⇒ニュース走査

☆「地震、カミナリ、火事」金沢の災害

☆「地震、カミナリ、火事」金沢の災害

    世の中で怖いものの例えとして、「地震、雷、火事、親父」がある。最近は「親父」は怖くなくなり、代わって台風が入る。「地震、雷、火事、台風」だ。一番怖いのは筆頭の「地震」だ。いつ、どこで強い揺れに襲ってくるか分からない。政府の地震調査委員会は、全国の活断層や海溝型の地震に関する最新の研究成果などに基づき、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率などを推計した「全国地震動予測地図」の2020年版を公表した(3月26日)。防災科学技術研究所の公式ホームページ「地震ハザードステーション」に掲載されている。以下引用する。

   地震は世界中どこでも起こっているわけではなく、地震が多発する地域とそうでない地域がある。1977年1月から2012年12月までに世界で発生したマグニチュード5以上の地震統計によると、日本の面積は世界の1%未満であるにもかかわらず、世界の地震の約1割は日本の周辺で起きている。つまり、日本は地球規模で見ても地震による危険度が非常に高い。

   2020年版=写真=を見ると、今後、南海トラフや千島海溝沿いでの巨大地震の発生が懸念されている。また、房総沖の巨大地震や、首都直下地震など確率が高い地域が赤紫色で塗られている。自身が住む金沢市も「森本・富樫断層帯」があり、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れの確率は2%から8%と高レベルだ。長さ26㌔のこの断層帯は市内の中心地を走っている。中心地を走っているというのは、1799年(寛政11)6月29日の金沢地震が起き、断層で崩れたくぼ地などを道路として金沢の街が形成された。再度地震が起きれば市街地を揺れが直撃することになる。

   金沢は「加賀百万石」の優雅な伝統と文化の雰囲気が漂う街と思われている。一方で、江戸時代からの防災の街でもある。加賀鳶(とび)に代表される、伝統的な自主防災組織が金沢にある。また、市内には「広見(ひろみ)」と呼ばれる街中の空間が何ヵ所かある。ここは、江戸時代から火災の延焼を防ぐため火除け地としての役割があったとされる。また、城下町独特の細い路地がある町内会では、「火災のときは家財道具を持ち出すな」というルールが伝えられている。

   なぜそこまで、と考える向きもあるだろう。気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1981~2010年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の42.4日だ。雷がとどろけば、落雷も発生する。1602年(慶長7)に金沢城の天守閣が落雷による火災で焼失している。石川県の消防防災年報によると、県内の落雷による火災発生件数は年4、5件だが、多い年(2002年)で12件も発生している。1月や2月の冬場に集中する。雷が人々の恐怖心を煽るのはその音だけではなく、落雷はどこに落ちるか予想がつかないという点だ。

   寛政の金沢地震から220年余り、震災はいつ起きるか分からない。雷鳴も激しくとどろく。自身のパソコンは常に雷サージ(電気の津波)を防ぐコンセントを使用している。実は怖い街なのだ。

⇒27日(土)夜・金沢の天気        くもり

 

★ミサイルゲームはいつまで続く

★ミサイルゲームはいつまで続く

   弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。共同通信Web版(3月25日付)によると、北朝鮮はきょう25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射したと日本政府が発表した。北朝鮮東部の宣徳付近から午前7時4分と同23分に発射し、いずれも約450㌔飛行。日本領域には到達せず、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来で、1月のアメリカのバイデン政権発足後で初めて。

   この弾道ミサイル発射の意図は何なのか。以下憶測である。北朝鮮の金正恩総書記が一番恐れていることはアメリカによるピンポイント攻撃、いわゆる「斬首作戦」だろう。実際、アメリカは2011年5月2日のバキスタン攻撃でオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦を実行した。命令を下したのはオバマ氏、民主党政権下で実施された、

   この斬首作戦を避けるため、金氏はまず弾道ミサイルを打ち上げ、アメリカとの対話の機会を狙う。以下事例だ。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げた大陸間弾道ミサイル(ICBM)はアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。その後、金氏はトランプ氏との米朝首脳会談を2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行った。首脳会談を実施している間はアメリカによる斬首作戦はないと踏んでいるのだろう。

   この経験則をベースに、今度はバイデン氏との対話を求めて挑発を行っているのではないか。金氏が1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   そして、きょう弾道ミサイルを打ち上げを実行した。ただ、2017年7月28日のICBMに比べると地味なイメージだ。おそらくコストの問題だろうか。国連安保理が履行を求める国際社会による経済制裁、それに昨年の台風と洪水など自然災害の食糧危機、そして新型コロナウイルス対策などが重なって経済情勢がかなりひっ迫していることは想像に難くない。それにしても、金氏はいつまでこのミサイルゲームを続けるのか。

(※写真は朝鮮中央通信HPに掲載されている2017年3月6日の弾道ミサイルの発射の模様。「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射、このうち1発が能登半島沖200㌔に着弾した)

⇒25日(木)夜・金沢の天気     はれ

☆領海からハイテクまで曲がり角に入った対中関係

☆領海からハイテクまで曲がり角に入った対中関係

        中国との付き合い方が曲がり角に入った。「国」と「国」との関係では、日本と中国の場合、武器使用が認められ中国海警局の艦艇による尖閣諸島への領海侵入がクローズアップされる。 中国の経済圏構想「一帯一路」の対立軸として、「自由で開かれたインド太平洋」構想をテーマに日本、アメリカ、オーストラリア、インド4ヵ国の枠組み「クアッド(Quadrilateral Security Dialogue)」も動き始めている。

        「会社」と「会社」の関係性もうまくいくだろうか。中国のファーウェイは16日、高速通信規格「5G」対応スマートフォンから同社が徴収する必須特許の使用料を初めて公開した。1台当たり2.5ドル(約270円)を上限とし、端末の価格に応じて「合理的な比率」にするという。必須特許はあらゆるメーカーが製品で使うのを避けられない技術を指し、保有者は合理的な水準の使用料を受け取って競合企業などにも使用を許諾する仕組み(3月16日付・日経新聞Web版)。

   通信アプリ「LINE」の日本の利用者の個人情報などがシステムの管理を委託されていた中国の会社の技術者からアクセスできる状態になっていた。個人情報保護法は外国への個人情報の移転が必要な場合には利用者の同意を得るよう定めている。2018年から中国人の技術者が日本国内のサーバーに保管されている利用者の名前や電話番号、それにメールアドレスといった個人情報のほか、利用者の間でやりとりされたメッセージや写真などにアクセスできる状態になっていた(3月17日付・NHKニュースWeb版)。

   企業だから安心できるという次元ではない。中国が2017年6月に施行した「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があればファーウェイなど中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。

   この中国の国内企業への統制を受けて、アメリカでは2018年8月に「国防権限法」をつくり、ファーウェイなど中国のハイテク企業5社からアメリカの政府機関が製品を調達するのを2019年8月から禁止している。2020年8月からは、5社の製品を使う各国企業との取引も打ち切るなど徹底している。領海侵入からハイテク技術まで、中国との関係はすでに曲がり角に入っている。

⇒17日(水)夜・金沢の天気      くもり   

★黄砂から見える能登半島

★黄砂から見える能登半島

   強烈な黄砂がやって来る。気象庁公式ホームページ「黄砂情報」(3月16日付)によると、きょう午後3時で日本海から能登半島の尖端に近いづてき=写真・上=、午後9時ごろには山陰、北陸、新潟をすっぽりと覆うことになる。NHKニュースWeb版(3月15日付)は「中国の気象当局は、今回の黄砂について中国北部では、過去10年で最大の規模だとして、なるべく外出を控えるよう呼びかけています」と伝えている。

   西日本新聞Web版(3月16日付)によると、今回の黄砂で北京市内では粒子状物質「PM10」の濃度が一時、WHO基準値の約160倍となる1立方メートル当たり8千マイクログラムに達した。モンゴル国営放送によると、同国では草原地帯の広い範囲で強風や突風が発生し、遊牧民の住居が吹き飛ばされるなどして死傷者や行方不明者が出た。

     黄砂はタクラマカン砂漠やゴビ砂漠など中国の乾燥地域で巻き上げられ、偏西風に乗ってやってくる。わずか数マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の1ミリ)の大きさの砂が、日本に飛来するまでに、まさざまに変化する。「汚染物質の運び屋」もその一つ。日本の上空3キロで採取した黄砂の表面には、硫黄酸化物が多くついていて、中国の工業地帯の上空で亜硫酸ガスが付着すると考えられる。

   黄砂に乗った微生物もやってくる。敦煌上空で採取した黄砂のおよそ1割にDNAが付着していて、DNA解析でカビや胞子であることが分かった(岩坂泰信・元金沢大学教授らの調査)。黄砂は「厄介者」とのイメージがあるが、生態系の中ではたとえば、魚のエサを増やす役割もある。日本海などでは、黄砂がプランクトンに鉄分などミネラルを供給しているとの研究などがある。地球規模から見れば、「小さな生け簀」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカなど魚介類が豊富に取れるのか、黄砂のおかげかもしれない。

    その黄砂をキャッチするには、日本海に突き出た能登半島がよい。偏西風に乗って日本に飛んできた黄砂をいち早く観測・採取できるからだ=写真・下=。この地の利を生かして、「大気観測・能登スーパー・サイト」という調査フィールドが岩坂氏らの発案で2008年に形成された。能登半島は日本海を挟んで、中国と韓国、ロシアと向き合う。これらの国々の黄砂研究者との連携も進んでいる。東アジアにおける能登半島のポジションが、黄砂研究の視点から見えてくる。

⇒16日(火)午後・金沢の天気     あめ

☆ニュースは流れを読む

☆ニュースは流れを読む

   総務省幹部への接待問題は論点がまだ見えて来ない。東北新社だけでなくNTTにも広がり、公務員倫理の遵守が問われているが、メディア報道に国民は怒っているのだろうか、呆れているのだろうか、あるいは無関心なのだろうか。自身の周囲(職場の人や知人たち)と話していても、このニュースがほとんど話題に上らない。その理由を考察してみる。

   率直に言えば、接待問題は贈収賄事件と展開しないと事件としての迫力がない。もちろん、公務員倫理の遵守意識を軽んじているのではない。なぜ総務省でこれほど接待問題が頻発しているのかと言えば、放送や電波、通信などの割り当てをめぐって巨大な権限を総務省が有しているからだ。根源的な課題として、この規制と権限にも目を向けないと、いつまでたっても接待問題はなくならないだろう。

   この問題を定点観測していくポイントは3つあると考察する。一つは、東京地検特捜部などが動いているのかどうかだろう。昔からよく言われたきたことだが、許認可の判断を官公庁が持ち、政治家が仲介して企業・団体(受益者)に使用権が与えられる。もし、電波の割り当てをめぐって金が動いているのであれば、現職総理のファミリーを巻き込んだ贈収賄事件へと展開する。地検も接待の陰に政治家や金の匂いがしないか虎視眈々と捜査を進めているだろう。接待を受けた1人に総務省事務方のNo2の大物の名前も挙がっていて、検察とすれば「大捕り物」になるからだ。メディアの記者たちも横目で検察の動きを注視しているのではないか。

   2つめのポイントは行政改革だろう。デジタル社会の要(かなめ)は電波だ。その電波割当に関わる権限を総務省から9月1日に設置予定の「デジタル庁」に移管してよいのではないか。ひょっとして菅総理は「デジタル庁」への移管を念頭に置いているかもしれない。

   そして、3つめは規制改革ではないだろうか。電波の割当を省庁の権限ではなく、単純にオークション化すればいい。何しろ、携帯キャリアが国に納めている電波利用料は端末1台当たり年間140円。令和元年度でNTTドコモは184億円、ソフトバンクは150億円、KDDは114億円だった(総務省公式ホームページ「令和元年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額」)。NTTドコモは国へ電波利用料184億円を納め、携帯電話の通信料としてユーザーから3兆943億円を売り上げている(2019年度)。電波をオークション化することによって、その利益を納税者に還元すべきではないだろうか。

   上記の3つのポイントで接待問題の成り行きを注視したい。ニュースは刻々と変化していく。その流れを読んで行く。

⇒15日(月)午後・金沢の天気    はれ  

★「賭けマージャン」略式起訴と首里城「あうん」竜

★「賭けマージャン」略式起訴と首里城「あうん」竜

   きょう気になったニュースから。昨年の新型コロナウイルスの緊急事態宣言の中、東京高検検事長と新聞記者らによる賭けマージャン問題はこのブログでも何度か取り上げた。NHKニュースWeb版(3月14日付)によると、民間団体から刑事告発され、起訴猶予になった東京高検の黒川弘務元検事長について、東京地検は検察審査会の「起訴すべきだ」との議決を受けて再捜査し、一転して賭博の罪で略式起訴する方針を固めた。新聞記者ら3人については改めて不起訴とする見通し。

   略式起訴は検察が簡裁に書面だけの審理で罰金などを求める手続きで、今後、簡裁が検察の請求が妥当だと判断し、元検事長が罰金を納付すれば、正式な裁判は開かれず審理は終わることになる(同)。事件が発覚したきっかけは「文春オンラン」(2020年5月20日付)と週刊文春の記事だった=写真・上=。賭けマージャンは月1、2回の頻度で、賭け金は1千点を100円に換算する「点ピン」と呼ばれるレートで、1回で1万円から2万円程度の現金のやり取りをしていた。

   昨年7月、東京検察は「1日に動いた金額が多いとは言えない」「娯楽の延長線上にある」などとして起訴猶予にしていた。その後、12月に検察審査会は黒川氏に対して「違法行為を抑止する立場にあった元検事長が漫然と継続的に賭けマージャンを行っていたことが社会に与えた影響は大きい」と起訴相当を議決。また、記者ら3人については捜査が不十分として「不起訴は不当」と判断していた。きょうのニュースを見て、ようやく「けじめ」がついたとの印象だ。

   沖縄・那覇市の首里城は戦前、正殿などが国宝に指定されていた。戦時中、日本軍が首里城の下に地下壕を築いて司令部を置いたことから、1945年にアメリカの砲撃にさらされた。戦後に大学施設の建設が進み、城壁や建物の基礎がわずかに残っていた。大学の移転で1980年代から正殿などの復元工事が始まり、1992年に完成した。そして、2019年10月31日未明に出火し、無残な姿となった=写真・中=。政府は沖縄の本土復帰50年にあたる2022年に復元工事に着手し、2026年に正殿の完成を目指している。

   復元に向けての明るいニュースがあった。朝日新聞Web版(3月12日付)によると、正殿の彫刻に使われた下絵が、金沢市の彫刻作家・今英男(いまひでお)氏(1937-2014)の自宅で約30年ぶりに見つかった。下絵は縦約60㌢、横約4.5㍍。向き合う2頭の「あうん」の竜と、その間に宝の玉「宝珠(ほうじゅ)」が描かれている。「宝珠双龍文様」と呼ばれる図柄の彫刻で、正殿の玉座の背後にある「内法額木(うちのりがくぎ)」と呼ばれる部分に施してあった。下絵には「全体的に少し上げる」など、手書きの修正点や注意点が複数書き込まれている。

   自身は2009年5月に首里城を訪れ、正殿の玉座などつぶさに見学した。内法額木の2頭の「あうん」の竜の精細な彫りと金色の塗りに目を奪われ、カメラに収めた=写真・下=。当時、金沢の彫刻作家の手によるものだとは知らなかった。今回のニュースで、彫りは今英男氏、そして塗りは琉球漆器の職人たちの合作ではないかと憶測する。「あうん」の竜が蘇ることを期待したい。

⇒14日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆羞恥心と民主主義

☆羞恥心と民主主義

   「中国の公衆トイレには仕切りがない」。そのような話を以前から聞いていたが、実際に見たのは2011年6月のことだった。北京で開かれた国際会議に出席したとき、会場のホテルのトイレは日本と同じ個室だった。ところが、街中に出て入った「便利店」(コンビニ)のトイレには仕切りがなかった。しゃがむタイプの便器が3つ並んでいた。そこで用を足す気にはなれず、ホテルに戻った。中国人は排便を見られても恥ずかしくない、そのような文化なのだろうと実感したものだ。確かに、排尿や排便は人間の生理現象であり、恥ずることではなく、隠すことでもないというのが中国では道理なのだろう。そう考えると、このニュースは納得がいく。

   NHKニュースWeb版(3月1日付)によると、中国では集団隔離の対象者や空港での入国者に対し、肛門によるPCR検査が実施されていて、加藤官房長官は「在中国日本大使館に一部の日本人から、心理的苦痛が大きいなどの意見が寄せられている」と述べた。その上で、「肛門によるPCR検査を日本人に対して免除するよう大使館から中国外務省や北京市関係当局に申し入れをした」という。その後、検査方法を変更するとの回答は中国からまだない。

   肛門による検査は、5㌢ほどの綿棒を肛門に挿入し、回転させて検体を採取する。肛門から採取された検体は鼻やのどから採取する検体よりも陽性を示す期間が長く、のどでは発見できないウイルスが便から検出されることになり感染者の見落としを防ぐことができるようだ。つまり、肛門での検査はより徹底したウイルス対策ということになる。ましてや、排便を見られても恥ずかしくない国柄なので、検査のために肛門を見られても、違和感はない。むしろ、日本人が心理的苦痛や羞恥心を訴えようが、優先させるべきはウイルス対策と中国当局は考えているに違いない。

   もう一つのニュースも中国人の感覚なのだろうか。きのう5日に開幕した中国の全国人民代表大会で、習近平指導部は「香港の選挙制度には明らかな欠陥がある」として、中央政府が主導して選挙制度を変更する方針を示した。香港政府トップの行政長官を選ぶ「選挙委員」の権限を大幅に強化して、議会にあたる立法会の議員の多くも、選挙委員が選ぶようにするとしている。市民が直接投票で選ぶ議席を極力減らすことで民主派を排除するねらいがあるとみられる(3月6日付・NHKニュースWeb版)。

   中国にとっては今の香港の民主的な選挙制度を「明らかな欠陥」として、余計な民主派議員を排除する。肛門のPRC検査と同様、中国スタンダードで言えば羞恥心も民主主義も必要ない、ということか。

⇒6日(土)午後・金沢の天気     あめ

☆ジェネリック医薬品は「他人事」なのか

☆ジェネリック医薬品は「他人事」なのか

   小さいころ、親から「薬クソ売」という少々下品な響きの言葉を聞いた。効き目のない薬を高く売ってボロ儲けしている業者を皮肉る意味で使っていた。その後、「薬九層倍」という四字熟語を知る。薬の売値は原価に比べて非常に高く、利益が多いことから、巨大な利益を得ることのたとえ(三省堂「現代新国語辞典」)。今まさに「薬クソ売」、「薬九層倍」の背景が解き明かされるニュースが相次いでいる。それも北陸で、だ。

   富山市に本社を置くジェネリック医薬品製造大手の「日医工」に対し、富山県があす3日、業務停止命令を出す方針を固めたことがわかった。記録の不備など、管理体制に問題があったと判断したもので、期間はおよそ1ヵ月となる見込み。日医工では、滑川市の工場で品質試験の際の記録の不備などが発覚し、高血圧薬など75製品を自主回収している。健康被害は確認されていないが、県は自主回収した製品数が多いことから、管理体制に問題があったと判断し、行政処分を出す方向で検討を進めている。処分は、「許可取り消し」「業務停止」「業務改善」のうちの「業務停止」で、期間は富山第一工場の製造部門が30日前後、子会社などから医薬品を仕入れ販売することなどを含む製造販売部門が20日前後となる見込み(3月2日付・北日本放送ニュースWeb版)。

   75製品にも及ぶ自主回収だ。ニュースから読めることは、品質試験で不適合となった製品を廃棄せずに、再試験を行って通していた。その再試験の記録は破棄していたということだろうか。品質管理の重大な問題であり、メーカーは自ら真相を発表すべきだ。

   そこで、日医工の公式ホームページをチェックするとプレスリリース(2月25日付)が掲載されていた=写真=。文面は「本日、一部の業界紙において、富山県が当社に対して業務停止命令を出す方向で調整に入ったとの報道がありましたが、当社が発表したものではございません。また、富山県より現在、業務停止命令は受けておりません。」とまるで他人事のようだ。3月1日付では「組織変更および人事異動について」と題して、 製剤技術本部を新設し、既存品が抱えている課題の早期解決は図るなどと説明している。

   ジェネリック医薬品をめぐってはさらに不信が募る。水虫などの皮膚病治療薬に睡眠導入剤成分が混入していた福井県あわら市の医薬品メーカーの「小林化工」に対し、県は2月9日、医薬品医療機器法に基づき、同社に6月5日まで116日間の業務停止処分と業務改善命令を出した。県は、小林化工の経営陣が法令違反を把握していながら改善策を講じなかったことなどを問題視。同社は問題の治療薬以外でも、虚偽記録の作成や品質試験結果の捏造などの違反を長年続けていたという(2月9日付・時事通信Web版)。多品種生産による製造機の使い回しで、このような成分の混入は得てして起こる。怖い話だ。

   上記の一連のジェネリック医薬品メーカーの不祥事を見て、社内のガバナンスの問題が深刻だと察する。その問題の背景は何か。先発メーカーがコストと時間をかけて開発した新薬(先発医薬品)の特許が切れた後、ジェネリック医薬品として上記のメーカーなどが製造している。そして、政府が医療費抑制の切り札としてジェネリック医薬品をまさに国策として推奨してきた。言葉は悪いが、製造も販売も他人事のようだ。

   使う側にも、ジェネリック医薬品メーカーは果たして先発メーカーと同様にきちんと製造しているのかと心にわだかまりを持つ患者は今も多い。今回の不祥事で、先発メーカーのものを希望する人たちが増えるだろう。

⇒2日(火)夜・金沢の天気    くもり

★「易地思之」という言葉

★「易地思之」という言葉

   きょうから3月、季節は移ろう。金沢では日中の最高気温が21度まで上がり、春というより5月の初夏を感じさせる暖かさだった。ふと気づくと、すでに樹木の葉が芽生えて、地べたでは雑草が生えている。「草木萌え動く」。冬の間に蓄えていた生命の息吹が一気に現れる季節でもある。さらに、世界も動き出すのか、隣国から強烈なメッセージが届いた。

   読売新聞Web版(3月1日付)によると、中国国防省は1日、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で続いている中国当局による領海侵入について、「中国公船が自国の領海で法執行活動を行うのは正当であり、合法だ。引き続き常態化していく」とする方針をSNS上で発表した。一方、海上保安機関・海警局(海警)などの船が尖閣諸島に上陸する目的で島に接近した場合、日本側は相手を負傷させる可能性のある「危害射撃」を行える場合があるとの見解を日本政府が示したことについて、中国外務省報道官は1日の定例記者会見で「いかなる挑発行為にも断固対応する」と反発を示した。

   脅しの口実とタイミングが巧妙だ。中国は先月、海警局の船に武器の使用を認める「海警法」を施行したことから、日本では懸念が高まり、相手を負傷させる可能性のある「危害射撃」を行える場合があるとの見解を示していた。それを中国は「いかなる挑発行為にも断固対応する」と反発した。中国は明らかに尖閣支配に向けてギアを上げている。

   さらに注目していたのは韓国からのメッセージだった。韓国の中央日報Web版日本語(3月1日付)によると、文在寅大統領は、1919年3月1日に日本の統治下で起きた独立運動を記念する三一節記念式典で演説した。日本と韓国の関係については「韓国政府は常に被害者中心主義の立場で賢い解決策を模索する」と述べ、「わが政府はいつでも日本政府と向き合って対話をする準備ができている」とし「易地思之(相手の立場に立って考える)の姿勢で向き合えば、過去の問題も賢明に解決できると確信している」と強調した。

   さらに、「今年開催される東京オリンピックは韓日間、南北間、日朝間、そして米朝間の対話の機会になる可能性がある。韓国は東京五輪の成功に向けて協力する」と語った(同)。

   文氏のメッセージは強烈かと思ったが、ある意味で肩透かしだった。ただ、「易地思之」という言葉が気になった。自身はこの四字熟語を初めて見た。ネットで調べると韓国の政治家がよく使う言葉のようだ。この言葉は注意する必要がある。自分が相手の立場に立って考えるのか、相手に自分の立場を考えさせるのか、使い方によって二通りある。日本の政治家が真似してヘタに使うと、いわゆる元慰安婦問題や元徴用工問題で日本側が理解を示したと喧伝されるかもしれない。ハニートラップのような政治の言葉かもしれない。

⇒1日(月)夜・金沢の天気     はれ

☆島根の知事、「神等去出」のごとく

☆島根の知事、「神等去出」のごとく

   島根県の知事は日本一忙しい知事ではないだろうか。2月22日は島根県が条例で定める「竹島の日」だった。韓国による竹島の占拠は、国際法上、何の根拠もないとされる。島根県はこの日、松江市で式典を開き、丸山達也知事は「竹島は、わが国固有の領土だ。韓国と外交の場で、竹島問題が話し合われるよう強く要望する」と述べて、外交交渉による解決を政府に求めた(2月22日付・NHKニュースWeb版)。

   その丸山知事が一躍注目されたのは今月17日だった。この日、島根県庁で開かれた聖火リレーの実行委員会で中止を検討していると表明した。聖火リレーの実施について、県は大会組織委員会と協定を結んでおり、聖火ランナーやルートを決める県実行委の事務局を担当している。同県の聖火リレーは土日にあたる5月15、16日に実施予定。津和野町をスタートし、松江城(松江市)を目的地とする14市町村(総距離34.3㌔)で170人が聖火をつなぐ予定だ。警備費用など約9千万円を県の財源で予算化しており、県の判断で聖火リレーを事実上ストップすることもできる。

   中止理由として、東京都が感染拡大で手が回らなくなった保健所の調査を縮小したため、感染経路や濃厚接触者の追跡ができていないと不信感を表明している。全国の飲食店などが打撃を受けているにもかかわらず、緊急事態宣言が出た地域と、島根など感染者が少ない地域で、政府の支援に差がある現状にも不公平感を訴えた。

   その丸山知事はきのう25日、内閣府や経産省を訪問し、緊急事態宣言が発出された地域と島根では飲食店支援に不公平が生じていることについて改善策を求めた。 しかし、要望していた新型コロナ担当の西村経済再生担当大臣との面会は叶わず、要請文を受け取ったのは担当職員だった(2月25日付・山陰中央テレビニュースWeb版)。

   それにしても行動が素早い。聖火リレー中止の表明し、竹島の日を開催、そして、上京して政府への要望だ。3つの動きを10日でこなす。ここで思い起こすのは、2018年11月に訪れた出雲大社での神等去出(からさで)の神事だ。11月のことを旧暦の月名で神無月(かんなづき)と称するが、出雲では神在月(かみありづき)と称する。この月は、全国各地から八百万(やおよろず)の神が出雲に集うとされ、同月24日には神等去出の神事が執り行われる。神官が「お立ち、お立ち」と唱える。すると、この瞬間に神々は出雲を去り、それぞれの国に戻る。神々のまるでデジタルのような素早い動きなのだ。

   丸山知事も「お立ち、お立ち」と自らに言い聞かせながら、次々と行動を起こしているようにも思えるのだが。

(※写真は2018年11月24日に撮影した出雲大社の神等去出の神事)

⇒26日(金)朝・金沢の天気    くもり