⇒ニュース走査

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

  全国知事会が先月23、24日の両日、富山市で開催され「地方創生・富山宣言」が採択された。これを読むと、日本の地域課題が浮かび上がる。宣言では「今日の我が国は、他の先進国に例をみないスピードで進行する少子高齢化・人口減少により、離島や中山間地域の中には今後の存続が危機的な状況にある地域が増加しており、地域のあり方が改めて問われている。」と指摘。また、東京一極集中について、「過度な首都東京への一極集中は、出生率の低下、災害のリスク管理などの問題を生じさせるとともに、地方の担い手不足を招くこととなる。」と率直に記されている。

  全国知事会を報じたローカル紙を読むと、この東京一極集中について議論の応酬があったようだ。初日の23日、地方税財源の確保に関する国への提言案をめぐって、「地方創生の推進や東京一極集中の是正により、東京から地方 への人・モノ・金の流れを促進することで・・」との表現に対し、小池東京都知事は「国内で限られたパイを奪い合っても日本全体のためにはならない」「疑問を大きく感じる」と述べ、この部分の削除を要求した。これに対し、提言案を作成した石井富山県知事は「地方はどんどん人が減る一方で、東京にあらゆるものが集まり災害リスクなど過密の弊害が起きている」と是正措置に理解を求めた。小池知事はこの後、公務を理由に途中退席したため少々後味の悪さが残った。

  東京一極集中をめぐっては、昨年2018年度の全国知事会議で大都市に集中する地方法人税の偏在是正を求める提言を採択し、今年度の税制改正で東京都から地方自治体に計9000億円が再配分されている。小池知事とすれば、これ以上東京都を悪者扱いにしないでほしいとの思いがあったことは想像に難くない。結局、全国知事会では小池知事の主張を考慮し、「東京一極集中の是正」の文言ではなく、地方創生の取り組みをより強力に加速化させるという表現でこの件は決着した。

  1週間後の8月1日、全国知事会として自民党税制調査会に要望書を手渡した。その中で、「(2)地方創生・人口減少対策のための財源確保」として。以下2点を要望している。「まち・ひと・しごと創生事業費」(1兆円)を拡充・継続し、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源を十分に確保すべき。「地方創生推進交付金」および「地方創生拠点整備交付金」については、拡充・継続を図るべきである。また、地方創生の更なる深化や取 組みの全国展開に向け、地方の実情を踏まえた、より弾力的で柔軟な 運用を図るべき。

  さらに要望書の中で目を引いたのは、「(3)地方における5G・ICTインフラ整備への財政的支援等」である。以下要望している。第2期「まち・ひ と・しごと創生総合戦略」において、5Gをはじ めとする未来技術の利活用を、来年度から次のステージを迎える地方創生の重要な柱の一つとして位置付け、併せて具体的な支援策を講ずるべき。

  全国知事会が「5G」(第5世代移動通信システム)について、これだけ明確に政権与党に働きかけていることは初めて知った。移動通信のトラフィック量は2010年と比較して千倍以上に増大するとされる5Gを地方創生の重要な柱として打ち出している。東京と地方の税金をめぐる分捕り合戦を5Gに絡めたところが面白い。(※写真は全国知事会ホームページより)

⇒11日(日)朝・金沢の天気     はれ

☆「ディール」という病(やまい)

☆「ディール」という病(やまい)

   これもディール(deal)なのだろうか。北朝鮮が25日に発射したミサイルについて、アメリカのトランプ大統領は26日、ホワイトハウスで記者団に対し「短距離ミサイルで、どこにでもある普通のもので、全く心配していない」と述べたと報じられている。アメリカとしては今回のミサイル発射を全く問題にしない、と。いくら外交的なディールであるとは言え、ここまで言い切れるのだろうか。

   確かに、北朝鮮の「朝鮮中央通信」ホームページ(26日付)の新着情報を見ても、ミサイル発射の理由を「南朝鮮地域に先端攻撃兵器を持ち込んで軍事演習を強行しようとし熱を上げている南朝鮮軍部好戦勢力に厳重な警告を発するため」と述べ、韓国への警告だと発している。アメリカを牽制する言葉はどこにもない。ホワイト・ハウスではここを分析して、トランプ氏がミサイルの発射を問題視しない姿勢を示したのだろう。6月30日にトランプ氏と北朝鮮の金正恩党委員長が南北軍事境界線がある板門店で会談したばかり。米朝首脳会談で合意した非核化の進め方を話し合う実務者協議に応じるよう、北に促す狙いがアメリカ側にあるのかもしれない。

   一方で強烈な言葉でディールを発している。トランプ氏はツイッター=写真=で「The WTO is BROKEN when the world’s RICHEST countries claim to be developing countries to avoid WTO rules and get special treatment. NO more!!! 」(世界の最も裕福な国がWTO=世界貿易機関の規則を避け、途上国として特別な扱いを受けている、WTOは壊れている。もういやだ!!!」と。世界2位の経済大国に成長した中国がいまだに発展途上国として扱われ、貿易上で優遇されているのはおかしいと不満をWTOにぶつけた。もちろん、これは中国に向けた言葉だろう。

    途上国を理由に中国は関税や国内企業への補助金などで他のWTO加盟国より緩いルールが適用されているとアメリカは以前から指摘していた。WTOに対して中国を含む新興国の貿易ルールを厳しく監視する改革案を提出しているが、中国は反発している。トランプ氏とすれば、中国との貿易摩擦が長期化しており、貿易ルールをつくるWTOをあえて巻き込む意図があるのかもしれない。

    トランプ氏は別のツイッター(26日付)で「マクロン大統領の愚かな行為に対して大きな対抗措置を公表する予定だ」と書き込んでいる。フランスはアメリカのIT大手企業にした独自のデジタル課税をする方針をしてしており、フランスで来月開かれるG7サミット(主要7か国首脳会議)での交渉に「宣戦布告」をしている。

    緩く甘く、ときには激しく罵倒する。外交には必要なことかもしれないが、ディールという病(やまい)のようにも思えてくる。

⇒27日(土)夜・金沢の天気    くもり

★「兵器開発」という病(やまい)

★「兵器開発」という病(やまい)

   けさ(26日)北朝鮮の「朝鮮中央通信」ホームページ=写真=の新着情報をチェックしてこんなことを思った。「これは病(やまい)ではないのか」と。記事は「경애하는 최고령도자 김정은동지께서 신형전술유도무기 위력시위사격을 조직지도하시였다」(敬愛する最高指導者、金正恩同志が新型戦術誘導兵器の威力デモ射撃を組織指導した)との見出しで、きのう25日早朝に、短距離ミサイルを2発発射したのは、金正恩朝鮮労働党委員長が立ち合いで、「新型戦術誘導兵器」の威嚇デモ発射を行ったと述べている。

   ここから読めるのは「新型戦術誘導兵器」を開発しているということだ。武力というのは一度手を染め始めると、性能の向上を求めて開発意欲が止まらない。それに示す根拠の一つとして、記事には「新型戦術誘導兵器」は低空で飛行し、その威力を直接確認することができたことで金氏は満足した、と記載されている点だ。党委員長という独裁的に立場にある人物が開設セクションに性能の向上を具体的に指示し、その成果を現地で自ら確認したということだ。ここが兵器開発という病(やまい)に陥っているのではないかと憶測した次第だ。

   朝鮮中央通信の記事にはもう一つ、今回の発射の意義を記載している箇所がある。「경애하는 최고령도자동지께서는 우리의 거듭되는 경고에도 불구하고 남조선지역에 첨단공격형무기들을 반입하고 군사연습을 강행하려고 열을 올리고있는 남조선군부호전세력들에게 엄중한 경고를 보내기 위한 무력시위의 일환으로 신형전술유도무기사격을 조직하시고 직접 지도하시였다.」(敬愛する最高指導者同志は私たちの度重なる警告にもかかわらず、南朝鮮地域に先端攻撃兵器を持ち込んで軍事演習を強行しようとし熱を上げている南朝鮮軍部好戦勢力に厳重な警告を発するための武力デモの一環として、新型戦術誘導兵器射撃を組織し直接指導した)。

   つまり、8月にも予定される米朝合同軍事訓練に対して、韓国に警告を発するための武力デモだと強調している点だ。とくに韓国が「先端攻撃兵器」を持ち込み、軍事演習を強行することに対して、これは厳重な警告だと述べている。アメリカに対する直接的な記述は見当たらないが、この先端攻撃兵器という軍事情報を北側がどこで知り得たのか、あるいは単なる「カマかけ」なのか、気になるところだ。

⇒26日(金)朝・金沢の天気     はれ

☆ミサイルと違法操業、不漁の三重不安

☆ミサイルと違法操業、不漁の三重不安

       きょう25日午前5時34分と57分に北朝鮮が日本海に向けて2発の短距離ミサイルを発射したとメディア各社が報じている。6月30日にアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩党委員長が南北軍事境界線がある板門店で会談したばかりではないか。北は誰に向けて、なぜ威嚇的な行為に出ているのか。トランプ氏のツイッターをチェックしたが、まだコメントを記載していない(午後5時10分現在)。

   報道によると、2発はいずれも短距離ミサイルで、高度50㌔に達し、少なくとも430㌔を飛行して日本海に落下したと推定される。北朝鮮は5月4日と9日にも日本海に向けミサイルを発射している。なぜ再発射なのか。トランプ氏が「2、3週間以内」としていた非核化に向けた実務協議が実施されないことに対しての開催要求なのか。あるいは、アメリカと韓国が8月に予定する合同軍事演習に対する中止要求なのか。

   北の発射に関して別の見方もあるようだ。報道各社が北朝鮮国営メディアの引用として報じているのは、今月23日に金氏が潜水艦を視察する様子を掲載していて、これが潜水艦発射弾道ミサイルを搭載するために建造された新型ではないか、ということだ。独自に国防力強化にひた走っている動きの一環ともとれる。

   こうした一連のニュースに不安を募らせているのは日本海で操業する日本の漁業関係者ではないだろう。6月からスルメイカ漁が始まりイカ釣り漁船が日本海で操業している。特に能登半島沖の大和堆(やまとたい)は好漁場とされ、周辺海域の日本の排他的経済水域(EEZ)には北朝鮮のイカ網漁船が違法操業を行っている。海上保安庁がきのう24日の会見で発表した数字によると、5月下旬以降で北の漁船による違法操業は625隻に上り退去警告を発したという。うち、放水による強制措置は122隻だった。 

   ただ、漁業関係者の間では、ことしのイカ漁は全体的に不漁なのだそうだ。北海道沖の武蔵堆(むさしたい)と行き来しながらスルメイカを追いかけている状態という。ミサイルと違法操業、そして不漁の三重の不安が漁業関係者を困惑させているのだ。

⇒25日(木)夕・金沢の天気     はれ時々くもり

★参院選、異色な戦い

★参院選、異色な戦い

  今回の参院選は異色だった。「NHKから国民を守る党」の代表の立花孝志氏 =元NHK職員=が初当選を果たした。報道陣の取材に対して、「歴史が変わる瞬間だ」と語っていたのが印象的だった。シングルイシューで初の国政進出ではないだろうか。

  NHKから国民を守る党は37人が選挙区選挙に立候補し、比例代表(定員50)にも4人が出馬していた。受信料を支払った人だけが視聴できるスクランブル放送化や受信料を払わない人を応援・サポートするとアピールしている政治団体だが、シングルイシューだからといって侮れない。先の東京都区議選(投開票4月21日)で17人が当選するなど、4月の統一地方選挙では立候補者47人のうち26人を当選させている。同党の地方議員は総勢39人だ。単一論点を掲げる政党がこれほど議席を獲得するのは異例だろう。

  参院選の戦いぶりは奇妙だった。ネット選挙を活かして、フォロワーが多数いるユーチューバーらを擁立しての戦いだった。NHKで比例代表の政見放送(7月10日午前)をチェックしたが、立花氏はNHK職員のわいせつ行為での逮捕など相次いでいると批判していた。他の3候補は「NHKをぶっ壊す」とだけ発言する男性や、寸劇を繰り広げた女性もいた。

     立憲民主の比例代表で初当選した石川大我氏はLGBTの支援を続けてきた。自らもLGBT当事者として、差別解消法案や婚姻平等法案の成立を目指す。もう一人、この候補者は落選したのだが、ぜひ喜びの歌声を聞きたかった。石川選挙区で、国民民主の新人として選挙戦を戦った田辺徹氏はドイツ在住歴20年の元オペラ歌手だ。選挙期間中は県内を回り、安倍政権の経済政策「アベノミクス」から家計第一の「ヒトノミクス」への政策転換を説いた。10月に予定される消費税増税の阻止も訴えたが、自民の現職には及ばなかった。午後8時にテレビの速報で相手候補の当確のニュースが流れ、「安倍政権の恐怖政治に民意がつぶされた」と報道陣のインタビューに悔しそうに答えていた。

      ところで、日本の参院選を海外メディアはどう伝えているのだろうか。アメリカのウオール・ストリート・ジャーナル紙は見出しで「Shinzo Abe Is Set to Become Japan’s Longest-Serving Prime Minister In elections for the upper house of parliament, Japan’s ruling coalition maintains its majority」(安倍晋三氏が日本最長の首相に就任 参院選では日本の与党連合が大多数を維持)と淡々と伝えているが、選挙後に関税の引き下げを求めているトランプ大統領との難しい交渉が待ち受けていると報じている。安倍総理も勝利の喜びにうかうかとしてはおられない。

⇒22日(月)午後・金沢の天気   はれ

★懸念する日本海での日韓衝突

★懸念する日本海での日韓衝突

   日本政府による韓国への半導体材料の輸出管理の優遇、いわゆる「ホワイト国」の解除をめぐって、韓国がアメリカ詣を続けている。今月10日には韓国の康京和外交部長官がアメリカのポンペオ国務長官と電話で会談して、日本の今回の措置に対する不満を述べたと韓国メディアが報じている。日本の輸出管理の厳格化措置が日米韓の安保上での連帯を弱めるだけでなく、アメリカが最優先事項としている北朝鮮の核兵器完全破棄の政策に支障になる、と。

   直接向き合わず、他国を経由しての批判を「告げ口外交」という。2013年に韓国の朴槿恵大統領が就任して行った外交が、日本と韓国の歴史問題に関することを、第三国に対して日本への悪口を言い触らして回ったことで、「韓国の告げ口外交」と呼ばれた。これは朴槿恵独自の外交かと思っていたが、どうやら韓国の「お家芸」のようだ。で、トランプ政権は韓国の告げ口外交に同情して、日本側に改善を求めてくるだろうか。

   これまでの韓国による自衛隊機への火器管制レーダー照射の問題、慰安婦財団の一方的な解散、戦時中における朝鮮半島出身の労働者問題をめぐる日韓請求権協定の反古など、外交問題を起こしてきたのは韓国側であることを実によく知っているのはアメリカ側だろう。「安全保障で信頼関係を保つのが難しい国だ」と。今後、韓国が徹底抗戦の姿勢を崩さず、日本も一歩も引かなければ日韓関係の在り様は異次元レベルの展開になるかもしれない。

   日本海側に住む一人として今後懸念するのは漁場のことだ。昨年11月20日、操業中の日本のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、漁船を威嚇するという事件があった。水産庁のHPで掲載されているプレスリリースを元に少し詳しく述べる。同日午後8時半ごろ、能登半島の西北西約400㌔に位置する、日本の排他的経済水域(EEZ)の大和堆(やまとたい)付近で操業中の日本のイカ釣り漁船(184㌧、北海道根室市所属)に対し、韓国・海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と無線交信をしているのを、水産庁漁業取締船と海上保安庁巡視船が確認した。

    水産庁の漁業取締船は日本の漁船の付近に位置取り、韓国警備艦に対し、日韓漁業協定でも日本漁船が操業可能な水域であり、漁船に対する要求は認められないと無線で申し入れた。その後、韓国の警備艦が漁船に接近し威嚇したため、海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入った。すると、韓国の警備艇は午後10時50分ごろ現場海域を離れた。

    スルメイカは貴重な漁業資源だ。それを北朝鮮に荒らされ、さらに「日本漁船は海域を出ろ」という韓国。その前の昨年8月にも韓国の海洋調査船が、島根県沖の竹島の領海に侵入した。日本の同意を得ずに海洋調査を実施したとして韓国に2度抗議したが、韓国は領有権があるとして抗議をはねつけている。同様のケースが今後続発するのではないか。日韓は歴史の転換点に差しかかっている。

⇒17日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆被災地を大雨が襲う

☆被災地を大雨が襲う

   九州を襲っている大雨が警戒レベル4となり、鹿児島県と宮崎県の15市町の52万世帯、110万人余りに「避難指示」が出された。110万人は石川県と同じ人口規模で、この数字だけで大変なことになっていると察しがつく。避難指示では自治体が重ねて避難を呼びかける。大雨では避難場所に移動する途中で危険な箇所もあり、臨機応変に近くのビルなど安全な建物や高い場所に逃げたほうがいい。

   きのう(2日)気象庁の予報官が記者会見を開いている様子をテレビで視聴したが、ただならぬ雰囲気だった。「非常に激しい雨が数時間続くような場合には、大雨特別警報を発表する可能性もあります。特別警報の発表を待つことなく、早め早めの避難、安全確保をお願いします」と。洪水も心配だが、がけ崩れ、道路の陥没といった土砂災害もある。気象庁予報官は「自らの命は自らが守らなければならない状況を認識して、早めの避難を行って頂きたい」と何度も繰り返していた。住民に対して避難を直接呼びかける異例のコメントだ。

    個人的に気になっているのは3年前に現地を訪れたことがある熊本県益城町だ。ニュースによると、川が氾濫していて、水田に土砂が流れ込むなどの被害が出ている。同町は2016年4月14日の前震、16日の本震で2度も震度7の揺れに見舞われた。新興住宅が建ち並ぶ中心部と昔ながらの集落からなる農村部があり、3万3千人の町全体で5千棟もの建物が全半壊した。半年後の10月に現地を訪れ愕然とした。あちこちにブルーシートで覆われた家屋や、傾いたままの家屋、解体中の建物があった。印象として復旧に手がついたばかりだった。

   とくに被害が大きかった県道沿いの木山地区では、道路添いにも倒壊家屋があちこちにあり、痛々しい街の様子が伝わってきた=写真・2016年10月8日撮影=。農村部では倒壊した家の横にプレハブ小屋を建てた「仮設住宅」で暮らしている農家もあった。益城ではスイカ、トマトなどが名産で、被災農家は簡単に自宅を離れられないという事情も想像がついた。

     震災から3年経ったとは言え、おそらく今でも復興半ばではあること想像がつく。 言葉で「復興」「復旧」「再生」は簡単だが、それを実施する行政的な手続き、復興政策の策定には時間がかかる。そこへ、今度は無情な大雨である。地殻の揺れの後だけに、表層崩壊、あるいは深層崩壊といった山崩れは大丈夫だろうか。

⇒3日(水)夜・金沢の天気     あめ

★「G20」 信なくば立たず

★「G20」 信なくば立たず

     「G20」大阪サミットが閉幕した。読売新聞がサミット期間中の先月28-30日実施した全国世論調査は、安倍内閣の支持率が53%で前回5月の調査の55%とほぼ横ばいだったと報じている。議長としてG20サミットを仕切った安倍総理への国民の評価は「なんとか無難に乗り切りましたね。お疲れさま」というイメージだろうか。それにしてもG20の成り行きをウオッチしていて、いくつか違和感を感じた。

  その一つ。来年、サウジアラビアの首都リヤドで行われるG20サミットについて、ムハンマド皇太子が仕切り役となっていることだ。2018年10月、サウジアラビア政府を批判してきた同国のジャーナリストがトルコにあるサウジアラビア総領事館で殺害された。事件当初から皇太子の関与が取りざたされてきた。今月に入り、皇太子と政府高官の関与を示す調査結果が国連人権理事会に報告された(6月20日付「BBCニュース」Web版)。その皇太子と会談した安倍総理は「サウジでのサミット成功に向け、引き続き日本としても取り組む」と述べた(総理官邸HP)。

  G20サミットは加盟国のGDPが世界の8割以上を占めるなど、「国際経済協調の第一のフォーラム」(Premier Forum for International Economic Cooperation)であり、取り上げられる議題は世界経済や貿易・投資のほか、気候・エネルギー、雇用、デジタル、テロ対策、移民・難民問題などだ(外務省HP)。人権とは正面から向き合っていない。「信なくば立たず」という古くからの言葉がある。孔子が、政治を執り行う上で大切なものとして「軍備」「食糧」「民衆の信頼」の三つを挙げ、中でも重要なのが信頼であると説いたことに由来する。国際政治も同様だ。国連人権理事会でも取りざたされている人物をどう信頼すればよいのか。

   次は日本のことだ。G20サミットで議長国の大役を担った。「国際貢献度」というバロメーターがあるとすれば、国際的な注目度を含めて瞬間的にトップだろう。しかし、国際政治の中で日本はどう位置付けかというと、国連憲章第53条と107条に「敵国条項」があり、いまだに第2次大戦の敗戦国である日本とドイツが対象になっている。実態として敵国条項は「死文化」しているため、1995年に削除する決議があったものの、国連憲章から削除されていない。この理不尽な敵国条項をいつまで引きずっているのか。確かに敵国条項があるから、日本はアメリカに外交と安全保障を任せて経済発展ができた、との意見もある。

   G20サミット閉幕後に記者会見を行ったトランプ大統領は、アメリカの対日防衛義務を定めた日米安全保障条約について「不公平な合意だ」と指摘し、条約の見直しの必要性を安倍総理に伝えたと述べて波紋が広がった。これはある意味で、敵国条項と安全保障を両国で考える、よい機会かもしれない。

⇒2日(火)朝・金沢の天気    くもり

★「DMZ面談」の裏攻防

★「DMZ面談」の裏攻防

  「G20」の余波か。アメリカのトランプ大統領はきょう29日朝、ツイッター=写真・上=で韓国訪問の際に南北軍事境界線の非武装地帯(DMZ)を訪れることを明らかにした。その文章が面白い。「While there, if Chairman Kim of North Korea sees this, I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!」。直訳すれば、「北朝鮮のキム主席がこれを見たら、握手してあいさつするためだけでも南北軍事境界線DMZで彼と会うかも?!」と。もしあす30日にこれが実現すればサプライズが起きる。「G20の成果だ」と。

   もちろん、金氏が呼びかけに応じるかどうか、世界のメディアを固唾を飲んで見守っていることだろう。では、なぜきょう朝のツイッターだったのか。以下は推測だ。トランプ氏と中国の習近平国家主席の会談は午前11時30分に予定されていた。アメリカ側は会談で習氏が「北カード」を切ってくると情報を察知していたのではないか。「北カード」とは、習氏は貿易交渉を始める前の会談の冒頭で、南北軍事境界線DMZで金委員長で会ってはどうか、今月20日に金氏と会談した折にトランプ氏に会うよう助言しておいた、という発言をすることで、交渉全体をリードする狙いがあった。そこで、トランプ氏は先制攻撃に出た、それがこのツイッターではないか。

   報道によると、トランプ氏のツイッターに対し、北朝鮮側はきょうの午後、国営の朝鮮中央通信を通じて外務省次官の談話を発表し「非常に興味深い提案だと見ているが、公式的な提案を受けていない」としていて、面会に応じるかどうか明らかにしていない。しかし、「非常に興味深い提案だ」という文言に可能性を予感させる。

  その後の報道でも、トランプ氏がきょう韓国の文在寅大統領との夕食会に臨む際、記者団からツイッター後から北朝鮮側から連絡があったのか尋ねられ、「連絡があった。現在、取り組んでいる」と述べ、面会の実現に向けて調整していることを示唆している。

  今年2月の第2回米朝首脳会談は決裂したものの、今月に入ってトランプ氏と金氏は互いに親書を送っている。そこに割って入るように、習氏が「DMZで金委員長で会ってはどうか」と先に発言されたのでは、トランプ氏にとってはたまったものではない。トランプ氏がツイッターを活用する意義を改めて考えた。(※写真・下はアメリカ「ホワイト」のツイッターから)

⇒29日(土)夜・金沢の天気     あめ

★「国際紛争」化する日本海

★「国際紛争」化する日本海

         安倍総理は5月14日「海上保安の日」で、海上保安庁の幹部職員を前にこう述べた。「新元号は万葉集の梅の花の歌32首の序文から引用されたものです。海上保安庁の徽章もまた梅であります。梅は厳しい冬の寒さを耐え忍び百花に先んじて花を開き、かぐわしい香りを放ち、実を結び、絶えず人々の身近にあるものです。これは正に海上保安庁そのものではないでしょうか。様々な脅威は時を選ばず押し寄せてきます。新たな令和の時代にあっても梅の徽章を胸に、全職員が一致団結し、荒波を乗り越え平和で豊かな海という実を結んでほしい」(「海上保安庁HP」より)。確かに目立たないが、最前線の守り、防人の仕事だ。

   能登半島沖の日本海の排他的経済水域(EEZ)にはスルメイカの漁業資源が豊富な大和堆(やまとたい)と呼ばれる漁場がある。この時季、毎年のように北朝鮮の漁船による違法操業が繰り返されているのだ。海上保安庁は取り締まりに当たっていて、5月下旬からこれまで延べ300隻の北朝鮮の漁船を確認し、違法操業をする漁船に対し警告を行い、退去しない場合は放水を行っている。しかし、いったんは退去しても、また戻ってきて、イタチごっこが続いている。

   北の木造漁船はイカの網漁で、集魚灯などは装備されていない。日本のイカ釣り船団(中型イカ釣り船)がやってくると、夜、スルメイカは集魚灯の下に集まるので、北の漁船が傍らに寄って来て網漁を行う。接触事故などが起きるとやっかいなことになる。さらに、網がスクリューに絡まると船が故障するので、日本の船団は北の漁船を避けて北海道沖の武蔵堆(むさしたい)へ移動を余儀なくされているのが現状だ。さらに、その日本船団を追いかるように、北の漁船も武蔵堆になだれ込んでくる。

   さらに面倒なのが韓国だ。昨年11月15日には大和堆で山形県のイカ釣り漁船と韓国漁船が衝突している。11月20日、大和堆付近で操業中の北海道のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、この漁船に接近した。連絡を受けた海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入ることで、韓国警備艇は現場海域を離れた。12月4日、島根県の隠岐諸島100㌔の日韓の暫定水域で、石川県漁協所属の中型イカ釣り船が操業中、船を安定させる漁具のロープ「パラシュートアンカー」を海中に放っていたところ、韓国漁船が近づいてきて前方を通過、そのパラシュートアンカーをひっかけ、イカ釣り船は20㍍引きずられ、ロープは切れた。イカ釣り船は韓国漁船に止まるよう呼びかけたが応じなかった。日本側の言い分を無視する、まるで「レーダー照射問題」のような「事件」が海上ではすでに起きている。

  韓国は、竹島は韓国の領土であると言い張り、大和堆も韓国海域であると主張したいので、その布石を打っているのだろうか。これから「海上衝突」状態が本格的に始まることは想像に難くない。安倍総理は「荒波を乗り越え平和で豊かな海という実を結んでほしい」と言うものの、現実はすでに「国際紛争」化している。(※写真は、能登半島・珠洲市の海岸に漂着した北朝鮮の木造漁船=2017年11月)

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり