⇒ニュース走査

☆北の武装船、日本海の一触即発

☆北の武装船、日本海の一触即発

   イギリスBBCテレビのWeb版をチェックしていると、日本海で北朝鮮がロシアとせめぎ合っている。「Russia holds 80 North Koreans on ‘poaching’ boats」の見出しの記事=17日付・BBCニュースWeb版=によると、ロシアの国境警備隊が今月17日、日本海のロシアの排他的経済水域(EEZ)で北朝鮮の密漁船2隻をだ捕し、乗組員80人以上を拘束したと発表した。ロシア側の説明によると、密漁船1隻から武力攻撃を受け、国境警備隊3人が負傷したという。

   ロシア連邦保安局(FSB)報道官はだ捕の経緯について、朝鮮半島とロシア、日本の間に位置する、日本海の好漁場「大和堆」で、北朝鮮のスクーナー(帆船)2隻とモーターボート11隻が密漁しているのを発見したと説明。さらに、ロシア外務省は北朝鮮の駐ロシア臨時代理大使を呼び出し、「深刻な懸念」を表明した。ロシア・インタファクス通信は、FSBの話として、拿捕された漁船は極東ナホトカ港に連行されたと伝えた。

   ロシアと北朝鮮がこの海域で争うのは今回が初めてではない。FSBは今月12日にもロシアのEEZでイカを密漁したとして北朝鮮の漁船16隻を拿捕し、250人以上を拘束したと発表していた。今年6月には、北朝鮮がロシア漁船をだ捕し、乗組員を逮捕した。北朝鮮側は今回のだ捕についてコメントしていない。

   懸念するのは北朝鮮の船の武装化だ。8月23日には、大和堆で武装した船員が乗った北朝鮮の船2隻を水産庁の取締船が見つけ、連絡を受けた海上保安庁の巡視船も駆け付けた。現場は日本のEEZ海域だった。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた不審船は、小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船で、高速艇には小銃を持った船員がいたという。周辺では日本の漁船も操業していて、水産庁は漁船に対し、安全確保のため海域を離れるよう伝達した。日本海は一触即発の緊張感が漂っている。

⇒21日(土)夜・金沢の天気    はれ

★「9・11」から18年、アメリカは

★「9・11」から18年、アメリカは

   「9・11」からもう18年になる。、アメリカで同時多発的にテロ攻撃が実行されたその日だ。イスラム過激派のテロ組織「アルカイダ」による犯行。死者は3千人ともいわれた。現地時間で午前8時46分、日本時間で午後9時46分だった。当時帰宅して、報道番組「ニュースステーション」が始まったばかりの同9時55分ごろにリモコンを入れると、ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突する事故があったと生中継の映像が映し出されていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。リアルタイムの映像で衝撃的だった。番組のコメンテーターが「これは事故ではなく、おそらくテロです」と解説していた。テロリズム(terrorism)という言葉が世界で認知されたのは、この事件がきっかけではなかったか。

   この同時多発テロはアメリカの中心部が初めて攻撃を受けた歴史的な事件でもあった。このころからアメリカ人の深層心理が揺らぎ始めたのではないかと推測している。デモクラシー(民主主義)という価値観を創造し、グローバルに展開してきたのはアメリカだったと言っても異論はないだろう。1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等、民主主義という共通価値を創り上げる先頭に立った。戦後、ソ連や北ベトナムなど共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等、民主主義という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値は性や人種、信仰、移民とへと広がり深化していく。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、アメリカの本丸が攻撃された同時多発テロをきっかけに、誰もが自由と平等だがそれが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば、それでは偽善ではないか、とアメリカ社会の白人層が考え始めた。2003年にアメリカを中心とする有志連合が始めたイラク戦争は大量破壊兵器の廃絶を名目とした軍事介入とされた。そこには自由と平等、民主主義という共通価値はすでになかった。ポリティカル・コレクトネスは政治的、社会的に公正・公平・中立的という概念だが、広意義に職業、性別、文化、宗教、人種、民族、障がい、年齢、婚姻をなどさまざまな言葉の表現から差別をなくすこととしてアメリカでは認識されている。しかし、ポリティカル・コレクトネスは同時に、本音が言えない、言葉の閉塞感として白人層を中心に受け止められている。心の根っこのところでそう思っていても、表だってはそうのように言わない人たちでもある。

   こうした「ポリティカル・コレクトネス疲れ」の白人層に支持されたトランプ政権のいまの在り様はポピュリズム(Populism)と称される。ポピュリズムは、国民の情緒的支持を基盤として、政治指導者が国益優先の政策を進める、といった解釈だろう。トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を唱え、世界に難題をふっかけている。もう、アメリカではポリティカル・コレクトネスは死語と化しているのではないだろうか。

⇒11日(水)朝・金沢の天気    くもり

☆レーダー照射事件の裏読み

☆レーダー照射事件の裏読み

    今の日本と韓国の関係性を「そもそも論」で振り返ってみたい。発端は2018年12月20日午後3時ごろ、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射したことだった。火器管制レーダーは、ミサイルで対象を攻撃するために距離や高さ、移動速度を計測するためのもので、通常のレーダーとは全く違う。

   岩屋防衛大臣が翌日21日の緊急記者会見で、このレーダー照射の一件を公表した。火器管制レーダーを照射したのは韓国海軍の駆逐艦「クァンゲト・デワン」=写真・上、防衛省ホームページより=。P1は海上自衛隊厚木基地所属。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に照射の意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ。防衛省ホームページには、P1が撮影した動画が掲載されていて、その経緯が詳細に紹介されている。

   これに対し、韓国側は火器管制レーダーの使用について「哨戒機の追跡が目的ではなく、遭難した北朝鮮船捜索のため」などと反論した。防衛省は不測の事態を招きかねず、意図しなければ起こりえない事案であり、「極めて危険な行為」として韓国側に強く抗議した。ここから日本と韓国の応酬がエスカレートしていく。では、そもそも、なぜ韓国は駆逐艦を派遣してまで「遭難した北朝鮮船」を捜索したのか、という疑問がずっと残る。防衛省ホームページの映像では駆逐艦と韓国・海洋警察庁の警備艦が洋上に見え、警備艦が北朝鮮の木造船らしき船に近づいている=写真・下=。問題はここにあるのではないか。

   映像から推察する。海難救助であるならば海軍と海洋警察が連携して救助に向かうこともあるだろう。北の船が救助信号を出してSOSを求めたのであれば、EEZ内なのでその信号は日本の海上保安庁にも海上自衛隊にも救助信号は届き、現場に向かったはずだ。ということは、北の船は救助信号を出していない。救助信号を出していないのに韓国はなぜ「遭難」の救助と弁明したのか。

  ここからは憶測だ。本来の海難救助でもないのに海軍と海洋警察が連動して、北の船と接触するのは、指揮系統上、そのような命令を出せるのは大統領府しかない。文在寅大統領が「遭難した北朝鮮船を捜索せよ」と命令した背景には、北の要請があったのだろう。大統領に要請をできる北の人物は、金正恩党委員長しかいない。ということは、遭難したのは単なる漁船ではなく、重要な任務を帯びた工作船ではなかったのか。特殊な通信機を装備している工作船ならば本国に直接SOSを出すことは可能だろう。工作船が能登半島沖で事故を起こし漂流した。そこであえて、韓国に捜索と救助を依頼した、と推測する。

  その現場は、自衛隊のレーダーがカバーしている。日本のP1哨戒機が飛んで来るのは十分に予想された。そこで、実際の遭難救護は警備救難艦、海軍の駆逐艦はP1哨戒機に射撃用レーダーを照射して追い払う役割だったのだろう。
 
   工作船についてさらに憶測する。能登半島の複雑に入り組んだリアス式海岸は工作員の絶好の隠れ場所となっていた。一連の日本人拉致を指揮した大物スパイも能登のリアス式海岸から入ってきた。1973年に輪島市の猿山岬から不法入国し、以後東京、京都、大阪に居住した北朝鮮のスパイ・辛光洙 (シン・ガンス)だ。彼を直接指揮したのが当時の金正日総書記だったといわれる。辛光洙はICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配されている。
 
   今回、トップの命令を受けた工作員が乗船していたのではないか。韓国がそのことを承知しながら船の救助を行ったのはないか。工作船であるとしたら、何の目的で日本に向かっていたのか。疑念はさらに深まる。

⇒6日(金)夜・珠洲市の天気      はれ

☆隣国の「あおり運転」

☆隣国の「あおり運転」

   まっすぐに道を走行していて、後ろの車が接近し車間距離を詰めてきたので、注意を喚起するためクラクションを1回鳴らすと、今度は右横に接近して嫌がらせ運転を始めた。もう10年以上も前、北陸自動車道での自らの体験だ。いま問題となっている「あおり運転」である。このあおり運転は隣国との状況と実によく似ていると思う。

    先月2日、日本側が輸出管理上のホワイト国(優遇対象国)から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。これを受けて、韓国の文在寅大統領は「賊反荷杖」という韓国語の四字熟語を使って日本批判を展開した。日本語訳では「盗人猛々しい」に相当し、「加害者である日本が、盗っ人たけだけしく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と文氏の発言した(朝日新聞Web版)。

   そもそも、ホワイト国は政府が信頼できる輸出先だと認める国だ。武器や大量破壊兵器、それに関連する資材、兵器の汎用品などについて経産大臣の許可が必要だ。韓国側が認めているように、武器製造に転用可能な戦略物資の違法輸出を摘発した事例が2015年から19年3月までに156件あった(7月12日付・東京新聞HP版)。素直に「改善する」と言えばよいのに、それを歴史と絡めて批判してくるところに韓国側の無理がある。

   先月22日、韓国側は日韓防衛当局間で軍事機密のやりとりを可能にするGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を継続せずに破棄すると発表した。翌日23日、駐韓日本大使を呼び、GSOMIA破棄を正式に通告した。さらに、韓国の李洛淵首相が「日本が不当な措置を元に戻せば、GSOMIA破棄を再検討できる」と述べ、ホワイト国除外の撤回を日本側に求めた。安全保障上の合意を輸出管理上の手続きと引き換えにするという発想が理解できない。

   連動するように、韓国軍は25日と26日、島根県の竹島周辺で軍事訓練を行った。これに対してアメリカ国務省は「韓国と日本の最近の意見の対立を考えれば、島での訓練のタイミング、メッセージ、規模の大きさは今の問題を解決するのに生産的ではない」と韓国批判のコメントを出した(8月27日付・NHKニュースWeb版)。もともとは韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題から始まったが、GSOMIA破棄まで来ると辟易(へきえき)とする。

   こうした隣国のまさに「あおり運転」の今後は外交的にどうなるのだろうか。いわゆるアグレッシブドライビング(速度超過、短い車間、割り込み、頻繁な車線変更、進路妨害など)の精神状態でよく指摘されるのは「衝動制御障害」や「復讐願望」「思考停止」「想像力の欠如」などだ。とくに衝動制御障害は、他人に危害を与える行為に自己抑制が効かない障害だ。このあおり運転の結末は自ら事故を招く、ということになるだろう。これを国家に置き換えたら、空恐ろしい。

   冒頭のあおり運転に遭遇した話の続きだが、最後はクラクションを派手に鳴らしながら猛スピードで去っていった。  

⇒2日(月)朝・金沢の天気     あめ

☆隣国の動向と北陸経済を測る

☆隣国の動向と北陸経済を測る

    韓国への輸出規制強化に対するリアクションや、アメリカと中国の貿易摩擦など隣国の動向が北陸の地域経済にどう波及するのか気がかりでもある。財務省北陸財務局が月例で報道発表している北陸経済調査(8月29日付)がホームページで掲載されているのでチェックしてみる。概況では、北陸財務局管内(石川県、富山県、福井県)の 最近の経済動向は「緩やかに拡大しつつある」としながらも、先行きでは「通商問題の動向、中国経済の先行きなど海外経済の動向 に関する不確実性が企業活動に与える影響を一層きめ細かく注視する」とやはり警戒感をにじませている。

    もう少し詳しく読み込んでみる。主要項目の判断の中で、個人消費は「緩やかに拡大しつつある」とある。百貨店とス-パーでの販売が前年を上回っている。家電大型専門店の販売は、冷蔵庫など白物家電やテレビに動きがあり、「緩やかに回復しつつある」と。ただし、インバウンド観光客を誘致している主要温泉地では6月の宿泊数は前年を下回った(-1.5%減)。発表の中では国別のインバウンド客数の記載はないので詳細は分からない。

    主要項目の判断の中で、生産は電子部品・デバイスが足踏みの状況にあることや半導体製造装置に弱さがみられることから、「拡大の動きに一服感がみられる」との表現だ。電子部品・デバイスは自動車向けが増加しているものの、スマートフォン向けに弱さがみられ、「全体では足踏みの状態」にある。中国への輸出が多い生産用機械は、半導体製造装置に弱さがみられるものの、金属加工機械が持ち直しているほか、繊維機械、建設・鉱山機械が増加していることから「全体では緩やかに回復している」との表現だ。繊維は、炭素繊維など非衣料向けが堅調となっているほか、衣類向けに動きがみられることから、「全体では緩やかに持ち直しつつある」と。

    冒頭で述べたように、現時点は日本と韓国の通商問題、米中の貿易摩擦による中国経済先行き懸念はまだ北陸の経済を直撃してはおらず、「細かく注視する」段階だ。ただ、懸念がある間は設備投資もままならないだろう。特に数字として今後表面化しやすいのはインバウンド観光かもしれない。10月の消費税率引き上げによる内需の冷え込みとタイミングが重なると「ヤバイことになる」のではないか。(写真は、インバウンド観光客に人気の金沢21世紀美術館のヤン・ファーブル作「雲を測る男」)

⇒31日(土)朝・金沢の天気       はれ

★「福沢諭吉の時代」と現代

★「福沢諭吉の時代」と現代

   かつて知人から教えてもらった言葉。「愚かな人は、すぐに怒りをあらわす、しかし賢い人は、はずかしめをも気にとめない」。ネットでその言葉を調べると、「旧約聖書」の「箴言(しんげん)十二章十六節」にあった。この言葉を思い起こしたのも、最近頻繁にニュースで取り上げられている、韓国政府から日本に向けたコメントが気に障っていたからだ。

   韓国側の気に障る言葉はいくつかある。今月2日、日本側が輸出管理上のホワイト国(優遇対象国)から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。これを受けて、韓国の文在寅大統領は「賊反荷杖」という韓国語の四字熟語を使って日本批判を展開した。日本語訳では「盗人猛々しい」に相当し、「加害者である日本が、盗っ人たけだけしく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と文氏の発言を伝えている(朝日新聞Web版)。文氏のコメントは自ら招集した緊急国務会議での発言で、いわば公式発言だ。

   もう一つ。今月22日、韓国側は日韓防衛当局間で軍事機密のやりとりを可能にするGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を継続せずに破棄すると発表した。翌日23日、駐韓日本大使を呼び、GSOMIA破棄を正式に通告した。さらに、韓国の李洛淵首相が「日本が不当な措置を元に戻せば、GSOMIA破棄を再検討できる」と述べ、ホワイト国除外の撤回を日本側に求めた。安全保障上の合意を輸出管理上の手続きと引き換えにするという発想が理解できない。大いなる勘違いなのではないか。

   それと連動するように、韓国軍は25日と26日、島根県の竹島周辺で軍事訓練を行った。これに対してアメリカ国務省は「韓国と日本の最近の意見の対立を考えれば、島での訓練のタイミング、メッセージ、規模の大きさは今の問題を解決するのに生産的ではない」と韓国批判のコメントを出している(27日付・NHKニュースWeb版)。もともとは韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題から始まったが、GSOMIA破棄まで来ると辟易(へきえき)とする。

   134年も前、隣国に対する憤りの念を持った人物がいた。福沢諭吉だ。主宰する日刊紙「時事新報」の1面社説にこう書いた。「・・独リ日本の旧套を脱したるのみならず、亜細亜全洲の中に在て新に一機軸を出し・・」(1885年3月16日付、本文はカタカナ漢字表記)。全文2400字に及ぶ記事の中で近隣諸国についてこう述べている。「日本を含めた3国は地理的にも近く”輔車唇歯(ほしゃしんし)”(お互いに助け合う不可分の関係)の関係だが、今のままでは両国は日本の助けにはならない。西欧諸国から日本が中国、朝鮮と同一視され、日本は無法の国とか陰陽五行の国かと疑われてしまう。これは日本国の一大不幸である」(鈴木隆敏編著『新聞人福澤諭吉に学ぶ~現代に生きる時事新報~』より引用)。

  福沢が唱えた「脱亜」の背景は、当時の清国、李氏朝鮮は近代化を拒否して儒教などの旧態依然とした体制に固執していた。そこで福沢は「我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と記した。政治的な縁切り(国交断絶)ではなく、「謝絶」と表現した。謝りつつも要求には応えられない、と。当時の日本と隣国との関係性をリアルに表現している。そして現代と時代感がどこか通じるところがある。(※写真は、慶応義塾大学三田キャンパスの福沢諭吉像)

⇒28日(水)朝・金沢の天気    あめ

☆密約を疑う、トランプ氏のやさしい眼差し

☆密約を疑う、トランプ氏のやさしい眼差し

   韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を日本に通告した翌日の今月24日、北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を発射した。このニュースを視て、「やっぱりそうきたか」と予想通りだった。GSOMIAは互換する安全保障上の情報を保護する日韓連携の、まさに土台だった。韓国側の破棄通告を歓迎する、いわば「祝砲」が今回の短距離弾道ミサイルの発射ではなかったか。

        北は国連安全保障理事会の決議(2006年)でいかなる弾道ミサイルも発射を禁じられており、安保理は緊急会合を開いて対応を協議して当然だが、安保理の開催を求める国が出ないのはなぜか。北は先月25日以降だけでも7回立て続けで弾道ミサイルを発射している。この打ち放題は何を意味するのか。

   この背景には、アメリカのトランプ大統領が北の金正恩・朝鮮労働党委員長を擁護するような発言(今月2日のツイッター)をしているからではないかと推測する。先月25日からの相次ぐ弾道ミサイル発射について、トランプ氏は3回も投稿している。「….Chairman Kim does not want to disappoint me with a violation of trust, there is far too much for North Korea to gain – the potential as a Country, under Kim Jong Un’s leadership, is unlimited. Also, there is far too much to lose. I may be wrong, but I believe that……」。3回分を以下要約する。国連決議への違反はあるかもしれないが、キム委員長は私への信頼に反して私を失望させたいとは思っていない。北朝鮮が得るものはとても大きく、同時に失うものもとても大きい。私は間違っているかもしれない。それでも、キム委員長は自国について偉大かつ素晴らしい展望を持っており、その展望を実現させることができるのは私を大統領とするアメリカだけだと確信している。

   トランプ氏の意図はおそらく、アメリカと北朝鮮の双方の将来的な利益を勘案するなら、一連の短距離ミサイル発射を気に留めないと述べているのだろう。なぜ、トランプ氏は金氏をそこまで擁護するのかと勘ぐってしまう。ツイッターの呼びかけをきっかけに急きょ実現した6月30日の両氏の会談=写真・下=は当時あたかも「政治ショー」のように報じられたが、ひょっとして密約があったのではないか、と。

      トランプ氏が金氏に非核化だけを望むのであれば徹底的に国連決議への違反を問うて、経済制裁をすればよいだけの話だ。「under Kim Jong Un’s leadership, is unlimited.」などと持ち上げる必要性はあるのだろうか。ではその密約とは何か。以下は空想だ。トランプ氏は北朝鮮の豊富な地下資源(金、鉄、マグネサイト、無煙炭、銅などの有用鉱物や希少金属など)に目を付け、非核化を条件にアメリカは鉱山開発の投資を積極的に行い、アメリカと北がウインウインの関係になることを約束する、と。これに金氏も「考えさせてください」などと拒否はしなかったのだろう。

   トランプ氏は金氏がその決断をするのをあえてやさしい眼差しで見守っている状態ではないのか。ツイッターの勝手な裏読みだ。

⇒27日(火)夜・金沢の天気     あめ

★寝不足の「甲子園レジェンド」

★寝不足の「甲子園レジェンド」

  夏の甲子園大会、石川代表の星稜は決勝戦(22日)で大阪の履正社に敗れ準優勝となった。仕事の合間にテレビで観戦していた。7回に同点に追いついた時はこれから逆転が気が始まると期待し、9回裏ではサヨナラ勝ちのドラマを勝手に想像していたが、終わってみると「ここまでベストを尽くしてよくやった」と。

  きょう朝刊では地元ローカル紙の見出しが躍っていた=写真=。記事を読んで、目を引いたのは星稜OBで、甲子園レジェンド「5打席連続敬遠」の松井秀喜氏のコメントだった。記事には松井氏が「大会本部を通じてコメントを出した」とあるので、おそらく大会主催者の朝日新聞の記者がニューヨークにいる本人にインタビューしたものを共有したのだと察する。長いコメントだが全文を引用する。
                  ◇
  「結果は残念でしたね。見ていましたよ。決勝戦だけではなくて、インターネットで全試合見てました。でも、仕方がないです。勝者と敗者が必ず出てしまうのが野球です。履正社とお互いに精いっぱい戦って、負けたわけですから。決勝戦も非常にいい試合でした。7回の同点劇の攻撃なんか、素晴らしかった。

   奥川君を中心とした、まとまったチームに見えました。守備も良かったし、打線は苦しんでいましたが、智弁和歌山戦以降、爆発しましたね。今までの星稜だったら、智弁和歌山に負けて終わり。甲子園での死闘は必ず敗者になった。あの試合に勝てたことは、今までの星稜の歴史を変えてくれたと思います。令和元年、101回目の甲子園で、何か新しい歴史が始まる感じがしました。

   林監督については、選抜大会以降、彼も大変だったと思う。(謹慎の)2カ月間、野球を離れて、彼も自問自答し、新たな出発をしてここまで来られたことは、素晴らしいですし大きな財産になったと思います。でも、ここで優勝できないのが、星稜。母校のそういうところも大好きです。何か新たな宿題が残った感じですね。また、新たなチャレンジをして全国制覇を狙ってもらいたいですね。

   ただ目標は全国制覇かもしれませんが、星稜高校野球部のモットーは、あくまでも、野球を通しての人間形成です。それが校訓である『社会に役立つ人間の育成』につながっていくと考えています。

   後輩たちのプレーにたくさん感動させてもらいました。林監督はじめ選手の皆さん、本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました」
                   ◇
   決勝戦は午後2時01分に始まって試合終了は同4時10分だった。閉会式は同4時27分からだった。松井氏がNYでネット動画をリアルタイムで観戦していたとすると、サマータイムの時差で13時間なので、現地22日午前1時01分から3時10分まで視聴したことになる。朝日新聞の取材はそれから少なくとも30分はかかっただろう。インタビューに応じる松井氏の写真は朝日新聞にも掲載されていないので、おそらく電話でのインタビューだったと想像する。

   17日3回戦の智弁和歌山戦も観戦したとコメントしているので、当然ながら18日準々決勝の仙台育英戦、20日準決勝の中京院中京戦も観戦しただろう。智弁和歌山戦は午前の試合だったが、以降の3試合は午後だったので、NYでは深夜から未明の時間。伝説的人物、松井氏も45歳、後輩たちの活躍を見守るために寝不足が続いたのではないだろうか。

⇒23日(金)夜・金沢の天気     くもり

★夏の甲子園、場外論戦

★夏の甲子園、場外論戦

  夏の甲子園があす22日、決勝(星稜-履正社)だというのに、野球ファンの間でいまだに燻り続けているのが、岩手大会決勝戦で、163㌔の右腕、大船渡高校・佐々木朗希投手の登板回避問題だ。甲子園のマウンドというヒノキ舞台に立たなかったにもかかわらず、その是非はいまでも議論を巻き起こしている。佐々木選手は、星稜の奥川恭伸投手と並んでこの夏に注目された選手の一人かもしれない。

   金沢大学の学生で自ら高校時代にピッチャーだったという学生はこう述べている。夏の大会の厚さは疲労の蓄積のほかの時期に比べ格段に大きい。にもかかわらず、トーナメントが進むにつれて連戦が増えてきてしまう。これを解消するには日程の見直しが必要だ。多くの地区では7月から地方大会が始まるが、これを前倒しして6月から始めるのはどうだろう。梅雨と重なり雨天順延も多くなるかもしれないが。投手の故障を防ぐために、一部で球数制限というアイデアもあるが、これは投手の複数抱える強豪チームが有利になるので賛成ではない。

    元マスメディアの記者だった知人の意見。高校野球を主催する春のセンバツの毎日新聞、夏の甲子園の朝日新聞はそれぞれ、この問題をどう考えているのか見解を聞きたい。NHKも含めて。報道サイドからの問題提起が聞こえてこないのは不思議だ。このままだと、社内で「タブー」となっているのではないかと疑ってしまう。

   高校時代からの知人の話。マスコミは佐々木投手の160㌔を誇張しているが、これが原因ではないか。試合にどうしたら勝つことができるかが高校野球の本題であって、投げることが本題ではない。マスコミが騒ぐと、ファンもその気になって160㌔を期待する。すると投手本人には強烈なプレッシャーになる。この一件は、プレッシャー問題ではないのか。

   もう一つ、大学の研究者(スポーツ論)の話。「勝負は勝たなきゃダメ。ケガをするのは選手の宿命」とテレビで述べていた野球解説者がいたが、自分たちの経験値こそ正しいとか、科学的根拠のない精神論をかざしてのコメントは間違い。精神を鍛えることと、肉体を損ねることは別の話だ。大船渡の監督の決断は総合的な判断だと思うので評価する。

⇒21日(水)朝・金沢の天気     くもり

☆ファミリーヒストリー トランプ氏の後悔

☆ファミリーヒストリー トランプ氏の後悔

   それにしてもショッキングな見出しだ。「Trump pressured his alcoholic brother about his career. Now he says he has regrets.」。直訳すれば、「トランプ氏はアルコール中毒の兄弟に仕事について圧力をかけた。今彼はそれを後悔していると言う」となるだろうか。きのう(12日付)に続き、すし屋での話である。アメリカのトランプ大統領はアルコールを飲まないというのは知られたことだが、飲めないのか、飲まないのかの話になって、隣の客が「訳ありで飲まないらしい。先日(9日付)NHKのニュースでやっていた」と。帰宅して、NHKニュースWeb版をたどると確かにあった。ネタもとがアメリカのワシントン・ポスト紙とあったので、さらに同紙のWeb版をたどって記事を見つけた=写真=。 

    この記事を読み込んでいく。トランプ氏本人やファミリーに詳しい人物へのインタビューをまとめて記事は構成されている。トランプ氏はアメリカで深刻な問題となっている薬物依存症に触れて、自分の兄もアルコール依存症だったとすでに言及していた。ワシントン・ポスト紙はさらに突っ込んで、なぜ兄が依存症になったのかを取材したのだ。

    記事にはその核心部分として、トランプ氏本人へのインタビューが掲載されている。「“I do regret having put pressure on him,” Trump said. Running the family business “was just something he was never going to want” to do. “It was just not his thing. . . . I think the mistake that we made was we assumed that everybody would like it. That would be the biggest mistake. . . . There was sort of a double pressure put on him” by his brother and his father. 」

    前後の記事と合わせて要約する。トランプ氏と父が家業である不動産ビジネスに8歳上の兄フレッドに参加するようにとプレッシャーをかけてた。兄はパイロットになる希望を抱いて航空会社でトレーニングを受けていた。しかし、トランプ氏と父は「時間のムダだ」と反対し、繰り返し不動産業に入るようにプレッシャーをかけ続けた。このころから兄のアルコール依存症はひどくなり、航空会社を辞めざるを得なくなった。その後、兄は不動産ビジネスに参画したものの、依存症の悪化が原因で1981年に亡くなった。42歳だった。トランプ氏は兄のアルコール依存症を悪化させたのは自分だと後悔している。兄のこの一件があり、トランプ氏自身は酒を飲まないと決めた。

    記事は最後をこう締めくくっている。「“I guess you could say now I’m the chief of trying to solve it,” Trump said. “I don’t know that I’d be working, devoting the kind of time and energy and even the money we are allocating to it. . . . I don’t know that I’d be doing that had I not had the experience with Fred.” 」。トランプ氏はアメリカにおける薬物依存症問題にすべてを捧げる決意をしている。兄とのこうした経験があるからだ、と。

⇒13日(火)朝・金沢の天気    はれ