⇒ニュース走査

☆安倍元総理、テロに死す

☆安倍元総理、テロに死す

              テロリストにより元総理が狙撃される。これで日本への国際的な信頼がガタ落ちだ。NHKニュースによると、きょう午前11時半頃、奈良市の大和西大寺駅近くで演説をしていた安倍元総理大臣が背後から男に銃で撃たれた。安倍氏は心肺停止の状態で救急車で搬送されたあと、ドクターヘリで橿原市にある奈良県立医科大学附属病院に移されて治療を受けていたが、午後5時3分に亡くなった。67歳だった。

   警察は現場にいた奈良市に住む職業不詳の山上徹也容疑者(41)をその場で逮捕した。押収された銃は手製の銃だとみられる。山上容疑者は2005年まで3年間、海上自衛隊の広島県呉地区の部隊で勤務していた。

   安倍氏の演説が始まってから1分から2分ほどたったあとに2発の銃声が聞こえた。そのあと安倍氏が倒れ、意識がない様子だった。安倍氏には警視庁の要人警護を専門とする警察官(SP)が1人ついていた。

   治療にあたった奈良県立医大病院は午後6時すぎからの会見で、「頸部に2ヵ所の銃創があり、弾丸によるものとみられる傷は心臓にまで達していて、心臓および大血管の損傷があった」と説明した(関西テレビニュースWeb版)。

   海外メディアもトップニュースで伝えている。アメリカのCNNニュースWeb版は「FORMER JAPANESE PM ASSASSINATED」(日本の元総理 暗殺)の強烈な見出しだ=写真=。イギリスのBBCニュースWeb版も銃撃をいち早く速報で伝えていた。「Japan ex-PM Abe injured after reported gunshot attack」。NHKのニュースを引用し、その中で、「心肺停止状態」という用語は、日本で死亡が正式に確認される前によく使用される。拳銃が禁止されている日本では、銃による暴力事件は稀であり、政治的暴力事件はほとんど前代未聞。2014年の日本での銃による死亡事件はわずか6件で、米国では3万3599件だった、と報じている。

⇒8日(金)夜・金沢の天気   くもり

★大漁を呼び込んだか、能登の「イカキング」

★大漁を呼び込んだか、能登の「イカキング」

    旬の話題を。日経新聞北陸版(24日付)で「スルメイカ 石川で大漁 金沢には連日1万箱超 卸値、前月比2割安」との見出しの記事が掲載された。記事を読んで、能登半島の尖端部分に位置する能登町で名物になっているスルメイカの巨大モニュメント「イカキング」(全長13㍍、全幅9㍍、高さ4㍍)=写真・上=を連想し、ひょっとして大漁を呼び込んだのかなどとたわいもなく思いを巡らせた。

   記事によると、能登半島の輪島沖で6月中旬から大漁が始まった。石川県沖には全国のイカ釣り船が100隻近く集結していて、金沢港に隣接する総合市場では22日に1箱5㌔入りのイカの箱が1万2千箱が積み上がった。23日も1万3400箱、約70㌧が水揚げされて全国へ出荷された。日本最大の卸売市場である東京の豊洲市場では金沢からの入荷が大幅に増え、高騰していた卸値が前月比で2割ほど下がった。

   では、金沢の庶民の台所、近江町市場ではどうなのか。きょう午前9時過ぎに市場に出かけた。鮮魚が並ぶ店を何店かめぐると、「刺身用 特大」の値札がある1皿が5匹で1000円=写真・下=、それよりやや小ぶりだが、1皿が3匹で500円だった。大きさにもよるが、1匹150円から200円ほどが相場だろうか。店の女性店員にさりげなく聞いた。「こんなに大きいの5匹で千円とは安いですね」と。すると、「スルメイカは先月まで不漁が続いていてね、でも、ようやくイカの季節になったね。安いよ。もっちりしたスルメイカどうです」と笑顔で。

   では、なぜ急に漁獲高が増えたのか。石川県水産総合センター公式サイトの「漁海況情報」によると、スルメイカ漁が始まった5月1日から6月10日までの県内水揚量は270㌧で、前年(419㌧)および過去5年平均(998㌧)を下回った。しかし、5月から7月の漁況見通しでは、5月中旬の50㍍深水温は前年より低くなって漁獲は減るものの、それ以降は海水温が上昇し、漁獲は増えると予想している。小型イカ釣り船による水揚量は3040㌧と見積もられ、前年(1343㌧)および過去5年平均(2431㌧)を上回ると予想されている。これまで、石川県沖のスルメイカは5月から6月中旬が漁期だったが、水温の環境変化で漁期が1ヵ月遅れでやってきたようだ。

   冒頭のイカキングは、能登町の九十九湾にある小木漁港が全国で屈指のイカ類の水揚げを誇ることから、町では特産イカの知名度向上にと、去年4月に設置した。新型コロナウイルスの収束後の観光誘客を狙ったものだが、制作費3000万円のうち、2500万円がコロナウイルス感染症対応として国が自治体に配分した地方創生臨時交付金だったことから、「これがコロナ対策か」と議論を呼んだ。

   スルメイカは刺し身や焼き物、煮物など料理メニューが豊富。中でも、能登の郷土料理でもある「ごろ焼き」(肝焼き)は絶品かもしれない。この物価高の折、日経新聞が北陸版トップで取り上げたように、水産資源の大漁は注目されるニュースではある。

⇒25日(土)午後・金沢の天気    はれ

☆ウクライナ戦地を訪ねるリアルな外交

☆ウクライナ戦地を訪ねるリアルな外交

   一国の長が戦地を訪れ外交を展開するという、EUのリアリズムを感じさせるニュースだ。BBCニュースWeb版(16日付)は「Ukraine war: EU leaders back immediate candidate status for Kyiv」の見出しで、ロシア軍がウクライナへの侵攻を強める中、フランスとドイツ、イタリア、ルーマニアの4ヵ国の首脳がウクライナの首都キーウに列車で入り、戦闘が行われた近郊の街を訪れて被害の説明を受け、その後、ゼレンスキー大統領と会談したとの記事を掲載している。

   この訪問で、フランスのマクロン大統領は、EUはウクライナがロシアに勝利するまで支持すると強調。ドイツのショルツ首相は「ウクライナはヨーロッパの家族に属している」と述べた。ゼレンスキー大統領はEUの団結を訴えた。「Ukrainian President Volodymyr Zelensky described Russia’s continuing aggression as a war “against the united Europe”, adding that the “most effective weapon” was unity.」

   今回の訪問は、EUがウクライナにEU候補の地位を与えるかどうかについて勧告を行う1日前に行われた。その後、今月23日と24日のEU27ヵ国の首脳会議で加盟について議論する。さらに、G7サミットとNATO首脳会議など国際会議が立て続けに開かれる。EUを主導する3ヵ国の首脳がそろってウクライナを訪問することで、EUとして結束して支援する姿勢を示す狙いがあったのだろう。現場を見て交渉するリアルな外交だ。

   岸田総理も先月23日の日米首脳会談で、来年日本で開催されるG7サミットを広島市で開催することの同意をバイデン氏から取り付けたと語った。「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、私は広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えている」(共同記者会見)と語った。これも実にリアルな外交だ。

    岸田氏は今月下旬にドイツで開かれるG7サミットに出席し、その後、スペインで開かれるNATOの首脳会議に日本の総理として初めて出席する。この際、仏独伊首脳と価値観を共有するためにもウクライナを事前に訪れてはどうか。岸田総理にとって、ヒロシマとウクライナは平和へのコミットメントに欠かせないものになるだろう。

⇒17日(金)午後・金沢の天気    はれ

☆スペクタルな能登が「里山里海国定公園」に

☆スペクタルな能登が「里山里海国定公園」に

   能登半島の海岸沿いには景勝地が連なっていることから、1968年に「能登半島国定公園」に指定されている。景勝地の特徴は大きく2つある。「外浦」と呼ばれる波風が荒い、千里浜海岸から能登金剛、曽々木海岸、木ノ浦、禄剛崎かけての西側エリアだ。禄剛崎は半島の尖端で、東側エリアに入ると「内浦」と呼ばれる波風が静かな、見附島や九十九湾、穴水湾、七尾湾、氷見海岸と連なる。まさに動と静が織りなすリアス式海岸の絶景だ。

   中でも自然のスペクタルショーを目にすることができるのは輪島市の曽々木海岸だ。秋の夕方、窓岩で知られる海に突き出た岩石の穴に夕日が差し込む。岩の穴と夕日がちょうど同じ大きさで、すっぽり収まったときは思わず拝みたくなるような神々しさだ=写真・上=。5分間ほどの光景である。

   前置きが長くなった。きょうの地元紙の朝刊は、海岸線が中心だった能登半島国定公園に内陸部の里山を含め広げる拡張候補地として選ばれたと、環境省の発表を報じている=写真・下=。その選定理由について、環境省公式サイト「国立・国定公園総点検事業フォローアップ結果について」(6月14日付)では以下のように記載されている。

「既存の国定公園周辺には、棚田や谷地田、塩田、まがき集落景観がみられ、気候や地形といった自然条件に適応した人の営みが里山の風景を形作っている。こうした人と自然との関わりが評価され、国内初の世界農業遺産に登録されている」「地域は昆虫類が豊富で、シャープゲンゴロウモドキをはじめとした二次的自然環境に依存する希少種も生息・生育し、生物多様性が高く、トキの本州最後の生息地であった」「これらの里山域は、隣接する既存の国定公園の風景を成す一体の要素と考えられる」

    能登半島は2011年に世界農業遺産(GIAHS、FAO国連食糧農業機関)に認定されていて、里山里海が一体化した風景は国際評価を得ているとの理由だ。生物多様性に富んだ能登では、ため池で見られるシャープゲンゴロウモドキなど希少種も多い。そして、本州最後のトキの生息地であったと記されている。ちなみに、本州最後のトキが絶滅したのは1971年、国定公園に指定されて3年後のことだった。

   今回の拡張候補地の選定によって、能登の里山里海そのものが国定公園化する。環境省は2030年度をめどに地元自治体とともにどの里山区域を指定するか作業を進める。今回の拡張候補地の選定で、環境省が進めている2026年度に向けた本州でのトキ放鳥の候補地としてさらに弾みがついたのではないだろうか。ブログ(6月12日付)でも紹介したコウノトリのひな3羽も能登で育っている。トキもコウノトリも国の特別天然記念物だ。人々に見守られて国定公園で羽ばたく日を楽しみにしている。

⇒15日(水)午後・金沢の天気    あめ

★「機を逸す」ヒトとコト

★「機を逸す」ヒトとコト

   手を打つべきときのタイミングを逃したのではないか。アメリカのダウ平均株価が800㌦を超える値下げを受けて、きょう14日の日経平均も前日に比べ一時630円安い2万6300円台に落ち込んだ(午前10時過ぎ)。円安も強烈で、きのう外国為替市場で1㌦が135円台前半まで下落した。メディア各社は24年ぶりの円安は、金融不安で「日本売り」に見舞われていた1998年以来と報じている。

   この円売りの背景として上げられるのが、日本とアメリカの金利の差だ。アメリカは物価上昇を抑えるためにFRBが大幅な利上げを行うとの見通しが広まり、日銀が超低金利政策を継続させていて、それぞれの金利差がさらに広がるとの読みから円売りドル買いが加速している。

   ロシアのプーチン大統領もウクライナとの停戦のタイミングを失ったようだ。愛国心に訴えて、ウクライナに侵攻したもののきょうで111日目。むしろ、プーチン氏に誤算が目立つ。日米欧による経済制裁や外資の撤退でロシア国内の経済と雇用環境が悪化することは目に見えている。ソ連崩壊後に匹敵する大打撃を受けることは現実味を増しているようだ。側近の中に、この侵攻にひと区切りをつける提案する人物はいなかったのだろうか。

★「国連軍縮会議」が吹っ飛ぶとき

★「国連軍縮会議」が吹っ飛ぶとき

   IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長の発言は国際世論を喚起する、ある意味で絶妙なタイミングだった。NHKニュースWeb版(7日付)によると、グロッシ氏は本部があるウイーンで理事会を開き、北朝鮮のプンゲリにある核実験場の坑道の1つが再び開いた兆候がみられると指摘した。さらに、記者会見で、その事実は衛星写真から確認していると明らかにし、「専門家の分析はこの活動は過去の核実験とも似ているというものだ」と核実験が行われる可能性に懸念を示した。

   IAEA公式サイト(6日付)=写真・上=にグロッシ氏のコメントが掲載されている。以下(意訳)。

豊渓里(プンゲリ)の核実験場では、おそらく核実験の準備のために坑道の1つが再開されたという兆候を観察した。核実験の実施は、国連安保理決議に違反し、深刻な懸念の原因となる。寧辺(ヨンビョン)のサイトでは活動が続いている。原子炉の運転と一致する継続的な兆候がある。ここにある放射化学研究所では、過去の廃棄物処理や維持管理活動中に観察されたことと一致する活動の兆候がある。遠心分離機濃縮施設の別館に屋根が設置されている。軽水炉付近では、2021年4月から建設中だった新棟が完成し、隣接する2棟が着工しているのが観測された。1994年に建設が中止された原子炉では、建物の解体と、他の建設プロジェクトで再利用される可能性のある一部の資材の移動が観察された。降仙(カンソン)複合施設と平山(ピョンサン)鉱山濃縮工場での活動の兆候が進行中だ。

   豊渓里では2006年10月9日に最初となる核実験が行われ、2017年9月3日までに6回行われている=写真・下=。長崎大学核兵器廃絶研究センター公式サイトによると、6回目のとき、北朝鮮は「ICBMに搭載可能な水爆実験に成功」と発表していた。核実験の地震規模としては最大でマグニチュード6.3(米国地質調査所)で、メガトン級の大規模な爆発威力だった可能性がある。今後北朝鮮がICBMに搭載可能なレベルにまで核弾頭を小型化させることは時間の問題である、と分析される。

   北朝鮮はこれまでICBMの発射実験を繰り返してきた。それに搭載する小型核弾頭が完成すれば、核・ミサイルによる打撃能力は完成形に近くづく。最高権力者としては、核実験を一刻も早く実施したいのではないか。NHKニュースWeb版(7日付)によると、アメリカ国務省のプライス報道官は6日の記者会見で、北朝鮮が核実験を行う可能性について質問され、「われわれは北朝鮮が近日中に7回目の核実験を行おうとしているのではないかと懸念している」と述べた。

   一方で、国連軍縮会議が今月2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合うこの会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。就任は5月30日付で、今月25日まで議長の座にある。

   開幕した軍縮会議で冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判し、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、非難の応酬で実質的な議論は行われなかった。今回のIAEA事務局長の発言は北朝鮮批判に拍車をかけることになる。「議長国が軍縮の義務を破っている、議長の資格はない」として強烈なボイコットが運動が起きるかもしれない。さらに、この間に北朝鮮が核実験を行えば、前代未聞の事態となるだろう。軍縮会議の存在意義そのものがないとして解体運動へと展開するのではないか。

   そもそも、いま軍縮会議自体が機能不全に陥っている。1996年に包括的核実験禁止条約(CTBT)を採択したがいまだに発効されていない。国連安保理を含めて国連の矛盾が露わになってきた。

⇒7日(火)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆「デフォルト国家」のあがき:2題

☆「デフォルト国家」のあがき:2題

   ウクライナに侵攻しているロシアのプーチン大統領のこの発言は悪あがきの強弁ではないだろうか。BBCニュースWeb版(6日付)=写真=は「Ukraine war: Putin warns over Western long-range weapons」の見出しで、もし欧米諸国がキーウに長距離兵器を送れば、ロシアはウクライナで攻撃する標的のリストを拡大するだろうと、プーチン大統領が国営テレビのインタビューで警告したと報じている。

   もともと、欧米諸国のウクライナ支援は防衛を条件としている。アメリカは最大70㌔離れた目標に命中できる精密誘導ロケット弾を発射するシステム(HIMARS)を供与する計画だが、ロシア国内を攻撃しないという保証をゼレンスキー大統領から得た後で提供する。ドイツもロシア軍の空爆から都市全体を守ることを可能にする防空システム「短距離空対空ミサイル」を提供する(同)。

   BBCの記事を深読みすると、逆にロシアの国内状況が見えてくる。軍事侵攻はきょうで103日目だ。戦争の長期化で苦しくなっている。ロシア国債は国際金融市場でデフォルトとみなされており(6月2日付・NHKニュースWeb版)、金融市場での信用失墜で戦費の調達や軍隊組織そのものが行き詰まっているに違いない。ウクライナに進軍するも、道路に埋められた地雷をチェックする装備が不足しているため多大な損害が出ていて、派兵を拒否するロシア兵が増えている(5月23日付・同)。

   プーチン氏の強弁は国内の経済や軍内部の乱れへのあせりを反映しているのかもしれない。ロシアが脅威を受けた場合はその武器を供与した国を標的にするとは、偽旗作戦の格好の言い分だろう。確たる証拠がなくても、「ウクライナ軍がHIMARSを我が国に撃ち込んだ」とロシアが言い張れば、アメリカに対する攻撃の条件が整う。敵を新たにつくることで国内を引き締めるのは常套手段だ。

   きのう5日午前9時過ぎ、北朝鮮は弾道ミサイルを相次いで発射した。防衛省公式サイト(5日付)をチェックするとミサイルは少なくとも6発。落下したのは北朝鮮東側の沿岸付近および日本海であり、日本のEEZ外だった。きょうの北朝鮮の労働新聞Webなどを検索したが、その記事が見当たらない。5月25日にICBMを含む3発を発射しているが、これも国営メディアは報じていない。これまで発射の成功や核・ミサイル能力の開発を大々的に報じてきたのに、5月4日の弾道ミサイル発射以降は沈黙が続いている。この沈黙は何を意味するのか。

   前日4日に米韓合同演習が行われ、原子力空母「ロナルド・レーガン」が加わった。5日の弾道ミサイルはこれを牽制する狙いがあったとみられるが、それだったらなおさら公表するはずだ。おそらく、国家自体がデフォルト状態に陥っているのではないか。「建国以来の大動乱」と称される新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体がロックダウンとなり、それにともなう食糧難と飢え。このような状況下にあるとすれば、国営メディアが弾道ミサイルを報じても、人々は「ミサイルより、食べ物よこせ」とあがき叫ぶだろう。最高権力者はそれが怖いのではないか。

⇒6日(月)夕方・金沢の天気    あめ  

☆いよいよ「少子化は国難」のステージに

☆いよいよ「少子化は国難」のステージに

   少子高齢化が進んだ地域集落でよく見かける光景、それは老人が買い物袋を携えて一人でとぼとぼ道を歩く姿だ。これを見て、健康のために歩いて買い物か、と前向きに考えなくもないが、なぜか後ろ向きに捉えてしまう。独り暮らし、高齢のため運転免許を返上、同乗して買い物に行く仲間はもういなくなった、バス運行の回数が少なくなった、地域にあった乗り合いタクシーが廃業してしまった。そして思うことは、これは日本の未来の光景ではないのか、と。

   きょうの各紙朝刊が一面のトップで、2021年に生まれた子どもの人数(出生数)は81万1604人で、前年より2万9231人(3.5%)少なく、明治32年(1899)に統計を取り始めて以降で最も少なくなったと、厚労省「人口動態統計」(3日発表)を報じている。1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は2021年は1.30で、前年を0.03ポイント下回っている。

   国立社会保障・人口問題研究所が2017年7月に発表した「日本の将来推計人口」では2021年の「合計特殊出生率」が1.42、出生数は86万9千人(中位)と算出されていた(4日付・朝日新聞)。実際は出生率1.30、出生数81万1604人だったので、少子化がさらに進んだと言える。新型コロナウイルス下で結婚や妊娠を控える傾向にあったことも想像に難くない。が、このままでは人口減少の加速に歯止めがかからない。

   少子化が進んだ原因は何だろう。厚労省「人口動態統計」をチェックすると、平成7年(1995)はもっとも多く出産した年齢は25-29歳だったが、同17年(2005)以降は30-34歳となっている。これは、女性の初婚年齢が高くなっているせいもあるだろう。ちなみに平成7年は26.3歳だったが、現在(令和2年統計)は29.4歳と3年余り「晩婚化」が進んでいる。

   さらに、夫婦とも仕事に就いていて、出産・子育てを両立させるには産休や育休の取りやすい職場環境やタイミングを見計らう必要もあるのだろう。そして、出産にかかる費用も考慮しなければならない。「出産育児一時金」は現在42万円支給されるのが、出産費用は増加傾向で「足りない」という声も周囲の人から聞いたことがある。共同通信Web版(5月26日付)によると、政府は出産育児一時金を増額する方向で検討に入り、今月中にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させるようだ。

   あのEV大手テスラの経営者、イーロン・マスク氏が5月8日付のツイッターで「Japan will eventually cease to exist.」と書き込み物議を醸した。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する、それは世界にとって大きな損失だ、と。日本の総務省が発表した2021年の人口統計で、過去最高の64万4000人減少との記事についてのコメントだった。世界の著名人も注視する日本の少子化現象、いよいよ「少子化は国難」との位置付けで対策を打つべきときが来た。日経新聞など各紙が一面で取り上げることそのものに危機感が漂っている。

⇒4日(土)夜・金沢の天気    はれ 

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

        国連の会議がまた大荒れに。NHKニュースWeb版(3日付)によると、国連軍縮会議が2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合う軍縮会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。

   会議の冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が発言し、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判。日本の梅津公使参事官も「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイル計画に資金を充てることで、すでに悲惨な人道状況をさらに悪化させている」と非難した。これに対して議長を務める北朝鮮の大使は「いかなる国も他国の政策を批判し、干渉する権利はない」と反発した。また、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、欧米や日本などとの間で非難の応酬となって、実質的な議論は行われなかった(同)。

   軍縮は国連の役割そのものだ。国連憲章は、総会と安全保障理事会の双方に具体的な責任を委託している。そして、軍縮条例をまとめるのが軍縮会議だ。これまで、核兵器不拡散条約(NPT、1968年)、生物兵器禁止条約(BWC、1972年)、化学兵器禁止条約(CWC、1993年)、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年)などの重要な軍縮関連条約を作成。国連総会で採択された。各国による署名と批准で発効するが、CTBTについては核兵器保有国を含む44ヵ国の批准が完了していないため、26年経ったいまでも未発効の状態だ。

   さらに、CTBT以降、軍縮会議は機能不全に陥っている。外務省公式サイト「ジュネーブ軍縮会議の概要」によると、軍縮会議の議題は「核軍備競争停止及び核軍縮」「核戦争防止(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約を想定)」「宇宙における軍備競争の防止」など8つあるものの、実質的交渉や議論をほとんど行っていないのが現状だ。

   条例を作成し、総会で採択されたものの、核保有国などが批准しないため未発効の状態が続いているが、北朝鮮は批准の前段階である署名すらしていない。さらに、ミサイル発射と核実験で国連安保理から制裁措置を受けていても、ICBMの発射を繰り返している。4週間の議長国とは言え、北朝鮮は今後も各国から突き上げられ、針のむしろだろう。

(※写真は、現地時間6月2日にスイス・ジュネーブで開催された国連軍縮会議。天井画はスペインを代表する現代芸術家ミケル・バルセロの作品「Room XX」=国連本部公式サイトより)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

☆「空間識失調」という自衛隊機の墜落原因

☆「空間識失調」という自衛隊機の墜落原因

   事故から4ヵ月、その原因が発表された。1月31日、航空自衛隊小松基地を離陸したばかりのF-15戦闘機が、西北西5.5㌔の日本海に墜落し、パイロット2人が亡くなった。戦闘機は「飛行教導群」と呼ばれる部隊の2人。戦闘機部隊を教育する任務に当たり、パイロットの中でも精鋭の2人だった。事故は、戦闘機から異常を知らせる無線連絡やパイロットが脱出する際に発せられる救難信号は感知されていない。一瞬の出来事だった。

   墜落の原因について、航空自衛隊公式サイトできょう2日付のプレスリリースが掲載されている。それによると、事故原因について、「(1)事故当時の気象・天象条件及び離陸直後の姿勢や推力の変更操作等の影響を受け、自らの空間識に関する感覚が実状と異なる、空間識失調の状態にあった可能性が高い」「(2)編隊長機を捕捉するためのレーダー操作等に意識を集中させていたため、回復操作が行われるまでは、事故機の姿勢を認識していなかった可能性がある」と2点をあげている。プレスリリースの添付されたイラスト=写真=では、墜落の11秒前に高度が低下し始め、墜落の2秒前になってパイロットは異常な姿勢から回復するための操作をしたものの間に合わず墜落した。

   気になるのは「空間識失調」という文字だ。Wikipedia「空間識失調」によると、「主に航空機のパイロットなどが飛行中、一時的に平衡感覚を失う状態のことをいう。健康体であるかどうかにかかわりなく発生する。機体の姿勢(傾き)や進行方向(昇降)の状態を把握できなくなる、つまり自身に対して地面が上なのか下なのか、機体が上昇しているのか下降しているのかわからなくなる、非常に危険な状態。しばしば航空機の原因にもなる」とある。

    2019年4月9日、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが三沢基地(青森県三沢市)を飛び立ち太平洋上で消息を絶った。これについてもパイロットが「空間識失調」に陥り、墜落した可能性が高いとされている(同

   航空自衛隊では再発防止策として、空間識失調に関する教育・訓練を強化するほか、墜落しかけた戦闘機が自動的に回避動作をとるシステムの調査研究をするとしている(2日付プレスリリース)。

⇒2日(木)夜・金沢の天気    はれ