⇒ニュース走査

★審判ストレス

★審判ストレス

   前回ブログで述べた「津久井やまゆり園」事件の裁判がきょう8日から横浜地裁で始まる。地裁なので裁判員裁判となる。裁判員制度は、2009年5月に刑事裁判に市民の感覚を反映させる目的で導入された。20歳以上の有権者から選ばれた人が裁判官とともに殺人や強盗致傷などの事件について審理に加わる。裁判官3名と裁判員6人による構成で、有罪か無罪か、量刑はそれこそ死刑か無期懲役といったことまで決める。

   最高裁が2019年に公表した裁判員制度10年の総括報告書によると、この間1万1千件を超える裁判員裁判が実施され、8万9千人が裁判員として刑事裁判に参加した。しかし、裁判員制度で顕著になっていることは、辞退率が上昇していることだ。裁判員候補に選ばれながらも辞退する意向を示し認められた辞退率は18年調べで67.0%に上り最高値となった。初年の09年は53.1%だった。

   総括報告書ではその理由として①審理予定日数の増加傾向、②雇用情勢の変化(人手不足、非正規雇用者の増加等)、③高齢化の進展、④裁判員裁判に対する国民の関心の低下、などといった事情が上げられている。中小零細の企業では雇用状況がひっ迫していたり、寝たきりの高齢者を抱える家庭では参加の優先度が低くなるだろう。ただ、総括報告書によると、裁判参加を経験した人にとっては「非常によい経験」と「よい経験」が初年から計95%を超え、満足度が高い。

   興味深いデータもある。裁判員制度では2011年から「健康相談」と「メンタルヘルス相談」に応じている。18年までの8年間でそれぞれ86件と324件の相談(面談、電話、メール)があった。メンタルな相談が多いが、その内訳は「メンタル症状が出ている」27.5%、「話を聞いてほしい」26.3%、「不安についてのアドバイス」20.6%、「ストレスを感じる」8.8%の順だ。では、なぜストレス相談が多いのか。結論から言うと、裁判の状況証拠として遺体写真を見ることになるからだ。遺体写真をめぐって元裁判員が起こした訴訟がある。

   2013年3月、福島地裁郡山支部での強盗殺人事件の裁判で、裁判員の女性が被害者夫婦の遺体のカラー写真を見たり、被害者が助けを求める電話の録音を聞いた直後に嘔吐や不眠の症状が出て、急性ストレス障害と診断された。女性は裁判員裁判の制度そのものを憲法第18条で禁じる「意に反する苦役」に当たるとして国を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。一、二審判決で、裁判員を務めたことと急性ストレス障害の因果関係は認められたものの、裁判員の辞退は制度として認められていることから「苦役」ではないと判断された。2016年3月、最高裁は女性の上告を退けた。

   この訴えがあってからは、殺人事件の裁判では凄惨な遺体の写真をそのまま証拠として提出するのではなく、イラストに代えたり、カラーではなく白黒の小さい写真を使用するなどの工夫がされるようになった。裁判所では裁判員に対し、メンタルヘルスの窓口を設けて、カウンセリングも行っている。

   自身も一度は裁判員になってみたいと思っている。ただ、遺体写真を見て、ストレス症状が出たらどうしようか。裁判員になって呼び出しを受けたにもかかわらず裁判所に出向かなかったら、10万円以下の過料を科せられる。それだったら、裁判所に出向き、遺体の写真は見たくないと主張するか、辞退するしかない。それにしても、「津久井やまゆり園」事件では19人が亡くなっている。一人一人の死を検証する審判の過程で裁判員のストレスは相当なものになるだろうと察する。

   日本のマスメディア(新聞・テレビ)は殺人事件のニュースで遺体写真をいっさい掲載していない。視聴者・読者に配慮してのことだが、このため日本人には遺体写真に「免疫」ができていないのだ。海外のメディアではケースバイケースだが掲載されている。

⇒8日(水)朝・金沢の天気    雨風

☆ジャーナリストの死から読めること

☆ジャーナリストの死から読めること

   学生たちに「ジャーナリズム論」を語るとき、「ウォッチドッグジャーナル」というキーワードをよく使う。ウォッチドッグ(watchdog)は直訳で「番犬」のこと。ジャーナリズムや報道の役割は権力のチェックにある、と。民主主義社会は三権分立だが、権力は暴走しやく腐敗しやすい。権力に対するチェック機能が必要である。政府や官公庁の発表に頼らず、独自に掘り起こす調査報道がなければ、報道機関としての存在意義がない。

   一方で、ウォッチドッグジャーナルに対して、権力側も黙ってはいない。AFP通信(日本語版・2018年12月18日付 )によると、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(RSF)」が発表した、2018年に殺害されたジャーナリストの数は世界全体で80人に上り、348人が収監され、60人が人質として拘束されているという。その80人の中に、サウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が入っている。カショギ氏はウォッチドッグジャーナルの代表格だった。

   カショギ氏がはワシントン・ポスト紙にコラムを掲載していた。同紙のWeb版(2018年10月17日付)の記事=写真=。見出しは「What the Arab world needs most is free expression」(アラブ世界が最も必要とするものは自由の表現だ)。以下要約。「アラブ世界ではチュニジアなどを除きほとんどの国で言論の自由がない。2011年のアラブの春はすでに形骸化している。アラブの人口の圧倒的大多数が国の虚偽の物語の犠牲者になっている。アラブのジャーナリストはインターネットの普及が印刷媒体の検閲から情報を解放すると信じていた時があったが、現在政府は懸命にインターネットをブロックしている。記者を逮捕し、出版物の収入を阻止するため広告主にも圧力をかけている。アラブの普通の人々の声を伝えるプラットフォームや、人々が発信する国際フォーラムが必要性だ。アラブの人々はこの国際フォーラムの創設を通して、プロパガンダで憎悪を広げる国家主義的な政府の影響から解放され、社会が直面する構造的問題に取り組むことができるだろう」

   こうしたカショギ氏の切々とした訴えはこれまで完全に無視されてきた。そのカショギ氏は2018年10月2日、結婚届けを目的にトルコのサウジアラビア総領事館に入ったまま消息を絶つ。10月20日になって、サウジアラビア政府は総領事館でカショギ氏が殺害されたことを認めた。上記のコラムは 最後の執筆となってしまった。

   きょう23日夜のニュース番組(NHK)で、殺害に関与したとして5人に対し、サウジアラビアの裁判所が死刑判決を言い渡したと報じている。死刑が言い渡された人物の名前や肩書などは明らかにされていない。関与が国連人権委員会でも指摘されていたムハンマド皇太子の側近2人について、サウジアラビアの検察当局は証拠がなかったと説明しいる、という。

   来年2020年11月、ムハンマド皇太子が仕切り役となり、サウジアラビアの首都リヤドで「G20サミット」が開催される。サウジアラビアは議長国だ。G20サミットで取り上げられる議題は、世界経済や貿易・投資のほか、気候・エネルギー、雇用、デジタル、テロ対策、移民・難民問題などだ(外務省HP)。しかし、G20サミットは人権とは正面から向き合っていない。

   国際的に批判を浴びたカショギ氏殺害事件。今回の関係者5人の死刑判決は、サミットを11ヵ月後に控え、サウジアラビア政府が事件の幕引きを図ったのだろう。

⇒23日(月)夜・金沢の天気    あめ

☆竹内まりや「いのちの歌」、出雲の考察

☆竹内まりや「いのちの歌」、出雲の考察

        ここ何十年まともに大晦日の『NHK紅白歌合戦』を視聴したことがない。でも、2019年の大晦日はチャンネルを合わせようと思っている。その理由は、竹内まりやが初めてこの番組に出演するからだ。同年代のまりやファンの間ではこの話で盛り上がる。歌うのは「いのちの歌」だ。この歌は最近よく耳にする。結婚式や卒業式など少し厳粛な感じのセレモニーで歌われている。

  「生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに 胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ この星の片隅で めぐり会えた奇跡は どんな宝石よりも たいせつな宝物・・・」。人と人の出会いの喜びや、命をつなぐことの大切さを歌い、心にしみる。そして、CDのジャケットが里山なのだ。桐の花が咲くころ、田んぼで子供たちも入り田植えをしている。手前にはハス田が広がる。生命の息遣いが強くなる遅い春、あるいは初夏の風景だ。

   竹内まりやの詞には生命感があふれている。そう感じたのは昨年11月、島根県の出雲大社を訪れたときのことだ。11月のことを旧暦の月名では神無月(かんなづき)と称するが、出雲では神在月(かみありづき)と称し、全国の神々、つまり八百万(やおよろず)の神が出雲に集いにぎやかになる=写真・上=。出雲は神話のスケール感が違うとの印象だった。その出雲大社の門前にある竹内まりやの実家の旅館に宿泊した。明治初期に造られた老舗旅館は風格あるたたずまい。この家で生まれ、大社の境内で幼少期にはどんな遊びをしたのだろうかなどと想像が膨らんだものだ。

   その旅館に竹内まりやの詩が額入りで飾られている=写真・下=。「杵築の社に神々集いて縁結び栄える神話の里よ」。神々が出会い、縁を結ぶ、その場が神話の里、出雲ですよ、と。おそらく神在月のにぎやかさを表現した詩だろう。出雲大社は樹木の緑に囲まれた山のふもと、里山にある。これは想像だが、竹内まりやは幼少期から出雲の里山で神々や自然の生命の輝きを体感したのではないだろうか。「いのちの歌」のルーツはこの額入りの詩ではないだろうか。

   そう考えると竹内まりやの歌のスケール感が理解できる。「いのちの歌」では「いつかは誰でも  この星にさよならをする時が来るけれど  命は継がれてゆく・・・」と。デビュー41周年にしてようやく紅白歌合戦に。神がかった、愚直なまでの人生のスタイルではある。

⇒16日(月)夜・金沢の天気     はれ

★ポスト・ブレグジットの行方

★ポスト・ブレグジットの行方

   EUからの離脱の是非を争点にしたイギリスの総選挙の開票が行われている。公共放送BBCのWeb版の開票速報をチェックすると、日本時間の午前で議会下院の650議席のうち離脱を掲げる与党の保守党が161議席を獲得、EUとの再交渉や国民投票の実施を公約にする労働党が111議席となっている。

   BBCは独自のexit-poll(出口調査)を実施していて、650議席のうち、保守党が選挙前の議席を大幅に拡大する357議席と予測し、単独で過半数(326議席)に達すると勝利を予想している=写真=。保守党が過半数を制すれば当然、EU離脱に向けた法案が承認され、来年1月の離脱に向けてまっしぐらという道筋がつく。

   イギリスの総選挙が日本にも意外な波及効果を与えているようだ。きょう13日午前の日経平均株価は一時、前日比で619円高い2万4044円まで上昇した。もちろん、これはアメリカと中国の貿易交渉が進展しているとの報道があり、買い注文が集まったのだろう。それに加えて、イギリスのEUからの離脱に道筋がついたことがプラス要因となって買いが後押ししたとも読める。

   話を開票速報に戻す。労働党は議席を減らしているが、SNP(スコットランド民族党)は増やす勢いだ。SNPが今回選挙で躍進すれば、SNPが選挙公約で訴えてきた「EU離脱への反対」と「スコットランドの独立」のボルテージがさらに高まるだろう。以前から、スコットランドにはイギリスがEUから離脱するなら、スコットランドは独立してでも、EUに残留すべきという「民意」が漂っていた。

   さらに、イギリスの選挙結果はEUにどのような影響を与えるのだろうか。もともとイギリスはEUと付かず離れずのスタンスをとってきた。通貨統合はせずポンドの存続を維持してきたのは典型的な事例だろう。ところが、2011年以降のユーロ危機で金融に対する規制強化が進み、「金融立国」であるイギリスのフラストレーションが高まる。拍車をかけたのが、EU加盟国には域内には移動の自由があり、東欧諸国などから仕事を求める移民がイギリスに多数流入したことだ。EU離脱の気運が一気に高まり、2016年6月の離脱をめぐる国民投票へとつながる。

   今回の選挙で離脱への道筋がはっきりしたことで、2020年に国際政治が大転換期を迎えるかもしれない。まさに、ポスト・ブレグジットが焦点になってきた。

⇒13日(金)午前・金沢の天気     はれ

★その署名が世界を変えるのか

★その署名が世界を変えるのか

   トランプ大統領に相当な決断があったことは想像に難くない。今月23日付のこのブログで、トランプ氏が香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案がアメリカ議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかどうか、「通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。」と書いた。さらに「『金のために民主主義を売ったアメリカ大統領』として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。」とも述べた。

   というのも、トランプ氏はそれまで、「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」(22日付・ロイター通信Web版)と述べていた。記事をストレートに解釈すれば、トランプ氏が中国による香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動すると同じ意味ではないかと読んでいた。 

   民主主義を守るというアメリカ議会の強い政治姿勢を示した法案だけに、トランプ氏にとっては拒否権を行使したら、国内外からの大きな非難に揺れる。その意味で、香港の区議会議員選挙の結果を見計らったうえでの決断(署名)だったのだろう。きょうのアメリカのCNN(Web版)=写真=によると、新法は政府に対し香港の特別な自由が保たれているか毎年検証するよう求めているほか、自由が維持されていないと判断された場合、香港への優遇装置の取り消す。また、香港市民の恣意的な拘束、拷問、自白強要などに関与した人物への渡航制限、民主化を阻害した人物に対する資産凍結などの措置も盛り込まれている。個人への制裁にも及ぶ強烈な内容だ。

   当然、中国政府は怒り心頭だろう。時事通信Web版によると、法成立についてさっそく非難声明を出し、香港や中国の内政に対する著しい干渉であり、「赤裸々な覇権行為」「中国は必ず断固反撃を加え、それで生じる一切の結果はアメリカが負う」と激しく反発している。世界の2大国の対立が経済面、政治面で先鋭化してきた。これがグローバル社会にどう波及するのか。日本の政治はこの事態にどう向き合うのか。まさか、あすも「桜を見る会」なのか。きょうの夕方、北朝鮮は飛翔体を発射したようだ。アメリカと中国、韓国と北朝鮮の混迷がさらに深まる。

⇒28日(木)夜・金沢の天気     くもり

★香港のめげない民主主義

★香港のめげない民主主義

   香港の民主主義は生きている。実施さえも危ぶまれていた香港の区議会議員選挙がきのう(24日)予定通り行われ、香港メディアは政府に批判的な立場の民主派が議席の3分の2にあたる300議席を超えると報じている。この様子を、「Hong Kong elections: Pro-democracy group makes big gains.」とイギリスBBC(25日付・Web版)は伝えている。あの騒乱の中で投票率が70%を超えて過去最高となり世界の注目を集めていた。冒頭で述べた言葉は「香港のめげない民主主義」と言い換えてよいかもしれない。

   注目したのは投票率だった。4年に1度行われる香港の区議会議員選挙(18区議会で452議席)は有権者(18歳以上)による直接投票のため民意を反映する選挙と言える。抗議活動が激しさを増しす騒乱状態の中、安全で公正に行えるのかという懸念の声が市民からも上がり、600余ある投票所すべてに重装備の警察官が配置されるなど厳重な警備態勢がとられたようだ。その状況下で、投票率は71.2%と、4年前を24ポイント上回った。香港の有権者は相当の覚悟を持って投票場に足を運んだに違いない。

        もう一つ注目していたのは開票の在り方だ。諸外国で見られる、票のすり替えによる権力側の不正などは香港ではできないシステムのようだ。と言うのも、開票作業はメディアや有権者への公開で行われていて、開票作業の様子を画像で掲載しているメディアもある(25日付・朝日新聞Web版)。余談だが、日本でも開業作業は公開されていて、その様子を双眼鏡でのぞくことも許可されている。日本のメディアは「開披台(かいひだい)調査」と呼び、候補者の得票を先読みする際に使う手法だ。開票作業の公開は民主主義を担保している。

    民主派の躍進で今後、中国政府はどのような手を打ってくるのか。香港の民意がはっきりしたことで、中国政府のあせりは相当であることは想像に難くない。むしろ、これを機会に中国政府が香港の一国二制度を担保し、人民解放軍を引き上げると宣言すれば、中国の国際評価はかなり上がると思うのだが。

⇒25日(月)朝・金沢の天気     あめ

★「安倍一強」を問うならば

★「安倍一強」を問うならば

      連日、総理大臣主催の「桜を見る会」をめぐり、ことしの招待者のうち千人程度が安倍総理からの推薦だったことについて国会で問題になっている。きょう21日は参院内閣委員会で、総理が地元関係者を招いたことは公職選挙法違反に当たるのではないかとの追及があり、菅官房長官は「当たらない」と答弁をしていた。ニュースを見ていて、国会になぜ緊迫感がないのだろうかと正直思う。国会がまるで「お花畑」のようだ。花見の会を国費でやること自体が間違っている。野党は「無意味な桜を見る会なんて金輪際止めろ」となぜ言わないのか、と不思議だ。

  一方で緊迫しているのが香港だ。アメリカ議会上院は、香港での人権尊重や民主主義を支援する「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した(19日)。香港の一国二制度が機能しているかどうかアメリカ政府に毎年の検証を義務付け、人権を犯した中国政府関係者らに制裁を科す内容だ。下院では10月に可決されていて、成立にはトランプ大統領の署名が必要となる。おそらく、中国は猛反発してくるだろう。貿易交渉どころではない、次なる対立のステージに上るのではないかと緊張感が走る。

  日本の国会とアメリカの議会、この違いは何だ。野党が指摘するように、「安倍一強」のせいなのか。もし安倍一強を言うのであれば、このテーマを問うてほしい。安倍総理は中国の習近平国家主席を国賓として来春に招くという段取りで動いている。来月下旬に中国・成都で予定される日中韓サミットの折に北京で習氏と会談して国賓来日を確認するという。

  香港での民主主義の蹂躙、尖閣諸島周辺での中国公船の連日の挑発的な行為などを今の中国の政治姿勢に違和感を持っている日本国民は多い。内閣府による「外交に関する世論調査」(2018年10月)でも、中国に親しみを感じる20.8%、感じないが76.4%である。この状況下で国民は習氏に国賓来日を歓迎するだろうか。国賓として招く目的は何か。これで上記の問題が解決するのだろうか。これこそが安倍一強の姿ではなのだろうか。で、これをなぜ野党が国会で質さないのか。

⇒20日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆続・ 「香港騒乱」の様相

☆続・ 「香港騒乱」の様相

        騒乱状態の香港。アメリカのポンペオ国務長官が、デモ隊と警官隊の激化する衝突について「深刻な懸念」を表明したとメディアが報じている(19日付・共同通信Webニュース)。それによると、ポンペオ氏は香港市民はイギリスからの香港返還(1997年)に際し保障された自由を求めているだけだと指摘し、「中国共産党は約束を守らなければならない」と述べ、香港政府による暴力的対応を支持する中国政府をけん制した。一連の香港発のニュースをチェックしていると、警察によるまるで武力制圧の様相だ。

   香港の騒乱を詳細に報じているイギリスBBCのWebニュース(18日付日本語版)では、警察官が理工大学のキャンパスに入った様子を記者がルポしている。17日午後5時半ごろ、警官隊がキャンパスを制圧しようと攻勢に出た。デモ参加者は、火炎瓶やレンガを投げるなどして抵抗した。双方の衝突が散発的に続き、キャンパス内では火炎瓶による火災が発生した。一部のデモ参加者はキャンパスを出ようとしたが、警官隊の催涙ガスで押し戻した。

   警官隊は17日午後10時を最終期限とし、デモ参加者に降伏を呼びかけ、応じなければ殺傷能力のある武器を使う可能性もあると警告した。すると、多くのデモ参加者は黒い服を脱いでマスクを外し、姿を消した。多くの若者が拘束され、キャンパスには500人以上の若者がとどまっていてる。

   キャンパスに残った若者・学生たちは危険を考慮せず、覚悟を固めているようだという。BBC記者に学生は「もし私が死んだら、私のことを覚えていてほしい」と言った。記者が「そういう事態になると思うか」と聞くと、不安そうに肩をすくめたという。死を覚悟している若者の姿が目に浮かぶ。

   その若者たちを助けようと市民が動いた。けさ19日のNHKニュースによると、警察に包囲され大学にとどまる学生たちを助けようと大勢の市民が大学の周辺に集まった。しかし、警察は強制排除に乗り出し、市民と衝突した。拘束される人が相次いだ。ポンペオ氏が「深刻な懸念」を表明した背景は、保障されたはずの自由がすでに市民から奪われているこの現状に危機感を抱いたのだろう。

⇒19日(火)朝・金沢の天気    くもり

★ 「香港騒乱」の様相

★ 「香港騒乱」の様相

   まさに騒乱の様相だ。香港警察は18日、抗議活動参加者らとのにらみ合いの末、大学に突入したとイギリスBBCのWeb版が伝えている=写真=。150年以上もイギリスの植民地だった香港は、一国二制度の下に中国に返還され、特別行政区となった。表現の自由などの権利も保障されている。デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐってだった。

   逃亡犯条例が中国政府と間で成立すれば、中国に批判的な香港の人物がつくられた容疑で中国側に引き渡される。つまり、表現の自由などが脅かされるのではないかとの懸念が香港の学生や市民の間で高まった。10月に改正案は撤回されたものの、香港政府はデモの参加者にマスクの着用を禁止する緊急状況規則条例「覆面禁止法」を制定した。顔を出させることでデモの過激化を抑圧する効果を狙ったものだろう。中国社会では監視カメラによる顔認証システムの普及していて、個人の情報が警察などで蓄積されていることは知られている。これに反対して逆に学生たちが覆面化・仮面化して、抗議活動が過激化する。まさにパラドックス現象となった。

   衝撃的な映像が日本のテレビメディアでも流れた。警察官が交差点で、近づいてきた黒いマスクのデモ参加者に至近距離で発砲し、命中して倒れる様子だ(今月11日付)。この映像はもちろん世界に流れたであろう。冒頭で「騒乱の様相」と述べた。デモ参加者に対する警察側の発砲は、すでに警察では鎮めることが不可能な状態にあることを示すシンボリックな映像ではないかと読む。次なるステージは、軍による介入だろう。そう思案していたところに、別のニュースが流れてきた。香港に駐留する中国の人民解放軍の軍人らが、デモの学生らが路上に設置した障害物を撤去する活動に参加した(16日付・朝日新聞Web版)。軍の駐留部隊が動くのは初めてで、軍隊の存在を示し、デモ隊を牽制する狙いがあるのではないか、と報じられている。

        BBCの記事は生々しい。「Large fires broke out at entrances to the Polytechnic University (PolyU), where protesters hurled petrol bombs and shot arrows from behind barricades.Officers earlier warned they could use live ammunition if protesters did not stop attacking them using such weapons.」(ポリテクニック大学(PolyU)の入り口で大規模な火災が発生し、抗議参加者は警察にガソリン爆弾を投げつけ、バリケードの後ろから矢を放った。警官は以前、抗議者がそのような武器を使用して攻撃するのを止めなかった場合、実弾を使用できると警告していた)。先が読めない、騒乱の様相だ。

⇒18日(月)午前・金沢の天気    はれ

☆「桜を見る会」野党追及が内閣支持率を

☆「桜を見る会」野党追及が内閣支持率を

    この支持率の意味を考えてみた。きのう(15日)の時事通信Webニュースによると、11月の世論調査(8-11日、回収率62.5%)は内閣支持率が前月比で4.3ポイント増えて48.5%、不支持率は3.6ポイント減り29.4%となった。NHKの世論調査(8-10日、回答率58%)は内閣支持率が9月調査より1ポイント減り47%、不支持は2ポイント増え35%だった。経産大臣と法務大臣の閣僚の相次ぐ辞任や、大学入試への英語民間試験の導入見送り、総理主催の公的行事「桜を見る会」の私物化問題など政権側の不手際が相次いでいるにもかかわらず、この内閣支持率の高さは一体なぜなのか。

    その考えるヒントは意外と、きょう朝に視聴した日テレ系番組『ウェークアップ!ぷらす』にあるかもしれない。番組では、桜を見る会が来年は開催中止となることを特集していた。桜を見る会の前日に都内ホテルで開かれた安倍総理の後援会「前夜祭」の夕食会の会費が5千円だったことから、野党側は総理サイドが差額分を負担していたら公職選挙法に抵触することになり、「総理辞職」を念頭に徹底して追及する構え。この件では安倍総理は記者団に「事務所や後援会としての収入、支出は一切ない。金額はホテル側が設定した」と説明している(15日)。

    この一連の国会の動きに、キャスターの辛坊治郎氏が「連日の野党の追及を聞いていると、野党の人たちはバカなんじゃないかと多くの人は思います」と持論を述べていた。この辛坊氏のコメントは総理を擁護するという立場の発言ではなく、関西人の目線だ。「私、関西でメディアやってて不思議なのは、けっこう大騒ぎになってますが、在京のテレビ局にしろ新聞社にしろ全員幹部が毎年参加していて実態知らないはずがない」と辛口だった。これは視聴者と近い感覚かもしれない。視聴者の大多数は有権者でもある。

    有権者の感覚は「そんなこともあるだろう。本人がやりすぎたと反省すればそれで済む話ではないか。来年は中止、それでよい」ではないだろうか。国会で野党が連日追及し、それを大見出しで新聞やテレビメディアが報じていることに、有権者は意外とさめている。そこに、「世論調査です、協力ください」と電話がかかり、「安倍内閣を支持しますか」と問われると、現内閣支持と答え、その理由に「他に適当な人がいない」(時事通信の調査23.0%)の選択肢を取ってしまうのではないか。政党支持率は自民が前月比2.6ポイント増の30.1%でトップ、立憲民主は同2.7ポイント減の3.1%だ。野党頑張れの有権者のエールはこの数字からは読むことができない。

    今月23日に失効が迫っている日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について与野党のまともな論戦を見たことがない。野党は倒閣ありきの追及ではなく、国際問題や国内問題で政権と論戦を交わしてほしい。

⇒16日(土)午後・金沢の天気    くもり時々あめ