⇒ニュース走査

☆密約を疑う、トランプ氏のやさしい眼差し

☆密約を疑う、トランプ氏のやさしい眼差し

   韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を日本に通告した翌日の今月24日、北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を発射した。このニュースを視て、「やっぱりそうきたか」と予想通りだった。GSOMIAは互換する安全保障上の情報を保護する日韓連携の、まさに土台だった。韓国側の破棄通告を歓迎する、いわば「祝砲」が今回の短距離弾道ミサイルの発射ではなかったか。

        北は国連安全保障理事会の決議(2006年)でいかなる弾道ミサイルも発射を禁じられており、安保理は緊急会合を開いて対応を協議して当然だが、安保理の開催を求める国が出ないのはなぜか。北は先月25日以降だけでも7回立て続けで弾道ミサイルを発射している。この打ち放題は何を意味するのか。

   この背景には、アメリカのトランプ大統領が北の金正恩・朝鮮労働党委員長を擁護するような発言(今月2日のツイッター)をしているからではないかと推測する。先月25日からの相次ぐ弾道ミサイル発射について、トランプ氏は3回も投稿している。「….Chairman Kim does not want to disappoint me with a violation of trust, there is far too much for North Korea to gain – the potential as a Country, under Kim Jong Un’s leadership, is unlimited. Also, there is far too much to lose. I may be wrong, but I believe that……」。3回分を以下要約する。国連決議への違反はあるかもしれないが、キム委員長は私への信頼に反して私を失望させたいとは思っていない。北朝鮮が得るものはとても大きく、同時に失うものもとても大きい。私は間違っているかもしれない。それでも、キム委員長は自国について偉大かつ素晴らしい展望を持っており、その展望を実現させることができるのは私を大統領とするアメリカだけだと確信している。

   トランプ氏の意図はおそらく、アメリカと北朝鮮の双方の将来的な利益を勘案するなら、一連の短距離ミサイル発射を気に留めないと述べているのだろう。なぜ、トランプ氏は金氏をそこまで擁護するのかと勘ぐってしまう。ツイッターの呼びかけをきっかけに急きょ実現した6月30日の両氏の会談=写真・下=は当時あたかも「政治ショー」のように報じられたが、ひょっとして密約があったのではないか、と。

      トランプ氏が金氏に非核化だけを望むのであれば徹底的に国連決議への違反を問うて、経済制裁をすればよいだけの話だ。「under Kim Jong Un’s leadership, is unlimited.」などと持ち上げる必要性はあるのだろうか。ではその密約とは何か。以下は空想だ。トランプ氏は北朝鮮の豊富な地下資源(金、鉄、マグネサイト、無煙炭、銅などの有用鉱物や希少金属など)に目を付け、非核化を条件にアメリカは鉱山開発の投資を積極的に行い、アメリカと北がウインウインの関係になることを約束する、と。これに金氏も「考えさせてください」などと拒否はしなかったのだろう。

   トランプ氏は金氏がその決断をするのをあえてやさしい眼差しで見守っている状態ではないのか。ツイッターの勝手な裏読みだ。

⇒27日(火)夜・金沢の天気     あめ

★寝不足の「甲子園レジェンド」

★寝不足の「甲子園レジェンド」

  夏の甲子園大会、石川代表の星稜は決勝戦(22日)で大阪の履正社に敗れ準優勝となった。仕事の合間にテレビで観戦していた。7回に同点に追いついた時はこれから逆転が気が始まると期待し、9回裏ではサヨナラ勝ちのドラマを勝手に想像していたが、終わってみると「ここまでベストを尽くしてよくやった」と。

  きょう朝刊では地元ローカル紙の見出しが躍っていた=写真=。記事を読んで、目を引いたのは星稜OBで、甲子園レジェンド「5打席連続敬遠」の松井秀喜氏のコメントだった。記事には松井氏が「大会本部を通じてコメントを出した」とあるので、おそらく大会主催者の朝日新聞の記者がニューヨークにいる本人にインタビューしたものを共有したのだと察する。長いコメントだが全文を引用する。
                  ◇
  「結果は残念でしたね。見ていましたよ。決勝戦だけではなくて、インターネットで全試合見てました。でも、仕方がないです。勝者と敗者が必ず出てしまうのが野球です。履正社とお互いに精いっぱい戦って、負けたわけですから。決勝戦も非常にいい試合でした。7回の同点劇の攻撃なんか、素晴らしかった。

   奥川君を中心とした、まとまったチームに見えました。守備も良かったし、打線は苦しんでいましたが、智弁和歌山戦以降、爆発しましたね。今までの星稜だったら、智弁和歌山に負けて終わり。甲子園での死闘は必ず敗者になった。あの試合に勝てたことは、今までの星稜の歴史を変えてくれたと思います。令和元年、101回目の甲子園で、何か新しい歴史が始まる感じがしました。

   林監督については、選抜大会以降、彼も大変だったと思う。(謹慎の)2カ月間、野球を離れて、彼も自問自答し、新たな出発をしてここまで来られたことは、素晴らしいですし大きな財産になったと思います。でも、ここで優勝できないのが、星稜。母校のそういうところも大好きです。何か新たな宿題が残った感じですね。また、新たなチャレンジをして全国制覇を狙ってもらいたいですね。

   ただ目標は全国制覇かもしれませんが、星稜高校野球部のモットーは、あくまでも、野球を通しての人間形成です。それが校訓である『社会に役立つ人間の育成』につながっていくと考えています。

   後輩たちのプレーにたくさん感動させてもらいました。林監督はじめ選手の皆さん、本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました」
                   ◇
   決勝戦は午後2時01分に始まって試合終了は同4時10分だった。閉会式は同4時27分からだった。松井氏がNYでネット動画をリアルタイムで観戦していたとすると、サマータイムの時差で13時間なので、現地22日午前1時01分から3時10分まで視聴したことになる。朝日新聞の取材はそれから少なくとも30分はかかっただろう。インタビューに応じる松井氏の写真は朝日新聞にも掲載されていないので、おそらく電話でのインタビューだったと想像する。

   17日3回戦の智弁和歌山戦も観戦したとコメントしているので、当然ながら18日準々決勝の仙台育英戦、20日準決勝の中京院中京戦も観戦しただろう。智弁和歌山戦は午前の試合だったが、以降の3試合は午後だったので、NYでは深夜から未明の時間。伝説的人物、松井氏も45歳、後輩たちの活躍を見守るために寝不足が続いたのではないだろうか。

⇒23日(金)夜・金沢の天気     くもり

★夏の甲子園、場外論戦

★夏の甲子園、場外論戦

  夏の甲子園があす22日、決勝(星稜-履正社)だというのに、野球ファンの間でいまだに燻り続けているのが、岩手大会決勝戦で、163㌔の右腕、大船渡高校・佐々木朗希投手の登板回避問題だ。甲子園のマウンドというヒノキ舞台に立たなかったにもかかわらず、その是非はいまでも議論を巻き起こしている。佐々木選手は、星稜の奥川恭伸投手と並んでこの夏に注目された選手の一人かもしれない。

   金沢大学の学生で自ら高校時代にピッチャーだったという学生はこう述べている。夏の大会の厚さは疲労の蓄積のほかの時期に比べ格段に大きい。にもかかわらず、トーナメントが進むにつれて連戦が増えてきてしまう。これを解消するには日程の見直しが必要だ。多くの地区では7月から地方大会が始まるが、これを前倒しして6月から始めるのはどうだろう。梅雨と重なり雨天順延も多くなるかもしれないが。投手の故障を防ぐために、一部で球数制限というアイデアもあるが、これは投手の複数抱える強豪チームが有利になるので賛成ではない。

    元マスメディアの記者だった知人の意見。高校野球を主催する春のセンバツの毎日新聞、夏の甲子園の朝日新聞はそれぞれ、この問題をどう考えているのか見解を聞きたい。NHKも含めて。報道サイドからの問題提起が聞こえてこないのは不思議だ。このままだと、社内で「タブー」となっているのではないかと疑ってしまう。

   高校時代からの知人の話。マスコミは佐々木投手の160㌔を誇張しているが、これが原因ではないか。試合にどうしたら勝つことができるかが高校野球の本題であって、投げることが本題ではない。マスコミが騒ぐと、ファンもその気になって160㌔を期待する。すると投手本人には強烈なプレッシャーになる。この一件は、プレッシャー問題ではないのか。

   もう一つ、大学の研究者(スポーツ論)の話。「勝負は勝たなきゃダメ。ケガをするのは選手の宿命」とテレビで述べていた野球解説者がいたが、自分たちの経験値こそ正しいとか、科学的根拠のない精神論をかざしてのコメントは間違い。精神を鍛えることと、肉体を損ねることは別の話だ。大船渡の監督の決断は総合的な判断だと思うので評価する。

⇒21日(水)朝・金沢の天気     くもり

☆ファミリーヒストリー トランプ氏の後悔

☆ファミリーヒストリー トランプ氏の後悔

   それにしてもショッキングな見出しだ。「Trump pressured his alcoholic brother about his career. Now he says he has regrets.」。直訳すれば、「トランプ氏はアルコール中毒の兄弟に仕事について圧力をかけた。今彼はそれを後悔していると言う」となるだろうか。きのう(12日付)に続き、すし屋での話である。アメリカのトランプ大統領はアルコールを飲まないというのは知られたことだが、飲めないのか、飲まないのかの話になって、隣の客が「訳ありで飲まないらしい。先日(9日付)NHKのニュースでやっていた」と。帰宅して、NHKニュースWeb版をたどると確かにあった。ネタもとがアメリカのワシントン・ポスト紙とあったので、さらに同紙のWeb版をたどって記事を見つけた=写真=。 

    この記事を読み込んでいく。トランプ氏本人やファミリーに詳しい人物へのインタビューをまとめて記事は構成されている。トランプ氏はアメリカで深刻な問題となっている薬物依存症に触れて、自分の兄もアルコール依存症だったとすでに言及していた。ワシントン・ポスト紙はさらに突っ込んで、なぜ兄が依存症になったのかを取材したのだ。

    記事にはその核心部分として、トランプ氏本人へのインタビューが掲載されている。「“I do regret having put pressure on him,” Trump said. Running the family business “was just something he was never going to want” to do. “It was just not his thing. . . . I think the mistake that we made was we assumed that everybody would like it. That would be the biggest mistake. . . . There was sort of a double pressure put on him” by his brother and his father. 」

    前後の記事と合わせて要約する。トランプ氏と父が家業である不動産ビジネスに8歳上の兄フレッドに参加するようにとプレッシャーをかけてた。兄はパイロットになる希望を抱いて航空会社でトレーニングを受けていた。しかし、トランプ氏と父は「時間のムダだ」と反対し、繰り返し不動産業に入るようにプレッシャーをかけ続けた。このころから兄のアルコール依存症はひどくなり、航空会社を辞めざるを得なくなった。その後、兄は不動産ビジネスに参画したものの、依存症の悪化が原因で1981年に亡くなった。42歳だった。トランプ氏は兄のアルコール依存症を悪化させたのは自分だと後悔している。兄のこの一件があり、トランプ氏自身は酒を飲まないと決めた。

    記事は最後をこう締めくくっている。「“I guess you could say now I’m the chief of trying to solve it,” Trump said. “I don’t know that I’d be working, devoting the kind of time and energy and even the money we are allocating to it. . . . I don’t know that I’d be doing that had I not had the experience with Fred.” 」。トランプ氏はアメリカにおける薬物依存症問題にすべてを捧げる決意をしている。兄とのこうした経験があるからだ、と。

⇒13日(火)朝・金沢の天気    はれ

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

  全国知事会が先月23、24日の両日、富山市で開催され「地方創生・富山宣言」が採択された。これを読むと、日本の地域課題が浮かび上がる。宣言では「今日の我が国は、他の先進国に例をみないスピードで進行する少子高齢化・人口減少により、離島や中山間地域の中には今後の存続が危機的な状況にある地域が増加しており、地域のあり方が改めて問われている。」と指摘。また、東京一極集中について、「過度な首都東京への一極集中は、出生率の低下、災害のリスク管理などの問題を生じさせるとともに、地方の担い手不足を招くこととなる。」と率直に記されている。

  全国知事会を報じたローカル紙を読むと、この東京一極集中について議論の応酬があったようだ。初日の23日、地方税財源の確保に関する国への提言案をめぐって、「地方創生の推進や東京一極集中の是正により、東京から地方 への人・モノ・金の流れを促進することで・・」との表現に対し、小池東京都知事は「国内で限られたパイを奪い合っても日本全体のためにはならない」「疑問を大きく感じる」と述べ、この部分の削除を要求した。これに対し、提言案を作成した石井富山県知事は「地方はどんどん人が減る一方で、東京にあらゆるものが集まり災害リスクなど過密の弊害が起きている」と是正措置に理解を求めた。小池知事はこの後、公務を理由に途中退席したため少々後味の悪さが残った。

  東京一極集中をめぐっては、昨年2018年度の全国知事会議で大都市に集中する地方法人税の偏在是正を求める提言を採択し、今年度の税制改正で東京都から地方自治体に計9000億円が再配分されている。小池知事とすれば、これ以上東京都を悪者扱いにしないでほしいとの思いがあったことは想像に難くない。結局、全国知事会では小池知事の主張を考慮し、「東京一極集中の是正」の文言ではなく、地方創生の取り組みをより強力に加速化させるという表現でこの件は決着した。

  1週間後の8月1日、全国知事会として自民党税制調査会に要望書を手渡した。その中で、「(2)地方創生・人口減少対策のための財源確保」として。以下2点を要望している。「まち・ひと・しごと創生事業費」(1兆円)を拡充・継続し、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源を十分に確保すべき。「地方創生推進交付金」および「地方創生拠点整備交付金」については、拡充・継続を図るべきである。また、地方創生の更なる深化や取 組みの全国展開に向け、地方の実情を踏まえた、より弾力的で柔軟な 運用を図るべき。

  さらに要望書の中で目を引いたのは、「(3)地方における5G・ICTインフラ整備への財政的支援等」である。以下要望している。第2期「まち・ひ と・しごと創生総合戦略」において、5Gをはじ めとする未来技術の利活用を、来年度から次のステージを迎える地方創生の重要な柱の一つとして位置付け、併せて具体的な支援策を講ずるべき。

  全国知事会が「5G」(第5世代移動通信システム)について、これだけ明確に政権与党に働きかけていることは初めて知った。移動通信のトラフィック量は2010年と比較して千倍以上に増大するとされる5Gを地方創生の重要な柱として打ち出している。東京と地方の税金をめぐる分捕り合戦を5Gに絡めたところが面白い。(※写真は全国知事会ホームページより)

⇒11日(日)朝・金沢の天気     はれ

☆「ディール」という病(やまい)

☆「ディール」という病(やまい)

   これもディール(deal)なのだろうか。北朝鮮が25日に発射したミサイルについて、アメリカのトランプ大統領は26日、ホワイトハウスで記者団に対し「短距離ミサイルで、どこにでもある普通のもので、全く心配していない」と述べたと報じられている。アメリカとしては今回のミサイル発射を全く問題にしない、と。いくら外交的なディールであるとは言え、ここまで言い切れるのだろうか。

   確かに、北朝鮮の「朝鮮中央通信」ホームページ(26日付)の新着情報を見ても、ミサイル発射の理由を「南朝鮮地域に先端攻撃兵器を持ち込んで軍事演習を強行しようとし熱を上げている南朝鮮軍部好戦勢力に厳重な警告を発するため」と述べ、韓国への警告だと発している。アメリカを牽制する言葉はどこにもない。ホワイト・ハウスではここを分析して、トランプ氏がミサイルの発射を問題視しない姿勢を示したのだろう。6月30日にトランプ氏と北朝鮮の金正恩党委員長が南北軍事境界線がある板門店で会談したばかり。米朝首脳会談で合意した非核化の進め方を話し合う実務者協議に応じるよう、北に促す狙いがアメリカ側にあるのかもしれない。

   一方で強烈な言葉でディールを発している。トランプ氏はツイッター=写真=で「The WTO is BROKEN when the world’s RICHEST countries claim to be developing countries to avoid WTO rules and get special treatment. NO more!!! 」(世界の最も裕福な国がWTO=世界貿易機関の規則を避け、途上国として特別な扱いを受けている、WTOは壊れている。もういやだ!!!」と。世界2位の経済大国に成長した中国がいまだに発展途上国として扱われ、貿易上で優遇されているのはおかしいと不満をWTOにぶつけた。もちろん、これは中国に向けた言葉だろう。

    途上国を理由に中国は関税や国内企業への補助金などで他のWTO加盟国より緩いルールが適用されているとアメリカは以前から指摘していた。WTOに対して中国を含む新興国の貿易ルールを厳しく監視する改革案を提出しているが、中国は反発している。トランプ氏とすれば、中国との貿易摩擦が長期化しており、貿易ルールをつくるWTOをあえて巻き込む意図があるのかもしれない。

    トランプ氏は別のツイッター(26日付)で「マクロン大統領の愚かな行為に対して大きな対抗措置を公表する予定だ」と書き込んでいる。フランスはアメリカのIT大手企業にした独自のデジタル課税をする方針をしてしており、フランスで来月開かれるG7サミット(主要7か国首脳会議)での交渉に「宣戦布告」をしている。

    緩く甘く、ときには激しく罵倒する。外交には必要なことかもしれないが、ディールという病(やまい)のようにも思えてくる。

⇒27日(土)夜・金沢の天気    くもり

★「兵器開発」という病(やまい)

★「兵器開発」という病(やまい)

   けさ(26日)北朝鮮の「朝鮮中央通信」ホームページ=写真=の新着情報をチェックしてこんなことを思った。「これは病(やまい)ではないのか」と。記事は「경애하는 최고령도자 김정은동지께서 신형전술유도무기 위력시위사격을 조직지도하시였다」(敬愛する最高指導者、金正恩同志が新型戦術誘導兵器の威力デモ射撃を組織指導した)との見出しで、きのう25日早朝に、短距離ミサイルを2発発射したのは、金正恩朝鮮労働党委員長が立ち合いで、「新型戦術誘導兵器」の威嚇デモ発射を行ったと述べている。

   ここから読めるのは「新型戦術誘導兵器」を開発しているということだ。武力というのは一度手を染め始めると、性能の向上を求めて開発意欲が止まらない。それに示す根拠の一つとして、記事には「新型戦術誘導兵器」は低空で飛行し、その威力を直接確認することができたことで金氏は満足した、と記載されている点だ。党委員長という独裁的に立場にある人物が開設セクションに性能の向上を具体的に指示し、その成果を現地で自ら確認したということだ。ここが兵器開発という病(やまい)に陥っているのではないかと憶測した次第だ。

   朝鮮中央通信の記事にはもう一つ、今回の発射の意義を記載している箇所がある。「경애하는 최고령도자동지께서는 우리의 거듭되는 경고에도 불구하고 남조선지역에 첨단공격형무기들을 반입하고 군사연습을 강행하려고 열을 올리고있는 남조선군부호전세력들에게 엄중한 경고를 보내기 위한 무력시위의 일환으로 신형전술유도무기사격을 조직하시고 직접 지도하시였다.」(敬愛する最高指導者同志は私たちの度重なる警告にもかかわらず、南朝鮮地域に先端攻撃兵器を持ち込んで軍事演習を強行しようとし熱を上げている南朝鮮軍部好戦勢力に厳重な警告を発するための武力デモの一環として、新型戦術誘導兵器射撃を組織し直接指導した)。

   つまり、8月にも予定される米朝合同軍事訓練に対して、韓国に警告を発するための武力デモだと強調している点だ。とくに韓国が「先端攻撃兵器」を持ち込み、軍事演習を強行することに対して、これは厳重な警告だと述べている。アメリカに対する直接的な記述は見当たらないが、この先端攻撃兵器という軍事情報を北側がどこで知り得たのか、あるいは単なる「カマかけ」なのか、気になるところだ。

⇒26日(金)朝・金沢の天気     はれ

☆ミサイルと違法操業、不漁の三重不安

☆ミサイルと違法操業、不漁の三重不安

       きょう25日午前5時34分と57分に北朝鮮が日本海に向けて2発の短距離ミサイルを発射したとメディア各社が報じている。6月30日にアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩党委員長が南北軍事境界線がある板門店で会談したばかりではないか。北は誰に向けて、なぜ威嚇的な行為に出ているのか。トランプ氏のツイッターをチェックしたが、まだコメントを記載していない(午後5時10分現在)。

   報道によると、2発はいずれも短距離ミサイルで、高度50㌔に達し、少なくとも430㌔を飛行して日本海に落下したと推定される。北朝鮮は5月4日と9日にも日本海に向けミサイルを発射している。なぜ再発射なのか。トランプ氏が「2、3週間以内」としていた非核化に向けた実務協議が実施されないことに対しての開催要求なのか。あるいは、アメリカと韓国が8月に予定する合同軍事演習に対する中止要求なのか。

   北の発射に関して別の見方もあるようだ。報道各社が北朝鮮国営メディアの引用として報じているのは、今月23日に金氏が潜水艦を視察する様子を掲載していて、これが潜水艦発射弾道ミサイルを搭載するために建造された新型ではないか、ということだ。独自に国防力強化にひた走っている動きの一環ともとれる。

   こうした一連のニュースに不安を募らせているのは日本海で操業する日本の漁業関係者ではないだろう。6月からスルメイカ漁が始まりイカ釣り漁船が日本海で操業している。特に能登半島沖の大和堆(やまとたい)は好漁場とされ、周辺海域の日本の排他的経済水域(EEZ)には北朝鮮のイカ網漁船が違法操業を行っている。海上保安庁がきのう24日の会見で発表した数字によると、5月下旬以降で北の漁船による違法操業は625隻に上り退去警告を発したという。うち、放水による強制措置は122隻だった。 

   ただ、漁業関係者の間では、ことしのイカ漁は全体的に不漁なのだそうだ。北海道沖の武蔵堆(むさしたい)と行き来しながらスルメイカを追いかけている状態という。ミサイルと違法操業、そして不漁の三重の不安が漁業関係者を困惑させているのだ。

⇒25日(木)夕・金沢の天気     はれ時々くもり

★参院選、異色な戦い

★参院選、異色な戦い

  今回の参院選は異色だった。「NHKから国民を守る党」の代表の立花孝志氏 =元NHK職員=が初当選を果たした。報道陣の取材に対して、「歴史が変わる瞬間だ」と語っていたのが印象的だった。シングルイシューで初の国政進出ではないだろうか。

  NHKから国民を守る党は37人が選挙区選挙に立候補し、比例代表(定員50)にも4人が出馬していた。受信料を支払った人だけが視聴できるスクランブル放送化や受信料を払わない人を応援・サポートするとアピールしている政治団体だが、シングルイシューだからといって侮れない。先の東京都区議選(投開票4月21日)で17人が当選するなど、4月の統一地方選挙では立候補者47人のうち26人を当選させている。同党の地方議員は総勢39人だ。単一論点を掲げる政党がこれほど議席を獲得するのは異例だろう。

  参院選の戦いぶりは奇妙だった。ネット選挙を活かして、フォロワーが多数いるユーチューバーらを擁立しての戦いだった。NHKで比例代表の政見放送(7月10日午前)をチェックしたが、立花氏はNHK職員のわいせつ行為での逮捕など相次いでいると批判していた。他の3候補は「NHKをぶっ壊す」とだけ発言する男性や、寸劇を繰り広げた女性もいた。

     立憲民主の比例代表で初当選した石川大我氏はLGBTの支援を続けてきた。自らもLGBT当事者として、差別解消法案や婚姻平等法案の成立を目指す。もう一人、この候補者は落選したのだが、ぜひ喜びの歌声を聞きたかった。石川選挙区で、国民民主の新人として選挙戦を戦った田辺徹氏はドイツ在住歴20年の元オペラ歌手だ。選挙期間中は県内を回り、安倍政権の経済政策「アベノミクス」から家計第一の「ヒトノミクス」への政策転換を説いた。10月に予定される消費税増税の阻止も訴えたが、自民の現職には及ばなかった。午後8時にテレビの速報で相手候補の当確のニュースが流れ、「安倍政権の恐怖政治に民意がつぶされた」と報道陣のインタビューに悔しそうに答えていた。

      ところで、日本の参院選を海外メディアはどう伝えているのだろうか。アメリカのウオール・ストリート・ジャーナル紙は見出しで「Shinzo Abe Is Set to Become Japan’s Longest-Serving Prime Minister In elections for the upper house of parliament, Japan’s ruling coalition maintains its majority」(安倍晋三氏が日本最長の首相に就任 参院選では日本の与党連合が大多数を維持)と淡々と伝えているが、選挙後に関税の引き下げを求めているトランプ大統領との難しい交渉が待ち受けていると報じている。安倍総理も勝利の喜びにうかうかとしてはおられない。

⇒22日(月)午後・金沢の天気   はれ

★懸念する日本海での日韓衝突

★懸念する日本海での日韓衝突

   日本政府による韓国への半導体材料の輸出管理の優遇、いわゆる「ホワイト国」の解除をめぐって、韓国がアメリカ詣を続けている。今月10日には韓国の康京和外交部長官がアメリカのポンペオ国務長官と電話で会談して、日本の今回の措置に対する不満を述べたと韓国メディアが報じている。日本の輸出管理の厳格化措置が日米韓の安保上での連帯を弱めるだけでなく、アメリカが最優先事項としている北朝鮮の核兵器完全破棄の政策に支障になる、と。

   直接向き合わず、他国を経由しての批判を「告げ口外交」という。2013年に韓国の朴槿恵大統領が就任して行った外交が、日本と韓国の歴史問題に関することを、第三国に対して日本への悪口を言い触らして回ったことで、「韓国の告げ口外交」と呼ばれた。これは朴槿恵独自の外交かと思っていたが、どうやら韓国の「お家芸」のようだ。で、トランプ政権は韓国の告げ口外交に同情して、日本側に改善を求めてくるだろうか。

   これまでの韓国による自衛隊機への火器管制レーダー照射の問題、慰安婦財団の一方的な解散、戦時中における朝鮮半島出身の労働者問題をめぐる日韓請求権協定の反古など、外交問題を起こしてきたのは韓国側であることを実によく知っているのはアメリカ側だろう。「安全保障で信頼関係を保つのが難しい国だ」と。今後、韓国が徹底抗戦の姿勢を崩さず、日本も一歩も引かなければ日韓関係の在り様は異次元レベルの展開になるかもしれない。

   日本海側に住む一人として今後懸念するのは漁場のことだ。昨年11月20日、操業中の日本のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、漁船を威嚇するという事件があった。水産庁のHPで掲載されているプレスリリースを元に少し詳しく述べる。同日午後8時半ごろ、能登半島の西北西約400㌔に位置する、日本の排他的経済水域(EEZ)の大和堆(やまとたい)付近で操業中の日本のイカ釣り漁船(184㌧、北海道根室市所属)に対し、韓国・海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と無線交信をしているのを、水産庁漁業取締船と海上保安庁巡視船が確認した。

    水産庁の漁業取締船は日本の漁船の付近に位置取り、韓国警備艦に対し、日韓漁業協定でも日本漁船が操業可能な水域であり、漁船に対する要求は認められないと無線で申し入れた。その後、韓国の警備艦が漁船に接近し威嚇したため、海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入った。すると、韓国の警備艇は午後10時50分ごろ現場海域を離れた。

    スルメイカは貴重な漁業資源だ。それを北朝鮮に荒らされ、さらに「日本漁船は海域を出ろ」という韓国。その前の昨年8月にも韓国の海洋調査船が、島根県沖の竹島の領海に侵入した。日本の同意を得ずに海洋調査を実施したとして韓国に2度抗議したが、韓国は領有権があるとして抗議をはねつけている。同様のケースが今後続発するのではないか。日韓は歴史の転換点に差しかかっている。

⇒17日(水)夜・金沢の天気     くもり