント下落。不支持率は34%と前回より2ポイント増えている。今回の内閣改造を「評価する」は45%、「評価しない」は34%だった。それにしても、これまで内閣改造と言えば政権浮揚の効果もあったが、共同の調査では3ポイントの微増、日経と読売ではマイナスだ。

   なぜか。それは、霊感商法や献金強要など反社会的行動を取ってきた「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)と政権や党議員との癒着に、今回、人事でケジメをつけるはずだったが、有権者はそれほど甘くは見ていないということではないだろうか。

   読売の世論調査で、萩生田光一経産大臣が党政調会長に起用されたことについて、「評価しない」が40%で、「評価する」32%を上回っている。萩生田氏はこれまで統一教会主催のイベントに来賓としてあいさつ、関連団体に会費を支払うなどの濃厚な接触が取り沙汰されていた。岸田総理が統一教会と自民の関係を見直しを「徹底する」と発言したものの、この矛盾に有権者は憤っている。それが数字に現れた。

   「ピンチはチャンス」どころか、ますます泥沼にはまっている。岸田総理自身も統一教会広島地区会長とツーショット写真を撮っていたことも明らかになっている=写真、ジャーナリスト鈴木エイト氏のツイッター(今月9日付)から=。このままでは内閣支持率がさらに混迷するのではないか。

   政局は一気に揺らぐ。その目安に世論調査の内閣支持率がある。20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」といわれる。今回の調査で岸田内閣の支持率は51%台だが、下がるときは急降下する。政権が反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査や警察による情報収集など実態解明に着手する。その上で、問題が露呈すれば非課税など優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討すると有権者に宣言すること。それがケジメというものだ。

⇒12日(金)午後・金沢の天気    はれ

★改造内閣と大谷翔平の快挙、どれが一面トップなのか

★改造内閣と大谷翔平の快挙、どれが一面トップなのか

   きょうの朝刊各紙の一面はニュースが二つあった。一つは岸田政権の第2次改造内閣について、もう一つがアメリカ・大リーグの大谷翔平が今季で10勝目を挙げて、ベーブ・ルース以来で104年ぶりとなる「2ケタ勝利、2ケタ本塁打」の偉業を成し遂げたというニュース。面白いのはそのニュースの扱いだ。

   各紙の扱いを比べてみる。ほとんどの紙面が一面トップで改造内閣を取り上げている。「有事に対応 政策断行」(読売新聞)、「首相、守りの内閣改造」(朝日新聞)、「岸田首相『政策断行』」(毎日新聞)、「首相『防衛力強化が最重要』」(日経新聞)など。見出しに各社のポリシーが浮かぶ。ただ、正直言って、トップではあるものの、政治ものなので仕方なく優先的に据えたという印象を受ける。読売は大谷翔平の快挙を一面で準トップ、ほかスポーツ面、そして社会面でも大々的に取り上げている。改造内閣と日がずれていれば、おそらく紙面は大谷翔平一色だったかもしれない。

   そんな中で、堂々と一面トップで大谷を取り上げているのが北陸中日新聞だ。名古屋圏を中心としたブロック紙。「大谷 2桁勝利2桁本塁打」と5段見出しだ。それに比べ、改造内閣は3段見出し。国内の政治ものに「忖度」せずに、国際的にもインパクトがある大谷を一面で飾った。

   そもそも、旧盆を前に駆け込みのようにして今回の組閣人事が行われた。霊感商法や献金強要など反社会的行動を取ってきた「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)と自民党などの国会議員の癒着が明らかになっていることから、人事によってケジメをつける狙いがあったのだろう。内閣支持率も下落している。ところが改造内閣でも総務大臣、厚労大臣、経済再生大臣らが統一教会とこれまで関係があったことが次々と報道されている。ケジメをつけたつもりが、この教団とのズブズブの関係がさらに露呈される結果になった。

   地元石川県選出の岡田直樹・参院議員も地方創生兼沖縄北方担当大臣として初入閣を果たした。統一教会との関係については、地元秘書が教団の関連団体主催のイベントに代理出席したことがあると釈明している(11日付・北國新聞)。

   霊感商法や献金強要によって巨額な金が集められ、1987年から2021年に全国霊感商法対策弁護士連絡会に寄せられた被害件数は約3万4500件、被害金額は計約1237億円に上る。すさまじい被害があるにもかかわらず、「何が問題か、僕はよく分からない」(7月29日・福田達夫議員の発言)といった能天気なコメントが出たことに、有権者は憤っている。

   政治が反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査や警察による情報収集など実態解明が必要だろう。それを受けて、今後、問題がある教団への非課税など優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討するなど、法的なケジメを打ち出さない限り、このままズルズルと再び癒着が始まる。

⇒11日(木・祝)夜・金沢の天気   くもり時々はれ

☆「不都合な痛み」あれこれ

☆「不都合な痛み」あれこれ

   きのう新型コロナウイルスの4回目のワクチン接種を金沢市内の病院で受けてきた。去年の2回(6月、7月)はファイザーで、3回目(ことし3月)と今回にはモデルナだった。すこし不安があった。3回目とのときは、接種した右腕の付け根の部分に痛みが1週間ほど残った。そして今回、ちょっと不思議なことに、右腕の付け根だけでなく、左腕のほぼ同じ個所にもじんわりとした痛みがあるのだ。痛みが左右で連動することはあるのだろうか。あるいは就寝中に左腕を下に寝てしまい、その痛みだろうか。なんとも不都合な痛みである。

   そして気になるニュースをいくつか。札幌市が招致を目指す2030年の冬季オリンピック・パラリンピック。札幌市長は意欲満々のようだが、事実上、ストップしたのではないだろうか。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会(6月解散)の高橋治之・元理事が五輪スポンサーをめぐり、受託収賄容疑で家宅捜査を受けた(7月26日付・朝日新聞Web版)。

   電通の元専務もある高橋氏はオリンピックそのものを誘致するロビイストだ。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、ロイター通信が五輪招致をめぐり高橋が招致委員会から820万㌦(8億9000万円)の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。IOC委員に対するロビー活動については、国際的にも問題が指摘されている。これだけあからさまになって、高橋氏は札幌五輪のためにロビー活動を続けることはできるだろうか。札幌市長にとっては不都合な痛みだ。 

   銃撃に倒れた安倍元総理の国葬が9月27日に日本武道館で営まれる。国葬の前になすべきことは、まず国会での追悼演説ではないか。メディア各社の報道によると、本来は8月5日の臨時国会で甘利前幹事長による追悼演説が「遺族の意向」もあり、セットされていた。ところが、与野党から反対論があったことから見送られ、秋の臨時国会で行われることになったようだ。誰が演説するのか決まっていない。演説する側も内容や器量が問われる。

   読売新聞の世論調査(8月5-7日)によると、岸田内閣の支持率は、前回(7月11-12日)より、8ポイント下落して57%だった。不支持は8ポイント上昇して32%。自民党の支持率も6ポイント落ちて38%だった。煮え切らない、はっきりしない、じれったい内閣に有権者の不満が募っている。「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)とのつながりについて、政党や国会議員が説明責任を果たしていると「思わない」は87%だ。おそらく、統一教会問題、そして追悼演説問題は不都合な痛みとしてこれからさらにじわじわと増してくるのでは。

   冒頭で述べた、ワクチン接種の痛みが先ほどから増してきた。さらに、小刻みに体が震える症状も。しばらくキードボードを打つことができなかった。いまは痛みも震えも治まった。これって、アナフィラキシー症状なのか。ヤバイ。

⇒10日(水)午後・金沢の天気   くもり

★「災害級」大雨の被災現場から

★「災害級」大雨の被災現場から

   テレビやネットで最近よく「災害級大雨」という言葉が出て来る。気象庁では雨の降る量が1時間に80㍉を超える場合、予報用語として「非常に激しい雨」と説明して、「雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要です」と注意を呼びかける。さらに、「記録的短時間大雨情報」という用語も、数年に一度、1時間雨量が100㍉の猛烈な雨を警戒するために使われる。

   今月4日、石川県の加賀地方は災害級の記録的な大雨に見舞われた=写真・上=。金沢地方気象台によると、4日午後8時30分時点の24時間降水量は白山河内で395㍉、白山白峰で274㍉、小松で251㍉とそれぞれ観測史上最大を記録した。金沢は132㍉だった。

   中でも被害が大きかった小松市では床上浸水220棟、床下浸水550棟、一部損壊や半壊が12棟など家屋被害が出た。きょう同市中海町を訪ねた。35度を超える炎天下の中で、重機が入りに道路を覆う土砂や流木の撤去作業が行われていた。また、各家々ではボランティアも入り、家の中の泥などの除去作業が行われていた=写真・中=。

   作業をしていた80歳の男性から話を聞くことができた。4日午後4時ごろには家の1階で胸あたりまで水につかった=写真・下=。「仏壇も水浸しになった。34年ぶりや」とあきらめ顔で語った。今回、集落が水につかったのは、梯(かけはし)川の支流の滓上(かすかみ)川の橋の欄干に次々と流木がひっかかり、まるでダムのようになって集落に水があふれたと話してくれた。

   酒店を営む80歳の女性もその日の午後4時ごろにひざのあたりまで水が来て、知人に助けを呼ぶと、消防隊のボートが救助に来てくれたと話した。店では、ビールなどを冷やす大型の冷蔵庫が倒れて使えない。「いまごろはお中元で忙しい時期なのに。店を続けるかどうか迷っている」と肩を落としていた。

   白山山系のふもとにある小松市の梯川や白山市の手取川ではこれまで洪水に見舞われた歴史がある。郷土史に詳しい人から聞いたことがある。「加賀の一向一揆は洪水がもたらした」と。洪水で田んぼが減収すると、加賀の農民は年貢が納められないと領主に直訴した。大雨に備えた排水溝などは百姓衆が造り、一向宗の門徒でもある共同体は「百姓の持ちたる国」とまで呼ばれた。

   話は横にずれた。中海町の現場で、腕章をした小松市の職員を見かけた。被災者から罹災証明書の申請が市役所に出され、その認定作業を行っている。外壁や屋内の被害の様子を写真で撮影していた。罹災証明書によって、公的支援を受けることができる。災害復旧に向けた動きも始まっていた。

⇒9日(火)夜・金沢の天気    はれ

☆安倍氏銃撃から1ヵ月 さりげなく哀悼の意を

☆安倍氏銃撃から1ヵ月 さりげなく哀悼の意を

   安倍元総理が奈良市で銃撃され死亡し、きょうで1ヵ月。メディア各社は、殺人で逮捕・送検された容疑者41歳について、検察は11月29日までの4ヵ月の鑑定留置を実施して、刑事責任能力の有無を見極めた上で起訴するかどうか決めるようだ、と報じている。

   4ヵ月もの鑑定留置をするということは、容疑者の供述に論理の飛躍や矛盾点がかなり見受けられるとの判断なのだろう。容疑者は母親が入信する「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)に恨みがあり、教団とつながりがある安倍氏の殺害に至ったと供述。さらに、統一教会と国会議員との癒着の実態が次々と明らかになっていることから、検察側もかなり慎重に捜査を進めているようだ。

   きょうの夕刊紙面で見つけた記事。安倍氏の銃撃事件後に広告主であるCMスポンサー企業がテレビCMを相次いで自粛したため、民放各社のCM枠は公共広告機構「ACジャパン」のCMが平時の50倍に増加した。CM自粛が相次いだ東日本大震災以来で最多となった(8日付・北陸中日新聞夕刊)。

   記事によると、CM総合研究所がまとめた数字で、在京キー局5局のACジャパンの放送回数は銃撃事件前日の7月7日は9回だったが、当日8日は241回、9日は472回、10日は462回、11日には509回に達した。CM全体に占める割合も7日の0.2%から11日は12.5%に上昇した。ただ、5日目の12日には39回に減り、ACジャパンへのCM差し替えは4日間で収束したことになる。

   東日本大震災のときは、2011年3月17日に3557回に達し、さらにこの傾向が1ヵ月以上にわたり続いた。それに比べれば、安倍氏の襲撃事件の衝撃波は短期間で治まったと言える。企業のテレビCMのイメージは明るさが売りでもあり、一時的にしろCMを控える動きはあってしかるべきだったろう。

   事件の2日後に行われた参院選挙。石川選挙区で立候補した岡田直樹氏は安倍氏の側近だった。当選確実のときの様子をテレビで見ていたが、万歳をせずに4期目の抱負を語っていた。さりげなく哀悼の意を示す、そのような心遣いが見て取れた。

   あれから1ヵ月。NHKが毎月行っている世論調査(8月5-7日)では、岸田内閣を「支持する」は前回調査より13ポイント下がって46%、「支持しない」は7ポイント上がって28%だった。安倍氏の「国葬」については「評価する」が36%、「評価しない」が50%だった。国葬と内閣支持率が微妙に絡まっている。

   この事件で誰もが感じたことは、一国の元総理が凶弾に倒れたという歴史的な出来事を肌で知った、ということではないだろうか。

⇒8日(月)夜・金沢の天気    はれ

★政治と宗教の癒着、民主主義の成れの果てなのか

★政治と宗教の癒着、民主主義の成れの果てなのか

   霊感商法や献金強要など反社会的行動を取ってきた「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)が国会議員との癒着している事実が次々と明らかになっている。統一教会の野望が見えてくる。と同時に、これが民主主義の成れの果てなのかと思ってしまう。  

   「信教の自由」は憲法20条で保障される権利である。しかし、教団という組織は基本的な人権や自由を保障しているだろうか。とくに、統一教会のようなカルト教団の組織の中では厳しい上下関係や献金強制、さらに政治活動の動員といったことが表面化している。全国霊感商法対策弁護士連絡会の記者会見(7月12日)によると、霊感商法や献金強要によって巨額な金が集められ、1987年から2021年に連絡会などに寄せられた被害件数は約3万4500件、被害金額は計約1237億円に上る。

   こうした問題を知りながら、安倍総理の2015年と16年の「桜を見る会」に統一教会幹部を招待していた。さらに、16年6月、統一教会の会長を総理官邸に招待していた。そのほか、閣僚や議員、地方自治体の首長、県会議員が統一教会から選挙支援やイベントの招待を受けていたとなれば、政治責任が問われて当然だろう。

   統一教会がここまで政治と癒着する思惑の中には、公的な資金取り込みの意図があるのではないのだろうか。統一教会が以前から提唱している「日韓トンネルの早期具体化」について、関連団体「平和政策研究所」は政策提言(2017年2月15日付)で、「いまこそ国家事業化の決断を」と提唱している。九州と韓国の間を230㌔の海底トンネルで結ぶ構想。これについて、国や自治体はこれまで調査費などの予算付けをしているのではないだろうか。

   統一教会による献金問題がこれまでも繰り返し報道されている。信者に借金をさせて自己破産、その後は知人や縁者に高額な物品販売をさせる。信者を集金マシーン化するあくどい手口だ。ここからは憶測だが、信者の集金マシーン化は巧妙化しているのではないか。無職や高齢の信者から生活保護費や年金を、あるいは零細企業の事業者の信者に持続化給付金などの公的資金を申請させ、献金として巻き上げているという事実はないだろうか。メディアによる調査報道に期待したい。

   共同通信社の世論調査(電話調査、7月30、31日)では、安倍元総理の国葬についての問いで、「反対」「どちらかといえば反対」が計52%で、「賛成」「どちらかといえば賛成」の計44%を上回っている。戦後、総理経験者の国葬は1967年の吉田茂のみで、日米講和条約を結んで日本の独立を回復、戦後の出発点をつくった政治家だった。沖縄返還に尽くした佐藤栄作は国民葬だった。安倍の国葬に冷ややかな反応が多いのは、業績よりも通算8年8ヵ月という総理在任期間が優先されたからだろう。これも民主主義の成れの果てということか。

⇒7日(日)夜・金沢の天気     はれ     

☆能登をトキとコウノトリの楽園に

☆能登をトキとコウノトリの楽園に

   佐渡市で野生復帰の取り組みが進む国の特別天然記念物トキについて、環境省はきょう、本州などでも放鳥を行う候補地「トキの野生復帰を目指す里地」として能登半島と島根県出雲市を選定したと発表した(5日付・環境省公式サイト「報道発表資料」)。今後、環境省は受け入れる地方公共団体などと、生息環境の保全やトキとの共生を理解する地域づくりをしながら、2026年以降での放鳥を目指すことになる。

   本州最後の1羽だったトキが1970年に能登半島で捕獲され、繁殖のため佐渡のトキ保護センターに送られた実績があることから、石川県と能登の4市5町、JAなど関係団体は5月6日に「能登地域トキ放鳥受け入れ推進協議会」を結成。環境省に受け入れを申請していた。

   去年10月、佐渡でトキを観察する機会があった=写真・上=。説明によると、野生繁殖は480羽近くになるが、一つの地域に限られた生息だと鳥インフルエンザにより絶滅する可能性もあるとのことだった。環境省の佐渡以外での放鳥計画はそうしたリスク分散でもある。今回の環境省の決定で能登に再びトキが舞う日がいよいよ現実になってきた。

   先月24日、トキ放鳥受け入れ推進協議会が能登半島の七尾市で開催したシンポジウムに参加。その足でコウノトリのひな3羽が育つ、志賀町の山地に赴いた。初めて見に行ったのは6月24日だったので、ちょうど1ヵ月ぶりだった。

   ひなを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと、福井県越前市生まれのメスで、ことし4月中旬に志賀町の山の中の電柱の上に巣をつくり、5月下旬には親鳥がひなに餌を与える様子が確認された。初めて見た1ヵ月前より、相当大きくなっていて、時折羽を広げて飛び立とうとしている様子だった=写真・下=。この場所はコウノトリのひなが育った日本での最北の地とされていて、これからの定着と繁殖を期待しながら巣を見上げていた。

   タイムリーなことに、環境省は6月14日、海岸線が中心だった能登半島国定公園(1968年指定)を内陸部の里山を含め広げる拡張候補地として選んだと発表した。新たな公園エリアの候補地は2030年度をめどに決めるようだ。トキもコウノトリも国の天然記念物だ。その生息地が国定公園に選ばれることになれば、景観と自然保護、そして天然記念物の鳥たちの楽園としてのストーリーが描けるのではないか。

   また、能登半島は2011年6月に国連食糧農業機関により、世界農業遺産(GIAHS)「Noto’s Satoyama and Satoumi(能登の里山里海)」が認定されている。その認定要件には景観、そして生物多様性があり、トキとコウノトリが定着すれば、能登GIAHSに新たな価値を注ぐことにもなり、国際的な評価が高まるに違いない。

   ただ、一つ懸念するのは、このブログでも何度か取り上げた、能登で進む風力発電の増設計画だ。長さ30㍍クラスのブレイド(羽根)の風車が能登半島には現在73基ある。岸田政権は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指していて、風力発電の増設計画が全国で加速。能登半島にも新たに12事業、171基が計画されている。

   自然保護の観点から懸念されるのはバードストライク問題であり、景観上もふさわしくない。風車が乱立するような場所は国定公園にそぐわない(環境省「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」)。風力発電そのものを否定しているのではない。これ以上、能登に増やす必要はないというのが持論だ。

⇒5日(金)夜・金沢の天気   くもり時々はれ