⇒ニュース走査

☆世界を惑わせ、さらに混沌、米朝とブレグジット

☆世界を惑わせ、さらに混沌、米朝とブレグジット

   ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談が終って2週間経つ。会談の物別れは世界を惑わせ、今でもその謎解きにマスメディアが騒がしい。もう一つ、世界を惑わせているのが、ブレグジット(Brexit)ではないだろうか。イギリスのBritainと「出る」のExitの造語だが、EUからの離脱のタイムリミットは「3月29日」と決まっているだけに「合意なき離脱」か「離脱延期」か、世界が成り行きを見守っている。

   識者の方々からいろいろなメールマガジンをいただいている。そのメルマガでも、物別れ首脳会談やブレグジットにまつわるコメントがいろいろあって面白く、勉強にもなる。いくつか紹介したい。日本財団の笹川陽平氏からのメルマガ(3月11日付)。「中国の小話」のコーナーで、「米朝会談決裂の真相」と題してこんな記事が紹介されていた。以下本文を引用する。

   「トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長の第二回の会談は、合意文書の締結も宣言の発表もなく、物別れに終わりました。その理由について諸説があるなか、中国の巷間では、次のような推測が流れました。会談で金委員長は、『我々は強大な新しい朝鮮を作らなければならない』と発言しました。英語に訳せば、『We will build a strong new Korea !』になります。ところが、北朝鮮側の通訳の発音が正確を欠き、トランプ大統領の耳には次のように聞こえました。『We will build a strong nuclear !』  訳すと、『我々は強大な核戦力を作らなければならない』という意味になります。これを聞いた途端、トランプ大統領は机を叩き、会場を後にしました。」

    もちろん「小話」なのでジョークだ。試しに、new Korea を何度か発音を繰り返すとニュークリアに聞こえてくる。嘘か真か読む側が判断に戸惑うほどリアリティさがある話ではある。

    経営コンサルタント、経済評論家として著名な大前研一氏のメルマガ『 大前研一 ニュースの視点 』を愛読している。3月1日付は、ホンダのイギリス工場閉鎖についての論評だった。以下、引用する。「実はホンダの車はあまり欧州では売れていません。ホンダにしては珍しく買収なども仕掛けて、積極的に欧州市場の開拓を試みましたが、英国での生産台数はわずか年間16万台でトップのジャガー・ランドローバーが約44万台、2位の日産もほぼ同じくらいの数字ですから、半分以下の水準です。ホンダが、発表のタイミングをずらして、英国のEU離脱が何かしらの形で落ち着く3月29日以降にしていたら、報じられているほど“衝撃”として受け止められることはなかったでしょう。」

    ホンダがイギリス国工場を2022年までに閉鎖すると発表したニュースは、おそらく誰もがEU離脱による経営の影響を懸念してのホンダの決断と理解しただろう。大前氏は、撤退はあくまでも工場の稼働率低迷がもたらした経営判断であって、離脱の影響ではない、発表のタイミングが悪い、と一刀両断で述べた。

    けさ(13日)のニュースでは、今度は日産が販売不振を理由にことし中にイギリス工場での高級車の生産を停止すると発表した。そして、離脱をめぐり、イギリス議会下院は、離脱条件を定めた協定案を反対多数で再び否決した。与党・保守党の強硬離脱派がEUの関税ルールに縛られる可能性があるとして反対に回った。この迷走状況ではもう内閣は持たないのではないか。(※写真・上はアメリカ「ホワイトハウス」ツイッターから、写真・下はイギリスBBC放送Web版から)

⇒13日(水)朝・金沢の天気    あめ

☆北の動向に敏感な株

☆北の動向に敏感な株

   このところ相次ぐ世界経済の見通しの下方修正、そして中国の2月の輸出額の大幅減少などが報じられ日経平均株価は続落、8日の終値は2万1025円、前日比-430 (-2.0%)、一時2万1000円を割り込んだ。そんな中で防衛関連株として値動きが注目されているのが東証一部の石川製作所(本社・石川県白山市)だ。8日の終値は1655円、前日比+255(+18.2%)だった。同社株で特徴的なのは北朝鮮の動向とリンクしていることだ。

   2017年9月にアメリカのトランプ大統領が国連総会の演説で金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、北が「頭のおかしい老いぼれ」とののしるなど言葉の応酬が過熱した10月にかけては最高値4205円(10月16日)を記録した。平昌オリンピックへの北朝鮮の参加による平和ムードが広がり、徐々に株価は下がり、2018年3月29日に韓国と北朝鮮による南北首脳会談(4月27日)が決定すると1943円に落ち、第1回米朝首脳会談(6月12日)以降は軟調続き、年末には一時1000円を割り込んだ。ことし2月27、28日の第2回米朝首脳会談では初日が1209円、物別れが伝えられると1243円に反転、それ以降は上昇している。

   冒頭で述べた防衛関連株というのは、同社は段ボール印刷機、繊維機械を生産し、追尾型の機雷を製造している。8日に買いが入るきっかけが、北の核・ミサイル拠点「西海衛星発射場」で関連施設の復旧しているとアメリカのシンクタンクや北朝鮮分析サイト「38ノース」が相次いで公表したことだった。38ノースが「North Korea’s Sohae Satellite Launch Facility: Normal Operations May Have Resumed」(北朝鮮の西海衛星発射場:通常の運用が再開される可能性がある)との見出しで公表した7日付の記事=写真=で、予想外だったのはレール式の移送施設やエンジン燃焼実験場の復旧作業が行われたのはことし2月16日から3月2日までに始まった模様だと記載されていることだ。

   この記事に投資家は愕然としただろう。ハノイでの首脳会談の最中に核実験施設の復旧作業が始まっていた可能性も十分にあり、金委員長は初日の会談で核・ミサイル実験を行わないと改めて明言したが、これと矛盾するのだ。2日目の会談で、この情報を事前に得ていたトランプ大統領が覚書を交わす前に、金委員長にこの情報の事実確認をして、明確な返事が得らなかったとしたら、大統領が席を立った理由は理解できる。「君は言うことと、やっていることが違うではないか」と一喝したに違いない。交渉再会の目途が立たなければ、北が核・ミサイル実験を再開する可能性も視野に入ってくる。そこで買いが入った、と読む。

    防衛関連株が次に動くとしたら、今月中に予定にされる、国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の履行状況を調査する報告書が発表されるタイミングだ。核・ミサイル関連施設の動きのほか、問題となっている洋上での荷の積み替え貿易「瀬取り」や仮想通貨を狙ったサイバー攻撃による外貨獲得などの実態が公表されることで、マーケットはどのように反応するのか。

⇒9日(土)夜・金沢の天気    はれ

☆米朝会談、突然席を立ったのは誰か

☆米朝会談、突然席を立ったのは誰か

      米朝首脳会談をニュースを見終えて、印象は「トランプの勝ち」だ。トランプ大統領はきのう(28日)午後2時15分(現地時間)から、ハノイのJWマリオットホテルで開かれた記者会見に臨み、「委員長との対話は建設的だった」「しかし、現時点で合意文書に署名することは適切ではないと考えた」と合意が決裂したことを明言した。金氏が全面的な制裁解除を求めてきたものの、応じなかったと明かした。ポンペオ国務長官は「金氏は準備ができていなかった」「我々が望む成果は結果を引き出せなかった」とフォローした。(写真・上はトランプ大統領のツイッターより)

   トランプ氏の記者会見を受けて、ニューヨーク・タイムズ紙は速報でこう伝えている。President Trump and Kim Jong-un’s summit meeting on the denuclearization of North Korea ended abruptly. Mr. Trump said the U.S. was unwilling to lift all its sanctions without the promise of full denuclearization.(北朝鮮の非核化に関するトランプ大統領と金正恩の首脳会談は突然終わった。トランプ氏は、アメリカは完全な非核化の約束なしにすべての制裁を解除するつもりはないと述べた)

   トランプと金の両氏はこの日午前中、ソフィテル・レジェンド・メトロポールホテルで拡大首脳会談を終えた後、午前11時55分から昼食会を持って午後2時5分に合意文に署名する予定だった。しかし、拡大首脳会談の途中でその後のスケジュールを全面的に中止、それぞれが宿泊先のホテルに戻った。記者会見も当初午後4時から会見の予定だった。

   ニューヨーク・タイムズ紙の速報から察すると、「abruptly(突然)」という単語の意味合いが大きい。では、拡大首脳会談の席上で誰が突然席を立ったのか、席を立つきっかけは何だったのか、それは誰のどのような態度、あるいは発言がきっかけだったのか、などなどである。次の会談の約束も取り付けず、事実上の物別れに終わった会談だが、勝者はトランプ氏だろう。全面的な制裁解除を優先的に求めた金氏は足元を見られた。「完全非核化の進展がなければ、この話はなかったことにしよう」とトランプ氏が勝負に出てた、席を立った。

   ビジネス交渉の中では相手にプレッシャーをかけるために席を立つこともある。先に席を立たれて、次に譲歩の条件を出して席に戻ってもらうよう行動を起こすのは金氏の方である。経済制裁が続いて困るのは金氏なのだ。

   去年2018年4月27日、板門店で開催された南北首脳会談では韓国の文在寅大統領と金氏との間では「完全な非核化」が明記された=写真・下=。さらに6月12日の第1回の米朝首脳会談では、共同声明で「Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む)」の文言を入れている。にもかかわらず、IAEA(国際原子力機関)による査察など非核化へのプロセスはいっこうに見えてこない。

   妥協は一切しないことを、交渉相手に見せつける百戦錬磨のタフニゴシエーター、これがトランプ流なのだろう。ひょっとして、貿易戦争をめぐる中国の対する牽制も意図しているのかもしれない。

⇒1日(金)朝・金沢の天気     くもり

★米朝会談の陰で日韓さらなる亀裂

★米朝会談の陰で日韓さらなる亀裂

  ベトナムでの米朝首脳会談はテレビ、新聞メディアともに派手に報じられている。が、その片隅ではさらなる日本と韓国の亀裂が深まっている。石川県の地元紙などはこの「事件」を大きく報じている。去年12月4日午前3時10分ごろ、島根県の隠岐諸島100㌔の日韓の暫定水域で、石川県漁協所属の中型イカ釣り船が操業中、船を安定させる漁具のロープ「パラシュートアンカー」を海中に放っていたところ、韓国漁船が近づいてきて前方を通過、そのパラシュートアンカーをひっかけ、イカ釣り船は20㍍引きずら、ロープは切れた。イカ釣り船は韓国漁船に呼びかけたが応じなかった。

  日韓の暫定水域は両国の漁船が操業できる水域ではあるが、操業中の船に近づくのは危険な行為で、スクリューにロープが絡まれば双方の船が被害を受ける可能性があった。問題は、呼びかけにもかかわらず、韓国漁船はそのまま去ったことだ。「言語道断」との憤る地元漁業関係者の声を地元紙などは伝えている。

  このロープ事件のほかにも、11月15日には能登半島沖の大和堆で山形県のイカ釣り漁船と韓国漁船が衝突している。その後、11月20日、大和堆付近の操業中の北海道のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、漁船に接近していた「事件」があった。日本の海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入ることで、韓国の警備艇は現場海域を離れた。スルメイカは貴重な漁業資源だ。それを北朝鮮に荒らされ、さらに韓国側は「日本漁船は海域を出ろ」という。

  一連の事件は、竹島は韓国の領土であると言い張り、大和堆は韓国海域であると主張する前触れではないだろうか。そう考えると、これから「海上衝突」状態に本格的に入るとも読める。

   冒頭で「日本と韓国の亀裂」と述べたが、きのう(27日付)の読売新聞2面を読んで、「ここまできたか」と息をのんだ。「韓国大統領『親日を精算』」の記事である。記事内容は、日本の植民地支配に抵抗した3.1独立運動について、「親日を精算し、独立運動に対して礼を尽くす・・」という趣旨のようだ。ただ、この「親日精算」という言葉を文在寅大統領が閣議で語ったことで、さまざまに独り歩きをすることは想像に難くない。日本の漁船のロープを切ることも、「日本漁船は海域を出ろ」と警備艦が指示することも、すべて「親日精算」することとして解釈される。韓国では分かりやすい言葉に違いない。

⇒28日(木)午後・金沢の天気    あめ後くもり

☆次なる天皇の象徴像への問いかけ

☆次なる天皇の象徴像への問いかけ

     即位30年を祝う行事(24日)で天皇が述べられた言葉が印象深かった。天皇は憲法の第一条を常に意識され、この30年を歩んでこられたのだと理解した。第一条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」。「国民統合の象徴」として今何をなすべきなのか、象徴として国民に理解される象徴像(イメージ)について苦心されてきた様子がお言葉から読み取ることができる。お言葉は宮内庁ホームページから引用。

   「平成の30年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちましたが、それはまた、決して平坦な時代ではなく、多くの予想せぬ困難に直面した時代でもありました。」
   「世界は気候変動の周期に入り、我が国も多くの自然災害に襲われ、また高齢化、少子化による人口構造の変化から、過去に経験のない多くの社会現象にも直面しました。」

   明治、大正、昭和の時代は戦争続きだった。平成の世では日本が関与する戦争は起きなかった。しかし、阪神淡路大震災(平成7年・1995年)や東日本大震災(平成23年・2011年)など自然災害のほか、安倍総理が先の衆院解散(平成29年・2017年)で「国難」と位置付けた少子高齢化が社会解題としって重く圧しかかっている。

   天皇皇后は被災地を訪れ、丁寧に被災者を見舞った。避難所を訪れ、膝をついての被災者と対話する姿は被災者に寄り添うお気持ちが伝わり、国民の共感を呼んだ。平成3年(1991)の雲仙・普賢岳(長崎県)の噴火の被災地への見舞いから始まり、その後の災害復興状況の視察を含め37回にも及ぶ(宮内庁HP)。国民はマスメディアを通じて、いつの間にか、この姿が天皇の象徴像、シンボリックなイメージとして認識するようになったのではないだろうか。

   お言葉の中でこう述べられた。「災害の相次いだこの30年を通し、不幸にも被災の地で多くの悲しみに遭遇しながらも、健気に耐え抜いてきた人々、そして被災地の哀しみを我が事とし、様々な形で寄り添い続けてきた全国の人々の姿は、私の在位中の忘れ難い記憶の1つです。」

   しかし、象徴像というのはある意味移ろう。時代は確実に変化する。不変ではない。次の時代にどのような姿が国民の共感を得るのか。天皇が問われた言葉を意味深く感じる。「憲法で定められた象徴としての天皇像を模索する道は果てしなく遠く、これから先、私を継いでいく人たちが、次の時代、更に次の時代と象徴のあるべき姿を求め、先立つこの時代の象徴像を補い続けていってくれることを願っています。」

   そして、象徴像のあるべき姿のヒントをこう述べられている。「これまでの私の全ての仕事は、国の組織の同意と支持のもと、初めて行い得たものであり、私がこれまで果たすべき務めを果たしてこられたのは、その統合の象徴であることに、誇りと喜びを持つことのできるこの国の人々の存在と、過去から今に至る長い年月に、日本人がつくり上げてきた、この国の持つ民度のお陰でした。」

   天皇の仕事、それは「国の組織の同意と支持のもと」「この国の持つ民度」によって務め上げることができる、と。国民を信じ、象徴としての天皇を務め上げることの次世代へのメッセージと読める。

⇒25日(月)午前・金沢の天気     はれ 

★言葉の矜持

★言葉の矜持

      日本は議会制民主主義の国である。しかし、最近の国会でのやり取りをテレビで視聴していて、我が国の民主主義はこれでよいのかと案じてしまう。今月10日の自民党大会で安倍総理がかつての政権交代に触れ「悪夢のような民主党政権・・」と述べたことについて、12日の衆院予算委員会で民主党政権時代を元副総理として担った岡田克也議員(立憲民主会派)が安倍総理に発言の撤回を求めた場面があった。

  岡田氏:「私たちは政権時代に、その前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら、政権運営をやってきた。撤回を求める」
  安倍総理:「私は自民党総裁としてそう考えている。そう考えていることを述べる自由はまさに言論の自由です・・・」
  岡田氏:「もちろん民主党政権時代の反省は我々にあります。しかし、政党政治で頭から相手を否定して議論が成り立つのか・・・」「全否定をするようなレッテル貼りはやめろと言っているのです」
  安倍総理:「全否定するなとおっしゃいますが、たとえば採決のときに安倍政治は許さないと全否定してプラカードを持ったのはどこの党・・・」「みなさん、悪夢ではなかった、それを否定しろとおっしゃるが、ではなぜ民主党っという名前を変えたのですか・・・」

  そもそも「悪夢のような民主党政権」発言は自民党大会で述べられたものだ。それを国会で追及するというのは少々無理があるのではないだろうか。岡田氏はその後に「今の発言はまったく理解できませんよ。取り消しなさい」と命令口調で声を荒げた。この発言をテレビで視聴した国民の多くは「まがりなりにも一国の総理に対して無礼な発言だ」との印象を抱いたのではないだろうか。与野党の議員は国民に選ばれた選良であり、矜持、プライドというものがあるだろう。このような発言が飛び交う議会制民主主義はいつまで持つのか。

       政治家は言葉を発することが職業である。その発言内容が問われる。さらに、言葉の説得力というのは、情熱と知性と論理性が聴き手に刺さり、初めて評価、納得されるものだ。言葉を丁寧に選び、それを発語するチカラは国会の場だけでなく、職場や地域コミュニティ、そして家庭でも求められているのは言うまでもない。現代ほど言葉の矜持が求められている時代はないと思う。

⇒23日(土)夜・金沢の天気     くもり

★トランプの米朝会談は本気か

★トランプの米朝会談は本気か

      アメリカのトランプ大統領は北朝鮮と本気で向き合っているのだろうかと気かかるところだ。大統領が先日(2月5日)に行った一般教書演説(State of the Union Address)の中から北朝鮮関連の演説を読み解いてみたい。

   そもそも一般教書演説は、行政府のトップである大統領が立法府である議会に対して、これまで1年間の国家の状況(State of the Union)を議会に報告し、これからの1年間で取り組む政策の立法化を勧告する場である。なので、一般教書演説で位置づけが今後の在り様を左右する。では、北朝鮮問題をトランプ大統領はどう演説したのか。ホワイトハウスのホームページで掲載されている一般教書演説の全文から以下抜粋。

「As part of a bold new diplomacy, we continue our historic push for peace on the Korean Peninsula.  Our hostages have come home, nuclear testing has stopped, and there has not been a missile launch in more than 15 months.  If I had not been elected President of the United States, we would right now, in my opinion, be in a major war with North Korea. 」(大胆な新たな外交の一環として、朝鮮半島の平和に向けた歴史的な行動を進める。アメリカの人質は帰国し、北朝鮮は核実験を中止し、15ヵ月以上、ミサイルを発射していない。私が大統領に選ばれていなかったら、これは私の意見だが、われわれは北朝鮮と戦争になっていただろう。)
「Much work remains to be done, but my relationship with Kim Jong Un is a good one.  Chairman Kim and I will meet again on February 27th and 28th in Vietnam. 」 (多くの仕事が残されている。しかし、私と金正恩委員長との関係は良好だ。金委員長との2回目の首脳会談は2月27日と28日にベトナムで開く。)

    演説でトランプ大統領の自信あふれている。私が大統領になっていなかったら、北朝鮮と戦争になっていただろうと強調する当たりは、トランプ外交の成果を振りかざしているようにも感じる。最期のフレーズで2月27日と28日にベトナムで米朝首脳会談を開くと明言した。

    では、なぜベトナムでの開催なのか、以下推測だ。おそらく「和平のモデル」をトランプ大統領は金委員長に現地で示したいのではないだろうか。1961年にケネディ大統領が就任して、南ベトナムに肩入れを本格化し、75年のサイゴン陥落まで、アメリカとベトナムは壮絶な戦いを繰り広げた。その後、アメリカはベトナムの経済開放を受けて貿易面、さらに最近では武器輸出など軍事協力も行っている。背景には中国の海洋進出などがある。トランプ大統領とすれば、「かつて戦火を交えたベトナムとはこんなに仲良くやっている。北朝鮮ともうまくやれるよ」と金委員長を説得する場としてベトナムにしたのではないか。(※写真は「ホワイトハウス」のHPより)

⇒11日(祝)朝・金沢の天気   くもり

★「しつけ」と児童虐待

★「しつけ」と児童虐待

   昨年1年間、児童虐待の疑いがあるとして全国の警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもの数が8万人余りになったとニュースになっている。前年比で1万4600人増と22%も増えて過去最多だという。

   千葉県の野田市で小学4年生の女の子が親から虐待を受けて死亡した事件、実に痛ましい。小学校のアンケートで父親からの暴力を訴えていた。児童相談所は、女の子を両親のもとに戻したあとの去年3月下旬以降、一度も家族と連絡を取っていなかったようだ。昨年も東京・目黒区で、5歳の女の子が虐待を受け死亡した事件があった。女の子は「もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからきょうよりもっともっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」と書き残していた。児童相談所は家庭訪問をしたが女児との面会を拒否された。父親は「しつけ」と称して虐待を繰り返していた。 

   この2つの事件を報じるマスメディアの論調は児童相談所(児相)の手落ちを強調する傾向にあるが、警察が児相に通告した虐待を受けた子どもが8万人にも上る状況では児相だけの責任では済まされないだろう。日本では「しつけ」と虐待の線引きがあいまいであるがゆえに虐待が見逃されケースが多いのではないか。児童虐待を単なる家庭の問題としではなく、社会犯罪と明確に位置付ける必要があるだろう。

   アメリカは明確化している。アメリカの在ナッシュビル日本総領事館のホームページに「安全情報」の中の「米国での生活上の注意事項」に掲載されている。日本で当たり前の親子入浴ですからアメリカでは虐待を疑われる。事例が紹介されている。「某日、幼稚園に通う少女が、父親と一緒にお風呂に入るのがいやだと幼稚園の作文に書いた」、すると「幼稚園の先生が、児童虐待(性的暴力)容疑者として父親を州政府の児童保護局に通報し、調査活動が行われた」。また、「某日、乳児をお風呂に入れている写真を近所のドラッグストアで現像に出した」、すると「ドラッグストアが児童に対する虐待容疑で児童保護局に通報し、児童虐待(性的虐待)容疑で調査活動が行われた」。

    日本とアメリカの文化による認識の違いで、日本では許容されることでも、アメリカでは犯罪として扱われる事例だ。入浴のほかにも、言うことを聞かない子どもの頭を人前でたたいたり、買い物をするときに、乳幼児を車に置いて離れたりすることなども、虐待の容疑で親の身柄が拘束されることもある。社会問題化している児童虐待から子どもの命を守るには、児相に捜査機関としての役割を付与することも必要なのではないだろうか。児相に捜査権があれば、「あの家庭ちょっと様子おかしい」と察した近所からの通報も得られるのではないか。これは子どもの命を守る「善意の通報」である。

⇒7日(木)午後・金沢の天気     くもり

☆南海トラフ地震と高知城

☆南海トラフ地震と高知城

   2012年5月に高知を旅行し、山内一豊が築いた高知城を見学した。印象的だったのはしっかりした野面積みの石垣だった=写真=。説明看板を読むと、安土城築城で有名な石垣集団の穴太(あのう)衆が工事に加わっていたという。穴太衆を使って強固な石垣を築こうとした一豊の動機は、戦(いくさ)への備えもさることながら、地震への備えもあったのではないか。

    『秀吉を襲った大地震~地震考古学で戦国史を読む』(寒川旭著、平凡社新書)によると、秀吉の家臣として活躍した一豊は近江長浜城主となり2万石を領した。が、1586年の天正大地震によって城が崩れた。一豊が高知城で没したのは慶長10年9月20日(1605年11月1日)だが、その9ヵ月前の1605年2月3日には南海トラフのプレート境界に起こったM7・9の慶長大地震と津波で、多くの領民が亡くなった。高知城はその時、まだ築城の最中だった。二代目が慶長 16(1611)年に城を完成させた。それ以降、地震が100年から150年ごとに発生しているものの、高知城はなんとか耐えてきた。一豊の2度の被災体験が城造りづくりに活かされたのかもしれない。

   報道によると、政府の中央防災会議の作業部会はきょう(11日)、南海トラフ巨大地震の震源域で前兆と疑われる異常現象が起きた場合の対応方針を巡り、報告書案をまとめた。震源域の半分で地震が起きた場合、被害がない地域の住民も1週間ほど避難する。「起きるかわからない地震に備えた避難」は混乱を引き起こす恐れがあるものの、住民への周知や訓練は不可欠だろう。なにしろ、南海トラフ巨大地震の避難者数は最大950万人と予測されている。

    ことし6月に土木学会が発表した数字を思い起こす。今後30年以内に70-80%の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」がM9クラスの巨大地震と想定すると、経済被害額は最悪の場合、20年間で1410兆円(推計)に達すると。倒壊などによる直接被害は169兆5千億円、それに加え、交通インフラが寸断されて工場などが長期間止まり、国民所得が減少する20年間の損害額1240兆円を盛り込んだ数字だ。

    1410兆円という数字を目にした時は数字が「躍っている」との印象だったが、政府が発表した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(2014年3月28日)に目を通してみる。M9クラスの巨大地震を想定した場合の「減災目標」を「想定される死者数を約33万2千人から今後10年間で概ね3割減少させること、また、物的被害の軽減に関し、想定される建築物の全壊棟数を約250万棟から今後10年間で概ね5割減少させる」と掲げている。いま、南海トラフ巨大地震が起きれば最悪30万人余りの命が失われるのだ。数字の羅列になってしまった。

⇒11日(火)夜・金沢の天気     あめ

★北の違法操業を支援する構図

★北の違法操業を支援する構図

           けさ(22日)のヤフーニュースで「韓国警備艦が日本漁船にEEZ内で操業停止要求」を読んで、韓国の「北朝鮮化」ではないかと訝(いぶか)る。さっそく水産庁のHPで掲載されているプレスリリース(21日付)で事実確認をする。20日午後8時半ごろ、能登半島の西北西約400㌔に位置する、日本の排他的経済水域(EEZ)の大和堆(やまとたい)付近で操業中の日本のイカ釣り漁船(184㌧、北海道根室市所属)に対し、韓国・海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と無線交信をしているのを、水産庁漁業取締船と海上保安庁巡視船が確認した。

    水産庁の漁業取締船は日本の漁船の付近に位置取り、韓国警備艦に対し、日韓漁業協定でも日本漁船が操業可能な水域であり、漁船に対する要求は認められないと無線で申し入れた。その後、韓国の警備艦が漁船に接近したため、海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入った。すると、韓国の警備艇は午後10時50分ごろ現場海域を離れた。以上が水産庁のプレスリリースの概要だ。2時間20分余りの緊迫した雰囲気が伝わってくる。

   今回の韓国の警備艦による日本漁船の退去要求はまさに「ここは我々(韓国)の漁場」であり、出ていけと警告したのと同じだ。これは、北朝鮮が繰り返してきた主張と重なる。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していない上、日本と漁業協定も結んでいない。端的に言えば、北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化して違法操業を繰り返しているのが現状だ。条約の批准国であり、日本と漁業協定も結んでいる韓国がなぜ日本のEEZ内の海域で「日本漁船は出ていけ」とメッセージを発したのだろうか。その意図は一体何だろうか。

   このブログでも何回かEEZ内における北朝鮮の違法操業について述べた。現在でも大和堆での北のイカ漁船によるが違法操業が繰り返され、海上保安庁巡視船は退去警告に応じなかった漁船に放水して退去させている。少々乱暴な言い方かもしれないが、韓国の警備艦による日本漁船への退去要求ならびに、漁船への接近はこうした日本側の措置に対する「警告」ではないか。つまり、これ以上北の漁船に対する取締をするなとのメッセージではないだろうか。

   最近の韓国の動きは不可解だ。10月、済州島での国際観艦式に際して自衛艦隊旗の旭日旗の掲揚に難色を示して物議をかもし、韓国大法院が日本企業に戦時中の朝鮮半島からの出稼ぎ者に対する損害賠償を下し、「国際法違反だ」と日本の反感を煽った。今月は「最終的かつ不可逆的に解決」と確認した日韓合意でつくられた、いわゆる元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を解散した。これから先に見えるのは、日本海の呼称問題、つまり韓国側が主張する東海(トンヘ)の地図上で併記の要求、さらに日本と韓国の漁業協定の棚上げ、あるいは破棄などへの広がりではないだろうか。

⇒22日(木)午前・金沢の天気    あめ