⇒ニュース走査

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

   最近の世界のニュースを見ていると、世界のそれぞれの価値観がむき出しになっている。アメリカの連邦議会議事堂にトランプ大統領の支持者が乱入する事態が発生し、議会では民主・共和両党からトランプ氏の大統領の罷免を求める声が上がっている。閣僚や政権高官も相次いで辞任を表明しており、任期終了まで残り13日となる中、トランプ氏の孤立化が進んでいる (1月7日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   アメリカではかつて、テレビ局に選挙などの政治的な扱いに報道の公平性を課すフェアネスドクトリン(The Fairness Doctrine)があった。しかし、TVメディアの多局化とともに、言論の多様性こそ確保されなければならず、フェアネス性を課すことのほうがむしろ言論の自由に反するとの司法判決(連邦最高裁)により、1987年にファネスドクトリンは撤廃された。これ以降、大統領選では対立候補を誹謗、中傷するネガティブ・キャンペーンがTVメディアも巻き込んで行われるようになる。対立候補にダメージを与える上では有効だが、有権者や国民に対立感情を煽ることにもなった。トランプ支持者による連邦議会議事堂への乱入はそのシンボリックな事件ではないだろうか。

   香港の警察は、国家政権の転覆を狙ったとして、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで、議会にあたる立法会の民主派の前議員や民主活動を次々と逮捕している。6日と7日の両日で55人に上る(1月8日付・NHKニュースWeb版)。民主派は暴動を起こしたり煽ったりわけではない。選挙を通じて議会の主導権を勝ち取ることは香港の憲法にあたる基本法に守られている権利でもある。異なる意見を持つ者が国安法に触れるという中国の価値観が香港に定着するのは時間の問題かもしれない。

   アメリカや香港の民主主義は岩盤だと世界は認めてきた。それが崩れ始めている。それも土砂崩れの様相を呈している。では、日本は安泰なのか。

   IMFが昨年10月に公表した報告書で、日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%とアメリカの2倍、日本に次ぐイタリアでは161%だ。日本のダントツの数値を世界はどう解釈するか。債務残高が増えて、このまま少子化が進めば一体誰が返済するのか、日本国債の大暴落を世界は予感しているのではないだろうか。

   コロナ禍で多額の予算を費やした日本政府は来年度から手荒な税収対策を強行してくるだろう。たとえば、40兆円以上ともいわれる「タンス預金」を吐き出させることによる課税もある。2024年度に1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新が行われる。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、国税がチェックする。翌年2025年度からは旧札と新札の交換で手数料を取る。また、新札発行を機にデジタル法定通貨へと舵を切ることなるだろう。政府が銀行での預金分しかデジタル通貨と交換しないと発表した時点で、タンス預金は一気に消費へと回る。これをもくろんで消費税の増税を行うのではないか。

   さらに、400兆円以上ともいわれる企業の「内部留保」への課税だ。アメリカや台湾、韓国ではすでに実施されている。日本でも資本金1億円以上の同族会社の内部留保増加額には10-20%の課税がされている。これを、すべての企業を対象に実施する。ニュースで伝わる銀行の合併による再編とデジタル庁新設の本来の目的はこの布石だと読んでいる。財源難に陥る政府は、巧妙かつ手荒く、そしてやみくもに増税を行う。大混乱を招きながらも国家財政の維持を図るだろう。歴史は繰り返される。

⇒8日(金)夜・金沢の天気    くもり

☆緊急事態宣言と大雪警報の日常

☆緊急事態宣言と大雪警報の日常

   菅総理はきょう夕方、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言を出した。期間は2月7日まで。飲食店の営業時間短縮や、テレワークによる出勤の7割減、午後8時以降の外出自粛、イベントの人数制限の4点をパッケージで対策を行っていく(1月7日付・NHKニュースWeb版)。

   石川県の地元メディアは、能登半島にある穴水町の石川宣雄町長が感染したと報じている。石川町長は79歳で、きのう6日午前、新年のあいさつで谷本県知事と面会し、その後、公務中に体調不良を訴え、検査したところ、感染が確認された。肺炎を起こしていて、中等症だという。感染経路はわかっておらず穴水町では初めての感染者となった。きょう県内で25人が感染した(石川県庁公式ホームページ)。

   県内での感染拡大を受けて、石川県庁ではきょう夕方、新型コロナウイルスの対策本部会議が開かれ、知事は首都圏への不要不急の往来を自粛するよう県民に呼びかけた。ただ、知事は県独自の緊急事態宣言について、「前回の宣言は地域経済に相当なダメージを与えたことは事実。(モニタリング指標などの)基準に照らし合わせながら、石川県は今どういう状況にあるのかということがある程度客観的に判断できる。総合的に判断していくということになる」と述べるにとどめた(1月7日付・北陸放送ニュースWeb版)。

   きょうの県内は、急速に発達する低気圧の影響で雪や風が強まり、大荒れの天気となった。今夜からは強い寒気が流れ込み大雪になるおそれがあるとして、金沢地方気象台は県内全域に大雪警報を出して、大雪による交通障害に警戒を呼びかけている。雪の降る量は、8日夕方までの24時間で多い所で県内の平地で30㌢から50㌢、そのあと、9日の夕方にかけても平地の多い所で30㌢から50㌢の積雪となる見込み。(※写真は2018年1月13日の大雪では金沢の中心部でも57㌢の積雪となった)

           今回の寒波では九州地方でも20㌢の積雪が見込まれると予報で伝えている。スノータイヤに履き替えていないトラックや乗用車などのスリップ事故などが多発するのではないだろうか。

⇒7日(木)夜・金沢の天気     くもり時々ゆき  

☆コロナ禍、世界は再びロックダウン

☆コロナ禍、世界は再びロックダウン

          けさイギリスBBCニュ-スWeb版(1月4日付)をチェックすると、新型コロナウイルスの感染拡大がすさまじい。変異種化したウイルスの感染によって、1日当たりの感染者が5万人を超える日が続き、ジョンソン首相は4日夜のテレビ演説で外出を厳しく制限する措置(ロックダウン)をイングランド全域で導入することを明らかにした=写真=。

   BBCによると、食料品の買い物や通院、1日1回の運動などを除き、外出を厳しく制限し、違反した場合には200ポンド(円換算で2万8000円)の罰金が科される。生活必需品をあつかう店舗以外は原則として営業を禁止とするほか、小中学校や大学は原則として閉鎖し、来月中旬まではオンラインでの授業となる。

   感染者数はイギリスほどではないが、日本でもコロナ禍の勢いが増している。5日は全国で4900人超えの感染が発表され、死亡者も68人。感染者数、死亡者数とも1日当たり過去最多を更新した(1月5日付・共同通信Web版)。日本相撲協会は同じ日、横綱・白鵬の感染を発表した。白鵬は嗅覚異常の症状で4日にPCR検査を受け、けさ陽性と判定された。10日から始まる初場所の出場については休場となる見込み(同)。

   菅総理は感染拡大を受けて、きょうの自民党役員会で、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象とする緊急事態宣言の発令を7日に決定する方針を表明した(同)。宣言の発令は昨年4月に続いて2回目だ。

   当地の石川県でもきょう感染者が20人となった。金沢大学でも3日付でこのような一斉メールが届いた。「本日、共通教育科目受講学生に新型コロナウイルスの感染者が報告されました。行動歴の調査から,複数の濃厚接触者またはその疑いがある学生の存在が危惧されます。大学入学共通テストを控えて感染の拡大を予防するために1月4日(月)から7日(木)の授業についても、対面講義を取り止め遠隔授業といたします」と。コロナ禍の新年、仕事始めから強烈だ。

⇒5日(火)午後・金沢の天気    くもり

★著作権を手玉に取る

★著作権を手玉に取る

   著作権ビジネスを手玉に取った「おいしい」手口だとこの記事を読んだ人は思ったのではないだろうか。NHKニュースWeb版(12月22日付)によると、東京・渋谷区の音響会社に勤めていた男性が日本テレビの朝のニュース番組の音響効果を担当し、自身が創作した楽曲を平成27年(2015)から2年余りの間、番組で合計1900回余り放送したと虚偽申請をし、JASRAC(日本音楽著作権協会)から7400万円余りを不正に受け取っていた。男性は自らの楽曲の著作権管理をJASRACに委託契約していた。

   どうして男性がいとも簡単に大金を手にできたのか、JASRACとテレビ局の著作権契約の内容を調べてみる。JASRACは民放とNHKから年間で260億円余りの著作権料を徴収している。両社の契約は2015年当時、放送事業収入の1.5%を著作権料として支払うことで局側は楽曲が使い放題という包括契約をJASRACと結んでいた。JASRACにとっても、テレビ局はある意味で公的機関なので徴収がしやすいというメリットがある。

   男性が目をつけたのはまさにこの局側が楽曲が使い放題という包括契約にある。番組に使った楽曲について局側はJASRACに毎月報告する。JASRAC側は基本的に「放送収入の1.5%」の徴収枠組みが決まっているので報告内容に関して本当に使用されたのかどうかの精査は必要はない。ここに盲点がある。音響効果を担当した男性が自ら創作した楽曲を使用したとしてテレビ局に報告すれば、テレビ局はそのままJASRACに報告。JASRACはテレビ局の報告をもとに権利料を楽曲の制作側に支払うことになる。

   記事によると、JASRACが男性に支払った著作権使用料は1900回で7400万円なので、1回の使用料が3万9千円となる。2年余りで1900回の使用だから、朝のニュース番組が毎日放送されたとして仮に延べ800日と計算して、1回の放送につき、2.4回の使用料が発生したことになる。実際は1回しか使用していなくても、2回と記載することは可能だっただろうし、ゼロ回でも1回と記載することも可能だったろう。放送ごとに毎日チャリンチャリンと現金が降って来た。

   この一件が露見したのは日テレ側の内部告発ではないだろうか。同じ楽曲を流し続ければ、視聴者は聴き飽きる。以下は憶測だ。日テレの番組担当ディレクターが直接本人に、あるいは、男性が所属していた会社の担当者に「そろそろ番組に使う楽曲を変えてほしい」と指示したが、男性は変更しなかった。それを不審に感じた日テレ側が調査すると、その楽曲は男性自らが創ったものと分かった。そこで、報告書の使用回数を改めて調査すると合計で1900回と記載されていた。番組の映像はデータベースとして保存されているので、それをチェックすると、実際の使用回数は報告書記載の4分の1ほどと分かった。そこで、日テレがJASRACに虚偽の記載報告があったと通告したのではないだろうか。以上はあくまでも憶測だ。

   手玉に取られたJASRACは男性が所属した会社に対し、実際の放送分と虚偽の申告分を差し引いた5500万円の賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。男性は著作権者であり社員だったが、この場合社員としての不正にあたり、JASRACとしては男性が所属する会社に賠償を求めた。

⇒23日(水)夜・金沢の天気     はれ

☆めでたい金箔、ユネスコ無形文化遺産に

☆めでたい金箔、ユネスコ無形文化遺産に

   金、ゴールドの価値は世界共通のものだ。そして、金属であり、伸びる特性がある。それを極限まで薄く伸ばしたのが「金箔」である。400年以上の伝統があるとされる縁付(えんづけ)金箔の製法がユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった。文化財建造物の保存には欠かせない「伝統建築工匠の技」の一つ。金箔のほかに、屋根をふく技術の「ひわだぶき・こけらぶき」、そして「かやぶき」、文化財建造物を装飾する技術の「建造物漆塗」、壁の表面を土やしっくいで仕上げる「左官」や、「畳製作」など17の技術がまとめて登録された(文化庁公式ホームページ)。

   縁付金箔の製造現場をこれまで何度か見学する機会があったが、その技と金の耐久性には驚く。柿渋などにつけ込んだ専用の和紙に金をはさんで打ち延ばし、1万分の1㍉の薄さにする。金沢の伝統的な技法だ。こうした職人技は金沢の誇りでもある。そして、建物だけでなく仏像などの国宝の修復にも使われる。文化財は金箔の技術なしでは維持することはできない。まさに、有形と無形の文化遺産は密接に結び付いていると、現場を見て思う。

   金沢では金箔は体によいとされ、金箔を入れた日本酒、化粧品、うどんもある。かつて、金沢の子どもたちが頭にたんこぶをつくると、膨らんだ部分に金箔をはっていた。そして、知人からかつて聞いた話。金箔製造業者は潰れない(倒産しない)。なぜなら、金の価格が安いときに材料として仕入れ、高くなれば売って経営を安定させる。「良質な金を見極める目利きであり、金のトレーダーだよ」と知人は妙にほめていたことを覚えている。

   今回の登録で国内の無形文化遺産は「和食」や「和紙」などに加えて22件。石川県内では、単独で登録された農耕儀礼「奥能登のあえのこと」を始め、七尾市「青柏祭の曳山」(「山・鉾・屋台行事」の一つ)、輪島市・能登町「能登のアマメハギ」(「来訪神 仮面・仮装の神々」の一つ)に続いて4例目となる。

(※写真は金沢金箔伝統技術保存会ホームページより)

⇒19日(土)夜・金沢の天気  ゆき

☆『テラスハウス』、故意に「侮辱」を煽ったのか

☆『テラスハウス』、故意に「侮辱」を煽ったのか

   フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演した女子プロレスラーが自死した問題で新展開があった。読売新聞Web版(12月16日付)が報じている。警視庁は近く、ツイッターで女子プロレスラーを中傷したとして、大阪府の20歳代の男を侮辱容疑で書類送検する方針。女性に匿名の誹謗中傷は数百件に上ったが、中でもこの男が女性のツイッターの投稿に対し、「生きている価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと複数回にわたって返信の書き込みを繰り返し、公の場で侮辱した疑い。警視庁では、摘発して処罰の可否を問う必要があると判断した。

   問題のシーンは『テラスハウス』の38話で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。この38話は3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNSコメントで批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。フジの番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとっている。ところが、フジは5月19日未明の放送で、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流した。女子プロレスラーは5月23日に自ら命を絶った。 

   女性の母親は、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったとBPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てを行った(7月15日)。番組でプロレスのヒール(悪役)のキャラクターを演じるよう指示され、「番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けた」として、人格権の侵害を訴えた。併せて、「全ての演出指示に従うなど言動を制限する」などの条項を含む「誓約書兼同意書」によって自己決定権が侵害され、人権侵害に相当すると訴えた。

   これに対し、フジテレビ側は7月31日付で内部調査の検証報告を公式ホームページで掲載した。聞き取りを番組のプロデューサー、ディレクター、制作現場のスタッフ、出演者、女子プロレスラーの所属事務所の関係者ら27人に対して行った。番組について「予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていた」としたうえで、調査では「制作者が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されなかった」としている。

   BPO放送人権委員会は遺族からの申し立てを受け、これまで10月20日と11月17日の2回審理を行っている(BPO公式ホームページ)。今回の警視庁の書類送検によって、今後の審理ではSNS上に批判が殺到した理由、さらに、なぜ5月19日にそのまま放送したのか、フジの姿勢が問われるのではないだろうか。故意に「侮辱」を煽ったのかどうかだ。

(※写真は5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事)

⇒16日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆相次ぐジャーナリストの受難

☆相次ぐジャーナリストの受難

       ジャーナリストの受難が続く。イギリスBBCのWeb版(12月12日付)は「Ruhollah Zam: Iran executes journalist accused of fanning unrest」と、イランは不安を扇動したとして、ジャーナリストのルホラー・ザム氏を処刑したと報じている=写真・上=。ことし6月にザム氏はデモを扇動したとしたとして、ことし6月に死刑判決を言い渡されていた。

   BBCの記事によると、2017年12月に起きたイランの反政府デモは、物価高騰に市民による抗議活動だった。ザム氏はフランスのパリを拠点にして、通信アプリ「テレグラム」のニュースサイトを運営し、フォロワー140万人に向けて、抗議活動の映像などを情報発信していた。去年10月、いわゆる「ハニートラップ」でフランスからイラン入国したところを逮捕された。人権団体アムネスティ・インターナショナルは「抑圧の武器として、死刑が使われている」とイランを非難し、死刑の執行を取りやめるよう訴えていた。

   香港では、中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に対する詐欺罪での初公判が開かれ、保釈申請を却下して収監を命じた。黎氏は即日収監された。黎氏はことし8月に香港国家安全維持法(国安法)違反と詐欺などの疑いで香港警察に逮捕された後、保釈されていた。今回は逃亡や再犯の恐れを理由に保釈申請が認められず、収監された(12月3日付・BBCニュースWeb版)=写真・下=。

   詐欺罪はどのような内容だったのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社があるビルで、不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われてた。「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。香港の転貸に関する法律を理解してはいないが、日本ならば、無断転貸の場合、ビルのオーナーは賃貸借契約を解除することになるだろう(民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」)。民事をあえて刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

⇒13日(日)朝・金沢の天気   くもり時々あめ   

★「金属バットマン」に同情の余地なし

★「金属バットマン」に同情の余地なし

  元新聞記者、元テレビ番組ディレクターを経験したせいか、地域にこういった事件が起きると、「なぜだ」と妙に血が騒ぐ。きのう10日、石川県七尾市の市会議員が金属バットを持って議会事務局に入り、駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。この議員は77歳、10期目のベテランだ。一夜明けて、その「なぜだ」の問いが断片的ながら見えてきた。きのうに引き続き、ブログのネタに。

   きのうのブログで「過去に無用にバットを振り回し周囲を威嚇するような行為があったのだろう。市役所の職員の対応はその経験則ではないかと察する」と憶測を述べた。きょうの地元紙によると、やはり、過去にも「金属バット歴」があるようだ。逮捕された市議、杉本忠一容疑者はきのう午前10時半ごろに七尾市役所に金属バットを持って入った際、市役所職員が警察に通報。杉本容疑者が議会議長の杉木勉氏と議会棟のロビーで面談する際、脇にバットを置いたため、議会事務局の職員が隙を見て、バットを取り上げた。駆け付けた警察官は任意同行を求めたが、杉本容疑者は「素振りなどの運動をするために持っていた」と警察の要請を拒否。警察は迷惑防止条例違反で午前11時20分ごろ現行犯逮捕した。市役所職員のこの機敏な行動(警察への通報、バットの取り上げ)は経験則だと直感した。

   きょうの地元紙によると1995年に市職員に暴力をふるおうとするなど荒っぽい言動があり、議員辞職勧告を議会から受けたことがある(12月11日付・北國新聞)。また、同僚の議員とトラブルを起こしてバットで殴りかかろうとしたほか、市職員や議員に暴力を振るおうとするなど荒っぽい言動やトラブルが目立つと議会関係者は話している(同・北陸中日新聞)。暴力には至らなかったものの、その寸前での行為が目立った。市職員の経験則にはこうしたリアルな背景があった。

   もう一つの疑問だ。なぜ金属バットを持って議長と面談をしに行ったのか。ことし10月に同市の市長が選挙によって交代した。現職を応援したのが杉本容疑者、前職を応援したのが議長だった。今月8日の議会一般質問で、前職を支持した議員が現職の市長に対して、「市長選で用いた討議資料の中で、七尾市のごみ処理施設の予定価格が非公開だったため、談合が行われたとの記載があるが、予定価格は公開されていた。記載が間違っており、市民に謝罪を」と厳しく追及した。これに対し、杉本容疑者は「裁判所の検事のように追及するな」などとやじを繰り返したため、議長から何度も注意を受けた。また、翌日9日は杉本容疑者自身が一般質問をしたが、通告にはない話をしたとした議長から再度注意を受けていた(同・北陸中日新聞)。

   議会で注意を受けたことに逆に遺恨の念をもったようだ。同情の余地がない。

⇒11日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆市会議員が「金属バット」を持てば

☆市会議員が「金属バット」を持てば

   さらに、ローカル放送のニュースをチェックする。警察などによると、杉本市議は午前10時ごろ、金属バットを持って市役所の議会棟に現れた。駆け付けた警察官が任意同行を求めたものの、杉本市議が抵抗したため、警察がその場で逮捕した。けが人はいなかった。 七尾市議会の杉木勉議長は「キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーをつけていた。全く誰かわからなかった」と証言した。 杉本市議は議会運営に不満を持っていたとみられ、議長に面会を求めていた。同市議会の杉木勉議長によると、一般質問で杉本容疑者がやじを飛ばすなどしたため注意した。杉本容疑者は「議長が議員を公平に扱っていない」と不満を口にしていた(同・北陸放送ニュースWeb版)。

    別のローカル放送はこう伝えている。10日午前、七尾市役所の議会事務局に金属バットを持った現職市議が乱入し、駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。午前10時半ごろ、市役所3階の議会事務局に金属バットを持った男が突如現れ、議長に面会を求めた。男は通報で駆け付けた警察官の要請を拒否。そのまま現行犯逮捕された。県迷惑防止条例違反で逮捕された現職議員・杉本忠一容疑者は通算10期目のベテラン議員だった(同・石川テレビニュースWeb版)。

   それにしても、事件が流れが断片的に記事になっているだけで、全体が理解できない。地元紙の関連ニュースをネットでチェックしたが掲載されていない。そこで、上記の3つのニュースを総合すると、以下だ。市議会の杉木勉議長によると、一般質問で杉本議員はやじを飛ばすなどしたため注意した。すると、杉本氏は「議長が議員を公平に扱っていない」と不満を口にしていた。そしてきょう、「キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーをつけていた」杉本氏が金属バットを持って議会事務局に現れ、議長に面会を求めた。ただならぬ気配を察した議会事務局は警察に通報した。議会棟のロビーで杉木議長と杉本氏は10分ほど面会。その際に脇にバットを置いたため、市職員が隙を見てバットを取り上げた。駆け付けた警察官は任意同行を求めたが、杉本氏は「素振りなどの運動をするために持っていた」と警察の要請を拒否。警察は迷惑防止条例違反で午前11時20分ごろ現行犯逮捕した。

   確かに、キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーした男が金属バットを持っていれば、市議と分かっていても、周囲を不安に陥れる。おそらく、過去に無用にバットを振り回し周囲を威嚇するような行為があったのだろう。市役所の職員の対応はその経験則ではないかと察する。50分の出来事だった。

(※写真は、七尾市議会がある七尾市役所庁舎)

⇒10日(木)夜・金沢の天気    くもり

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

   まもなく冬将軍が到来する季節。海も荒れると必ずニュースになっていた日本海沿岸への北朝鮮からの漂着船の記事を今季はまだ見ていない。今年は何かが起きているのか。上の写真は2018年1月16日に金沢市下安原町の海岸に打ち上げられた北の木造船だ。この目で確かめようと、現場に赴いたのは同17日午前。現場は防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がり、警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、現物と分かった。

   全長16㍍、幅3㍍ほど。このような小さな船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、違法操業をしてたのか。船内をのぞくことができた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでして漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、など当時は思った。

   今季はどうか。第九管区海上保安本部の公式ホームページをチェックしても、北の漂着船はゼロだ。なぜ今年は木造船が漂着しないのか。単純な話で、能登半島沖のEEZ(排他的経済水域)で違法操業を行っているのは北朝鮮の漁船ではなく、中国の漁船なのだ。海上保安庁が監視活動を継続しているが、ことしに入り11月4日時点で、延べ4137隻の中国漁船に退去勧告を発している(11月5日付・NHKニュースWeb版)。

   10月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆周辺で大量の中国漁船が違法操業を行っている=写真・下=。去年までは北の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZというわけだ。中国の漁船は北の小型と違って大型の鋼船で、釣りではなく、底引き網で漁獲する。そして、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで違法操業をしている(11月24日付・時事通信Web版)。

   違法操業の主役が交代し、これから何が起きるのか。水産庁が大和堆西部の特定の海域に入るのを当面、自粛するようイカ釣り漁船側に要請して、「日本のEEZなのになぜだ」と漁業者の反発を買った(10月20日付・朝日新聞Web版)。日本海の荒波が激しくなってきた。

⇒9日(水)夜・金沢の天気   くもり