⇒ニュース走査

☆北、きょうもミサイル発射

☆北、きょうもミサイル発射

   きょう(9日)午後5時ごろ、メディアのニュース速報が流れた。「午後4時30分ごろ、北朝鮮が飛翔体を日本海に発射した」。夕方のニュース番組では、韓国軍合同参謀本部は短距離ミサイルと推定される飛翔体を午後4時29分と同49分、北西部の亀城(クソン)付近から1発ずつ計2発を発射、それぞれ420㌔と270㌔飛行して日本海に落下したと発表したと伝えた。

    世界のメディアも速報で伝えている。イギリス公共放送「BBC」Web版は「North Korea fires two short-range missiles, South says(北朝鮮が2発の短距離ミサイルを放ったと、韓国発表)」と見出しで、金正恩朝鮮労働党委員長が双眼鏡を手にしている写真とともに掲載した。北は今月4日午前にも東部の元山(ウォンサン)から日本海に向けて飛翔体を数発を発射している。折しも、4日のミサイル発射をめぐってきょう日本、アメリカ、韓国の3ヵ国の防衛当局による実務者協議がソウルで開かれていた。きょうのミサイル発射はそのタイミングを狙って挑発的したのではないかとも受け取れる。

    もう一つ、タイミングが重なった。韓国の文在寅大統領は就任2年を翌日に控えたきょう夜、韓国の公共放送局「KBS」の特集対談番組に生出演した。その様子をKBSのラジオニュースWeb版が伝えている。「President Moon Urges N. Korea to Stop Raising Tensions(文大統領は北に対し、緊張の高まりを止めるよう要請した)」との見出しで、夕方に発射された飛翔体について、文氏は「短距離ミサイルと推定している」「短距離だとしても、弾道ミサイルなら国連安保理決議に違反する可能性もある」「このような行為が繰り返されれば、対話と交渉の局面を難しくする」と述べたと伝えている。

   特集対談番組は以前から組まれていた。その番組は生放送でのインタビューだった。このWeb版ニュースを読む限り、文氏の発言はもう北をかばいきれないと判断しているようにも思える。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    はれ

★「10連休明け」の風景

★「10連休明け」の風景

  長いと言えば長い、しかし、あっという間に明けたような気もする。10連休明けのきょう(7日)の風景は。

  日常の風景。朝から子どもたちの騒がしい声が聞こえた。我が家の前は通学路になっていて、登校の児童たち=写真・上=が交通巡視員に向かって大きな声で「おはようございます」と元気がいい。10連休の金沢市内はどこも観光客であふれていたが、ようやく日常が戻った感じだ。JR西日本金沢支社の発表によると、10連休中の北陸新幹線の利用者数は41万2000人で、昨年の同じ時期と比べて8万4000人増え、兼六園も入園者数が19万人となり昨年に比べ6万5000人増えた。金沢21世紀美術館の入館者数も20万人超え、1日平均2万人は過去最高だった。

  職場の風景。10連休明けの身近な風景はクールビズだった。令和になって初めての業務。職場でも、ネクタイを外した軽装が目立った。ただ、きょうの日中の最高気温は金沢は17度で、暑いという感じではなかったので上着をはおっている姿が多かった。

  マーケットの風景。アメリカのトランプ大統領が5日のツイッターで、中国からの輸入品2000億㌦分に上乗せした10%の関税を今週の金曜日(10日)から25%に引き上げると表明した。アメリカの通商代表部(USTR)のライトハイザー代表も6日、貿易交渉で中国側が構造改革の約束を撤回したこと理由に、関税の引き上げをあす8日に正式発表すると表明した。中国側との交渉は続けるとしているものの重大局面に。連休明け最初の取引となった7日の日経平均株価は大幅に下落、335円安い2万1923円だった。

  値を上げた株もある。北朝鮮は4日、日本海に向けて飛翔体を数発発射、70㌔から200㌔飛んで落下した。アメリカの軍事専門家らは、短距離の弾道ミサイルだとの見方を示している。飛翔体が弾道ミサイルならば、北朝鮮に弾道ミサイル発射を禁じた国連安全保障理事会決議に違反する可能性がある。北の飛翔体に敏感に反応したのは防衛関連株だ。追尾型機雷を製造している石川製作所(本社・石川県白山市、東証一部)の株価は1530円と41円(+2.75%)値を上げた。

  夕方の風景。夕日がとても大きく見え、金沢の街を茜色に染めた=写真・中=。退社時の交通ラッシュが何だか懐かしい感じがした。帰宅して庭を眺めると赤、白、ピンクのツツジの花が咲き始めていた。シラン(紫蘭)も初めて紫色の一輪の花をつけていた=写真・下=。満開ではなく、半開きで下を向くようにして咲く。その花姿は、女性がうつむく姿に似て、実に上品なイメージではある。花言葉の一つが「変わらぬ愛」。人に好かれる花だ。

⇒7日(火)夜・金沢の天気     はれ

☆オピオイド危機 トランプの戦い

☆オピオイド危機 トランプの戦い

   ある意味、トランプという人物は歴史に名を残すかもしれない。弾道ミサイルを再び発射する北朝鮮の崖っぷち外交には「Deal will happen!(取引交渉が始まるよ)」と余裕を見せ、アメリカと中国の貿易交渉でも関税を25%に引き上げるとして「but too slowly, as they attempt to renegotiate. No!(中国は再交渉を試みているが遅すぎる。ノーだ)」と切り捨てるようにツイッターで言い放っている。

   中国への脅しとも取れる今回の関税25%引き上げの発表は、うがった見方をすると根深いものがあるかもしれない。ホワイトハウスのホームページ(4月24日付)で掲載されている見出しがそのことを想起させる。「President Trump is Fighting to End America’s Opioid Crisis(トランプ大統領はアメリカのオピオイド危機を終わらせるために戦っている)」=写真=。ページを読む込むとオピオイド危機は中国が持ち込んでいると読める一文がある。「President Trump secured a commitment from President Xi that China would take measures to prevent trafficking of Chinese fentanyl.(トランプ大統領は、中国からのフェンタニルの密売を防ぐ措置を講じるとの習主席の確約を取りつけている)」と間接的な表現ながら中国を名指ししている。

   オピオイド危機とは何か。ケシの実から生成される麻薬系鎮痛剤の総称。オピオイドの過剰摂取による死者は年間7万237人(2017年、アメリカ疾病対策局)にも上り、中でも強い鎮痛効果があるフェンタニルによる死者は2万8466人と急増している。このフェンタニルを大量生産しているのが中国で、本来アメリカ国内の病院でしか扱えないものが、他の薬物として偽装され普通郵便でアメリカに送り込まれたり、中国からメキシコやカナダに渡り、国境を越えてアメリカに持ち込まれたりしている。ホワイトハウスのHPによると、2016年と18年を比較すると、郵便検査官による摘発は国際便が10倍、国内便で7.5倍に。2018年に国土安全保障局が国境で押収したフェンタニルは5千ポンド(2250㌔㌘)になったと記載している。

    ホワイトハウスHPによると、トランプ大統領はオピオイド危機の撲滅のため、この2年間で60億㌦を新たに注ぎ込んでいる。医療専門チームによる患者の治療(2017年に25万5千人が治療)、青少年薬物使用防止キャンペーン、インターネットによる売買の監視、依存症に罹患した人々の労働復帰のために53百万㌦援助など実施していると掲載している。その成果として、オピオイドの過剰摂取による死亡は2018年9月で前年同期比で全米では5%減、中でもオハイオ州で22%、ペンシルベニア州で20%、それぞれ減少したと強調している。まるで「アヘン戦争」が起きているかの如くの書きぶりだ。

    トランプ大統領のオピオイド危機との戦いの記事はホワイトハウスHPの一面に掲載されている。そのポジションから見れば最重要課題なのだ。「習主席の確約」は昨年12月1日に行われた米中首脳会談で取り付けている。オピオイド危機はアメリカの大いなる経済的な損失でもあると考えれば、首脳会談で直談判した意義はある。今回の貿易交渉のテーブルでもフェンタニルの密売問題が議論になったのではないだろうか。「大統領と国家主席が約束したフェンタニルの密売を中国が根絶できないのは、なぜだ。これでは通商の約束も履行できないだろう」とアメリカ側が迫ったかもしれない。

    オピオイド問題は治まる兆しはあるものの戦いは終わってはいない。オピオイド危機と貿易戦争をあえてセットで想像してみれば、トランプ氏が「but too slowly,・・・ No!」とツイッターで叫ぶ理由が理解できなくもない。

⇒6日(振休)夕方・金沢の天気    あめ

★北は「崖っぷち外交」に戻ったのか

★北は「崖っぷち外交」に戻ったのか

   北朝鮮はきのう(4日)午前9時6分ごろ、東部の元山(ウォンサン)から東の日本海に向けて飛翔体を発射、70㌔から200㌔飛んで落下した。同時発射ではなく21分間の連続だった。日本の国内メディアによると、アメリカの軍事専門家らは、短距離の弾道ミサイルだとの見方を示した。飛翔体が弾道ミサイルならば、北朝鮮に弾道ミサイル発射を禁じた国連安全保障理事会決議に違反する可能性がある。韓国軍は当初「短距離ミサイル」と発表していたが、その後「短距離の発射体」と表現を改めている。

   メディアの報道を視聴する限り、「北は我慢できなくなったのか」との印象を持ってしまう。去年2018年4月27日、板門店で開催された南北首脳会談では文在寅大統領と金正恩委員長との間で「完全な非核化」が明記された。同年6月12日の第1回米朝首脳会談の共同声明では「Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む)」の文言を入れた。ことし2月28日のハノイでの第2回米朝首脳会談では、トランプ大統領が先に席を立って会談は決裂した。一切妥協しないトランプ氏の姿勢が明らかになった。おそらく金氏にとって会談は屈辱的だったのだろう。

      韓国「中央日報」日本語版(4日付)によると、北の対外宣伝メディアを引用して「(米国の行動は)南側に対北制裁・圧力政策に歩調を合わせろという強迫であり、極めて悪質だ」とアメリカに対する北の非難を紹介し、5日付では「(金委員長が)4日、朝鮮東海上で行われた最前線・東部前線防御部隊の火力打撃訓練を指導した」と伝え、今回の発射と関連づけている。ジレンマに陥った金氏がトランプ氏に放ったメッセージなのだ。「何とかしろ」と。

   一方のトランプ氏は余裕だ。きのうのツイッターで発射の件を投稿している=写真=。”I believe that Kim Jong-Un fully realises the great economic potential of North Korea and will do nothing to interfere or end it” (金正恩は北朝鮮のすばらしい経済的可能性を十分に認識しており、それを妨害したり終わりにすることはないと信じている)。北は経済的な見返りと引き換えに非核化には必ず応じると読んでいる。

    今回の飛翔体が弾道ミサイルならば、2017年11月29日以来だ。その後、韓国、そしてアメリカと交渉を進めてきた金氏だが、ここで弾道ミサイルを発射したとなるとさらに国際世論的にも自らを追いつめることになる。かつての崖っぷち外交、あるいはチキンレースに戻ったのか。百戦錬磨のトランプ氏と向き合うにはまだ遠い。

⇒5日(祝)午後・金沢の天気      はれ

☆異次元緩和は「MMT」のお手本なのか

☆異次元緩和は「MMT」のお手本なのか

   平成元年(1989)、バブル経済の絶頂期だった。その年、株価は史上最高値3万8915円をつけた(12月29日)。その後、バブル景気は徐々に崩れ平成9年(1997)には山一証券など金融機関が破綻した。平成12年(2000)にはITバブルで株価は2万円台を回復するも、翌13年9月のアメリカ同時多発テロ事件で1万円を割り込む。平成20年(2008)のリーマンショックで一時7000円を割り込み、バブル崩壊後の最安値に(10月28日)。平成25年(2013)からの日銀の大規模な金融緩和で株価は上昇に転じ、平成最後の取り引きとなったきょう26日は2万2258円だった。平成の株価はまるでジェットコースターのようだった。 

      話は変わるが、いまメディアの経済記事のトレンドは「MMT」だろう。Modern Monetary Theory(現代金融理論)。アメリカの金融情報情報サイト「Bloomberg」(4月9日付)でも「Wall Street Economists Wade Into the MMT Debate in a Big Way(ウォール街の経済学者たちは大々的にMMTの議論に加わった)」とMMT論争を報じている=写真・上=。

   記事からMMTを要約する。自国で通貨を発行している国家は、債務返済に充てるマネーを際限なく発行できるため、政府債務や財政赤字で破綻することはない。景気を上向かせ、雇用を生み出していくために、過度なインフレにさえならなければ、政府は積極的に財政出動すべきだ、とする論だ。

   このMMTを提唱するアメリカの経済学者らが事例とするのが日本なのだ。アベノミクスや日銀の異次元緩和を引き合いに出して、国と地方の負債はGDPの2倍近い1100兆円を超えているが、インフレにもならず、財政も破綻していない。格付け会社は日本国債を格下げしたが、金利はギリシアのように急騰せず、インフレ率も低い。インフレはマネーの過剰よりもむしろ、モノの不足を主因として起きるのであって、民主的な政府であれば貿易もう自由化されマネーの供給過剰は起きない。「日本を見よ」と。

   こうしたアメリカ側からのMMT論を警戒しているのは政府、日銀、財務省だ。財政規律を緩めかねないからだ。MMTに反論するため、今月17日に財務省が財政制度等審議会の分科会に出した資料は63㌻におよぶ(財務省ホームページより)=写真・下=。この中でMMTが指摘する「日本国債は大半が国内で保有されるため破綻しない」などの意見に対し、国債の海外投資家の保有割合が高まっているデータや、MMTに批判的な著名な経済学者ら17人の意見を掲載している。そのうちの一つを紹介すると。

   ロバート・シラー氏(イェール大学、経済学者)の ヤフーファイナンスでのインタビュー(2019年2月26日)。「パウエル議長が(議会証言で)受けた質問にMMTについてのものがあって、これは最近出てきたスローガンだ。もしも大衆が望むなら、政府はどこ までも財政赤字を無限に続けられるというものだと思うが、これはこのタイミングで出てきた悪いスローガンだと思う。一部の人々にとって政治的には有用なものだ。」

   シラー氏の論調はどこかで読んだ。平成25年4月に日銀の黒田総裁が「かつてない異次元のレベル」と言って始めた超金融緩和について、メディアの論調がこうだったではないか。「日銀がアベノミクスに加担してよいのか」と。結論、やはりMMTのお手本は日本なのかもしれない。

⇒26日(金)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆世界に拡散する「権力の腐臭」

☆世界に拡散する「権力の腐臭」

     このニュースには驚いた。「なぜ再び」と。日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン氏が4日早朝、東京地検特捜部に再逮捕された。本人の姿は隠されていたが、特捜部の車で自宅マンションから連れ出される詳細な映像がテレビで報じられた。この逮捕前にフランスのテレビ局「LCI」がネットを通じてゴーン氏にインタビューした映像が日経新聞Web版に掲載されている。「私は無罪だ」「フランス政府に言いたい。私はフランス人だ。フランス人としての権利を守ること求める」などと語っている。特捜部とゴーン氏側によるメディア戦が繰り広げられている。

   ゴーン氏側のメディア戦の仕掛け人は弘中惇一郎弁護士だろう。メディアを逆手で上手に使う。印象的な事件は、2009年6月に障害者団体向け割引郵便制度悪用事件に絡んで、厚生労働省の課長だった村木厚子氏が大阪地検特捜部に逮捕された事件。同年11月に保釈請求が認められ、村木氏が保釈後に記者会見した。容疑事実を強く否定し、改めて無罪を主張した。会見で被告に事実関係を語らせることで、被告とメディアとの距離感を近づける。すると、メディアは検察側の捜査手法に目を向け始める。この事件では翌年9月、大阪地裁は村木氏に無罪の判決。その後、主任検事が証拠物件のフロッピーディスクの内容を改ざんしたことがメディアによって発覚する。

   ゴーン氏は記者会見を予定していた。今月3日に開設したツイッターで「I’m getting ready to tell the truth about what’s happening.  Press conference on Thursday, April 11.」(何が起きているのか真実をお話しする準備をしています。 4月11日木曜日に記者会見をします)と述べている。うがった見方だが、記者会見となれば状況が一変するかもしれない。東京地検特捜部への捜査手法にメディアの目が向きだすと収拾がつかなくなる。村木厚子氏の事例のように。「弘中メディア戦略」を警戒したのか。逮捕はツイッターの翌日の4日早朝なのでタイミングが合い過ぎる。

  ゴーン氏の逮捕は、有価証券報告書に自身の役員報酬の一部を記載しなかったとして金融商品取引法違反で2回。さらに、日産に私的な投資で生じた損失を付け替えたとする特別背任で3回目の逮捕。今回4度目の逮捕容疑は、ゴーン氏が中東オマーンの販売代理店に日産資金17億円を支出し、うち5億6300万円をペーパーカンパニーを通じてキックバックさせて日産に損害を与えた会社法違反(特別背任)だ。このオマーンの販売代理店を経由した資金のキックバックは、フランスのルノーでも疑惑が浮上している。会社組織の権力者による不透明な巨額資金の流れが世界に拡散している。

  「Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.(権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する)」。イギリスの歴史家、ジョン・アクトン(1834-1902)はケンブリッジ大学で近代史を教え、フランス革命を批判した。ゴーン氏をナポレオン・ボナパルトにたとえると語弊があるかもしれないが、栄華の極みの最終章には没落がある。今回の事件に「権力の腐臭」を感じる。

⇒5日(金)夜・金沢の天気    くもり

☆世界を惑わせ、さらに混沌、米朝とブレグジット

☆世界を惑わせ、さらに混沌、米朝とブレグジット

   ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談が終って2週間経つ。会談の物別れは世界を惑わせ、今でもその謎解きにマスメディアが騒がしい。もう一つ、世界を惑わせているのが、ブレグジット(Brexit)ではないだろうか。イギリスのBritainと「出る」のExitの造語だが、EUからの離脱のタイムリミットは「3月29日」と決まっているだけに「合意なき離脱」か「離脱延期」か、世界が成り行きを見守っている。

   識者の方々からいろいろなメールマガジンをいただいている。そのメルマガでも、物別れ首脳会談やブレグジットにまつわるコメントがいろいろあって面白く、勉強にもなる。いくつか紹介したい。日本財団の笹川陽平氏からのメルマガ(3月11日付)。「中国の小話」のコーナーで、「米朝会談決裂の真相」と題してこんな記事が紹介されていた。以下本文を引用する。

   「トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長の第二回の会談は、合意文書の締結も宣言の発表もなく、物別れに終わりました。その理由について諸説があるなか、中国の巷間では、次のような推測が流れました。会談で金委員長は、『我々は強大な新しい朝鮮を作らなければならない』と発言しました。英語に訳せば、『We will build a strong new Korea !』になります。ところが、北朝鮮側の通訳の発音が正確を欠き、トランプ大統領の耳には次のように聞こえました。『We will build a strong nuclear !』  訳すと、『我々は強大な核戦力を作らなければならない』という意味になります。これを聞いた途端、トランプ大統領は机を叩き、会場を後にしました。」

    もちろん「小話」なのでジョークだ。試しに、new Korea を何度か発音を繰り返すとニュークリアに聞こえてくる。嘘か真か読む側が判断に戸惑うほどリアリティさがある話ではある。

    経営コンサルタント、経済評論家として著名な大前研一氏のメルマガ『 大前研一 ニュースの視点 』を愛読している。3月1日付は、ホンダのイギリス工場閉鎖についての論評だった。以下、引用する。「実はホンダの車はあまり欧州では売れていません。ホンダにしては珍しく買収なども仕掛けて、積極的に欧州市場の開拓を試みましたが、英国での生産台数はわずか年間16万台でトップのジャガー・ランドローバーが約44万台、2位の日産もほぼ同じくらいの数字ですから、半分以下の水準です。ホンダが、発表のタイミングをずらして、英国のEU離脱が何かしらの形で落ち着く3月29日以降にしていたら、報じられているほど“衝撃”として受け止められることはなかったでしょう。」

    ホンダがイギリス国工場を2022年までに閉鎖すると発表したニュースは、おそらく誰もがEU離脱による経営の影響を懸念してのホンダの決断と理解しただろう。大前氏は、撤退はあくまでも工場の稼働率低迷がもたらした経営判断であって、離脱の影響ではない、発表のタイミングが悪い、と一刀両断で述べた。

    けさ(13日)のニュースでは、今度は日産が販売不振を理由にことし中にイギリス工場での高級車の生産を停止すると発表した。そして、離脱をめぐり、イギリス議会下院は、離脱条件を定めた協定案を反対多数で再び否決した。与党・保守党の強硬離脱派がEUの関税ルールに縛られる可能性があるとして反対に回った。この迷走状況ではもう内閣は持たないのではないか。(※写真・上はアメリカ「ホワイトハウス」ツイッターから、写真・下はイギリスBBC放送Web版から)

⇒13日(水)朝・金沢の天気    あめ

☆北の動向に敏感な株

☆北の動向に敏感な株

   このところ相次ぐ世界経済の見通しの下方修正、そして中国の2月の輸出額の大幅減少などが報じられ日経平均株価は続落、8日の終値は2万1025円、前日比-430 (-2.0%)、一時2万1000円を割り込んだ。そんな中で防衛関連株として値動きが注目されているのが東証一部の石川製作所(本社・石川県白山市)だ。8日の終値は1655円、前日比+255(+18.2%)だった。同社株で特徴的なのは北朝鮮の動向とリンクしていることだ。

   2017年9月にアメリカのトランプ大統領が国連総会の演説で金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、北が「頭のおかしい老いぼれ」とののしるなど言葉の応酬が過熱した10月にかけては最高値4205円(10月16日)を記録した。平昌オリンピックへの北朝鮮の参加による平和ムードが広がり、徐々に株価は下がり、2018年3月29日に韓国と北朝鮮による南北首脳会談(4月27日)が決定すると1943円に落ち、第1回米朝首脳会談(6月12日)以降は軟調続き、年末には一時1000円を割り込んだ。ことし2月27、28日の第2回米朝首脳会談では初日が1209円、物別れが伝えられると1243円に反転、それ以降は上昇している。

   冒頭で述べた防衛関連株というのは、同社は段ボール印刷機、繊維機械を生産し、追尾型の機雷を製造している。8日に買いが入るきっかけが、北の核・ミサイル拠点「西海衛星発射場」で関連施設の復旧しているとアメリカのシンクタンクや北朝鮮分析サイト「38ノース」が相次いで公表したことだった。38ノースが「North Korea’s Sohae Satellite Launch Facility: Normal Operations May Have Resumed」(北朝鮮の西海衛星発射場:通常の運用が再開される可能性がある)との見出しで公表した7日付の記事=写真=で、予想外だったのはレール式の移送施設やエンジン燃焼実験場の復旧作業が行われたのはことし2月16日から3月2日までに始まった模様だと記載されていることだ。

   この記事に投資家は愕然としただろう。ハノイでの首脳会談の最中に核実験施設の復旧作業が始まっていた可能性も十分にあり、金委員長は初日の会談で核・ミサイル実験を行わないと改めて明言したが、これと矛盾するのだ。2日目の会談で、この情報を事前に得ていたトランプ大統領が覚書を交わす前に、金委員長にこの情報の事実確認をして、明確な返事が得らなかったとしたら、大統領が席を立った理由は理解できる。「君は言うことと、やっていることが違うではないか」と一喝したに違いない。交渉再会の目途が立たなければ、北が核・ミサイル実験を再開する可能性も視野に入ってくる。そこで買いが入った、と読む。

    防衛関連株が次に動くとしたら、今月中に予定にされる、国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の履行状況を調査する報告書が発表されるタイミングだ。核・ミサイル関連施設の動きのほか、問題となっている洋上での荷の積み替え貿易「瀬取り」や仮想通貨を狙ったサイバー攻撃による外貨獲得などの実態が公表されることで、マーケットはどのように反応するのか。

⇒9日(土)夜・金沢の天気    はれ

☆米朝会談、突然席を立ったのは誰か

☆米朝会談、突然席を立ったのは誰か

      米朝首脳会談をニュースを見終えて、印象は「トランプの勝ち」だ。トランプ大統領はきのう(28日)午後2時15分(現地時間)から、ハノイのJWマリオットホテルで開かれた記者会見に臨み、「委員長との対話は建設的だった」「しかし、現時点で合意文書に署名することは適切ではないと考えた」と合意が決裂したことを明言した。金氏が全面的な制裁解除を求めてきたものの、応じなかったと明かした。ポンペオ国務長官は「金氏は準備ができていなかった」「我々が望む成果は結果を引き出せなかった」とフォローした。(写真・上はトランプ大統領のツイッターより)

   トランプ氏の記者会見を受けて、ニューヨーク・タイムズ紙は速報でこう伝えている。President Trump and Kim Jong-un’s summit meeting on the denuclearization of North Korea ended abruptly. Mr. Trump said the U.S. was unwilling to lift all its sanctions without the promise of full denuclearization.(北朝鮮の非核化に関するトランプ大統領と金正恩の首脳会談は突然終わった。トランプ氏は、アメリカは完全な非核化の約束なしにすべての制裁を解除するつもりはないと述べた)

   トランプと金の両氏はこの日午前中、ソフィテル・レジェンド・メトロポールホテルで拡大首脳会談を終えた後、午前11時55分から昼食会を持って午後2時5分に合意文に署名する予定だった。しかし、拡大首脳会談の途中でその後のスケジュールを全面的に中止、それぞれが宿泊先のホテルに戻った。記者会見も当初午後4時から会見の予定だった。

   ニューヨーク・タイムズ紙の速報から察すると、「abruptly(突然)」という単語の意味合いが大きい。では、拡大首脳会談の席上で誰が突然席を立ったのか、席を立つきっかけは何だったのか、それは誰のどのような態度、あるいは発言がきっかけだったのか、などなどである。次の会談の約束も取り付けず、事実上の物別れに終わった会談だが、勝者はトランプ氏だろう。全面的な制裁解除を優先的に求めた金氏は足元を見られた。「完全非核化の進展がなければ、この話はなかったことにしよう」とトランプ氏が勝負に出てた、席を立った。

   ビジネス交渉の中では相手にプレッシャーをかけるために席を立つこともある。先に席を立たれて、次に譲歩の条件を出して席に戻ってもらうよう行動を起こすのは金氏の方である。経済制裁が続いて困るのは金氏なのだ。

   去年2018年4月27日、板門店で開催された南北首脳会談では韓国の文在寅大統領と金氏との間では「完全な非核化」が明記された=写真・下=。さらに6月12日の第1回の米朝首脳会談では、共同声明で「Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む)」の文言を入れている。にもかかわらず、IAEA(国際原子力機関)による査察など非核化へのプロセスはいっこうに見えてこない。

   妥協は一切しないことを、交渉相手に見せつける百戦錬磨のタフニゴシエーター、これがトランプ流なのだろう。ひょっとして、貿易戦争をめぐる中国の対する牽制も意図しているのかもしれない。

⇒1日(金)朝・金沢の天気     くもり

★米朝会談の陰で日韓さらなる亀裂

★米朝会談の陰で日韓さらなる亀裂

  ベトナムでの米朝首脳会談はテレビ、新聞メディアともに派手に報じられている。が、その片隅ではさらなる日本と韓国の亀裂が深まっている。石川県の地元紙などはこの「事件」を大きく報じている。去年12月4日午前3時10分ごろ、島根県の隠岐諸島100㌔の日韓の暫定水域で、石川県漁協所属の中型イカ釣り船が操業中、船を安定させる漁具のロープ「パラシュートアンカー」を海中に放っていたところ、韓国漁船が近づいてきて前方を通過、そのパラシュートアンカーをひっかけ、イカ釣り船は20㍍引きずら、ロープは切れた。イカ釣り船は韓国漁船に呼びかけたが応じなかった。

  日韓の暫定水域は両国の漁船が操業できる水域ではあるが、操業中の船に近づくのは危険な行為で、スクリューにロープが絡まれば双方の船が被害を受ける可能性があった。問題は、呼びかけにもかかわらず、韓国漁船はそのまま去ったことだ。「言語道断」との憤る地元漁業関係者の声を地元紙などは伝えている。

  このロープ事件のほかにも、11月15日には能登半島沖の大和堆で山形県のイカ釣り漁船と韓国漁船が衝突している。その後、11月20日、大和堆付近の操業中の北海道のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、漁船に接近していた「事件」があった。日本の海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入ることで、韓国の警備艇は現場海域を離れた。スルメイカは貴重な漁業資源だ。それを北朝鮮に荒らされ、さらに韓国側は「日本漁船は海域を出ろ」という。

  一連の事件は、竹島は韓国の領土であると言い張り、大和堆は韓国海域であると主張する前触れではないだろうか。そう考えると、これから「海上衝突」状態に本格的に入るとも読める。

   冒頭で「日本と韓国の亀裂」と述べたが、きのう(27日付)の読売新聞2面を読んで、「ここまできたか」と息をのんだ。「韓国大統領『親日を精算』」の記事である。記事内容は、日本の植民地支配に抵抗した3.1独立運動について、「親日を精算し、独立運動に対して礼を尽くす・・」という趣旨のようだ。ただ、この「親日精算」という言葉を文在寅大統領が閣議で語ったことで、さまざまに独り歩きをすることは想像に難くない。日本の漁船のロープを切ることも、「日本漁船は海域を出ろ」と警備艦が指示することも、すべて「親日精算」することとして解釈される。韓国では分かりやすい言葉に違いない。

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