⇒ニュース走査

★呆気にとられる

★呆気にとられる

   このところ呆気にとられるニュースが多い。以下いくつか。18歳以下の子どもたちに10万円相当を給付する事務経費に1200億円を要すると報道されていた。所得制限は設けるものの、18歳以下の国民を対象に5万円の現金給付に加え、5万円分のクーポン券を来春までに配布する。現金給付にかかる事務費は300億円で、クーポン券での給付によって900億円の追加費用がかかるとのこと。政府、与党は「ばらまきにしないための必要経費」との立場だが、まさに「愚策」ではないか。

   そもそも、クーポン券に有効期限を設定することで、消費喚起という意味で現金よりもムダのない給付が可能としているが、もともと使う予定だった現金が貯蓄に回ることになるので、現金給付でもクーポン券配布でも消費喚起の効果はまったく同じだ。900億円のムダ。呆気にとられる。

   北陸に住んでいると配置薬の「富山の薬」はありがたい。ただ、その薬が信用できなくなると話は別だ。医薬品製造販売の「廣貫堂」(富山市)がこのほど自主回収を始めた14製品のうち、4製品で製造販売承認書の記載と異なる添加物を使っていたことが、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」が公表した資料で明らかとなった。さらに4製品は品質検査の承認規格に適合しておらず、1製品は原薬の受け入れ試験記録が見つからないため試験を実施したかどうかも確認できないなど、ずさんな製造だった。「廣貫堂」は「薬の富山」のトップメーカーだ。同じ富山市のジェネリック医薬品製造「日医工」もことし3月、品質試験の際の記録の不備などが発覚し、高血圧薬など75製品を自主回収している。

   「薬クソ売」という少々下品な響きの言葉がある。効き目のない薬を高く売ってボロ儲けしている業者を皮肉る意味で使う。さらに、「薬九層倍」という四字熟語がある。薬の売値は原価に比べて非常に高く、利益が多いことから、巨大な利益を得ることのたとえ(三省堂「現代新国語辞典」)。呆気にとられる。   

   日本大学の前理事長が脱税の疑いで逮捕されるなど、私立大学のガバナンスが問われている。理事長だった田中英壽容疑者は1億2000万円の所得を隠し、5300万円を脱税した疑いで先月29日に逮捕され、東京地検特捜部と東京国税局は改めて前理事長の自宅を捜索するなど捜査を進めている(12月3日付・NHKニュースWeb版)。

   ことし9月に東京地検による理事への強制捜査が始まって3か月近くにわたっているものの、大学側による記者会見が一度も開かれていない(同)。この報道には呆気にとられた。ホームページではコメントを掲載しているが、記者会見を実施してない。これでは、大学組織としての説明責任を放棄しているに等しい。組織そのものが機能不全の状態に陥っているのではないか、という見方もできる。大学運営は今後どうなるのか。

⇒3日(金)夜・金沢の天気   あめ

☆IOCバッハ会長の「悪あがき」

☆IOCバッハ会長の「悪あがき」

   これはIOCバッハ会長の悪あがきだ。IOC公式ホームページをチェックすると、「IOC Statement on the situation of Peng Shuai」の見出しで、先月21日に引き続き、今度はIOCチームが中国の女子プロテニス、彭帥(ペン・シュアイ)選手とテレビ電話で話したと掲載している。しかし、不思議なのは会話した人物が明記されていない。「We share the same concern as many other people and organisations about the well-being and safety of Peng Shuai.」で文章は始まるが、この「We」が誰と誰なのか。11月21日付の文章では「Today, IOC President Thomas Bach held a video call with three-time Olympian Peng Shuai from China.」とバッハ会長の名前が記されていた。一体どのようなIOCチームが彭選手と話したのか。

   記事では、「私たちは、彭選手の幸福と安全について、他の多くの人々や組織と同じ懸念を共有しています。これが、ちょうど昨日(12月1日)、IOCチームが彼女とビデオ電話を行った理由です。私たちは彼女の幅広いサポートを提供し、彼女と定期的に連絡を取り合い、すでに1月の個人的な会合を持つことで合意しました」など記している。この記事を読めば、おそらく誰もが「演出めいている」と感じる違いない。「IOC Statement」として公式に発表するのであれば、IOCの誰と誰が彭選手と連絡を取って無事を確認したのか、実名を公表すべきだろう。11月21日のときは、バッハ会長のほかに中国オリンピック委員会の李玲蔚副主席とIOC選手委員会のエマ・テルホ委員長(フィンランド)の2人も参加したと報じられていた。この2人なのか。

   IOC声明に先立って、WTA(女子テニス協会)のスティーブ・サイモンCEOは1日、公式ホームページで声明を発表し「中国の指導者たちはこの非常に深刻な問題に信頼できる方法で対処していない」などとして「香港含む中国で開催されるすべての大会を直ちに中止する」ことを明らかにした。さらに声明では「彭選手の居場所は明らかになったが、彼女が安全で自由かということや、検閲されたり強制や脅迫されていることに深刻な疑問を抱いている」としたうえで、現在の状況を踏まえて「来年、中国で大会を開催した場合、すべての選手やスタッフがリスクに直面する」などとして大会を開催した場合の安全性に懸念を示した(12月2日付・NHKニュースWeb版)。

   冒頭で「IOCバッハ会長の悪あがき」と述べたが、WTAの事例にならって、ほかのスポーツ団体や参加予定国が北京オリンピックを辞退することにならないか、おそらくIOCと中国は懸念したのだろう。再度バッハ会長がテレビ電話で会話するとさらなる悪評が立つ。そこで、IOCチ-ムは彭選手と連絡を取り合って無事を確認していると演出を図ったのだろう。ホームページでの掲載もバッハ会長の指示、あるいは中国側の依頼だろうが、むしろ逆効果ではないか。

⇒2日(木)夜・金沢の天気   はれ

☆「オミクロン株」がやって来る

☆「オミクロン株」がやって来る

   民族の生き残りをかけて戦ってきた歴史のある国はパンデミック下の対応も的確だと感心させられる。イスラエルのことだ。報道によると、南アフリカで確認された新たな変異ウイルス「オミクロン株」はイギリスやドイツなどヨーロッパでも感染の確認が相次いでいる。こうした中でイスラエルは水際対策を強化するため、今後14日間は特別な許可がない限りすべての外国人の入国を禁止、また、帰国者はワクチン接種を終えていても3日間の自宅隔離を義務付けることを決めた(11月28日付・NHKニュース)。

   イスラエルは世界に先駆けてワクチン接種(ファイザー社製)を開始したことでも知られる。そして、3回目のワクチン、いわゆる「ブースター接種」にいち早く着手したのもスラエルだった。ワクチン接種の効果でことし5月から6月にかけては、感染者数がゼロに近づいた=写真・上、11月28日付・ジョンズ・ホプキンス大学「コロナダッシュボード」より=。ところが、7月以降は変異ウイルス「デルタ株」による感染再拡大に見舞われる。そこでワクチン接種後の時間経過とともに効果が減少することを問題視し、7月末からは60歳以上を対象にブースター接種を開始する。それでも、9月をピークに第4波が訪れた。現在は収まってはいるが、そこにオミクロン株が登場した。なかなか収束しない中で今回、外国人の入国制限を決断したのだろう。

   日本の現状はどうか。現在はイスラエルの5月から6月かけての状況と似ている=写真・中、同=。が、時間が経過すればワクチン効果が薄れる。その間隙をぬって第6波がやってくるだろう。日本の水際対策は大丈夫なのか。政府は今月8日から、ビジネス目的の入国規制緩和や、新規留学生および技能実習生の受け入れ再開が実施している。これまで、ワクチン接種を終えたビジネス来訪者には入国後10日間の待機を求めていたが、3日間に短縮。留学生や技能実習生を対しても、受け入れの大学や企業や団体による入国者の行動管理を条件に認めた。インバウンド観光客の入国は現在も認めていない。

   新たなオミクロン株の感染拡大によって、政府は新たな措置として今月27日から南アフリカのほか8ヵ国(エスワティニ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、レソト、モザンビーク、マラウイ、ザンビア)からの邦人帰国者や在留資格を持つ外国人入国者に対して、指定宿泊施設での10日間の待機を義務付けた。はたしてこれで十分なのか。

    日本と同じ島国のイギリスでは感染拡大の勢いが現在も増している=写真・下、同=。さらに、国内でオミクロン株の感染が確認された。BBCニュースWeb版日本語(11月28日付)によると、ジョンソン首相は緊急記者会見で、国民には店舗や公共交通機関でのマスクの着用の義務化、さらに入国する人すべてを対象に2日以内にPCRの検査を受けて陰性だと確認されるまでは隔離を義務づけるなどの新たな対策を打ち出した。

   イギリスは昨年12月に感染拡大が急増し、クリスマスの直前になって規制緩和を中止するという事態に陥った。ことしはクリスマスの前までにはオミクロン株によるさらなる感染拡大を何とか収めたいと必死なのではないか。

⇒29日(月)午後・金沢の天気     はれ

☆「天下の愚策」マイナンバーカード普及に1兆8千億円

☆「天下の愚策」マイナンバーカード普及に1兆8千億円

   これも大いなる愚策ではないだろうか。マイナンバーカードの普及を図るために総務省はカードの取得などの段階に応じて最大2万円分のポイントを付与する制度を創設する費用として1兆8000億円を今年度の補正予算案に計上する方針を示した(11月25日付・NHKニュースWeb版)。

   記事によると、ポイントはカードの取得時に5000円分、健康保険証としての利用を開始した際と国からの給付金を受け取るための「公金受取口座」の登録をした際にそれぞれ7500円分が付与される仕組み。いわゆる「マイナポイント事業」だ。「デジタル時代のパスポート」と政府は盛んにPRしているものの、その普及率は全人口の39.5%、5003万枚だ(11月16日現在、総務省発表)。政府は2022年度末までにほぼ全ての国民に行き渡らせるという目標を掲げているが、普及は加速していない。

   自身は3年ほど前に取得したが、その利用価値というものを実感したことがない。いったい何のためにマイナンバーカードが必要なのか国民は理解していないのではないだろうか。メリットを分かりやすく説明する必要があるのではないか。それをせずに、1兆8000億円もの大金をつぎ込んでまで普及させたいという政府の腹づもりは何なのか、と逆に疑ってしまう。

   マイナンバーカードの持つことのメリットとして、運転免許証に代わる身分証明書になるということがよく言われる。これをメリットに掲げる必要はあるだろうか。16歳以上で運転免許証を持っている人は全体の74.8%(2019年末月現在・内閣公式ホームページ「運転免許保有者数」)。外出では常に持ち歩くので、金融機関や役所などで手続きをする際に本人確認や住所確認を求められた場合、運転免許証を出す。また、住民票や印鑑証明書などがコンビニで発行可能になるとも言われるが、「それは便利だ」と思う人はいるだろうか。使用頻度はそれほどないからだ。

   巨額な資金を投じるより、具体的で前向きなメリットを打ち出すべきではないか。たとえば、新型コロナウイルスの感染が拡大しているときでも行動の制限を緩和できる「ワクチン・検査パッケージ」制度の証明書としてマイナンバーカードを使う。選挙の投票でマイナンバーカードをかざしてデジタル投票ができるようにする。日銀がこれから実証事業を開始する「デジタル法定通貨」のキャッシュカードとしてマイナンバーカードを使う。国民に「デジタル時代のパスポート」を予感させる使い方をしてほしいものだ。(※写真は、政府広報オンライン「マイナンバーカード」より)

⇒25日(木)夜・金沢の天気     あめ

★「自分ファースト」な都議に引導を渡す人

★「自分ファースト」な都議に引導を渡す人

   このブログでも何度か取り上げている、「自分ファースト」な東京都議、木下富美子氏のこと。無免許運転とひき逃げした疑いで書類送検されていたが、今月19日、東京地検は木下氏を道路交通法違反の罪で罰金を求める略式起訴ではなく、在宅起訴とした、と報道されている。被告となった木下氏はことし5月から7月の間、7回にわたって無免許運転を繰り返したことが常習性が高く悪質と判断された。ただ、当て逃げの過失運転致傷や事故不申告の送検容疑については不起訴処分となった。起訴状によると、その理由について「事故対応など諸般の事情を総合的に考慮した」と説明されている(11月19日付・時事通信Web版)。

   木下氏をめぐって都議会では7月23日と9月28日の2度にわたって辞職勧告決議を可決している。しかし、木下氏は辞職勧告に応じず、「体調不良」を理由に議会を長期欠席。ようやく、今月9日に都議選以来4ヵ月ぶりに登庁した。記者団に対して、「(議員を)ぜひ続けて欲しいと言う声がある」などとして、議員辞職はしない考えを示した(11月9日付・朝日新聞Web版)。

   辞めない、頑固一徹な「自分ファースト」な都議だ。冒頭の在宅起訴で今後はどうなるのか。公職選挙法では禁錮以上の実刑になれば失職(11条)となるが、書類送検・起訴段階では失職せず、仮に有罪判決となっても執行猶予がつくと失職しない。おそらく、今回の在宅起訴で失職に至るまでの罪にはならない。では、いったい誰が木下氏に辞めるようにと引導を渡すのか。

   東京都の小池知事がきょう21日、およそ1ヵ月ぶりに都庁での公務に復帰したとニュースになっている。 10月27日から過度の疲労で入院し、今月2日の退院後も自宅で静養しながらテレワークで公務をこなしていた。都庁に復帰した小池都知事は記者団の取材に応じた。報道によると、在宅起訴された木下氏について、「人生長いわけですから、今の状況を理解できない人ではないと私は考えている」「彼女自身が決することを私は確信している」とも語った(11月21日付・時事通信Web版)。

   おそらく、引導を渡せるのはこの人しかいない。木下氏のツイッター(7月3日付)=写真=は、小池知事が都議選の応援に駆けつけた様子を写真つきで紹介している。「まだ、体調万全でない中、本当に本当にありがとうございます」と。多くの有権者が知事が駆けつけてくれた木下氏に声援を贈ったことだろう。そのおかげもあり当選した。この際、知事は本人に直接、「人生は長い」と諭すべきだろう。木下氏にとっても、都知事からの助言で踏ん切りがついたと辞すれば、そのいさぎよさが認められ、再チャレンジのチャンスも生まれてくるかもしれない。

⇒21日(日)夜・金沢の天気       くもり

★”phase down” か “phase out”でもめたCOP26

★”phase down” か “phase out”でもめたCOP26

   イギリスのグラスゴーで開催されていた国連の気候変動対策会議「COP26」が13日夜(日本時間14日朝)に閉幕となった。成果文書「グラスゴー気候協定」を採択した。時折、ニュースなどをこの会議をチェックしてきたが、ポイントはいくつかあった。BBCニュースWeb版の記事(13日付)=写真=などからまとめてみる。

   「It’s been a long two weeks of wrangling at COP26 in Glasgow to reach a deal.」で始まるBBCの記事は、「COP26は合意に至るまでに長い2週間を要した」と合意に至るまでの議論の白熱ぶりを表現している。そもそも会期は12日までの予定だったが1日延長となった。注目する数字が「1.5度」だった。世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求すると成果文章で明記された。2015年のパリ協定で各国が合意したこの「1.5度目標」の実現には、世界全体の温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比で45%削減する必要がある。さらに、2050年にほぼゼロに達するまで排出量を削減し続けることになる。

   そこで議論の焦点となったのが石炭対策だ。世界の年間の二酸化炭素排出量の約4割が火力発電など石炭を燃やすことで発生している。気候変動対策に関する国連の合意文書で石炭対策が初めて明記されたことになる。ただ、その表現をめぐって土壇場で議論が交わされた。文書案では当初、石炭の使用を「phase out(段階的に廃止)」という表現になっていた。しかし、合意採択を協議する最後の全体会議でインド代表がこれに反対した。飢餓の削減に取り組まなくてはならない発展途上国にとって、石炭使用や化石燃料を段階的に廃止する約束するなどはできないと主張。インドの主張を中国も支持し、石炭産出国のオーストラリアも賛同した。議論の挙句に「phase down(段階的な削減)」という表現になった。

   BBCニュースはこの土壇場のドラマをこう述べている。議長国イギリスのアロク・シャーマCOP26議長は、「この展開について、謝ります」と全体会議を前に謝罪。「本当に申し訳ない」と述べた。ただし、合意全体を守るためには、不可欠な対応だったと説明すると、声を詰まらせて涙ぐんだ。この議長の様子に、各国代表は大きな拍手を送った。

   これも議長国イギリスの提案だった。2040年までにガソリン車の新車販売を停止し、全てをゼロエミッション(排出ゼロ)車とする提案に24ヵ国が合意したが、日本やアメリカ、中国などの主要国は提案には参加しなかった。電気自動車(EV)への急速な移行を掲げたイギリスの思惑は外れた。ただ、EV普及のため、充電インフラの整備や車体価格の引き下げなどを目指す取り組みには日米独などが参加を表明した(11日付・時事通信Web版)。一方、航空機の温室効果ガス排出量を削減する宣言には、日本は米英仏などと共に署名。炭素を排出しない航空燃料の開発・導入を目指す(同)。

   全体を通じて議長国イギリスの大胆で急進的な提案が目立った。18世紀半ばに石炭利用によるエネルギー革命を起こしたのはイギリスだった。次なるゼロエミッションの産業革命もイギリスが興すと意気込んでいるのかもしれない。

⇒14日(日)夜・金沢の天気      はれ

☆日本は「カーボンニュートラル先進国」になれるのか

☆日本は「カーボンニュートラル先進国」になれるのか

   選挙に勝って勢いがついたのだろうか。イギリスで開かれているCOP26の首脳会合で岸田総理が演説し、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度から46%削減するなどとした日本の目標を説明した。そのうえで、先進国が途上国に年間1000億㌦を支援するとした目標に届いていない現状を踏まえ、これまで日本政府が表明した5年間で官民合わせて600億㌦規模の支援に加え、今後5年間で最大100億㌦の追加支援を行う用意があると表明。「気候変動という人類共通の課題に日本は総力を挙げて取り組んでいく決意だ」と強調した(2日付・NHKニュースWeb版)。

   去年10月26日、当時の菅総理は臨時国会の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と声高に述べた。さらに、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力するとし、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではない」と強調した。そして、石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換し、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、脱炭素社会に向けてのイノベーションを起こすため、実用化を見据えた研究開発を加速させると述べていた。

   二人の総理が力強く脱炭素を宣言したことで、日本は「カーボンニュートラル先進国」の評価が国際的に高まるかもしれない。ただ、矛盾も見えている。経産省がまとめた第6次エネルギー基本計画が先月22日に閣議決定された。第5次エネルギー基本計画(2018年7月)と比較する。第5次では2030年度の電源構成を火力56%(LNG27%、石炭26%、石油3%)、原子力22-20%、再生可能エネルギー(水力、太陽光、風力など)を22-24%としていた。それが、第6次では火力42%(LNG20%、石炭19%、石油2%、水素・アンモニア1%)、原子力20-22%、再生可能エネルギーが36-38%となっている。

    この数字を見て、再生可能エネルギーの割合が高すぎると感じる。2030年までに建設可能な再生可能エネルギーとなると、水力と風力よりも太陽光が手っ取りばやいだろう。しかし、これまではFIT(固定価格買取制度)で建設が順調に伸びてきたが、これまでのペースさらに伸びるだろうか。また、原子力の割合も高いのではないか。「20-22%」というのは、第5次エネルギー基本計画をベースにした試算でこれを実現するには、原発27基が必要だとされている。現実に再稼働している原発は10基だ。カーボンニュートラルのための原発再稼働は地域住民の理解を得られるとは思えない。

   カーボンニュートラルに反対するつもりはまったくない。ただ、日本の取り組みに実現可能性はあるのかどうか、社会的な混乱を招かないのか。

⇒2日(火)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

★選挙の「出口調査」や「開披台調査」が終わる日

★選挙の「出口調査」や「開披台調査」が終わる日

   きのう午後10時すぎに衆院選挙石川1区の開票場の金沢市営中央市民体育館(同市長町3丁目)に行ってきた=写真・上=。独自の「開披台調査」をするためだ。「かいひだいちょうさ」、聞き慣れないこの調査は新聞・テレビが行う開票調査の一つ。投開票日のその日には、投票所で出口調査を、開票所では開披台調査を実施する。開披台とは開票場で投票箱から票を出して、候補者ごとに仕分けをする台のこと。出口調査で大差がついていれば、NHKなどテレビ各社は午後8時からの選挙特番で「当選確実」を打てるのだが、10ポイント以内の小差ならば開披台調査で当落を見極めることになる。

   石川1区は新人4人が立候補し、自民の小森卓郎氏、立憲民主の荒井淳志氏、日本維新の会の小林誠氏が競っている。 小森氏の出身は神奈川県。1993年に旧大蔵省に入り、出馬の直前まで財務官僚を務めていた。2011年から3年間は石川県の総務部長などの経験もあり、51歳の若さだ。前職の馳浩氏が不出馬を宣言していたので、自民党は今年9月に公募で選出した。ただ、県の総務部長を務めた経験があるとはいえ、有権者にとってはいわゆる「落下傘候補」だ。荒井氏は元新聞記者で27歳、小林氏は44歳で金沢市の市議を4期連続で当選している。

   地元メディア各社は選挙終盤の情勢調査で「小森氏一歩リード」の報道をしていた。そこで、この目で確かめようと、開票場の現場を訪れた。メディア各社の調査員が10数人いた。アルバイトの学生調査員を記者が指揮している。学生たちは開票作業を行う職員の手元を双眼鏡でのぞき込み、誰に投票されているか確認する=写真・下=。「コモリ、コモリ、アライ、コバヤシ、コモリ、アライ・・・」などと声を出すと、その声がワイヤレスで集計場にいる受け手の担当に伝わり、その場で集計する仕組みだ。調査員は双眼鏡でのぞく場所を次々と変えていく。開票は投票会場から持ち込まれた投票箱を開けて作業をするので、双眼鏡でのぞく場所を変えることで地域的な偏りをなくす。

   自身は双眼鏡を持参せず、その調査員の横に行き、その声をさりげなく聞く。さらに別の調査員の声を聞く。これを4、5回繰り返すと。誰が実際に票を獲得しているのか判断できる。この「独自調査」の結果では、「コモリ」がおおむね4割だった。

   テレビ局を辞して2005年4月から大学で勤務。ことし3月で退職したが、この間、国政選挙になるとメディアの知り合いから出口調査や開披台調査の学生アルバイトの動員を依頼された。退職したこともあって、今回は断った。自身の興味で今回は開票場に足を運んだが、心では「このようなアナログな投票はもう止めて、デジタルに切り替えるべき」との思いを持っている。デジタル投票にすれば、午後8時の投票終了をもって一気に開票結果が出る。デジタル庁が新設されて、その可能性が出てきた。出口調査や開披台調査が終わる日が来る。

⇒1日(月)朝・金沢の天気      あめ

☆シナリオありきの「記者会見もどき」

☆シナリオありきの「記者会見もどき」

         秋篠宮家の眞子さんは、きょう26日に婚姻届を提出し、午後2時から「小室眞子さん」として圭氏ともに記者会見に臨んだ。テレビ各社が会見の模様を特番体制でテレビ中継していた。会見場には宮内庁の記者クラブに常駐する記者のほか、雑誌や海外メディアの記者らも出席していた。違和感を感じたのは、冒頭で二人が結婚の気持ちを述べた後、質疑応答の時間はなどはなく会見は10分余りで終わったことだった。

  メディア各社の報道によると、記者会見の形式がきのう急きょ変更となった。当初は会見で二人が記者側が事前に提出した質問と関連質問も受ける予定だったが、質疑応答には口頭で答えないことに変更となった。事前の質問については、文書回答となった。これでは、記者会見の意味がない。NHKニュースWeb版(26日付)によると、宮内庁の説明では、文書回答とする理由について、事前質問の中に、誤った情報が事実であるかのような印象を与えかねないものが含まれていることに眞子さんが強い衝撃を受け、強い不安を感じたため、医師とも相談して文書回答にすることを決めたようだ。また、眞子さんは一時、会見を取りやめることも考えたが、ギリギリまで悩み、直接話したいという強い気持ちから、会見に臨んだという。

   率直な感想を言えば、これを「記者会見」とは言わない。「記者会見もどき」だろう。記者会見は記者がその場で質問をして、会見者がどう応えるのか、それは筋書きのないドラマである。記者からの5つの質問はすべて文書回答というのは作られたシナリオありきの会見だ。もし、記者からの質問にその場で返答していれば、実に価値のある会見だったに違い。   

   会見で小室圭氏は金銭問題について言及し、「私の母と元婚約者の方との金銭トラブルという事柄については詳しい経緯は本年4月に公表した通りです」と述べ、「元婚約者の方には公表した文書で書いたように、これまでも折に触れて私と私の母からお礼を申し上げており、感謝しております」と語った。この発言にも違和感がのこった。

   ことし4月8日、小室圭氏は母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した。いわゆる小室文書では「録音」についての記述が何か所も出てくる。たとえば、2012年9月の母と婚約者男性の婚約破棄に関わる記載では、13㌻と19㌻の「脚注」に「元婚約者の方の『返してもらうつもりはなかった』というご発言を録音したデータが存在します」「このやりとりについては私自身同席していて聞いています。又、録音しているので、元婚約者の方が『返してもらうつもりはなかった』とおっしゃったことは確認できています」などと記している。小室文章を読んで、なんと誠意のない書き方かとむしろ疑問に感じた。

   こうした「隠し録り」や「隠し撮り」の人物は録音データをかざしながら、「ウソつくな、証拠がある」と相手を追いつめるタイプだ。おそらく、眞子さんとのこれまでのスマホなどでの会話などは音声データとして膨大な量が蓄積されているに違いない。将来、眞子さんをコントロールするために使われるのではないだろうか。「あとのき、確かに君はこう言った。録音がある、だからヤレよ」という風に。(※写真は、NHK総合の記者会見の中継番組より)

⇒26日(火)夕方・金沢の天気      はれ

☆いまさら「敵基地攻撃能力」とは、日本海側の憂い

☆いまさら「敵基地攻撃能力」とは、日本海側の憂い

   まるで衆院選挙のスタートを告げる「号砲」のようなタイミングだ。公示の日のきのう19日午前10時15分ごろ、北朝鮮は朝鮮半島東部の新浦付近から、弾道ミサイルを東方向に発射した。うち1発は最高高度50㌔程度を変則軌道で600㌔程度飛翔し、日本海に落下した。落下地点は日本のEEZ外と推定される。弾道ミサイルは潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の可能性がある。もう1発の飛翔距離等については、引き続き分析中(19日付・防衛省公式ホームページ)。

   これを受けて、午前10時24分、総理指示が出された。「1.情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと 2.航空機、船舶等の安全確認を徹底すること 3.不測の事態に備え、万全の態勢をとること」(同・総理官邸公式ホームページ)。そのとき岸田総理は何をしていたのか。同日午前9時45分にJR福島駅に到着。同10時20分に福島市の「土湯温泉観光案内所」で街頭演説。11時15分にJR福島駅で報道各社のインタビューに答えている(20日付・朝日新聞「首相動静」)。10時24分に総理指示を出した以降も仙台市で街頭演説。官邸に戻ったの午後3時3分だ。本来ならば総理指示を出した時点で即刻、官邸に引き返すべきではなかったか。一国の総理の危機感というものを感じることができるだろうか。

   朝鮮労働党機関紙の労働新聞(20日付)をチェックすると、「조선민주주의인민공화국 국방과학원 신형잠수함발사탄도탄 시험발사 진행」(国防科学研究所が新型潜水艦発射弾道ミサイルを試験打ち上げ)の見出しで写真付きの記事を掲載している=写真・上=。炎を吹き出しながら海上を上昇していく弾道ミサイルの様子や、海面に浮上した潜水艦など、写真は計5枚=写真・下=。記事では、5年前にSLBMを初めて発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功し、国防技術の高度化や水中での作戦能力の向上に寄与すると書いている。

   岸田総理は官邸に帰り、午後4時05分から国家安全保障会議に出席。同31分からの記者団のインタビューに対し、「わが国と地域の安全保障にとって見過ごすことができないものだ。すでに国家安全保障戦略などの改定を指示しており、いわゆる『敵基地攻撃能力』の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するよう改めて確認した」と述べた(19日付・NHKニュースWeb版)。

   敵基地攻撃能力は、ミサイル発射基地に対する攻撃能力を備えることで、発射を思いとどまらせる抑止力を強化する狙いがある。しかし、今回のようなSLBMの場合、あるいはことし9月15日の鉄道を利用した移動式ミサイル発射台からの弾道ミサイルの場合、どのように「発射基地」を特定し攻撃能力を備えるのか。さらに、変則軌道型の弾道ミサイルに日本のミサイル防衛システムが対応できるのか。すでに、北朝鮮の「国防技術の高度化」の方が勝っているのではないか。日本海側に住み、海の向こうの北朝鮮と向き合う一人としての憂いだ。

⇒20日(水)午前・金沢の天気    あめ