⇒ニュース走査

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

   前回のブログの続き。「人呼んで上滑り長官」ではないのか。報道によると、宮内庁の西村長官は、24日の定例の記者会見で、「オリンピックをめぐる情勢につきまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を、大変ご心配されておられます」と述べた。そのうえで、「国民の間で不安の声があるなかで、ご自身が名誉総裁をおつとめになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします」と話した(6月24日付・NHKニュースWeb版)。

   これについて菅総理は、官邸で記者団に対し「長官ご本人の見解を述べたと理解をしている」と話した(6月25日付・同)。西村長官が陛下の気持ちを案じて述べたコメントなのか、あるいは長官本人の見解なのか、正直どちらでもよい。陛下がオリンピック・パラリンピックを案じられる気持ちは、国民も理解できる。それもさることながら、長官がもう一つコメントすべきは、皇室の威厳にかかわる問題として浮上している、眞子さまの婚約内定問題についてだろう。長官は陛下の今のお気持ちをなぜ述べなかったのか。

   オリ・パラより難題で、宮内庁長官といえどもコメントできないのは理解できる。皇室がお二人の結婚に反対していると発言すれば、国際世論が沸騰する。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、旧態依然とした日本の姿をさらす出来事だ、と。問題は婚約内定中の小室圭氏側にあったとしても、この批判は日本にとって不名誉なことになる。逆に、結婚を認めれば国民の皇室への求心力がガタ落ちすることは想像に難くない。

   冒頭の「人呼んで上滑り長官」は、4月8日に小室氏が母親の金銭トラブルに関して説明した28㌻文書について、西村氏が同日の記者会見で「非常に丁寧に説明されている印象だ」と述べていたが、その4日後に小室氏側が解決金を渡す意向があると方針転換したことで、長官発言は軽々しいとSNSなどで批判されたことを指す。

   話は変わるが、宮内庁の公式ホームページをチェックしていて、「給桑(きゅうそう)」という言葉が目に留まった。蚕(かいこ)に桑(くわ)を与えること。大きく育った蚕に、枝付きの桑を与えることを「条桑育(じょうそういく)」と説明している。5月25日に皇后が皇居内の紅葉山御養蚕所で給桑をほどこされる様子を掲載している=写真=。この画像を見て、皇室は相当長い歴史と技術を有する養蚕家でもあるのだと気付かされた。

   日本文化のシンボルの一つは和装、その素材は絹織物だ。蚕が産み出す繭(まゆ)から生糸をつくり、生糸を繊維に加工して絹織物をつくる。ところが、農水省の公式ホームページに掲載されている「新蚕業プロジェクト」によると、平成元年度(1989)に養蚕農家は全国で5万7230戸だったが、同30年度には293戸と激減している。さらに、養蚕農家の主たる従事者は現在も70歳以上が6割を占める。絶滅が危惧される業種なのだ。世界では中国が圧倒的なシェアを占め、インド、ウズベキスタンと続く(JETRO公式ホームページ「ビジネス短信」)。ひょっとして、10年後、20年後には皇室が国内最後の養蚕家になるのか。

⇒26日(土)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

☆バイデン大統領 報道されないある一面

☆バイデン大統領 報道されないある一面

   アメリカ大統領のバイデン氏は78歳。日本でいう後期高齢者ながら、はっきりとした物言いで、先のG7サミット(イギリス・コーンウォール、6月11-13日)でも存在感があった。バイデン氏がイニシアティブを発揮した共同声明では、中国に対して新彊ウイグル自治区での人権尊重、香港の高度の自治を求めたほか、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。と、報道はされているものの、別の側面もあったようだ。

   アメリカのオンライン・メディア、「ワシントン・フリー・ビーコン」は「What About His Gaffes? Joe Biden Bumbles His Way Through G7 Summit」(6月14日)との見出しでサミットにおけるバイデン氏の様子を報じている。中でも、「It’s also very embarrassing for America.」(アメリカにとっても非常に恥ずかしいこと)として、バイデン氏の「ボケぶり」を伝えている。

   写真は、バイデン氏が会議場の屋外の座席エリアに迷い込んで混乱しているところ。バイデン氏の妻が彼を連れ出したエピソードを紹介している。また、7ヵ国の首脳とゲスト参加の韓国、オーストラリア、南アフリカの首脳が並んで写真撮影する場で、ホストであるイギリスのジョンソン首相が一人ひとりを紹介した。ジョンソン氏は、南フリカのラマポサ大統領をすでに紹介していたにもかかわらず、バイデン氏はジョンソン氏の話の途中で「南アのラマポサ大統領はどこに」と口を挟んだ。ジョンソン氏が「すでに紹介しましたけど」と告げると、バイデン氏は「そうか。それは失礼した」と。

   この記事を読んで連想したのが、日本の「エーザイ」とアメリカの製薬会社「バイオジェン」が開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」について、アメリカのFDA(食品医薬品局)は原因と考えられる脳内の異常なタンパク質「アミロイドβ」を減少させる効果を示したとして治療薬として承認したとのニュースだった。「アデュカヌマブ」は、アミロイドβを取り除く効果が認められ、アルツハイマー病の進行そのものを抑える効果が期待される初めての薬となる。

   この夢の薬、ぜひ点滴投与を受けたいとのニーズは世界で高まっているだろう。ひょっとして、バイデン氏も待ち望んでいる一人かもしれない。

⇒22日(火)夜・金沢の天気     くもり

☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

   菅総理がホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と初めて対面での会談を行った日米首脳会談(ことし4月16日)。「台湾海峡の平和と安定の重要性」が初めて盛り込まれた共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」はある意味で新鮮だった。あれから2ヵ月、いまでは国際政治、安全保障を語る上でのキーワードとして浮上している。

   そして、台湾をめぐるもう一つのキーワードがWHOだ。WHO公式ホームページをチェックすると、第74回年次総会(5月24日-6月1日、オンライン)=写真・上=の模様が詳しくホームページ掲載されている。今回の総会で注目を集めたのは、台湾のオブザーバー参加についてだった。結局、中国などの反対で認められなかったもの、以前から中国寄りと批判が向けられているWHOへの風当たりがさらに強くなった。

   台湾はWHOに非加盟であるものの、2009年から2016年までは年次総会にオブザーバーとして参加していた。2017年以降は、中国と台湾は一つの国に属するという「一つの中国」を認めない蔡英文氏が台湾総統に就いたことで、「一つの中国」を原則を掲げる中国が反対し、オブザーバー参加が認められなくなった。

   ところが、新疆ウイグル自治区での人権問題や香港の民主主義運動への抑圧などで中国への懸念が高まる中、台湾問題がクローズアップされるようになった。先のG7外相会合(5月3-5日・ロンドン)の共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調すると同時に、中国が反対する台湾のWHO会議への参加も支持した(5月6日付・共同通信Web版)。G7の共同声明で台湾問題をめぐる2つのテーマで盛り込まれるのは異例だった。
 
   日本でもこれまでになかった動きが起きている。年次総会に台湾の出席が認められなかったことをめぐり、今月11日の参議院本会議では、次の総会から参加を新型コロナウイルス禍からのより良い回復をテーマとしたセッション認めるよう各国に求める決議を全会一致で可決した(6月11日付・NHKニュースWeb版)。決議文は超党派の議員がまとめたもので、「検疫体制の強化などに先駆的に取り組んできた台湾が会議に参加できないことが、国際防疫上、世界的な損失であることは、各国の共通認識になっている」との内容で、政府にも今後、台湾が会議に参加する機会が保障されるよう各国に働きかけることを求めている(同)。

   そして、現在、イギリス・コーンウォールで開催されているG7サミット(6月11-13日)=写真・下、外務省公式ホームページより=の共同声明でどのような表現で2つの台湾問題がメッセ-ジとして盛り込まれるのか注目している。

   話はそれるが、WHO公式ホームページをふと見ると、北朝鮮が声明文を出している。新型コロナウイルスのワクチンの供給をめぐって、強烈な内容だ。「The development of COVID-19 vaccines and medicines might be the achievement for the common mankind whereas an unfair reality is to be seen that some countries are procuring and storing the vaccines more than its needs by inspiring the vaccine nationalism plainly when other countries can’t even procure it with their affordability. 」

 
   意訳すれば、一部国家が必要以上にワクチンを確保し、ワクチンのナショナリズムをあからさまに煽って、世界に不公平な事態を招いている、と。名指しこそしていないが、アメリカを意識しているのだろう。WHOの「パンデミック宣言」(2020年3月11日)下で、北朝鮮は弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射している(同3月25日)。弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。ミサイルの打ち上げより、ワクチンの確保に自助努力する方が賢明だと誰しもが思うのだが。

⇒13日(日)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★見かけは「翆玉白菜」、中身は「毒菜」

★見かけは「翆玉白菜」、中身は「毒菜」

   台湾の国立故宮博物院(台北市士林区)を訪れたことがある。2011年11月だった。第二次世界大戦後、国共内戦が激化し、中華民国政府が台湾へと撤退する際に北京の故宮博物院から収蔵品を精選して運び出した。その数は3000箱、61万点にも及び、所蔵品数で世界四大博物館の一つに数えられる。ガイド役を引き受けてくれた国立台北護理健康大学の教員スタッフが真っ先に案内してくれたのが、清朝時代の「翆玉白菜」=写真・国立故宮博物院のホームページから=。長さ19㌢、幅10㌢ほどの造形ながら、本物の白菜より白菜らしい。清く白い部分と緑の葉。その葉の上にキリギリスとイナゴがとまっている。
  

   ヒスイの原石を彫刻して作ったというから、おそらく工芸職人はまずこの色合いからイメージを膨らませ、白菜を彫ったのではないか。これが逆で、白菜を彫れと言われて原石を探したのであれば大変な作業だったに違いない。日本人にとっても身近な野菜だけに、その色合いが和ませてくれた。以来、故宮博物院と聞いて、思い出すのは「翆玉白菜」だ。

   台湾から帰国して1ヵ月余りたって、金沢大学の授業のTA(テーチィング・アシスタント)をしてくれた中国人留学生の院生2人を誘って、金沢の居酒屋で忘年会を開いた。席上で、「翆玉白菜」の話をすると、「ワタシも台湾で見たことがある」と話が盛り上がった。紹興酒が進むと、一人が「でも残念なことに今の中国は『毒菜』が多いです」と語り出し、本国の食の事情を嘆いた。このとき初めて聞いた言葉だった。「毒菜」は姿やカタチはよいが、使用が禁止されている毒性の強い農薬(有機リン系殺虫剤など)を使って栽培された野菜のことを言うそうだ。

   10年も前の話なので、いくらなんでも中国では毒菜はもう栽培されてないだろう思っていたがそうではないらしい。週刊文春(6月17日号)に記載されている「あなたが食べている中国『汚染野菜』」の記事を読むと、日本は消費される野菜の2割を輸入に頼っているが、その輸入量(2019年)1800万㌧のうち実に998万㌧、53%が中国からで圧倒的なシェアだ。輸入の場合は食品衛生法に基づいて検疫検査が行われるが、過去3年間で中国産は232件の摘発を受けている。

   摘発が多い野菜は玉ねぎ。違反理由は「チアメトキサム」という殺虫剤だ。この殺虫剤を玉ねぎの皮に散布すると変色しない。つまり、新鮮な野菜と見せかけ、出荷量を増やすためにあえて散布している。チアメトキサムは玉ねぎだけでなく、ショウガやニンニクの茎でも見つかっている。また、摘発件数が多いのがピーナッツ類で3年間で50件。「アフラトキシン」というカビ毒の付着。このカビは発がん物質でもある。上記の記事を読んで大量の毒菜が日本に入ってきていると考えると他人事ではない。

   2008年に中国から輸入した冷凍ギョーザを食べて中毒症状が起きた、有名な「毒ギョウーザ事件」だ。それ以来、中国製の加工品はイメージがよくない。しかし、加工前の野菜そのものが「毒菜」「汚染野菜」となると、国内で加工されれば防ぎようがない。安心、安全がモノの価値として生産者の間で定着していないのであれば、記事にもあるように、水際で検疫体制を強化するしかない。

⇒12日(土)午前・金沢の天気     はれ

★「コロナ」にも「アルツ」にも「打ち」勝つ

★「コロナ」にも「アルツ」にも「打ち」勝つ

   65歳以上のシニア世代のワクチン接種が進んでいる。1回以上の接種が延べで900万人(6月6日現在・総理官邸公式ホームページ)となった。うち、2回の接種を終えた人は90万人となる。対象者は3600万人なので数字的にはまだ遠いが、「7月末を念頭に希望するすべての高齢者に2回の接種」の政府目標が見えてきたのではないだろうか。

   この進捗状況の背景には、それぞれの自治体のユニークな取り組みがある。なるほどと思ったのは「調布方式」や「三島モデル」という、接種を受ける人は座ったまま、医師や看護師が会場内を移動して接種する方式だ。毎日新聞Web版(6月2日付)によると、静岡県三島市は今月2日からこの方式を始めた。会場は4つの小学校の体育館で、接種を受ける人は、コの字形に囲われた段ボールの仕切りの中で1人ずつ待機。座ったまま、医師からの問診と接種を順番に受け、経過観察の15分が過ぎると退席する。接種を終えた人の肩に緑色テープを貼り、二重接種を防止する工夫もある。経過観察も含めた会場での滞在時間は1人当たり30分だ。三島市は今後、自力で移動ができない要介護者や要支援者120人を対象にドライブスルー接種も行う。

   医師が移動することで、接種待ちの滞留による「3密」なども防ぐことができ、お年寄りの移動時間を少なくすることで時間短縮ができる。この方式は、佐賀県唐津市や福岡県宇美町など全国に広がっている。まさに逆転の発想ではないだろうか。(※イラストは厚労省公式ホームページより)

   もう一つ、シニアにとって朗報がある。NHKニュースWeb版(6月8日付)によると、日本の「エーザイ」とアメリカの製薬会社「バイオジェン」が開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」について、アメリカのFDA(食品医薬品局)は原因と考えられる脳内の異常なタンパク質「アミロイドβ」を減少させる効果を示したとして治療薬として承認したと発表した。

   これまでのアルツハイマー病の治療薬は、残った神経細胞を活性化させるなどして症状の悪化を数年程度、遅らせるもので、病気によって脳の神経細胞が壊れていくこと自体を止めることはできなかった。こうした中で、「アデュカヌマブ」は、アミロイドβを取り除く効果が認められ、アルツハイマー病の進行そのものを抑える効果が期待される初めての薬となる(同)。

   ただ、今回の承認は深刻な病気の患者に早期に治療を提供するための「迅速承認」という仕組みで行われたため、FDAは追加の臨床試験で検証する必要があるとしていて、この結果、効果が認められない場合には承認を取り消すこともあるとしている。「アデュカヌマブ」については日本でも昨年12月に厚生労働省に承認の申請が出されている。

   シニア世代は「認知症」や「アルツハイマー病」という言葉には敏感になっている。日本の承認が遅れるのであれば、この夢の薬を求めてアメリカに行き、ぜひ点滴投与を受けたいという人は少なからず出てくるだろう。いや、世界中からやってくるだろう。まさに、「コロナ」にも「アルツ」にも「打ち」勝つ、朗報だ。ちなみにきょうの東証一部のエーザイの株価は始値で前日より1500円も急騰し、9251円をつけた。上昇率19.35%のストップ高となった。

⇒8日(火)午前・金沢の天気   くもり

☆断罪と消去 変わらぬアメリカの論理

☆断罪と消去 変わらぬアメリカの論理

        きょうの朝刊の記事で歴史の一端が見えてきた。以下、北陸中日新聞(6月7日付)=写真=から引用する。第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた元総理の東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨を、上空から太平洋に散骨したとするアメリカ軍の公文書が見つかった。これまで明らかでなかったA級戦犯の遺骨処理について公文書が見つかったのは初めて。

   文書は、占領期に横浜市に司令部を置いた第8軍が作成、アメリカの国立公文書館に所蔵されていた。これを日本大学の高澤弘明専任講師(法学)が入手し公表した。A級戦犯の遺骨の処理については1949年1月4日付けの極秘文書に記されていた。7人が処刑された1948年12月23日未明、東京・巣鴨プリズンから遺体が運び出された。横浜市内の火葬場で焼かれ、遺骨は別々の骨つぼに納められた。そして、小型の軍用機に載せられ、上空から太平洋に散骨された。

   この極秘文書を記したのは、現場責任者だった第8軍所属の少佐で、「横浜の東およそ30マイル(48㌔)の地点の太平洋の上空で自分が広範囲にまいた」とつづっている。遺骨は家族に返還されておらず、太平洋や東京湾にまかれたとの憶測はあったが、その行方は昭和史の謎とされていた(同紙)。
 
   記事を読んで、アメリカ軍による戦犯に対する処遇は今も変わってはいないと実感した。ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によって実行された。パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた潜伏先をステルスヘリコプターなどで奇襲し殺害。DNA鑑定で本人確認がなされた後、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。

   戦犯は「死をもって断罪」だけではない。さらに、遺骨や遺体は海に散骨、または水葬とする。遺骨や遺体が遺族に返還され、墓がつくられることになれば、その墓が将来、聖地化することを想定しての処置だろう。徹底した断罪と消去、変わらぬアメリカの論理だ。

⇒7日(月)夜・金沢の天気     はれ  

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

    結局、いいように「金づる」にされているのか。時事通信Web版(6月3日付)によると、WHOが参加を呼びかけたワクチン供給の国際組織「COVAX」のサミット(オンライン会議)が2日開かれ、菅総理は新型コロナウイルスワクチンの途上国への公平な普及に向け、8億㌦の追加拠出を行うと表明した。途上国向けワクチンについては、これまで日本政府は2億㌦を拠出していて、今回の8億㌦と合わせると、拠出額はアメリカに次ぐ10億㌦となる。

   日本国内のワクチン接種は65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は47万人(6月1日現在・総理官邸公式ホームページ)、率ではわずか1.3%だ。国内でこんな状況なのに、他国になぜ10億㌦も寄付をするのか、国内にもっと注力してほしいと誰しもいぶかるに違いない。

   金づるの仕組みはもう出来上がっている。5月15日付のこのブログでも述べたが、昨年2020年5月16日、WHOのテドロス氏とIOCのバッハ会長は「スポーツを通して健康を共同で促進していく覚書(MOU)」を交わしている。その中で、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)が示される。つまり、パンデミックの下で東京オリンピックを開催するしないの「決定権」を握っているのはWHOだ。

   テドロス氏がオリンピック参加国でもある低所得国にワクチンが行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないと言えば、バッハ会長も従わざるを得ないだろう。そこで、テドロス氏の意向を受けたバッハ氏が今度は東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長を通して、COVAXへの拠出を要望してきた。菅総理も日本が拠出しないと東京オリンピックのイメージダウンになると決断したのではないだろうか。

   この「COVAXストーリー」はさらに奥が深い。WHOが中心となってワクチンを共同購入することになるが、主な購入先は中国だろう。WHOは5月7日に中国国有製薬大手「中国医薬集団(シノファーム)」が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認。治験などから推定される有効性は79%。そして、きのう2日にも中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについて緊急使用を承認した。

   CNNニュースWeb版(6月2日付)=写真=によると、WHOはシノバック製ワクチンの使用認可で、供給問題に直面しているCOVAX計画が加速すると期待し、担当者は「世界全体で起きているワクチンへのアクセスの不平等さを克服するには、複数のワクチンが必要だ」と述べた。中国政府は、年末までに30億回分を生産したいとしている。

   これまで最大のワクチン供給元となっていた「インド血清研究所(SII)」は、国内の感染急拡大を受けて3月にワクチンの輸出を停止している。

   世界から集められた拠出金で中国製のワクチンを購入するシステムが出来上がる。同時に、中国としては、来年2月の北京冬季五輪はワクチンが世界に行き渡った状態で開催する。まさに「一石二鳥」と豪語しているだろう。日本はただの金づるになっているだけ。裏読みのストーリーではある。

⇒3日(木)午前・金沢の天気    はれ

☆「記者会見うつ」大坂なおみ選手の場合

☆「記者会見うつ」大坂なおみ選手の場合

   記者会見は筋書きのないドラマでもある。記者の質問によって、人物や会社や組織が試されたり、会見の場が修羅場と化すこともある。2014年7月、会見に応じた兵庫県議会の県議が政務活動費の不正問題に質問され、「このような指摘を受けるのはつらい」と突然大声で泣きだした。本来ならばローカルニュースだが、この号泣会見の模様はテレビでも全国ニュースに、さらにイギリスBBCもその泣きの会見を世界に流した。

   会見で記者たちはどのようことを意識して質問をするのか。事実関係の問いただしのほかに、カメラ目線や態度、言動から心理を読んだりする。政治家の場合はカメラの向こうの国民や有権者を意識して語るのが通常だが、妙に目線がキョロキョロとしていれば、心理的に相当な動揺があることが分かる。そこから、政局を読んで記事にすることもある。一方の質問される側はこのような記者目線は相当なプレッシャーであることは想像に難くない。   

   女子テニスの大坂なおみ選手がツイッターで、全仏オープンの記者会見を拒否し、今月2日予定の2回戦を棄権すると明らかにしたことが大きな波紋を呼んでいる。大坂選手は先月30日、全仏オープンの1回戦でルーマニアの選手に2対0のストレートで勝ったが、試合後の記者会見に出席しなかった。このため、大会の主催者は、1万5000㌦の罰金を科すと発表した(5月31日付・NHKニュースWeb版)。

   きのう31日付の本人のツイッターでは、2018年から「うつ状態」に苦しんでいることを告白し、「少しの間、コートを離れる」と休養も示唆した。「グランドスラム」と称される4大大会は、全豪オープン(1月)、全仏オープン(5-6月)、全英オープン(6-7月)、全米オープン(8-9月)だ。「少しの間、コートを離れる」とは、全仏と全米には出場しないという意思表示だろう。

   ツイッターを読んで、うつと格闘していると自分の有り様を公表したのはある意味で勇気のある行動であり、つらい心情と察する。反面で、スポーツ界におけるメンタルヘルスのケアはどうなっているのか気になる。主催者側が本人から事情を聴き、精神的につらいと申し出があれば、記者会見はその旨を記者に告げて中止にしてもよいのではないか。それは「アスリートファーストの配慮」というものだろう。それもなく、大会規則にのっとり罰金を科すとは。

   確かに、放映権を有するテレビなどメディアが世界に発信しているから大会の価値も上がり、有力なスポンサーもついて大会の賞金も上がるという相乗効果だ。主催者側は、トップ選手ともなれば、メディアに答えるのはある意味で義務と定めているのだろう。

   今回はストレート勝ちでの2回戦進出だったので、晴れ晴れと会見に臨むだろうとファンも期待したはずだ。では、本人はなぜ拒否したのだろうか。先月27日のツイッター=写真=で、全仏オープンで会見に応じない意向を表明していた。以下憶測だ。イタリア国際女子シングルス2回戦(5月13日)でストレート負けした大阪選手がラケットをコートに叩きつけて壊すというシーンがネット動画などで流れて批判も起きた。一瞬の怒りの行為とはいえ大阪選手はそのことを悔やんでいた。全仏オープンの記者会見でこの件について記者から質問が飛んで来るかもしれないと想像すると不安が募った。「うつ状態」がさらに激しくなり、会見に臨む意欲は失せていたのではないだろうか。

⇒1日(火)夜・金沢の天気     はれ

★バイデン指示「90日で結論を」動物感染か研究所漏洩か

★バイデン指示「90日で結論を」動物感染か研究所漏洩か

   ワクチン接種の遅れに自身もやきもきしている。ことし2月に接種が始まった医療従事者(480万人)ですら、2回接種を終えたのは282万人(5月27日現在・総理官邸公式ホ-ムページ)、率換算で58%、ようやく半数越えだ。65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は24万人(同)、率ではわずか0.6%だ。もたもたしているうちに、変異株が多様化と進化を繰り返し、そのうちワクチンが効かなくなるのではないかと不安もよぎる。

   新型コロナウイルスの起源をめぐってニュースが相次いでいる。CNNニュースWeb版日本語(5月28日付)は、「フェイスブック社の広報はCNNに寄せた声明で、今後は新型コロナウイルス感染症が人工的に作られたとする主張を当社のアプリから削除しないことにした」と伝えている。フェイスブックは今年2月、WHOなどと協議し、ウイルスが人工的に作られたとの主張を削除すると発表していた。(※写真・上はThe White House公式ホームページより)

   ロイター通信Web版日本語(同27日付)は、アメリカのバイデン大統領は新型コロナウイルスの起源について、動物からの感染と研究所からの漏洩という2つのシナリオを国内の情報機関が精査しているものの、見解は割れていると明らかにし、声明で「明確な結論に近づくことができるよう、情報機関に対し情報の収集・分析に関する取り組みを強化し、90日以内に報告するよう要請した」と述べた、と報じている。 WHOは実施したコロナの起源を探る調査報告書を3月に公表し、ウイルスが武漢周辺の研究所から漏洩したとの見方は「最も可能性の低い仮説」と結論付けていた。

   ウォールストリート・ジャーナルWeb版日本語(同27日付)も「2020年2月6日、華南理工大学の肖波涛教授は、このウイルスについて『恐らく武漢の研究所が発生源だろう』と結論付けた論文を発表した。しかし中国政府はコロナの発生源に関する研究を厳しく制限しており、同教授は論文を撤回した」と研究所からの漏洩を報じている。 

   上記の一連の報道でいぶかったのは、研究所からの漏洩がは発生源とする分析はアメリカで相当進んでいるものとこれまで理解していたからだ。現に、アメリカ前政権の当時のポンペイオ国務長官は、中国科学院武漢ウイルス研究所に関する「新たな情報」として声明を発表している。NHKニュースWeb版(20121年1月16日付)によると、ポンペイオ氏は「アメリカ政府には、感染拡大が確認される前のおととし秋、研究所の複数の研究員が新型コロナウイルス感染症やほかの季節性の病気とよく似た症状になったと信じるに足る理由がある」と主張。加えて、「研究所は新型コロナウイルスに最も近いコウモリのコロナウイルスを遅くとも2016年から研究していた」「中国軍のための極秘の研究に関わっていた」と発表していた。

   ポンペイオ氏の声明には裏付けがあるものと自身も理解していた。この事件がきっかけだった。アメリカのハーバード大学教授が中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は2020年1月、大学教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)している。教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている科学者。リーバー氏は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結んでいた。(※写真・下は2020年2月6日付・ニューヨーク・タイムズWeb版)

   つまり、武漢周辺の研究機関でのウイルス研究に詳しかったであろうリーバー氏から事情聴取が進み、かなり全容が見えてきた段階でポンペイオ氏が声明を出した、とニュースの流れを読めば誰しもそう考える。ところが、トランプ氏からバイデン氏へと政権交代がポンペイオ氏の声明から5日後の1月20日に行われたことで、武漢市でウイルス感染の起源についての調査は頓挫していたようだ。トランプ氏やポンペオ氏は新型コロナを「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と叫んだため、コロナ禍をめぐる政権の失政を中国の責任に転嫁しようとする政治的な発言とバイデン政権は解釈したのだろう。解明調査はストップした。フェイスブック社もバイデン政権と連動するように武漢起源説やウイルス人工説に関する主張をアプリから削除した。

   このアメリカの状況を中国側は利用した。WHO報告書では武漢のウイルス研究所からの漏洩説を「可能性が低い」としているが、NHKの取材によると、インタビューした武漢担当の調査メンバーのオーストラリアの研究者は、感染拡大の初期の患者に関する詳しいデータを中国側に求めたが、提供されなかったと告白している(2月15日付・NHKニュースWeb版) 。

   このままだと武漢研究所からの漏洩説が消滅するはずだったが、すんでのところで調査再開の指示がバイデン氏から出た。動物からの感染と研究所からの漏洩という2つのシナリオの結論を90日以内に結論を出すことになる。遅くとも8月末には公表される。アメリカと中国の間で激しいコロナ情報戦も今後予想される。映画の『バイオハザード』のような展開になってきた。結論を待ちたい。

⇒31日(月)午後・金沢の天気    くもり

★中国漁船の違法操業と人権問題 日本の打つ手は

★中国漁船の違法操業と人権問題 日本の打つ手は

     中国・新疆ウイグル自治区の少数民族を強制的に働かせてつくった木綿や衣類が問題となって輸入の差し止めや不買運動が世界各地で起きているが、さらに水産業にも飛び火している。アメリカのサリバン大統領補佐官(安全保障担当)はツイッター=写真・上=で「CBP(税関・国境警備局)は 残虐で非人道的な労働慣行に従事していることが判明した中国漁船団全体からの海産物の輸入を防止するための措置をとった」と速報を流した。

    ロイター通信Web版(5月29日付)によると、CBPは中国の大連海洋漁業有限公司からのマグロ、メカジキなどの海産物を全米の税関で差し止めすると発表した。マグロ缶詰やペットフードなど水産加工品にも適用する。調査により、同社に雇われた多くのインドネシア人労働者は当初示された労働条件が大きく異なり、身体的暴力や債務による束縛、虐待的な労働と生活環境が強いられていることが明らかになった。

    中国漁船での虐待問題は以前から問題となっていた。賃金未払いや酷使、暴力といった目に遭うことも、時には命を落とすこともニュースとなっていた。AFP通信Web版日本語(2020年7月10日付)によると、2020年6月、インドネシア人船員2人が中国漁船から海に飛び込んで脱走する事件があった。2人はその後、インドネシア漁船に救助され、虐待と劣悪な環境から逃れるためだったと語った。5月にも、インドネシア人船員3人の遺体が中国船から海に投げられる出来事があった。インドネシア政府はその後、3人は病気で死亡したとの報告を受けたと発表。中国政府は国際法に基づき水葬したと説明した。

   90年ほど前に描かれた小説だが、小林多喜二の『蟹工船』のストーリーにある過酷な労働環境を彷彿とさせる。まるで、現代版蟹工船のような話だ。ウイグルでの少数民族への強制労働とあわせ、現実が見えてくる。

   「板子一枚、下は地獄」と言われるように、漁業は常に危険が伴う労働環境だ。そのため、日本でも慢性的な人手不足に陥っている。イカ釣り漁業の拠点である能登半島の小木漁港でも、インドネシアからの漁業実習生が常時70人ほどいる。貴重な労働力として大切にされている。操業中にケガや病人が出れば、水産庁や海上保安庁の救助船が駆け付ける。地域の文化祭を見に訪れたことがあるが、彼らがステージで歌や演奏を披露をしたり、地元の人たちと溶け込んでいるという印象がある。

   それにしても、中国漁船の無法ぶりは日本海側でも深刻だ=写真・下=。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、すでに多数の中国漁船がEEZ(排他的経済水域)である大和堆などに入り込んでいて、水産庁は4月から320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在・水産庁公式ホームページ、写真も)。日本の漁船に先回りして、日本海のイカ漁場を荒らしている。そして、この中国側の漁船に多くのインドネシア人が不当に働かされているに違いない。まさに違法操業と人権問題。日本政府もアメリカと同様に強い措置を講じる段階に入って来たのではないだろうか。

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