⇒ニュース走査

★有事への敏感さ

★有事への敏感さ

  きのう(26日)、小松市に住む知人からのメールでこんな下りがあった。「最近、世の中が物騒になってきたせいか、小松基地の自衛隊の訓練がいつも以上に活発化しています。また基地を抱える小松市は周辺自治体より有事の際の対応に敏感になっています。」と。小松基地の動きが活発化している様子は金沢にいても感じ取ることができる。F15戦闘機とみられる戦闘機が飛び交っている様子は、金沢の空に描かれる縦横、斜めに交差する飛行機雲を見ても分かるのだ。高度な上空のせいか機体音はしない。

  きょうの朝日新聞デジタル(27日付)によると、アメリカ太平洋軍のハリス司令官は26日、アメリカ下院軍事委員会公聴会で、北朝鮮に関して「アメリカは先制攻撃の様々な選択肢がある」と述べ、原子力空母カールビンソン率いる空母打撃群が沖縄東方を航行しており、北朝鮮を攻撃できる射程内に入ったことも明らかにした、と伝えている。また、各メディアは、トランプ政権はホワイトハウスに上院議員を招いて対北朝鮮政策を説明する会合を非公開で開催した、と報じている。外交の素人でも、この一連の報道を読めば、アメリカは北朝鮮に対して、核放棄を迫るための先制攻撃の準備を着々と進め、議会に対しても事前に説明し同意を得なるど用意周到の体制で臨んでいると理解するだろう。

  その先制攻撃が金正恩党委員長へのピンポイント攻撃、つまり「斬首作戦」であるならば、その実行日としてネット上で散見されるのが「4月27日」説。この日は新月で夜が真っ暗闇となり、作戦実行に使用されるステルスヘリコプター「ブラックホーク」が肉眼などで感知されにくくなるからだ、と。なるほどそれがアメリカの作戦かと妙に納得して、国立天文台のホームページで調べると、夜が真っ暗闇となる4月の新月は4月26日(水)21時16分、つまりきのうなのだ。ということは、この情報は単なる推測か。ただ、同じ方法でアメリカが、パキスタンでオサマ・ビン・ラディンに対して行った「斬首作戦」は2011年5月2日(日本時間)、新月(5月3日)の前日だった。

   それにしても、原子力空母カールビンソンは日本海まで北上して展開するのか。冒頭の小松基地の周辺だけでなく、朝鮮半島の有事に日本海側も敏感になってきている。

⇒27日(木)朝・金沢の天気   はれ

★能登で起きた悲劇の連鎖事件

★能登で起きた悲劇の連鎖事件

   先日(今月16日)、石川県の能登町役場から手紙が届いた。「この度、3月18日(土)開催予定の能登高校魅力化プロジェクト講演会『能登町×能登高校の挑戦』を、諸般の事情により延期させて頂くこととなりました・・・」。統廃合寸前だった県立隠岐島前高校(島根県海士町)の生徒に地域課題に取り組ませるなど、ユニークなカリキュラムで同校を一気に全国区にした、教育政策アドバイザーの藤岡慎二氏が講演する予定だったので聴きに行こうと思っていた。この「諸般の事情」とは今月10日に起きた殺人事件のことだ。

  帰宅するためバス停で待っていた能登高校1年の女子生徒が連れ去られ、バス停から5㌔離れた山あいの集落の空き家で頭から血を流して死亡しているのが見つかった。殺害したとされる男子大学生21歳は同日午後7時40分ごろ、空き家から16㌔離れた道路に飛び出して乗用車にはねられ死亡した。報道によると、2人は顔見知りではなく、死亡した男子学生は一人でバス停で待っていた女子高生を角材で殴り、車で連れ去って、空き家(祖父の家)で殺害した。女子高生の死因は、刃物で首を切られたことによる失血死だった。最初から殺す目的で襲ったのか。事件から2週間経ち、いまだに解明されていないのがその殺害動機だ。

   この事件を報じたニュース番組で、コメンテイターの言葉が気にかかった。「拡大自殺型犯罪ではないのか」と。この聞き慣れない言葉は、ウイキペディアなどによると、その定義として、1)本人の死の意志 2)1名以上の他者を相手の同意なく自殺行為に巻き込むこと 3)犯罪と、他殺の結果でない自殺とが同時に行われること・・・。道連れ殺人ともいえる犯罪だ。

   それでは死亡した男子学生は自殺だったのか。道路に飛び込んで本当に自殺ができるのか。先日(19日午後)、現場の能越自動車道穴水道路上り線に行ってみた。「なるほど。これだったら自殺は可能だ」と思った。道路は対抗車線のある道路ではなく、上り1車線でしかも両脇がコンクリート壁になっている。つまり、急に道路に飛び込んでこられたら、車は横に除けることができない。急ブレーキをかけても、確実に轢いてしまう。男性学生は予め死に場所を選定していたのだろうと想像がついた。

   自殺の動機は知る由もない。男子学生を轢いてしまった運転者は気の毒だ。そして道連れで殺された女子高生の冥福を祈る。悲劇の連鎖、涙が流れた。

⇒24日(金)夜・金沢の天気   はれ   

☆北の脅威は海からも

☆北の脅威は海からも

  日本海に突き出た能登半島はこれまでもある意味で北朝鮮の標的とされてきた。たとえば、能登半島には一連の拉致被害の第1号の現場がある。1977年9月19日、東京都三鷹市役所の警備員だった久米裕さん(当時52歳)が石川県能登町宇出津の海岸で失踪した。地元では今でも「宇出津(うしつ)事件」と呼ばれている。

  久米さんは在日朝鮮人の男(37歳)と、国鉄三鷹駅を出発した。東海道を進み、福井県芦原温泉を経由して翌19日、能登町(当時・能都町)宇出津の旅館「紫雲荘」に到着した。午後9時、2人は黒っぽい服装で宿を出た。旅館から通報を受け、石川県警は能都署員と本部の捜査員を急行させた。旅館から歩いて5分ほどの小さな入り江「舟隠し」=写真=で男は石をカチカチとたたいた。数人の工作員が姿を現し、久米さんと闇に消えた。男は外国人登録証の提示を拒否したとして、駆けつけた署員に逮捕された。旅館からはラジオや久米さんの警棒などが見つかった。

  私もこれまで何度か現地を訪れたことがある。そして、当時事件を取材した元新聞記者のK氏から話を聞いた。K氏によると、この事件で石川県警察警備部は押収した乱数表から暗号の解読に成功したことが評価され、1979年に警察庁長官賞を受賞している。ただ、この事件は単に朝鮮半島に向けて不法に出国をした日本人がいたという小さな話題としてしか報道されなかった。警察は、乱数表およびその解読の事実を公開した場合は、工作員による事件関係者の抹殺など、事件解決が困難になるリスクもあると判断し、公開に踏み切れなかったともいわれる。

  当時、大々的に拉致問題として報道していれば、その後の被害者も最小限だったかもしれない。当時は外交による国交回復が望まれていた。そんな折、あえて事件化できなかったともいわれる。以降、日本海沿岸部から人が次々と消える。この年の11月15日、横田めぐみさんが同じ日本海に面した新潟市の海岸べりの町から姿を消したのだ。

  政府は拉致事件として認定していないが、1963年5月11日、石川県志賀町沖に刺し網漁に出た寺越昭二さん(当時36歳)、寺越外雄さん(同24歳)、寺越武志さん(同13歳)の3人が行方不明となり、船だけが沖合いで発見された。1987年1月22日、外雄さんから姉に北朝鮮から手紙が届いて生存が分かった。2002年10月3日、武志さんは朝鮮労働党員として来日し、能登の生家で宿泊した。武志さんは「自分は拉致されたのではなく、北朝鮮の漁船に助けられた」と拉致疑惑を否定している。このケースは、北朝鮮の工作船と遭遇したため連れ去られた「遭遇拉致」と見られている。  
 
  1999年3月23日朝、能登半島東方沖の海上から不審な電波発信を自衛隊が傍受し、能登沖と佐渡島沖で2隻の「漁船」が発見される。北朝鮮の不審船による日本領海侵犯事件として、海上自衛隊と海上保安庁の巡視船など追跡した。が、不審船は高速で逃走し逃げ切った。この事件がきっかけで、海上保安庁の巡視船の高速化がはかられている。

北の脅威は何も空からだけではない。海からの脅威にもさらされてきたのだ。

⇒10日(金)夜・金沢の天気    くもり

★能登沖に弾道ミサイルの脅威

★能登沖に弾道ミサイルの脅威

  このニュースには一瞬背筋が寒くなった。きょう9日午前、菅官房長官が記者会見で、北朝鮮が6日に同時発射した弾道ミサイル4発のうち1発について、「能登半島から北に200㌔㍍の日本海上に落下したと推定される」と発表した。これまで政府は6日の弾道ミサイル4発はいずれも1000㌔㍍飛行し、秋田県男鹿半島の西方の300-350㌔㍍の日本海上に落下したと発表していた。

  私は直感した。北朝鮮は能登半島を狙って撃っている、と。というのも、能登半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。このレーダーサイトには、航空警戒管制レーダーが配備され、日本海上空に侵入してくる航空機や弾道ミサイルを速く遠方でも発見するため24時間常時監視している。この航空警戒管制レーダーを意識して、あえて200㌔㍍沖で弾道ミサイルを落としたのではないか。

  報道によると、菅官房長官はミサイルの種類に関し、スカッドの射程を伸ばした中距離弾道ミサイル「スカッドER」と推定されると指摘した。今回、官房長官があえて能登沖に落下したと発表したのは、我が国の情報収集能力について北朝鮮にメッセージを送るためだったと読む。北朝鮮は4発のうち、3発を男鹿半島沖に落とし、1発を能登半島沖に落とした。本当の狙いは能登半島だが、それを日本が覚知できるかどうか試したのだ。日本政府とすると、情報収集能力はあるぞと北朝鮮に示すために、あえて発表したのだろう。

  それにしても、日本海は自衛隊の訓練空域でもっとも広く、「G空域」と呼ばれる。そのエリアに、しかも監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERを撃ち込んだのだ。これはもはや脅威だと認識せざるを得ない。

⇒9日(木)夜・金沢の天気   あめ

★今そこにある隣国の危機

★今そこにある隣国の危機

  初めて韓国を訪れたのは2013年8月25日、本土ではなく済州島だった。世界農業遺産(GIAHS)を研究する日本と韓国、中国の研究者らが当地に集まり、「日中韓農業遺産 連携協力のための国際ワークショップ」を開催した。済州国際空港に到着して、ロビーや免税店などがごった返していて、成田や羽田などの日本の空港とは違った勢いを感じた。その年の2月25日に朴槿恵氏が第18代大統領に就任し、「経済復興」「国民幸福」「文化隆盛」を掲げた韓国の新しい時代のスタートを切って間もないころ。まさに上げ潮ムードだった。

  あれから3年を過ぎて、韓国の勢いが突然止まったかのようだ。連日日本のメディアを通じて入ってくる韓国の様子は政治、経済ともにレームダックのようだ。今一番ホットなニュースが、ウォーターゲート(1972年、ワシントンの民主党本部で起きた盗聴侵入事件)になぞらえた「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」。朴槿恵大統領は先月24日、国会での施政方針演説で、再選を禁止した憲法を改正することを提案した。その数時間後、朴政権の影の実力者といわれてきた崔氏のタブレットを入手し、分析した結果を韓国のケーブルテレビがスクープした。タブレットには大統領の演説文が44件あり、その演説文を事前に入手し、手直ししていたことだった。韓国には大統領記録物管理法があり、大統領府の文書を流出させた者は7年以下の懲役または罰金刑が課せられる。

  情報漏洩問題がクローズアップされる前は、アメリカの要請に応じて、高高度ミサイル迎撃装置(THAAD)の配備を受け入れを表明して、中国との軋轢を生んだことだ。中国でのG20首脳会議に合わせ、中国の習近平主席は朴大統領と9月5日に会談したが、このとき、習主席は「この問題(THAAD配備)の処理を間違えば、地域の戦略的安定に助けにならず、紛争を激化させる」と憂慮した。すると間もなく海上が騒がしくなった。違法操業の取り締まりをしていた韓国の高速警備艇が、中国漁船と衝突し沈没したのは先月7日のことだった。

  経済もおぼつかない。世界7位の韓進海運が破綻。大騒ぎになったが、サムスン電子の新型スマホ「ギャラクシーノート7」は火を噴き、そして、ロッテのお家騒動は泥沼化した。隣国の騒動を喜ぶつもりはないが、こうも連日のように新たなニュ-スが飛んでくるとつい気になってしまう。今後どうなるのか。友人に国家機密を洩らしたのは大統領自身である。絶体絶命のピンチに立たされていることだけは間違いない。今そこにある危機をどう乗り越えるのか。

⇒3日(祝)夜・金沢の天気    あめ

☆核廃絶なぜ「反対」なのか

☆核廃絶なぜ「反対」なのか

   それにしても腑に落ちない。核兵器を法的に禁止しようという核兵器禁止条約の制定交渉を来年2017年3月から開始するという決議案が、軍縮を担当する国連総会第1委員会で123ヵ国の賛成多数で採択された。一方、アメリカ、ロシア、イギリス、フランスなどの核保有国など38ヵ国が反対したが、その中に唯一の被ばく国として核兵器の廃絶を訴えてきた日本が反対にまわったのだ。

   ことし5月28日、アメリカのオバマ大統領と安倍総理は広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、オバマ氏は所感で、核廃絶を訴えたではないか。国民はこの様子じっとテレビで見つめ、核なき平和に希望を抱いた。

  Among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear and pursue a world without them. We may not realize this goal in my lifetime, but persistent effort can roll back the possibility of catastrophe.(わが国のように核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない。私たちが生きている間にこの目標は達成できないかもしれないが、たゆまぬ努力が大惨事の可能性を小さくする。)

   反対に投じた日本の主張はこうだ。28日、岸田外務大臣が記者会見で語ったコメントは「決議は具体的、実践的な措置を積み重ね、核兵器のない世界を目指すという我が国の基本的立場に合致しない」との理由だった。これを解釈すると、核軍縮を実効的に進めるには、核保有国と非保有国の協力がなければならない。それは、国際社会の総意で進められるべきだと日本側は強く求めたが、受け入れられなかった、とういことを言いたのだろう。これまで、唯一の被ばく国として核兵器を持つ国と持たない国の「橋渡し」をすると日本は繰り返し国際舞台で述べてきたではないか。今こそ日本がその立場を誇示して、「橋渡し」役を果たすべきだろう。

  今回反対したことで、賛成・反対問わず各国から見れば、日本は完全に軸足を核保有国側に移したということになる。安全保障の観点からみても、国際的な信用度という面でも深刻な問題ではではないだろうか。

   確かに、北朝鮮など日本の近隣諸国では核戦力の開発で騒がしい。これが現実の核の脅威であり、アメリカの「核の傘」の重要性は増しているという判断なのだろうが、アメリカやロシアという核兵器保有国と足並みをそろえて反対したのは納得できないと考えるのは私だけだろうか。百歩譲って、日本には棄権という選択肢はなかったのだろうか。あの中国やインドの保有国は棄権しているのだ。唯一の被ばく国という立場をもとにして、国際的に核廃絶のリーダーシップを取るという日本の本来の役割が失われたような気がしてならない。

⇒1日(火)朝・金沢の天気    あめ

★MRJが能登空港に

★MRJが能登空港に

   先日(14日)、能登空港ターミナルビル(輪島市)に会議で出向くと、ビルの3階の展望台が人だかりになっていた。野次馬根性でその人の群れに分け入ると、見えたのが、あの「MRJ」だった=写真=。前日(13日)に予定外で能登空港に急きょ着陸したと空港のスタッフが話していた。スリムでシャープな姿立ちの機体だ。まるで、鳥のハヤブサのような安定感がある機体だと感じた。

   MRJと言えば、半世紀ぶりの国産旅客機として三菱航空機が開発を進めている。これまで5機の試作機が製造されている。能登空港に着陸したのは2号機で、国内での飛行試験を行うため、13日に愛知県の県営名古屋空港を離陸し、日本海上空を経て、同日名古屋空港に戻ることになっていた。では、なぜ能登空港に。

   以下、地元石川のメディアが能登空港管理事務所の説明として着陸の経緯を伝えている。13日午後4時前、三菱航空機から「MRJ2号機に不具合があるため着陸し点検したい」と連絡がった。その15分後の着陸、つまり「緊急着陸」だった。その後、空港では点検作業が行われていて、離陸の予定はまだ立っていないという。着陸の理由について三菱航空機側は「確認したいことがあったため着陸した。飛行試験中なので、トラブルの1つ1つについてコメントはしない」「機体は開発中のため確認すべき事項が多い。今回の着陸は開発計画にも影響しない」と話している、とか。

   確かに、事故による緊急な着陸でもなく、またそれによって定期便の発着が遅れたわけでもないので、いちいち着陸の理由をコメントする必要はないのかもしれない。ただ、MRJはこの8月、1号機がアメリカでの本格的な飛行試験を実施するために出発しようとしたが、機体の不具合で何度か延期されたことは記憶に新しい。素人の想像だが、事故が起きることを極端に恐れているのだろう。航空機メーカーとして、慎重に慎重を重ねている姿勢がそこに見える。
 
  間近に機体を眺めていて、素朴な発露だが、今後MRJが試験飛行を無事に終え、国産ジェットとして世界の空を飛んでほしい、今度は定期便として能登空港に来てほしいと思った。

⇒16日(日)朝・金沢の天気    くもり  

   

★「使い切る」意識

★「使い切る」意識

このところ連日、富山県議会、富山市議会で政務活動費の不正が発覚している。とくに、辞職、辞職願の提出、辞意表明をした市議会議員は自民・民進の2会派で9人にも上る。富山県議会でも2人が不正受給を認めて辞職、辞職願を出している。本来ならローカルニュースなのに全国紙などは社会面や一面で取り上げ、まさに政治スキャンダルと化している。

  富山市議会の政務活動費は議員が調査研究などに使える経費として、市議1人当たり月額15万円が認められている。これは議員報酬とは別で、余った分は市に返還することになっている。地元新聞によると、平成15年度の富山市議会の政務活動費の消化率は100%だったという。前年度の14年度は99%だったと報じられている。

  不正受給を認めた市議9人に共通する不正のポイントはただ一つ、領収書の偽造工作だ。白紙の束を親しい業者にもらい、小切手のように使う。パソコンで領収書を偽造して市政報告会の資料印刷代や茶菓子代などを受給していた。なんとしてでも政務活動費を「使い切る」ことに心血を注いでいたようだ。

  それではチェック体制はどうなっていたのか、ということが気になる。本来議会事務局がチェックするが、難しいのは各会派を通じて所属議員に支給されること。領収書の宛名がたとえば「富山市議会自由民主党」となっていると、第三者からはどの議員が使ったのか分からない。さらに複雑なのは、政務活動費は同じ会派内の議員の間で融通が認められていて、月によってはA議員が20万円、B議員が15万円ということもありうる。さらに、チェックする側の議会事務局は領収書の細かな内容にまで踏み込む立場ではない。たとえば、。「不正ではないか」と気づいても、どんな茶菓子をいくつ買って、誰が食べたかといったことまでチェックできない。あくまでも、領収書に受領印、日付の記載など、体裁が整っているかをチェックするだけなのだ。

  それにしても、そこまでして「使い切る」意識はどこから湧いてくるのだろうか。私個人の推測だが、意外と勤勉・真面目な富山の県民性に由来しているのかもしれないと思っている。政務活動費を余らすのはもったいない、きっちり使うといった生真面目さを感じる。その代わり、不正が指摘されれば、言い訳せずに潔く辞める。「行き過ぎた真面目さ」ではないのか。

⇒20日(火)夜・金沢の天気  あめ 

☆天皇のお気持ち

☆天皇のお気持ち

「憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」

昨日(8日)テレビで放送された天皇のお言葉(ビデオメッセージ)にじっと聞き入った。なるほど、天皇はこう考えておられたのだ、ということを知った思いがした。とくに、天皇が国民との関係や距離をどう考え、自らの象徴天皇の役割を担ってこられたのか、改めて感じ入った。

  一つだけ、聞き慣れないお言葉があった。「天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月にわたって続き・・・」。「殯(もがり)」とは。調べてみると、人の死後に本格的に埋葬するまで、遺体を棺(ひつぎ)に納めて安置し、近親者が儀礼を尽くして幽魂を慰める習俗のことを指す。その目的は死者のよみがえり、あるいは死者の魂を呼び戻すことにあるという。

  これに似た葬送を実際に聞いた。これまで何度か訪ねたことがある、フィリピンのイフガオでの葬送の方法だ。死者を布でくるんで白骨化するまで自宅に置く。家族は死者を身近に置くことで、亡き人をしのぶ。その後、家族で洗骨の儀式を営み、埋葬する。2000年も前からこの地で田んぼを耕すイフガオ族の伝統的な葬儀だったが、さすがに現代では敬遠され、すぐ埋葬するのだという。

  イフガオでの話を聞いていたので、天皇が述べられた「重い殯」の意味合いを察した。2ヵ月続く皇室の伝統的な葬送「殯」は、心に重いのだろう。メディアでは「生前退位」を天皇が示唆されたと報じているが、あえて「重い殯」とお言葉にすることで、こうした皇室の伝統的な葬送の在り様も含めて見直したい、とのお気持ちを述べられたのではないだろうか。

⇒9日(火)夜・金沢の天気  はれ

☆鴨足黄連

☆鴨足黄連

  我が家の鉢植えのカモアシオウレンが小さな花をつけた=写真=。毎年、春一番に咲かせる花だ。漢字表記で鴨足黄連と書く。葉っぱの形状がカモの足のような面白いな形をしている。花は白い梅の花のようなので、「梅花オウレン」とも呼ばれる。もともと、中国の四川省や雲南省の高い標高で分布している植物、と図鑑に書かれている。花が少ないこの季節、ちょっとした心の安らぎになる。

  昨日(22日付)の朝日新聞『天声人語』に目をやると、金沢のことが書かれてあった。以下引用させていただく。「鮮やかな色彩の記憶がある。以前、金沢のひがし茶屋街を歩き、加賀藩時代の面影を残すお茶屋の中を見学した。かつて舞や三弦が披露されただろうお座敷の壁は、紅殻(べんがら)で塗られ、あでやかな赤だった▼「はなれ」と呼ばれる奥の座敷に進んで驚いた。一転して群青色に彩られた空間である。宴の場に似つかわしくない印象も持ったが、引き込まれるような心地よい感覚があった。聞けば前田のお殿様も愛(め)でた色とのこと。赤と青の競演を堪能した…」

  金沢で特徴ある色彩は紅殻と群青だ。『天声人語』では赤と青の2色を、彩色と人々の心と行動の関係性へと文を展開している。

  ふと思った。最近報道されるニュースはグレイばかり。まるで、北陸の冬の空模様だ。丸川環境大臣が「環境の日」(6月5日)を「6月1日」と誤って国会で答弁した、とか。重箱の隅をつつくような話から、IS(イスラミックステイト)がシリアで連続自爆テロ攻撃を強めているとか、ロンドン市長がEU離脱を支持、覚せい剤で清原容疑者を再逮捕など、まるで色彩がないニュースばかりだ。

  なぜだろう。面白いと印象に残る、エッジの効いたニュースが薄いのだ。これは記者のニュースの発掘力が低下しているからなのか、あるいは、世の中がこうしたグレイのニュースを好んでいるのか、はたまた自らのニュースの読み込みが甘いのか。我が家で春一番で咲いたカモアシオウレンを眺めながら、世情をふと思いやった。空を見上げると、金沢はきょうも曇りだ。春はまだ少し先か。

⇒23日(火)朝・金沢の天気   くもり