⇒ニュース走査

★現場を行く~金沢の団地の下で土砂崩れ

★現場を行く~金沢の団地の下で土砂崩れ

   この現場の様子を見て、昨年7月3日に静岡県熱海市で起きた土石流を思い起こした。濁流が住宅地を飲み込み23人の死亡が確認された。金沢のこの現場では家屋や人的被害は出ていないが、土砂崩れ現場の上の住宅地の人々は眠れない日々を送っているに違いない。

   報道によると、今月1日午前2時10分ごろ、金沢市東長江町の団地の下の斜面が高さ40㍍、幅20㍍で崩落した=写真、撮影2日午後4時16分=。市は近くのおよそ30世帯に避難指示を出していたが、2日午後4時に解除した。また、斜面の崩落の影響で周辺の206世帯が断水していたが、2日午前7時までに解消した。

   現場は急斜面で2008年に石川県の土砂災害特別警戒区域に指定され、金沢市がハザードマップで注意を呼びかけていた。金沢の外環状道路山側幹線という国道159号の道路沿い。自身も乗用車で能登へ行く際によく利用する道路でもあり、ニュースを知って現場がイメージできた。

   この地域の地層は「大桑層(おんまそう)」と呼ばれる砂が固まってできた地盤で、貝の化石などが出土することで知られるが、一方で水を含むと緩みやすい。2017年7月1日に県内に大雨洪水警報が出されたときも、この近くで土砂崩れがあったと記憶している。

   では、今回は大雨もなかったのになぜ土砂崩れが起きたのか。地盤を専門とする大学の研究者がテレビ局のインタビューに答えていた。1月中旬に降った雪が解けて土が水を含んだ、あるいは、宅地造成からおよそ50年経ていて、団地の上の貯水施設からの配水管パイプが老朽化して水が漏れている可能性があると指摘だった。これを裏付けるように、別のテレビ局のインタビューに住民が土砂崩れの前日、現場周辺の道路を通った際にへこみを感じていたこと、以前、現場付近の配管から水が漏れていたことなどを証言していた。

   「災難の先触れはない」とよく言われるが、今回は予兆があった。国道沿いでもあり、行政には早期の復旧を願いたい。

⇒3日(木)午前・金沢の天気    くもり時々みぞれ

☆現場を行く~海上の空で消えたF-15戦闘機~

☆現場を行く~海上の空で消えたF-15戦闘機~

   その現場は、源義経が都落ちして平泉に向かうとき、武蔵坊弁慶が杖で義経を叩いて検問をくぐり抜けたという歌舞伎『勧進帳』などの伝説で知られる「安宅の関」(石川県小松市)の沖合だった。31日午後5時30分ごろ、航空自衛隊小松基地を離陸したF-15戦闘機一機が基地から西北西におよそ5㌔離れた日本海上空でレーダーから機影が消えた。この戦闘機にはパイロット2人が搭乗していた。戦闘機から異常を知らせる無線連絡やパイロットが脱出する際に発せられる救難信号は感知されていない。パイロットはまだ見つかっていない。

   きょう午後2時ごろ、「安宅の関」近くの海岸に行き、捜索の様子を眺めた。目視で4隻の船が捜索に当たっていた。一隻は海上自衛隊の潜水艦救難艦「ちはや」だった=写真・上=。潜水艦救難のためにDSRV(深海救難艇)、ROV(無人潜水装置)など装備している。確認できたもう一隻は海上保安庁の巡視艇だった=写真・下=。また、海岸沿いでは基地の隊員数人が海岸を見回っていた。機体の残骸などが打ち上げられていないか、確認しているようだった。航空自衛隊は1日付の報道発表で、浮遊物として、航空機の外板等の一部と、救命装備品の一部を回収したと発表している。

   同じく1日付の報道発表「小松基地所属F-15戦闘機の航跡消失について(第3報)」で2人の搭乗員について氏名を公表している。「搭乗員(前席)は、航空戦術教導団飛行教導群司令1等空佐、田中公司52歳、搭乗員(後席)は同飛行教導隊1等空尉、植田竜生33歳」。「飛行教導群」は戦闘機部隊に対する技術指導を行うベテランパイロットが所属している。

   岸防衛大臣の会見(1日午前)では、すでに事故調査委員会を航空幕僚監部に設置。「今回の場合は純粋に訓練に向かう途中の単独の事故ということであり、そういった意味での飛行停止は求めていない」と語っていた。が、報道によると、きょう2日、小松基地の石引司令がF-15戦闘機の事故後初めて小松市役所に宮橋市長を訪ねて事故の件を謝罪し、「すべての訓練飛行を見合わせている」と説明した。

⇒2日(水)夜・金沢の天気      あめ

☆佐渡金山を深堀りすれば

☆佐渡金山を深堀りすれば

   去年秋に佐渡の金山を見学した。佐渡市で開催された「GIAHS(世界農業遺産)認定10周年記念フォーラム」(10月29-31日)のエクスカーションだった。中学生の歴史教科書にも出て来るように、佐渡金山は徳川幕府の直轄の天領として奉行所も置かれ、金銀の採掘のほか小判の製造も行われていて幕府の財政を支えた。

   ガイドの女性の案内で坑道に入って行き、最前線で鉱石を掘る「金穿大工(かなほりだいく)」と呼ばれた採掘のプロたちの説明があった。坑道で使われた器具の中で、「水上輪(すいしょうりん)」も興味深かった。長さが「9尺」(2.7㍍)ある円錐の木筒で、内部にらせん堅軸が装置されている。上端についたハンドルを回転させると、水が順々に汲み上げられて、上部の口から排出される仕組みになっている。紀元前3世紀にアルキメデスが考案したアルキメデス・ポンプを応用したものだという。

   水上輪は坑道の安全を守るために必要だった。地下に向かって鉱石を掘れば掘るほど水が湧き出るため、放っておけば坑道が水没する恐れがあった。そこで、手動のポンプである水上輪を導入し、水を汲み上げて排水溝に注いだ。ただ、ハンドルを回すのは相当な力仕事だった。水上輪だけでなく、桶でくみ上げる作業と合わせて坑道の排水作業は「水替人足(みずかえにんそく)」の仕事だった。

   そこで、ガイドの女性に質問した。「水替人足はどんな人たちだったのですか。島流しの人たちですか」と。すると、ガイドは「そうおっしゃる方もいますけど、佐渡金山は流刑の地ではありません。水替人足は無宿人(むしゅくにん)と呼ばれた人たちが行いました。無宿人は凶作や親から勘当を受けるなどさまざまな理由で故郷を離れ江戸や大阪にやってきた人たちで、江戸後期(安政7年=1778)から幕末までの記録で1874人が送られてきたそうです」と。重い罪で島流しになった「流人」とは異なる人たちだった。「そうなんですね。認識不足で申し訳ありません」と詫びた。

   幕府の鉱山開発の拠点となった佐渡へは日本各地から山師、測量技術者、商人などが集まり人口も急増した。食糧需要が増えて島の農民はコメに限らず換金作物や消費財の生産で潤った。豊かになった島の人々は武士のたしなみだった能を習った。いまでも島内の能舞台は33ヵ所あり、国内の能舞台の3分の1は佐渡にある。

   そうした佐渡金山について、岸田総理は28日、ユネスコ世界文化遺産の候補として推薦する方針を表明した。推薦期限となるあす2月1日に閣議了解を得て、2023年の登録を目指す。今回の推薦について、韓国は佐渡金山で「強制労働」があったと反発している。佐渡金山の申請対象は、韓国側の主張と直接関係ない「江戸時代まで」に限定している。登録までには紆余曲折も予想されるが、歴史遺産が対立の火種にならないよう願いたい。

⇒31日(月)午後・金沢の天気      はれ

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

    ことしに入って7回目のミサイル発射だ。松野官房長官はきょう午前9時、臨時会見を行った。総理官邸公式ホームページに掲載された会見動画によると、北朝鮮はきょう7時52分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発を東方向に発射。最高高度はおよそ2000㌔、飛しょう時間は30分、およそ800㌔を飛しょうし、日本海側のEEZ外に落下したものと推定される。付近を航行する航空機や船舶および関係機関への被害などは確認されていない。

   気になるのは、最高高度が2000㌔ということは、打ち上げ角度を高くする、いわゆる「ロフテッド軌道」型の弾道ミサイルということだ。2017年5月14日に発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)級の新型弾道ミサイルは、2000㌔を超える高度に達した上で800㌔飛しょうさせている。さらに、同じ年の11月29日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級新型弾道ミサイルは4000㌔を超える高度に達し、1000㌔を飛しょうした。ここから推測できることは、北朝鮮はICBMの発射の地ならしを始めたのではないか、ということだ。

   北朝鮮は今月19日に開いた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していたICBMの発射実験や核実験については見直しを検討するとしている(1月27日付・NHKニュースWeb版)。

   このブログでは日本海側に住む者の一人の危機感として、北朝鮮のミサイル発射の動向をその都度記している。この1ヵ月で7回の発射は異常で、ミサイルの多様化には異様さを感じる。今月5日は極超音速の弾道ミサイルだった。11日の弾道ミサイルも極超音速型で、ミサイルから分離された弾頭が1000㌔先の目標に命中した。14日には鉄道から短距離弾道ミサイル2発を発射。17日に戦術誘導弾として弾道ミサイル2発を日本海上の島に「精密に打撃」した。25日にも長距離巡航ミサイル2発を「9137秒飛行し1800㌔先の島に命中」させている。6回目の27日は2発の戦術誘導弾を標的の島に「精密に打撃」、爆発威力は「設計上の要求を満たした」ものだった。

   そしていよいよ大陸間弾道ミサイル発射を再開させ、「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」(2017年9月、アメリカのトランプ大統領の国連総会演説)のステージに逆戻りするのか。

(※写真は、2020年10月の北朝鮮軍事パレードで登場した新型ICBMと見られる弾道ミサイル、令和4年1月・防衛省発表資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒30日(日)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

★狙い撃ちの北朝鮮ミサイルに「遺憾」で済むのか

★狙い撃ちの北朝鮮ミサイルに「遺憾」で済むのか

   大寒のこのごろは、「水沢あつく堅し」の言葉をあいさつ文で使ったりする。沢の水も暑く堅く凍ってしまうほど冷え込みが厳しいという季節の表現だ。きのう27日、北朝鮮から弾道ミサイルが日本海に発射されたことを受けて、岸田総理は会見を行ったが=写真・上=、その言葉も厚く堅くフリーズ状態だった。

   以下、総理官邸公式ホームページから引用。記者から「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射されたとの情報について」と問われ、「まず、韓国の報道については承知しております。政府としては引き続き情報収集に努めてまいります。今、確認できているのはそこまでです。そして6度目となる発射についてですが、これは弾道ミサイル等の発射が含まれておりますので、これは国連決議違反であり、これは抗議もいたしましたし、大変遺憾なことであると思っております」と。

   さらに記者から「今回日本側からミサイルの発射の速報がなかった理由について」と問われ、「それも含めて今確認をいたします。情報収集中であります」と。最後に、記者から「航空機や船舶の被害などについて」と問われ、「少なくとも私のところには、そうした被害の報告は届いておりません。それも含めて、今情報収集中であると認識しております」と。

   これは一国の総理が発する言葉だろうか。「大変遺憾」と「情報収集中」としか言っていないのだ。「6度目の発射」「国連決議違反」と言うのであれば、その異常事態にどう対応するのか、為政者としての矜持が感じられない。

   朝鮮新報Web版(28日付)=写真・下=は、27日の短距離弾道ミサイルについて、「地対地戦術誘導弾通常戦闘部の威力を実証するための試射を行った。発射された2発の戦術誘導弾は、標的の島を精密に打撃し、通常戦闘部の爆発威力が設計上の要求を満たしたことが実証された」と記載している。また、25日に発射した巡航ミサイル2発についても、「発射された2発の長距離巡航ミサイルは、朝鮮東海上の設定された飛行軌道に沿って9137秒を飛行して、1800㌔界線の標的の島を命中した」と報じている。

   25日と27日の発射は島を狙い撃ちしたもので、それぞれ「命中」そして「精密に打撃」したと記載している。その島は同じ島なのかはわからないが、これまで日本海に向けての打ち放しの「誘導」から、一点を狙撃する「戦術誘導」へと転換している。これは何を意味するのか。発射地点から東京は1300㌔の範囲だ。「大変遺憾」「情報収集中」で済む話なのか。

⇒28日(金)午後・金沢の天気    くもり

☆先が読めないニュースあれこれ

☆先が読めないニュースあれこれ

   日々のニュースに接していて、この先どうなるのだろうかと考え込んでしまうことがある。きょうもふとそのような心境に陥った。NHKニュースWeb版(27日付)によると、北朝鮮はきょう午前8時ごろ、南道ハムン(咸興)周辺から日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体2発を発射した。北朝鮮は、ことしに入ってからミサイルの発射を極めて高い頻度で繰り返していて、5日と11日に飛しょう体を1発ずつ発射し、その翌日に「極超音速ミサイル」の発射実験を行ったと発表したほか、今月14日と17日にも日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体を2発ずつ発射している=写真・上は1月6日付・朝鮮新報Web版=。

   直近では25日午前に巡航ミサイルを2発したと報じられていた。射程距離が2000-1万3000㌔の弾道ミサイルに比べ、巡行ミサイルは1500㌔と射程は狭く速度も遅いが、日本や韓国では脅威だ。北朝鮮は今月19日に開かれた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験や核実験については見直しを検討するとしている(同)。ICBMが発射されれば、アメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入る。かつて、アメリカのトランプ大統領が国連総会(2017年9月)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説したが、その状況が蘇ってきた。

   新型コロナウイルスの感染拡大が止まない。全国で7万人の新規感染者(26日)が出て、石川県内でも一日の新規感染がついに500人を超えた(504人)。ここまで人数が増えてくると感染経路そのものが多様化して、防ぎようがない。県内の504人のうち感染経路調査中が337人、感染者の濃厚接触者などが122人、残りがクラスター関係で7件45人だ(県発表)。 また、入院や宿泊療養などの療養先が決まっていない人は1000人を超えて1013人となっている。感染者が確認された保育園や小学校など学校では臨時休校が相次いでいる。中学では高校受験を控えた3年生はオンライン授業に切り替えているが、生徒たちは感染と受験の「二重苦」にさいなまれているに違いない。県内ではきょうから「まん延防止等重点措置」の適用に全県域が入る(2月20日まで)=写真・下=。

   もう一つ先が読めないニュース。きょうの東京株式市場は、日経平均が午前中、一時700円を超える値下がりとなった。午前の終値は前日の終値より690円安い2万6321円。アメリカのパウエルFRB議長がきのう理事会でインフレ抑制を優先する姿勢を打ち出し、量的緩和の3月終了を決定したことで金融引き締めへの警戒感、それに伴う経済の回復傾向にマイナスになるという懸念が広がった。ダウ平均もこのところ一時800㌦を超える大幅な値下げがあるなど乱高下が続いている。

   では日銀はどうか。黒田総裁が2013年に就任以降、2%の消費者物価指数を政策目標に掲げて大規模な金融緩和策を粘り強く続けている。ここにきて、物価上昇が顕著になってきた。これに賃上げが加われば、ひょっとして「金融政策の正常化」へと回帰するのではないかとも考えたりする。ただ、中国不動産開発の中国恒大のデフォルト問題が象徴するように中国経済が今後どうなるかによって暗雲が漂うかもしれない。経済の先も読めない。

⇒27日(木)午後・金沢の天気     はれ

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

   正気の沙汰ではない。また、きのう(14日)北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げた。ことしに入って3回目だ。防衛省公式ホームページには、「北朝鮮は、本日(14日)14時50分頃、北朝鮮北西部から弾道ミサイルを少なくとも1発、東方向に発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約50km程度で、距離は通常の弾道軌道だとすれば、約400km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸付近であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」と記載されている。

   NHKニュースWeb版(15日付)は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を引用してして以下報じている。「鉄道機動ミサイル連隊が14日、発射訓練を行い、2発の戦術誘導弾が日本海に設定された目標に命中した」と発表した。公開された写真ではミサイルが、線路上の列車からオレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子が写っている。また発射訓練について、「任務の遂行能力を高めることを目的に行われた」としていて、国防科学院の幹部らが立ち会い、「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを整えるための課題が議論された」としている。

   当初、アメリカへの威嚇を込めた発射だと思った。北朝鮮外務省報道官はこの日午前6時、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「アメリカがわが国の合法的な自衛権行使を問題視するのは明らかな挑発であり、強盗的な論理だ」「アメリカはわが国の正当な活動を国連安保理に引き込んで非難騒動を起こせなかったので、単独制裁まで発動しながら情勢を意図的に激化させている」と述べていた(15日付・朝鮮日報Web版日本語)。

   ところが、先のNHKニュースからは、鉄道機動ミサイルを戦略兵器として着々と開発を進めていることが分かる。鉄道機動ミサイルが初めて確認されたのは、2021年9月15日に発射した弾道ミサイルだ=写真、2021年9月17日付・朝鮮中央テレビ動画から=。このときは、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾した。あれから4ヵ月で戦術誘導弾を搭載した鉄道機動ミサイルを開発したことが分かる。戦術誘導弾は弾頭の重量を2.5㌧に改良した兵器システムで、核弾頭の搭載が可能となる。これを「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システム」へと展開したらどうなるか。つまり、移動式ミサイル発射システムが完成すれば、北朝鮮のいたるところから発射が可能で、日本で議論されている「敵基地攻撃能力」そのものが意味をなさなくなってくる。

   北朝鮮の弾道ミサイル開発はすでに完成形に近いのではないか。去年9月28日発射した極超音速ミサイルはマッハ3とされていたが、今月11日に発射したものはマッハ10と推定されている(12日・岸防衛大臣の記者会見)。日本の弾道ミサイルへの防衛は、イージス艦の迎撃ミサイルで敵のミサイルを大気圏外で撃ち落とし、撃ち漏らしたものを地対空誘導弾「PAC3」で迎撃するという二段構えの防備体制といわれる。日々進化していると思われる北朝鮮の弾道ミサイルにまともに向き合えるのか。日本海側に住む一人としての懸念だ。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

   きのう11日に北朝鮮が発射した極超音速ミサイルについて防衛省は公式ホームページで落下地点を推定した図=写真・上=を掲載し、「詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約700km未満飛翔し、落下したのは我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」とコメントを書いている。この図を見て、ミサイルの発射角度を東南に25度ほど変更すれば、間違いなく能登半島に落下する。さらに、朝鮮新報(12日付)は「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は、距離600km辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240km旋回機動を遂行して1000km水域の設定標的を命中した」と記載している=写真・下=。この記載通りならば、北陸がすっぽり射程に入る。

   さらに、朝鮮新報の記事は金正恩朝鮮労働党総書記が発射を視察し、「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の近代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」と述べと伝えている。

   NHKニュース(12日付)によると、岸防衛大臣はきょう12日午前、記者団に対し、11日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、通常よりも低い最高高度およそ50㌖、最大速度およそマッハ10で飛しょうしたと分析していると説明した。今月5日に発射した極超音速ミサイルはマッハ5の速さで飛行したと報じられていた。去年9月28日の「火星-8」はマッハ3とされていたので、ミサイル技術が格段に高まっていると言える。

   そして、岸大臣が述べたように、今回の弾道ミサイルは通常より低く飛び、最高高度およそ50kmだった、非常に速く低く飛ぶ弾道ミサイルに日本は対応できるのだろうか。これまで北朝鮮のミサイル発射は、アメリカを相手に駆け引きの材料だと思い込んでいた。どうやらそうではないようだ。日本やアメリカの迎撃ミサイルなどはまったく寄せ付けない、圧倒的な優位性を誇る弾道ミサイルの開発にすべてを集中する。国際的な経済封鎖下でも、東京オリンピックと北京オリンピックをボイコットしてでも開発を急ぐ。そして、ダメージを受けたのは韓国だった。

   韓国の大統領府関係者は、北京オリンピックについて「慣例を参考にして、適切な代表団が派遣されるよう検討中」と語り、文在寅大統領の出席は検討していないと明らかにした(12日付・時事通信Web版)。文氏は「外交的ボイコット」を検討していないと訪問中のオーストラリアでの首脳会談後の記者会見で表明していた(12月13日付・朝日新聞Web版)。

   以下裏読みだ。文氏は北京オリンピック期間中に中国の仲立ちで北京での南北首脳会談を構想し、水面下で交渉していた。ところが、北朝鮮は今月5日に極超音速ミサイルを発射。同じ日に「敵対勢力の策動と世界的な感染症の大流行」を理由にオリンピックに参加しないことを中国側に通知した。そして11日にマッハ10の極超音速ミサイルを発射した。これで文氏の「北京での南北首脳会談」の構想は完全に潰えてしまった。というより、ひょっとして、北朝鮮は文氏の夢を潰すためにあえて発射と不参加をセットにしたのか。「敵対勢力の策動」とはこのことを指すのか。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      あめ

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

   海上保安庁公式ホームページは11日7時29分の「【緊急情報】ミサイル発射情報」で、「北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました。船舶は、今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は、近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と伝えた。同じく防衛省公式ホームページは7時35分の「お知らせ(速報)」で、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました」と伝えている。総理官邸公式ホームページでは、「総理指示(7:33)」として、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」「航空機、船舶等の安全確認を徹底すること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を出している。騒々しい連休明けだ。

   北朝鮮は今月5日の午前8時7分ごろにも、内陸部から「極超音速ミサイル」を日本海に向けて発射している=写真、1月6日付・朝鮮新報Web版=。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   NHKニュースWeb版によると、岸田総理は午前9時前、総理大臣官邸で記者団に対し、「先日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、国連安全保障理事会で対応が協議されたところだ。こうした事態に北朝鮮が継続してミサイルを発射していることは極めて遺憾なことだ。政府としては、これまで以上に警戒監視を進めているが、発射の詳細は早急に分析を行っている」と述べた。また、岸防衛大臣は記者会見で、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは、通常の軌道であれば、日本のEEZの外側に落下したと推定されることを明らかにした。

   それにしても、この騒々しさは北京オリンピック・パラリンピックに影響をもたらさないのだろうか。弾道ミサイルを打ち上げている国がオリンピック開催国の隣国にあることに、各国のオリンピック選手団はどう思っているだろうか。そして、北朝鮮は北京オリ・パラに参加しない方針を明らかにしている(1月7日付・NHKニュースWeb版)。その理由に、アメリカなどの「外交的ボイコット」に関連して、「アメリカと追従勢力の中国への陰謀がより悪質になっている。中国の国際的なイメージを傷つけようとする卑劣な行為で排撃する」としている(同)。この言葉を真に受けると、「アメリカと追従勢力」を「排撃する」ことと、弾道ミサイルを関連づけて考えてしまう。

⇒11日(火)午前・金沢の天気      あめ

☆用心するに越したことはない

☆用心するに越したことはない

   新型コロナウイルスの感染が急拡大している。石川県でもきょう10日、新たに18人が感染、1人の死亡が発表された。県内で亡くなった人はこれで139人、県内での感染者も累計で8135人となった。そして、全国ベースではここ1週間の新規感染者は3万2081人で、前週(3200人)の約10倍に増加。オミクロン株の広がりとともに、増加幅が拡大している(10日付・時事通信Web版)。感染力が強いとされるオミクロン株の市中感染が全国的に広がっている。感染症者は人工呼吸器やエクモを使用するような重症患者は少ない、「インフルエンザと同じ程度」との情報があるものの、用心するに越したことはない。   

   きのう9日のNHK『日曜討論』で、岸田総理はいわゆる「敵基地攻撃能力」について、憲法など基本的な考え方を守ったうえで、具体的な対応を国民の理解を得ながら結論を出したいと述べた。これに対し、野党党首の考えは割れた。野党第一党の立憲民主と共産は否定的だった。日本維新と国民民主はおおむね賛同する考えだった。ただ、立民の泉代表の言い分は一理あると思った。北朝鮮の弾道ミサイルを念頭にして、「今の時代は発射台付き車両からミサイルを射出するわけで、動かない基地を攻撃したところで抑止できるのか」との問題提起だった。

   確かに、北朝鮮が去年9月15日に発射した弾道ミサイルは移動式だった。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(同9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていたが、この弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。だからと言って、すべての弾道ミサイルが移動式ではない。「敵基地攻撃能力」を有したほうがよいのではないだろうか。用心するに越したことはない。

   日本気象協会の予報(10日付)によると、あさって12日から14日にかけて、冬型の気圧配置が強まり、日本海側は雪。積雪が急に増えたり、猛吹雪となるおそれがあるという。あのJPCZ(日本海寒帯気団集束帯)がまたやってくる。用心するに越したことはない。

⇒10日(月)夜・金沢の天気    くもり