⇒ニュース走査

★WHO調査チームの困惑

★WHO調査チームの困惑

   1月の締めくくりでもある31日を晦日正月(みそかしょうがつ)と言ったりする。1月にやり残したことを終わらせるという意味合いもあるが、地域によってはこの日にそばをすすったり、だんごを食べたりする風習もあるそうだ。三寒四温の時節が待ち遠しい時節である。

   きょう気になったニュース。新型コロナウイルスの発生源などを解明するため、中国を訪れているWHOの調査チームは31日、感染拡大の初期に多くの患者が確認された武漢の海鮮市場を視察した(1月31日付・NHKニュースWeb版)。市場は昨年1月に閉鎖され、高さ3㍍の壁で囲まれ内部が見えないようになっていて内部への立ち入りは認められていない。

   調査チームはきょう午前中、中国政府が、感染対策が成功し都市の封鎖が行われていた昨年2月から住民に食料を供給したなどと宣伝している別の市場を視察。調査チームはきのう30日も中国政府が感染の封じ込めを宣伝する展示を視察している。中国は初期対応への遅れが指摘される中で、対応の正当性をアピールする狙いがあるとみられる(同)。

   果たしてこのような、中国側の宣伝する展示や現場を見せられて、困惑しているのは調査チ-ムではないだろうか。チームのメンバーは10人で、リーダーのピーター・ベン・エンバレク氏は動物-ヒト感染のインフルエンザウイルスなどの専門家、ほか疫病学や実験室試験・臨床治療を研究する科学者、新型ウイルス、獣医師などで構成されている。ウイルスが流出した可能性があるとアメリカなどが主張する「武漢ウイルス研究所」などへは行っていない。

   いろいろなところを連れ回し、中国側とすれば、「調査チームは納得して帰った」と宣伝したいのかもしれない。が、今回の調査チームの動向を世界の科学者は注目している。科学を甘く見てはいけない。

   きょう31日は、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言して、ちょうど1年となる。(※写真は、感染者の退院の様子を伝える中の国・武漢市のホームページ、2020年2月1日)

⇒31日(日)夜・金沢の天気    あめ

★ついにコロナ感染1億人、「世界の団結」の証を

★ついにコロナ感染1億人、「世界の団結」の証を

   ついに1億人に感染が拡大した。うち死者は215万人。時折チェックしているジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボ-ド(日本時間で27日午前9時現在)=写真=を見て、心が痛んだ。国別ではアメリカの死者が42万人と最多だ。次いでブラジル、インド、メキシコ、イギリスとなっている。この5ヵ国を合わせた死者数は世界全体の48%、半数を占める。ブラジルではことし7月延期されていた「リオのカーニバル」が中止に追い込まれている。

   新型コロナウイルスに立ち向かう人類の武器は「ワクチン」だが、これが思うように進んでいない。NHKニュースWeb版(1月27日付)はオックスフォード大学Webサイト「アワ・ワールド・イン・データ」からの引用で記事を掲載している。今月26日の時点で全世界で接種されたワクチンは合わせて6900万回分で、少なくとも1回は接種を受けた人の数も6300万人と世界の人口からみると一部にとどまっているのが現状だ。

   では、日本はどうか。報道でも、政府は2月下旬からワクチンの接種を始めたいとしているが具体的なスケジュールや接種場所などがまだ示されていない。政府は、アメリカとイギリスの製薬会社3社との間で合わせて1億5700万人分の供給を受ける契約を交わしていて、「ことし6月までに接種対象となるすべての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」と示している(1月22日付・NHKニュースWeb版)。

   世界でワクチン接種が進まないとなると、どうしても気になるのが東京オリンピック・パラリンピックの開催だ。オリンピックには、世界から選手や審判員、競技関係者が1万5000人が訪れる。選手村では、一堂に会した選手たちがマスクをして黙々と食事を取るだろうか。にぎやかな食事風景を想像するだけでも、選手村がクラスター化するのではないかとの思いがよぎる。

   ワクチン接種を素早く手当てして、医療体制を整えることが先決だろう。「今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(菅総理の年頭所感、総理官邸公式ホームページ)。有言実行を期待したい。オリンピックで日本の存在価値が問われる。

⇒27日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆ユニークベニューな能登への本社移転

☆ユニークベニューな能登への本社移転

   ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語、ワーケーション(workation)は夢のような働き方と思っていた。景勝地にオフィスを構え、通勤時間は歩いて10分ほど。四季を肌で感じ、食事は近くのホテルやレストランで取れたての食材で寿司や海鮮料理や和食、イタリアンなどを楽しむ。仕事に集中でき、ストレスは溜まらない。そのようなイメージだ。それが、能登で現実に動き始めようとしている。

   日経新聞北陸版(1月23日付)で、東証一部の医薬品商社「イワキ」が東京都中央区にある本社機能をことし6月から石川県珠洲市に段階的に移転するというニュースが掲載されていた。記事によると、本社機能は経営企画、人事、経理、情報システムなどの部門が含まれ、約110人を予定し、東京と石川で居住地や就労地を選べるようにする。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、本社機能の一部を珠洲市に分散し経営上のリスクを減らす。珠洲の原材料を使用した商品を開発するなど地方創生に関わる事業の創出にもつなげる。

   珠洲市は能登半島の先端に位置する。日本海に囲まれ、北部は切り立った断崖、南部には穏やかな海が広がる。軍艦のような形をした見附島や、しぶきを上げて流れる「曽の坊の滝」などの観光スポットとしても知られる(同)。

   記事を読んで驚いたことに、本社機能を移転する予定のオフィスは古民家だ。1914年に東京・日本橋で創業した上場企業が能登の茅葺(かやぶき)の古民家に拠点を移す。前代未聞だ。

   じつは、自身はこの古民家にこれまで3度訪れたことがある。もともと、日本画家の勝田深氷氏が1994年に東京から移住し創作活動をしていたアトリエだった。当時は「勝東(しょうとう)庵」と呼ばれていた。勝田氏は、最後の浮世絵師と称され、美人画で知られた伊東深水の二男で、姉は女優の朝丘雪路だ。サンフランシスコにもアトリア「勝東庵」を構えていたが、2012年7月にシスコで急逝した。しばらく、奥様が珠洲の「勝東庵」を守っていた。自身が初めて訪れたのは2013年5月、奥様から深氷氏の18年間におよぶ能登での創作活動の様子などうかがった。その後、珠洲市が文化芸術交流施設「文藝館」=写真・上=として管理している。この文藝館がオフィスとして貸し出される。

   堂々とした建物の外観もさることながら、内部には深氷氏が遺した芸術作品がある。正面玄関から入ると、左手に杉の板戸6枚に描かれた見事な桜が出迎えてくれる。 作品名は「桜心(おうしん)」=写真・中=。この絵を眺めていると、現代画壇という感じではなく、まさに江戸時代の絵師の筆の勢いというものが伝わってくる=写真・下=。この絵を鑑賞していると新たなアイデア創出や思考力といった感性が高まるような気がする。板戸だけではない。芸術的な工夫が凝らされた玄関やトイレ、客間なども感慨深い。

   文化財の建物などを会議の場として活かすことをユニークベニュー(unique venue、特別な会場)という言葉を用いる。まさに、ユニークベニューなオフィスではないだろうか。

   この古民家の周辺は、「珠洲ビーチホテル」という8階建のホテルを中心に家族用のキャビン群もあるリゾート地としても知られる。震災などリスクヘッジを念頭に置いた地方への本社機能の移転は進むのではないか。人材派遣会社「パソナグループ」も本社機能の一部を東京から兵庫県淡路島へ移転することを発表している。今回のイワキのケースは古民家を活用するという点で、地方移転へのシンボリックな存在になるのではないだろうか。

⇒24日(日)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★東京オリンピック 開催は無理なのか

★東京オリンピック 開催は無理なのか

           きょうは1月23日、東京オリンピックの開会式まであと6ヵ月だ。その開催をめぐって世界にニュースが走っている。イギリスの「タイムズ」紙WEB版(1月21日付)が「Japan looks for a way out of Tokyo Olympics because of Covid」の見出しで、IOCと日本政府との間で、ひそかに東京五輪を中止し、2032年の開催を目指す道を探っていると報じた=写真=。タイムズは1785年創刊の世界最古の日刊紙であり、世論形成の役割を担うメディアの一つだ。ニュースを目にした世界の人々は妙に納得しているかもしれない。

   タイムズと同じく世界のメディアとして存在感を示している、イギリスのBBCニュースWeb(20日付)も「Tokyo Olympics ‘unlikely to go ahead in 2021’」の見出しで「2021年開催は無理」と、ロンドン五輪(2012年)の元最高責任者の言葉を引用して述べている。この2つのメディアが「開催は無理」とのニュースを流すと、世界のニュースのトレンドが定まってしまうので恐ろしい。

   開催は無理なのだろうか。ワクチンが世界に十分に供給されていない状況で、世界中から33競技に出場する1万1000人の選手、加えて審判員が東京に集まる。1万人のランナーが参加する聖火リレーは3月25日に福島県をスタートにゴールの東京都まで121日間かけて行われる。大会では競技場や選手村で活動する「フィールドキャスト」と呼ばれるボランティアが8万人、選手の移動に2190台のバスが用意されるとの報道(1月23日付・NHKニュースWeb版)がある。開催の有無は遅くとも、3月25日の聖火リレーが始まる前に決断しなくては、その途中で開催中止の発表をするわけにもいかないだろう。

   東京五輪・パラリンピックの開催都市契約はIOCと東京都、日本オリンピック委員会(JOC)の3者で締結しているので、この際、この3者で「開催条件」を明示すべきではないだろうか。たとえば、選手や審判員のワクチン接種など具体的な条件を明らかにする。その進捗度で開催する、しないを決める。国内でもワクチン接種をすることで観戦が可能などといった条件があれば、分かりやすい。繰り返しになるが、いつまでにどんな基準を満たしていればオリンピックを開催するのかという「開催条件」を明確に示すことだ。そうでなければ、国民の気持ちがまとまらない。もちろん、他の参加国における条件も決めておくべきだろう。

   話は前後するが、IOCのバッハ会長は22日、各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)とオンラインで意見交換し、大会開催への固い決意を重ねて示した。バッハ氏はタイムズによる「日本政府が中止せざるを得ないと内々に結論付けた」との報道を「フェイクニュース」と否定した上で、日本の準備状況を高く評価。NOCに対し、大会への準備に関するアンケートを近く行う方針を示した(1月22日付・共同通信Web版)。

⇒23日(土)午前・金沢の天気  あめ

★続・世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

★続・世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

         前回のブログで、WHOのテドロス事務局長は、富裕国が新型コロナウイルスのワクチンを独占して最貧国が苦しむならば、世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告した、との記事(1月18日付・時事通信Web版)を紹介した。次にテドロス氏が打ってくる手は、「最貧国にワクチンが届かなければ、オンリンピックは開催できない」、ではないかと懸念している。つまり、オリンピックを盾に富裕国にワクチン拠出を迫る、荒っぽい手口だ。

   そう懸念する論拠は以下だ。昨年2020年5月16日、WHOのテドロス事務局長とIOCのバッハ会長はジュネーブにあるWHO本部で会談し、スポーツを通して健康を共同で促進していこうという覚書(MOU)を交わした。ICOの公式ホームページにMOUの内容が紹介されている。

「the IOC and WHO are demonstrating their shared commitment both to promoting healthy society through sport, in alignment with Sustainable Development Goal 3 (“Good health and well-being”), and to contributing to the prevention of non-communicable diseases. (IOCとWHOは、SDGs目標3「健康と幸福」に沿って、スポーツを通じて健康的な社会を促進するという共通のコミットメントを示し、さらに非感染性疾患の予防に貢献する)

   問題なのはこの一文だ。「The IOC and sports organisations recently benefited from WHO guidelines on mass gatherings, aiming specifically to provide additional support to sports event organisers and host countries in developing a risk-assessment process, identifying mitigation activities and making an informed evidence-based decision on hosting any sporting events. The guidelines can be found here.」(意訳:IOCとスポーツ組織は、リスク評価プロセスの開発や緩和の特定、およびスポーツ大会の開催の決定に当たり、スポーツイベントの主催者と開催国に追加のサポートを提供する。実施にあたってはWHOからガイドラインを頂戴する)

   つまり、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)を示される。つまり、東京オリンピックでは、参加するすべての国にワクチンを行き渡らせることが開催のガイドラインとしてWHOが示す可能性もあるのではないか。

   実際、IOCとWHOの覚書の後の記者会見で、記者からワクチンが完成する見通しがたたない東京オリンピックの開催は可能かと問われ、バッハ会長は「2021年の7月に世界がどのようになっているかわからない。大会まで1年2ヵ月あり、WHOと作業チームの助言(ガイドライン)に従いながら正しい時期に必要な決定を行う」と、五輪開催の最終決定にあたってはWHOのガイドラインを重視すると述べている。

   IOC公式ホームページの写真でもトレーニング用の固定自転車でツーショット=写真=が掲載されている。解釈によっては、IOCとWHOは「両輪」、あるいは「二人三脚」と強調しているようにも読める。

   結論を急ぐ。MOUによってテドロス氏はある意味でオリンピックを開催するしないの「決定権」を握ったのだ。コロナワクチンを富裕国が独占し、最貧国に行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないとテドロス氏が言えば、IOCも従わざるを得ないだろう。あるいは、テドロス氏は日本に対してオリンピックを開催するためと称して、最貧国へのワクチン購入費を要求してくるかもしれない。それも言葉巧みに脅し、すかしの外交用語で。上記は憶測である。

⇒20日(水)朝・金沢の天気     はれ

☆世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

☆世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

   天気予報によると、きょう19日の金沢の最高気温が零度、最低気温がマイナス2度だ。能登の輪島は最高気温がマイナス1度、最低気温がマイナス3度となっている。朝起きて自宅周囲を見渡すと10数㌢積もっている。きのうは雷もとどろいていたので、しばらく厳冬は続くだろう。

       それにしても、世界は「コロナ厳冬」だ。感染者9560万人、うち死者204万人(1月19日付・ジョンズ・ホプキンス大学コロナダッシュボード)。世界ではさまざま議論が沸き起こっている。WHOのテドロス事務局長は、富裕国が新型コロナウイルスのワクチンを独占して最貧国が苦しむならば、世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告した(1月18日付・時事通信Web版)。

   中国外務省の華春瑩報道局長は19日の記者会見で、WHOの独立委員会が中国の新型コロナウイルス感染症への初期対応に遅れがあったと指摘した中間報告に反論した。華氏は武漢市の海鮮市場を昨年1月1日に閉鎖し、新型肺炎の発見からわずか3週間あまりで武漢を封鎖したと強調。早期に世界に警鐘を鳴らしたと主張した。また、新型コロナの起源を巡り政治問題化することに断固反対すると改めて強調。新型コロナ対策のため国際社会が団結し協力する助けにならないためだと理由を述べた(1月19日付・共同通信Web版)。

   上記のテドロス氏と中国の華報道局長の発言には違和感を感じた。中国が初期対応に遅れはなかったと言うのであれば、1月下旬は中国の春節の大移動で世界にコロナ禍をまき散らす結果となったが、なぜ出国禁止としなかったのか。そして、1月23日のWHO会合では、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を時期尚早として見送った。WHOが緊急事態宣言を出したのは1週間遅れの30日だった。

   このころ、中国以外での感染が18ヵ国で確認され、日本をはじめアメリカ、フランスなど各国政府が武漢から自国民をチャーター機で帰国させていた。なのになぜ、WHOは23日に宣言を見送ったのか、中国に配慮して「武漢ウイルス」を国際的に宣言するのをためらったのはないか、との疑念が今もくすぶっている。

   テドロス氏は、コロナワクチンを「富裕国が独占している」として、「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告したが、ならば、その大前提として世界が抱いているテドロス氏への疑念に真摯に答えなければならない。でなければ、「そもそもパンデミックを広めたのは、貴方でしょう」と、議論は前に進まないのではないか。

⇒19日(火)午後・金沢の天気    あめ時々ゆき       

★コロナ禍が揺さぶる内閣支持率、そして政局

★コロナ禍が揺さぶる内閣支持率、そして政局

   昨年9月16日に発足した菅内閣。メディア各社の世論調査では内閣支持率は高かった。毎日新聞の調査では、内閣支持率が64%で、不支持率は27%を大幅に上回っていた(2020年9月18日付・毎日新聞Web版)。 朝日新聞社の調査は内閣支持率が65%で、不支持率は13%だった(同9月17日付・朝日新聞Web版)。共同通信の調査でも支持率66.4%、不支持率16.2%だった(同9月17日付・共同通信Web版)。高支持率の背景には、携帯電話料金の値下げや縦割り行政の打破、デジタル庁発足への布石、ハンコ行政の廃止など、新型コロナウイルスでよどんでいた世間の空気を換えてくれそうな期待感があった。

   その内閣支持率が急落している。読売新聞の最新の世論調査(今月15-17日)が先ほどネットに上がった。菅内閣の支持率は39%、不支持率は49%となり、初めて不支持が支持を逆転した。支持率の下落は3回連続。政府の新型コロナウイルス対策への強い不満が表れたとみられる(1月18日付・読売新聞Web版)。支持率は、前回調査(2020年12月26、27日)の45%から6ポイント下がり、内閣発足以降で最も低い。不支持率は前回の43%から6ポイント上がった。朝日新聞の調査でも菅内閣の支持率39%(不支持35%)に下がっている(2020年12月21日付・朝日新聞WEB版)。

   世論調査は上がり下がりするものだが、このまま右肩下がりが続くのか、V字回復があるのか。なんと言っても、内閣の支持率を左右するのはコロナ禍への対応だろう。右肩下がりが続くとすれば、観光支援策「GoToトラベル」を全国で一時停止する判断の遅れ、さらにコロナ禍にともなう景気と雇用の対策など政策決定の遅れで、支持率低下は加速するだろう。逆に、V字回復で支持率を上げるとすれば、ワクチン接種による集団免疫の獲得でなないか。すでに、厚労省は全国約1万ヵ所の「接種施設」で、2月下旬から始める方針と報道されている(1月16日付・読売新聞Web版)。その後、7月23日の開会式で東京オリンピックが無事スタートできれば、菅内閣はよく難局を乗り切ったと評価されるだろう。

   ただ、現実は甘くない。日本は乗り超えたとしても、世界は混沌としている。オリンピックが開催できなくなれば、一気に政局は揺らぐ可能性もある。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)と、自民党内閣は支持率が20%台以下に落ち込んだときが身の引きどきだった。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。

   総理は元旦の年頭所感でこう述べている。「我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(総理官邸公式ホームページ)。ぜひ、団結した世界を実現してほしい。

⇒18日(月)朝・金沢の天気   ゆき

☆コロナ禍「ステージ4」 試される知事の行動力

☆コロナ禍「ステージ4」 試される知事の行動力

   最近、「ステージ4」という言葉が新聞・テレビなどで目につくようになってきた。けさの北陸中日新聞(1月15日付)でも一面の見出しでも、「石川県の病床使用率『ステージ4』」と出ていた。感染ピーク時における確保想定病床の使用率が50%以上に達し、緊急事態宣言の対象となるステージ4(爆発的感染拡大)の目安に達したというのだ。

   ひっ迫しつつある病床の確保をどうするか。厚生労働省はきょう、感染症の専門部会を開き、通常国会に提出する感染症法改正案について議論し、新型コロナウイルス感染者の病床を確保し、受け入れを促進するため、国や都道府県知事が医療機関に「協力を求めることができる」という現在の感染症法の規定を「勧告できる」に強化する方針を政府が固めた。勧告に従わなければ公表できるようにする(1月15日付・共同通信Web版)。

   病院に対して「協力」要請から「勧告」「公表」へと知事権限を強化するには背景があるようだ。厚労省公式ホームページに掲載されている「療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について」をチェックすると。前回の緊急事態宣言(4月7日-5月25日)で確保病床は1万7290、確保想定(見込み)病床は3万639だった(5月13日まとめ)。感染者が拡大し、緊急事態宣言の再発令が議論になっていた今月は確保病床は2万7650、確保見込み病床は2万7635だった(1月6日まとめ)。つまり、確保見込み病床数が減っているのだ。コロナ禍の第1波、第2波に比べれば大きな第3波が来ているのに、病床数が減っている。なぜだ。

   全国で8400余り(病床数156万)ある病院のうち、民間病院が占める割合は82%とされる(平成28年度・総務省まとめ)。公立病院の場合はすでに都道府県知事などから命令に近いカタチで新型コロナの患者の受け入れが要請されている。以下憶測だ。この1年、民間病院関係者は公立の医療現場での新型コロナの患者への対応を見て、医師の負担の大きさや看護師の数が足りなさなど様々な問題を認識した。さらに、病院でクラスターとなれば経営のリスクを抱えることにもなる。当初は医療機関の使命として患者の受け入れを心づもりしていたが、ここに来て躊躇し始めているのではないだろうか。

   日本の医療制度は、医療機関の自主的な判断を尊重するうえ、これまで民間病院に対する行政の介入の余地は小さかった。とは言え、患者がこのまま増えれば公立病院の病床数はひっ迫する。民間病院でも、いわゆる大病院でなければ受け入れは難しい。今後、受け入れ可能な民間病院を都道府県が調査し、知事は自らの責任で決定を下し、予算をつけて必要な人材を手配して、体制を整える。その上で、知事が直接出向いて民間病院側に要請することになるだろう。勧告には法的な拘束力はない。受け入れられなければ、その事実を公表することになる。

   病床がひっ迫して、他の病気の患者の受け入れに影響が出るという事態を避けながら、今後さらに増えるであろう新型コロナの患者がたらい回しにならないように事態を収める。知事は「ワード(言葉)」ではなく、「行動」が試されることになる。

⇒15日(金)午後・金沢の天気    はれ

☆トランプ大統領、冥土の道連れ

☆トランプ大統領、冥土の道連れ

   CNNニュースWeb版日本語(10日付)をチェックしていると、驚きのニュースがあった。アメリカ民主党のペロシ下院議長は、トランプ大統領による核攻撃命令などが起きる事態を懸念し、軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長と協議したことを明らかにした。ベロシ議長は、行動などが不安定な大統領が軍事的な敵対行動に踏み切ったり、(核ミサイルの)発射コードへのアクセスや核攻撃を命令したりするのを阻む予防措置をミリー氏と話し合ったと語った。

   上記のCNNニュースに自身が注目したのは、別のニュースとの連鎖反応だった。BloombergニュースWeb版日本語(9日付)を読んでいて、北朝鮮の金正恩委員長が5-7日に開催した党大会への報告で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した。

   3年前のあの時に時代は戻ったと連想した。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げたICBMはアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。それ以前には、アメリカ太平洋軍のハリス司令官は同じ年の4月26日、アメリカ下院軍事委員会公聴会で、北朝鮮に関して「アメリカは先制攻撃の様々な選択肢がある」と述べ、原子力空母カールビンソン率いる空母打撃群が北朝鮮を攻撃できる射程内に入ったことも明らかにした(2017年4月27日付・朝日新聞ニュースWEB版)。

   その後、トランプ氏と金氏による米朝首脳会談は2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行われたが、北の非核化の交渉は進まなかった。トランプ氏にとっては外交の失敗事例でもある。そして、本人は「この交渉でロケットマンがさらにつけあがった」と悔いているのではないだろうか。

   トランプ氏の大統領任期は1月20日正午までとされる。冥土の道連れに、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼んだ金氏に核攻撃を仕掛けるのではないかとペロス氏は懸念しているのではないだろうか。以下憶測だ。仮に、トランプ氏が軍に核攻撃を命令したとして、それが軍によって阻まれた場合、金氏へのピンポイント攻撃、つまり「斬首作戦」を命令する可能性がある。斬首作戦が実行されるとして、作戦に使用されるのはステルスヘリコプター「ブラックホーク」だろう。この機を使うのは新月で夜が真っ暗闇となる日。直近の新月の日は今月13日だ。

   この機を使った斬首作戦で知られるのがオバマ政権下で実行された、オサマ・ビン・ラディンに対して行った2011年5月2日のバキスタンでの攻撃だ。この日は新月の前夜だった。以上は連想ゲームのような話だ。

⇒11日(月)朝・金沢の天気   

★北陸は「ホワイトロックダウン」

★北陸は「ホワイトロックダウン」

   きのう9日午後、金沢大学角間キャンパスへ自家用車で出かけた。自宅のガレージから車を出すのに雪すかし(除雪)。そして、いつもの市道と県道、国道のルートでキャンパスへ。市道と県道は除雪が行われておらず、道路にはあちこちに「わだち」ができていて、車はタテ揺れ、ときにはヨコ滑りを繰り返しながら進む。国道は融雪装置がありスムーズに進んだが、交差点ではわだちで立ち往生する車も何台かあった=写真・上=。

   大学の駐車場に車を入れたが、しんしんと雪が降っていて身震いした。キャンパスはいわゆる中山間地にあり、市内の平地より積雪が5割増しだ。積雪は35㌢ほどだったが、帰宅する夕方にはおそらく50㌢ほどになり、駐車場から車を出せなくなると直感したからだ。そこで、大学での打ち合わせを急きょ変更し、キャンパスから下った国道沿いのコーヒー店にした。

   午後1時30分に店に入った。すると、店員が「きょうは大雪のため営業時間を午後2時までとさせていただきます。あと30分ほどですがよろしいですか」と申し訳なさそうに言う。確かに、店の周囲にある全国チェーンの飲食店では「臨時休業」の貼り紙を出していた。豪雪で食材が届かないのだろう。そこで、打ち合わせを30分ほどコーヒー店で済ませ、帰宅した。

   キャンパスに残っていたスタッフとオインラインで話すと、予想通り駐車場の積雪がみるみる増えて、このままでは帰宅できなくなるのでいまから早退するとのこと。午後3時30分ごろだった。街は豪雪ロックダウン状態となった。

   一夜明けて、自宅周辺はまさに銀世界だ。積雪は70㌢ほど=写真・下=。写真下の長靴の跡は新聞配達員の足跡だ。金沢地方気象台の公式ホームページをチェックすると金沢の積雪は65㌢(10日午前8時現在)となっている。きょうは日曜日とあって、車もほとんど見かけない。まさに「ホワイトロックダウン」だ。

   福井県の北陸自動車道では、大雪の影響で福井インターチェンジから金津インターチェンジの間の上下線で、きょう午前7時現在、トラックなど車が1090台が立往生していて、福井県は陸上自衛隊に災害派遣の要請を行った(1月10日付・NHKニュースWeb版)。また、富山県の東海北陸自動車道では南砺スマートインターチェンジ付近で大型トラックが雪で動けなくなりおよそ200台の車が立往生。解消するめどは立たず、富山県はきょう午前4時に陸上自衛隊に災害派遣を要請した。陸上自衛隊は金沢駐屯地から100人を派遣し、車両のけん引のほか、食糧や燃料、それに携帯トイレなどを配付する(同)。

   物流が滞れば、次に来るのは食料不足だ。すでに、自宅近くのコンビニやスーパーでは品薄状態になっている。コロナ禍でのロックダウンと違った意味でより深刻だ。

⇒10日(日)朝・金沢の天気   ゆき