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★「電波の座」めぐる攻防-上-

★「電波の座」めぐる攻防-上-

   おそらくこの記事は共同通信の抜きネタ(スクープ)なのだろう。今月23日付の各紙で「政府 放送規制を全廃方針」の見出しで、政府は政治的公平などを求めた放送法の条文撤廃に加え、放送局への番組基準策定の義務付けなどの規制をほぼ全廃する方針との報道があった。この見出しとリードを読んで、「いよいよ来たか」と直感した。

   電波割り当てをテレビ局からIOT、AI、ロボット事業者へ「Society5.0」シフト

   本文を読んでいく。NHKを除く民間の放送局に放送規制を全廃する狙いが述べられている。規制はたとえば、一企業による多数のマスメディア集中を排除する第2条、政治的な公平を求めた第4条、番組基準の策定を義務付け、教養・報道・娯楽など番組ジャンルの調和を求めた第5条、番組審議会の設置を義務付けた第7条など多岐にわたる。これらの規制を廃する狙いは、「放送という制度を事実上なくし、インターネット通信の規制と一本化して、ネット動画配信サービスなどと民放テレビ局を同列に扱い、新規参入を促す構えだ」と報じている。記事ではさらに突っ込んで、「放送を電波からネットへ転換させ、空いた電波帯域をオークションで別の事業者に割り当てることも検討するという」と。

   放送法の規制全廃に関して作業を行うのは政府の規制改革推進会議。5月ごろにまとめる答申に方針を反映させて、今年秋の臨時国会に関連法案を提出、2020年以降の施行を目指すとしている。冒頭で述べたように共同通信のスクープなのだが、規制改革推進会議のホームページを丹念に読むとその方向性はすでに示されている。

   昨年(2017年)11月29日、総理大臣官邸で第23回規制改革推進会議=写真、総理官邸HPより=があり、農地制度の見直しなどに関する第2次答申を大田弘子議長から答申を受け取った後、安倍総理は次のように述べている。「Society5.0を実現するためには、電波の有効利用が不可欠です。国民の財産である電波の経済的価値を最大限引き出すため、電波割当ての仕組みや料金体系を抜本的に改革することが必要であります。これらは、いずれも待ったなしの改革です」「構造改革こそアベノミクスの生命線であり、今後も力強く規制改革にチャレンジしていく考えであります。委員の皆様には、引き続き、大胆な規制改革に精力的に取り組んでいただくよう、よろしくお願いいたします」(総理官邸HPより)。

   「Society5.0」はすでに語られているように、IOT、AI、ビッグデータ、ロボットなどの革新技術を最大限に活用することによって、暮らしや社会全体が最適化された社会とされる。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会の次の5番目のステップ「超スマート社会」を表現している。総理の発言をひと言で表現すれば、情報社会でテレビ局に割り当ててきた電波を、超スマート社会の実現のためのIOT、AI、ビッグデータ、ロボットの事業者に割り当てる、ということだ。

   これに対し、現場のテレビ業界は複雑、混乱、不安、可能性などさまざまな思いを抱いていることは想像に難くない。何しろ民放テレビ局には60年余りの歴史があり、「電波の座」をそう簡単に明け渡すわけにはいかないだろう。今月27日のテレビ朝日の定例記者会見で早河洋会長兼CEOは記者から政府の放送事業の見直しの検討について意見を求められ、こう述べている。

   「NHKとの二元体制で戦後の復興期から65年、娯楽や文化といったコンテンツを発信し視聴者にも支持され親しまれてきた。報道機関としても取材制作体制を整備し、大きな設備投資も行って、各系列間で切磋琢磨してきた。特に災害報道、地震や台風、最近では噴火、豪雪など、ライフラインとして公共的な役割を担ってきたという自負もある」「規制を撤廃するという話があるが、目を背けたくなる過激な暴力や性表現が青少年や子供に直接降りかかってしまう。それから外資規制がなくなれば、外国の資本が放送局を設立して、その国の情報戦略を展開することになると社会不安にもなるし、安全保障の問題も発生する。こうしたことに、いずれも視聴者から強い拒否反応を招くのではないかと思う」(テレビ朝日HP)

   要約すれば、「テレビ事業を甘く見るな、安全保障にだって関わることだ、Society5.0とは次元が違う話なのだ」と早川氏が述べているように私には読める。

⇒31日(土)朝・金沢の天気     はれ

☆「7選も最低投票率」「4選も67票差」どう読むか

☆「7選も最低投票率」「4選も67票差」どう読むか

    石川県知事選、そして輪島市長選がきのう11日、投開票が行われ、知事選は現職の谷本正憲氏が7回目の当選、輪島市長選は現職の梶文秋氏が4選を果たした。選挙はなんと言っても数字がすべてを物語る。結論から言う、知事選の投票率は過去最低の39.07%、輪島市長選は67票差の勝利だった。これを数字的にどう読むか。

    全国最多となる7選を果たした谷本氏の当選確実は投票が締め切られた午後8時00分、ほぼ同時にテレビ各社が選挙速報が打った。「石川県知事選 谷本正憲氏の当選確実」と。テレビ各社は投票段階で出口調査(投票所の出口で、投票を済ませた有権者に誰に入れたか記入してもらう)のデータを得て、2位の候補者と10ポイント以上の開きがあることを「基準」に速報テロップを流す。今回の知事選では、現職の対抗馬は無所属の新人で、共産党が推薦する候補者だった。開票結果を見ても、現職谷本氏は28万8531票、対抗馬の候補者は7万2414票、圧勝だった。

    ただ、投票率は過去最低の39.07%だった。とくに、金沢市の投票率は30.68%、隣接の野々市市は30.36%と両市がダントツに低い。金沢市の場合は県議補選もあり、投票の「相乗効果」が期待されたにもかかわらずである。天気も時折晴れ間ものぞき、選挙には決してマイナスではなかった。では、なぜ過去最低の投票率となったのか。現職の多選批判もあったかもしれないが、そんな単純な話でもない。なにしろ、過去最低の投票率でも現職は前回(2014年)より得票数を3300票伸ばしているのだ。

    市町別の投票率を比べてみると、全体に前回より4ポイントほど投票率を落としている市町が目立つが、7ポイント下がったのは金沢市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町だ。この5つの地域には共通項がある。それは、大学や短大、高専が立地している地域だということだ。選挙権を20歳から18歳に引き下げたのが2016年。それ以降、今回は初めての知事選。有権者数も前回に比べ1万7千人増えて95万人になっている。

    以下は憶測だ。投票率を下げた原因は、18歳、19歳の棄権率が高かったからではないか。とくに、県外からの学生たちにとっては現職の名前すらも知らないとう学生が多いのではないだろか。学生層にとって知事選は皮膚感覚として離れているかもしれない。自分がその身だったら果たして投票に行っただろうか。きのう午後、投票場に出かけたが、確かに若者らしき姿を見かけなかった。県選挙管理委員会による今回知事選の年代別投票率のデータ公開が待たれる。

    輪島市長選もデータとして興味深かった。市長選の投票率は69.92%だった。同市の知事選の投票率も70.16%と市長選と知事選の相乗効果が表れている。4選を果たした梶氏は元市役所職員、対抗馬も元市役所職員。同市に住む知人から聞いた市長選の下馬評は梶氏の圧勝だった。「なにしろ市会議員17人のうち12人が現職を担ぎ、対抗馬を支持しているのは1人だよ」と。そう聞かされていたので、テレビの速報テロップも知事選に次いで流れるだろうと予想していた。が、なかなか出ない。それもそのはず、現職8389票、対抗馬の候補者は8322票でわずか67票差。テレビ各社が梶氏当選の速報を打ったのは午後11時40分。わずかな票差のため、テレビ各社は票が確定するまで速報は打てなかったようだ。

    大接戦となった理由は何だったのだろうか。産業廃棄物処分場問題がくすぶっているのかもしれないと考えた。昨年2月19日に同市門前町大釜地区で計画されている産業廃棄物処分場の建設の是非をめぐり、住民投票が行われたが、投票率は42.02%で規定の50%を下回り投票は不成立となった。住民投票をめぐって、建設推進の市議らが「棄権」を呼びかけた経緯があり、当時「投票の自由を妨げる」と一部住民側から問題視する声が出ていた。梶氏はこの不成立の結果を受け、その後粛々と処分場の受け入れを進めている。

    そうした経緯での今回の市長選だった。対抗馬の候補者は「業廃棄物処分場は負の遺産だ」と訴えていた。薄氷の勝利であろうと選挙の勝ち負けははっきりしている。が、産業廃棄物処分場問題の根深さが噴き出した。そんな開票結果ではなかったか。

⇒12日(月)午後・金沢の天気    はれ

★「核ありきの統一」

★「核ありきの統一」

     ニュースを視聴してずっと気になっていたフレーズがあった。先月ドイツで開催された「ミュンヘン安全保障会議」で、河野太郎外務大臣が「北朝鮮は朝鮮半島再統一の野心があり、目的達成のために核兵器を重要な手段と考えている」と発言(2月20日付・朝日新聞デジタル)がそれだ。フレーズを読めば核兵器で韓国を揺さぶって統一を狙う、だ。それだったら、わざわざ平昌での冬季オリンピックに美女軍団を派遣する必要もない。このフレーズの意味がよく理解できなかった。一度気になると、何かの折に繰り返し脳裏をよぎってくる。その回答を得た気分になったのが、今朝届いたニュースレター「大前研一 ニュースの視点」だった。

     同じことを大前氏も感じていたのだと思いながら興味深く本文を読んだ。大前氏の結論を先に述べると、「文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一」と述べている。確かに、韓国も北朝鮮もは様々な場面で「南北統一」ということに触れている。両者の共通狙いについて、大前氏は「北朝鮮と統一した結果、韓国が核保有国になれるからです。韓国が核保有国になることは、米国が強く反対するため、普通には実現することができません。ところが、核を保有したままの北朝鮮と統一すると、まるで裏口入学のような形で韓国は核保有国の仲間入りを果たせるのです」と述べている。

     韓国で核兵器の保有論は一定の支持を得ている。韓国ギャラップの調査(2017年9月5-7日、1004人対象)では韓国の核保有に賛成する意見は60%で、反対は35%だった(2017年9月9日付・産経ニュース電子版)。その一方、アメリカによる対北先制攻撃には59%が反対で、賛成は33%にとどまり、北朝鮮が戦争を仕掛ける可能性は58%が「ない」とし、「ある」(37%)を上回った(同)。

     文大統領は、冬季オリンピックでの外交成果を軸に北朝鮮と交渉を続けるだろう。北朝鮮の非核化を前提としての交渉ではなく、「一国二制度」のような構想を互いに模索するのかもしれない。そうすれば、韓国にとって在韓米軍や米韓軍事演習も不要となる。さらに核保有国として、近隣諸国に睨みを効かせることができる。「いつの間にか韓国は核保有国」のシナリオで描いているのでないだろうか。

     北朝鮮にとってもメリットは大いにあるだろう。国連安保理の強烈な経済制裁がこのまま続けば核兵器の開発どころか国家体制が持たない。アメリカによる「斬首作戦」「鼻血作戦」といった先制パンチも現実味を帯びてきている。かと言って、核兵器開発をストップすればみすみす武装解除をするのと同じだ。むしろ韓国を抱き込んで統一を掲げながら核開発を進める。これは北朝鮮、韓国の目指す方向性として一致する。そんな文脈がニュースレターから読み取れた。

     「核なき統一」は日本もアメリカも国際社会も望むところだ。それが「核ありきの統一」ということが鮮明になった場合、アメリカはどう出るか、日本の外交スタンスもガラリと変わるに違いない。

⇒2日(金)朝・金沢の天気   くもり

☆箸袋から見える知事選

☆箸袋から見える知事選

     きょうから3月。朝から風が吹き荒れている。テレビのニュースによると、台風並みの強い風で、加賀・能登ともに瞬間最大風速は陸上で30㍍だ。落雷や竜巻への注意も必要と呼びかけている。この強風で、JR北陸線では大阪方面の特急サンダーバードと名古屋方面の特急しらさぎを全て運休するようだ。

     この冬の雪も異常だった。金沢市内の自宅周辺でも一時積雪量が150㌢になった。この豪雪で、せっかく雪吊りを施したのに、五葉松の枝が一本折れたほどだった。先日、関西に住む知人から大雪見舞いの電話があった。積雪150㌢の話をすると、知人は「金沢の積雪は最大86㌢と報道されていたよ。金沢でも場所によっては、福井よりすごいところもあったんだね」と驚いた。

     知人には「一里一尺」という言葉で説明した。金沢地方気象台が発表する積雪量は、金沢の海側に近いところにある同気象台での観測、山側にある自宅周辺とでは積雪の数値が異なる。山側へ一里(4㌔)行けば、雪は一尺(30㌢)多くなる、と。そして付け加えた。「3月になると雪が降らないと思ったら大間違い。きついダメ押しがある」と言うと、知人は「私は雪国には住めないな」と苦笑した。ただ、ダメ押しの雪を「名残り雪」と表現すれば、少し文学的にもなる。

     外は「豪雪、のち暴風」なのだが、静かなのが今月11日に投開票の石川県知事選挙だ。先月22日告示され、共産党推薦で元石川県労連議長の女性新人候補(65)と、社民党のほか自民、公明、民進各党の県組織から推薦を受け7選を目指す現職(72)の一騎打ちの構図。ただ、自宅周辺には選挙カーが回って来ていないのか選挙ムードが盛り上がっていない。

     ちょっとした話題はある。動画サイト「ユーチューブ」への投稿で広告収入を得る「ユーチューバー」が石川県知事選の選挙掲示板に自分の顔写真を貼った様子を撮影し投稿していたことがネットで炎上し、公職選挙違反違法や軽犯罪法違反の可能性もあると新聞やテレビでも報道された。この動画はすでに先月26日に削除された。ただ、顔写真は掲示板の候補者ポスターが掲示されていない枠内に貼られていたので、県選挙管理委員会は特定の候補者を妨害するものではないとしている。このユーチューバーは県内に住む19歳の男性で、なんとチャンネル登録者216万人を有するプロだ。

     もう一つ選挙関連ネタを。きのう(28日)、自宅周辺のコンビニ「セブンイレブン」でおにぎりや野菜サラダを買った。箸がついてきた。その箸袋にはなんと「石川県知事選挙 投票日 3月11日」と書いてあった=写真=。選挙権は18歳からある。若者に投票を呼びかけようと選挙管理委員会がアイデアを凝らしたに違いないと想像を膨らませた。

     そこで県の選管に電話で尋ねた。「コンビニで知事選挙の投票日を記した箸がありました。石川県内の全部のコンビニで配布されているのですか」と。すると担当と名乗る職員は「こちら(県選管)でお願いして、箸をつけてもらっているのですが、セブンイレブンさんだけが引き受けてくれました」と。「なぜですか」と再度尋ねる。「ほかのコンビニさんは、つまようじがついていないからダメだとか言われまして…」と。確かに箸袋にはつまようじが入っていなかった。

     メディアでは「多選の是非が主要な争点」と知事選の特集を組んでいるが、対抗馬は共産の新人のみだ。選挙は盛り上がっていない。このままだと投票率は前回44.98%(2014年3月16日)を大きく下回ることは想像に難くない。むしろ「多選で必死なのは選管」、そんな現状が箸袋から見えてきた。

1日(木)朝・金沢の天気  風雨
     

☆身に降りかかる「断水問題」

☆身に降りかかる「断水問題」

           先月30日付のブログ「☆過疎化と断水問題」で、冬場の凍結で能登地方は断水に見舞われた世帯が1万もあり、空き家で水道管が破裂しても対策が取りようがなく、空き家が多い地域では断水が深刻でこの問題はまさに過疎化問題だ、と述べた。きょう2日、まさに断水問題が我が身に降りかかってきた。

    メールで連絡があった。「お世話になっております。かあさんの学校食堂の泊さんに確認をとったところ、2月6日火曜日のお弁当の準備が出来ないと連絡がありました。(穴水町)甲地区は水道管凍結・漏水による断水の復旧が未だに遅れており、完全普及には2~3日かかる見通しです。また復旧してもすぐに飲料水(食用)に使えないため、今回の件はキャンセルをお願いしたいとのことでした。事情をご賢察のうえ、ご了承いただきますようお願いいたします。」

    今月5日と6日に世界農業遺産「能登の里山里海」をテーマに研究者交流のスタデイツアーを実施することになっている。6日の意見交換会の会場となっている穴水町の施設のスタッフに昼食の弁当の手配を依頼した。スタッフが弁当の配達をお願いした主婦グループ「かあさんの学校食堂」は甲(かぶと)地区の廃校になった小学校校舎を活動拠点にしているが、現在断水が続いていて、一両日中に復旧したとしても、すぐには飲料水としては使えない可能性があり、グループから注文をキャンセルさせてほしいと連絡があったと、メール連絡をくれた。

    メールを受け取り即座に電話をかけた。スタッフは自分たちの生活水(食事、飲料など)を確保することが優先されていて、注文を受ける余裕がない状態と。「ほかに弁当を作ってくれる仕出し屋などありませんか」と尋ねたが、状況はどこも似たり寄ったりとのこと。断水問題の深刻さを改めて思い知らされた。

    さらにツアーを開催する5日と6日は、ウエザーニューズ社HPによると、「上空に非常に強い寒気が流れ込み、日本海側では大雪に警戒が必要。4日(日)~6日(火)にかけてが寒気のピーク」と呼び掛けている。断水が長引く可能性もある。だからと言ってツアーを中止するわけにもいかない。関係者と相談し、「6日はコンビニに立ち寄って、参加者(20人)がそれぞれで昼食を買い求めましょう」となった。少々安易な結論なのだが、コストのことも考えてそのような結論に。何とも恨めしい断水問題ではある。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   はれ

☆過疎化と断水問題

☆過疎化と断水問題

    きのう(29日)能登地方のある首長と立ち話をした。「このところの寒さで断水が起きて、給水車で対応に追われているんです」と。寒さで水道管が破裂するということはままあるので、「それは大変ですね」と言葉を添えた。ところが、きょうの新聞各紙では断水は半端ではない。能登の9市町で1万世帯余りに及ぶという。そして、過疎化という根深い問題が絡まっている。

    報道によると、石川県危機対策課がまとめた断水被害は29日午後7時現在、能登の輪島市と志賀町で3千世帯、能登町で2千世帯、中能登町で1500世帯、穴水町で300世帯、羽咋市で120世帯、宝達志水町で100世帯、珠洲市で90世帯で断水状態となった。断水の原因は水道管の凍結、破裂による。冒頭の首長が言うように、これは地域の危機管理の一環であり、各市町は給水車を出すなど対応に追われている。

    断水はこのところの氷点下の冷え込みが特に能登で厳しかったことに加え、指摘されているのは空き家での断水問題だ。能登地区の場合、集落で共同運営している配水池から水道水をひく場合が多い。空き家で水道管が破裂しても気付かれないため、漏水が続き、配水池の供給が追いつかなくなったことで被害が拡大するのだ。水道業者がメンテに回っても、水道管が雪に埋もれていると漏水している箇所が確認できないという問題もあり復旧は簡単ではない。最近の塩化ビニール管は氷の膨張に強いものの、旧型だと破損しやすいことも指摘されている。

    断水被害が起きないようにするために、行政は住民に対して水道の蛇口から少し水を出し放っぱなしにして水道管の凍結や破裂を防ぐよう有線放送などで呼び掛けているが、空き家ではこうした対策が取られないという現状もあり、断水問題はまさに過疎化問題だ。

    生活インフラでもっとも重要な水道水が出ないとなると、学校や保育所も休まざるを得ない。輪島市では29日、3つの小学校と2つの保育所が休校、休所となったと報じられている。他の自治体でも授業打ち切りなどが相次いだ。また、能登半島だけではなく、同じ日本海の新潟県佐渡島でも全2万4千世帯のうち4割に当たる1万世帯で断水が起き、県は陸上自衛隊に災害出動を求め、陸自が給水車をフェリーで運んでいると全国ニュースになっていた。佐渡では小中学校36校のうち26校が休校となった。断水問題は半島の過疎地や離島を直撃している。(※写真は輪島市門前町の海岸集落、27日撮影)

⇒30日(火)午前・金沢の天気    ゆき

    

★キレるシニア、なぜ

★キレるシニア、なぜ

   先日、金沢のドラッグストアに入ると、客が店員にクレームをつけていた。「ここで買ったシャンプーをまた買いに来たのになぜないのか」と。すると店員は「あいにく在庫が切れておりまして」と謝っている。客は「これで2回目や。在庫管理がなっとらん」と大声を上げた。あまりの剣幕だったのでつい後ろを振り向いた。

    昔から「ジシン、カミナリ、カジ、オヤジ」との言葉があるように、親父(おやじ)の怒声は天災のように降りかかる。ドラッグストアで声を張り上げていた客も推定だが70歳半ばだろうか。女性店員は30代に見えた。店員の態度は丁重な感じで、親父が一方的に言いがかりをつけている感じに見えた。在庫管理にクレームをつけるのだったら直接店長に呼べばよいのにと周囲の客は誰もが思っただろう。

   このドラックストアだけではない。数日前にも携帯電話のショップでも親父の怒声を聞いた。「いつまで待たせるんや」と。5人が窓口で並んで待っていたが店員が誰も応対に来ない。店員は忙しそうにしているが、せめて「もう少々お待ちください」との対応があってもいいのに自身もイライラした。すると70代とおぼしき親父が先の怒声を上げた。店にいた客も店員も一斉にこちらを向いた。店長の年配の女性が出てきてその場は収まったが、対応に2時間待ちと言われ、親父はプンプンしながら出て行った。私は翌日に時間予約をして出た。

   このごろキレやすい親父が増えているような気がする。他人の事を言う筋合いではないのだが、親父にとっては現代はストレスがたまる環境なのかもしれない。携帯電話のショップはメールで時間予約ができるようになっている。しかし、親父は携帯に不都合があって、あるいは操作方法を教えてもらおうと店に来たのだろう。それだけでもストレスを感じているのに、待たされ、しかも店の応対も悪いとなるとストレスが怒りに点火する。ドラッグストアにしても、買い求めたい商品がない、しかも同じ言い訳を2度聞かされキレたのだろう。店側の対応も柔軟ではない。

   年配の女性からこんなメールをもらった。「世の中が急速に進み、私はこの情報化の時代に後れを取ってしまい、PCも上手に操作できません。お返事の遅くなった言い訳ですが、歳とともにボォーとしていることが多く、時間ばかりが経っていきます。」と。デジタル化への対応にうまく向き合えないシニア世代にとってこれもストレスだ。

きょう検診を受けに病院に行った。待合室で親父が独り言でブツブツと。「国会のヤジになんで総理が謝らんといかんのや」と。アメリカ軍普天間飛行場のヘリコプター連続事故で、自民党の内閣府副大臣が「それで何人死んだんだ」と野党側にヤジを飛ばしたことが逆に「暴言」と追及され、副大臣を辞したニュース。安倍総理が任命責任を認めたことが親父にとって不満らしい。

   加齢とともにストレスが負債のように積み重なっていく。若い世代のときのように柔軟に対応できなくなるのだろう。まるで空気中の静電気が溜まって落雷となるように。明日のわが身かもしれない。

⇒29日(月)夜・金沢の天気   くもりときどき雪

   

★北の漂着船と落雷鉄塔、近い現場

★北の漂着船と落雷鉄塔、近い現場

    きょう17日朝、全国ニュースになった金沢市内の2ヵ所の現場を歩いた。驚いたことに2つの現場は近く、直線距離にして3㌔ほどだろうか。最初に向かったのは、北朝鮮の漁船が漂着し中から7人の遺体が見つかった同市下安原町の海岸だった。

    車道「しおさいロード」から防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がる。警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、すぐ現物と分かった。シートに包まれて船体にハングル文字の表記があるのかはよく分からなかった。船の中は見えた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表の報道によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。船内には北朝鮮の金日成主席と金正日総書記が並んだバッジや漁網が見つかっている。

    昨年から問題となっている北朝鮮の漂着船を現場で見るのは初めてだが、それにしても古い木造船だ。船の舳先部分にはタイヤのゴムが貼りつけてある。他の船と衝突して損傷個所を繕ったのではないかと想像をたくましくした。全長16㍍、幅3㍍ほど。このような船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、漁をする。しかし、冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでしてイカ漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、生活に困ってのことなのか。

    報道では、昨年1年で海上保安庁が確認した木造船の漂着と漂流は104隻、遺体は35人にも上る。日本海で相次いで人命が失われていることに対し、日本は北朝鮮に対して赤十字などを通じて警告を発しているのだろうか。この実態を世界に問いかけるべきではないのか。

    この北朝鮮の木造船が金沢の漂着しているの発見されたのは今月10日のこと。同じ日に起きた事故が金沢市観音堂町にある石川テレビと北陸放送が共用している送信鉄塔での落雷事故だ。通信障害が10日午後7時ごろから翌日午前10時ごろまで続き、実に15時間も放送が中断した。

    木造船の現場の後、5分余りで送信鉄塔の現場に着いた。たまたま近くの人が雪すかしをしていたので、話しかけると中高年の男性は「あの日は地響きがするひどい雷が何回かあった」と。2局が共用している送信鉄塔(160㍍)の高さ130㍍から140㍍の場所で内部のケーブルとアンテナ一部が焦げていた。鉄塔には2系統の配信設備(ケーブル)があり、1系統に問題が生じても、もう1系統を使って放送ができる仕組みになっているが、今回は落雷によって両方とも使用が不能になった、とテレビ局側は説明している。

     偶然なのだが、同じ日の10日の出来事の現場だ。それにしてもこんなに現場が近いとは思わなかった。おそらく、送信鉄塔(160㍍)に上がり海岸を見渡せば、ブルーシートの木造船が見えるのではないか、と思ったくらいだ。

⇒17日(水)午前・金沢の天気     あめ

☆雪すかしとマイクロプラスチック問題

☆雪すかしとマイクロプラスチック問題

     きょう14日、金沢では久しぶりに青空が広がった。日曜日なので青空の下、のんびりとという訳にはいかない。雪すかし、除雪作業が朝から始まる。「おはようございます。よく積もりましたね」とあいさつをしながら玄関先の道路の雪をスコップでかいて敷地の空きスペースに積み上げていく。冬の金沢では日常的な光景なのだが、最近少しわだかまっていることがある。スコップのことだ。

    実は我が家でもそうなのだが、雪をすくう先端のさじ部がプラスチックなど樹脂製のスコップが増えている。昔は鉄製、ひと昔前はアルミ、そして今は樹脂製とスコップが軽量化しているのだ。が、今では全部が樹脂製かというとそうでもない。氷結した路面の雪を砕く場合は、金属製で先が尖っているケンスコ(剣先スコップ)やカクスコ(角スコップ)でないと使えない。きょう朝、近所のみなさんが使っていたスコップを見ると、10本のうち4本は樹脂製ではなかったかと思う。

     わだかまっていると言ったのは、樹脂製のものはすり減りが速いのだ。路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをかくとなると樹脂の方が摩耗する。さじ部の先端にアルミなど金属を被せたものが売られてはいるが、きょう見た限りではそれはなかった。何が言いたいのかというと、我々の日常の雪すかしが意識しないうちに「マイクロプラスチック汚染」を増長しているのではないかということだ。

     最近問題視されているマイクロプラスチック汚染は、粉々に砕けたプラスチックが海に漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で有害物質が濃縮されていく。最後に人が魚を獲って食べる。

     マイクロプラスチック問題に関してはまったくの素人だ。ただ、路上の雪すかしをすることで知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを製造し、それが側溝を通じて川に流れ、海に出て漂っている。そう考えると、樹脂製のスコップには製造段階でさじ部分の先端に金属を被せるなどの対策が必要なのではないだろうか、と考えてしまう。

⇒14日(日)夜・金沢の天気     はれ

☆電磁パルス、新たな脅威

☆電磁パルス、新たな脅威

  「核実験」、「水爆実験」、そしてついに「電磁パルス」が北朝鮮から出てきた。3日付の北朝鮮の朝鮮中央通信WEB版は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)に搭載する水素爆弾を金正恩朝鮮労働党委員長が兵器研究所を訪れ、視察したと伝えている=写真=。その中で、
「우리의 수소탄은 거대한 살상파괴력을 발휘할뿐아니라 전략적목적에 따라 고공에서 폭발시켜 광대한 지역에 대한 초강력EMP공격까지 가할수 있는 다기능화된 열핵전투부이다.」(我々の水素爆弾は巨大な殺傷破壊力を発揮するだけではなく戦略的目的によって高空で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えることができる多機能化された熱核戦闘部だ.)と戦闘能力を誇っている。ここに出てくる「EMP」、これが電磁パルス(electromagnetic pulse)のことだ。北朝鮮は初めて公式にEMP開発の事実を明らかにした。

   その記事を掲載した同日に「水爆実験に完全成功」と伝えた。北朝鮮はここに来て2つの攻撃兵器を開発したことになる。水爆と電磁パルスだ。電磁パルスは高高度で核爆発させることで生じる電磁波のパルス(衝撃)で、地上にある電子回路を瞬時に発火させたり、広いエリアの電気設備や電子装置を延焼させることができる兵器だ。核爆発で電気系統をことごとく破壊する最悪の兵器とも言われる。

   大規模な停電が長期間続けばその被害は計り知れない。韓国の中央日報は5日付の記事で、北朝鮮がEMP攻撃に関心を持つのには理由について、北朝鮮がICBMを開発する場合、最大の難題は大気圏再進入の技術だが、EMPの場合は高度20㌔以上高いところで爆発することで十分な効果を出すことができるからだと解説している。アメリカでたとえれば、高度400㌔上空での核爆弾を爆発させることでアメリカ全域にEMPによる破壊効果を及ぼす。電気がなければアメリカが築きあげてきた現代文明がまさに破壊される。

   これに対し、日本政府の対応は防衛省がEMP攻撃の研究費を計上している段階。また、経産省が発電所の防護策を、国交省は交通機関などの防護策をこれから検討する段階という。各省庁が縦割りで対策を講じるレベルの話ではないだろう。北の脅威は迫っている。

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