⇒ニュース走査

☆ホワイトハウスの請願サイトをチェックすると・・・

☆ホワイトハウスの請願サイトをチェックすると・・・

   ホワイトハウスへの請願サイト「WE the PEOPLE」を久しぶりにチェックした。すると、86万もの署名を集めてトップだったのが、「INDICT & ARREST Moon Jae-in for SMUGGLING the ChinaVirus into the US & ENDANGERING the national security of US & ROK!」(意訳:起訴し逮捕を。ムーン・ジェインはチャイナウイルスをアメリカに密かに持ち込み、アメリカと韓国の国家安全保障を危険にさらしている!)。ムーン・ジェインは韓国大統領の文寅在氏のことだ。2番目は「医療過誤と人道に対する犯罪のため、『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』への調査を求める」(署名数65万)だった。

   この請願サイトはオバマ大統領の時代、2011年に開設され当時から「開かれた政府」のシンボルとして注目された。たまにチェックしているが、過激な請願内容も多い。ただ、ほとんどがアメリカ国内の案件だ。ところが、韓国大統領の弾劾を求めた署名がこれだけ集まるとなると、アメリカにおける韓国への不信感が背景にあるのではないかと推測する。請願の提起者は、韓国愛国市民会議の教授を名乗っている。本文を読むと、最初に、新型コロナウイルスをアメリカに密かに持ち込んだ。2番目に、極東地域におけるアメリカのナンバー1の血盟同盟を不法に奪取して、同盟関係を脅かしている。3番目に北朝鮮や中国と共謀し、インド太平洋地域の地域安全保障を崩壊させるとしている。

   この請願文を読んで思い起こすのは、先月8月29日にグアムのアンダーセン空軍基地で河野防衛大臣とアメリカのエスパー国防長官の会談のことだ。テーマは東シナ海情勢・南シナ海問題、自由で開かれたインド太平洋を維持・強化、北朝鮮のたび重なる弾道ミサイルの発射に関連して経済制裁などの国連安保理決議の完全な履行を求め、引き続き日米が有志国と連携することを確認した(防衛省公式ホームページ)。この会談は北朝鮮問題もテーマとしていたので、本来、日米韓3ヵ国による防衛大臣会談が想定されていた。ところが、韓国側が欠席したため日米会談となった。韓国側は1週間前の22日に中国外交トップの党政治局員と会談し、習近平国家主席の早期訪韓などを確認している。こうした韓国の中国への政治的な配慮がアメリカでも報道され、物議を醸しているのだろう。

   この請願が立ち上がったのはことし4月23日なので、今後さらに米韓関係がこじれてくると署名数は増えてくる。ただ、ホワイトハウスがこの請願を受け入れるかはまったく別次元の話だが、アメリカ政府の意見を聞きたいものだ。

⇒11日(金)朝・金沢の天気    はれ時々くもり

☆番記者が手強さを感じる次の総理は

☆番記者が手強さを感じる次の総理は

   安倍総理の後継を決める自民党総裁選挙がきのう8日に告示され、石破茂、菅義偉、岸田文雄の3氏が立候補を届け出た。きょうの新聞各紙に党本部での演説会の内容と、その後の共同記者会見の発言要旨が掲載されている=写真=。記者会見の内容を吟味してみる。

   面白いは安倍政権へのそれぞれの評価だ。以下、発言順でコメントは一部を抜粋。菅氏「安倍政権の経済政策は私が引き継ぐ。客観的に見ておかしいことは見直す。文書改ざんは二度と起こしてはならない。謙虚に耳を傾ける」。岸田氏「経済政策や官邸主導、トップダウンで物事を決める姿勢は評価できる。一方で強力な権限は謙虚に使っていく姿勢が大事。説明責任をしっかり果たしていく姿勢は何より大事だ」。石破氏「地方や女性の潜在的な可能性を最大限に引き出すことはまだ不十分だ。森友、加計学園、桜を見る会はどの世論調査でも納得した人が非常に少ない。特定の人が利益を受けることを、政府がやっていいはずがない。要するに、えこひいきがあってはならない」

   菅氏と岸田氏は、いわゆる「モリカケ」問題ではそれぞれ通りいっぺんの回答だが、石破氏は突っ込んだ発言をした。「世論調査でも納得した人が非常に少ない」と。そもそも、石破氏は今回の総裁選そのものに批判的だ。「詐欺のような総裁選はやめるべき」と『週刊朝日』(9月11日号)で述べていた。記事を引用する。「現在、自民党は党員数の拡大を目指して総力を結集していますが、党員を勧誘するときのセールストークは『党員になれば、あなたにも自民党総裁を選ぶ選挙権があります』というもの。自民党総裁を選ぶことは多くの場合、総理大臣を選ぶことに等しい。その投票権があります、というのが一つのウリなんですね。いざとなったら、党員投票はやりませんというのでは、詐欺じゃないかと怒る党員もおられるのではないでしょうか」

   確かに、政治的な空白が起きるので、国会議員票と各県連の票のみで総裁を決めること自体が、「詐欺」に相当するというのは理にかなってはいる。うがった見方だが、石破氏はこのことを言いたいがために立候補したのではないだろうか。記者会見での「えこひいきがあってはならない」と主張しているのも、詐欺発言と文脈が連なるのではないか。

   もう一つ、国会と総理会見についてのそれぞれの発言だ。6月の通常国会の閉会後、2ヵ月半に安倍総理は記者会見を行わなかった。その是非について記者たちは問うた。

   最初に発言したのは石破氏だった。「メディアは国民を代表して聞いている。可能な限り、答えなければいけない。政治の義務だ」。菅氏「首相の国会出席は世界と比べて圧倒的に時間が多い。出席は大事なところに限定すべきだ。そうしないと行政の責任をなかなか果たせない。首相の会見については、官房長官が朝夕2回会見しており、内閣の方針は官房長会が責任をもって説明する」。岸田氏「記者会見は手が挙がらなくなるまで質問に答えるのが大事だ。首相の日程で限界があるのも事実だ。日本の首相の国会への拘束時間は先進国の中で桁外れだ」

   総理への記者会見は、権力者とジャーナリストの真剣勝負の場でもある。問題は、総理に聞くべきことを聞くことではないだろうか。時間の長さや回数の問題ではない。内閣全般のことであるならば、菅氏が述べた通り、「官房長官が朝夕2回会見しており、内閣の方針は官房長会が責任をもって説明する」でよいのではないか。

   ところが、メディアの記者たちはそれだけでは納得しない。総理が何を語ったことだけでなく、言葉や心のブレ、顔の表情、本音など心理的な変化も記者たちは読みたがっている。なので、あえて刺激的な言葉で質問したりする記者もいる。あるいは、国会議事堂や官邸で歩いている総理に「ぶら下がり」で質問をしたりする。上記の3氏の発言を読む限り、記者たちが本音をなかなか探れない人物とは誰か。発言を読んでも分かるように、実務肌の菅氏ではないだろうか。顔の表情を変えず、ブレない発言は石破氏や岸田氏に比べ、突っ込みどころがない。総理番の記者たちはすでに手強さを感じているかもしれない。

⇒9日(水)夜・金沢の天気    あめ

☆世論調査に表れた「判官びいき」の国民性

☆世論調査に表れた「判官びいき」の国民性

   きょう7日付の読売新聞に全国世論調査の結果が掲載されていた。それによると、安倍内閣の支持率は52%となり、前回調査(9月7、8日調査)より、15ポイントも上昇している。不支持率は38%と10ポイント下がっている。さらに、第2次安倍内閣の7年8ヵ月の実績を尋ねた項目では、「大いに評価」19%と「多少評価」55%を合わせると74%になる。自身の記憶でも、辞任表明後に支持率がこれほど上昇するのは異例ではないだろうか。それはなぜなのか。

   この傾向は読売新聞の調査だけではない。朝日新聞の調査(9月2、4日)でも、安倍内閣以降の7年8ヵ月間の実績評価は「大いに評価」17%と「ある程度評価」54%を合わせると71%となる。共同通信が実施した緊急世論調査(8月29、30日)でも、内閣支持率が56.9%と前回調査(8月22、23日)より20.9ポイントも増え、7年8ヵ月間についても、「ある程度」を含めて「評価する」が71.3%に上っている。マスメディア各社の調査では安倍内閣の実績評価は70%を超えているのだ。

   確かに、先月28日午後5時からのNHKテレビの生中継を視聴していて、自身もある意味でショックを受けた。8月上旬に持病の潰瘍性大腸炎の再発が確認され、安倍氏は「体力が万全でない中で政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない。総理の職を辞することにした」と述べた=写真=。拉致問題も憲法改正も北方領土もどれも道筋をつけられないままでの辞任表明。まさに断腸の思いだったに違いない。

   安倍氏の最大の功績は長期政権を築いたということに尽きるかもしれないと思っている。小泉内閣以降の2005年から短命政権が続き「7年間で7人の首相が誕生する」政治状況だった。当時は「回転ドア内閣」とも呼ばれ、総理の名前を覚える間もないほど交代劇が続き、日本のガバナンスや国際評価の足を政治が引っ張っていた。その意味で、7年8ヵ月続いた安倍内閣は政治の安定をもたらした。さらに、トランプ大統領と良好な関係を築きながら、アベノミクスで積極的な経済政策を推進し、女性の社会進出を拡大させた功績も大きい。

    「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいきかもしれません」。安倍氏の辞任表明について書かれた知人からのメールの一文だ。おそらく、国民は声に出すほどのことではないが、7年8ヵ月の「最長の総理」をそれとなく心情的に評価しているということではないだろうか。「多少評価」55%(読売)、「ある程度評価」54%(朝日)といった、微妙な数字がその「判官びいき」ではないだろうか。ある意味で日本の国民性がシンボリックに表れた数字なのかもしれない。

⇒7日(月)夜・金沢の天気    くもり

★強烈な雨風、台風10号の緊張感

★強烈な雨風、台風10号の緊張感

   台風10号は925ヘクトパスカル、強烈な風と雨をともなって北上している。気象庁は6日午前11時50分、鹿児島県屋久島町に土砂災害や浸水害の危機が高まっているとして、記録的短時間大雨情報を発表した。レーダー解析によると、1時間に120㍉以上の猛烈な雨を観測している。 こうした事態を受け、政府は台風10号に備え、首相官邸の危機管理センターに設置している情報連絡室を官邸対策室に格上げした(共同通信Web版)。 

   鹿児島のローカル紙「南日本新聞」のホームページをチェックすると、台風10号の接近に伴い、鹿児島市正午、市内全域の危険な場所に住む13万5166世帯24万6251人を対象に避難指示を出した。長崎県五島市も午前10時、市内全域の1万9829世帯3万6392人に避難指示を出している。また、NHKニュースWeb版によると、直ちに危険な場所から全員避難が必要な警戒レベル4にあたる「避難指示」が午後0時30分現在で、長崎、熊本、鹿児島、沖縄の4つの県で合わせ16万8261世帯、30万8606人に出されている。

   国内の空の便は欠航が相次いでいて、沖縄県や九州南部の空港を発着する便を中心に、合わせて548便が欠航したり欠航が決まっている(NHKニュースWeb版)。九州新幹線は、熊本駅と鹿児島中央駅の間で、正午すぎから上下線で運転を取りやめている。また博多駅と熊本駅の間は、午後3時ごろから運転を取りやめる。いずれも7日は、始発から終日、運転を取りやめる。また、山陽新幹線は7日、博多駅と広島駅の間で始発から終日運転を取りやめる(同)。

    メディア各社のホームページをチェックしただけでも、台風10号に対するかなりの緊張感が伝わって来る。(※台風の進路予想図は気象庁公式ホームページから)

⇒6日(日)午後1時30分現在、金沢の天気  はれ

☆季節は移ろう、冷麺は消え台風シーズンに

☆季節は移ろう、冷麺は消え台風シーズンに

   北陸は高気圧に覆われたせいで、きょう5日も30度を超える暑さ、金沢では33度だった。昼ご飯に冷麺を食べようと、近くのラーメンチェーン店に入った。注文すると、店員が「冷麺はもう終わりました」と。思わず、「こんなに暑いのに冷麺を終わりにするなんて」と言うと、「ざるラーメンはありますが、いかがですか」と。そう言われると、こちらも少々ムキになって、「野菜ラーメンのしょうゆ味をください」と熱いものを注文した。

   チェーン店なので材料の調達は一元化されていて、9月のメニュー替えで夏物の冷麺を外したのだろう=写真・上=。これだけきつい残暑が続いているのだから、運営する会社側も臨機応変に対応してはどうかと。たまたま隣の席に腰かけたシニアの男性も「冷麺を」と店員に同じようなことを言っていた。笑い話のようだが、冷麺が消えて季節の移ろいというものを感じた。

            秋の訪れとともに台風がやって来た。北陸は今のところ台風10号の影響はないが、中心気圧が920ヘクトパスカルに達し、中心付近の最大風速は50㍍、最大瞬間風速は70㍍と強烈だ。気象庁は「記録的な暴風、高波になる恐れがある」と警告している(9月5日付・NHKニュースWeb版)。地震はマグニチュード、台風はヘクトパスカルでその大きさが判断できる。子どものころからよく耳にした、1959年の伊勢湾台風は「929ヘクトパスカル」だった。その伊勢湾台風より、さらに強烈なのが今回の台風10号だ。

   台風と言えば、去年10月13日、死者・行方不明者100人を出し、北陸新幹線120両を水没させた、あの台風19号が日本に近いづいてきたときが945ヘクトパスカルだった。北陸に住む自身にとっては、千曲川の堤防決壊で長野市にある新幹線車両センターの北陸新幹線の車両が水に浸かった画像はショックだった=写真・下=。

   そして、新型コロナウイルスの感染拡大は止まない。石川県の発表(5日)で新たに16人の感染が確認された。そのうちの13人が、兼六園と道路を挟んだ隣にあり、土塀に囲まれた総合病院「金沢医療センター」での感染者だった。同病院の関連感染者は44人となった。ある意味で金沢のシンボリックな医療機関だけに、クラスターの拡大はショッキングではある。

⇒5日(土)夜・金沢の天気      はれ

★災害にめげない人間力

★災害にめげない人間力

  きょうも揺れを感じた。午前9時10分、ゆったりした揺れで、金沢は震度1だった。隣県の福井県坂井市では震度5弱、震源の深さは10㌔でマグニチュードは5.0だった。この地震でこれまでに坂井市と福井市で合わせて11人が転倒するなどしてケガをしている(9月4日付・NHKニュースWeb版)。

   北陸ではつい2日前、2日午前2時50分に石川県と富山県の県境の富山側で震源地とするマグニチュード4.6の揺れがあった。震度3の揺れは金沢市ほか、石川県の白山市や加賀市、そして福井県の坂井市などだった。坂井市では2日の震度3、そしてきょうの震度5弱と続けてとなる。気象庁は午前10時20分から記者会見を開き、「揺れの強かった地域では落石や崖崩れなどが起こりやすくなっている可能性があるので、今後の地震活動に注意が必要だ。今後1週間ほどは最大震度5弱程度の地震に注意し、特に今後2、3日程度は規模の大きな地震が発生することがあり注意してほしい」と呼びかけた(同)。(※写真・上は、日本気象協会 tenki.jp公式ホームページより)

   坂井市を震源とする大きな地震が戦後間もなくの1948年6月28日にも起きている。福井地震だ。マグニチュード7.1で、当時の震度階級としては最大の震度6、隣接の福井市がこの烈震に見舞われた。震度7(激震)が新設されたのは翌年の1949年だった。福井市は終戦直前の1954年(昭和20年)7月19日にアメリカ軍による深夜の空襲で受けていた。戦後復興が始まり、これからというときの震災だった。さらに震災の1ヵ月後に水害にも襲われた。

   福井市は震災から16年後の1964年6月28日に「不死鳥のねがい」という市民憲章を制定した。戦災、震災、水害という災禍の経験をバネにして不死鳥の如く蘇ろうと市民の意識を高める憲章だった。フェニックスをデザインした憲章のロゴは市民の誇りでもある=写真・下=。そして、思うことは「福井県の幸福度が高いこと」だ。一般財団法人日本総合研究所の「全47都道府県幸福度ランキング」で2020年度含め4回1位の座を占めている。隣県の目線では、福井の県民性は勤勉で働き者と映る。また、出身都道府県別の社長数を各都道府県の人口で割って100を掛けた「社長輩出率」が、福井県は1.37%と38年連続で全国トップだった(3月3日付・日経新聞Web版)。

   福井の人たちと話していると、「そやの~お~」と相手を丸め込む言葉のチカラを感じる。おそらく歴史で培ったであろう、災害にめげない人間力ではないだろうか。

⇒4日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆「回転ドア内閣」には戻らない

☆「回転ドア内閣」には戻らない

  きょうも台風9号によるフェーン現象の影響で午後4時の金沢は37度だった(自家用車の外気温計)。ニュースでは輪島市で38度と伝えている。猛烈な暑さだ。金沢で9月に入って2日連続で35度以上になったのは、大正4年(1915)以来、実に105年ぶりとか(9月3日付・NHKニュースWEB版)。

   この暑さと並行で進む「ポスト安倍」の政治。「What’s at Stake for Shinzo Abe’s Successor」(安倍総理の後継者に何が必要なのか)と題するニューヨーク・タイムズWeb版の記事(2日)=写真=が目を引いた。記事は、安倍総理の後継を巡る論説で、「The worst post-Abe scenario would be a revival of political instability, which would inevitably strengthen the bureaucratic state and the stagnation that entails.」(意訳:ポスト安倍の最悪のシナリオは不安定な政治の再来であり、それは必然的に官僚機構の強化とそれに伴う停滞だ)と述べている。そうか、海外メディアにとって、またあの時代が再来が予感されるのか、と読んだ。

   あの時代とは、論説にも述べられているが、小泉内閣以降の2005年から短命政権が続き「7年間で7人の首相が誕生する」政治状況だことだ。当時は「回転ドア内閣」とも呼ばれ、総理の名前を覚える間もないほど交代劇が続き、日本のガバナンスや国際評価の足を政治が引っ張っていた。その意味で、7年8ヵ月続いた安倍内閣は政治の安定をもたらしたことが最大の功績だと論説は分析している。さらに、トランプ大統領と良好な関係を維持しながら、アベノミクスで積極的な経済政策を推進し、女性の社会進出や移民を拡大させた功績も大きいと評価している。

   ニューヨーク・タイムズの論説は今後の課題も見抜いている。安倍氏の後継者は、高齢化と人口減少、経済規模に比べて先進国で最大の債務負担、そしてパンデミックによるロックダウンのために縮小した経済という、大きな課題に直面することになるだろう。女性は雇用や賃金の平等からはまだ程遠く、海外労働者の移入も依然として難しい。

   最後段落はこう締めくくっている。「Above all, Mr. Abe has left a legacy of change to build on. 」(何よりも安倍総理は変革の遺産を残した)。政治が回転ドアに戻るのではなく、やらねばならいことを遺産として残し、次の総理も継承してくだろう、と。次の総理・総裁をまるで派閥の主導権争うのように連日報じている日本のメディアとはまったく異なる視点だ。

⇒3日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆同時多発テロとポリティカル・コレクトネス

☆同時多発テロとポリティカル・コレクトネス

          「9・11」から間もなく19年になる。2001年9月11日、現地時間で午前8時46分、日本時間で午後9時46分だった。当時帰宅して、報道番組「ニュースステーション」が始まったばかりの同9時55分ごろにリモコンを入れると、ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突する事故があったと生中継で放送されていた。食事を取りながら視聴していると、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。リアルタイムの映像で衝撃的だった。

   「9・11」をきっかけにアメリカ国民、とくに白人層の深層心理に変化が起き始めたのではないかと考えることある。そのシンボリックな現象の一つが2016年の大統領選挙でのトランプ氏の当選ではなかったか。トランプ氏は「メキシコとの国境に壁を建設」や「不法移民の流入に反対」、「イスラム教徒に対する入国の一時禁止」などを公約に掲げていた。同時多発テロはイスラム過激派「アルカイダ」による犯行だったので、有権者の支持を得るための公約だろうと当時思ったが、そのような単純なことではないようだ。

   1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等、民主主義という共通価値を創り上げる先頭に立ってきた。戦後、ソ連や北ベトナムなど共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等、民主主義という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値はマイノリティや社会的弱者の立場に立ち、人種や宗教、性別などに対する寛容さへと深化した。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、同時多発テロをきっかけに、誰もが自由と平等だが、それが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば、それは偽善ではないか、とアメリカ国民、とくにポリティカル・コレクトネスを担ってきた白人層が考え始めた。ポリティカル・コレクトネスは社会規範だが、同時に本音が言えない閉塞感から、窮屈さや疲れを感じさせる。犠牲になっているのはわれわれだ、と。2003年にアメリカを中心とする有志連合が始めたイラク戦争は大量破壊兵器の廃絶を名目とした軍事介入とされた。そこには自由と平等、民主主義という共通価値はすでになかった。そして、トランプ氏はあえてポリティカル・コレクトネスの概念からかけ離れた公約を打ち立て、白人層から支持を得て当選した背景も同様ではなかった、か。

   では、ポリティカル・コレクトネスの犠牲の矛先は、次はどこに向かっていくのか。11月の大統領選なのか。あるいは、対立を深めている中国なのか。

⇒26日(水)午後・金沢の天気     はれ

☆無常なるかなGDP「マイナス27.8%」の衝撃

☆無常なるかなGDP「マイナス27.8%」の衝撃

    能登へマイカーで盆帰省したが、道路は例年のこの時季に比べはさほどの渋滞ではなかった。新型コロナウイルスの感染拡大で帰省を見合わせた人も多くいたのではと推測する。もう一つの要因は、例年ならば列を連ねるように見かける観光バスをほとんど見かけなかった。能登は夏場の観光需要は高いが、ことしはかなり落ち込んでいるのではないだろうか。

   さきほど午前9時、内閣府はGDPの速報値(4-6月)を発表した。物価変動の影響を除く実質で前期比マイナス7.8%、このペースが1年間続くと想定した年率換算ではマイナス27.8%減だ。リーマンショック後の2009年の1-3月のGDPはマイナス17.8%だったので、それを大幅に超えたことになる。

   すでに民間のシンクタンクは4-6月期の実質GDPは前期比年率換算でマイナス27.9%と算定し、リーマンショック後を超えて最大の落ち込みになるだろうと予測していた(7月31日付・日本総合研究所公式ホームページ)。これで、3四半期連続のマイナス成長となる。昨年10月の消費税増税からマイナス成長が続き、それにコロナ禍が追い打ちをかけたかっこうだ。

   リーマンショックどころではない、世界恐慌の様相を呈してきたのではないだろうか。ことし4月から6月までのGDPの伸び率は、アメリカが年率換算でマイナス32.9%となるなど、世界で歴史的な落ち込みとなっている。まさに、「コロナ恐慌」の前兆だ。

   この数字は冒頭で述べたような実感として伝わる。民間シンクタンクは、大幅なマイナス成長の要因について、政府の緊急事態宣言や自治体の休業要請の下、外食や旅行を中心に個人消費が大幅に落ち込んだことや、自動車の輸出が減少したことなどを挙げている。

   では、第2四半期(7-9月)の展望はどうか。先の日本総研は以下予想している。コロナ禍による内外の活動制限緩和を受けて持ち直しに転じるものの、V字回復は期待薄。7月入り後の感染再拡大を受けて、国内の小売・娯楽施設への人出の回復が頭打ちとなるなど、消費の回復力は脆弱。入国制限の緩和は当面、一部の国からのビジネス目的に限られるとみられるなか、インバウンドも実質ゼロの状況が続く見通し。さらに、進捗ベースで計上される住宅や建設などは、今後一段と悪化する見込み。

   先行きが暗い。パンデミックの経済リスクが数字として顕在化してきた。ふと庭先を眺めるとムクゲの花が夏の日差しに映えて活き活きとしている=写真=。花は毎年変わらず咲くが、人の世は変わってしまう。先人たちはこれを「無常」と称した。「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」(平家物語)

⇒17日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

★「香港のジャンヌダルク」が発する言葉の矜持

★「香港のジャンヌダルク」が発する言葉の矜持

   香港国家安全維持法の違反容疑で逮捕され、12日未明に保釈された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏の様子がニュース番組で流れていた。周氏は保釈後、日本のメディアに対し、香港警察から証拠の提示もなく、パスポートも押収され、「なぜ逮捕されたのか分からない」と流暢な日本語で答えていた。そして、拘束中に「欅坂46」のヒット曲『不協和音』の歌詞が頭の中に浮かんでいたという。日本語もさることながら、サブカルチャー通であることにも舌を巻いた。

   欅坂46のこの曲『不協和音』は正直知らなかった。ネットで検索すると秋元康が作詞して2017年4月にリリ-スされたとある。「絶対沈黙しない」「最後の最後まで抵抗し続ける」などの歌詞が民主活動家としての彼女の心の支えになったのだろうか。2014年のデモ「雨傘運動」に初めて参加してから、今回含めて4回目の逮捕だ。拘置所で過ごす孤独な夜にこの歌を心で口ずさんでいたのかもしれない。

   周氏は保釈からほぼ1日たって「ユーチューブ」で動画を配信している=写真・上=。「釋放後Live!憶述警察爆門拘捕過程」とのタイトルで今回の逮捕について述べ、この中で3分間ほど日本語で語りかけている。「心の準備ができていないまま逮捕され本当に不安で怖かった。国家安全維持法では起訴後の保釈は認められていないため、このまま収監されてしまうのではないかと怖かった」「2台のパソコンと3台のスマホが没収された」と当時の状況を述べている。今後起訴されるかどうか現時点ではわからないとしたうえで、最後に「日本の皆さんも引き続き香港のことに注目してほしい」と呼びかけている。

   きょう午後1時現在で動画は26万回再生されている。それにしても、サブカルチャーを通して独学で日本語が話せるようになったとは言え、政治用語を駆使してこれだけ淡々と語るとは、語学の努力家だと察する。おそらく、日本のメディアとやり取りの中で自らの思想や考えなどを伝えたい、知ってほしいという懸命さが日本語に磨きをかけたのだろうのだろう。

   彼女の日本人向けのTwitterをチェックすると、緊縛した状態でのメッセージの発信がある。Twitter(5月27日付)=写真・下=では「今日は国歌法と国家安全法に反対するデモがあります。香港市民は平和にデモをやってるのに、警察が突然走りながらペッパーボール弾を乱射しています。市民は逃げ惑い、現場は混乱した状況になっています。」と生々しい動画も掲載している。言葉を発しながらの戦いだ。

    彼女の言葉には矜持を感じる。中国政府に対する葛藤、23歳にして香港という自らの居場所を死守するために戦い続ける勇ましさだ。「I am not afraid… I was born to do this.(私はまったく怖くない、私はこれをするために生まれてきたのだから)」。あのジャンヌ・ダルクの言葉を思い起こす。

⇒13日(木)午後・金沢の天気    くもり時々はれ