⇒ニュース走査

☆やはりこうなるのか、脱炭素=原発促進

☆やはりこうなるのか、脱炭素=原発促進

   きのう26日の臨時国会で菅総理は所信表明演説を行った。テレビで視聴していて、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と声高に述べていたシーンが印象的だった。

   総理は演説で、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力するとし、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではない」と強調していた。そして、石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換し、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、脱炭素社会に向けてのイノベーションを起こすため、実用化を見据えた研究開発を加速させると述べていた。

   菅総理はきょう国連のグテーレス事務総長と電話で会談し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする政府の方針を伝えた。そして、小泉環境大臣はきょうの閣議のあとの記者会見で、「いままでの考え方では実現できないのは明らかで、環境省一丸となって責任と役割を果たしていきたい」と述べた(10月27日付・NHKニュースWeb版)。菅総理が小泉氏を環境大臣として留任させた理由はこれだと納得した。

☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

   前回の続き。 日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人が23日、外国特派員協会で記者会見した。この会見で、教授サイドから「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と記者たちは解釈したのではないかと述べた。そして、この記者会見について、国民はどのようなイメージを持っただろうか。

   とくに、刑事法の教授が「ナチスドイツのヒトラーでさえも全権を掌握するには、特別の法律を必要としましたが、菅総理大臣は現行憲法を読み替えて自分がヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」 と述べたことに、ネット上で批判的なコメントが集中している。

   「会見には何の関係も無いのに、独裁者とかヒトラーなどの用語を用いるのは、聞いている人達に菅総理や政府への悪印象を与える事が目的だからです。・・・」(ユーチューブ)、「自国の首相をヒトラーと同じだって。しかも外国記者クラブで世界に向かって宣伝。このようなおかしな”学者”が主導権を握っている学術会議ってなんだ。このよう組織を税金を使って持つ必要は無い。・・・」(ヤフーニュースのコメント)。それにしても、すさまじい数の批判コメントだ。

   この会見を仕掛けた側の意図がよく理解できない。当事者たちに思いや本音を自由に語らせるために開いた会見だとすれば、それは大間違いだ。会見の仕組みや意義を理解していないのではないか。会見で記者が読むのは、会見を開いた理由・意図・目的である。会見に臨んだ理由が、6人が総理の任命拒否について裁判で総理の権限をめぐって争うというのであれば、とても分かりよい。会見の開催は、目的性を持ったものである。言葉で「ヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」などと政府批判を言うよりも、アカデミックな闘争として裁判を仕掛けた方が国民の理解を得るのではないだろうか。

   学術会議サイドは、学術会議の独立性は破壊され、学問の自由の制度的枠組みを破壊することになるので、憲法23条違反と主張している。 官邸サイドは、憲法15条1項の国民の公務員選定罷免権を根拠にして今回の措置が合法としている。だったら、裁判で決着するしかないだろう。

※写真は、FCCJ(日本外国特派員協会)公式ホームページの会見動画より

⇒25日(日)夜・金沢の天気     はれ

★記者会見で逆に問われること

★記者会見で逆に問われること

        日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人がきのう23日、外国特派員協会で会見した。任命拒否は「学問の自由を破壊する憲法違反」「政治権力に左右されない職務の大きな妨げ」などと訴え、早期撤回を求めた。また、「会員の適否を政治権力が決められれば、憲法23条が保障する『学問の自由』の破壊になる」との主張もあった(10月23日付・共同通信Web版)。テレビでも会見のニュースを見たが、感想をひと言でいえば、「記者会見はもう少し戦略を持って臨むべき」ということだ。

   まず、この会見は誰に向けて発信したのだろうか。外国特派員協会なので、単純に世界に向けての発信なのだろうか。つまり、世界に向けて、日本の菅総理は「学問の自由を破壊する憲法違反を犯した」、あるいは「学問の自由の破壊者だ」と訴えたかった、のか。しかし、外国特派員はそう単純に受け取るだろうか。世界のメディアの目線は、政府批判を繰り広げた学者を捕捉し隔離する中国のケースならば、人権弾圧や「学問の自由」の侵害をとらえるだろう。海外メディアは、政府機関への任命拒否を単純に憲法違反や人権弾圧、学問の自由の侵害と解釈するだろうか。

   記者会見で記者サイドが読むのは相手の表情や言葉のバックボーンからにじみ出る思想信条だ。刑法専門の教授は「官邸側は憲法15条1項が定める国民の『公務員の選定・罷免権』を根拠にして、今回の措置は合法だと説明している。総理大臣は国民を代表しているからどのような公務員であっても自由に選び、あるいは選ばないことができる、その根拠は、憲法15条だと宣言したということだ。『独裁者になろうとしているのか』と思うほど、恐ろしい話だ」と述べた(同・NHKニュースWeb版)。

   おそらく学者から「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、記者たちはこの言葉を発するために記者会見に臨んだに違いない、と読む。つまり、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と。

   動画(同・朝日新聞Web版)をチェックすると、ロイター通信の記者は「将来的に菅総理はどのように権力を使っていくか」と質問した。刑法専門の教授は「すべての公務員について自分が好き勝手に任命・罷免できるというところまで突き進む危険性がある。日本の国民の世論が内閣をどう評価するかが今後の行方を左右する」と答えていた。

   記者会見で述べれば、言いたいことすべてを記者が記事や放送で流してくれると勘違いしているのではないだろうか。ロイター通信が今回の会見をどのように報じたのかとWeb版をチェックしたが、この会見の模様はニュースになっていない(24日午前9時現在)。世界に発信するニュースではないとの記者判断なのだろう。国内メディア各社は報じている、が。

⇒24日(土)午前・金沢の天気    くもり

☆世界の研究者を誘惑する中国「千人計画」

☆世界の研究者を誘惑する中国「千人計画」

   このところ気になるニュースのキーワードの一つが「千人計画」だ。ことし7月にアメリカ政府は、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館について、中国が科学技術の先端情報を違法に収集するための拠点だったとして閉鎖措置に踏み切った。ビッグニュースとなったが、そのときに知った言葉が「千人計画」だった。

   中国の「千人計画」は、世界レベルの理工系人材1000人を高待遇で国外から引き抜き、中国の経済発展に貢献させるのが狙いとされる。2008年から中国が肝入りで行っている研究人材の囲い込みプロジェクトで、外国人を対象とした計画のほか国外で研究成果を上げている中国人を呼び戻す取り組みでもある。ただ、アメリカ政府は、このプロジェクトに関わった研究者が「経済スパイ」の役割も担わされ、中国に軍事や科学技術が盗み取られているとにらんでいる。

   その典型的な事例が、ことし2月に摘発されたハーバード大学の教授のケースだった。「China’s Lavish Funds Lured U.S. Scientists. What Did It Get in Return?」。ニューヨーク・タイムズWeb版(2月6日付)=写真=で詳細な経緯が記されている。教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている化学者だ。

   記事を要約すると、教授は中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は1月下旬、リーバー教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)していた。記事から、その厚遇ぶりがうかがえる。教授は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結び、5年間で毎月5万㌦(540万円)の研究費と年間15万㌦(1620万円)の生活費を支給されていた。さらに、教授には「武漢理工大・ハーバード大共同ナノテクノロジー研究所」の設立費として150万㌦(1億6200万円)の資金も提供されていた。この魅力的な研究資金による囲い込みが「千人計画」だ。

   アメリカ司法省は、リーバー教授が中国側と契約を結んでいた時期と、アメリカ国防総省と国立衛生研究所から研究資金を受け取っていた期間が重なっていたことを問題視した。教授が中国と、アメリカ国防総省と国立衛生研究所からダブルで研究資金を受け取っていたころ、武漢理工大学に出向いていたのだ。教授はアメリカ国防総省と国立衛生研究所からの受託でどのような研究をしていたのか、記事では詳細は記されていない。単純に、生物化学兵器を連想させる、のだが。そして、研究と言うより、アメリカ国防総省での生物学的研究の成果・情報を中国に持ち込ませることが、中国側の狙いだったのか。さらに気になるのは、リーバー教授の生物学的研究の中国への持ち込みが、武漢でのコロナウイルスの感染拡大とどう関連があるのか、だ。

         アメリカの捜査当局はアメリカの71機関で、中国当局によって180件もの知的財産権が盗用された疑いがあるとして捜査を行っている。

⇒23日(金)朝・金沢の天気   あめ

★「いのち短し 恋せよ乙女」

★「いのち短し 恋せよ乙女」

             このニュースを見て、『ゴンドラの唄』を思い出した。「いのち短し恋せよ乙女 紅き唇あせぬ間に・・・」。一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」は、ことし1月から8月の自殺者数の動向を分析した中間報告を公表した。7月以降、同居人がいる女性や無職の女性の自殺が増加していて、新型コロナウイルスの影響で配偶者からのDVや、子育ての悩み、経済問題などが深刻化していることが要因になっている可能性があると指摘している。

   警察庁の発表では、全国で自殺した人は7月以降で昨年の同じ時期より増加にあり、とくに8月は1854人と昨年を16%上回った。このうち女性は651人で40%も増加している。

   自殺対策推進センターの公式ホームページによると、自殺に関する相談として、配偶者と暮らす女性から「コロナでパートの仕事がなくなり、夫からは怠けるなと毎日怒鳴られる。こんな生活がずっと続くなら、もう消えてしまいたい」といった相談や、シングルマザーの母親から「子どもが発達障害で子育てがとても大変なのに、ステイホームでママ友とも会えず、実家にも帰れない。子どもの検診もなくなって、一人でどうやって子育てをしていけばいいのか分からない。死んで楽になりたい」といった相談が多く寄せられているという。

   同ホームページによると、筑波大学の研究者の調査で、出産後の母親の「産後うつ」が新型コロナウイルス感染症の影響で、以前の2 倍以上に増えているとの報告があるなど、コロナ禍で、人と接する機会や場が少なくなり、経済的にも不安定な生活を強いられる女性が増えている中で、今後女性の自殺リスクがさらに高まっていくことが懸念される、としている。 

   また、ことし7 月の自殺者数が増加したのは「若手有名俳優の自殺報道」(俳優の自殺それ自体より、それに関する報道)が大きく影響している可能性が高い、と指摘している。自殺報道よって、自殺が増える現象は「ウェルテル効果」と呼ばれ、国内外で過去にも同様のことが起きている。有名人の自殺報道の後は「自殺報道で心が揺れて怖い。自分も自殺してしまいそう」「二ュースを見て、死にたい気持ちが呼び起こされてしまった」といった相談が増えるのだという。自殺は連鎖する。切ないニュースである。

⇒22日(木)夜・金沢の天気   あめ

   

☆日本海、スルメイカ漁の危機

☆日本海、スルメイカ漁の危機

   自身はワイン党でもあり日本酒党でもある。食前酒はワイン、食事は日本酒とともに味わう。最近の傾向で、ワインはシャンパン、あるいはスパークリングワインが多くなってきた。そのつまみに「あたりめ」がよく合う。とくに、スルメイカが絶品で、マヨネーズをちょっとつける。スパ-クリングの泡立ちと、ほどよい固さのあたりめが口の中で妙に混じり合って、独特の食感になる。この「マリアージュ」は発見だった。

   このスルメイカが危機に陥っている。今月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆(EEZ=日本の排他的経済水域)で大量の中国漁船が違法操業を行っているのだ。地元紙は以前からこの問題を取り上げているが=写真=、きょうは全国紙の朝日新聞が掲載している。

   水産庁が9月末までに退去警告をした船の数は延べ2586隻に上っている。去年までは北朝鮮の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増しているのだ。

   記事によると、8月中旬から大和堆周辺で中国の大型底引き網船の違法操業が活発に動き始めた。水産庁の取締船はこれまで違法警告したにもかかわらず退去しなかった漁船に対し放水で警告を発した漁船は329隻に上った。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っていた。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZではないだろうか。

   憶測だが、中国の狙いはもう一つある。地元紙は中国漁船の違法操業について、「EEZ内に中国の公船が現れているとの情報もある」と伝えている(10月6日付・北國新聞)。漁船の違法操業に紛れて、公船が海底調査を行っている。これは「大和堆の中国所有論」の布石だろう。中国は今年8月に東シナ海の海底地形50ヵ所について命名リストを公表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域のほか、沖縄本島沖の日本のEEZも含まれる。その前、4月には南シナ海でも海底地形55ヵ所や島嶼(とうしょ)や暗礁25ヵ所について命名リストを公表している。

   おそらく、中国は北朝鮮と共同戦線を組んで、関連海域と海底に主権と管理権があると主張することで、大和堆周辺の海洋管理を主張する。そして、公船を繰り出し、日本の漁船を追い払う。尖閣で行われているパターンである。スルメイカ漁の危機に、日本の外交が問われている。   

⇒21日(水)朝・金沢の天気    はれ 

★振り向けば、街中にクマがいる

★振り向けば、街中にクマがいる

          クマの出没が相次ぐ石川県内で、ついにショッピングセンターにクマが現れるという騒動が起きた。きのう19日午前7時50分ごろ、加賀市のJR加賀温泉駅前にある大型ショッピングセンターで、搬入口にクマがいるのを従業員が発見し通報。クマはそのまま搬入口から店舗内に侵入した。このためセンターでは午前9時30分の開店を取り止め、従業員を別の建物に避難させた。最初の通報から13時間が経過した午後9時過ぎ、猟友会が店の中にいたクマを駆除した。センターはこの日休業した(10月19日付・NHKニュースWeb版)。

   加賀市は山代や山中、片山津といった温泉地があり、JR加賀温泉駅はまさにその玄関口でもある。前日の18日午後7時ごろには山代温泉で70代の女性がクマに襲われ、17日にも同じ山代で3人がケガをしている。

   政府の観光支援事業「Go To トラベル」がこのところ順調なだけに、クマ騒動が温泉地観光に水を差さしたのではないか。「Go To トラベル」は1人1泊当たり1万4千円が上限の割引額があり、加賀温泉(山代、山中、片山津、粟津)や能登の和倉温泉の旅館がにぎわいを見せている。いまはマツタケの季節、来月になればさらにズワイガニでにぎわいが戻ると関係者は期待しているだろう。

   連日のニュースでクマの様子に変化を感じるのは、街中に頻繁に出没していることだ。これまでは、奥山から人里に下りてきて柿の木に登る、といったケースだった。それが、JR駅近くのショッピングセンターに現れる。金沢市内では、周辺にオフィスビルなどが立ち並ぶ兼六園近くの金沢城公園でも出没したことがある。街に出没するのはクマだけではない。イノシシ、サルなどの出没がニュースとなる頻度も高くなっている。

   石川県が8月下旬に調べたところ、ブナの実が大凶作、ミズナラの実が並作、コナラの実が凶作とみなされた。ブナは過去10年で最も不作とか。冬眠前のクマが餌を求めて里山に下りる状況はしばらく続くという。餌を求めるために街中のショッピングセンターにやってきたとなるとただ事ではない。人の生活圏に入ることを厭わない「新世代」のクマやイノシシが出現しているのではないだろうか。新聞の見出し(10月20日付・朝日新聞)の引用にもなるが、振り向けば、街中にクマがいる。

⇒20日(火)朝・金沢の天気      はれ

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

   共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、菅内閣の支持率は前回9月の調査と比べて5.9ポイント減の60.5%、不支持率は5.7ポイント増の21.9%だった。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題を巡り、菅義偉首相の説明は「不十分だ」との回答が72.7%に達した(10月18日付・共同通信Web版)。

         NHKが今月9-12日で行った世論調査によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、政権発足後初めての先月の調査より7ポイント下がって55%、「支持しない」は7ポイント上がって20%だった。日本学術会議が推薦した新しい会員の一部を任命しなかったことについて、菅総理が「法に基づいて適切に対応した結果だ」と説明していることに、どの程度納得できるか聞いたところ、「大いに納得できる」が10%、「ある程度納得できる」が28%、「あまり納得できない」が30%、「まったく納得できない」が17%だった(10月13日付・NHKニュースWeb版)。

   各メディアの世論調査では内閣支持率が前回比で減っている。共同とNHKはそれぞれ6ポイント、7ポイントだ。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否となったことをめぐり、連日メディアで問題視されているにもかかわず、NHKでは支持率55%と高い。菅内閣とすれば想定内のことなのかもしれない。

   この日本学術会議問題をめぐってさまざまな視点から批判や意見があって当然なのだが、まったく解せないのが、静岡県の川勝知事の発言だった。知事は今月7日の定例記者会見で、「菅首相の教養レベルが図らずも露見した。学問をされた人ではない。単位を取るために大学を出た」などと発言した。その後、12日も報道陣に「訂正する必要は全くない」と強調し「(菅首相の)経歴を見ると、学問を本当に大切にしてきたという形跡が見られない」と述べていた(10月16日付・静岡新聞Web版)。このニュースを知って、まるで人格攻撃のようだと感じた。

   静岡県庁の公式ホームページで知事のプロフィルをチェックすると、「昭和50年3月 修士(早稲田大学大学院経済学研究科)」「昭和60年10月 D.Phil.(オックスフォード大学)」とあり、「私は学問を追求してきた」と言わんばかりだ。ただ、「言葉は人格を表す」とよく言われるが、学歴と人格の乖離が目に余る人は私の周囲にもいる。知事は去年12月19日にも、来年度予算に難色を示した県議会の自民党系の最大会派を念頭に「やくざの集団、ごろつきがいる」と発言。県議会2月定例会で撤回、謝罪し「今後、不適切発言はしない」と答弁したばかりだった(同)。

   知事は今月16日にようやく発言を撤回し陳謝した。静岡県公式ホームページには「『富士の国』づくりに向けて」と題したページがある。以下引用する。「富士」の「富」は物の豊かさを、「士」は心の豊かな徳のある人格者を意味しており、その字義をふまえ、我々は物の豊かさと心の豊かさの調和した国をめざして「富国有徳」をもって理念とする。知事には富士山のように仰ぎ見、畏敬の念に打たれる人格者であってほしいと願うのだが。(※写真は、静岡県富士市役所の「フリー写真素材集」より)

⇒19日(月)朝・金沢の天気   くもり

☆17才、人生の転機となったヤジ

☆17才、人生の転機となったヤジ

   中学時代に友人たちとエレキギターのバンドを組んで、サイドギターを担当した。当時流行していた、ザ・ベンチャーズの演奏曲を文化祭で披露したりした。当時ヒットしたヴィレッジ・シンガーズの『バラ色の雲』やいしだあゆみの『ブルー・ライト・ヨコハマ』は今でもカラオケで歌っている。高校時代で心に残るのは南沙織の『17才』だろうか。これは歌うというより、南沙織への憧れだったのかもしれない。先日亡くなった作曲家の筒美京平氏がつくったこれらの曲が私たちの世代の思春期を盛り上げてくれたのかもしれない。

   今にして思えば、17才が自身にとっての転機だった。能登で生まれ、高校時代は金沢で過ごした。クラブはESSに所属していて、2年のときに石川県英語弁論大会に出場する幸運に恵まれた。スピーチのテーマは「学生運動について」だった。大阪万博(1970年)が華やかに開催され、翌年には南沙織の「17才」がヒット曲となっていた。世の中がカラフルに彩られた時代の始まりではなかったろうか。その一方で、赤軍派による「よど号」のハイジャック事件(1970年)があり、連合赤軍による浅間山荘事件もその後に起きた。金沢大学でも学生運動が盛んで、新聞紙面をにぎわせていた。そんな闘争の時代の残影に私は違和感や憤りを感じていた。

    英語弁論大会でのスピーチはその気持ちをストレートに表現したものだった。大会は大学の部と高校の部があり、金大生も多く客席にいた。私のスピーチが余りにもストレートな表現だったのか、会場の数人から「ナンセンス」と大声のヤジが飛び、一時騒然となった。コンテストでは優勝した。高校の部は自身を含め4人の出場だった。審査委員の講評はよく覚えている。「これだけ会場をにぎわせた高校生のスピーチはこれまでなかった」と。自身それほど英語の発音が上手ではないと分かっていた。詰まるところ、大学生からヤジを浴びせられた分、ほかの3人より目立ったことがどうやら優勝の理由だった。

    東京の大学に入ったが、英語弁論大会での優勝経験が忘れられず、部活は日本語の弁論部に入った。そこで、論理と調査と統計に裏打ちされた弁論の手法をたたき込まれた。弁論部出身の新聞記者からアドバイスもあって、マスメディアを志望してUターンし、地元の新聞社に入社した。その後、テレビ局へ転職し、メディア業界を28年間渡り歩いた。17才のときの英語弁論大会が人生の転機となったのだろうと思う。

    以下は後日談だ。新聞社に入りたてのころ、先輩記者に居酒屋に誘われた。先輩はかつて学生運動でならした人だと別の先輩から聞いていた。居酒屋で先輩は「君は○○高校の出身か。そう言えば、5年か6年前に英語の弁論大会を取材したときに、学生運動を批判した生意気そうなヤツがいたぞ」と言う。私はピンときて「それは私です」と告白した。先輩のびっくりした表情を今でも覚えている。ヤジを飛ばした一人がどうやら先輩だということも分かった。先輩はその後退社した。あの大声の「ナンセンス」のヤジが優勝に導いてくれたのだと思っているので、私は今でも感謝している。

⇒13日(火)午前・金沢の天気   はれ

★いつでも誰でもどこででも日銀のデジタル通貨

★いつでも誰でもどこででも日銀のデジタル通貨

   このブログでも何度か取り上げてきた中央銀行が発行するデジタル通貨について、きのう日銀が欧米の中央銀行との共同研究報告書を公表した。日銀の公式ホームページをのぞくと、来年2021年度から実証事業を始めるとある。いよいよデジタル法定通貨が経済のコアとして浮上してきた。

   このブログで、政府と日銀はアフターコロナの政策として、2024年に予定している新札発行をデジタル通貨へと舵を切るのではないかと憶測してきた。以前から紙幣や硬貨は非衛生的だとの指摘があり、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって一気にキャッシュレス化が進んだ。もちろん紙幣や硬貨を粗末にするという意味ではない。  

   以下、日銀ホームページの共同研究報告書から引用する。日銀は、現時点でデジタル法定通貨(Central Bank Digital Currency、以下CBDC)を発行する計画はないと前置きしながしなら、決済システム全体の安定性と効率性を確保するよう準備する、としている。CBDC役割について、1.現金と並ぶ決裁手段の導入、2.民間決裁サービスのサポート、3.デジタル社会にさわしい決済システムの構築、の3点を上げている。

   現金に対する需要がある限り、現金の供給についても責任をもって続けていく。CBDCが発行されると、民間企業や金融機関によるデジタル通貨と競合し、民間の活力を損なう懸念もある。たとえば、銀行預金からの引き出しが容易になって金融危機時に銀行経営が揺らぎやすくなるといったことも想定され、そうした事態が起きないよう民間決裁サービスをサポートする。

   CBDCが持つべき特性をまとめている。現金や預金などとの交換性や現金払いやスマホ決済のような決済時の容易さ(ユニバーサルサービス)、取引の即時決済性といった強靱性、セキュリティを上げている。つまり、現金のように「誰でも使える」「安心して使える」「いつでも、どこでも使える」との位置づけだ。

   日銀は21年度の早い時期に実証実験を始め、1.中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方、2.CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方、.3.プライバシーの確保と利用者情報の取扱い、4.デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方などの点について検討を進めていく、としている。

   菅内閣が進めるデジタル化の促進はまさに日銀のこの動きと連動するものだろう。これと選挙のデジタル投票が同時に進めば、日本のデジタル化は政治と経済の両面でかなり加速するのではないだろうか。

⇒10日(土)朝・金沢の天気   くもり