⇒ニュース走査

★「争点なき解散」「選挙のための選挙」なのか

★「争点なき解散」「選挙のための選挙」なのか

   自宅近くのガソリンスタンドに行くと、1㍑163円の表示が出ていた=写真=。今月7日付のこのブログでも書いたが、その時は1㍑161円だったので、1週間で2円値上がりしたことになる。資源エネルギー庁が発表した石油製品価格調査(10月13日付)によると、今月11日時点のレギュラーガソリン価格の全国平均は1㍑=162円となり、前週の160円から2円値上がり。1年前の134円と比較すると28円(20%)もの急激な値上がりだ。パンデミックの緩和などで世界で原油の需給がひっ迫しているようだ。このペースで値上げが続けば来月中には1㍑170円を超えるのではないか。1970年代のオイルショックを思い出す。

   きょう14日午後1時すぎからの衆院本会議の様子をテレビ各社がニュースで伝えていた。紫色のふくさに包んだ総理の解散詔書が松野官房長官から大島議長に伝達された。大島氏は「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」と解散詔書を読み上げ、衆院は解散した=写真・下、解散を報じる新聞各紙=。代議士は立ち上がりバンザイをした。解散のバンザイはいつもながらの光景だ。

   それにしても、今月4日に岸田総理が就任してから10日後の解散だ。衆院解散を受けて、政府は午後5時すぎに臨時閣議を開き、今月19日公示、31日投開票の選挙日程を決めた。戦後の衆院選挙は27回行われているが、議員の任期満了後に投票が行われるのは今回が初めて(10月14日付・NHKニュースWeb版)。とすると、選挙のために選挙をやるようなイメージだ。もちろん、コロナ禍の影響でここまで日程がもつれ込んだ事情は理解できる。

   では、岸田総理はこの選挙を何を問うのか。午後7時からの記者会見で、今回の衆院選挙を「未来選択選挙」とし、「新型コロナ対策と経済対策に万全を期した上で、コロナ後の新しい経済社会を創りあげなければならない。コロナ後の新しい未来を切りひらいていけるのは誰なのか国民に選択いただきたい」と支持を呼びかけた(10月14日付・NHKニュースWeb版)。「未来選択選挙」、この言葉で選挙の大義名分を感じることができるだろうか。「新しい資本主義」と同じで、具体的で戦略的なビジョンが見えて来ない。

   前回総選挙は2017年10月22日だった。このときは北朝鮮が弾道ミサイルの発射や核実験を行うなど情勢が緊迫化し、政治空白ができることに懸念はあったものの、安倍総理は少子高齢化が進む中で社会保障問題を争点に掲げ、「国難突破解散」と銘打って勝負をかけた。選挙に勝ち、それまで2度見送ってきた消費税率の引き上げを2019年10月から「10%」とした。

   小泉総理はさらに強烈だった。与党も野党も反対していた郵政三事業(郵便、簡易保険、郵便貯金)の民営化をめぐって、「今回の選挙はいわば郵政選挙。郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか、それを国民に問いたい」と2005年8月に「郵政解散」を行い、9月11日の選挙では与党が3分の2を占め圧勝した。郵政民営化は2007年10月スタートした。

    上記の事例と比べれば、「未来選択選挙」や「新しい資本主義」は言葉遊びのようにも聞こえる。選挙で国民に問うことは一体何なのか。有権者が一票に託す争点は何なのか。さらに、候補者は一体何を選挙で訴えるのだろうか。31日選挙の投票率も気になる。有権者が「これは選挙のための選挙だ」と勘繰るようになれば、前回と比べ大幅ダウンは避けられないだろう。

⇒14日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆ノーベル平和賞の遺伝子

☆ノーベル平和賞の遺伝子

   第二次世界大戦後長らく続いたアメリカとソビエト連邦のいわゆる「冷戦」を終結に導き、ソ連で最初で最後の大統領として知られるミハイル・ゴルバチョフ氏がノーベル平和賞を受賞したのは1990年だった。中距離核戦力の全廃条約に調印したことや、グラスノスチ(情報公開)とペレストロイカ(再建)を掲げてソ連の民主化を進めたことが受賞理由だった。1991年に辞任に追い込まれたが、同時に賞金などを元手にゴルバチョフ財団を創設し、独立系新聞の創設を支援してきたことなど、後年、何度か出演した日本の民放テレビで語っていた。

   きのう8日、ノーベル平和賞のニュースをテレビで視聴していて、その記憶と同時に「ノーベル賞ストーリー」というものを感じた。

   ノルウェーのオスロにあるノーベル平和賞選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にフィリピンのインターネットメディア「Rappler(ラップラー)」代表マリア・レッサ氏と、ロシアの新聞「Novaja Gazeta(ノヴァジャ・ガゼータ)」の編集長ドミトリー・ムラトフ氏の2人を選んだと発表した(「ノーベル平和賞2021」プレスリリースWeb版)=写真=。ノヴァジャ・ガゼータ紙こそ、ゴルバチョフ氏がファンドで支援した新聞だった。以下、プレスリリースを引用する。

   ドミトリー・ムラトフ氏は1993年創刊の独立系新聞「ノヴァジャ・ガゼータ」を立ち上げた一人。24年間、同紙の編集長を務めている。権力に対して批判的な論調を崩さず、権力の汚職、警察の暴力、不法逮捕、選挙詐欺の汚職など重要な記事を発表し、現在のロシアで最も独立性の高いメディアと評価されている。一方で、権力サイドからは嫌がらせ、脅迫、暴力、殺人にいたるさまざま迫害を受けていて、創刊から現在まで、チェチェンでの戦争に関する政府への批判記事を書いた女性記者ら同紙の6人のジャーナリスト記者が殺害されている。殺害と脅迫にもかかわらず、編集長のムラトフ氏は新聞の独立性を守り続けている。

   プレスリリ-スは、フィリピンのドゥテルテ大統領とロシアのプーチン大統領の名前を記していないが、両国での人権侵害や報道の自由が危うくなっていると指摘している。フィリピンでは麻薬犯罪の取り締まりで容疑者の超法規的な殺害が続き、ドゥテルテ大統領はこれを容認している。マリア・レッサ氏はこれを正面から批判している。また、ロシアではプーチン政権に批判的なジャーナリストへの迫害が相次いでいる。今回受賞した2人は政権に妥協しない報道の自由を死守している。その姿勢を高く評価したものだ。

   冒頭で「ノーベル賞ストーリー」と述べたが、ソ連の民主化を毅然と推し進めたゴルバチョフ氏。その賞金で支援した独立系新聞社の報道の自由を守る戦い。この部分を切り取って考えると、まさに「ノーベル平和賞の遺伝子」ではないかと想像してしまう。こんなことも考える。今回のノーベル賞受賞でフィリピン、ロシア政府がそれぞれに2人に対して圧力を強めるかもしれない。ノーベル賞というスポットライトを当てることで、国際世論を喚起することの効果をノーベル選考委員会は期待しているのかもしれない。

   プレスリリースはこう締めくくっている。「Without freedom of expression and freedom of the press, it will be difficult to successfully promote fraternity between nations, disarmament and a better world order to succeed in our time. This year’s award of the Nobel Peace Prize is therefore firmly anchored in the provisions of Alfred Nobel’s will.」(意訳:表現の自由と報道の自由がなければ、国家間の友愛、軍縮、そしてより良い世界秩序を促進することは困難である。したがって、今年のノーベル平和賞はアルフレッド・ノーベルの意志に合致している)

⇒9日(土)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

★首都圏で震度5強、ドラマ『日本沈没』のリアル

★首都圏で震度5強、ドラマ『日本沈没』のリアル

   昨夜寝がけにスマホでニュースを見ると、「首都圏で震度5強の地震」とあり、関連ニュースを見ていると寝付けなかった。東京、群馬、埼玉、千葉、神奈川の5都県で計32人が重軽傷を負い、埼玉県草加市では建物火災があり、千葉県の富士石油袖ケ浦製油所では未明に火災が発生したと報じられている。東京都足立区では、緊急停止した日暮里・舎人ライナーの列車(6両編成)が脱輪。高架上で止まった列車から乗客100人が降り、駅員らの誘導で最寄りのまで歩いて移動した。午後10時41分の発生なので、夜中の停電でパニック状態、そして多くの人は「次は首都直下型」が頭をよぎったことは想像がつく。

   けさ気象庁公式ホームページをチェックすると、震源の深さは75㌔、地震の規模を示すマグニチュードは5.9と推定される。東京23区内で震度5強を記録したのは東日本大震災が発生した2011年3月11日以来10年ぶりとのこと。気象庁は、今後1週間ほどは最大震度5強程度の地震に注意するよう呼びかけている。

   能登半島でも先月、9月16日にマグニチュード5.1、震度5弱の地震があった。そして、29日には日本海側が震源なのに太平洋側が揺れる「異常震域」という地震があった。震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震に、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した。このところの頻発する地震に不気味さを感じる。

   あさって10日から、TBS系の番組、日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』(午後9時)が始まる=写真、TBS公式ホームページより=。小松左京のSF小説『日本沈没』が原作。かつて映画で見たことがある。日本を襲う巨大地震という未曽有の事態に立ち向かう人々の姿を描くドラマではあるものの、今回首都圏を襲った震度5強という現実があるだけに、いくらドラマとは言え、視聴する気にはなれない。金沢に住んでいてもそう感じる。ましてや、首都圏の人々は恐怖心を呼び起こすことになりはしないか。リアルすぎる。

   さらに気になるのは、このドラマが30言語に字幕翻訳され、動画配信サービス「Netflix」で世界配信される。おそらく世界の人たちは現実に日本で地震が頻発していることを知れば、ドラマというより、ドキュメンタリー、あるいは現実的な未来予測というふうに思い込んで視聴するだろう。「日本沈没」というワードが独り歩きして、経済や政治、外交などさまざまなカタチで影響を与えるかもしれない。

   TBSがあさってから予定通り放送をスタートさせるのか、あるいは、首都圏だけでなく東日本大震災の被災地の人々のことを考えてしばらく延期するのか注目したい。

⇒8日(金)朝・金沢の天気      はれ 

☆ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ

☆ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ

   近所のガソリンスタンドに行き、「レギュラー161円」の表示看板=写真・上=を横目に見ながら給油した。先月までは「158円」だったのが一気に3円値上がり。ニュースでは、石油関連施設が集中するアメリカ南部をハリケーンが直撃して原油の先物価格が上昇している。また、OPECやロシアなど産油国が生産量を据え置いたこと、そして、ヨーロッパでは冬の燃料在庫を積み増する動きもあって、ガソリンの需給がひっ迫しているようだ(10月6日付・NHKニュースWeb版)。年内に1㍑170円を超えるのだろうか。石油価格の高騰は1970年代のオイルショックを思い出し、なんともキナ臭い。

   日本海にもキナ臭さが漂う。能登半島沖のEEZ内の漁場「大和堆」で、北朝鮮当局の船が航行しているのが確認されていて、ことし6月末には、そのうちの1隻が携帯型の対空ミサイルを装備していたことを海上保安庁が確認した。ミサイルは旧ソビエトが開発した「SA-16」と同じタイプで、射程は4.5㌔に及ぶ。海上保安庁は、現場海域で操業する日本の漁船の安全確保に向け、警戒レベルを上げて対応している(同)。地元紙も一面などで大きく報じている=写真・下=。

   対空ミサイルを装備してこの海域に出ているということは、海洋権益を主張する手段、つまり、他国の哨戒艇や漁船などを追い出すためではないかと想像してしまう。1984年7月、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。

   さらにキナ臭いのが中国だ。BBCニュースWeb版日本語(10月5日付)によると、台湾当局は4日、中国軍のJ-16戦闘機34機、核攻撃能力のあるH-6爆撃機12機などが台湾が実効支配する東沙諸島の近くを飛行したと発表した。その後、さらに戦闘機4機が確認されるなど、この日に台湾付近を飛行した中国軍機は計56機にも上った。中国は今月1日以降、延べ150機以上の軍機を、台湾が設定した防空識別圏内で飛行させている。アナリストらは、台湾の国慶日(10月10日)を前に、中国が台湾の蔡英文総統に警告を発した可能性があると分析している。

   BloombergニュースWeb版日本語(10月7日付)によると、ここ数週間で中国恒大集団の危機が一段と深まっているが、危機は中国の不動産業界全体に波及している。初のドル建て債デフォルト(債務不履行)が起きた。高級マンションや都市再開発プロジェクトを手掛ける花様年控股集団は、4日が期限だった社債2億570万㌦相当を償還できなかった。5日には同社を「一部デフォルト」に格下げする動きが相次いだ。緊張感の高まる中国不動産業界で次にトラブルを起こすのはどこか。

   ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ。ブログを書きながら周囲を見渡すと、嗅覚がすこぶる敏感になる。

⇒7日(木)夜・金沢の天気    はれ

☆新総理初会見を視聴して記した「Good job !」メモ

☆新総理初会見を視聴して記した「Good job !」メモ

   岸田総理の就任後初めての記者会見をきのう4日午後9時からNHKが中継していたのでメモを取りながら視聴していた=写真=。そのメモを見ながら、会見内容で再度チェックする。「早すぎる」と書いたメモが、今月14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票との選挙日程だった。それまでメディア各社が26日公示、11月7日投開票などと予想を報じていたので、「前倒し」は意外だった。それにしても、内閣発足10日で衆院解散に突入する、とは。

   4人が立候補した自民党総裁選(9月17日告示・29日開票)はNHKや民放各社がこぞって討論会の模様を報道するなど、「メディアジャック」現象ともいえるほどに注目された。直近の政党支持率では、日経新聞の世論調査で自民47%、立憲民主8%(9月23-25日調査)、テレビ朝日の調査で自民が49%、立憲民主9%(9月18、19日調査)と自民が支持率を伸ばしている。「鉄は熱いうちに打て」との選挙ポリシーなのだろうか。

   「新たな資本主義って何だ」とメモをしたのが、経済政策での「成長と分配の好循環」の説明だった。岸田氏は総裁選の論戦で「富む者と富まざる者の格差が生まれ、コロナ禍でさらに広がった。これからは富める一部の人間だけでなく、広く多くの人の所得を引き上げること」などと述べていた。中間層の所得の引き上げを通じて、GDPの半分以上を占める個人消費の活性化につなげる経済政策との意味で受け止めていたが、そのような単純明快な話ではないらしい。新たな大臣ポストとして「新しい資本主義担当」を置き、ヤル気だ。富の再配分を目指した、たとえば富裕税の創設などが頭の中にあるのだろうか。

   関連メモで「中国の共同富裕?」とも書いている。中国の習近平総書記が所得格差の是正と称して、不動産会社やIT企業、高所得の俳優などの富裕層に警告を発し、不動産大手「中国恒大集団」などはデフォルト寸前に追いやられている。岸田氏の「成長と分配の好循環」が中国の「共同富裕」のようにならないことを願う。

   「Good job !」とメモ書きしているが、人工知能など先端科学技術の研究に大規模な投資を行うとした「科学技術立国の実現」。そして、地方からデジタルの実装を進め、都市との差を縮める「デジタル田園都市国家構想」だった。本来ならばおそらく地方都市への移住政策だろう。それをあえて移住とは言わず、「デジタル田園都市国家構想」と称したところが見事、「Good job !」だ。

   これは個人的な願いだが、日本のデジタル化を本気で推進するのであれば、選挙のデジタル投票とデジタル法定通貨をぜひ実現してほしいものだ。

⇒5日(火)午前・金沢の天気    はれ

☆極超音速ミサイル 北が着々と進める戦略兵器開発

☆極超音速ミサイル 北が着々と進める戦略兵器開発

   前回のブログで北朝鮮が弾道ミサイル1発を日本海に打ち上げた(9月28日)との報道を取り上げた。きょう29日付の労働新聞Web版によると、打ち上げたのは新開発の極超音速ミサイルだと写真付きで掲載している。「국방과학원 새로 개발한 극초음속미싸일 《화성-8》형 시험발사 진행」の見出しの記事=写真=によると、極超音速ミサイルの名称は「火星-8」。北部のチャガン(慈江)道から発射した。金正恩党総書記の側近のパク・チョンチョン党政治局常務委員らが立ち会った。

   記事では極超音速ミサイルについての詳細な記載はない。「令和2年版防衛白書」によると、アメリカや中国、ロシアはすでに開発していて、弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる。弾道ミサイルとは異なる低い軌道を、マッハ5を超える極超音速で長時間飛翔すること、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になると指摘されている。

   また、記事では極超音速ミサイルの開発について、ことし1月5-12日で開催した朝鮮労働党第8回党大会で提案された戦略兵器開発(5ヵ年計画)におけるトップ5の主要なタスクの一部と位置付けている。確かに、この8回党大会で金総書記は、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及していた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   北朝鮮は各地の代表からなる党最高人民会議をきのう28日からピョンヤンで開催している。ということば、きのう打ち上げた極超音速ミサイルは、今月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイルの発射と合わせて、戦略兵器開発は順調に進んでいるとの党幹部向けのアピールの狙いもあるのかもしれない。

   それにしても、日本の防衛システムは北朝鮮が次々と開発を進める戦術兵器に対応できるのか。弾道ミサイルは楕円軌道を描きながら標的の上に落ちてくるので迎撃が可能とされている。が、極超音速ミサイルは上下左右に飛び方を変えながら標的に向かうので迎撃が困難とされる。極超音速ミサイルの実用化までには時間がかかるとしても、日本の防衛システムが翻弄されることだけは間違いない。

⇒29日(水)午後・金沢の天気     はれ

★弾道ミサイル発射 文大統領への揺さぶりメッセージか

★弾道ミサイル発射 文大統領への揺さぶりメッセージか

   また、北朝鮮の脅威だ。けさ北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表した(防衛省公式ホームページ)。NHKニュースWeb版(28日付)によると、政府高官は「発射は1発と見られるが、落下した場所も含めて現在確認を進めている」と述べた。また、政府関係者は、日本のEEZ(排他的経済水域)の内側に落下した可能性は低いという認識を示した。

   北朝鮮は今月15日にも日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射している。落下地点は、能登半島の舳倉島の北方約300㌔の海域と推測される(同・読売新聞Web版)。舳倉島から輪島市は約49㌔の距離。つまり、能登半島の約350㌔先のEEZ内だった。

   前回の発射でさらに脅威を感じさせることが報道された。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていた。15日の弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。けさ発射された弾道ミサイルは1発だが、移動式ミサイル発射台をさらに進化させたものだったのか、どうか。

   北朝鮮はきょう28日、各地の代表を集めて最高人民会議を開催すると予告している(9月28日付・NHKニュースWeb版)。韓国の文在寅大統領は22日の国連総会での演説で、「終戦宣言こそ朝鮮半島に『和解と協力』の新しい秩序を作る重要な出発点だ」と述べ、休戦状態となっている朝鮮戦争の終戦宣言を、南北とアメリカの3者か、中国を加えた4者で行うことを提案した(9月22日付・同)。これに対し、北朝鮮の金正恩党総書記の妹、金与正党副部長は24日、「終戦宣言は悪くない」として、「長期間続いている朝鮮半島の不安定な停戦状態を物理的に終わらせ、相手に対する敵対視を撤回する意味での終戦宣言は興味深い提案であり良い発想」とする談話を出した(9月24日付・聯合ニュースWeb版日本語)。

   以下、憶測の話になる。開催される最高人民会議で金党総書記が「文大統領からの終戦宣言の提案を喜んで受ける」と表明したら、今後朝鮮半島の情勢はどのように変化していくだろうか。休戦協定の当事者であるアメリカは「先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言」が原則だ。逆に、文大統領は非核化交渉の入口として、先に終戦宣言をすることを提示している。金党総書記の狙いは、弾道ミサイルを発射したぞ、それでも終戦宣言をするんだなと文大統領に揺さぶりをかけたのではないか。アメリカと韓国の亀裂も狙ってのことだ。弾道ミサイルのきょうの発射は、文大統領に対する強烈なメッセージではないのか。

⇒28日(火)午前・金沢の天気      くもり

★皇室の一時金制度そのものが問われている

★皇室の一時金制度そのものが問われている

   はやり宮内庁は大きな勘違いをしている。なぜ皇室経済会議を開催しないのか。NHKニュースWeb版(25日付)はこう伝えている。皇族が結婚などによって皇室を離れる場合、品位を保つことを目的に「一時金」が支給されることが皇室経済法で定められていて、眞子さまのような「内親王」の場合、1億5250万円が上限となっている。これについて眞子さまは、小室さんの母親の金銭トラブルに対する批判的な世論などを踏まえ、受け取りを辞退される意向を示されていて、宮内庁が、政府や内閣法制局とも連絡を取りながら対応を検討してきた。その結果、宮内庁として眞子さまへの一時金は支給しない方向となり、眞子さまの結婚の日程などとあわせ、来月上旬にも発表できるよう調整を進めている。これによって、総理大臣が議長となって一時金の支給額を決定する「皇室経済会議」は開かれない見通し。

   憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。皇籍離脱の一時金は皇族費であり、皇室経済法第6条に基づき、皇室経済会議を開く必要がある。本来は一時金の金額の認定などする場ではあるが、「受け取らない」場合であっても、その理由について了承を得る必要がある。会議メンバーは総理大臣、衆参正副議長、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8人だ。

   今回の一時金支給の辞退は皇室の歴史においても異例だ。NHKニュースWeb版はこう伝えている。一時金をめぐっては、昭和22年に11宮家の51人が皇籍を離脱した際、軍に所属していた男性皇族11人に支給されなかった例があるが、戦後、結婚によって皇室を離れた女性皇族に支給されなかった例はない。皇室経済会議は眞子さまが辞退したので、「あ、そうですか」と会議を開かない理由が納得いかない。なぜ、辞退されたのか問うてほしい。その上で、「皇室を離れる場合、品位を保つことを目的」としている一時金の意義を論議すべだ。皇室にとって必要のない、あるいは形骸化している制度であれば、この際、一時金制度を廃止すべきだろう。皇室経済会議を開いてその議論をなぜしないのか。

   ましてや、冒頭の記事で眞子さまの辞退の理由は「小室さんの母親の金銭トラブルに対する批判的な世論などを踏まえ」とされている。小室圭氏の母親の疑惑は厚生労働省や司法が判断する別次元の話だ。この件を、一時金で配慮するという眞子さまの感覚そのものがずれている。あるいは、一時金を辞退するので、小室の母親の疑惑はなかったことにしてほしいとのお気持ち、あるいは国民に向けたメッセージであるならば、それは論外ではないだろうか。

   2017年9月の婚約内定会見から4年、国民の信頼の失墜を招いた責任は宮内庁にあるだろう。その役割はもう終わった。全国に700ある天皇家にまつわる陵墓を守るのが宮内庁の大きな役目の一つとされる。それに専念すればよいのではないか。

(※写真は、「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」疑惑を報じた週刊文春=2021年4月29日号)

⇒25日(土)夜・金沢の天気    あめ  

☆「終戦宣言は悪くない」 北の思惑

☆「終戦宣言は悪くない」 北の思惑

   前回のブログの続き。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(24日付)よると、北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正党副部長は24日、韓国の文在寅大統領が国連総会演説で朝鮮戦争の終戦宣言を提案したことについて、「終戦宣言は悪くない」として、「長期間続いている朝鮮半島の不安定な停戦状態を物理的に終わらせ、相手に対する敵対視を撤回する意味での終戦宣言は興味深い提案であり良い発想」とする談話を出した。朝鮮中央通信が伝えた。

   このニュースの見て、「アフガニスタン」の二の舞を想像した。2001年9月月11日の同時多発テロで、アメリカは「テロとの戦い(War on Terrorism)」を錦の御旗に掲げ、当時のブッシュ大統領はアフガニスタンで政権を握っていたタリバンがテロ事件の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンをかくまっていると非難。アメリカ主導の有志連合軍がアフガンへの空爆を始め、タリバン政権は崩壊する。しかし、ビン・ラディンを捕捉できなかった。テロとの戦いはオバマ大統領に引き継がれ、2011年5月、パキスタンのビン・ラディンの潜伏先を奇襲し殺害。オバマ氏は緊急声明で「Justice has been done」と発した。

   バイデン大統領は今年4月、同時多発テロ事件から20年の節目にあたる「9月11日」までにアフガンから完全撤退すると表明した。その後、8月に入り、アメリカ軍の撤退を見越して、タリバンが首都カブールに進攻、日本時間の16日に勝利宣言をした。一方、2014年から政権を担ってきたガニ大統領はまさに「敵前逃亡」で出国し、政権は事実上、崩壊した。

   朝鮮戦争の休戦協定が成立したのは1953年7月27日だ。「最終的な平和解決」、つまり平和協定を締結するまでは戦争行為と武力行使を停止すると規定した書面への書名だった。協定に署名したのは国連軍を代表したアメリカと、中国、北朝鮮だった。韓国側は当時の李承晩大統領があくまでも朝鮮半島の統一を主張して休戦に反対して署名に加わらなかった。しかし、署名しなかったことが後々平和的解決への足かせとなる。

   しかし、冒頭の金与正氏の談話はこれまでの北朝鮮の方針転換ではないかと自身は読んでいる。前回のブログでも述べたが、2018年と2019年に行われた延べ3回の米朝首脳会談で、アメリカ側は「先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言」との原則だった。一方、2018年4月に行われた初の南北首脳会談で、文大統領は非核化交渉の入口として、先に終戦宣言をすることを提示していた。北朝鮮とすれば、アメリカと直接交渉するより、韓国と共同で終戦宣言を出して「平和的統一」を世界にアピールする方が在韓米軍を撤退させる近道だと考えた。

   そうなると、アメリカ世論もアフガンのケースと同様にいつまで韓国に軍隊を駐在させる必要があるのかと撤退の声が高まる。北朝鮮の狙いはそこにあるのではないだろうか。

(※写真は、2018年5月26日に行われた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の2度目の首脳会談を伝える聯合ニュースWeb版)

⇒24日(金)夜・金沢の天気       はれ

★朝鮮戦争の終戦宣言は「核あり統一」の布石か

★朝鮮戦争の終戦宣言は「核あり統一」の布石か

   韓国の文在寅大統領の国連総会での演説には正直、「また同じことを繰り返すのか。くどい」という印象がぬぐえない。NHKニュースWeb版(9月22日付)によると、文大統領は「終戦宣言こそ朝鮮半島に『和解と協力』の新しい秩序を作る重要な出発点だ」と述べ、70年近く休戦状態が続いている朝鮮戦争の終戦宣言を、南北とアメリカの3者か、中国を加えた4者で行うことを改めて提案した。ことしは韓国と北朝鮮が国連に同時に加盟してからちょうど30年で、文大統領としては来年5月までの任期中に朝鮮半島の平和と安定に向けて成果を出そうと各国に支持を求めた形だ。

   文氏が国連総会で「終戦宣言」を持ち出すのは3度目だ。文氏は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と2018年4月に板門店で初の南北首脳会談で「完全な非核化」の約束を取り付けた=写真=。6月にはシンガポールで初の米朝首脳会談が開かれ、共同声明で板門店宣言を再確認し、北朝鮮は完全な非核化に向け取り組むと記された。会談後に当時のトランプ大統領は米韓合同軍事演習を凍結すると発言した。その年の9月の国連総会で文氏は「非核化のための果敢な措置が実行され、終戦宣言につながることを期待する」と述べた。

   その後に原則論が違いが浮き彫りになる。トランプ氏の原則は先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言だった。ところが、板門店で文氏は金氏に対して、非核化交渉の入口として、先に終戦宣言を提示していた。金氏もその提案に同意した。亀裂が生じたのは2019年2月、ハノイでの2回目の米朝首脳会談だった。会見でトランプ氏は、金氏が非核化の前に経済制裁の解除を求めたので、それは無理だと先に席を立ったと述べた。同じ年の6月には板門店で3回目が持たれたが、成果には至らなかった。

   そして、2020年6月、南北首脳会談の板門店宣言の合意で建設した南北連絡事務所を北朝鮮が爆破した。それでも、文氏は、その年の9月、オンラインでの国連総会演説で「終戦宣言こそ、朝鮮半島での非核化とともに恒久的な平和への道を開く扉になる」と繰り返した。そして3度目が冒頭の演説だった。文氏の演説の後、アメリカのバイデン大統領が就任後初めての国連演説に臨み、北朝鮮とイランの非核化を引き続き追求すると明らかにした。文氏が提案した終戦宣言には言及していない。

   北朝鮮は9月に入り、長距離巡航ミサイルや移動式弾道ミサイルなどの発射実験を相次いで行っている。韓国も、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を文氏の立ち合いのもとで行っている。両国の軍事競争が不可解だ。「核なき統一」は日本もアメリカも国際社会も望むところだ。ところが、文氏の演説は統一が最優先であって、核は後回し、つまり「核ありの統一」のように聞こえる。油断ならない。

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