⇒ニュース走査

★中秋の名月なれど チャイナリスクの暗雲

★中秋の名月なれど チャイナリスクの暗雲

   今夜は「中秋の名月」だ。天候が変りやすい北陸では名月を拝めないことが多い。なにしろ芭蕉の句がある。「名月や北国日和定なき」(『奥の細道』)。今夜は中秋の名月を期待していたけれど、あいにく雨で拝むことができなかった。福井・敦賀で詠んだ句とされる。しかし、今夜はすっきりと見ることができた=撮影:午後7時45分=。しかも、平成25年(2013)以来、8年ぶりの満月というから、まさに名月だ。  

   時代劇のドラマで中秋の名月のカットがよく使われる。大事件や裏切り、画策、謀反、旗揚げなど不吉な出来事の予兆のシーンとして、ウオーッという犬の鳴き声や風に揺れるススキの穂とともに名月が浮かんで出てくる、あのカットだ。きょうの名月もひょっとして。  

   連休明けのきょう21日の日経平均株価は取り引き開始直後からほぼ全面安。終値は先週末より660円安い2万9839円だった。終値が3万円を割り込むのは9月7日以来だ。そして、日本だけでなくアメリカ株も全面安となるなど、世界同時株安の様相だ。その原因と報じられているのが「チャイナリスク」。中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営悪化が原因と言われる。日本円で33兆円におよぶ巨額の負債を抱えているとされ、中国経済全体や金融システムに影響を及ぼすのではないかとの懸念が強まっている。

   その予兆は昨年から顕著になっていた。恒大集団は負債比率の削減を目指しすべての不動産物件を30%値引きすると発表(2020年9月7日付・ロイター通信Web版日本語)、このころから危機説が浮上した。もともと、中国当局が不動産価格の過度な高騰を警戒し、市場を引き締めたことが資金繰りが悪化した原因の一つとみられている。そして、本格的にデフォルト(債務不履行)となれば、リーマン・ショック級の信用崩壊が発生し、不動産資産が下落するだろう。不動産を担保にしてビジネスをしている人たちが金融機関の強引な貸しはがしに合うケースも増えるだろう。こうなると、資金繰りが全体に悪化し、不況へと突入する。

   では、中国政府による恒大集団の救済はあるだろうか。習近平政権は「共同富裕」を掲げ、貧富の格差解消を進めている。ある意味で不動産バブルを煽ってきたとも言える恒大集団に助け舟を出せば人民の反発を招くことになるかもしれない。

⇒21日(火)夜・金沢の天気      はれ

☆眞子さま結婚問題さらなる一波乱二波乱

☆眞子さま結婚問題さらなる一波乱二波乱

   これはNHKのスクープ記事だった。16日付のニュースで、「秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまとの結婚の調整が進められている小室圭さんが、今月末には帰国が可能となるよう準備を進めていて、近く帰国する見通しとなったことが、関係者への取材でわかりました。宮内庁は、来月の結婚も念頭に発表の準備を進めていて、眞子さまは、小室さんの帰国後、2人で記者会見などの機会を設け、結婚について報告される見通しです」(9月16日付・NHKニュースWeb版)と報じた。自身の憶測だが、この記事は「関係者への取材」というより、宮内庁からの「取材依頼」、つまり「リーク記事」ではなかったか。

   本来ならば民放テレビや新聞社などが加盟する宮内庁記者クラブで発表すべき案件なのだが、そうなると「小室問題」などに記者の質問が集中して記事が宮内庁側の意図しない趣旨で書かれてしまう、ということになりかねない。そこで、論調が比較的穏やかなNHKに情報を持ち込んだのだろう。メディアへの情報開示の在り方をここで論じるつもりはない。むしろ、そのような手段を使わざるを得ないほど、眞子さまの結婚問題で宮内庁が追い込まれた状況であることをニュースを見て察した。

   宮内庁を追い込んでいる状況はいくつかある。一つは、結婚までに時間がなく切羽詰まっている。記事にあるように、「眞子さまは、30歳の誕生日を迎える来月23日までに結婚される」となれば、あと1ヵ月余りだ。皇族は「民間人」ではないので戸籍はない。入籍するまでに、皇籍離脱の手続き、婚姻届けなど多々ある。この手続きを進めるのは宮内庁だ。とくに、皇族がその身分を離れる際に支払われる一時金(最大1億5250万円)について、眞子さまは「受け取らない意向を示されている」(同)としている点だ。眞子さまは簡単にそう述べられたのかもしれないが、宮内庁にとってはこれほど面倒なことはないだろう。

   憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。皇籍離脱の一時金は皇族費であり、皇室経済法第6条に基づき、皇室経済会議を開く必要がある。本来は一時金の金額の認定などする場ではあるが、「受け取らない」場合であっても、その理由について了承を得る必要がある。会議メンバーは総理大臣、衆参正副議長、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8人だ。ところが、今月29日に自民党総裁選、10月4日からの臨時国会で首班指名選挙がある。その後に組閣があり、政治家にとって超多忙なスケジュールの中で皇室経済会議を開催できるのだろうか。ましてや、仮に物言いの河野太郎氏が総理になったとして、「受け取らない」をすんなり了承するだろうか。ひと波乱あるかもしれない。

   宮内庁を追い込んでいる状況のもう一つは、「国民の理解」ではないだろうか。冒頭の記事では、「2人で記者会見などの機会を設け」とある。皇籍を離脱する前に会見を開くことを宮内庁が仕込んでいるのだろう。というのも、眞子さまがこのまま会見も開かずにアメリカへ移住した場合、「多くの国民が納得し、喜んでくれる状況」(2021年2月23日・天皇陛下)にはならない。それどころか、多くの国民の嫌悪感を煽ることになりかねない。そこで記者会見を宮内庁はセットする訳だが、眞子さまも小室圭氏も会見を望んでいないのではないか。これまでの経緯を見ても、2人の現在の心境は憲法第24条「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」が最優先の「2人ファースト」ではないだろうか。国民の納得や祝福は念頭にない。

    2人の会見はどのような形式で行われるのかまだ定かになってはいない。おそらくリモート形式で、宮内庁記者からの質問もあらかじめ文書で提出されたものに違いない。時間も30分程度。とりあえず国を離れる前に国民にあいさつと報告をしたという事実を宮内庁としては残したいのだろう。いずれにしても今後、宮内庁の責任と皇室の有り様をめぐって国民の違和感がくすぶり続ける。(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒18日(土)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★能登の地震、地球は動く

★能登の地震、地球は動く

   きのうの地震は金沢でも揺れを感じた。16日午後6時42分ごろ、能登半島の尖端を震源とする強い地震があった=写真・上=。気象庁によると、震源の深さは13㌔で地震の規模を示すマグニチュードは5.1と推定されている。震源近くの珠洲市では震度5弱を、隣接の能登町では震度4を。このほか震度3の揺れは輪島市や新潟県、長野県でも観測された。金沢は震度2だった。きょうのテレビニュースによると、人的な被害は出ていない。また、珠洲市で開催されている奥能登国際芸術祭の展示作品などへの影響はいまのところないようだ。

   ことしに入って能登半島を震源とした震度1以上の揺れはきのう夕方を含めて36回(震度3以上は7回)発生している。2020年は11回(同2回)、2019年は9回(同1回)、2018年は3回(同0回)だったので、地震活動が活発化していることが分かる(tenki.jp「石川県能登地方を震源とする地震情報」)。

   能登半島の地震と言えば、2007年3月25日午前9時41分の能登半島地震を思い出す。輪島市などで震度6強、マグニチュードは6.9だった。本震の後、震度5弱の余震も続いた。被害は死者1人、負傷者356人、全壊家屋686棟、半壊家屋1740棟、一部損壊家屋2万6958棟に及んだ(Wikipedia「能登半島地震」)。震災の翌日、学生たちといっしょに復旧のボランティアに被災地に入ろうとしたが、余震があり危険として現地の対策本部から待ったがかかり、3日後に被災地に入ったことを覚えている。。

   能登半島地震について、北陸地方の地震活動に詳しい地震学者の尾池和夫氏(2007年当時・京都大学総長)は「ユーラシアプレート内部で発生したと考えられるが、あまり大きな地震の起きない珍しい場所での地震だ」と話し、そのうえで「ユーラシアプレートに乗っている西日本全体の地震活動が活発化している。今回の地震で、このプレート東端の能登半島沖まで、大きな地震が進行してきたことが明らかになった」と述べていた(2007年3月25日付・読売新聞Web版)。

   学生時代に読んだ小松左京のSF小説『日本沈没』では、ユーラシアプレートに乗っている能登半島など日本列島は太平洋プレートに押され沈没するが、最後に沈むのが能登半島という設定だったと記憶している。そんな印象から、能登は地震の少ない地域だと思っていたのだが。やはり地殻変動が起きているのか。地球は動く。

⇒17日(金)午後・金沢の天気  くもり時々あめ  

★北と南が「弾道ミサイル」を発射した日

★北と南が「弾道ミサイル」を発射した日

   北朝鮮がまたミサイルを発射した。NHKニュースWeb版(9月15日付)によると、岸防衛大臣は夕方、防衛省で記者団に対し「北朝鮮は、きょう午後0時32分と37分ごろ、内陸部から、少なくとも2発の弾道ミサイルを東方向に発射したもようだ」と述べた。その後、防衛省は追加でコメントを発表した。「発射された弾道ミサイルは、従来から北朝鮮が保有しているスカッドの軌道よりも低い高度(最高高度約50km程度)を、変則軌道で約750km程度飛翔し、日本海上に落下したものと推定されます。落下したのは、我が国の排他的経済水域(EEZ)内と推定されます」(防衛省公式ホームページ)

   さらに、読売新聞Web版(同)は「防衛省によると、ミサイルは能登半島の舳倉島の北方約300㌔の海域に落下したと推測される」と報じている。舳倉島から輪島市は約49㌔の距離。つまり、能登半島の約350㌔先のEEZ内に落下させたということだ。

     北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、菅総理は記者会見で、「北朝鮮が弾道ミサイルと判断されるものを発射した。本年3月25日以来、約6か月ぶりの弾道ミサイル発射は、我が国と地域の平和と安全を脅かすものであり言語道断だ。国連安保理決議にも違反しており、厳重に抗議するとともに強く非難する。我が国の排他的経済水域外の日本海に落下したと推定されるが、政府としては、これまで以上に警戒監視を強めていく」と述べた(総理官邸公式ホームページ)。

   韓国の中央日報Web版日本語(同)によると、文在寅大統領は15日午前、青瓦台(大統領府)で40分間余りにわたり中国の王毅外交担当国務委員兼外交部長と面会した。文大統領はこの席で「わが政府は中国を含めた国際社会とともに韓半島(朝鮮半島)の非核化と平和定着のために努力している」としながら「中国の変わりない支持をお願いしたい」と述べた。この後、文大統領は弾道ミサイルの発射に立ち会っている。

   韓国の聯合ニュースWeb版日本語(同)は、韓国が独自開発した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に初めて成功したと伝えている。発射実験は15日午後、国防科学研究所の総合試験場で文大統領をはじめとする政府・軍関係者の立ち会いの下で行われた。韓国のKBSニュースWeb版(同)=写真=は「世界でSLBMの打ち上げに成功したのは、米国、ロシア、中国、イギリス、フランス、インドに次いで我が国で7番目。文大統領は、SLBMの開発は北朝鮮の挑発に応じたものではなく、むしろ独自の軍事力増強計画に従っていると述べた。しかし、我々のミサイル兵器の増強は北朝鮮の挑発に対する明確な抑止力になり得ると強調した」と述べた。

   北朝鮮は今月11、12日に新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験を行った。今回、矢継ぎ早に弾道ミサイルを日本のEEZに打ち込んだ。北朝鮮の意図は、韓国のSLBMを意識した「先制パンチ」だったのか、あるいは中国の王毅部長と韓国の文大統領の会談に対する当てつけだったのか。南北が同じ日に弾道ミサイルを発射したことは、日本の防衛にとって警鐘であることだけは間違いない。

⇒15日(水)夜・金沢の天気     はれ

☆北の脅威はミサイルだけではない

☆北の脅威はミサイルだけではない

   前回のブログの冒頭で、「日本海側に住んでいると、北朝鮮の動向が気になってしまう」と述べた。それは、日本海側に住めば実感できる「4つの脅威」と言い換えてもよいかもしれない。

   その一つが「ミサイル」だ。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に着弾した=写真・上=。北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   今回の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(9月13日付)は、新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと伝えている。巡行ミサイルは低空飛行するためレーダーで捉えること難しいとされる。「1500㌔先の目標に命中した」と報じているので、能登半島の監視レーダーサイトだけでなく、ほかの自衛隊基地やアメリカ軍基地も射程内に入れているのだろう。

   2つ目の脅威が「軍事境界線」だ。能登半島の沖合300㌔にある大和堆はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる。その事例は、1984年7月27日に起きた「八千代丸銃撃事件」だ。能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。 

   3つ目が「難民」だ。能登半島の先端からさらに沖合50㌔に舳倉島(へぐらじま)がある。アワビやサザエの漁場でもあり、漁業の中継拠点でもある。この島の周囲は南からの対馬海流(暖流)と北からのリマン海流(寒流)がぶつかり、混じり合うところ。そのため海岸では、日本語だけでなく中国語やハングル、ロシア語で書かれたゴミ(ポリ容器、ペットボトル、ナイロン袋など)を拾うことができる。かつて、島の住民から聞いた話を覚えている。「島に住んでいると、よその国の兵隊が島を占領したり、大量の難民が押し寄せてきたり、そんなことをふと考え不安になることがある。本土の人たちには思いもつかないだろうけど」と。北朝鮮による拉致問題がクローズアップされ、当時の小泉総理が北朝鮮を訪問した2002年ごろの話だ。

   北朝鮮に有事が起これば、大量の難民が発生し、船に乗って逃げるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って舳倉島や能登半島に漂着する。そうした難民をどう受け入れるのか、中には武装難民もいるだろう。有事でなくても、いまでも日本海の沿岸には北の木造船の漂流や漂着が相次ぐ=写真・中=。(※写真は2017年11月に能登半島・珠洲市の海岸に漂着した木造漁船)

   そして、「拉致」だ。日本海を舞台に相次いだ。1977年に拉致1号事件が能登半島で起きていた。9月19日、東京都三鷹市役所の警備員だった久米裕さんが石川県能登町宇出津(うしつ)の海岸で失踪した。地元では今でも「宇出津事件」と呼ばれている。この年の11月15日、横田めぐみさんも同じ日本海に面した新潟市の海岸べりの町から姿を消した=写真・下=。拉致問題はめぐっては、2002年9月と2004年5月に日朝首脳会談が行われ、一部の拉致被害者が帰国した。その後、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との姿勢を変えていない。拉致は過去の話なのか。いまもどこかで。

⇒14日(火)夜・金沢の天気      くもり

★「弾道」から「巡航」に 核ミサイルの戦略転換なのか

★「弾道」から「巡航」に 核ミサイルの戦略転換なのか

   日本海側に住んでいると、北朝鮮の動向が気になってしまう。けさのテレビメディア各社のニュースによると、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(13日付)は、新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと伝えている。NHKニュースWeb版(同)によると、ミサイルが落下した場所は不明だが、労働新聞は「わが国の領土と領海の上空に設定された、楕円や8の字の軌道に沿って、2時間6分20秒飛行し、1500㌔先の目標に命中した」と報じている。

   ニュースを視聴して意外だったのは、労働新聞の記事は一面ではなく、いわゆる中面の記事だ。つまり、それほど大きな扱いではない。また、今回の発射実験に金正恩総書記が立ち会ったという記述もない。それにしても「1500㌔先の目標に命中」とは場所はどこだろうか。加藤官房長官はきょう午前中の会見で、日本の排他的経済水域(EEZ)などへの飛来は確認されていないと説明している(NHKニュースWeb版)。「1500㌔先の目標に命中」という表現は、明らかに日本を射程内に入れているという意図を込めていて不気味だが、本当に発射実験が行われたのだろうか。

   連想することがある。今月9日未明に北朝鮮建国73周年のパレードがピョンヤンで行われ、閲兵式の映像は国営の朝鮮中央テレビを通じて公開された。NHKニュースWeb版(9日付)によると、参加したのは民兵組織の「労農赤衛軍」や国営企業の労働者などで、正規軍である朝鮮人民軍の参加は伝えられていない。また、弾道ミサイルなどの大型の兵器は登場しなかった。閲兵式での金総書記の発言も伝えられていない。

   イギリスのBBCニュースWeb版(同)は「North Korea tests new long-range cruise missile」の見出しで論評している=写真=。要約すると、弾道ミサイルは国連安保理の制裁対象となっているが、巡航ミサイルはその対象ではない。巡行ミサイルは低空飛行するためレーダーで捉えること難しい。北の国営メディアは、巡航ミサイルの開発を「戦略的」と表現している。つまり、核弾頭を小型化して巡航ミサイルに搭載できるように今後実験を重ねるかもしれない。先月、IAEAは北が核兵器用プルトニウムを生産できる原子炉を再稼働させたようだと述べ、「深く厄介な」開発と呼んだ。

   もし、北が従来の弾道ミサイルではなく、巡航ミサイルに核弾頭を搭載して発射させる戦略的な開発を行っているとすれば新たな脅威だ。金氏がことし1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   今回の巡航ミサイル発射実験は、核兵器の小型・軽量化を目指しているのかもしれない。さらに気になるのは、これまでの人民軍のパレードを民兵組織のパレードに切り替えている。その意図はどこにあるのだろうか。国民総動員の戦闘態勢に入るという意思表示なのか。そして、金氏はアメリカのバイデン大統領との対話を求めているのだろうか。

⇒13日(月)午後・金沢の天気     はれ時々くもり

★トキが能登の空に戻るとき

★トキが能登の空に戻るとき

   環境省は国際保護鳥であるトキについて、新潟県佐渡島の以外でも放鳥を検討するため、生息環境を本年度から5ヵ年かけて調査する、とメディア各社が伝えている。トキの生息についてはこのブログでも何度か取り上げた。1970年1月、本州最後の1羽だったトキが能登半島で捕獲された。オスで「能里(のり)」の愛称があった。能里は佐渡のトキ保護センターに繁殖のため送られたが、翌1971年に死んだ。2003年10月、佐渡で捕獲されていたメスの「キン」が死んで、日本のトキは絶滅した。その後、同じ遺伝子の中国産のトキの人工繁殖が佐渡で始まり、2008年から放鳥が行われている。現在、野生で約450羽が生息している(2021年6月現在、環境省佐渡自然保護官事務所調べ)。

   順調に繁殖してきたトキだが、佐渡だけで定着が進んでも病気が広がるなどして一気に数が減ってしまうおそれがある。そこで環境省は、複数の場所で野生繁殖の取り組みを進める必要があるとして、2026年度以降で本州での放鳥を行う方針を決めたようだ。これまで佐渡のトキが能登をはじめ本州に飛来することはあったが、定着してはいない。

   では、どこで放鳥が始まるのか。やはり、本州最後の一羽が生息していた能登ではないだろうか。奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)には大小1000ヵ所ともいわれる水稲用の溜め池がある。溜め池は中山間地にあり、上流に汚染源がないため水質が保たれている。ゲンゴロウやサンショウウオ、ドジョウなどの水生生物が量、種類とも豊富である。これらの水生生物は疏水を伝って水田へと流れていく。

    また、奥能登はトキが営巣するのに必要なアカマツ林が豊富だ。また、リアス式海岸で知られる能登には平地より谷間が多い。警戒心が強いとされるトキは谷間の棚田で左右を警戒しながらドジョウやタニシなどの採餌行動をとる。豊富な食糧を担保する溜め池と水田、営巣に必要なアカマツ林、そしてコロニーを形成する谷という条件が奥能登にはある。

   佐渡の西側から能登は距離にして100㌔余りで、気象条件もよく似ている。トキのつがいを奥能登で放鳥すれば、第二の繁殖地になるのではないか、などと夢を描いている。(※写真は輪島市三井町で営巣していたトキの親子=1957年・岩田秀男氏撮影)

★権力者の孤独な幕引き

★権力者の孤独な幕引き

           菅総理が辞意を表明し、自民党総裁選(今月17日告示、29日投開票)に立候補しない意向を示した。新聞メディアは号外や夕刊紙で速報した=写真=。テレビ各社もこの日午後1時過ぎの官邸での菅総理の不出馬表明を生中継した。菅氏のコメントを聴く限り、「コロナ対策に自分のエネルギーを注ぎたい」「総裁選との両立は難しいからコロナに集中するために今回は出馬しない」との言い分で、とても分かりやすい。

          しかし、一人の国民、そして有権者として思うことは、最近の菅氏は「チカラ強さがない」という印象だ。昨年9月の就任時には携帯電話料金の値下げやデジタル庁の新設を打ち上げ、チカラ強かった。ところが、新型コロナウイルスの政府の対応が不十分だとの批判が相次ぎ、東京都議選(投票7月4日)で自民党は過去2番目に少ない33議席。総理のおひざ元である横浜市長選(同8月22日)でも、盟友と言われた小此木八郎氏(前国家公安委員長)を推しながら敗北を喫した。

   それは数字でも表れていた。読売新聞Web版(8月9日付)によると、世論調査(8月7-9日踏査)では菅内閣の支持率が昨年9月の内閣発足以降の最低を更新し、支持率35%だった。前回(7月9-11日調査)と6月調査は37%だった。不支持率は54%(前回53%)で、内閣発足以降最高だった。

   読売が世論調査を実施した8月上旬は、オリンピックで日本選手の金メダルラッシュに沸いていた。開催反対論を押し切った菅内閣に支持が集まっても当然とも思えた。本人もそう思っていたに違いない。ところが、内閣支持率は上がるどころか下落したのだ。

   政局は一気に揺らぐ可能性があった。読売の調査で支持率が下がると権力者は身震いする。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。菅内閣の支持率は9月ではおそらく「危険水域」、20%台に落ち込むだろう。数字をよく読んでいた本人もそれを悟った。その前に辞すことを表明した。それにしても、権力者の実に孤独な幕引きだった。

⇒3日(金)夜・能登の天気      あめ

☆「渋沢栄一」もいいが、むしろデジタル通貨

☆「渋沢栄一」もいいが、むしろデジタル通貨

        「現行の日本銀行券が使えなくなる」などを騙(かた)った詐欺行為(振り込め詐欺など)にご注意ください・・・。財務省が公式ホームページで呼びかけている。高齢者を狙い、「いまの1万円札が使えなくなるので、お宅にお邪魔して引き取ってあげましょう」などと、新紙幣の発行に便乗した詐欺が横行するかもしれない、あるいはすで横行しているかもしれない。新聞・テレビのメディア各社は新紙幣の印刷が今月1日から国立印刷局で始まったと報じている。(※写真は、国立印刷局東京工場で1日に行われた新一万円札の印刷開始式の模様=国立印刷局公式ホームページより)

   財務省と日銀が新紙幣の発行を発表したのは2019年4月だった。2024年度から1万円札のデザインが福沢諭吉から渋沢栄一になる。1984年に聖徳太子から福沢諭吉になったので、40年ぶりだ。5千円札は樋口一葉から津田梅子に、千円札は野口英世から北里柴三郎に。新しいお札はなんとか拝むことできるが、次なる40年後の新紙幣の発行時にはおそらく自身(現在、60代後半)はこの世にはいない。まだ手にしてはいないが、2024年度のお札が最後になるのかと思うといとおしくもなる。冗談はさておき、では、財務省と日銀はなぜ新札の発行を繰り返すのか。

   実は、ドルはもっと頻繁だ。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は1996年に発行した100㌦紙幣を2013年に新しくしている。ただ、このときは、ベンジャミン・フランクリンの肖像画はそのままに、背景のデザインを変更している。偽造を難しくするため、中央には青い3Dの帯を入れ、「100」の文字とインク壺の図柄には、傾けると色が赤銅色から緑色に変わる特殊なインクを使っている(2013年10月8日付・CNNニュースWeb版)。

   アメリカとの比較は単純にはできないが、アメリカは偽造防止を、日本の場合は「タンス預金」対策ではないかと、自身はうがった見方をしている。45兆円もあるといわれる「タンス預金」、とくに脱税目的のものをあぶりだすメリットがある。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、銀行を通じて国税がチェックに入る。

   もう一つはタンス預金を吐き出させることによる経済効果だ。日銀の統計によると、家庭や企業に出回る紙幣・貨幣は2020年末に約123兆円分。単純計算だと国民1人平均100万円弱。うち1万円札の流通量を年末ごとに比べると、近年は2~4%台の増加だったが、昨年は15年末以来の5%超の高い伸びになった(2021年2月21日付・朝日新聞Web版)。新札の発行を発表してからタンス預金の札束が動き始めているのだ。その視線で周囲を見渡すと、面白い現象が見える。ドイツ製などの海外の高級車が身の回りに最近増えているのに気づかないだろうか。

   ここからは憶測だ。財務省と日銀が描いている未来の通貨は「デジタル通貨」だろう。デジタル通貨にすれば、すべてのデジタルマネーの履歴やストック先などが把握できる。税金面での調査やマネーロンダリングの監視、金融犯罪などに対応できるという側面もあるだろう。実際、デジタル通貨では先行している中国は「デジタル人民元」の実証実験を始めている。「中国では脱税やマネーロンダリング、資本流出等が課題となっており、これをコントロールしたいとの狙いがあるのではないか」(2020年11月30日付・ロイター通信Web版日本語)との見方だ。

   しかし、日銀は「現時点でデジタル通貨を発行する計画はない」という立場だが、第1段階の実証実験を1年程度かけて行い、その結果も踏まえ、実現可能性を検証するための「第2段階」に移る方針をとっている(2021年2月20日付・NHKニュースWeb版)。コロナ禍の日常の変化で、人が触ったものには触らないという行為が定着し、現金を手にすることに違和感を持つ人も多くなっている。カード払いなどのキャッシュレス化も進んでいるが、デジタル通貨を進める絶好のタイミングではないだろうか。

⇒2日(木)夜・金沢の天気     くもり   

★「眞子さま年内結婚」というブーメラン

★「眞子さま年内結婚」というブーメラン

           不遜な言い方になるかもしれないが、皇室という環境は「世間知らず」ということではないだろうか。「世間」、いわゆる実社会での経験値がほとんどない。 秋篠宮殿下はそうした「世間知らず」を嫌ったのだろう、3人の子どもたちの教育も既定路線の学習院ではなく、なるべく世間の風に当たるように自由に育てた。ところが、殿下の意に反して、「世間知らず」がブーメランのごとく返ってきた。

           けさの読売新聞は「眞子さま年内結婚」と一面で報じ、他紙も夕刊でこのニュースを追いかけている=写真=。読売の記事は以下。秋篠宮家の長女眞子さま(29)が婚約の内定している小室圭さん(29)と年内に結婚されることが複数の関係者への取材でわかった。婚約や結婚の儀式は行わない方向で調整されている。儀式を行わずに結婚されれば、戦後の皇室で初めてとなる。関係者によると、秋篠宮さまは結婚を認められており、お二人は年内に婚姻届を自治体に提出される。ただ、新型コロナウイルス感染状況によっては来年にずれ込む可能性もある。

   上記の記事にあるように、婚約や結婚の儀式は行わない。憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。国会の決議が必要なのだ。ちなみに、令和3年度の皇族費の総額は2億6900万円(宮内庁公式ホームページより)。儀式を行わないのは、眞子さま問題が国会で議論されるのを避けるためだろう。これを判断したのは誰か。

   皇室がもっとも恐れているのは国際世論ではないだろうか。お二人の結婚に皇室が反対すれば、相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、そして日本の旧態依然とした姿だ、と世界のメディアが騒ぎ出す。問題は小室氏側にあったとしても、この批判は日本にとても不名誉なことになりかねない。おそらく眞子さまは皇籍離脱され、小室氏とアメリカで暮らすことになるだろう。「王室引退」を宣言したイギリスのヘンリー王子とメーガン妃はアメリカのカリフォルニア州サンタバーバラに住む。眞子さまと小室圭氏と合わせて2組のカップルは、アメリカメディアの格好の取材ネタになる。

   それはさておき、やはり小室問題は後々に残る。まずは小室氏の人柄だ。ことし4月8日、小室圭氏が母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した。小室文書では「録音」についての記述が何か所も出てくる。たとえば、2012年9月の実母と婚約者男性の婚約破棄に関わる記載では、13㌻と19㌻の「脚注」に「元婚約者の方の『返してもらうつもりはなかった』というご発言を録音したデータが存在します」「このやりとりについては私自身同席していて聞いています。又、録音しているので、元婚約者の方が『返してもらうつもりはなかった』とおっしゃったことは確認できています」と記している。

   以下憶測だ。小室氏は物的証拠を求める録音マニアなのだろう。ありていに言えば、「隠し録り」だ。こうした「隠し録り」や「隠し撮り」マニアの人物はデータをかざしながら、「ウソつくな、証拠がある」と相手を追いつめるタイプだ。おそらく、眞子さまとのこれまでの電話のやりとりなど膨大な音声データが蓄積されている。眞子さまをコントロールするために使われるのではないだろうか。

   もう一つ。『週刊文春』(4月29日号)が報じた「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」の記事だ。小室圭氏の母親が2002年に亡くなった夫(公務員)の遺族年金を受給するため、2010年に知り合った婚約者に内縁関係を秘するよう依頼したというメールの暴露だった。遺族年金は再婚または内縁関係になると受給資格を失うのが決まりなので、「これは年金詐取ではないか」と文春は問題提起した。

   不正受給の工作を疑わせる母親のメールなどについて、遺族年金を管轄する厚労省は警察と連携して犯罪性があれば立証してほしい。皇室に関わる案件を理由にした忖度はむしろ国民の反感を招く。

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