⇒ニュース走査

★「新しい生活様式」横並びで「最後の晩餐」

★「新しい生活様式」横並びで「最後の晩餐」

   新型コロナウイルスの感染対策で、政府はあす6日期限の緊急事態宣言を今月31日まで延長すると決めた。これを受けて、13の「特定警戒都道府県」に入っている石川県も106業種への休業と県民への外出自粛の要請を今月7日以降も続けると表明した。問題は中小企業への影響だ。県は4月21日から今月6日までの全期間、休業に応じた中小企業に50万円、個人事業主に20万円の協力金を支払う(石川県公式ホームページ)。ところが、石川県知事はきのう会見で7日から31日も休業要請はするが、追加の協力金ついては「無理だ」と述べた。地域財政の限界が見えてきた。となると、個人事業主などでは今後、営業再開に向けた動きが出てきそうだ。

   きのう安倍総理が緊急事態宣言の延長についての会見で、「新しい生活様式」という新しい概念を持ち出した。気になってネット検索すると、もともとはウイルス対策について話し合う政府の専門家会議の提言だった。三つの基本として①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗い、を上げさらに日常生活や買い物、公共機関の利用などそれぞれに場面に応じての所作についても提言している。

   たとえば、食事では食べ方や飲み方までも示していて、「大皿は避けて料理は個々に」「対面ではなく横並びで座ろう」と続く。ここで、食事は対面ではなく、横並びで座るというのはどこかで見たイメージだ。そう、レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」ではないか。2006年1月に訪れたミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院で初めて原画を鑑賞した。絵は、イエスが12人の使徒のうち一人が裏切ると告知したときに、使徒のそれぞれの反応、怒りやショックなどを描写していることで知られる。

          当時撮影した「最後の晩餐」の画像ファイルを見ていて、ふと、今のパンデミックで揺れる国際社会のような気がしてきた。混乱の中で各国はうろたえ、国際協調とは程遠い。象徴的なのは国連機関であるWHOへの信頼性が揺らいでいることだ。WHOが中国に配慮して緊急事態宣言を「時期尚早」と見送ったことが、感染拡大の原因の一つと問題視する見方が世界で広がっている。さらに、台湾はWHOへオブザーバー参加を求めてきたものの、中国の反対があって実現できていない。

   その中国の責任をめぐる追及も声高になってきている。アメリカなどでは損害賠償を求める動きが出ている。一方、中国はその動きを不当だとしているが、トランプ大統領が主張している、新型コロナウイルスが武漢の研究所から漏れ出たものということになればその管理責任が追及され、損害賠償請求の動きは現実的なものなるだろう。「最後の晩餐」の絵のように、「裏切者はだれか」とざわざわとしている。

   きょうのコラムは思いつくままにランダムに書いた。とくに脈絡はない。

⇒5日(こどもの日)夜・金沢の天気   くもり

☆金正恩氏「ナゾの20日間」を解く

☆金正恩氏「ナゾの20日間」を解く

   北朝鮮の金正恩党委員長の健康状態がニュースになった。4月12日の最高人民会議を欠席し、祖父・金日成主席の誕生日である15日に安置所がある太陽宮殿への参拝がなかったことから一気に騒がしく動静が報じられるようになった。CNNが危篤説を報道(21日)、その後元山(ウォンサン)の別荘に停車している特別列車の衛星画像が公開された(29日)。死亡説まで取り沙汰された。5月2日に20日ぶりに金委員長の動静が国営メディアが伝えられ、一応騒ぎは収まった

   きょう(4日)韓国の朝鮮日報Web版が金委員長の健康状態に関するニュースを写真付きで報じている。記事の主見出しは「전문의 “오른손목 흉터, 주삿바늘 가능성” 靑 “수술도 시술도 안받았다”」(専門医「右手首のあざは注射跡か」、青瓦台「手術も施術も受けていない」)=写真=。注目したのこの写真で、左の写真の右手首に丸い褐色のあざがある。右の写真の4月11日に労働党政治局会議での金氏の手首にはあざはない。記事では、心臓専門医の「動脈を通じた心血管造影術を行った可能性が80%程度ある」のコメントを紹介している。

   この写真を見て、ひょっとして褐色のあざは「経皮的冠動脈ステント留置術」、簡単に言うとカテーテル手術の痕ではないのか、と察した。さらによく見ると、褐色のあざのまわりに赤みがある。これは血止めバンドの痕ではないか。あくまで自分自身の経験から憶測しての話だ。

   自身もかつて人間ドックで心臓の右の冠動脈が狭くなっていて、狭心症が疑われた。長い階段を上ったり、急ぎ足で歩くと胸苦しさを感じていた。このため2018年3月にカテーテル検査を受け、「労作性狭心症」と診断された。心臓の仕事量が増えると、それに見合う酸素量が心筋に運ばれず、虚血が起こり胸痛に襲われるという症状だった。4月にカテーテル手術をした。右手首の血管から バルーンカテーテルを入れて冠動脈に挿入し、その先端にあるバルーン(風船)を膨らませ、狭くなった冠動脈を元の血管の太さに戻す。さらにステント(直径3㍉×長さ18㍉、筒状の金属網)をその箇所に留め置いてカテーテルを抜き取る手術だった。体を開くバイパス手術だと入院から退院まで24日かかると言われているが、カテーテル手術だと検査と手術で正味7日だった。

   自らが体験した検査と手術の日程を金委員長の謎の空白期間(20日間)にパズルのように組み込んでみる。4月11日の労働党政治局会議の後、胸苦しさが襲ってきた。翌日12日は最高人民会議を欠席し、平壌市内の病院で冠動脈CT(心臓CT)の検査を受けた。すると、冠動脈の狭窄や閉塞など心臓疾患が進行していることが分かった。さらに詳しく調べるため、13日に造影剤など使って患部のカテーテル検査が行われ、狭心症と診断された。バイパス手術かカテーテル手術かを主治医と相談し、痛みが比較的柔らかいカテーテル手術を選んだ。ところが、北にはカテーテル手術で十分な経験を積んだ医療チームがいない。そこで、金委員長は15日に電話で中国の習近平主席に太陽節の祝電のお礼とあわせて、医療チーム派遣の依頼をした。中国の医療チームが平壌に到着したのは23日だった。25日に手術が無事に行われた。しばらく静養するため26日に医療施設もある元山の別荘に特別列車で出向いた。

   手術後、中国の医師から右手首の血止めバンドは1週間は装着してくださいと念を押された。公の場に出ると右手を振って挨拶をするが、そのときに血止めバンドが見えると、人民はあれは何だと大騒ぎになる。そこでバンドを外すまでは公の場に出ないことにした。そして20日ぶり、5月1日に順川(スンチョン)にあるリン酸肥料工場の完成式で顔見世をすることができた。そのとき、右手を振り手術痕がさりげなく見えた。あくまで空想の話である。

⇒4日(みどりの日)夜・金沢の天気   くもり

★ステイホーム飲み会の楽しみ方あれこれ

★ステイホーム飲み会の楽しみ方あれこれ

   東京都の小池知事が新型コロナウイルス対策に関する記者会見で、大型連休の12日間を「いのちを守るSTAYHOME(ステイホーム)週間」と呼びかけたのは先月24日だった。企業や事業主には12日間におよぶ連続休暇やリモートワークの促進を求め、都民には外出の自粛を強く促した。以来、ステイホームが言葉として全国的に定着した感がある。

   きのう(2日)「ステイホーム飲み会」を気心知れた仲間たちと楽しんだ。正午から4人がそれぞれにパソコン画面に向き合い、ビールや焼酎を片手に近況を語り合った(うち1人は仕事の関係でノンアルコール)。自身はとっておきのワインを話のネタにと選んだ。フランス・ボルドー産の「シャトー・モンペラ」。10年ほど前、日本テレビのドラマ『神の雫』に登場するワインで国内でも知られるようになった。グラスを何度か傾けるうちに顔が随分と赤くなり、目が虚ろになってきたのが画面で分かった。自らの姿が他の人にどう見えているかリアルに理解できること、これはPC飲み会の特徴だと自覚した。

   話題に上ったテーマの一つが「自宅のオフィス化」だった。アフター・コロナではリモートワーク(テレワーク)や在宅ワークがいっそう進み、自宅にオフィス空間を確保するという発想が必要になる。光ファイバーなど通信回線の確保はもちろんのこと、PCカメラを意識した背景の工夫もしなければならない。というのも、きのう使ったアプリ「Zoom」では背景をバーチャルリアリティに切り替えることができる。では、自宅オフィスが雑然としているからと安易にバーチャルリアリティに切り替えてよいものかどうか。とくに仕事の話をする場合だと最初から何かを隠しているような印象を相手に与えてしまうのではないだろうか。飲み仲間の一人の建築家の意見がとても参考になった。

   今回のPC飲み会ではそれぞれの自宅の回線容量がしっかりしていたせいか、画面がフリーズすることはなかった。問題は音声だと感じた。会話が弾むと、つい横から口をはさんでしまうものだ。対面での飲み会ではそれほど気にならないのだが、PCだと相手の音声を遮断することにもなり、会話のタイミングを見計らうという暗黙のルールが求められる。最初は自制心が効いていたとしても、飲むにつれてその気持ちは削がれる。こうなると会話が成立しなくなり、「場の戻し」が必要となる。今回その役回りをする幹事役を買って出てくれたのはITベンチャーの社長だった。「話がこんがらかってきました、いったんリセットしましょう」と何度か。

   正午に乾杯をして、「ではバイバイ」とPC画面が消えるまで2時間ほど。十分に酔い、会話を堪能させてもらった。ステイホームの新しい楽しみ方の一つだと実感した。ふと、外を眺めると快晴だ。人は日光を浴びて、紫外線を受けて体内にビタミンDをつくり、カルシウムの吸収を助ける。日光を浴びないと、逆に体は自分の骨を溶かしてカルシウムを得ようとするため骨粗しょう症になる。かつて聞いた話を思い出し、散歩に出かけた。

⇒3日(日)朝・金沢の天気    はれ時々くもり

☆「9月新学期」はグローバルスタンダード

☆「9月新学期」はグローバルスタンダード

   季節は5月になり、街ではこいのぼりを見かけるようになった。ただ、例年の大型連休と雰囲気が異なって、子どもたちの元気な声が聞こえてこない。新型コロナウイルスの緊急事態宣言で子どもたちも自粛しているのだろうか。

   学校の休校がさらに長期化しそうだ。金沢大学など多くの大学でも授業の開始が遅れたり、講義も対面ではなくオンライン化したりと現場が戸惑っている。また、日本政府が感染対策として170ヵ国余の発給済みのビザを停止する措置をとっていることから、来日できない留学生が続出している。いっそうのこと、新学期を9月、あるいは10月で仕切り直ししてはどうかと思ったりする。

   というのも、欧米やアジアの多くの国では新学期のスタートは9月なのだ。日本のように4月新学期はおそらく数少ない。このことは大学の関係者との間ではたまに話題に上る。「日本もグローバルスタンダードで足並みをそろえないと、優秀な留学生が来ないよね」などと。留学生が4月と9月のどちらを入学時期として選択するかと言えば、タイムラグのことを考えれば9月と考えて当然の発想だろう。すでに、日本の大学では日本語を学ぶ1年間の短期留学の受け入れは「9月入学」でカリキュラムを組んでいるケースが多い。逆に日本から海外に留学する場合も9月が新学期の方がよいということになる。

   では、簡単に9月新学期に移行が可能かと言えば、難問山積かもしれない。日本には「年度」という、4月に始まり3月で終わる仕組みがある。いわゆる、会計年度だ。国など官公庁や地域自治体はこの会計年度をベースとして予算を編成し、決算の会計処理する。とくに国公立の教育機関だと会計年度がずれるとややこしくなる。そもそも、学校教育法において学年は4月1日に始まり翌3月31日に終わると定めているので、法律の改正もともなう。

   社会全体に影響がおよぶことが予想されるものの、それでもやはり、新型コロナウイルスという災禍をチャンスとして「9月新学期」を導入してはどうかと考える。大学としても、学生の就活時期との兼ね合いなども出てくるだろう。民間企業もほとんどが3月期決算であり、入社は4月となっている。逆に9月新学期の移行を機に、企業の採用の有り様も通年採用へとシフトするかもしれない。9月新学期がグローバルスタンダードへの社会変革の口火となることを期待したい。

⇒2日(土)朝・金沢の天気    はれ

★「コロナとの共生」は人類の知恵か誤解か

★「コロナとの共生」は人類の知恵か誤解か

   今も感染拡大が続く新型コロナウイルスへの各国の防止対策の中で、独特なのはスウェーデンのやり方だ。日本のように「最低7割、極力8割」の外出自粛の要請も、あるいは欧米各国のようなロックダウンもしない。学校や企業も通常通りで、あくまでも個人の自主性を尊重するという独自路線をとっている。

          スウェーデンの対策のキーワードは「集団免疫」だ。集団免疫を獲得する方法が2つあり、それはワクチンと自然感染。今回ワクチンはまだ開発されていないので、自然感染を戦略として選んだ。これは人口の大多数がウイルスに感染することで、人の体内で抗体がつくられ感染が広がりにくくなる効果を狙っている。

   4月28日付の「USA TODAY」Web版はスウェーデン公衆衛生局コロナウイルス対策の責任者で、疫学者の アンダース・テグネル(Anders Tegnell)氏へのインタビュー記事を掲載している=写真=。見出しは「Swedish official Anders Tegnell says ‘herd immunity’ in Sweden might be a few weeks away」(意訳:テグネル氏はスウェーデンでの「集団免疫」は数週間先にと語る)。記事を以下まとめてみる。

    ストックホルムを含む首都人口の25%が新型コロナウイルスに感染して、あと数週間先には集団免疫を獲得する公算がある。積極的に集団免疫を目指したわけではなく、医療への負担を最小限にとどめる方策も勘案してこのような対策になった。商店営業など容認にしているので経済への影響は比較的少ない。

   インタビューの最後のコメントは印象的だ。「Coronavirus is not something that is just going to go away. Any country that believes it can keep it out (by closing borders, shuttering businesses, etc.) will most likely be proven wrong at some stage. We need to learn to live with this disease.」。(意訳)コロナウイルスは長期間存在する。国境を閉ざし、企業を封鎖してウイルスを排除できると考える国はいつか間違いに気がつくだろう。私たちはこの感染症と共生することを学ばなければならない。

   上記の記事を読むと理想的な疫学対応であり、人類の知恵のように感じてしまう。が、一方でスウェーデンでは感染者が2万1092人、死者2586人(4月30日・ジョンズ・ホプキンス大学集計)となり、厳格な外出規制を実施している隣国のフィンランドなどと比べて高い致死率だ。このままの戦略で良いのか、と思ってしまう。

   WHOが29日に行った記者ブリーフィングで、緊急対応責任者がスウェーデンの集団免疫の効果について記者から質問を受け、こう返答している。「感染が広がったエリアでは免疫を持つ人のパーセンテージは低い傾向にあるのではないか」「一時的に治まってもウイルスの勢いはぶり返す可能性もある」と述べている(WHO公式ホームページ会見動画)。

⇒1日(金)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

★「中国に感謝」テドロス会見から読めること

★「中国に感謝」テドロス会見から読めること

   前回に続き、気になった記者会見をもう一つ取り上げてみる。WHOのテドロス事務局長が現地時間27日にスイス・ジュネーブの本部でインターネットを通じ行った会見だ。WHOの公式ホームページをチェックすると会見のテドロス氏の ブリーフィングの内容と記者からの質疑の様子が動画で掲載されている=写真=。 

         ブリーフィングの前段は一般論でウイルスを制御するためにはワクチンが必要と訴えている。ワクチン接種率が下がると、麻疹(はしか)やポリオなどの生命にかかわる病気で多くの集団発生が起こると警鐘を鳴らしている。後半から新型コロナウイルス感染に対するWHOの対応を述べている。その中で気になる文言が、「I would like to thank the People’s Republic of China, Portugal and Viet Nam for their recent contributions to WHO’s Strategic Preparedness and Response Plan.」だ。WHOへの活動に貢献する中国、ポルトガル、ベトナムに感謝する、としている。

   確かに、中国は今月23日にWHОに対し感染対策として3千万㌦を寄付すると発表した。これまで表明していた2千万㌦に加えて合計5千万㌦、日本円で53億円の寄付となる(今月24日付・NHKニュースWeb版)。テドロス氏が中国に感謝するのは理解できるが、ポルトガルとベトナムはどのような貢献なのか読めない。「中国寄り」との批判をかわすための付け足しなのかと勘繰ってしまう。

   ブリーフィングの締め括りは、「We can only defeat this virus through unity at the national level and solidarity at the global level.(私たちは国家レベルでの団結と世界レベルでの連帯を通じてのみこのウイルスを倒すことができます。)と強調している。裏返せば、世界が団結に至っていないので、感染者は310万人、死者は21万人(28日現在、ジョンズ・ホプキンス大学CSSE集計)のパンデミックになっているのだ、とも読める。

   穿(うが)ち過ぎとの指摘を受けるかもしれないが、アメリカのトランプ大統領はWHOの一連の対応が中国寄りと批判し、一時的に資金(4億㌦)の拠出を停止する考えを示している。そこで、テドロス氏は国名を名指しこそしなかったが、団結を乱したアメリカで感染者100万人、死者が6万人も出ているのは自業自得だ、と皮肉っているようにも読める。

   このブログでも何度か述べたが、テドロス氏はWHOの緊急事態宣言を「時期尚早」と見送った(1月23日)。これが感染拡大の原因の一つと問題視する見方が世界で広がった。最近ときおり閲覧する、署名サイト「Change.org」でテドロス氏解任キャンペーンが展開されている。きょうチェックすると100万を上回る署名が集まっている。

⇒29日(祝)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★コロナとナマズ 見えざる敵

★コロナとナマズ 見えざる敵

   手元のマスクが残りわずかになり、きのう金沢市内のドラッグストアを4軒回ったがどこも品切れだった。たまたま、文房具店に入ると、「ファッションマスク 1人5枚まで」とチラシが貼ってあった。ファッションマスクの意味を理解せず、5枚購入した。1枚162円。ネットで検索しても、ファッションマスクの意味がよく理解できない。商品の袋には飛沫予防、ポリウレタン素材で伸縮性があり耳が痛くなりにくいなどの説明書きがある。マスクとしての機能より、おしゃれ感覚で使う身につけるマスクという意味だろうか。

           新型コロナウイルスによる感染も怖いが、最近、日本列島の各地で頻発している地震も、大地震の予兆ではないかと不安心理に陥る。この一週間(今月20-26日)だけでも長野など中部、関東、東北、北海道で震度3から4の揺れが13回あった(気象庁公式ホームページ「地震速報」)。3月13日未明に能登半島の輪島で震度5強、金沢で震度3と身近に揺れがあり、神経が少々過敏になっているのかもしれない。

   ネット上で見つけた論文だが、「地震の前兆の可能性がある自然現象」(東北大学東北アジア研究センターの石渡明氏、2011年6月作成)の中で「ナマズなどの生態異常」という項目が目を引いた。以下一部引用する。

   「・・・1923年の関東大地震の前日に湘南の鵠沼海岸の池で、投げ網を用いて30 ㌢大のナマズをバケツ3杯分ほど漁獲した人がいた。ナマズは昼間は池の底に潜んでいるはずなのに、泳ぎ回っていて容易に捕獲されたことは、地震の前兆の何らかの刺激による異常行動かもしれない。関東大地震の直前に、向島の料亭において、池の水面から頻繁に小魚が跳び上がるのを見て、店の者に何という魚か聞いたところ、ナマズの幼魚で2~3日前からこのように跳ね上がっていて不思議なことだと答えたという。・・・」

   マナズと地震の関係性を最初に唱えたのは豊臣秀吉とされる。寒川旭著『秀吉を襲った大震災~地震考古学で戦国史を読む~』 (平凡社新書) に詳しい。1586年の天正地震。このとき秀吉は琵琶湖に面する坂本城にいた。湖のナマズが騒ぐと地震が起きるとの土地の人たちの話を聞いた秀吉は「鯰(ナマズ)は地震」と頭にインプットしてしまった。その後、伏見城を建造する折、家臣たちに地震対策をしっかりせよとの意味を込めた、「ふしん(普請)なまつ(鯰)大事にて候・・」と書簡をしたためている。この「なまつ大事にて候」の一文は時と所を超えて安政の江戸に伝わる。地震に怯える江戸の民衆は、震災情報を求めて瓦版や、鯰を諫(いさ)める錦絵=写真=を競って買い求めた。

   論文「地震の前兆の可能性がある自然現象」の中でナマズがバケツ3杯も獲れたとの話は、マナズと地震の口頭伝承がある江戸=東京であるがゆえに記録された日常の異変かもしれない。拡大解釈すれば、秀吉の「なまつ大事にて候」は人々に日常における危機意識を植えつけてくれた言葉と言えないだろうか。予兆を早めに察知する心構えや機転、情報共有をスムーズに伝播する知恵でもある。

   ところが現代人はメディアの発達によって、情報があれば危機意識を持つことは無用と思い込むようになったのではないだろうか。防災用語に「正常化の偏見」や「正常性バイアス」という言葉がある。目の前に危険が迫ってくるまで、その危険を認めようとしない人間の心理傾向、あるいは危険を無視する心理のことを指す。コロナ禍の緊急事態宣言の下でも、休業要請を無視するパチンコ店、そこに列をなす客。見えない敵への危機意識のなさは決して他人事ではない。自戒を込めての話だ。

⇒27日(月)午後・金沢の天気    はれ

☆コロナの新学期 学生たちの危機感

☆コロナの新学期 学生たちの危機感

          新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、金沢大学ではきのう危機対策本部会議を開き、4月22日から5月6日まで教職員は原則として在宅勤務とした。学生はすでに登学禁止なっており、履修科目のオンライン登録も20日からようやく始まった。講義は基本的には遠隔講義(リモート)となる。教員も慣れないリモート講義に右往左往の状態ではある。

   「大学クラスター」という言葉もあるように、大学から感染者を出さないためにとくに海外からの留学や旅行から帰国した学生、教員には厳格な対応が求められている。大学からのメールを以下引用する。「1.新型コロナウイルスに感染した者との接触があった学生、教職員等の対応 ⇒ 海外への渡航歴がある学生、教職員ならびに新型コロナウイルスに感染した者との濃厚接触歴がある学生、教職員等は全員14日間自宅待機し、健康チェックシートを記入して必ず健康観察を行ってください。自宅待機中に症状が出た場合は新型肺炎に関する電話相談窓口に速やかに電話連絡の上、医療機関を受診してください」

          逆に、この夏休みを利用して海外に短期留学を計画していた学生たちも計画が狂ってしまった。ある学生の話だと、イギリスに夏季留学を計画しその費用を金沢市内の居酒屋でのアルバイト代で賄おうと頑張っていた。ところが、アルバイト先が今月17日から時間短縮となり、「稼げなくなった」とこぼしていた。

   さらに同情すべきは就活に入った学生だろう。政府が今月7日に緊急事態宣言を発令してから、選考活動そのものを一時停止している企業も多い。「売り手市場」だったこれまでとは状況が一変した。別の学生は、3月下旬に東京のIT企業の説明会に参加を申し込んでいたが中止になった。「ひょっとして就職氷河期がまた来るかも」と学生は顔を曇らせた。

   1980年代のバブル経済が崩壊し、大手金融機関などが破綻した1993年から2005年にかけて、有効求人倍率は13年間「1」 を下回った。これが就職氷河期だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、またその兆候が見え始めた。厚労省が発表したことし2月の有効求人倍率は1.45倍(昨年同期は1.63倍)だった。経済活動が減速原則することを懸念して、企業の採用意欲が急低下している。今回の「1.45」は緊急事態宣言を発令する前の数字だ。しばらくは下がることはあっても上がることはない。どこまで下がるのか。(※写真は金沢大学の掲示板にあった厚労省のポスター)

⇒22日(水)夜・金沢の天気   あめ時々くもり

★続々々・ 「ポスト・コロナ」を読む

★続々々・ 「ポスト・コロナ」を読む

   これも新型コロナウイルスの感染拡大による影響だろう。ガソリン価格の値下がりが続いている。きのう(20日)自宅近くのガソリンスタンドで給油すると1㍑あたり123円(会員価格)だった=写真・上=。2月1日は1㍑141円、3月5日は136円だったので、月あたり10円ほど価格が落ちたことになる。ウイルス感染で政府や行政からの不要不急の外出自粛でリモートワークや「巣ごもり」の生活スタイルが広がっている。金沢の街中でも普段の半分もないくらいの交通量だ。もちろん、これは金沢だけの話ではない。

   ロックダウンによる国内外で人々の出入りが規制され、ガソリン需要は世界的に急減している。20日のニューヨークの原油先物市場で史上初めて価格が1バレル当たりマイナス37㌦になったと、メディア各社が大々的に報じている。需要減で在庫が増えて保管スペースがなくなり、買い手がつかないのだ。売り手がお金を支払って原油を引き取ってもらうという、通常では考えられない事態だ。これを受けて、同日のニューヨーク株式市場のダウの終値は先週末に比べて592㌦値下がり。21日の東京株式も午前の終値を310円下げた。

   パンデミックの需要減、出口の見えないガソリン価格

   ガソリン価格の値下がりで記憶に残るのはリーマンショックだ。2008年12月31日夜に撮影した金沢市内のガソリンスタンドの電飾看板は「レギュラー99円(会員価格)」だった=写真・下=。リーマンショック後に安全通貨として円が買われ、1㌦が90円から87円台まで円高に動いた、このときは「円独歩高」という状態で、輸出企業は苦しんだが、ガソリンのような輸入製品は安価になった。その後も、2010年のユーロ危機で円が買われ1㌦83円に、さらに2011年の東日本大震災で日本の保険会社が支払準備として海外資産を円に換えるとの観測が広がり、円高は1㌦76円へと急激に進んだ。こうした円高でガソリン価格が低迷した時期が長く続き、国内のガソリンスタンドの廃業が相次いだ。

   ところが、今回のようにパンデミックで買い手がつかないマイナス取引となると、国際商品市場での異常事態だけに経済危機のレベル感がこれまでとは異なる。サウジアラビアなど産油国による供給過剰も今回のマーケット崩壊の背景にあるだろう。でも、今回のマイナス取引は果たして石油に限った問題なのだろうか。ポスト・コロナの見えない出口がさらに世界経済への不安を煽る。

⇒21日(火)正午すぎ・金沢の天気      はれ

★コロナ恐慌 経済損失9兆㌦の衝撃

★コロナ恐慌 経済損失9兆㌦の衝撃

   金沢市内のデパートが臨時休業を始めた。正月休みなどと状況が違って、問題は再開の見通しは立っていないということだ。市内中心部の香林坊、日銀金沢支店と道路を隔て向き合っている「香林坊大和」=写真・上、左側の建物=はきのう14日から臨時休業に入った。きょうからはもう一つの市内中心部の武蔵にある「めいてつ・エムザ」が休業に入る=写真・中=。それぞれの地下の食品売り場は時間を短縮して営業を続けるものの、市内の中心部にあるデパートが臨時休業すると、見慣れた繁華街だけに心にぽっかりと穴が開いたような気がする。

   臨時休業は新型コロナウイルスの感染拡大で、13日に石川県が独自の緊急事態宣言を出したことに応じたもの。きのうは金沢市など県内で感染による死者が3人も出て全国ニュースになった。臨時休業の判断は正解かもしれない。

   一方で別の不安がよぎる。金沢は消費経済都市でもある。北陸3県からこれらのデパートや専門店街に買い物に訪れる。金沢だけではなく、国内デパート最大手の三越伊勢丹は首都圏の6店舗を8日から臨時休業している。政府の緊急事態宣言が解除されるまで続く。こうなると、地域の経済は、日本、世界の経済は本当に大丈夫なのかと思いを巡らしてしまう。

   IMFが最新の世界経済見通しを公表した(14日)=写真・下、IMF公式ホームページ=。それによると、2020年の成長率はマイナス3%との予測だ。リーマンショックどころではない。1930年代の大恐慌(Great Depression)以来の最悪の景気後退に陥るとの見方だ。世界が今年中にウイルスの封じ込めに成功し経済活動を再開させることができれば、2021年の世界の成長率はプラス5.8%まで回復する。ただ、事態は楽観できない。経済見通しをまとめたIMF調査局長は「パンデミック危機による2020年から21年の世界GDPの損失は合計約9兆㌦に達する可能性があり、これは日本とドイツのGDPの合計を上回る」(IMF公式ホームページ日本語)と述べている。9兆㌦、日本円にしてざっと965兆円の経済損失だ。

   調査局長はコメントをこのように締めくくっている。「世界がこの危機をともに乗り越えるためには、医師や看護師の方々と同じような勇敢な行動が、世界中の政策当局者にも求められている」(同)と。

  「今頑張っているのは医師と看護師だ、次は経済政策担当者の出番、心して行動せよ。世界経済を死なせてはならぬ」と叫んでいるのだ。IMFも必至だ。

⇒15日(水)朝・金沢の天気    はれ